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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140685
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】水素ガス漏洩防止装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 8/00 20060101AFI20230928BHJP
   F17C 13/12 20060101ALI20230928BHJP
   B60K 15/07 20060101ALI20230928BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B60K8/00
F17C13/12 301Z
B60K15/07
B62D25/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046653
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】上田 雅万
(72)【発明者】
【氏名】村岡 裕之
(72)【発明者】
【氏名】希代 駿
(72)【発明者】
【氏名】大古 壮了
(72)【発明者】
【氏名】深石 泰史
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 智久
(72)【発明者】
【氏名】沢田 豊
【テーマコード(参考)】
3D038
3D203
3D235
3E172
【Fターム(参考)】
3D038CA18
3D038CA22
3D038CB03
3D038CC18
3D038CD01
3D038CD10
3D203AA14
3D203AA34
3D203BA03
3D203CA25
3D203CB19
3D203DA09
3D203DA20
3D203DB11
3D235AA06
3D235BB10
3D235CC24
3D235CC29
3D235DD47
3D235FF02
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH26
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB13
3E172BD03
3E172DA90
3E172KA03
(57)【要約】
【課題】サイドメンバよりも燃料電池自動車の左右方向の外側にタンクが配置されている燃料電池自動車で、衝突時に不要な水素ガスの遮断を低減しつつ水素ガスの漏洩を低減する。
【解決手段】燃料電池自動車100の前後方向に延在しつつ燃料電池自動車100の左右方向に互いに離間して配置された一対のサイドメンバ3と、サイドメンバ3よりも燃料電池自動車100の左右方向の外側に配置され、水素ガスを貯蔵するタンク10とを備えた水素ガス漏洩防止装置1で、タンク10の水素ガスが流通する配管20よりも燃料電池自動車100の左右方向の外側に配置された衝突検知センサ40によって燃料電池自動車100の衝突が検知されたときに、遮断弁50によりタンク10から配管20への水素ガスの流通が遮断されるため、衝突時に不要な水素ガスの遮断を低減しつつ水素ガスの漏洩を低減できる。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池自動車の前後方向に延在しつつ前記燃料電池自動車の左右方向に互いに離間して配置された一対のサイドメンバと、
前記サイドメンバよりも前記燃料電池自動車の左右方向の外側に配置され、水素ガスを貯蔵するタンクと、
前記タンクの前記水素ガスが流通する配管よりも前記燃料電池自動車の左右方向の外側に配置され、前記燃料電池自動車の衝突を検知する衝突検知センサと、
前記衝突検知センサが前記燃料電池自動車の衝突を検知したときに、前記タンクから前記配管への前記水素ガスの流通を遮断する遮断弁と、
を備えた水素ガス漏洩防止装置。
【請求項2】
前記衝突検知センサよりも前記燃料電池自動車の左右方向の外側に配置され、外力に応じて塑性変形する塑性変形部材をさらに備えた、請求項1に記載の水素ガス漏洩防止装置。
