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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140724
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ロボット制御システム及び教示装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B25J9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046707
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】花内 雅紀
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS11
3C707BS10
3C707JU01
3C707JU14
3C707JU15
3C707LS04
(57)【要約】
【課題】マニピュレータに動作を教示する際の作業効率を高めるロボット制御システムを提供する。
【解決手段】教示装置1が、設定された教示モードを送信する送信部111aと、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとの接触又は非接触を検知する検知部112と、検知された内容に対応する接触状態を送信する送信部111aとを備え、ロボット制御装置2が、接触状態の内容ごとに教示モードを記憶する記憶部22と、受信した教示モードを、最後に受信した接触状態の内容に対応付けて記憶させ、適用教示モード222にも設定するモード管理部212とを備え、モード管理部212は、接触状態を受信した場合に、その接触状態の内容に対応付けて記憶されている教示モードを適用教示モード222に設定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用ロボットの動作を教示する教示装置と、前記産業用ロボットを制御するロボット制御装置とを備えるロボット制御システムであって、
前記教示装置が、
本体部と、
前記本体部から分離させて使用可能な可搬部と、
前記本体部及び前記可搬部のいずれかで、前記産業用ロボットを動作させるための動作モードが設定された場合に、設定された前記動作モードを送信する第1送信部と、
前記本体部と前記可搬部との接触又は非接触を検知する検知部と、
前記検知部により検知された内容に対応する接触状態を送信する第2送信部と、
を備え、
前記ロボット制御装置が、
前記動作モード及び前記接触状態をそれぞれ受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記動作モード及び前記接触状態に基づいて前記動作モードを設定する、モード管理部と、
を備える、
ロボット制御システム。
【請求項2】
前記接触状態の内容ごとに、前記動作モードを記憶する記憶部を、さらに備え、
前記モード管理部は、
前記受信部により受信された前記動作モードを、前記受信部により最後に受信された前記接触状態の内容に対応付けて前記記憶部に記憶させるとともに、前記教示装置を用いて前記産業用ロボットを動作させる際に適用される適用動作モードに設定し、さらに、
前記受信部により前記接触状態が受信された場合に、受信された前記接触状態の内容に対応付けて前記記憶部に記憶されている前記動作モードを、前記適用動作モードに設定する、
請求項1記載のロボット制御システム。
【請求項3】
前記教示装置が、
前記検知部により検知された内容が非接触である場合に、前記本体部の操作権限を閲覧専用権限に制限する権限変更部を、さらに備える、
請求項1又は2記載のロボット制御システム。
【請求項4】
本体部と、
前記本体部から分離させて使用可能な可搬部と、
前記本体部と前記可搬部との接触又は非接触を検知する検知部と、
前記本体部及び前記可搬部のいずれかで設定される産業用ロボットを動作させるための動作モード、及び前記検知部により検知された内容に対応する接触状態に基づいて前記動作モードを設定するモード管理部と、
を備える教示装置。
【請求項5】
前記接触状態の内容ごとに、前記動作モードを記憶する記憶部を、さらに備え、
前記モード管理部は、
設定された前記動作モードを、前記検知部により最後に検知された前記接触状態の内容に対応付けて前記記憶部に記憶させるとともに、前記産業用ロボットを動作させる際に適用される適用動作モードに設定し、さらに、
前記検知部により前記接触状態が検知された場合に、検知された前記接触状態の内容に対応付けて前記記憶部に記憶されている前記動作モードを、前記適用動作モードに設定する、
