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特開2023-140716溶融成形装置および振動子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140716
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】溶融成形装置および振動子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20230928BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20230928BHJP
   C03B 19/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C03B20/00 E
H03H3/02 A
C03B20/00 G
C03B19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046695
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島岡 敬一
(72)【発明者】
【氏名】藤塚 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】明石 照久
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勝昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 優輝
(72)【発明者】
【氏名】原田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 啓太郎
【テーマコード(参考)】
4G014
5J108
【Fターム(参考)】
4G014AH00
5J108KK01
5J108MM08
(57)【要約】
【課題】振動子の溶融成形装置を提供する。
【解決手段】溶融成形装置は、平坦な載置面を備えるステージを備える。溶融成形装置は、ステージの載置面の平面方向の位置を制御する制御部を備える。溶融成形装置は、載置面上に配置されており、平坦な上面と、上面に垂直な中心軸を中心として上面の一部に形成されている穴部と、を備える溶融成形型を備える。溶融成形装置は、中心軸の上方に穴部と対向して配置されており、穴部に向けて火炎を発生可能なバーナを備える。溶融成形装置は、溶融成形型の温度を測定する温度センサを備える。温度センサは、中心軸を中心として回転対称に配置されている3か所以上の測定点の温度を測定可能に構成されている。制御部は、3か所以上の測定点の間の測定温度の温度差が小さくなるように、ステージの平面方向の位置を制御する平面位置調整制御を実行することが可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融成形装置であって、
平坦な載置面を備えるステージと、
前記ステージの前記載置面の平面方向の位置を制御する制御部と、
前記載置面上に配置されており、平坦な上面と、前記上面に垂直な中心軸を中心として前記上面の一部に形成されている穴部と、を備える溶融成形型と、
前記中心軸の上方に前記穴部と対向して配置されており、前記穴部に向けて火炎を発生させることが可能に構成されているバーナと、
前記溶融成形型の温度を測定する温度センサであって、前記中心軸を中心として回転対称に配置されている3か所以上の測定点の温度を測定可能に構成されている、前記温度センサと、
を備え、
前記制御部は、3か所以上の前記測定点の間の測定温度の温度差が小さくなるように、前記ステージの前記平面方向の位置を制御する平面位置調整制御を実行することが可能に構成されている、
溶融成形装置。
【請求項2】
前記バーナは、前記中心軸に沿って上下方向に移動可能に構成されており、
前記制御部は、前記バーナと前記穴部との距離が第1距離である状態で前記平面位置調整制御を実行し、
前記制御部は、前記平面位置調整制御の実行後に、前記バーナと前記穴部との距離が前記第1距離よりも小さい第2距離になるように前記バーナを下降させることが可能に構成されている、請求項1に記載の溶融成形装置。
【請求項3】
前記温度センサは接触式の温度センサであり、
3か所以上の前記測定点の各々に、前記上面に露出するように配置されている、請求項1または2に記載の溶融成形装置。
【請求項4】
前記温度センサは接触式の温度センサであり、
3か所以上の前記測定点の各々に、前記上面に露出しないように配置されている、請求項1または2に記載の溶融成形装置。
【請求項5】
