(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140709
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】負イオン照射装置
(51)【国際特許分類】
G21K 5/04 20060101AFI20230928BHJP
H01J 27/08 20060101ALI20230928BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20230928BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20230928BHJP
G21K 5/00 20060101ALI20230928BHJP
G21K 1/00 20060101ALI20230928BHJP
G21K 1/14 20060101ALI20230928BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G21K5/04 A
H01J27/08
H01J37/08
H01J37/317 Z
G21K5/00 B
G21K5/00 A
G21K1/00 A
G21K1/14
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046683
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】一色 雅仁
【テーマコード(参考)】
2G084
5C101
【Fターム(参考)】
2G084AA12
2G084BB11
2G084CC11
2G084CC32
2G084DD39
2G084FF02
2G084FF27
5C101AA39
5C101CC04
5C101DD03
5C101DD34
5C101FF01
5C101FF09
5C101FF32
5C101FF46
(57)【要約】
【課題】粉粒材料に対する負イオンの照射を可能とする負イオン照射装置を提供する。
【解決手段】負イオン照射装置1は、プラズマを生成するプラズマガン14と、プラズマガン14から生成されるプラズマPを負イオンの原料へ供給可能な空間を有するチャンバ2と、を備える。そのため、チャンバ2内では、プラズマPと負イオンの原料とが反応することにより、負イオンが生成される。ここで、粉粒材料11は、チャンバ2内に配置される容器20に収容される。この容器20は、収容した粉粒材料11への負イオンの照射を可能とする開口21cを有する。従って、チャンバ2内で生成された負イオンは、開口21cを介して、容器20に収容された粉粒材料11に照射される。以上により、粉粒材料11に対する負イオンの照射を可能とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒材料に負イオンを照射する負イオン照射装置であって、
プラズマを生成するプラズマ源と、
前記プラズマ源から生成される前記プラズマを負イオンの原料へ供給可能な空間を有するチャンバと、
前記チャンバ内に配置され、前記粉粒材料を収容可能な容器と、を備え、
前記容器は、収容した前記粉粒材料への前記負イオンの照射を可能とする第1の開口を有する、負イオン照射装置。
【請求項2】
前記容器は気体を通過可能な複数の第2の開口が形成されたフィルタ部を有する、請求項1に記載の負イオン照射装置。
【請求項3】
前記容器は前記第1の開口を有する容器本体部と、前記容器本体の前記第1の開口を覆う蓋部を備え、前記蓋部は前記フィルタ部を有する、請求項2に記載の負イオン照射装置。
【請求項4】
前記容器本体部に前記蓋部を近づけた後、前記チャンバの真空引きを行う、請求項3に記載の負イオン照射装置。
【請求項5】
前記容器は容器本体部を有し、前記容器本体部は多孔性の材料で構成されることで、前記容器本体部が複数の前記第2の開口を有する、請求項2に記載の負イオン照射装置。
【請求項6】