請求項4記載の教示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御システム及び教示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ロボットに動作を教示する際に操作するキーが設けられた接続座と、その接続座のスロットに設置するタブレット端末とを備えるティーチペンダントが開示されている。このティーチペンダントでは、タブレット端末を接続座から取り外すと、タブレット端末のディスプレイに仮想キーが表示され、タブレット端末単体でロボットに動作を教示できるようになる。つまり、このティーチペンダントでは、タブレット端末を接続座に設置している状態であっても、接続座から取り外した状態であっても、ロボットに動作を教示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-68242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タブレット端末を接続座に設置している状態でロボットに動作を教示するときと、タブレット端末を接続座から取り外した状態でロボットに動作を教示するときでは、操作者が異なる場合がある。一般に、ティーチペンダントには、各種の教示モードが用意され、操作者は、各自の技量や用途などに合わせて教示モードを選択して設定できるようになっている。したがって、ティーチペンダントの使用状態を切り替えて異なる操作者が操作する場合には、その都度、操作者に合わせて動作モードを設定し直す作業が必要になる。この場合、ロボットへの教示作業を一時的に止める必要があり、作業効率が低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、産業用ロボットに動作を教示する際の作業効率を高めることができるロボット制御システム及び教示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るロボット制御システムは、産業用ロボットの動作を教示する教示装置と、産業用ロボットを制御するロボット制御装置とを備えるロボット制御システムであって、教示装置が、本体部と、本体部から分離させて使用可能な可搬部と、本体部及び可搬部のいずれかで、産業用ロボットを動作させるための動作モードが設定された場合に、設定された動作モードを送信する第1送信部と、本体部と可搬部との接触又は非接触を検知する検知部と、検知部により検知された内容に対応する接触状態を送信する第2送信部と、を備え、ロボット制御装置が、動作モード及び接触状態をそれぞれ受信する受信部と、受信部により受信された動作モード及び接触状態に基づいて動作モードを設定する、モード管理部と、を備える。
【0007】
この態様によれば、教示装置が、本体部及び可搬部のいずれかで動作モードが設定された場合に、設定された動作モードを送信し、本体部と可搬部との接触又は非接触が検知された場合に、検知された内容を接触状態として送信することができ、ロボット制御装置が、教示装置から受信した動作モード及び接触状態に基づいて、産業用ロボットを動作させるための動作モードを設定することが可能となる。
【0008】
上記一態様において、接触状態の内容ごとに、動作モードを記憶する記憶部を、さらに備え、前記モード管理部は、受信部により受信された動作モードを、受信部により最後に受信された接触状態の内容に対応付けて記憶部に記憶させるとともに、教示装置を用いて産業用ロボットを動作させる際に適用される適用動作モードに設定し、さらに、受信部により接触状態が受信された場合に、受信された接触状態の内容に対応付けて記憶部に記憶されている動作モードを、適用動作モードに設定してもよい。
【0009】
この態様によれば、教示装置として結合されている本体部及び可搬部が分離された場合に、前回分離されていた時に適用動作モードに設定されていた動作モードを、今回分離した時の適用動作モードに設定することができる一方、分離されていた本体部及び可搬部が結合された場合に、前回結合していた時に適用動作モードに設定されていた動作モードを、今回結合した時の適用動作モードに設定することが可能となる。
【0010】
上記一態様において、教示装置が、検知部により検知された内容が非接触である場合に、本体部の操作権限を閲覧専用権限に制限する権限変更部を、さらに備えてもよい。
【0011】
この態様によれば、可搬部を本体部から分離した場合に、本体部での操作を無効にすることができるため、可搬部を操作する作業者が、本体部での意図しない操作によって作業を停滞させてしまう事態を回避することが可能となる。
【0012】
本発明の他の態様に係る教示装置は、本体部と、本体部から分離させて使用可能な可搬部と、本体部と可搬部との接触又は非接触を検知する検知部と、本体部及び可搬部のいずれかで設定される産業用ロボットを動作させるための動作モード及び検知部により検知された内容に対応する接触状態に基づいて前記動作モードを設定するモード管理部と、を備える。