【請求項3】
前記タンクを支持するタンク支持部材をさらに備え、
前記塑性変形部材は、前記タンク支持部材に比べて小さい外力により塑性変形する、請求項2に記載の水素ガス漏洩防止装置。
【請求項4】
前記遮断弁は、前記タンクの前記水素ガスの流出口と前記配管との連結部に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス漏洩防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車(FCEV:Fuel CellElectric Vehicle)に重度の衝突が発生した場合には、水素ガスの漏洩を防ぐために、タンクから配管への水素ガスの流通の遮断が必要である。一方、燃料電池自動車の走行が可能な程度の軽度の衝突等が発生した場合に、水素タンクから配管への水素ガスの流通を遮断してしまうと、燃料電池自動車が走行不可能となり、燃料電池自動車のユーザ及び燃料電池自動車の周囲の交通に影響を与える。そこで、衝突時に不要な水素ガスの遮断を低減しつつ水素ガスの漏洩を低減できる技術が望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、燃料電池自動車が乗用車である場合に、衝突時に水素ガスの漏洩を低減する技術が開示されている。特許文献1の燃料電池自動車では、燃料電池自動車の前後方向に延在しつつ燃料電池自動車の左右方向に互いに離間して配置された一対のサイドメンバの間にタンクが配置されている。特許文献1の燃料電池自動車では、既存のGセンサにより所定の加速度が検出されたときに、タンクから配管への水素ガスの流通を遮断する遮断弁を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004‐82793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような技術において、燃料電池自動車が乗用車である場合には、タンク及び配管は、衝突の影響が小さいサイドメンバの間に配置されている。一方、燃料電池自動車がトラック等である場合には、ラダーフレームにおけるサイドメンバよりも燃料電池自動車の左右方向の外側にタンクが配置されるため、燃料電池自動車が乗用車等に側面衝突された際の衝突された位置とタンクの位置とが近く、衝突の影響が大きい。したがって、サイドメンバよりも燃料電池自動車の左右方向の外側にタンクが配置された燃料電池自動車においても、衝突時に不要な水素ガスの遮断を低減しつつ水素ガスの漏洩を低減できる技術が望まれている。
【0006】
そこで本発明は、サイドメンバよりも燃料電池自動車の左右方向の外側に水素ガスを貯蔵するタンクが配置されている燃料電池自動車において、衝突時に不要な水素ガスの遮断を低減しつつ水素ガスの漏洩を低減できる水素ガス漏洩防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、燃料電池自動車の前後方向に延在しつつ燃料電池自動車の左右方向に互いに離間して配置された一対のサイドメンバと、サイドメンバよりも燃料電池自動車の左右方向の外側に配置され、水素ガスを貯蔵するタンクと、タンクの水素ガスが流通する配管よりも燃料電池自動車の左右方向の外側に配置され、燃料電池自動車の衝突を検知する衝突検知センサと、衝突検知センサが燃料電池自動車の衝突を検知したときに、タンクから配管への水素ガスの流通を遮断する遮断弁とを備えた水素ガス漏洩防止装置である。
【0008】
この構成によれば、燃料電池自動車の前後方向に延在しつつ燃料電池自動車の左右方向に互いに離間して配置された一対のサイドメンバと、サイドメンバよりも燃料電池自動車の左右方向の外側に配置され、水素ガスを貯蔵するタンクとを備えた水素ガス漏洩防止装置において、タンクの水素ガスが流通する配管よりも燃料電池自動車の左右方向の外側に配置された衝突検知センサによって燃料電池自動車の衝突が検知されたときに、遮断弁によりタンクから配管への水素ガスの流通が遮断されるため、サイドメンバよりも燃料電池自動車の左右方向の外側に水素ガスを貯蔵するタンクが配置されている燃料電池自動車において、衝突時に不要な水素ガスの遮断を低減しつつ水素ガスの漏洩を低減できる。