前記チャンバ内を真空に保った状態で、前記粉粒材料を供給する、請求項1~5の何れか一項に記載の負イオン照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負イオン照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、負イオン照射装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。この負イオン照射装置は、チャンバ内へ負イオンの原料となるガスを供給するガス供給部と、チャンバ内において、プラズマを生成することで負イオンを生成する負イオン生成部と、を備えている。負イオン生成部は、プラズマによってチャンバ内で負イオンを生成することで、当該負イオンを対象物へ照射している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、負イオンを照射する対象物は、基板のように所定の大きさを有するもののみならず、粉粒材料のように微細で流動性を有するものである場合もある。従って、粉粒材料へ負イオンを照射可能とすることが求められていた。
【0005】
そこで本発明は、粉粒材料に対する負イオンの照射を可能とする負イオン照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る負イオン照射装置は、粉粒材料に負イオンを照射する負イオン照射装置であって、プラズマを生成するプラズマ源と、プラズマ源から生成されるプラズマを負イオンの原料へ供給可能な空間を有するチャンバと、チャンバ内に配置され、粉粒材料を収容可能な容器と、を備え、容器は、収容した粉粒材料への負イオンの照射を可能とする第1の開口を有する。
【0007】
本発明に係る負イオン照射装置は、プラズマを生成するプラズマ源と、プラズマ源から生成されるプラズマを負イオンの原料へ供給可能な空間を有するチャンバと、を備える。そのため、チャンバ内では、プラズマと負イオンの原料とが反応することにより、負イオンが生成される。ここで、粉粒材料は、チャンバ内に配置される容器に収容される。この容器は、収容した粉粒材料への負イオンの照射を可能とする第1の開口を有する。従って、チャンバ内で生成された負イオンは、第1の開口を介して、容器に収容された粉粒材料に照射される。以上により、粉粒材料に対する負イオンの照射を可能とする。
【0008】
容器は気体を通過可能な複数の第2の開口が形成されたフィルタ部を有してよい。チャンバに対して真空引きやガスパージを行う際、チャンバ内に空気の流れが形成される。容器は、フィルタ部で粉粒材料の舞い上がりを抑制する一方、第2の開口で気体の通過を可能とする。そのため、第2の開口は、真空引きの際には容器の内部の真空引きを可能とし、ガスパージの際は容器の内部へのガスパージを可能とする。
【0009】
容器は第1の開口を有する容器本体部と、容器本体部の第1の開口を覆う蓋部を備え、蓋部はフィルタ部を有してよい。この場合、容器本体部の第1の開口をフィルタ部で覆う状態と、第1の開口からフィルタ部を退避させる状態を、状況に応じて容易に切り替えることができる。
【0010】
容器本体部に蓋部を近づけた後、チャンバの真空引きを行ってよい。この場合、真空引きを行う際は、容器本体部に蓋部を近づけて覆うことで粉粒材料の舞い上がりを抑制することができる。
【0011】
容器は容器本体部を有し、容器本体部は多孔性の材料で構成されることで、容器本体部が複数の第2の開口を有してよい。この場合、容器本体部は、粉粒材料を収容しながら、複数の第2の開口を介して、内部の真空引き等を行うことができる。
【0012】
チャンバ内を真空に保った状態で、粉粒材料を供給してよい。この場合、粉粒材料を繰り返しチャンバ内に供給する際に、毎回チャンバを大気圧に戻す手間を省略することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粉粒材料に対する負イオンの照射を可能とする負イオン照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る負イオン照射装置の構成を示す概略断面図である。
【
図3】負イオン照射装置の動作の手順を示す概略断面図である。
【
図4】負イオン照射装置の動作の手順を示す概略断面図である。
【
図5】負イオン照射装置の動作の手順を示す概略断面図である。
【
図6】負イオン照射装置の動作の手順を示す概略断面図である。
【
図7】負イオン照射装置の動作の手順を示す概略断面図である。
【
図8】変形例に係る負イオン照射装置を示す図である。
【
図9】変形例に係る負イオン照射装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る負イオン照射装置について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る負イオン照射装置の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る負イオン照射装置の構成を示す概略断面図である。なお、説明の便宜上、