【0013】
この態様によれば、本体部及び可搬部のいずれかで設定された動作モード及び検知部により検知された接触状態に基づいて、産業用ロボットを動作させるための動作モードを設定することが可能となる。
【0014】
上記他の態様において、接触状態の内容ごとに、動作モードを記憶する記憶部を、さらに備え、モード管理部は、設定された動作モードを、検知部により最後に検知された接触状態の内容に対応付けて記憶部に記憶させるとともに、産業用ロボットを動作させる際に適用される適用動作モードに設定し、さらに、検知部により接触状態が検知された場合に、検知された接触状態の内容に対応付けて記憶部に記憶されている動作モードを、適用動作モードに設定してもよい。
【0015】
この態様によれば、教示装置として結合されている本体部及び可搬部が分離された場合に、前回分離されていた時に適用動作モードに設定されていた動作モードを、今回分離した時の適用動作モードに設定することができる一方、分離されていた本体部及び可搬部が結合された場合に、前回結合していた時に適用動作モードに設定されていた動作モードを、今回結合した時の適用動作モードに設定することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、産業用ロボットに動作を教示する作業効率を高めることができるロボット制御システム及び教示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るロボット制御システムの構成を例示する模式図である。
図2】実施形態に係るロボット制御システムの機能的な構成を例示する図である。
図3】(A)は教示モード情報を管理するテーブルの一例であり、(B)は適用教示モードを管理するテーブルの一例である。
図4】教示装置から教示モードを受信したときのロボット制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5】教示装置から接触状態を受信したときのロボット制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図6】第2変形例に係る教示装置の機能的な構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。また、図面は模式的なものであるため、各構成要素の寸法や比率は実際のものとは相違する。
【0019】
図1及び図2は、本発明に係るロボット制御システムの構成を例示する図である。ロボット制御システム100は、例えば、ティーチペンダント(本体部)1a及び直感教示デバイス(可搬部)1bにより構成される教示装置1と、ロボット制御装置2と、マニピュレータ3とを備える。
【0020】
ティーチペンダント1a及び直感教示デバイス1bは、作業者がマニピュレータ3の動作を教示する際に用いる操作装置である。直感教示デバイス1bは、例えば、ジャイロセンサ及びジョイスティックを搭載し、それらにより検知されるデバイスの向きやスティックの傾きに基づいて、マニピュレータ3の動作を教示する。作業者は、自身が操作する直感教示デバイス1bの動き等に応じて、マニピュレータ3の動作を直感的に教示することが可能となる。
【0021】
教示装置1とロボット制御装置2との間、及びロボット制御装置2とマニピュレータ3との間は、通信回線により接続される。通信回線は、有線であってもよいし、無線であってもよい。
【0022】
マニピュレータ3は、ロボット制御装置2において設定される溶接の施工条件に従ってアーク溶接を行う産業用ロボットである。溶接の施工条件には、例えば、溶接条件、溶接開始位置、溶接終了位置、溶接距離及び溶接トーチの姿勢等が含まれる。溶接条件には、例えば、溶接電流、溶接電圧、溶接速度、ワイヤ送給速度及びワークの厚さ等が含まれる。
【0023】
マニピュレータ3は、例えば、工場の床面等に固定されるベース部材上に設けられる多関節アーム31と、多関節アーム31の先端に取り付けられる溶接トーチ32とを有する。
【0024】
ロボット制御装置2は、マニピュレータ3の動作を制御する制御ユニットである。図2に示すように、ロボット制御装置2は、例えば、制御部21、記憶部22及び通信部23を有する。
【0025】
記憶部22は、ロボット制御装置2における処理の実行に必要な各種のプログラムや各種の情報を記憶する。各種の情報には、例えば、教示モード情報221、適用教示モード222及び動作情報223が含まれる。
【0026】
教示モード情報221は、教示モードに関する情報である。教示モードは、ティーチペンダント1a及び直感教示デバイス1bのいずれかを操作してマニピュレータ3の動作を教示する際に、どのように教示するのかを特定するモードである。教示モードとして、例えば、直感操作モード、ロボット座標系移動モード及び各軸操作モードを設定することができる。なお、教示モードは、これらに限定されず、ティーチペンダントや直感教示デバイスの機能に合わせて適宜設定することができる。
