(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014073
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】防汚物品
(51)【国際特許分類】
C08G 18/28 20060101AFI20230119BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20230119BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20230119BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20230119BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20230119BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20230119BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20230119BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230119BHJP
【FI】
C08G18/28 065
C08G18/08 038
C08G18/32 006
C08K5/3445
C08L75/04
C09D175/04
C09D5/16
C09D7/63
【審査請求】有
【請求項の数】51
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022168042
(22)【出願日】2022-10-20
(62)【分割の表示】P 2019553875の分割
【原出願日】2018-03-29
(31)【優先権主張番号】1750367-3
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(71)【出願人】
【識別番号】517385405
【氏名又は名称】アイ - テック エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イサクソン、ダン
(72)【発明者】
【氏名】ゲートバール、ヘンリク
(57)【要約】
【課題】 防汚物品、ならびにそのような防汚物品を製造するための方法およびキットを提供することである。
【解決手段】 本実施形態は、ポリウレタンと、防汚物品の0.1重量%からの量でポリウレタンのポリマーマトリックス中に存在するメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩とを含む防汚物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防汚物品であって、
ポリウレタンと、
前記防汚物品の0.1重量%からの量で前記ポリウレタンのポリマーマトリックス中に存在する、メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくはその塩と
を含む防汚物品。
【請求項2】
メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩と溶媒とを混合して、メデトミジン溶液を形成するステップと、
前記メデトミジン溶液を、分子当たり少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1種のイソシアナートおよび少なくとも1種のポリオールと反応させてポリウレタンを形成するステップであって、前記メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩は、前記ポリマーマトリックス中に存在する、ステップと、
前記ポリウレタンを前記防汚物品に形成するステップであって、前記メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩は、前記防汚物品の少なくとも0.1重量%の量で存在する、ステップと
により得ることができる、請求項1に記載の防汚物品。
【請求項3】
メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩と、ジオール、ポリオール、ジアミン、ポリアミン、およびそれらの混合物からなる群、好ましくはジオール、ジアミン、またはそれらの混合物からなる群から選択される溶媒、より好ましくは1,4-ブタンジオールと混合することを含む、請求項2に記載の防汚物品。
【請求項4】
メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩と、前記メデトミジン溶液を前記少なくとも1種のイソシアナートおよび前記少なくとも1種のポリオールと反応させる際に鎖延長剤および/または架橋剤として使用される溶媒とを混合することを含む、請求項2または3に記載の防汚物品。
【請求項5】
メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩を前記溶媒に溶解して、前記メデトミジン溶液の0.1~20重量%まで、好ましくは前記メデトミジン溶液の5~20重量%まで、より好ましくは前記メデトミジン溶液の10~20重量%までのメデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩を含む前記メデトミジン溶液を形成することを含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の防汚物品。
【請求項6】
前記メデトミジン溶液を反応させるステップが、前記メデトミジン溶液をメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)および少なくとも1種のポリオールと反応させてポリウレタンを形成することを含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の防汚物品。
【請求項7】
前記メデトミジン溶液を反応させるステップが、前記メデトミジン混合物を、MDIならびに少なくとも1種のポリエーテルポリオール、少なくとも1種のポリエステルポリオール、または少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび少なくとも1種のポリエステルポリオールの混合物と反応させることを含む、請求項6に記載の防汚物品。
【請求項8】
前記防汚物品の0.1~2重量%まで、好ましくは0.1~1.5重量%まで、より好ましくは0.1~1重量%までのメデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の防汚物品。
【請求項9】
ポリウレタン、
前記防汚物品の0.1重量%からの量で前記ポリマーマトリックス中に存在する、メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩、