図1には、XYZ座標系を示す。X軸方向は、対象物である粉粒材料の厚さ方向である。Y軸方向及びZ軸方向は、X軸方向と直交すると共に互いに直交する方向である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の負イオン照射装置1は、チャンバ2、対象物配置部3、負イオン生成部4、ガス供給部6、真空引き部7、ガスパージ部8、容器20、及び移動機構30と、を備えている。
【0018】
チャンバ2は、粉粒材料11を収納し負イオンの照射処理を行うための部材である。チャンバ2は、内部で負イオンの生成が行われる部材である。チャンバ2は、プラズマガン14から生成されるプラズマを負イオンの原料へ供給可能な空間を有する。チャンバ2は、導電性の材料からなり接地電位に接続されている。
【0019】
チャンバ2は、X軸方向に対向する一対の壁部2a,2bと、Y軸方向に対向する一対の壁部2c,2dと、Z軸方向に対向する一対の壁部(不図示)と、を備える。なお、X軸方向の負側に壁部2aが配置され、正側に壁部2bが配置される。Y軸方向の負側に壁部2cが配置され、正側に壁部2dが配置される。なお、チャンバ2のZ軸方向の正側の壁部は、開閉扉として構成される。
【0020】
対象物配置部3は、負イオンの照射対象物となる粉粒材料11を配置させる。対象物配置部3は、粉粒材料11を収容する容器20の容器本体部21を配置させる。対象物配置部3は、チャンバ2の壁部2aに設けられる。対象物配置部3は、導電性の材料によって構成される。対象物配置部3は、壁部2aに取り付けられて、X軸方向の正側に延びて、上端側で容器本体部21を支持する。対象物配置部3は、負イオンが粉粒材料11に導かれるように、電圧が印加されてよい。
【0021】
負イオン照射の対称となる粉粒材料11として、例えば、シリカ粉末、カーボンブラックなどが採用される。粉粒材料11の粒径は特に限定されないが、後述の蓋部22で容器本体部21を覆わない場合に、真空引きによって粉粒の巻き上げが起こり得る大きさであると、本発明の効果がより顕著となる。従って、粉粒材料11の粒径は、例えば5~20μmであってよい。
【0022】
続いて、負イオン生成部4の構成について詳細に説明する。負イオン生成部4は、チャンバ2内において、プラズマ及び電子を生成し、これによって負イオン及びラジカル等を生成する。負イオン生成部4は、プラズマガン14(プラズマ源)と、陽極16と、を有している。
【0023】
プラズマガン14は、例えば圧力勾配型のプラズマガンであり、その本体部分がチャンバ2の壁部2cに設けられて、チャンバ2の内部空間に接続されている。プラズマガン14は、チャンバ2内でプラズマPを生成する。プラズマガン14において生成されたプラズマPは、プラズマ口からチャンバ2の内部空間へビーム状に出射される。これにより、チャンバ2の内部空間にプラズマPが生成される。なお、
図1は、蓋部22が閉じられた状態であるためプラズマPは生成されず、プラズマPは仮想線で示されている。
【0024】
陽極16は、プラズマガンからのプラズマPを所望の位置へ導く機構である。陽極16は、プラズマPを誘導するための電磁石もしくは磁石を有する機構である。陽極16は、チャンバの壁部2dに設けられて、プラズマガン14とY軸方向に向かい合う位置に配置されている。これにより、プラズマPは、プラズマガン14から出射されてY軸方向の正側へ向かいながらチャンバ2の内部空間で広がった後、収束しながら陽極16へ導かれる。なお、プラズマガン14と陽極16との位置関係は、上述のものに限定されず、負イオンを生成することができる限り、どのような位置関係が採用されてもよい。
【0025】
ガス供給部6は、チャンバ2の外部に配置されている。ガス供給部6は、壁部2dに形成されたガス供給口6aを通し、チャンバ2内へガスを供給する。ガス供給口6aは、負イオン生成部4と対象物配置部3との間に形成される。ここでは、ガス供給口6aは、壁部2dのX軸方向の負側の端部と、陽極16との間の位置に形成される。ただし、ガス供給口6aの位置は、特に限定されない。ガス供給部6は、負イオンの原料となるガスを供給する。ガスとして、例えば、O-などの負イオンの原料となるO2、NH-などの窒化物の負イオンの原料となるNH2、NH4、その他、C-やSi-などの負イオンの原料となるC2H6、SiH4などが採用される。つまり、電子親和力が正である原料が採用されると言える。なお、ガスは、放電を安定されるキャリアガスとしてArなどの希ガスも含む。