【0027】
直感操作モードは、直感教示デバイス1bを操作して直感的にマニピュレータ3の動作を教示するモードである。
【0028】
ロボット座標系移動モードは、ティーチペンダント1aを用いて、マニピュレータ3を基準にしたロボット座標系の三次元座標に基づいてマニピュレータ3の動作を教示するモードである。
【0029】
各軸操作モードは、ティーチペンダント1aを用いて、マニピュレータ3にある複数の関節部をそれぞれ構成する各軸の回転方向を操作してマニピュレータ3の動作を教示するモードである。
【0030】
教示モード情報221は、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとの接触状態の内容ごとに設定する。接触状態には、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとが結合している状態(接触)と、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとが分離している状態(非接触)とが含まれる。接触状態の内容ごとに教示モードを設定することにより、結合している状態において最後に設定された教示モードと、分離している状態において最後に設定された教示モードとを区別して管理することができる。
【0031】
図3(A)に、教示モード情報221を管理するテーブルの一例を示す。同図には、結合している状態において最後に設定された教示モードとして、ロボット座標系移動モードが記憶され、分離している状態において最後に設定された教示モードとして、直感操作モードが記憶されている。
【0032】
図2に示す適用教示モード222は、ティーチペンダント1a及び直感教示デバイス1bのいずれかを用いてマニピュレータ3の動作を教示する際に適用される教示モードである。適用教示モード222を設定することにより、接触状態の如何にかかわらず、教示する際に適用される最新の教示モードを管理することができる。
【0033】
図3(B)に、適用教示モード222を管理するテーブルの一例を示す。同図には、最新の教示モードとして、ロボット座標系移動モードが記憶されている。この状態で、例えば教示装置1を操作してマニピュレータ3の動作を教示すると、ロボット座標系移動モードにより教示することになる。
【0034】
図2に示す動作情報223は、教示装置1により教示された情報に基づいて作成されるマニピュレータ3の動作に関する情報である。動作情報223には、例えば、マニピュレータ3が作業手順に従って作業を行うための作業プログラムが含まれる。
【0035】
ロボット制御装置2の通信部23は、通信回線を介して接続されるマニピュレータ3又は教示装置1との通信を制御する。
【0036】
制御部21は、記憶部22に格納された所定のプログラムをプロセッサが実行することにより、各種の機能を実現する。各種の機能には、例えば、受信部211及びモード管理部212が含まれる。
【0037】
受信部211は、教示モード及び接触状態をそれぞれ受信する。教示モードは、ティーチペンダント1a及び直感教示デバイス1bのいずれかで、教示モードが設定されるたびに送信される情報の中に含まれる。接触状態は、教示装置1において、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとの接触状態が切り替わるたびに送信される情報の中に含まれる。
【0038】
モード管理部212は、教示モード情報221及び適用教示モード222を管理する。以下に具体的に説明する。
【0039】
モード管理部212は、受信部211により教示モードが受信された場合に、以下の(1)及び(2)の処理を実行する。
【0040】
(1)モード管理部212は、受信部211により受信された教示モードを、適用教示モード222に設定することで、適用教示モード222を更新する。
【0041】
(2)モード管理部212は、受信部211により受信された教示モードを、受信部211により最後に受信された接触状態の内容に対応付けて記憶させることで、教示モード情報221を更新する。換言すると、モード管理部212は、教示モードが受信されると、その教示モードを、現時点の教示装置1における接触状態の内容に対応付けて記憶させる。図3(A)を参照して具体的に説明する。
【0042】
モード管理部212は、受信部211により教示モードが受信されると、現時点の教示装置1における接触状態が結合している状態であるか否かを判定する。モード管理部212は、接触状態が結合している状態であると判定した場合に、受信された教示モードを、図3(A)に示す教示モード情報221の結合状態に対応付けて記憶させる。他方、モード管理部212は、接触状態が結合している状態ではないと判定した場合に、受信された教示モードを、図3(A)に示す教示モード情報221の分離状態に対応付けて記憶させる。
