(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140698
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】乾燥システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
F26B 3/14 20060101AFI20230928BHJP
F26B 17/20 20060101ALI20230928BHJP
F26B 21/12 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F26B3/14
F26B17/20 B
F26B21/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046672
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳身
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA07
3L113AB02
3L113AC05
3L113AC35
3L113AC45
3L113AC46
3L113AC48
3L113AC49
3L113AC50
3L113AC58
3L113AC63
3L113AC67
3L113BA37
3L113CA02
3L113CA03
3L113CB29
3L113DA02
3L113DA09
(57)【要約】
【課題】供給された蒸気を用いて被乾燥物を乾燥する乾燥機備えた乾燥システムおよびその制御方法に関し、過乾燥の発生を抑えることができる。
【解決手段】供給された蒸気を用いて被乾燥物を乾燥する乾燥機1と、単位時間当たりの乾燥用蒸気の供給量であるハイカット流量が設定され、乾燥機1に供給する乾燥用蒸気の流量をハイカット流量未満に抑える流量調整部71と、被乾燥物の水分及び投入量に関する被乾燥物情報(被乾燥物水分W1)を取得する被乾燥物情報取得部43,6と、乾燥機1で乾燥された乾燥物の水分又は温度に関する乾燥物情報(乾燥物水分W2)を取得する乾燥物情報取得部52,6と、被乾燥物情報および乾燥物情報に基づいてハイカット流量を算出し、算出したハイカット流量を流量調整部71に設定する制御部6とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された蒸気を用いて被乾燥物を乾燥する乾燥機と、
単位時間当たりの蒸気の供給量であるハイカット流量が設定され、前記乾燥機に供給する蒸気の流量を該ハイカット流量未満に抑える流量調整部と、
被乾燥物の水分及び投入量に関する被乾燥物情報を取得する被乾燥物情報取得部と、
前記乾燥機で乾燥された乾燥物の水分又は温度に関する乾燥物情報を取得する乾燥物情報取得部と、
前記被乾燥物情報および前記乾燥物情報に基づいて前記ハイカット流量を算出し、算出した該ハイカット流量を前記流量調整部に設定する制御部とを備えたことを特徴とする乾燥システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記乾燥物情報が前記乾燥機の乾燥能力の上昇を表す情報であった場合には、前記流量調整部に設定している前記ハイカット流量よりも低いハイカット流量を算出し、該乾燥物情報が該乾燥能力の低下を表す情報であった場合には、該流量調整部に設定している該ハイカット流量よりも高いハイカット流量を算出し、算出した該ハイカット流量を該流量調整部に設定するものであることを特徴とする請求項1記載の乾燥システム。
【請求項3】
前記乾燥機は、被乾燥物を攪拌する攪拌駆動を行うものであり、
前記制御部は、前記攪拌駆動の駆動速度も制御するものでもあって、前記乾燥物情報が前記乾燥能力の上昇を表す情報であった場合には、該駆動速度を低下させ、該乾燥物情報が該乾燥能力の低下を表す情報であった場合には、該駆動速度を上昇させるものであることを特徴とする請求項2記載の乾燥システム。
【請求項4】
供給された蒸気を用いて被乾燥物を乾燥する乾燥機と、単位時間当たりの蒸気の供給量であるハイカット流量が設定され、該乾燥機に供給する蒸気の流量を該ハイカット流量未満に抑える流量調整部と、被乾燥物の水分及び投入量に関する被乾燥物情報を取得する被乾燥物情報取得部と、該乾燥機で乾燥された乾燥物の水分又は温度に関する乾燥物情報を取得する乾燥物情報取得部とを備えた乾燥システムの制御方法であって、