【0026】
真空引き部7は、チャンバ2内の真空引きを行うことによって、チャンバ2の内部空間を真空に保つ。真空引き部7は、真空ポンプ7aと、真空引き口7bと、を有する。ここでは、真空引き口7bは、壁部2dのX軸方向の負側の端部と、陽極16との間の位置に形成される。真空引き口7bは、容器本体部21よりもX軸方向の負側に配置されている。ただし、真空引き口7bの位置は、特に限定されない。
【0027】
ガスパージ部8は、チャンバ2内をパージすることで、チャンバ2の内部空間を大気圧まで加圧する。ガスパージ部8は、窒素などをパージガスとして供給する。ここで、ガスパージ部8のパージ口8aは、壁部2cのX軸方向の負側の端部と、プラズマガン14との間の位置に形成される。パージ口8aは、容器本体部21よりもX軸方向の負側に配置されている。ただし、パージ口8aの位置は、特に限定されない。
【0028】
容器20は、チャンバ2内に配置され、粉粒材料11を収容可能な部材である。容器20は、容器本体部21と、蓋部22と、を備える。容器本体部21は、対象物配置部3上に配置される。容器本体部21は、X軸方向の負側においてYZ平面と平行に広がる底壁部21aと、底壁部21aの外周縁からX軸方向の正側へ立ち上がる側壁部21bと、を有する。容器本体部21は、底壁部21a及び側壁部21bで形成される内部空間内に粉粒材料11を収容する。容器本体部21のX軸方向の正側の端部には壁部が設けられておらず、開口21c(第1の開口)が形成されている。開口21cは、負イオン生成部4で負イオンが生成された場合に、粉粒材料11への負イオンの照射を可能とする。開口21cは、負イオンを通過させるための通路となる(
図6参照)。容器本体部21の材質は特に限定されないが、例えば、タングステン、カーボンなどが採用されてよい。
【0029】
蓋部22は、容器本体部21のX軸方向の正側の端部に着脱可能に取り付けられる部材である。蓋部22は、容器本体部21の開口21cを覆う部材である。ここで、容器20は複数の開口23(第2の開口)によって構成されるフィルタ部24を有する。本実施形態では、蓋部22が複数のフィルタ部24を有する。フィルタ部24の複数の開口23は、チャンバ2内の気体が通過可能であって、粉粒材料11を通過させない大きさを有している。複数の開口23の目の大きさは、粉粒材料11の粒子一つ分よりも小さいことが好ましい。そのため、容器本体部21の開口21cを蓋部22で閉じた場合、フィルタ部24は、真空引きの際に容器20内部の空気をチャンバ2の内部空間へ排出し、粉粒材料11がチャンバ2の内部空間に巻き上がることを抑制できる。このようなフィルタ部24の材料として、例えば高融点金属繊維かセラミックなどの繊維状フィルタ材料、タングステン、モリブデンなどの焼結体などが採用されてよい。また、粉粒材料11の粒子の粒径は、例えば5~20μmである。従って、フィルタ部24は、当該粉粒材料11の粒子よりも細かい目の開口23を有する。
【0030】
図2を参照して、容器20の構成についてより詳細に説明する。
図2に示すように、容器本体部21は、円板状の底壁部21aと、円筒状の側壁部21bと、を備える。また、容器本体部21は、円形の開口21cを有する。蓋部22は、円環状のフレーム26と、円板状のフィルタ部24を有する。フレーム26は、容器本体部21と同様な材料で構成される。フレーム26は上面側に、フィルタ部24を保持するための円形の溝部26aを有する。また、フレーム26は、容器本体部21に対しての、フィルタ部24を搭載したフレーム26の位置決めを行う円筒状のストッパ部26bを有する。なお、ストッパ部26bの形状は限定されず、テーパ形状などであってもよい。蓋部22は、ストッパ部26bよりも外周側の下面が側壁部21bの上面と接触することで、容器本体部21の開口21cを塞ぐ。
【0031】
図1に戻り、移動機構30は、蓋部22をチャンバ2内で移動させる機構である。移動機構30は、蓋部22による容器本体部21の開口21cの開閉を切り替えるように、蓋部22を移動させる。本実施形態では、移動機構30は、蓋部22をX軸方向に沿って往復移動させる。具体的に、移動機構30は、蓋部22をX軸方向の正側の壁部2b付近へ退避させる退避位置PG1と、蓋部22で容器本体部21の開口21cを塞ぐ閉位置PG2と、の間で蓋部22を往復移動させる。本実施形態では、移動機構30は、壁部2bと蓋部22とを連結する多節のリンク機構によって構成される。移動機構30は、図示されない駆動源によってリンク機構をX軸方向に伸縮させることで、蓋部22をX軸方向に往復移動させる。移動機構30の端部は、蓋部22のうち、フレーム26に接続される(