【0043】
モード管理部212は、受信部211により接触状態が受信された場合に、その接触状態の内容に対応付けて教示モード情報221に格納されている教示モードを、適用教示モード222に設定する。図3(A)を参照して具体的に説明する。
【0044】
モード管理部212は、受信部211により接触状態が受信されると、その接触状態の内容が結合している状態であるか否かを判定する。モード管理部212は、接触状態の内容が結合している状態であると判定した場合に、適用教示モード222にロボット座標系移動モードを設定する。他方、モード管理部212は、接触状態の内容が結合している状態ではないと判定した場合に、適用教示モード222に直感操作モードを設定する。
【0045】
これにより、教示装置1として結合されているティーチペンダント1a及び直感教示デバイス1bが分離された場合に、前回分離されていた時に適用教示モード222に設定されていた教示モードを、今回分離した時の適用教示モード222に設定することができる。また、分離されていたティーチペンダント1a及び直感教示デバイス1bが結合された場合に、前回結合していた時に適用教示モード222に設定されていた教示モードを、今回結合した時の適用教示モード222に設定することができる。したがって、分離又は結合したときに、そのときの操作者に合わせて教示モードを設定し直す作業を削減することが可能となる。
【0046】
ここで、制御部21は、例えば教示装置1からの指示に従って、マニピュレータ3及び図示しない溶接電源を制御する機能をさらに有する。溶接電源は、例えば、溶接ワイヤの先端とワークとの間にアークを発生させるために、溶接の施工条件に従って、溶接電流及び溶接電圧等をマニピュレータ3に供給する。この溶接電源を、ロボット制御装置2内に備えてもよい。
【0047】
図1及び図2に示すように、教示装置1を構成するティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bは、接続部16a、16bを介して着脱可能に構成されている。ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとを結合させているときには、二つの装置を一体化して教示装置1として使用する。他方、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとを分離させているときには、二つの装置をそれぞれ別体として個別に使用する。
【0048】
図2に示すように、ティーチペンダント1aは、例えば、制御部11a、記憶部12a、通信部13a、表示部14a、入力部15a及び接続部16aを有する。
【0049】
記憶部12aは、ティーチペンダント1aにおける処理の実行に必要な各種のプログラムや各種の情報を記憶する。各種の情報には、例えば、権限情報121が含まれる。権限情報121は、ティーチペンダント1aの操作権限に関する情報である。操作権限として、例えば、全ての操作を可能とする権限や、閲覧操作のみを可能とする権限(閲覧専用権限)等を含むことができる。
【0050】
通信部13aは、通信回線を介して接続されるロボット制御装置2との通信を制御する。
【0051】
表示部14aは、例えば、タッチパネルであり、マニピュレータ3に関する情報を表示するとともに、マニピュレータ3に対する操作指示の入力を受け付ける。
【0052】
入力部15aは、例えば、複数のキーを有しており、各キーに対する操作に応じて入力信号を生成し、制御部11aに出力する。
【0053】
接続部16aは、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとを接続するためのインターフェースであり、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとを電気的に接続するか、電気的に切断するかを切り替えるスイッチとしての役割を有する。
【0054】
制御部11aは、記憶部12aに格納された所定のプログラムをプロセッサが実行することにより、各種の機能を実現する。各種の機能には、例えば、送信部111a、検知部112及び権限変更部113が含まれる。
【0055】
送信部111aは、種々の情報をロボット制御装置2に送信する。以下に具体的に説明する。
【0056】
送信部111aは、教示モードがティーチペンダント1aで設定されるたびに、設定された教示モードをロボット制御装置2に送信する。
【0057】