前記温度センサは非接触式の温度センサであり、
3か所以上の前記測定点の各々に対応した位置であって前記上面よりも上方側の位置に配置されている、請求項1または2に記載の溶融成形装置。
【請求項6】
前記温度センサは1つの非接触式の温度センサであり、
前記中心軸を中心とした円周であって3か所以上の前記測定点を含む前記円周をスキャン可能に構成されている、請求項1または2に記載の溶融成形装置。
【請求項7】
前記溶融成形型の外周を取り囲む壁部をさらに備え、
前記壁部の上端は、前記溶融成形型の前記上面よりも上方に位置している、請求項1~6の何れか1項に記載の溶融成形装置。
【請求項8】
前記ステージと前記溶融成形型との間に配置されており、一定温度を維持することが可能に構成されているヒートシンクをさらに備える、
請求項1~7の何れか1項に記載の溶融成形装置。
【請求項9】
平坦な載置面を備えるステージと、
前記ステージの前記載置面の平面方向の位置を制御する制御部と、
前記載置面上に配置されており、平坦な上面と、前記上面に垂直な中心軸を中心として前記上面の一部に形成されている穴部と、を備える溶融成形型と、
前記中心軸の上方に前記穴部と対向して配置されており、前記穴部に向けて火炎を発生させることが可能に構成されており、前記中心軸に沿って上下方向に移動可能に構成されているバーナと、
前記溶融成形型の温度を測定する温度センサであって、前記中心軸を中心として回転対称に配置されている3か所以上の測定点の温度を測定可能に構成されている、前記温度センサと、
を備える溶融成形装置を用いた振動子の製造方法であって、
前記上面に、前記穴部を覆うように板状の被加工材料を配置する配置工程と、
前記バーナと前記穴部との距離が第1距離である状態で、前記バーナに火炎を発生させる工程と、
前記第1距離を維持しながら、3か所以上の前記測定点の間の測定温度の温度差が小さくなるように、前記ステージの前記平面方向の位置を制御する平面位置調整工程と、
前記温度差が予め定められた特定温度差よりも小さくなることに応じて、前記バーナと前記穴部との距離が前記第1距離よりも小さい第2距離になるように前記バーナを下降させる工程と、
前記第2距離を維持しながら、前記被加工材料の上面を前記火炎で加熱する加熱工程と、
を備える、振動子の製造方法。
【請求項10】
前記加熱工程の実行中において、3か所以上の前記測定点の間の測定温度の温度差が小さくなるように、前記ステージの前記平面方向の位置を制御する、請求項9に記載の振動子の製造方法。
【請求項11】
前記加熱工程において、3か所以上の前記測定点の各々の測定温度が予め定められた所定温度に到達することに応じて、前記バーナと前記穴部との距離が前記第1距離以上になるように前記バーナを上昇させる、請求項9または10に記載の振動子の製造方法。
【請求項12】
前記加熱工程において、3か所以上の前記測定点の少なくとも1つの測定温度が予め定められた上限温度を超過することに応じて、前記バーナと前記穴部との距離が前記第1距離以上になるように前記バーナを上昇させる、請求項9~11の何れか1項に記載の振動子の製造方法。
【請求項13】
前記温度センサは接触式の温度センサであり、
3か所以上の前記測定点の各々に、前記上面に露出するように配置されている、請求項9~12の何れか1項に記載の振動子の製造方法。
【請求項14】
前記温度センサは接触式の温度センサであり、
3か所以上の前記測定点の各々に、前記上面に露出しないように配置されている、請求項9~12の何れか1項に記載の振動子の製造方法。
【請求項15】
前記温度センサは非接触式の温度センサであり、
3か所以上の前記測定点の各々に対応した位置であって前記上面よりも上方側の位置に配置されている、請求項9~12の何れか1項に記載の振動子の製造方法。
【請求項16】
前記温度センサは1つの非接触式の温度センサであり、
前記中心軸を中心とした円周であって3か所以上の前記測定点を含む前記円周をスキャン可能に構成されている、請求項9~12の何れか1項に記載の振動子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、振動子の溶融成形装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高精度化が可能であるジャイロとして、溶融シリカを振動子に用いたBird-bath Resonator Gyroscope (BRG)が開示されている。具体的には、上面の一部に穴部が形成されている溶融成形型を準備する。穴部は、成形型の上面に垂直な中心軸を中心として、上面の一部に形成されている。穴部を塞ぐように被加工材料(例:石英板)を配置し、被加工材料の上面をバーナで加熱する。穴部の内部に入り込むように被加工材料を溶融変形させることで、半球形状の振動子を作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/079129号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