前記被乾燥物情報取得部で前記被乾燥物情報を取得し前記乾燥物情報取得部で前記乾燥物情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記被乾燥物情報および前記乾燥物情報に基づいて前記ハイカット流量を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出した前記ハイカット流量を前記流量調整部に設定する設定ステップとを有することを特徴とする乾燥システムの制御方法。
【請求項5】
前記算出ステップは、前記乾燥物情報が前記乾燥機の乾燥能力の上昇を表す情報であった場合には、前記流量調整部に設定している前記ハイカット流量よりも低いハイカット流量を算出し、該乾燥物情報が該乾燥能力の低下を表す情報であった場合には、該流量調整部に設定している該ハイカット流量よりも高いハイカット流量を算出するステップであることを特徴とする請求項4記載の乾燥システムの制御方法。
【請求項6】
前記乾燥機が被乾燥物を攪拌する攪拌駆動を制御する攪拌制御ステップを有し、
前記攪拌制御ステップは、前記乾燥物情報が前記乾燥能力の上昇を表す情報であった場合には、前記攪拌駆動の駆動速度を低下させ、該乾燥物情報が該乾燥能力の低下を表す情報であった場合には、該駆動速度を上昇させるステップであることを特徴とする請求項5記載の乾燥システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給された蒸気を用いて被乾燥物を乾燥する乾燥機備えた乾燥システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気式伝導伝熱乾燥機では、投入する被乾燥物の水分、投入量、無機分量、油分等の物性により、乾燥機の乾燥能力(総括伝熱係数)が変動する。一定の投入量で乾燥後の乾燥物の水分が目標水分になるように運転していても、上記物性が変化することで乾燥能力が上昇する場合がある。乾燥能力が上昇すると、伝熱面で熱交換され、熱媒体の蒸気がドレン化する。その結果、過乾燥となって、乾燥物の水分は、減率乾燥の領域まで下がり続けてしまい、エネルギーコスト的にも好ましくない。
【0003】
特許文献1では、投入する被乾燥物の水分、投入量等を測定し、供給する蒸気の量を求め、供給する蒸気の流量を調整する流量調整弁を制御することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、投入する被乾燥物の測定値だけで流量調整弁を制御しても過乾燥の発生を抑えることができないのが実情である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、過乾燥の発生を抑えることができる乾燥システムおよびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明の乾燥システムは、
供給された蒸気を用いて被乾燥物を乾燥する乾燥機と、
単位時間当たりの蒸気の供給量であるハイカット流量が設定され、前記乾燥機に供給する蒸気の流量を該ハイカット流量未満に抑える流量調整部と、
被乾燥物の水分及び投入量に関する被乾燥物情報を取得する被乾燥物情報取得部と、
前記乾燥機で乾燥された乾燥物の水分又は温度に関する乾燥物情報を取得する乾燥物情報取得部と、
前記被乾燥物情報および前記乾燥物情報に基づいて前記ハイカット流量を算出し、算出した該ハイカット流量を前記流量調整部に設定する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の乾燥システムによれば、前記流量調整部に前記ハイカット流量が自動的に設定されるため、蒸気が過剰に供給されることが常になくなり、過乾燥の発生を抑えることができる。
【0009】
なお、前記乾燥物情報取得部は、乾燥物の温度(品温)又は水分を測定するものである。一方、前記被乾燥物情報取得部は、被乾燥物の水分及び投入量を測定するものであってもよいし、測定するのではなく、前処理工程等から送信されてきたり、オペレータが入力した被乾燥物情報を取得するものであってもよい。
【0010】
前記乾燥機としては、蒸気式伝導伝熱乾燥機があげられ、被乾燥物が投入される容器の外側の例えばジャケット部に蒸気が供給される乾燥機であってもよいし、該容器の内側の伝熱部材に蒸気が供給される乾燥機であってもよいし、両者が併存する乾燥機であってもよい。
【0011】
前記乾燥物情報が、乾燥物の温度(品温)の測定値であった場合には、前記制御部は、その測定値から制御部内に設定された乾燥物の温度とその乾燥物の水分との相関データを利用して水分を求め、前記ハイカット流量を算出する。