送信部111aは、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとの接触状態が切り替わるたびに、切り替わった後の接触状態をロボット制御装置2に送信する。接触状態の切り替わりは、後述する検知部112により検知される。
【0058】
送信部111aは、作業者の操作指示に基づいて、マニピュレータ3の動作に関する動作情報をロボット制御装置2に送信する。
【0059】
検知部112は、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとの接触状態が結合している状態及び分離している状態のいずれに該当するのかを検知する。以下に具体的に説明する。
【0060】
検知部112は、接続部16aにおいて、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとが電気的に接続された場合に、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとが結合している状態であると検知する。他方、検知部112は、接続部16aにおいて、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとが電気的に切断された場合に、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとが分離している状態であると検知する。
【0061】
権限変更部113は、検知部112により検知された接触状態が分離している状態である場合に、ティーチペンダント1aの操作権限を閲覧操作のみに制限するために、権限情報121を閲覧専用権限に更新する。これにより、直感教示デバイス1bをティーチペンダント1aから分離した場合に、ティーチペンダント1aでの教示操作を無効にすることができる。したがって、直感教示デバイス1bを操作する作業者が、ティーチペンダント1aでの意図しない操作によって教示作業を停滞させてしまう事態を回避することが可能となる。
【0062】
他方、権限変更部113は、検知部112により検知された接触状態が結合している状態である場合に、ティーチペンダント1aの操作権限に対して加えた制限が解除されるように、権限情報121を更新する。これにより、直感教示デバイス1bをティーチペンダント1aに結合させた場合には、ティーチペンダント1aを操作して教示作業を実施することが可能となる。
【0063】
図2に示すように、直感教示デバイス1bは、例えば、制御部11b、記憶部12b、通信部13b、表示部14b、入力部15b、接続部16b及び動き検出部17を有する。
【0064】
記憶部12bは、直感教示デバイス1bにおける処理の実行に必要な各種のプログラムや各種の情報を記憶する。
【0065】
通信部13bは、通信回線を介して接続されるロボット制御装置2との通信を制御する。
【0066】
表示部14bは、例えば、ディスプレイであり、マニピュレータ3の動作を教示する際の各種設定をガイドするための情報等を表示する。
【0067】
入力部15bは、例えば、ジョイスティック及び複数のキーを有しており、スティック及び各キーに対する操作に応じて入力信号を生成し、制御部11bに出力する。
【0068】
接続部16bは、直感教示デバイス1bとティーチペンダント1aとを接続するためのインターフェースであり、直感教示デバイス1bとティーチペンダント1aとを電気的に接続するか、電気的に切断するかを切り替えるスイッチとしての役割を有する。
【0069】
動き検出部17は、直感教示デバイス1bの動きを検出する。具体的に、動き検出部17は、ジャイロセンサにより検知されるデバイスの向き及び姿勢に関する値と、ジョイスティックにより検知されるスティックの傾き方向及び傾き具合に関する値とに基づいて、直感教示デバイス1bの三次元的な動きを検出する。
【0070】
制御部11bは、メモリに格納された所定のプログラムをプロセッサが実行することにより、各種の機能を実現する。各種の機能には、例えば、送信部111bが含まれる。
【0071】
送信部111bは、動き検出部17により検出された直感教示デバイス1bの三次元的な動きに基づいて、マニピュレータ3の先端にある溶接トーチ32を三次元的に動作させる作業プログラムを作成し、その作成した作業プログラムを含む動作情報をロボット制御装置2に送信する。
【0072】
送信部111bは、教示モードが直感教示デバイス1bで設定されるたびに、設定された教示モードをロボット制御装置2に送信する。
【0073】
次に、図4及び図5を参照して、本発明に係るロボット制御システム100の動作について説明する。まず、図4を参照して、教示装置1から教示モードを受信したときのロボット制御装置2の動作の一例について説明する。
【0074】