【0009】
この場合、衝突検知センサよりも燃料電池自動車の左右方向の外側に配置され、外力に応じて塑性変形する塑性変形部材をさらに備えることが好適である。
【0010】
この構成によれば、衝突検知センサよりも燃料電池自動車の左右方向の外側に配置された塑性変形部材が外力に応じて塑性変形する。このため、塑性変形部材の塑性変形が小さい軽度の衝突時には、塑性変形部材よりも燃料電池自動車の左右方向の内側に配置された衝突検知センサは燃料電池自動車の衝突を検知せず、遮断弁はタンクから配管への水素ガスの流通を遮断しないため、軽度の衝突時に不要な水素ガスの遮断を低減できる。一方、塑性変形部材の塑性変形が大きい重度の衝突時には、塑性変形部材よりも燃料電池自動車の左右方向の内側に配置された衝突検知センサは大きく塑性変形した塑性変形部材を介して燃料電池自動車の衝突を検出し、遮断弁はタンクから配管への水素ガスの流通を遮断するため、重度の衝突時に水素ガスの漏洩を低減できる。
【0011】
この場合、タンクを支持するタンク支持部材をさらに備え、塑性変形部材は、タンク支持部材に比べて小さい外力により塑性変形することが好適である。
【0012】
この構成によれば、塑性変形部材は、タンクを支持するタンク支持部材に比べて小さい外力により塑性変形するため、重度の衝突時にタンクを支持するタンク支持部材が変形して配管が損傷する前に、塑性変形部材が塑性変形し、衝突検知センサは塑性変形した塑性変形部材を介して燃料電池自動車の衝突を検知し、遮断弁はタンクから配管への水素ガスの流通を遮断するため、水素ガスの漏洩をより効果的に低減できる。
【0013】
また、遮断弁は、タンクの水素ガスの流出口と配管との連結部に配置されていることが好適である。
【0014】
この構成によれば、遮断弁は、タンクの水素ガスの流出口と配管との連結部に配置されているため、衝突時の配管の損傷の影響を低減でき、水素ガスの漏洩をさらに低減できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水素ガス漏洩防止装置によれば、サイドメンバよりも燃料電池自動車の左右方向の外側に水素ガスを貯蔵するタンクが配置されている燃料電池自動車において、衝突時に不要な水素ガスの遮断を低減しつつ水素ガスの漏洩を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A)は実施形態に係る水素ガス漏洩防止装置を搭載した燃料電池自動車タンクの配置を示す平面図であり、(B)は(A)の側面図である。
図2図1(A)の詳細を示す平面図である。
図3】実施形態に係る水素ガス漏洩防止装置を示す正面図である。
図4】(A)は実施形態に係る水素ガス漏洩防止装置を搭載した燃料電池自動車に軽度の衝突が生じたときの正面図であり、(B)は(A)の状態の衝突検知センサが検出した値の変化を示すグラフであり、(C)は実施形態に係る水素ガス漏洩防止装置を搭載した燃料電池自動車に重度の衝突が生じたときの正面図であり、(D)は(C)の状態の衝突検知センサが検出した値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る水素ガス漏洩防止装置について、図面を用いて詳細に説明する。図1(A)、図1(B)及び図2に示されるように、本実施形態の水素ガス漏洩防止装置1は、トラック、ピックアップトラック等の貨物自動車及びバス車両である燃料電池自動車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)100に搭載される。燃料電池自動車100は、水素と酸素とを化学反応させて発電し、発電された電力で電動機を動かし走行する。
【0018】
燃料電池自動車100の骨格はラダーフレーム2により構成されている。ラダーフレーム2は、燃料電池自動車100の前後方向に延在しつつ燃料電池自動車100の左右方向に互いに離間して配置された一対のサイドメンバ3と、一対のサイドメンバ3の間で燃料電池自動車100の左右方向に延在し、一対のサイドメンバ3を連結する複数のクロスメンバ4とを備える。
【0019】