図2(b)参照)。
【0032】
なお、蓋部22のフィルタ部24の材料によっては、退避位置PG1に退避しても、プラズマPの熱を受けることで許容温度を超えてしまう可能性がある。従って、蓋部22自体や退避位置PG1付近に熱保護カバーや冷却構造を設け、フィルタ部24を冷却してもよい。
【0033】
次に、負イオン照射装置1の動作の一例について説明する。装置駆動前においては、チャンバ2内は大気開放された状態である。また、容器20には粉粒材料11が収容されていない状態である。まず、チャンバ2のZ軸方向の正側の開閉扉を開放し、
図3に示すように、容器本体部21に粉粒材料11を収容する。このとき、蓋部22は退避位置PG1に退避されている。
【0034】
次に、チャンバ2の開閉扉を閉じる。また、
図4に示すように、移動機構30によって蓋部22をX軸方向の負側へ移動させ、蓋部22を閉位置PG2へ配置する。これにより、容器本体部21の開口21cが蓋部22によって閉じられる。そして、真空引き部7は、バルブ7cを開いて真空ポンプ7aを動作させることで、チャンバ2の内部空間の真空引きを行う。チャンバ2内の空気G1は、真空引き口7bから排出される。このとき、容器20内の空気もフィルタ部24を通過して真空引き口7bへ吸引される。その一方、容器20内の粉粒材料11は、フィルタ部24で堰き止められることで、容器20内からチャンバ2内へ舞い上がることが抑制される。
【0035】
チャンバ2の内部空間の圧力が設計到達圧力に達したら、
図5に示すように、移動機構30は、蓋部22をX軸方向の正側へ移動させて、蓋部22を退避位置PG1へ配置する。これにより、蓋部22のフィルタ部24は、プラズマに晒される空間から退避することができる。なお、その後も真空引き部7による真空引きは継続する。
【0036】
次に、
図6に示すように、負イオン生成部4は、プラズマガン14でプラズマPを発生させると共に、陽極16で導く。また、ガス供給部6が、チャンバ2内に負イオンの原料となるガスG2を供給する。これにより、容器本体部21の上側の空間にプラズマPが通過すると共に、当該位置にて負イオンNが発生する。これにより、負イオンNは、開口21cを介して容器本体部21に収容された粉粒材料11に照射される。
【0037】
図7に示すように、負イオンNの照射によって粉粒材料11への照射が完了したら、プラズマPの生成及び負イオンNの照射を停止する。また、真空引き部7は、バルブ7cを閉じて真空ポンプ7aを停止することで、真空引きを終了する。また、移動機構30によって蓋部22をX軸方向の負側へ移動させ、蓋部22を閉位置PG2へ配置する。これにより、容器本体部21の開口21cが蓋部22によって閉じられる。
【0038】
更に、ガスパージ部8は、バルブ8bを開け、N
2ガスなどのパージガスG3をチャンバ2の内部空間へパージする。これにより、チャンバ2内を大気圧まで加圧する。このとき、パージガスG3は、フィルタ部24を通過して容器20内へパージされる。その一方、容器20内の粉粒材料11は、フィルタ部24で堰き止められることで、容器20内からチャンバ2内へ舞い上がることが抑制される。チャンバ2内が大気圧まで加圧されたら、ガスパージ部8は、バルブ8bを閉じてパージを停止する。その後、移動機構30が蓋部22を退避位置PG1まで退避させて、再び
図3から処理を繰り返す。
【0039】
次に、本実施形態に係る負イオン照射装置1の作用・効果について説明する。
【0040】
本実施形態に係る負イオン照射装置1は、プラズマを生成するプラズマガン14と、プラズマガン14から生成されるプラズマPを負イオンの原料へ供給可能な空間を有するチャンバ2と、を備える。そのため、チャンバ2内では、プラズマPと負イオンの原料とが反応することにより、負イオンが生成される。ここで、粉粒材料11は、チャンバ2内に配置される容器20に収容される。この容器20は、収容した粉粒材料11への負イオンの照射を可能とする開口21cを有する。従って、チャンバ2内で生成された負イオンは、開口21cを介して、容器20に収容された粉粒材料11に照射される。以上により、粉粒材料11に対する負イオンの照射を可能とする。
【0041】