任意選択で、少なくとも1種の顔料、
任意選択で、メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩以外の少なくとも1種の殺生物剤、および
任意選択で、少なくとも1種の制御放出剤
からなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の防汚物品。
【請求項10】
前記防汚物品が、
ポリウレタン、
前記防汚物品の0.1重量%からの量で前記ポリマーマトリックス中に存在する、メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩、
任意選択で、少なくとも1種の顔料、
任意選択で、メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩以外の少なくとも1種の殺生物剤、および
少なくとも1種の制御放出剤
からなり、メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩、および/あるいは、メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩以外の前記少なくとも1種の任意選択の殺生物剤が、前記少なくとも1種の制御放出剤に少なくとも部分的に結合している、請求項9に記載の防汚物品。
【請求項11】
防汚コーティング、防汚フィルム、および防汚塗料からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の防汚物品。
【請求項12】
プロペラトンネル、ガイドベーン、フェンダー、船体、係留機器、水中ロープ、水中ワイヤーおよび水中ネットからなる群から選択される水中または水面下デバイスまたは構造の防汚コーティング、防汚フィルムまたは防汚塗料である、請求項11に記載の防汚物品。
【請求項13】
曲げ補強材、曲げ制限器、ビーチバンパー、フェンダー、および係留機器からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の防汚物品。
【請求項14】
防汚物品の製造方法であって、
メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と溶媒とを混合して、メデトミジン溶液を形成するステップと、
前記メデトミジン溶液を、分子当たり少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1種のイソシアナートおよび少なくとも1種のポリオールと反応させてポリウレタンを形成するステップであって、前記メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩は、前記ポリウレタンのポリマーマトリックス中に存在するステップと、
前記ポリウレタンを前記防汚物品に形成するステップであって、前記メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩は、前記防汚物品の少なくとも0.1重量%の量で存在するステップと
を含む方法。
【請求項15】
メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩と、ジオール、ポリオール、ジアミン、ポリアミン、およびそれらの混合物からなる群、好ましくはジオール、ジアミン、またはそれらの混合物からなる群から選択される溶媒、より好ましくは1,4-ブタンジオールと混合することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩と、前記メデトミジン溶液を前記少なくとも1種のイソシアナートおよび前記少なくとも1種のポリオールと反応させる際に鎖延長剤および/または架橋剤として使用される溶媒とを混合することを含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩を前記溶媒に溶解して、前記メデトミジン溶液の0.1~20重量%まで、好ましくは前記メデトミジン溶液の5~20重量%まで、より好ましくは前記メデトミジン溶液の10~20重量%までのメデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩を含む前記メデトミジン溶液を形成することを含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記メデトミジン溶液を反応させるステップが、前記メデトミジン溶液をメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)および少なくとも1種のポリオールと反応させてポリウレタンを形成することを含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記メデトミジン溶液を反応させるステップが、前記メデトミジン溶液を、MDIならびに少なくとも1種のポリエーテルポリオール、少なくとも1種のポリエステルポリオール、または少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび少なくとも1種のポリエステルポリオールと反応させることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリウレタンを前記防汚物品に形成するステップが、
前記メデトミジン溶液、前記少なくとも1種のイソシアナートおよび前記少なくとも1種のポリオールの混合物を表面に噴霧して、コーティング、フィルムまたは塗料を形成することと、
前記表面上の前記コーティング、前記フィルムまたは前記塗料を硬化させて、前記防汚物品を形成することと
を含む、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリウレタンを前記防汚物品に形成するステップが、
前記メデトミジン溶液、前記少なくとも1種のイソシアナートおよび前記少なくとも1種のポリオールの混合物を型内で成形またはキャストすることと、
前記型内の前記混合物を硬化させて、前記防汚物品を形成することと
を含む、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
防汚物品を製造するためのキットであって、
少なくとも1種のポリオールと、
分子当たり少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1種のイソシアナートと、
溶媒と、
前記防汚剤の少なくとも0.1重量%のメデトミジン濃度を達成するのに十分な量のメデトミジン、またはそのエナンチオマーもしくは塩と、
任意選択で、触媒と、
任意選択で、少なくとも1種の鎖延長剤および/または架橋剤と、
任意選択で、少なくとも1種の乾燥剤と、
任意選択で、少なくとも1種の顔料と、
任意選択で、メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩以外の少なくとも1種の殺生物剤と、
任意選択で、少なくとも制御放出剤と