最初に、ロボット制御装置2の受信部211は、ティーチペンダント1a及び直感教示デバイス1bのいずれかで設定された教示モードを受信したか否かを判定する(ステップS101)。この判定がNOである場合(ステップS101;NO)に、この判定がYESになるまで上記ステップS101の処理を繰り返すか待機する。
【0075】
上記ステップS101において、教示モードを受信したと判定された場合(ステップS101;YES)に、ロボット制御装置2のモード管理部212は、教示装置1における接触状態が結合している状態であるか否かを判定する(ステップS102)。この判定がYESである場合(ステップS102;YES)に、ロボット制御装置2のモード管理部212は、上記ステップS101で受信した教示モードを、教示モード情報221の結合状態に対応付けて記憶させる(ステップS103)。そして、処理を後述するステップS105に移行する。
【0076】
上記ステップS102において、教示装置1における接触状態が結合している状態ではないと判定された場合(ステップS102;NO)に、ロボット制御装置2のモード管理部212は、上記ステップS101で受信した教示モードを、教示モード情報221の分離状態に対応付けて記憶させる(ステップS104)。
【0077】
続いて、ロボット制御装置2のモード管理部212は、上記ステップS101で受信した教示モードを、適用教示モード222に設定する(ステップS105)。そして、処理を上記ステップS101に移行する。
【0078】
次に、図5を参照して、教示装置1から接触状態を受信したときのロボット制御装置2の動作の一例について説明する。
【0079】
最初に、ロボット制御装置2の受信部211は、教示装置1から接触状態を受信したか否かを判定する(ステップS201)。この判定がNOである場合(ステップS201;NO)に、この判定がYESになるまで上記ステップS201の処理を繰り返すか待機する。
【0080】
上記ステップS201において、接触状態を受信したと判定された場合(ステップS201;YES)に、ロボット制御装置2のモード管理部212は、上記ステップS201で受信された接触状態の内容が結合している状態であるか否かを判定する(ステップS202)。この判定がYESである場合(ステップS202;YES)に、ロボット制御装置2のモード管理部212は、教示モード情報221の結合状態に対応付けて記憶されている教示モードを、前回結合状態時の教示モードとして、適用教示モード222に設定する(ステップS203)。そして、処理を後述するステップS205に移行する。
【0081】
上記ステップS202において、接触状態の内容が結合している状態ではないと判定された場合(ステップS202;NO)に、ロボット制御装置2のモード管理部212は、教示モード情報221の分離状態に対応付けて記憶されている教示モードを、前回分離状態時の教示モードとして、適用教示モード222に設定する(ステップS204)。
【0082】
続いて、ロボット制御装置2の制御部21は、上記ステップS203又はステップS204で設定された適用教示モード222に従って教示作業を実施する(ステップS205)。そして、処理を上記ステップS201に移行する。
【0083】
上述したように、実施形態に係るロボット制御システム100によれば、教示装置1は、ティーチペンダント1a及び直感教示デバイス1bのいずれかで教示モードが設定された場合に、設定された教示モードを送信し、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとの接触又は非接触が検知された場合に、検知された内容を接触状態として送信することができる。他方、ロボット制御装置2は、教示モードを受信した場合に、その教示モードを、現時点の接触状態の内容に対応付けて記憶させ、さらに適用教示モード222にも設定し、接触状態を受信した場合には、その接触状態の内容に対応付けて記憶されている教示モードを適用教示モード222に設定することができる。
【0084】
これにより、教示装置1として結合されているティーチペンダント1a及び直感教示デバイス1bが分離された場合に、前回分離されていた時に適用教示モード222に設定されていた教示モードを、今回分離した時の適用教示モード222に設定することができる一方、分離されていたティーチペンダント1a及び直感教示デバイス1bが結合された場合に、前回結合していた時に適用教示モード222に設定されていた教示モードを、今回結合した時の適用教示モード222に設定することが可能となる。
【0085】
それゆえ、実施形態に係るロボット制御システム100によれば、マニピュレータ3に動作を教示する際の作業効率を高めることが可能となる。
【0086】
[変形例]
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。例えば、上述した各処理(ステップ)は処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更し、又は並列に実行することができる。