穴部の中心軸に対して高い対称性を備えた振動子を作製するためには、穴部の中心軸に対して円対称に加熱する必要がある。そのため、バーナの火炎中心軸と穴部の中心軸とを一致させる軸合わせ作業が必要となる。しかし軸合わせ作業は、手間および時間がかかるため、振動子の作製時間が増大してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する溶融成形装置は、平坦な載置面を備えるステージを備える。溶融成形装置は、ステージの載置面の平面方向の位置を制御する制御部を備える。溶融成形装置は、載置面上に配置されており、平坦な上面と、上面に垂直な中心軸を中心として上面の一部に形成されている穴部と、を備える溶融成形型を備える。溶融成形装置は、中心軸の上方に穴部と対向して配置されており、穴部に向けて火炎を発生させることが可能に構成されているバーナを備える。溶融成形装置は、溶融成形型の温度を測定する温度センサを備える。温度センサは、中心軸を中心として回転対称に配置されている3か所以上の測定点の温度を測定可能に構成されている。制御部は、3か所以上の測定点の間の測定温度の温度差が小さくなるように、ステージの平面方向の位置を制御する平面位置調整制御を実行することが可能に構成されている。
【0006】
上記構成では、中心軸を中心として回転対称に配置されている3か所以上の測定点の温度を測定する。そして3か所以上の測定点の間の測定温度の温度差が小さくなるように、ステージの平面方向の位置を制御する。これにより、バーナの火炎中心軸と穴部の中心軸との軸合わせ作業を、自動で行うことができる。軸合わせ作業の手間および時間を抑制することができるため、振動子の作製時間の短縮化が可能となる。
【0007】
バーナは、中心軸に沿って上下方向に移動可能に構成されていてもよい。制御部は、バーナと穴部との距離が第1距離である状態で平面位置調整制御を実行してもよい。制御部は、平面位置調整制御の実行後に、バーナと穴部との距離が第1距離よりも小さい第2距離になるようにバーナを下降させることが可能に構成されていてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0008】
温度センサは接触式の温度センサであってもよい。温度センサは、3か所以上の測定点の各々に、上面に露出するように配置されていてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0009】
温度センサは接触式の温度センサであってもよい。温度センサは、3か所以上の測定点の各々に、上面に露出しないように配置されていてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0010】
温度センサは非接触式の温度センサであってもよい。温度センサは、3か所以上の測定点の各々に対応した位置であって上面よりも上方側の位置に配置されていてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0011】
温度センサは1つの非接触式の温度センサであってもよい。温度センサは、中心軸を中心とした円周であって3か所以上の測定点を含む円周をスキャン可能に構成されていてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0012】
溶融成形型の外周を取り囲む壁部をさらに備えていてもよい。壁部の上端は、溶融成形型の上面よりも上方に位置していてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0013】
ステージと溶融成形型との間に配置されており、一定温度を維持することが可能に構成されているヒートシンクをさらに備えていてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0014】