からなるキット。
【請求項23】
前記溶媒が、ジオール、ポリオール、ジアミン、ポリアミン、およびそれらの混合物からなる群、好ましくは、ジオール、ジアミン、またはそれらの混合物からなる群から選択される、より好ましくは、1,4-ブタンジオールである、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記溶媒が、鎖延長剤および/または架橋剤である、請求項22または23に記載のキット。
【請求項25】
前記少なくとも1種のイソシアナートが、メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)である、請求項22~24のいずれか一項に記載のキット。
【請求項26】
前記少なくとも1種のポリオールが、少なくとも1種のポリエーテルポリオール、少なくとも1種のポリエステルポリオール、または少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび少なくとも1種のポリエステルポリオールの混合物である、請求項22~25のいずれか一項に記載のキット。
【請求項27】
メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩、および前記溶媒を含むメデトミジン溶液を形成するのに十分な量の、メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩、および前記溶媒を含み、メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩は、前記メデトミジン溶液の0.1~20重量%まで、好ましくは前記メデトミジン溶液の5~20重量%まで、より好ましくは前記メデトミジン溶液の10~20重量%までである、請求項22~26のいずれか一項に記載のキット。
【請求項28】
前記少なくとも1種の任意選択の制御放出剤が、金属酸化物、好ましくは酸化チタン(II)、酸化銅(II)、酸化銅(I)または酸化亜鉛(II)でできたナノ粒子である、請求項22~27のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、一般に防汚物品、ならびにそのような防汚物品を製造するための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
生物汚損は、水中構造物にいくつかの問題をもたらしている。したがって、一般に生物汚損を防止および低減する必要性がある。現在、生物汚損を防止する特定のコーティングの使用、表面のコーティングまたは塗料の添加剤としての防汚活性を有する毒素または殺生物剤の使用、および表面の機械的洗浄の使用を含む多くの防汚アプローチが採用されている。
【0003】
海洋および淡水施設への生物汚損の低減には、経済的利点および環境的利点の両方がある。例えば、いくつかの例を挙げると、生物汚損は、船舶の燃料効率を低下させ、生物汚損洗浄手順の間の船舶の有益な運転時間を短縮し、冷却水装置の冷却力を低下させる。
【0004】
ある特定のコーティングは、生物を物理的に抑止する表面を提供し、生物は表面に容易に付着できないようにする。これらの種類のコーティングは一般に、シリコーンゴムを含むエラストマー等のように、疎水性であり、平滑であり、滑りやすく、また摩擦が低い(参考文献[1]~[3])。そのようなコーティングは、典型的には、防汚コーティングではなく、汚損剥離コーティングと呼ばれる。汚損剥離コーティングは、例えばASTM D 5618-94(参考文献[4])を使用したフジツボ付着測定で特性決定されている。汚損剥離コーティングは通常、0.4MPa未満の平均フジツボ付着値を有する。いくつかの一般的な材料の平均フジツボ付着値は、シリコーン表面で0.05MPa、ポリプロピレン表面で0.85MPa、ポリカーボナート表面で0.96MPa、エポキシ表面で1.52MPa、ウレタン表面で1.53MPaである(参考文献[5])。したがって、参考文献[5]で試験された表面のうち、シリコーンが最も優れた汚損剥離特性を示したのに対し、ウレタンは最も汚損剥離特性が低かった。同様の結果が参考文献[6]に示されており、これはポリウレタンがシリコーンの表面と比較して非常に高いフジツボ接着強度を有することを開示している。
【0005】
当技術分野では、自己研磨コーティング系が広く使用されており、1970年代にトリブチリンベースの自己研磨コポリマーが成功裏に導入された。自己研磨コーティング(SPC)は経時的な劣化が緩やかであるため、付着した有機体はコーティングされた表面から脱落または落下する。劣化は、コーティング内の成分、通常は結合剤成分の緩やかな制御加水分解によって引き起こされることが多い。トリブチリンベースの自己研磨コポリマーの毒性に対する懸念が、より安全な代替品の開発を促し、今日では、特定の自己研磨コーティング系に利用可能な多くの選択肢がある。
【0006】
毒素または殺生物剤も広く使用されている。毒素または殺生物剤は、生物の生理学的破壊もしくは妨害を引き起こす、または生物を殺すことができる。有毒または殺生物効果は、生物の付着前、付着中、または付着後に生じ得、最終的な結果として、生物はコーティングされた表面から落下する。この目的のために、生物に応じて多くの異なる物質を使用して表面の汚損が抑止されている。
【0007】
さらに、コーティング系には通常、添加された毒素または殺生物剤以外に、樹脂、コーティング系の機械的特性を変更する可塑剤、および顔料等の多くの成分が含まれている。これらの成分はすべて、コーティング系の組成を微調整して、最終的なコーティング系で、望ましい特定の特性を有するブレンドを実現することができる。
【0008】
地震探査システム用の保護用の取り外し可能な皮膚セクションが、当技術分野において知られている(参考文献[7])。保護用の取り外し可能な皮膚セクションは、柔軟なシートと、柔軟なシートの端部を接合するように構成された可逆的閉鎖システムとを含む。
【0009】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)および有機金属防汚添加剤を含む防汚熱可塑性ポリウレタン組成物が、当技術分野において知られている(参考文献[13])。TPU組成物は、18~26mJ/m2の表面エネルギーを有する。
【0010】
しかしながら、防汚特性に加えて、水中または水面下設備および機器での使用に望ましい特性を有する防汚物品が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
一般的な目的は、防汚物品、ならびにそのような防汚物品を製造するための方法およびキットを提供することである。
【0012】
具体的な目的は、水中または水面下設備および機器での使用に適した特性を有する防汚物品を提供することである。
【0013】
これらおよび他の目的は、本明細書に開示される実施形態によって達成される。
【0014】