【0012】
また、
前記制御部は、前記乾燥物情報が前記乾燥機の乾燥能力の上昇を表す情報であった場合には、前記流量調整部に設定している前記ハイカット流量よりも低いハイカット流量を算出し、該乾燥物情報が該乾燥能力の低下を表す情報であった場合には、該流量調整部に設定している該ハイカット流量よりも高いハイカット流量を算出し、算出した該ハイカット流量を該流量調整部に設定するものであることを特徴としてもよい。
【0013】
こうすることで、前記流量調整部における前記ハイカット流量は、常に乾燥運転に適したハイカット流量に更新され、前記乾燥機の実際の乾燥能力とのタイムラグが縮まり、過乾燥の発生をより抑えることができる。
【0014】
なお、前記乾燥物情報における前記乾燥能力の上昇を表す情報とは、乾燥物の水分が低下したことを表す情報であり、反対に、該乾燥能力の低下を表す情報とは、乾燥物の水分が上昇したことを表す情報である。
【0015】
また、
前記乾燥機は、被乾燥物を攪拌する攪拌駆動を行うものであり、
前記制御部は、前記攪拌駆動の駆動速度も制御するものでもあって、前記乾燥物情報が前記乾燥能力の上昇を表す情報であった場合には、該駆動速度を低下させ、該乾燥物情報が該乾燥能力の低下を表す情報であった場合には、該駆動速度を上昇させるものであることを特徴としてもよい。
【0016】
前記駆動速度が低下すれば乾燥効率も低下し、該駆動速度が上昇すれば乾燥効率も上昇する。このため、前記駆動速度も制御することで、過乾燥の発生を一層抑えることができる。
【0017】
上記目的を解決する本発明の乾燥システムの制御方法は、
供給された蒸気を用いて被乾燥物を乾燥する乾燥機と、単位時間当たりの蒸気の供給量であるハイカット流量が設定され、該乾燥機に供給する蒸気の流量を該ハイカット流量未満に抑える流量調整部と、被乾燥物の水分及び投入量に関する被乾燥物情報を取得する被乾燥物情報取得部と、該乾燥機で乾燥された乾燥物の水分又は温度に関する乾燥物情報を取得する乾燥物情報取得部とを備えた乾燥システムの制御方法であって、
前記被乾燥物情報取得部で前記被乾燥物情報を取得し前記乾燥物情報取得部で前記乾燥物情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記被乾燥物情報および前記乾燥物情報に基づいて前記ハイカット流量を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出した前記ハイカット流量を前記流量調整部に設定する設定ステップとを有することを特徴とする。
【0018】
本発明の乾燥システムの制御方法によれば、前記設定ステップによって、前記流量調整部に前記ハイカット流量が自動的に設定されるため、蒸気が過剰に供給されることが常になくなり、過乾燥の発生を抑えることができる。
【0019】
また、
前記算出ステップは、前記乾燥物情報が前記乾燥機の乾燥能力の上昇を表す情報であった場合には、前記流量調整部に設定している前記ハイカット流量よりも低いハイカット流量を算出し、該乾燥物情報が該乾燥能力の低下を表す情報であった場合には、該流量調整部に設定している該ハイカット流量よりも高いハイカット流量を算出するステップであることを特徴としてもよい。
【0020】
この算出ステップによって、前記流量調整部における前記ハイカット流量は、常に乾燥運転に適したハイカット流量に更新され、前記乾燥機の実際の乾燥能力とのタイムラグが縮まり、過乾燥の発生をより抑えることができる。
【0021】
また、
前記乾燥機が被乾燥物を攪拌する攪拌駆動を制御する攪拌制御ステップを有し、
前記攪拌制御ステップは、前記乾燥物情報が前記乾燥能力の上昇を表す情報であった場合には、前記攪拌駆動の駆動速度を低下させ、該乾燥物情報が該乾燥能力の低下を表す情報であった場合には、該駆動速度を上昇させるステップであることを特徴としてもよい。
【0022】
前記攪拌制御ステップは、詳しくは後述するハイカット流量制御の次のステップとして実行されてもよいし、ハイカット流量制御と並行して、同じタイミングでステップを開始してもよい。
【0023】
前記攪拌制御ステップによって、前記駆動速度も制御され、過乾燥の発生を一層抑えることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、過乾燥の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態の乾燥システムの系統図である。
【
図2】