本明細書が開示する振動子の製造方法の一実施形態は、平坦な載置面を備えるステージと、ステージの載置面の平面方向の位置を制御する制御部と、載置面上に配置されており、平坦な上面と、上面に垂直な中心軸を中心として上面の一部に形成されている穴部と、を備える溶融成形型と、中心軸の上方に穴部と対向して配置されており、穴部に向けて火炎を発生させることが可能に構成されており、中心軸に沿って上下方向に移動可能に構成されているバーナと、溶融成形型の温度を測定する温度センサであって、中心軸を中心として回転対称に配置されている3か所以上の測定点の温度を測定可能に構成されている、温度センサと、を備える溶融成形装置を用いた振動子の製造方法である。振動子の製造方法は、上面に、穴部を覆うように板状の被加工材料を配置する配置工程を備える。振動子の製造方法は、バーナと穴部との距離が第1距離である状態で、バーナに火炎を発生させる工程を備える。振動子の製造方法は、第1距離を維持しながら、3か所以上の測定点の間の測定温度の温度差が小さくなるように、ステージの平面方向の位置を制御する平面位置調整工程を備える。振動子の製造方法は、温度差が予め定められた特定温度差よりも小さくなることに応じて、バーナと穴部との距離が第1距離よりも小さい第2距離になるようにバーナを下降させる工程を備える。振動子の製造方法は、第2距離を維持しながら、被加工材料の上面を火炎で加熱する加熱工程を備える。効果の詳細は実施例で説明する。
【0015】
加熱工程の実行中において、3か所以上の測定点の間の測定温度の温度差が小さくなるように、ステージの平面方向の位置を制御してもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0016】
加熱工程において、3か所以上の測定点の各々の測定温度が予め定められた所定温度に到達することに応じて、バーナと穴部との距離が第1距離以上になるようにバーナを上昇させてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0017】
加熱工程において、3か所以上の測定点の少なくとも1つの測定温度が予め定められた上限温度を超過することに応じて、バーナと穴部との距離が第1距離以上になるようにバーナを上昇させてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1の溶融成形装置1の断面概略図である。
図2】実施例1の溶融成形装置1の上面図である。
図3】振動子の製造工程を説明するフロー図である。
図4】穴部20h近傍の拡大断面概略図である。
図5】穴部20h近傍の拡大断面概略図である。
図6】実施例2の溶融成形装置201の断面概略図である。
図7】実施例2の溶融成形装置201の上面図である。
図8】実施例3の溶融成形装置301の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0019】
図1に、溶融成形装置1の断面概略図を示す。図2に、溶融成形装置1の上面図を示す。図1は、図2のI-I線における断面図に対応している。なお図2では、バーナ50および電動ステージ45の記載を省略している。
【0020】
電動ステージ45は、xy方向(水平方向)に移動可能に構成されている。電動ステージ45は、平坦な載置面45sを備えている。載置面45s上には、ヒートシンク40およびプレート10を介して、成形型20が載置されている。
【0021】
ヒートシンク40は、電動ステージ45と成形型20との間に配置されている。ヒートシンク40は、プレート10の下面10rと接触している。ヒートシンク40の内部には、循環配管41が配置されている。循環配管41は、チラー設備42に接続されている。循環配管41には、チラー設備42によって室温以上(例:40℃)に恒温化された熱媒が循環している。これによりヒートシンク40は、工程中に一定の温度を保ち続けることができる。
【0022】
プレート10は、ヒートシンク40上に配置されている。プレート10は、成形型20を設置するためのステンレス製の台である。プレート10は、成形型20を冷却する機能を備えている。プレート10の表面10sには、第1連絡孔10c1が形成されている。第1連絡孔10c1は、貫通孔20eに対応した位置に配置されており、貫通孔20eと接続している。第1連絡孔10c1は、第1連絡路10p1を介して負圧発生手段81に接続されている。負圧発生手段81は、穴部20hに負圧を発生させることが可能な手段である。負圧発生手段81は、例えば真空ポンプであってもよい。
【0023】
成形型20は、プレート10の表面10s上に配置されている。成形型20は、石英板30を溶融変形させて半球形状の振動子を成形するための型である。成形型20の材料はグラファイトとした。本実施例では、成形型20は、中心軸CAを備えた円板形状である。成形型20は、下面20r、上面20s、穴部20h、支柱20p、貫通孔20e、を備える。下面20rおよび上面20sは、中心軸CAに垂直な平坦面である。上面20sの一部には、穴部20hが形成されている。穴部20hは、石英板30が溶融変形するための変形空間である。本実施例では、穴部20hは、中心軸CAを中心として円筒状にくり抜かれた形状を有している。穴部20hは、底面20bを備えている。穴部20hの中央には、底面20bから垂直上方に伸びている支柱20pが配置されている。支柱20pは、中心軸CAを中心軸とする円柱である。底面20bには、下面20rに貫通している複数の貫通孔20eが形成されている。貫通孔20eは第1連絡孔10c1に連通している。