実施形態の一態様は、防汚物品であって、ポリウレタンと、防汚物品の0.1重量%からの量でポリウレタンのポリマーマトリックス中に存在するメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩とを含む防汚物品に関する。
【0015】
実施形態の別の態様は、防汚物品の製造方法に関する。その方法は、メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と溶媒とを混合して、メデトミジン溶液を形成するステップを含む。メデトミジン溶液は、分子当たり少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1種のイソシアナートおよび少なくとも1種のポリオールと反応して、ポリウレタンを形成する。メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩は、ポリウレタンのポリマーマトリックス中に存在する。この方法はまた、ポリウレタンを防汚物品に形成するステップを含む。メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩は、防汚物品の少なくとも0.1重量%の量で存在する。
【0016】
実施形態のさらなる態様は、防汚物品を製造するためのキットに関する。キットは、少なくとも1種のポリオール、分子当たり少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1種のイソシアナート、溶媒、防汚剤の少なくとも0.1重量%のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩の濃度を達成するのに十分な量のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩、任意選択で、触媒、任意選択で、少なくとも1種の鎖延長剤および/または架橋剤、任意選択で、少なくとも1種の乾燥剤、任意選択で、メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩以外の少なくとも1種の殺生物剤、ならびに任意選択で、少なくとも制御放出剤からなる。
【0017】
実施形態は、そのさらなる目的および利点とともに、添付の図面と併せて以下の説明を参照することにより最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】15ヶ月間の水中浸漬後の重量で0%(左)、0.1%(中央)および1.0%(右)のメデトミジンを含むポリウレタンパネルを示す図である。メデトミジンを含むポリウレタンパネルにはフジツボは見られないが、メデトミジンを含まない対照ポリウレタンパネルにはフジツボが多く見られる。
【
図2】44日間の水中浸漬後の重量で0.37%のメデトミジンを含むポリウレタンパネルを示す図(
図2A、
図2B)である。フジツボはポリウレタンパネルには見られないが、アルミニウムフレームはフジツボで覆われている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、実施形態の前述および他の態様を、本明細書で提供される説明および方法論に関してより詳細に説明する。本発明は、異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、これらの実施形態は、本開示が網羅的かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供されている。
【0020】
当業者は、本明細書の説明で使用される用語が特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明を限定することを意図していないことを理解するであろう。別段に定義されない限り、説明で使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0021】
実施形態の説明で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むことを意図している。したがって、そのような参照は、関連する構成要素または整数の「1つまたは複数」、例えば1つへの参照で置き換えることができる。本明細書で使用される場合、特定の構成要素または整数の「1つまたは複数」へのすべての言及は、そのような構成要素または整数の1つから複数、例えば2つ、3つまたは4つを指すと理解される。特定の構成要素または整数の「1つまたは複数」への言及は、1つのそのような整数への特定の言及を含むことが理解される。また、本明細書で使用される場合、「および/または」は、列挙された関連する項目の1つまたは複数のありとあらゆる組合せを指し、包含する。さらに、化合物の量、用量、時間、温度等の測定可能な値を指す場合、本明細書で使用される「約」という用語は、指定された量の20%、10%、5%、1%、0.5%、またはさらには0.1%を指す。範囲、例えばxからyの範囲が使用される場合、測定可能な値が約xから約yの範囲、またはxおよびyを含むその中の任意の範囲または値であることを意味する。本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、述べられた特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素および/または群の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を除外しないことがさらに理解される。
【0022】
「有効量」は、本明細書で使用される場合、所望の効果を生み出すのに十分な化合物、組成物および/または配合物の量を指す。
【0023】
本明細書で言及されるすべての特許、特許出願、および刊行物は、その全体が参照により組み込まれる。用語が矛盾する場合、本明細書が優先される。
【0024】
本実施形態は、概して、防汚物品または防汚製品、ならびにそのような防汚物品または防汚製品を製造するための方法およびキットに関する。
【0025】
実施形態の防汚物品は、ポリウレタンの使用に基づいている。より具体的には、本実施形態は、ポリウレタンでできており、ポリウレタンのポリマーマトリックス中に存在する殺生物剤を含み、それにより効率的な防汚物品を達成する防汚物品に関する。
【0026】
効率的な防汚材料は、0.4MPa未満のフジツボ付着値を有するべきである(参考文献[5])が、ポリウレタン製品は、1.5MPa超の非常に乏しいフジツボ付着値を考慮すると、防汚物品の製造に適していることは極めて驚くべきことである。同様の発見が(参考文献[6])に示されており、ポリウレタンは11の試験された材料の中で最も低い防汚特性を有していた。それにより、参考文献[6]は、防汚特性を有すると特定されたフッ素化化合物の唯一の代替物はシリコーンであると結論付けた。
【0027】
しかしながら、本明細書に提示される実験データは、実施形態による物品および製品が優れた防汚特性を有し、非常に長期間、すなわち少なくとも15ヶ月間水中に浸漬されても物品の表面へのフジツボの付着および成長を効率的に防止することを示している。したがって、実施形態の防汚物品は、防汚物品上のフジツボの付着および成長を防止または少なくとも著しく低減もしくは阻害するだけでなく、実施形態のこの防汚特性は長期間にわたって安定および有効である。