容器20は気体を通過可能な複数の開口23が形成されたフィルタ部24を有してよい。チャンバ2に対して真空引きやガスパージを行う際、チャンバ2内に空気の流れが形成される。容器20は、フィルタ部24で粉粒材料11の舞い上がりを抑制する一方、開口23で気体の通過を可能とする。そのため、開口23は、真空引きの際には容器20の内部の真空引きを可能とし、ガスパージの際は容器20の内部へのガスパージを可能とする。
【0042】
容器20は開口21cを有する容器本体部21と、容器本体部21の開口21cを覆う蓋部22を備え、蓋部22はフィルタ部24を有してよい。この場合、容器本体部21の開口21cをフィルタ部24で覆う状態と、開口21cからフィルタ部24を退避させる状態を、状況に応じて容易に切り替えることができる。
【0043】
容器本体部21に蓋部22を近づけた後、チャンバ2の真空引きを行ってよい。この場合、真空引きを行う際は、容器本体部21に蓋部22を近づけて覆うことで粉粒材料11の舞い上がりを抑制することができる。
【0044】
容器20は容器本体部21を有し、容器本体部21は高融点材料であって多孔性の材料で構成されることで、容器本体部21が複数の開口23を有してよい。この場合、容器本体部21は、粉粒材料11を収容しながら、複数の開口23を介して、内部の真空引き等を行うことができる。なお、容器本体部21は、高融点材料に限られるものではなく、容器本体部21を冷却可能な冷却構造を備えてもよい。
【0045】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0046】
上述の実施形態では、新たな粉粒材料11を容器20に供給する時には、チャンバ2内を大気圧に戻している。これに対し、チャンバ2内を真空に保った状態で、粉粒材料11を供給してよい。この場合、粉粒材料11を繰り返しチャンバ2内に供給する際に、毎回チャンバ2を大気圧に戻す手間を省略することができる。
【0047】
例えば、上記実施形態では、プラズマガン14を圧力勾配型のプラズマガンとしたが、プラズマガン14は、チャンバ2内にプラズマを生成できればよく、圧力勾配型のものには限られない。
【0048】
また、上記実施形態では、プラズマガン14とプラズマPを導く陽極16の組がチャンバ2内に一組だけ設けられていたが、複数組設けてもよい。また、一箇所に対して、複数のプラズマガン14からプラズマPを供給してもよい。
【0049】
気体を通過可能な複数の開口23を容器20のどこに設けるかは特に限定されない。
図8に示すように、例えば、容器本体部21自体が、フィルタ部24を構成してもよい。この場合、
図8(a)に示すように、容器本体部21は高融点材料であって多孔性の材料(モリブデン、タングステンなど)で構成されることで、容器本体部21がフィルタ部24を有する。容器本体部21は、側壁部21bの先端部から外周へ広がるフランジ部22dを有する。
図8(b)に示すように、蓋部22は、円板状の本体部22aと、本体部22aの外周部に設けられた爪部22bと、を有する。これにより、移動機構30が蓋部22を閉位置PG2まで移動させたら、蓋部22の爪部22bが容器本体部21のフランジ部21dと係合する。当該状態で移動機構30が蓋部22を退避位置PG1まで移動させたら、容器本体部21も退避位置PG1まで移動する。この場合、容器本体部21自体が、真空引き部7の真空引きの影響を受けない位置まで退避できる。これにより、容器本体部21からの粉粒材料11の舞い上がりを抑制できる。また、容器本体部21自体がフィルタ部24を有しているため、容器本体部21の内部空間の真空引きが行われる。
【0050】
また、移動機構30は、蓋部22を移動可能なものであれば、上述のようなリンク機構に限定されない。例えば、シリンダなどのアクチュエータを用いて移動機構30を構成してもよい。
【0051】
また、上述の実施形態では、移動機構30は、蓋部22をX軸方向に移動させていたが、移動機構が蓋部22をどのように移動させるかも特に限定されない。例えば、
図9に示すように、移動機構は、蓋部22をY軸方向へスライド移動させてもよい。移動機構は、蓋部22をチャンバ2の端部側の退避位置PG3まで移動させてよい。更に、折り畳み可能な蓋部22である場合は、折り畳んでコンパクトにした上で、負イオン照射や真空引きの邪魔にならない退避位置PG4へ退避させてよい。
【符号の説明】
【0052】
1…負イオン照射装置、2…チャンバ、11…粉粒材料、14…プラズマガン(プラズマ源)、20…容器、21…容器本体部、21c…開口(第1の開口)、22…蓋部、23...開口(第2の開口)。