【0024】
上面20sには、溝21~23が形成されている。溝21~23は、中心軸CAから半径方向へ放射状に形成されている。溝21~23は、中心軸CAに対して120°の回転対称で配置されている。溝21~23の内周側の先端は、中心軸CAを中心とした円周CR上に位置している。円周CRは、穴部20hの外周を取り囲む同心円である。円周CRの半径は、穴部20hの半径よりも大きい。
【0025】
溝21~23の内部には、上面20sに露出するように、熱電対61~63が配置されている。熱電対61~63は、接触式の温度センサである。本実施例では、B型の熱電対とした。熱電対61~63のz方向の高さは、溝21~23のz方向の深さよりも小さい。よって熱電対61~63は、上面20sから上方へは突出していない。
【0026】
熱電対61~63の先端には、測定点61m~63mが位置している。熱電対61~63は、測定点61m~63mにおける成形型20の温度を測定する。測定点61m~63mは、円周CR上に位置している。すなわち測定点61m~63mは、中心軸CAを中心として、120°の回転対称に配置されている。また熱電対61~63の後端61e~63eは、不図示の配線によって制御部70に接続されている。
【0027】
成形型20の上面20sには、穴部20hを覆うように、石英板30が配置されている。石英板30は、振動子を形成するための被加工材料である。石英板30は、溶融シリカ製とした。石英板30の厚さは、例えば100μm以下である。本実施例では石英板30は正方形であるが、円形や正六角形であってもよい。
【0028】
バーナ50は、中心軸CAの上方に穴部20hと対向して配置されている。バーナ50は、穴部20hに向けて火炎を発生させることにより石英板30を加熱する手段である。バーナ50は、上下方向(±z方向)に移動する可動機構53に固定されている。これによりバーナ50は、中心軸CAに沿って上下に移動可能である。バーナ50は、予混合室50cを備えている。予混合室50cには、ガス流量調整器52から、燃料ガスG1(例:プロパン)および酸素ガスG2が供給される。ガス流量調整器52は、不図示のマスフローコントローラを備えており、燃料ガスG1および酸素ガスG2の流量の制御および監視が可能である。
【0029】
衝立11は、プレート10の表面10sに、成形型20の外周を取り囲むように配置されている。衝立11は、ステンレス製の円筒形状の壁部である。衝立11の上端11uは、成形型20の上面20sよりも上方側(+z方向側)に位置している。これにより、気流の外乱を遮断することができるため、火炎の揺らぎを抑制することが可能となる。火炎によって加熱された石英板30の温度分布を、中心軸CAと中心とした点対称とすることができるため、高対称なガラス振動子を再現性良く製造することが可能となる。また衝立11は成形型20とは接触していない。これにより、衝立11が成形型20を冷却するフィンとして機能してしまうことがない。
【0030】
制御部70は、電動ステージ45、可動機構53、ガス流量調整器52、熱電対61~63、負圧発生手段81に接続されている。制御部70は、これらの機器から各種情報を取得するとともに、これらの機器を制御する。制御部70は、例えばPCであってもよい。
【0031】
(振動子の製造工程)
図3のフロー図を用いて、振動子の製造工程を説明する。ステップS10において、プレート10の表面10sに、成形型20を設置する。またチラー設備42から循環配管41に熱媒を常時循環させることで、ヒートシンク40を恒温状態にする。
【0032】
ステップS20において、成形型20の上面20sに石英板30を配置する。このとき、中心軸CAと石英板30の中心とが一致するように位置決めする。制御部70からの信号により負圧発生手段81は、-75kPaの圧力で第1連絡孔10c1の真空引きを行う。これにより、貫通孔20eを介して穴部20hも真空引きされ、石英板30が成形型20の上面20sに吸着固定される。また、プレート10の表面10sに、衝立11を設置する。これにより、図1および図2に示す状態となる。
【0033】
ステップS30において、制御部70は、熱電対61~63による測定点61m~63mの温度の測定を開始する。ステップS40において、制御部70は、バーナ50に着火する。着火は、バーナ50の先端50sが石英板30の表面から十分に離れている退避位置において行われる。具体的に説明する。制御部70からの信号により、ガス流量調整器52は、燃料ガスG1を流量200sccmに調節してバーナ50に供給し着火する。着火後、燃料ガスG1の流量を1000sccm、酸素ガスG2の流量を5000sccmに調節してバーナ50に供給し、火炎を発生させる。