【0028】
ポリウレタンは、水中に存在する物品、またはそのような水中もしくは水面下物品のコーティングもしくは塗料の製造に役立ついくつかの特性を有する。これらの特性には、とりわけ、高い耐衝撃性が含まれる。これは、実施形態によるポリウレタンでできた水面下物品または実施形態のポリウレタンコーティングを有する水面下物品が、破損することなく衝撃および強い力に耐えることができることを意味する。ポリウレタンの別の有利な特性は、高い耐荷重能力である。これは、実施形態のポリウレタンを使用して、破壊またはせん断破壊することなく、高荷重にさらされる可能性のある水面下物品を製造できることを意味する。ポリウレタンのさらなる利点は、軽量(低密度)、非導電性、切断、引き裂き、摩耗耐性、耐食性、耐油性、オゾンおよび放射線耐性、ならびに耐加水分解性を含む。これらの特性はすべて、様々な水中または水面下設備、デバイス、機器に有益である。ポリウレタンはまた、柔軟性を持たせることができ、弾性記憶を有し、これはいくつかの水中または水面下用途に役立ち得る。
【0029】
本実施形態は、ポリウレタンのポリマーマトリックスに存在する殺生物剤としてのメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩の使用に基づいている。
【0030】
(±)-4,5-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル)-1H-イミダゾールとも呼ばれるメデトミジン(式Iを参照されたい)は、高度に選択的なα2-アドレナリン受容体アゴニストである。
【化1】
【0031】
メデトミジンはフジツボの非常に効率的な阻害剤であり、1~10nMの低濃度ですでに幼虫の定着を妨げる。メデトミジンはフジツボキプリド幼虫のオクトパミン受容体と相互作用し、幼虫の足を跳ね返らせ、それによって幼虫がメデトミン含有または放出性表面に定着するのを防ぐ。メデトミジンは、チューブワーム等の他の硬質汚損物にも効果を示す。
【0032】
参考文献[8]で最初に説明されたメデトミジンは、それぞれレボメデトミジンとデクスメデトミジンという一般名を有する2つの光学エナンチオマー、左旋性および右旋性光学異性体(参考文献[9]、[10])のラセミ混合物である。メデトミジンおよび関連中間体のラセミ混合物の調製プロセスは、参考文献[11]に開示されている。以前のメデトミジン合成の多くは、出発材料として高価な4-置換イミダゾール誘導体を使用していた。しかし、参考文献[11]に示されている合成は、手頃な価格の市販の出発物質から作製されており、代わりに合成中にイミダゾール環が形成される。
【0033】
メデトミジン、デクスメデトミジンおよびレボメデトミジンという用語は、本明細書で使用される場合、別段に具体的に指定されない限り、その塩および溶媒和物を含む。メデトミジン、デクスメデトミジンおよびレボメデトミジンの許容される塩は、酸付加塩および塩基付加塩を含む。そのような塩は、従来の手段によって、例えば、メデトミジン、デクスメデトミジン、およびレボメデトミジンの遊離酸または遊離塩基形態と、1または複数当量の適切な酸または塩基との、任意選択で溶媒中または塩が不溶である媒体中での反応に続く、標準的技術、例えば真空もしくは凍結乾燥を用いた溶媒または媒体の除去よって形成され得る。塩は、例えば適切なイオン交換樹脂を使用して、塩の形態のメデトミジン、デクスメデトミジンおよびレボメデトミジンの対イオンを別の対イオンと交換することによって調製することもできる。疑念を避けるために、メデトミジン、デクスメデトミジンおよびレボメデトミジンの他の許容可能な誘導体、例えば溶媒和物、プロドラッグ等が本発明の範囲内に含まれる。
【0034】
メデトミジンのエナンチオマーは、当分野で知られているキラル分割またはキラルカラムクロマトグラフィーを使用して、ラセミ体またはエナンチオマーの他の混合物を分離することにより、互いに単離および分離することができる。代替として、所望のエナンチオマーは、キラル合成または不斉合成とも呼ばれるエナンチオ選択的合成によって調製することができ、これは、基質分子内に1つまたは複数のキラリティの新たな要素が形成され、不等量の立体異性体生成物を生成する化学反応または反応シーケンスとして定義される。
【0035】
メデトミジンは、I-Tech AB社からSELEKTOPE(登録商標)という製品名で販売されている。
【0036】
以下において、本発明の様々な態様および実施形態を、メデトミジンを参照してさらに詳細に説明する。これらの態様および実施形態は、本明細書において集合的にメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と示される、メデトミジンのエナンチオマー、例えばデクスメデトミジンもしくはレボメデトミジン、またはメデトミジンの塩、デクスメデトミジンの塩もしくはレボメデトミジンの塩を包含する。したがって、本明細書におけるメデトミジンへの言及は、別段の指定がない限り、メデトミジン、メデトミジンの塩、デクスメデトミジン、デクスメデトミジンの塩、レボメデトミジンおよび/またはレボメデトミジンの塩に関するとみなされるべきである。
【0037】
実施形態の一態様は、防汚物品であって、ポリウレタンと、防汚物品の0.1重量%からの量でポリウレタンのポリマーマトリックス中に存在するメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩とを含む防汚物品に関する。
【0038】
本明細書で提示される実験データは、ポリウレタンでできており、ポリマーマトリックス中に存在する少なくとも0.1重量%のメデトミジンを含む防汚物品が、優れた防汚特性を有し、防汚物品の表面へのフジツボおよび他の硬質汚損物の定着を効率的に防止することを示す。
【0039】
メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩は、防汚物品におけるポリウレタンのポリマーマトリックス中に存在する。メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩は、ポリマーマトリックスからゆっくりと浸出し、それにより、防汚物品の表面および/またはその付近で利用可能となる。そこで、メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩は、その防汚特性を発揮し、それにより防汚物品の表面へのフジツボの付着および成長を防止または少なくとも著しく低減することができる。
【0040】
これは、最初にTPUを生成し、次いでTPUおよび防汚添加剤を配合することによってTPU組成物が形成される参考文献[13]とは明らかに対照的である。参考文献[13]で得られたTPU組成物は防汚性に劣っており、1ヶ月後でもフジツボの成長を伴う。さらに重要なことに、参考文献[13]のTPU組成物のいかなる防汚効果も急速に低下し、数か月後にTPU物品がフジツボでほぼ完全に覆われた。