燃料電池自動車100は、サイドメンバ3よりも燃料電池自動車100の左右方向の外側に配置され、発電のための水素ガスを貯蔵する複数のタンク10を備える。タンク10は、その長手方向を燃料電池自動車100の前後方向と平行にして、サイドメンバ3の延在方向に沿って、荷台の床下に配置されている。図1(B)の例では、燃料電池自動車100は、キャビンと荷台との間にタンク10´を備える。タンク10´は、その長手方向を燃料電池自動車100の左右方向に平行にして配置されている。
【0020】
図2に示されるように、燃料電池自動車100は、タンク10を支持するタンク支持部材30を備える。タンク支持部材30は、タンク10の長手方向の端部を支持するネックマウント部31を有する。図3に示されるように、タンク10は、長手方向の端部にタンク10の水素ガスの流出口11を有する。タンク10には、タンク10に貯蔵された水素ガスが流通する配管20が連結されている。
【0021】
図3に示されるように、水素ガス漏洩防止装置1は、上記のサイドメンバ3及びタンク10に加えて、燃料電池自動車100の衝突を検知する衝突検知センサ40を備えている。衝突検知センサ40は、タンク10の水素ガスが流通する配管20よりも燃料電池自動車100の左右方向の外側に配置されている。図3の例では、衝突検知センサ40は、タンク10を下方から支持するタンク支持部材30における燃料電池自動車100の左右方向の外側の端部の下面に設置されている。
【0022】
例えば、衝突検知センサ40は、衝突検知センサ40が検出した値が閾値を超える値を検知したときに、燃料電池自動車100の衝突を検知する。衝突検知センサ40が検出する値には、衝突検知センサ40の加速度、一定区間時間での速度の変化量が含まれる。また、衝突検知センサ40が検出する値には、衝突検知センサ40に加わった衝撃及び外力が含まれる。衝突検知センサ40が衝突検知センサ40に加わった外力を検出する場合には、衝突検知センサ40は、単に衝突検知センサ40に加わった外力の有無(オン及びオフ)を検出し、衝突検知センサ40に外力が加わったことを検出したときに(オンのときに)、燃料電池自動車100の衝突を検知してもよい。
【0023】
水素ガス漏洩防止装置1は、衝突検知センサ40が燃料電池自動車100の衝突を検知したときに、タンク10から配管20への水素ガスの流通を遮断する遮断弁50を備えている。遮断弁50は、タンク10の水素ガスの流出口11と配管20との連結部に配置されている。遮断弁50は、例えば、電磁弁である。
【0024】
遮断弁50がタンク10から配管20への水素ガスの流通を遮断する衝突検知センサ40の閾値は、水素ガスの流通を遮断するべき衝突の被害の度合に応じて適宜設定される。しかし、衝突検知センサ40の閾値は仕様上の都合で変更不可能である場合がある。そこで、本実施形態では、衝突検知センサ40への入力を衝突検知センサ40の周辺の構造により調整することでも、水素ガスの流通を遮断するべき衝突の被害の度合が調整される。
【0025】
水素ガス漏洩防止装置1は、衝突検知センサ40よりも燃料電池自動車100の左右方向の外側に配置され、外力に応じて塑性変形する塑性変形部材60を備える。水素ガス漏洩防止装置1は、タンク10を支持する上記のタンク支持部材30をさらに備え、塑性変形部材60は、タンク支持部材30に比べて小さい外力により塑性変形する。
【0026】
塑性変形部材60がどの程度の外力で塑性変形するかについては、例えば、図2及び3に示されるような衝突物200を模した移動式変形バリヤ(MDB:MovingDeformable Barrier)による試験において、移動式変形バリヤの衝突瞬間の速度により、塑性変形部材60の強度の調整がなされているものとする。
【0027】
具体的には、例えば、衝突時に配管20の損傷が生じず、燃料電池自動車100が走行可能な軽度の衝突時には、塑性変形部材60が局部的に折れることのないような強度に塑性変形部材60の強度は調整されている。一方、例えば、衝突時に配管20の損傷が生じ、水素ガスの漏洩が生じる重度の衝突時には、塑性変形部材60が衝突検知センサ40を押す程度の狙いの位置で塑性変形するような強度に塑性変形部材60の強度は調整されている。
【0028】