図1に示す乾燥システムの制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて、本発明に係る乾燥システムについて詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態の乾燥システムの系統図である。
【0028】
本実施形態の乾燥システムD1では、乾燥機1と、集塵機2と、熱交換器3と、被乾燥物投入設備4と、乾燥物排出設備5と、制御部6を有する。
【0029】
図1に示す乾燥機1は、伝導伝熱型乾燥機であって、より具体的には、被乾燥物を連続処理できる連続式伝導伝熱乾燥機である。この乾燥機1は、乾燥室11と、乾燥室11内に配置された多管式加熱管12を有する。乾燥室11は、略円形あるいは略楕円形の横断面を有する中空状のものであり、不図示の機枠等によって水平方向に延在した状態で支持されている。以下、乾燥室11が延在する方向を、延在方向と称することがある。乾燥室11には、投入口111、排出口112、キャリアガス口113および排気口114が設けられている。
【0030】
投入口111は、汚泥等の被乾燥物を投入する口であり、
図1に示す乾燥室11における左側寄りであって、例えば、乾燥室11の上端部分に設けられている。この投入口111に向けて被乾燥物を搬送する設備が被乾燥物投入設備4になる。被乾燥物投入設備4は、ホッパ40と、投入側ベルトコンベヤ41と、質量計42と、投入側水分計43を有する。ホッパ40は、被乾燥物を投入側ベルトコンベヤ41の上に供給するものであり、供給量は制御部6によって制御されている。投入側ベルトコンベヤ41の上に供給された被乾燥物は、投入側ベルトコンベヤ41によって投入口111近傍まで搬送される。質量計42は、投入側ベルトコンベヤ41のある箇所で被乾燥物の質量を計測するものである。なお、被乾燥物の制御された質量の供給を行いつつ、その質量と水分を計測または換算できる別の態様を採用することができる。この質量計42の計測結果は、制御部6に送信される。投入側水分計43は、投入側ベルトコンベヤ41で搬送されている被乾燥物に上方から赤外光を照射し反射光から水分(%W.B.)を算出するものである。算出された水分の値は、制御部6に送信される。
【0031】
排出口112は、投入口111から投入された被乾燥物が、乾燥室11内に滞留している間に、乾燥処理が施されることによって乾燥し、乾燥物となって排出される開口である。この排出口112は、
図1に示す乾燥室11における右側寄りであって、乾燥室11の底よりも高い位置に設けられている。投入口111から投入された被乾燥物は、
図1に示す乾燥室11内を左側から右側に移動し、やがて排出口112から排出される。この排出口112から排出された乾燥物を搬送する設備が乾燥物排出設備5になる。乾燥物排出設備5は、排出側ベルトコンベヤ51と、排出側水分計52を有する。乾燥物は、排出口112から排出側ベルトコンベヤ51の上に排出され、排出側ベルトコンベヤ51によって次工程へ向けて搬送される。なお、乾燥物の水分が計測できるのであればスクリュコンベヤやフライトコンベヤを乾燥物の搬送に利用できる。排出側水分計52は、排出側ベルトコンベヤ51で搬送されている被乾燥物に上方から赤外光を照射し反射光から水分(%W.B.)を算出するものである。排出側水分計52で算出された水分の値も、制御部6に送信される。
【0032】
キャリアガス口113は、キャリアガスを乾燥室11内に導入する口である。キャリアガスとして加熱外気や過熱蒸気などが用いられる。
【0033】
排気口114は、乾燥室11内で被乾燥物から蒸発した蒸気を、キャリアガス口113から導入されたキャリアガスとともに乾燥室11外に排出する口である。以下、キャリアガスと被乾燥物から蒸発した蒸気を合わせて回収蒸気と称する。排気口114には、集塵機2が接続されている。集塵機2にはバグフィルタ21が設けられており、乾燥室11からの回収蒸気は、集塵機2のバグフィルタ21により微粉の除去等が行われた後、熱交換器3まで送られる。熱交換器3には、冷却水が供給されており、熱交換器3まで送られてきた回収蒸気は熱交換され、大半が凝縮液になり、残りは排気ファン31により排気される。なお、集塵機2は乾燥室11とダクトで連通させて別置でも構わず、また、回収蒸気における除塵と除湿が行える別の態様を採用することができ、除塵と除湿に加えて脱臭処理を採用することもできる。
【0034】