【0034】
ステップS50において可動機構53は、制御部70からの信号により、バーナを50mm/sの速度で下降させる。そして先端50sと支柱20pの上面との距離が第1距離L1まで小さくなることに応じて、下降を停止する。第1距離L1は、火炎FLで石英板30が変形しない距離である。これにより、図4に示す状態となる。
【0035】
ステップS60において、制御部70は、測定点61m~63mの間の測定温度の温度差が小さくなるように、電動ステージ45のxy平面方向の位置を調整する。この調整は、第1距離L1を維持しながら実行される。具体的に説明する。制御部70は、測定点61m~63mの温度を特定温度差(例:±5℃)内に収めるためのx方向、y方向の移動量を計算する。計算結果を電動ステージ45に送信し、電動ステージ45をxy平面方向に移動させる。このようなフィードバック制御により、支柱20pの中心軸CAを火炎中心軸FAに合わせる軸合わせ制御を、自動で行うことが可能となる(図4参照)。
【0036】
軸合わせ制御の完了の検出方法は様々であって良い。本実施例では、測定点61m~63mの測定温度が所定時間(例:3秒)の間、特定温度差(例:±5℃)内に収まっていることを検出することにより、軸合わせ完了と判断している。軸合わせ制御が完了すると、ステップS70へ進む。
【0037】
ステップS70において可動機構53は、制御部70からの信号により、バーナ50を10mm/sの速度で下降させる。そして先端50sと支柱20pの上面との距離が第2距離L2まで小さくなることに応じて、下降を停止する(図5参照)。第2距離L2は第1距離L1よりも小さい距離である。これにより、火炎FLによる石英板30の加熱工程が開始される。
【0038】
ステップS70加熱工程の実行中においても、測定点61m~63mの間の測定温度の温度差が小さくなるように、電動ステージ45のxy平面方向の位置が調整される。これにより、火炎中心軸FAに支柱20pの中心軸CAが一致している状態を維持することができる。さらに高対称なガラス振動子が再現性良く製造することが可能となる。
【0039】
加熱工程中のステップS80において、制御部70は、石英板30の溶融変形が完了したか否かを判断する。具体的には、測定点61m~63mの各々の測定温度が、予め定められた所定温度まで到達したか否かを判断する。測定点61m~63mの測定温度は、穴部20h上の石英板30の温度に応じた温度を示す。従って測定点61m~63mの温度を測定することにより、穴部20h上の石英板30の温度を、間接的に測定することが可能である。本実施例では、所定温度は、穴部20h上の石英板30が軟化温度まで加熱されたことを示す温度とした。
【0040】
ステップS80において否定判断される場合(S80:NO)には、ステップS90へ進む。加熱工程中のステップS90において、制御部70は、測定点61m~63mの少なくとも1つの測定温度が、予め定められた上限温度を超過したか否かを判断する。上限温度は、ステップS80で検出する所定温度よりも高い温度である。否定判断される場合(S90:NO)にはステップS80へ戻り、加熱工程を続行する。一方、肯定判断された場合(S90:YES)には、制御部70は、異常が発生したと判断し、ステップS100へ進む。ステップS100において制御部70は、バーナ50と支柱20pとの距離が第1距離L1以上になるように、可動機構53を上昇させる。効果を説明する。石英板30は、軟化温度を超えて温度が上がりすぎると、溶融破壊してしまう。すると成形型20が火炎に暴露されてしまうため、成形型20が燃焼し形状が変化してしまう。このような事態を防止することが可能となる。
【0041】
そしてステップS80において、石英板30の溶融変形が完了したと判断されると(S80:YES)、図5に示すように、石英板30が所望の形状に溶融変形した状態となる。そして、ステップS100へ進む。ステップS100において可動機構53は、制御部70からの信号により、バーナ50を50mm/sの速度で上昇させる。そして退避位置まで移動することに応じて、上昇を停止する。また火炎を消火する。
【0042】
ステップS110において制御部70は、冷却の完了を待機する。具体的には、測定点61m~63mの測定温度が所定の冷却温度(例:50℃)以下まで低下したことを検知することにより、制御部70は、負圧発生手段81を停止する。これにより穴部20hが大気開放される。
【0043】