上述したように、燃料電池自動車の重度の衝突が発生した場合には、水素ガスの流通の遮断が必要である。一方、燃料電池自動車の走行が可能な程度の軽度の衝突等が発生した場合に、水素ガスの流通を遮断してしまうと、燃料電池自動車が走行不可能となり、燃料電池自動車のユーザ及び燃料電池自動車の周囲の交通に影響を与える。そのため、軽度の衝突時においては水素ガスの流通を遮断しない、即ち、センシングのオン及びオフの切り分けの技術が必要である。
【0029】
軽度の衝突時における従来の技術でのセンシングのオン及びオフの切り分けは、以下の通りである。つまり、大型バス車両においては、タンク及び加速度センサを天井裏に搭載し、乗用車等に衝突されても影響が無いように配慮されている。乗用車においては、タンクは車両中央のサイドメンバの間に配置されている。加速度センサは、補助拘束装置(SRS:SupplementalRestraint System)のセンシングと共用することで、加速度センサの信号をECU(Electronic ControlUnit)でロジック演算するシステムが使用されている。タンク及び配管は衝突の影響が無い位置に配置されつつ、センシングは高度にオン及びオフの切り分けが可能なシステムが採用されている。
【0030】
一方、トラック等の貨物自動車を燃料電池自動車100とする場合には、上述したように、ラダーフレーム2におけるサイドメンバ3よりも燃料電池自動車100の左右方向の外側にタンク10が配置されるため、燃料電池自動車100が乗用車等に側面衝突された際の衝突された位置とタンク10の位置とが近く、衝突の影響が大きい。したがって、衝突してくる乗用車等の速度によるセンシングのオン及びオフの切り分けがさらに重要となる。
【0031】
また、燃料電池自動車100がトラック等である場合には、タンク10が搭載される位置は、荷台の自由度及びキャビンの居住性等により限定的となる。さらに、燃料電池自動車100がトラック等である場合には、走行距離の問題から、必要な水素ガスの搭載量が多くなり、タンク10の本数も自ずと増える。上記のような従来の乗用車に使用されている高度なセンシングのシステムでは、タンク10のそれぞれに対して加速度センサを設置する必要があるため、加速度センサの数が多過ぎ、多大な新規開発の労力及びコストが必要となる。
【0032】
一方、本実施形態によれば、燃料電池自動車100の前後方向に延在しつつ燃料電池自動車100の左右方向に互いに離間して配置された一対のサイドメンバ3と、サイドメンバ3よりも燃料電池自動車100の左右方向の外側に配置され、水素ガスを貯蔵するタンク10とを備えた水素ガス漏洩防止装置1において、タンク10の水素ガスが流通する配管20よりも燃料電池自動車100の左右方向の外側に配置された衝突検知センサ40によって燃料電池自動車100の衝突が検出されたときに、遮断弁50によりタンク10から配管20への水素ガスの流通が遮断される。
【0033】
つまり、本実施形態では、水素ガスが最も漏れやすい配管20に外力が入力される前に水素ガスの流通を遮断するために、配管20よりも燃料電池自動車100の左右方向の外側に衝突検知センサ40が配置される。そのため、サイドメンバ3よりも燃料電池自動車100の左右方向の外側に水素ガスを貯蔵するタンク10が配置されている燃料電池自動車100において、衝突時に不要な水素ガスの遮断を低減しつつ水素ガスの漏洩を低減できる。
【0034】
ここで、衝突検知センサ40の閾値は仕様上の都合で変更不可能である場合があるため、本実施形態では、衝突検知センサ40への入力を衝突検知センサ40の周辺の構造により調整することでも、水素ガスの流通を遮断するべき衝突の被害の度合が調整される。
【0035】
衝突物200が比較的に低い速度で衝突し、衝突時に配管20の損傷が生じず、燃料電池自動車100が走行可能な程度の衝突を軽度の衝突とする。軽度の衝突では、水素ガスの流通を遮断すると、燃料電池自動車100のユーザ及び燃料電池自動車100の周囲の交通に影響を与える。そのため、軽度の衝突では、衝突検知センサ40は閾値を超える値を検出せず、燃料電池自動車100の衝突を検知しないことが重要である。
【0036】