多管式加熱管12は、延在方向に沿った回転軸を中心に乾燥室11内に回転自在に配置されたものであり、回転軸部分には中空の軸部材121が設けられている。多管式加熱管12は、軸部材121がモータ120によって回転させられることで回転軸を中心に回転するものである。また、多管式加熱管12は、軸部材121を中心にこの軸部材121に沿って配置された複数の加熱管122aから構成されている。これら複数の加熱管122aは、例えば、回転軸を中心にして幾つかの同心円状に配列されており、同心円間あるいは同心円上に配列された加熱管122aは、互いに所定の間隔をあけて多数配置されている。複数の加熱管122aの延在方向両端部分それぞれには、加熱管122aと連通する缶板と鏡板から成る半球状のヘッダー123が設けられている。この両端部分のヘッダー123の間には、図示省略したが、ヘッダー123の回転方向に所定の間隔をあけて複数のアングル鋼材が架け渡されている。これらアングル鋼材には、延在方向に所定の間隔をあけて、不図示のリフタと送り羽根がそれぞれ複数設けられている。リフタは、多管式加熱管12が回転すると、乾燥室11内に滞留する被乾燥物を掻き上げ、結果として被乾燥物を攪拌していることになる攪拌部材である。送り羽根は、多管式加熱管12が回転すると、乾燥室11内に滞留する被乾燥物を排出口112側に送るものである。
【0035】
また、本実施形態の乾燥システムD1は、軸部材121の投入口側に、流量調整弁71と流量計(フローインジケータ)72を備えている。ヘッダー123内には乾燥用蒸気が供給されるが、この乾燥用蒸気の供給流路に、流量調整弁71と流量計72が設けられている。流量調整弁71にはハイカット流量を設定することができ、流量調整弁71は、設定されたハイカット流量以上の乾燥用蒸気が下流側へ流れることを阻止するものである。すなわち、流量調整弁71は、乾燥機1に供給する乾燥用蒸気の流量をハイカット流量未満に抑える流量調整部の一例に相当する。制御部6は、流量調整弁71を通過する乾燥蒸気の量がハイカット流量に達しているか否かを監視するものである。また、制御部6はハイカット流量の設定値が設定されるものであり、本設定値はオペレータが入力することで制御部6は本設定値を取得し、あるいは後述する制御部6内のシーケンスにより自動的に取得する。流量調整弁71には、制御部6から、設定されたハイカット流量となるように制御信号が送られる。流量計72は、流量調整弁71よりも下流に設けられ、ヘッダー123内に供給される乾燥用蒸気の実際の流量を測定する。この流量計72の測定結果が制御部6に送信され、制御部6内でハイカット流量の設定値と比較される。
【0036】
本実施形態では、飽和蒸気が乾燥用蒸気として各加熱管122a内に送られる態様を採用しているため、各加熱管122aは、延在方向において略一定の温度に加熱された状態が保たれ、伝熱部材の一例に相当する。各加熱管122aに供給された乾燥用蒸気が凝縮して生じたドレンは、排出口側のヘッダー123内に流れ込み、その後、乾燥機1外へ排出される。
【0037】
図2は、
図1に示す乾燥システムの制御方法を示すフローチャートである。
【0038】
この制御方法は、
図1に示す制御部6によって実行され、ハイカット流量制御と攪拌制御に大別することができる。
【0039】
まず、排出側水分計52から乾燥物の水分の値が送信されてくるとハイカット流量制御が開始される。ハイカット流量制御の取得ステップ(ステップS11)では、制御部6は、排出側水分計52で計測された乾燥物の水分の値を取得する。排出側水分計52は、所定時間が経過する度に乾燥物の水分の値を制御部6に送信する。この結果、制御部6は、乾燥物の水分の値として一定時間の平均値を得る。以下、乾燥物の水分の値の一定時間の平均値を乾燥物水分W2(%W.B.)と称する。制御部6と排出側水分計52が乾燥物情報取得部の一例に相当する。また、制御部6は、投入側水分計43で計測された被乾燥物の水分の値も取得する。投入側水分計43も、所定時間が経過する度に被乾燥物の水分の値を制御部6に送信する。この結果、制御部6は、被乾燥物の水分の値として一定時間の平均値も得る。以下、被乾燥物の水分の値の一定時間の平均値を被乾燥物水分W1(%W.B.)と称する。制御部6と投入側水分計43が被乾燥物情報取得部の一例に相当する。さらに、制御部6は、投入側の質量計42の計測結果も取得し、単位時間当りの被乾燥物の質量である投入量F(kg/h)も得る。なお、制御部6は、ここで得られた投入量Fに基づいて、ホッパ40からの供給量を制御してもよい。また、ホッパ40の供給量が設定値通りに正確に制御されている場合には、被乾燥物の投入量Fは、質量計42の計測結果に基づく値とせず、設定値を予め入力しておき、入力された設定値を用いてもよい。加えて、制御部6には、乾燥物の目標水分の値が入力され、制御部6は、目標水分W0(%W.B.)も取得する。