【0041】
したがって、ポリウレタンのポリマーマトリックス中に防汚添加剤メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩を形成する本実施形態による防汚物品を製造することは、優れた長期にわたる防汚効果を有する防汚物品を達成するために重要であると思われる 。
【0042】
一実施形態において、防汚物品は、メデトミジンと溶媒とを混合してメデトミジン溶液を形成することにより得ることができる。メデトミジン溶液は、分子当たり少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1種のイソシアナートおよび少なくとも1種のポリオールと反応して、ポリウレタンを形成する。メデトミジンは、ポリマーマトリックス中に存在する。ポリウレタンは、防汚物品に形成される。実施形態によれば、メデトミジンは、防汚物品の少なくとも0.1重量%の量で存在する。
【0043】
溶媒は、メデトミジンを溶解してメデトミジン溶液を形成することができる。溶媒は、好ましくは、ポリマーマトリックス中にメデトミジンを含むポリウレタンを形成するために使用される他の成分または構成成分、例えば少なくとも1種のイソシアナートおよび少なくとも1種のポリオールとも適合する。
【0044】
一実施形態において、溶媒は、ジオール、トリオール等のポリオール、ジアミン、トリアミン等のポリアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0045】
そのような溶媒の非限定的な例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、フェニルジエタノールアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトールおよびN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンが含まれる。
【0046】
特定の実施形態において、溶媒は、ジオール、ジアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0047】
別の特定の実施形態では、溶媒は、ジオール、好ましくは1,4-ブタンジオールである。
【0048】
特定の実施形態において、溶媒は、ポリウレタンポリマーおよびポリマーマトリックスを形成する重合反応に関与する。例えば、溶媒は、重合反応におけるいわゆる鎖延長剤、架橋剤、または少なくとも1種の鎖延長剤および少なくとも1種の架橋剤の混合物であってもよい。
【0049】
したがって、一実施形態において、溶媒は、メデトミジン溶液を少なくとも1種のイソシアナートおよび少なくとも1種のポリオールと反応させる際の鎖延長剤および/または架橋剤として使用される。
【0050】
したがって、一実施形態において、メデトミジン溶液を形成するために、メデトミジンを最初に1,4-ブタンジオール等の溶媒に溶解することが好ましい。一実施形態において、メデトミジン溶液は、メデトミジン溶液の0.1~20重量%まで、好ましくはメデトミジン溶液の5~20重量%まで、より好ましくはメデトミジン溶液の10~20重量%までのメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩を含む。
【0051】
次いで、以下の一般化された反応スキームに示すように、メデトミジン溶液を重合反応において少なくとも1種のイソシアナートおよび少なくとも1種のポリオールと反応させてポリウレタンを形成するが、式中、R1およびR2は、それぞれ特定のイソシアナートおよびポリオールを定義する。
nO=C=N-R1-N=C=O+nHO-R2-OH→-[CO-NH-R1-NH-CO-O-R2-O]n-
【0052】
イソシアナートは、分子当たり少なくとも2つのイソシアナート基を含む。一実施形態において、イソシアナートは、ジイソシアナートである、すなわち分子当たり正確に2つのイソシアナート基を有する。しかしながら、実施形態はこれに限定されず、トリイソシアナート、テトライソシアナート、分子当たり5つ以上のイソシアナート基を有するイソシアナート、またはジイソシアナート、トリイソシアナート、テトライソシアナートおよび分子当たり5つ以上のイソシアナート基を有するイソシアナートの少なくとも2つの混合物の使用も含み得る。そのようなイソシアナートの例は、ポリマージフェニルメタンジイソシアナートであり、これは2つ、3つ、および4つ以上のイソシアナート基を有する分子の混合物であり、それにより、分子当たりの平均イソシアナート基数は2を超え、例えば2.7である。
【0053】
イソシアナートは、ジフェニルジイソシアナート(MDI)、トルエンジイソシアナート(TDI)、もしくはそれらの混合物等の芳香族イソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、もしくはそれらの混合物等の脂肪族イソシアナート、または、少なくとも1種の芳香族イソシアナートおよび少なくとも1種の脂肪族イソシアナートの混合物から選択され得る。特定の実施形態において、イソシアナートは、MDIである。
【0054】
ポリオールは、ポリウレタン反応の他の主要な部分である。一実施形態において、ポリオールは、約400~約7000Da等の比較的高分子量を有する。それらは典型的には長くて柔軟な分子であり、しばしばエラストマー分子の骨格と呼ばれる。
【0055】
特定の実施形態において、ポリウレタン反応にポリエーテルポリオールが使用される。そのようなポリエーテルポリオールの非限定的な例には、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、およびそれらの混合物が含まれる。
【0056】
別の特定の実施形態において、ポリオールは、ポリエステルポリオールである。ポリエステルポリオールは、アジピン酸をベースとすることが多く、しばしばポリエーテルポリオールよりも複雑である。それらは優れた機械的特性を与えるが、加水分解による劣化に敏感である。ポリエステルポリオールの例は、ヒドロキシル末端ポリブタジエン(HTPB)である。
【0057】
使用可能な他のポリオールには、ポリカーボナートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオールおよびポリスルフィドポリオールが含まれる。
【0058】
さらに特定の実施形態において、少なくとも2種のポリオールの混合物、例えば少なくとも2種のポリエーテルポリオールの混合物、少なくとも2種のポリエステルポリオールの混合物、少なくとも2種のポリカーボナートポリオールの混合物、少なくとも2種のポリカプロラクトンポリオールの混合物、少なくとも2種のポリブタジエンポリオールの混合物、少なくとも2種のポリスルフィドポリオールの混合物、または、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボナートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、およびポリスルフィドポリオールからなる群から選択される少なくとも1種のポリオール、ならびにこの群から選択される少なくとも1つの他のポリオールの混合物が使用される。