ステップS120において、溶融成形された石英板30を成形型20から取り外す。石英板30の外周の未成形領域をCMP法などによって除去することで、振動子が完成する。
【0044】
また図3のフローと平行して、ガス流量調整器52は、ガス流量の監視処理を行う。具体的に説明する。バーナ50の着火(ステップS40)から消火(ステップS100)までの工程中において、ガス流量調整器52は、燃料ガスG1および酸素ガスG2の流量を監視する。そして流量が所望の範囲内から逸脱した場合には、ガス流量調整器52は、異常発生を報知するための異常信号を制御部70に送信する。制御部70は、異常信号を受信することに応じて、可動機構53を即座に上昇させるとともに、バーナ50を消火する。効果を説明する。燃料ガスG1および/または酸素ガスG2の流量が所望の範囲を逸脱すると、火炎温度が許容範囲を超えて変動してしまう。この状態でガラス振動子を製造すると、形状が再現しなくなり大量の不良品を発生させてしまう。このような事態を防止することが可能となる。
【0045】
また図3のフローと平行して、チラー設備42は、熱媒の温度が所望の範囲内に維持されているかを監視する。そして熱媒の温度が所望の範囲内から逸脱した場合には、チラー設備42は、異常発生を報知するための異常信号を制御部70に送信する。制御部70は、異常信号を受信することに応じて、可動機構53を上昇させるとともに、バーナ50を消火する。効果を説明する。熱媒の温度が所望の範囲を逸脱すると、火炎で加熱された成形型20からのプレート10への排熱量が許容範囲を超えて変動してしまう。この状態でガラス振動子を製造すると、形状が再現しなくなり大量の不良品を発生させてしまう。このような事態を防止することが可能となる。
【0046】
(効果)
穴部20hの中心軸CAに対して高い対称性を備えた振動子を作製するためには、中心軸CAに対して円対称に加熱する必要がある。そのため、バーナの火炎中心軸FAと穴部20hの中心軸CAとを一致させる軸合わせ作業が必要となる。従来の軸合わせ作業では、溶融シリカ製の振動子(Bird-bath Resonator; BR)を作製し、完成した振動子の対称性を確認していた。そして確認した対称性に基づいて電動ステージ45のxy平面方向位置を微調整していた。このような作業を、対称性の高い振動子が作製できるまで繰り返すため、膨大な手間および時間がかかっていた。一方、本明細書の技術では、穴部20hの中心軸CAを中心として回転対称に配置されている測定点61m~63mで、火炎の温度を測定する構成を備えている。そして測定点61m~63mの間の測定温度の温度差が小さくなるように、電動ステージ45のxy平面方向の位置を制御する。これにより、バーナ50の火炎中心軸FAと穴部20hの中心軸CAとの軸合わせ作業を、自動で行うことができる。軸合わせ作業の手間および時間を抑制することができるため、振動子の作製時間の短縮が可能となる。
【0047】
振動子を大量生産する場合、バーナ50の先端50sの火口形状が高温環境で変化し、火炎中心軸FAの位置や温度分布が経時変化してしまう場合がある。従来は、軸合わせ作業が完了した後に振動子を連続作製するため、振動子の作製数が増加するに従い振動子形状の対称性が失われてしまい、形状寸法の再現性が得られなくなってしまうことがあった。一方、本明細書の技術では、石英板30の加熱工程(ステップS70)の前に、軸合わせ作業(ステップS60)を毎回実行している。これにより、先端50sの火口形状の経時変化に応じて、軸合わせを微調整することが可能となる。形状寸法の再現性を高めることが可能となる。
【0048】
成形型20を載置した金属製のプレート10の温度は、室温に左右される。従って、火炎で加熱された成形型20からのプレート10への熱伝達(排熱)が昼夜、季節で変動する。そのため従来は、振動子の形状寸法の再現性を高めることが困難であった。一方、本明細書の技術では、チラー設備42によって恒温化されたヒートシンク40を備えている。そしてプレート10の下面10rに、ヒートシンク40を接触させている。これにより、火炎で加熱された成形型20からのプレート10への熱伝達(排熱)の再現性を高めることができる。年間を通して、高対称な振動子の形状寸法を再現性良く製造することが可能となる。
【実施例0049】
図6に、実施例2の溶融成形装置201の断面概略図を示す。図7に、実施例2の溶融成形装置201の上面図を示す。図6は、図7のVI-VI線における断面図に対応している。実施例2は、熱電対61~63が成形型20の上面20sに露出しないように配置されている点が、実施例1と異なっている。実施例1の溶融成形装置1と共通する部位には同一符号を付すことで、説明を省略する。また実施例2に特有の部位には、200番台の符号を付すことで区別している。