【0040】
続く、ハイカット流量制御の算出ステップ(ステップS12)では、先の取得ステップ(ステップS11)で取得した、乾燥物水分W2(%W.B.)、被乾燥物水分W1(%W.B.)、被乾燥物の投入量F(kg/h)、および目標水分W0(%W.B.)に基づいて、乾燥物を目標水分W0(%W.B.)にするための単位時間当たりの水分蒸発量E(kg/h)を算出する。例えば、被乾燥物の投入量Fが1000kg/hであって被乾燥物水分W1が80%W.B.であった場合、被乾燥物の水分質量は800kg/hになり、乾物質量は200kg/hになる。一方、乾燥物水分W2が20%W.B.であった場合、乾燥物の水分質量は50kg/hになる。ここで、目標水分W0が、実際の乾燥物水分W2と同じ20%W.B.であった場合、乾燥物を目標水分W0にするための単位時間当たりの水分蒸発量Eは、800kg/h-50kg/h=750kg/hになる。
【0041】
次いで、乾燥物を目標水分W0にするための単位時間当たりの必要蒸気量S(kg/h)を
図1に示す乾燥機1の効率実績値Dを用いて求める。効率実績値Dは、予め実験的に求めておいた値であり、
図1に示す乾燥機1が、被乾燥物中の水分を蒸発させるのに必要な蒸気量を算出するために利用する係数である。この効率実績値Dは、厳密には、投入量F(kg/h)や被乾燥物の種類等によっても変わるが、おおよそ1.05以上1.55以下の範囲に収まることから、ここでは、効率実績値Dの値として1.3を用いる。効率実績値Dの値は、制御部6に備えられた不図示の入力手段から変更可能である。効率実績値Dの値は、被乾燥物の性状を見て変更したり、あるいは、別途に性状を検知する手段で性状判定し、その性状に適した過去のデータ(制御部6内に蓄積されているデータの組合せ)を自動で選択し、効率実績値Dの値として適用してもよい。必要蒸気量Sは、先に算出した水分蒸発量Eに効率実績値Dを乗じたものになり、具体的に上記の水分蒸発量Eに、0℃における水の蒸発潜熱/乾燥用蒸気の飽和蒸気圧における蒸発潜熱の値を乗じ、さらに効率実績値Dを乗じることにより必要蒸気量Sが算出される。例えば、水分蒸発量Eが750kg/hであり、0℃における水の蒸発潜熱が2498kJ/kg、乾燥用蒸気の飽和蒸気圧(0.5MPaG)における蒸発潜熱が2085kJ/kg、効率実績値Dが1.3であれば、必要蒸気量Sは1168kg/hと算出される。
【0042】
以上の説明では、上述の蒸発潜熱の比と水分蒸発量E及び効率実績値Dを用いて必要蒸気量Sを算出したが、別の算出方法として、予めの実験で効率実績値を求めるに際し、実際に乾燥に供給された蒸気量を水分蒸発量Eで除して効率実績値D’を求め、これを必要蒸気量Sの計算に採用することでも構わない。すなわち必要蒸気量Sは効率実績値D’に水分蒸発量Eを乗じて求める方法である。効率実績値D’を用いることにより、蒸発潜熱の値をデータベースとして常備を要せず、効率実績値D’と水分蒸発量Eの2項による簡便な計算で必要蒸気量Sを求めることが可能となる。もちろん効率実績値Dを用いればより正確な必要蒸気量Sを求めることができるので、それぞれに利点がある。
【0043】
さらに、制御部6は、この算出ステップ(ステップS12)でハイカット流量H(ハイカット流量)を算出する。ハイカット流量Hは、必要蒸気量Sに安全率(例えば、110%以上130%以下の値)を乗じた値になる。ここでの安全率も、制御部6に備えられた不図示の入力手段から変更可能である。安全率の値は通常は上記入力手段から初期設定値として入力するが、被乾燥物の性状を見て変更したり、あるいは、別途に性状を検知する手段で性状判定し、その性状に適した過去のデータ(制御部6内に蓄積されているデータの組合せ)を自動で選択し適用するようにしてもよい。必要蒸気量Sが1168kg/hと算出された先の例で、安全率として110%を用いた場合には、ハイカット流量Hは、1168kg/h×110%=1285kg/hになる。加えて、安全率には補正範囲(例えば、±5%)が設けられており、この補正範囲内でハイカット流量Hが調整される。この補正範囲の値も、不図示の入力手段から変更可能である。補正範囲の値も、被乾燥物の性状を見て変更したり、あるいは、別途に性状を検知する手段で性状判定し、その性状に適した過去のデータ(制御部6内に蓄積されているデータの組合せ)を自動で選択し、補正範囲の値として適用してもよい。乾燥物水分W2が、目標水分W0を一定期間にわたって下回った場合には、ハイカット流量Hを、必要蒸気量Sに(安全率-補正値)を乗じた値に補正する。反対に、乾燥物水分W2が、目標水分W0を一定期間にわたって上回った場合には、ハイカット流量Hを、必要蒸気量Sに(安全率+補正値)を乗じた値に補正する。必要蒸気量Sが1168kg/hと算出された先の例で補正値を±5%にした場合、ハイカット流量Hは、乾燥物水分W2が目標水分W0を一定期間にわたって下回ると1168kg/h×105%=1226kg/hに減少した値に補正され、乾燥物水分W2が目標水分W0を一定期間にわたって上回ると1168kg/h×115%=1343kg/hに増加した値に補正される。