【0059】
特定の実施形態において、ポリオールは、ポリエーテルポリオールもしくはポリエーテルポリオールの混合物、ポリエステルポリオールもしくはポリエステルポリオールの混合物、または少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび少なくとも1種のポリエステルポリオールの混合物である。
【0060】
一実施形態において、メデトミジン溶液は、触媒の存在下で、および/または紫外線による活性化によって、少なくとも1種のイソシアナートおよび少なくとも1種のポリオールと反応する。使用され得る触媒の非限定的な例には、三級アミン、例えばDABCOとも呼ばれる1,4-ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタン、トリエチレンジアミン(TEDA)、N、N-ジメチルエタノールアミン(DMEA)、1,3,5-トリス(3-[ジメチルアミノ]プロピル)-ヘキサヒドロ-s-トリアジン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル、N,N’-ジメチルピペラジン、またはビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、および金属化合物、例えば酢酸カリウム、オクタン酸カリウム、オクタン酸第一スズ、ネオデカン酸第一スズ、ジラウリン酸ジブチルスズまたはオクタン酸ビスマスが含まれる。
【0061】
したがって、一実施形態において、反応は、触媒の存在下で、および/または紫外線の活性化によって、メデトミジン溶液を少なくとも1種のイソシアナートおよび少なくとも1種のポリオールと反応させることを含む。
【0062】
一実施形態において、少なくとも1種の鎖延長剤(f=2)および/または少なくとも1種の架橋剤(f≧3)を反応に添加して、ポリウレタンポリマーのポリマー形態に影響を与えることができる。そのような鎖延長剤および架橋剤は、低分子量のヒドロキシルおよびアミン末端化合物である。非限定的な例には、二官能性(f=2)ヒドロキシル化合物、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、HQEE、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、およびフェニルジエタノールアミン、二官能性(f=2)アミン化合物、例えばジエチルトルエンジアミンおよびジメチルチオトルエンジアミン、三官能性(f=3)ヒドロキシル化合物、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオールおよびトリエタノールアミン、ならびに四官能性(f=4)ヒドロキシル化合物、例えばペンタエリスリトールおよびN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンが含まれる。
【0063】
一実施形態において、重合反応中に水分を除去するために、少なくとも1種の乾燥剤が使用される。一般的に、ポリオールは水を吸収する傾向がある。この水または水分は、次いで少なくとも1種のイソシアナートと反応して、とりわけ二酸化炭素を生成し得る。二酸化炭素は、防汚物品に気泡を生じさせ、ポリマーマトリックスを弱める可能性がある。
【0064】
少なくとも1種の乾燥剤は、ポリウレタンの重合および反応に関連して従来使用される任意の乾燥剤であってもよい。特定の実施形態において、少なくとも1種の乾燥剤は、ゼオライト、またはゼオライトの混合物である。使用され得るゼオライトの非限定的で例示的な例には、ゼオライト3A、4A、5Aおよび10Aが含まれる。乾燥剤の他の例には、シラン、例えばビニルシラン、例えばDYNASLAN(登録商標)VTMO、オルトケイ酸テトラアルキル、例えばオルトケイ酸テトラエチル、および金属硫酸塩が含まれる。
【0065】
したがって、一実施形態において、反応は、メデトミジン溶液を少なくとも1種のイソシアナート、少なくとも1種のポリオール、任意選択で少なくとも1種の鎖延長剤および/または少なくとも1種の架橋剤、任意選択で少なくとも1種の乾燥剤と、任意選択で触媒の存在下で、および/または紫外線の活性化により反応させることを含む。
【0066】
一実施形態において、防汚物品は、防汚物品の0.1~2重量%まで、好ましくは0.1~1.5重量%まで、より好ましくは0.1~1重量%までのメデトミジンを含む。
【0067】
一実施形態において、防汚物品は、ポリウレタンポリマーマトリックスを有するポリウレタン、防汚物品の0.1重量%からの量でポリマーマトリックス中に存在するメデトミジン、任意選択で少なくとも1種の顔料、任意選択でメデトミジン以外の少なくとも1種の殺生物剤、および任意選択で少なくとも1種の制御放出剤からなる。
【0068】
したがって、一実施形態において、防汚物品は、ポリウレタン、ならびにメデトミジン、ならびに任意選択で1種もしくは複数種の顔料、任意選択で1種もしくは複数種の殺生物剤、および/または任意選択で防汚物品中の活性剤の放出を制御する少なくとも1種の薬剤から実質的になる。これは、防汚剤が非常に少ない成分でできていることを意味する。これは、防汚物品を形成するために化合物の複雑な、およびそれにより高価な混合物をしばしば含む従来技術の防汚組成物と比較して、この実施形態の重要な利点である。
【0069】
任意選択の制御放出剤は、大きな比表面積、すなわち表面積対粒子体積の高い比率を提供するナノ粒子を含むことができ、その上に1つまたは複数の活性剤が吸着され得る。そのような制御放出剤を使用して、吸着された活性剤の所望の放出速度または期間を達成するために、ナノ粒子に吸着された任意の活性剤の放出を制御することができる。したがって、そのようなナノ粒子に吸着または別様に結合したメデトミジン等の活性剤は、優れた分散安定性を有する。制御放出剤として使用され得るナノ粒子の非限定的で例示的な例には、ナノ粒子サイズに配合された酸化銅(II)、酸化銅(I)、酸化チタン(II)、および酸化亜鉛(II)が含まれる。参考文献[12]を参照されたい。
【0070】
制御放出剤の他の例には、ポリマーが分解されるとメデトミジンおよび/または他の活性剤を放出する分解性ポリマー等のポリマーが含まれる。
【0071】
実際に、実施形態の防汚物品に含めることができ、防汚物品からのメデトミジンおよび/または他の活性薬剤の放出を制御するために使用できる任意の制御放出剤を、実施形態に従って使用することができる。
【0072】
特定の実施形態において、メデトミジンおよび/またはメデトミジン以外の少なくとも1種の任意選択の殺生物剤は、少なくとも1種の制御放出剤に少なくとも部分的に結合している。
【0073】