【0087】
[第1変形例]
上述した実施形態では、本発明を溶接ロボットに適用する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、ピッキング等を行うハンドリングロボットを含む産業用ロボットに本発明を適用することができる。
【0088】
[第2変形例]
上述した実施形態では、ロボット制御装置2が、教示モード情報221及び適用教示モード222を記憶して管理しているが、教示装置1で教示モード情報221及び適用教示モード222を記憶して管理してもよい。第2変形例に係る教示装置1の構成を図6に例示する。
【0089】
同図に示すように、ティーチペンダント1aの記憶部12aには、各種の情報として、教示モード情報221及び適用教示モード222がさらに含まれる。また、ティーチペンダント1aの制御部11aにより実現される各種の機能には、モード管理部212がさらに含まれる。モード管理部212、教示モード情報221及び適用教示モード222は、上述した実施形態に係るモード管理部212、教示モード情報221及び適用教示モード222と同様であるため、ここでは、それらの説明を省略する。この変形例に係る送信部111aは、教示モード情報221及び適用教示モード222がモード管理部212により更新されるたびに、更新後の教示モード情報221及び適用教示モード222をロボット制御装置2に送信することが望ましい。
【0090】
[第3変形例]
上述した実施形態では、教示モードの設定を管理する場合について説明したが、設定を管理するモードは教示モードに限定されない。例えば、教示モードに加え、再生モードの設定を管理してもよい。再生モードは、マニピュレータ3に教示した動作情報に基づいて、マニピュレータ3を実際に動作させ、マニピュレータ3の動きを確認するモードである。したがって、教示モード及び再生モードは、マニピュレータ3を動作させるための動作モードに含まれる。
【0091】
第3変形例では、動作モードとして、例えば、上述した実施形態で説明した直感操作モード、ロボット座標系移動モード及び各軸操作モードに加え、再生モードを設定することができる。教示装置1及びロボット制御装置2の各種機能は、上述した実施形態又は第2変形例と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0092】
第3変形例に係るロボット制御システムによれば、例えば、以下のような利用が可能になる。ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとを分離して、直感教示デバイス1bを直感操作モードで操作した後に、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとを結合して、再生モードでマニピュレータ3の動きを確認している最中に、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとを分離すると、直感教示デバイス1bを直感操作モードで操作することが可能になる。
【0093】
この場合、例えば、再生しているマニピュレータ3の動きに違和感や異変等が生じた場合に、直感教示デバイス1bを分離し、その直感教示デバイス1bを操作してマニピュレータ3の動きを直感的に操作することで、違和感や異変等を解消することが可能となる。
【0094】
上記の利用を考慮して、例えば、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとを結合して再生モードを利用している時に、ティーチペンダント1aと直感教示デバイス1bとを分離すると、前回分離時の設定にかかわらず、直感操作モードに切り替わることにしてもよい。このとき、切り替わるモードを、直感操作モード以外のモードに指定できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…教示装置、1a…ティーチペンダント、1b…直感教示デバイス、2…ロボット制御装置、3…マニピュレータ、11a、11b…制御部、12a、12b…記憶部、13a、13b…通信部、14a、14b…表示部、15a、15b…入力部、16a、16b…接続部、17…動き検出部、21…制御部、22…記憶部、23…通信部、31…多関節アーム、32…溶接トーチ、100…ロボット制御システム、111a、111b…送信部、112…検知部、113…権限変更部、121…権限情報、211…受信部、212…モード管理部、221…教示モード情報、222…適用教示モード、223…動作情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6