【0044】
ハイカット流量制御の設定ステップS13では、制御部6は、流量調整弁71の開度を設定する制御信号を流量調整弁71に送信する。この制御信号は、流量調整弁71の開度を、算出したハイカット流量H以下の流量しか乾燥用蒸気が流れない開度に設定する信号である。
【0045】
続いて、攪拌制御が開始される。この攪拌制御では、多管式加熱管12の回転速度を制御し、不図示のリフタによる被乾燥物の攪拌効率を調整する。攪拌制御の取得ステップ(ステップS21)では、上述のハイカット流量制御における取得ステップS11と同様に、制御部6は、排出側水分計52で計測された乾燥物の水分の値を取得する。続く攪拌制御の算出ステップ(ステップS22)では、乾燥物水分W2が、目標水分W0を一定期間にわたって下回った場合には、制御部6は多管式加熱管を回転させるモータ120の回転速度を初期設定値から低下させる演算を行う。反対に、乾燥物水分W2が、目標水分W0を一定期間にわたって上回った場合には、モータ120の回転速度を初期設定値から上昇させる演算を行う。初期設定値は制御部6に備えられた不図示の入力手段で入力される。モータ120の回転速度を低下または上昇させる変更割合の値も、同じく制御部6に備えられた入力手段で入力される。この変更割合の値として、例えば±10%を入力すれば、回転速度を10%低下させる、または10%上昇させる演算となる。回転速度の初期設定値や変更割合の値も、被乾燥物の性状を見て変更したり、あるいは、別途に性状を検知する手段で性状判定し、その性状に適した過去のデータ(制御部6内に蓄積されているデータの組合せ)を自動で選択し適用するようにしてもよい。
【0046】
攪拌制御の設定ステップ(ステップS23)では、制御部6から算出ステップS12で演算された回転速度(すなわち駆動速度の一例に相当する)に関る信号に基づき、例えば具体的にはモータ120の回転速度を制御するインバータの設定周波数が変更され、これによりモータ120の回転速度が変更される。モータ120の回転速度が下がれば多管式加熱管12の回転速度が低下して撹拌効率が下がって乾燥効率も下がり、乾燥物水分W2が上昇する。逆にモータ120の回転速度が上がれば多管式加熱管12の回転速度が上昇して撹拌効率が上がって乾燥効率も上がり、乾燥物水分W2が低下する。なお、乾燥物水分W2が目標水分W0を一定期間にわたって下回る、または上回ることがなければ演算は行われず、制御部6による回転速度の変更は行われない。
【0047】
なお、この攪拌制御は、
図2に示すようにハイカット流量制御の次の制御として実行されてもよいが、ハイカット流量制御と並行して実行されてもよい。すなわち、ステップS21はステップS11と同じタイミングで開始され、ステップS22はステップS12と同じタイミングで開始され、ステップS23はステップS13と同じタイミングで開始されてもよい。
【0048】
ステップS31では、乾燥機1における乾燥運転の終了の条件を満たしているか否かを判断し、満たしていれば(
図2におけるYESの場合は)乾燥運転を終了し、満たしていなければ(
図2におけるNOの場合は)乾燥運転が継続され、一定時間ごとにステップS11~S13及びステップS21~S23の制御が繰り返されることになる。
【0049】
なお、初期設定値として入力した安全率や回転速度は、乾燥物水分W2が目標水分W0を一定時間にわたって上回る、または下回る場合、ステップS11~S13及びステップS21~S23の制御により新たな安全率や回転速度に自動的に変更され、その後の制御の安全率や回転速度、そしてステップS12やステップS22に利用され、これが
図2に示すように繰り返されることになる。もちろん被乾燥物の投入量Fと被乾燥物水分W1の計測値に変化があれば、これらもステップS12に反映される。また、効率実績値D、目標水分W0、あるいは乾燥用蒸気の飽和蒸気圧が、乾燥運転に適していないとオペレータが判断した際は、乾燥運転途中においても制御部6の入力手段を用いて新たな設定値を入力してこれがステップS12に反映されることになる。
【0050】