一方、例えば、衝突時に配管20の損傷が生じ、水素ガスの漏洩が生じる程度の衝突を重度の衝突とする。重度の衝突では、水素ガスの漏洩を防ぐために、タンク10から配管20への水素ガスの流通の遮断が必要である。そのため、重度の衝突では、衝突検知センサ40は閾値を超える値を検出し、燃料電池自動車100の衝突を検知することが重要である。
【0037】
本実施形態によれば、衝突検知センサ40よりも燃料電池自動車100の左右方向の外側に配置された塑性変形部材60が外力に応じて塑性変形する。このため、図4(A)及び図4(B)に示されるように、衝突物200のよる衝突時において、塑性変形部材60の塑性変形が小さい軽度の衝突時には、塑性変形部材60よりも燃料電池自動車100の左右方向の内側に配置された衝突検知センサ40は閾値を超える値を検出せず、遮断弁50はタンク10から配管20への水素ガスの流通を遮断しないため、軽度の衝突時に不要な水素ガスの遮断を低減できる。
【0038】
つまり、上記のように、衝突時に配管20の損傷が生じず、燃料電池自動車100が走行可能な軽度の衝突時には、塑性変形部材60が局部的に折れることのないような強度に塑性変形部材60の強度は調整されているため、衝突検知センサ40は閾値を超える値を検出せず、水素ガスの流通は遮断されず、燃料電池自動車100は走行できるため、燃料電池自動車100は路肩等に安全に退避し、燃料電池自動車100のユーザ及び燃料電池自動車100の周囲の交通への影響を最小限に抑えることが可能になる。
【0039】
一方、図4(C)及び図4(D)に示されるように、塑性変形部材60の塑性変形が大きい重度の衝突時には、塑性変形部材60よりも燃料電池自動車100の左右方向の内側に配置された衝突検知センサ40は大きく塑性変形した塑性変形部材60を介して閾値を超える値を検出し、遮断弁50はタンク10から配管20への水素ガスの流通を遮断するため、重度の衝突時に水素ガスの漏洩を低減できる。
【0040】
つまり、上記のように、衝突時に配管20の損傷が生じ、水素ガスの漏洩が生じる重度の衝突時には、塑性変形部材60が衝突検知センサ40を押す程度の狙いの位置で塑性変形するような強度に塑性変形部材60の強度は調整されているため、塑性変形部材60が狙いの位置で塑性変形することで衝突検知センサ40は塑性変形部材60に直接に押されることになる。
【0041】
そのため、衝突検知センサ40の検出した値が増加し、衝突検知センサ40の検出した値が閾値を超えたときに衝突が検知され、配管20が損傷を受ける前に、遮断弁50はタンク10から配管20への水素ガスの流通の遮断を開始する。そのため、仮にその後の衝突が進行し、配管20に損傷があったとしても、水素ガスの漏洩は最小限に留まり、燃料電池自動車100のユーザ及び燃料電池自動車100の周囲の交通への影響を最小限に抑えることが可能になる。
【0042】
また、本実施形態によれば、塑性変形部材60は、タンク10を支持するタンク支持部材30に比べて小さい外力により塑性変形するため、重度の衝突時にタンク10を支持するタンク支持部材30が変形して配管20が損傷する前に、塑性変形部材60が塑性変形し、衝突検知センサ40は塑性変形した塑性変形部材60を介して閾値を超える値を検出し、遮断弁50はタンク10から配管20への水素ガスの流通を遮断するため、水素ガスの漏洩をより効果的に低減できる。
【0043】
また、本実施形態によれば、遮断弁50は、タンク10の水素ガスの流出口11と配管20との連結部に配置されているため、衝突時の配管20の損傷の影響を低減でき、水素ガスの漏洩をさらに低減できる。以上の本実施形態の水素ガス漏洩防止装置1は、タンク10の数が多くても、比較的に少ない衝突検知センサ40により単純な構成で実現でき、比較的に少ない労力及びコストで実現できる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、タンク10の配置及び個数、配管20の配置及び形状、並びに塑性変形部材60の形状及び材質は、適宜変更される。
【符号の説明】
【0045】
1…水素ガス漏洩防止装置、2…ラダーフレーム、3…サイドメンバ、4…クロスメンバ、10,10´…タンク、11…流出口、20…配管、30…タンク支持部材、31…ネックマウント部、40…衝突検知センサ、50…遮断弁、60…塑性変形部材、100…燃料電池自動車、200…衝突物。
図1
図2
図3
図4