【0050】
成形型20には、トンネル221~223が形成されている。トンネル221~223の長手方向軸は、上面20sと平行である。トンネル221~223は、中心軸CAから半径方向へ放射状に形成されている。トンネル221~223は、中心軸CAに対して120°の回転対称で配置されている。トンネル221~223の内周側の先端は、中心軸CAを中心とした円周CR上に位置している。成形型20の外周側面には、トンネル221~223の入口221a~223aが形成されている。
【0051】
トンネル221~223の内部には、入口221a~223aから熱電対61~63が挿入されている。熱電対61~63の先端には、測定点61m~63mが位置している。熱電対61~63は、測定点61m~63mにおける成形型20の温度を測定する。測定点61m~63mは、中心軸CAを中心として、120°の回転対称に配置されている。
【0052】
(効果)
トンネル221~223内に熱電対61~63を挿入する構成を備えることにより、成形型20の上面20sに熱電対61~63を配置するための溝を形成する必要がない。溝を備える場合に比して、成形型20の上面20sと石英板30との接触面積を大きくすることができるため、穴部20hを負圧にした場合の吸着性を安定させることが可能となる。また石英板30から成形型20への熱伝達(排熱)の対称性が溝によって阻害されなくなるため、高対称な振動子を再現性良く製造することが可能となる。
【実施例0053】
図8に、実施例3の溶融成形装置301の上面図を示す。実施例3は、熱電対61~63に代えて、放射温度計361~363を用いる点が、実施例1とは異なっている。実施例1の溶融成形装置1と共通する部位には同一符号を付すことで、説明を省略する。また実施例3に特有の部位には、300番台の符号を付すことで区別している。
【0054】
放射温度計361~363は、非接触式の温度センサである。放射温度計361~363は、測定点61m~63mの各々に対応した位置であって上面20sよりも上方側の位置に、不図示の固定機構によって配置されている。放射温度計361~363の各々の焦点は、測定点61m~63mに合わせられている。放射温度計361~363は透明な石英板30を透過し、成形型20の上面20sに焦点が合わせられている。これにより、測定点61m~63mにおける上面20sの温度を非接触で測定することができる。間接的に石英板30の温度を測定することが可能となる。
【0055】
(効果)
熱電対を配置するための溝やトンネルを、成形型20が備える必要がない。成形型20の製造時のコストや時間を低減することが可能となる。また石英板30から成形型20への熱伝達(排熱)の対称性が溝やトンネルによって阻害されることがないため、高対称な振動子を再現性良く製造することが可能となる。
【0056】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0057】
(変形例)
実施例3の放射温度計の配置態様や測定態様は、様々であって良い。例えば、放射温度計361の1つのみを備える構成としてもよい。そして測定点61m~63mを含む円周CR上に焦点をスキャンさせることが可能に構成されていてもよい。このようなスキャンは、例えば、中心軸CAを中心とした円周経路CP(図8参照)に沿って放射温度計361を移動させる機構を備えることで実現できる。これにより、放射温度計の数を抑制しながら、測定点の数を増加させることが可能となる。
【0058】
石英板30の溶融変形の完了を判断する方法は、測定点61m~63mの温度を測定する方法(ステップS80)に限られず、様々であってよい。例えば、加熱工程が開始されてから、予め定められた所定時間が経過することに応じて、溶融変形の完了が判断されてもよい。
【0059】
衝立11を備えない形態であってもよい。
【0060】
成形型20の材料はグラファイトに限られない。所定の熱衝撃耐性や熱伝導率を有する材料であれば、窒化ホウ素など、様々な材料を用いることが可能である。
【0061】
振動子の材料は、溶融シリカに限られない。溶融変形する誘電体であれば、何れの材料であってもよい。
【0062】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0063】
1:溶融成形装置 10:プレート 20:成形型 20h:穴部 20p:支柱 30:石英板 45:電動ステージ 50:バーナ 61~63:熱電対 61m~63m:測定点 70:制御部 81:負圧発生手段
図1
図2
図3
図4
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図8