なお、本実施形態では、投入側水分計43を用いてオンラインで被乾燥物の水分を測定したが、被乾燥物の水分は、投入側ベルトコンベヤ41よりも上流工程で測定された値が制御部6に送信されてくることで、制御部6が被乾燥物水分W1を取得する態様であってもよい。
【0051】
また、排出側水分計52を用いてオンラインで乾燥物の水分を測定したが、乾燥物の温度(品温)を測定し、例えば制御部6内に設定された乾燥物の温度とその乾燥物の水分との相関データを利用して品温から水分を求めることもできる。あるいは、水分を相関関係から求めずとも、品温で水分蒸発量E(kg/h)を算出するように演算式を変形することもできる。
【0052】
また、質量計42の計測結果に代えて、ホッパ40に設けられた搬送スクリュの回転数から投入量Fを算出することもできる。あるいは、ホッパ40に代えてモーノポンプを設置し、モーノポンプの回転数から投入量Fを算出することもできる。
【0053】
これまでは乾燥物の水分の上限値が重要視されてきたが、有機質の被乾燥物では過乾燥による発火が問題視されるようになってきた。また、乾燥物の用途(例えば、肥料や固形燃料)によっては水分をある程度残しておくことが必要になる。これらのことから、乾燥物の水分は、X%W.B.以下といった下限値を設けないオーダではなく、X%W.B.以下Y%W.B.以上といった下限値が設けられたオーダが出されるようになってきた。本実施形態によれば、下限値の水分もしっかりと維持することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、オペレータが手動で乾燥物水分を測定し、投入量や乾燥用蒸気の圧力や投入タイミングを調整して乾燥物水分を調整する場合に比べて、常時安定して過乾燥の発生を抑えることができ、オペレータの作業も軽減される。また、投入量が変化した場合でも、乾燥物水分が安定する。さらに、被乾燥物の物性が変化(例えば、有機質から無機質への変化、無機質から有機質への変化)した場合でも、乾燥物水分が安定する。
【0055】
また、
図1に示す構造の乾燥機1では、投入された被乾燥物と乾燥室内で乾燥されている被乾燥物とが混ざって乾燥室内平均水分が決まる。乾燥室内平均水分が高すぎると各加熱管122aに被乾燥物が付着しやすくなってしまう。そこで、乾燥室内平均水分を被乾燥物が付着しにくい所定水分以下に抑える必要があり、そうなると、乾燥物の水分を上記所定水分より少し低いだけの値(例えば、5%W.B.)に抑えて排出させる制御が困難になり、乾燥物は上記所定水分を大きく下回った過乾燥の状態で排出されてしまう。しかしながら、本実施形態によれば、乾燥物水分W2を常時監視し、目標水分W0に近付くようにハイカット流量Hを補正するため、乾燥品の水分を上記所定水分より少し低いだけの値に抑えることができる。
【0056】
過乾燥の発生を抑えることで、乾燥室内の異常昇温を防止できる。さらには、乾燥品にある程度の水分を残すことができ、乾燥品の搬送時の粉塵の発生も防止することができる。
【0057】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、前記乾燥機への、前記被乾燥物の単位時間当たりの投入量は、所定の範囲内で一定であってもよいし、可変であってもよい。被乾燥物の投入口は乾燥室11の延在方向に複数個所設け、被処理物をこの複数個所から分散して投入するようにしてもよい。また、水分蒸発量Eの算出では、被乾燥物情報取得部として被乾燥物の水分、乾燥物情報取得部として乾燥物の水分及び乾燥物の時間当り排出される質量を採用して算出してもよい。また、被乾燥物の水分と投入量が安定している場合は、被乾燥物情報取得部の計測機器を省略し、制御部にて水分と投入量をオペレータが入力し、乾燥物情報取得部として乾燥物の水分のみを取得して運用する態様であってもよい。また、
図1に示す乾燥機に代えて、被乾燥物が投入される容器の外側のジャケットに蒸気が供給され容器内で螺旋リボン等の攪拌部材が攪拌を強制的に行う乾燥機(いわゆる間接加熱式攪拌乾燥機)であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
D1 乾燥システム
1 乾燥機
11 乾燥室
111 投入口
112 排出口
113 キャリアガス口
114 排気口
12 多管式加熱管
2 集塵機
3 熱交換器
4 被乾燥物投入設備
41 投入側ベルトコンベヤ
42 質量計
43 投入側水分計
5 乾燥物排出設備
51 排出側ベルトコンベヤ
52 排出側水分計
6 制御部
71 流量調整弁
72 流量計