少なくとも1種の任意選択の顔料は、ポリウレタン物品、特にポリウレタンでできた水面下または水中製品に関連して従来使用される顔料の中から選択され得る。
【0074】
一実施形態において、メデトミジン以外の少なくとも1種の他の殺生物剤が防汚剤に含まれる。この少なくとも1種の他の殺生物剤は、防汚剤、殺藻剤、殺菌剤、除草剤、またはそれらの組合せであってもよい。
【0075】
実施形態に従って使用され得るメデトミジン以外のそのような殺生物剤の非限定的で例示的な例は、国際公開第2012/175469号パンフレットの11ページ16行目から12ページ10行目、および国際公開第2013/182641号パンフレットの10ページ22行目から13ページ2行目に列挙されており、その教示は、実施形態に従って使用され得る殺生物剤に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
実施形態に従って使用され得る他の非限定的な殺生物剤には、これらに限定されないが、クロロタロニル(2,4,5,6-テトラクロロベンゼン-1,3-ジカルボニトリル)、ジクロロフルアニド(N-{[ジクロロ(フルオロ)メチル]スルファニル}-N’,N’-ジメチル-N-フェニル硫酸ジアミド)、DCOIT(4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン)、シブトリン(2-N-tert-ブチル-4-N-シクロプロピル-6-メチルスルファニル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン)、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素)、トリルフルアニド(N-[ジクロロ(フルオロ)メチル]スルファニル-N-(ジメチルスルファモイル)-4-メチルアニリン)、亜鉛ピリチオン(ビス(2-ピリジルチオ)亜鉛1,1’-ジオキシド)、銅ピリチオン(ビス(2-ピリジルチオ)銅1,1’-ジオキシド)、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素)、シブトリン(2-N-tert-ブチル-4-N-シクロプロピル-6-メチルスルファニル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン)、ジクロロフルアニド(N-{[ジクロロ(フルオロ)メチル]スルファニル}-N’,N’-ジメチル-N-フェニル硫酸ジアミド)、亜鉛エタン-1,2-ジイルビス(ジチオカルバマート)、亜鉛ビス(ジメチルチオカルバマート、ジクロロフルアニド(N-{[ジクロロ(フルオロ)メチル]スルファニル}-N’,N’-ジメチル-N-フェニル硫酸ジアミド)、トリルフルアニド(N-[ジクロロ(フルオロ)メチル]スルファニル-N-(ジメチルスルファモイル)-4-メチルアニリン)、マンガンエチレン-1,2-ビスジチオカルバマートポリマー、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素)、シブトリン(2-N-tert-ブチル-4-N-シクロプロピル-6-メチルスルファニル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン)、およびそれらの混合物が含まれる。
【0077】
メデトミジンは、特にフジツボキプリド等の硬質汚損物に対して特異的な作用があるが、典型的には藻類の成長には影響しない。したがって、藻類の成長を防ぐために、殺藻剤等の少なくとも1種の他の殺生物剤を使用することもできる。
【0078】
一実施形態において、防汚物品は、水中または水面下デバイスまたは構造の防汚コーティング、防汚フィルムまたは防汚塗料である。この実施形態において、防汚物品は、水中または水面下デバイスまたは構造上にコーティング、フィルムまたは塗料として塗布される。次いで、メデトミジンおよびポリウレタンの混合物が、好ましくは、スプレーコーティング、フィルムまたは塗料の形態で水中または水面下デバイスまたは構造に塗布される。
【0079】
水中または水面下デバイスまたは構造は、例示的であるが非限定的な例として、プロペラトンネル、ガイドベーン、フェンダー、係留機器、水中ロープ、水中ワイヤー、水中ネット、船体等であってもよい。
【0080】
実施形態によるメデトミジンを含む噴霧可能なポリウレタンエラストマーは、例示的であるが非限定的な例として、BAYTEC(登録商標)TP PU0308およびDESMODUR(登録商標)TP PU0309をベースとして製造することができる。
【0081】
別の実施形態において、実施形態によるメデトミジンを含むポリウレタンは、水中または水面下物品の一部の形状に成形もしくはキャストすることができ、または本質的にそれからなることができる。同様の実施形態において、実施形態によるメデトミジンを含むポリウレタンは、水中または水面下物品のカバーの形状に成形またはキャストすることができる。これらの実施形態の防汚物品は、熱間または冷間キャストまたは成形で所望の形状に製造することができる。
【0082】
これらの実施形態による防汚物品の非限定的であるが例示的な例には、曲げ補強材、曲げ制限器、ビーチバンパー、フェンダーおよび係留機器が含まれる。カバーの形状の防汚物品は、ガイドベーン、石油探査のための様々な機器等の表面の汚損を防ぐために有利に使用され得る。
【0083】
メデトミジンを含む適切なポリウレタン物品は、ELASTURAN(登録商標)6005/178をベースとして製造され得る。
【0084】
したがって、実施形態による防汚物品は、水面下デバイスまたは構造物に塗布される防汚コーティング、防汚フィルムまたは防汚塗料であってもよい。実施形態による防汚物品は、代替的に、防汚性の水中または水面下構造またはデバイスの形態であってもよい。前者の場合、防汚効果は基本的に、水面下デバイスまたは構造に塗布された防汚コーティング、フィルムまたは塗料によって達成される。後者の場合、水面下または水中デバイスまたは構造は、メデトミジンを含むポリウレタンでできており、したがって、水面下または水中デバイスまたは構造自体が防汚効果を有する。
【0085】
したがって、防汚物品は、ポリウレタンでできており、本明細書で定義されるメデトミジンを含み、それにより防汚効果を有する、コーティング、フィルム、塗料等を含む、あらゆる物品、製品、デバイスまたは構造を意味する。
【0086】
本明細書でさらに開示されるように、イソシアナート、ポリオールおよびメデトミジン成分は混合またはブレンドされ、その時点で重合反応が開始される。ポリウレタンおよびメデトミジンの混合物をスプレーとして塗布する、または混合物の作用寿命(典型的にはポットライフと呼ばれる)の間に金型に混合物を充填し、硬化させて完成したポリウレタン製品もしくは物品を形成することができる。
【0087】
メデトミジンを含むスプレー可能なポリウレタンは、典型的には、キャスト可能なポリウレタンと比較してポットライフが短い。スプレー塗布は、ワークショップまたは現場で行うことができる。
【0088】
実施形態の別の態様は、防汚物品の製造方法に関する。方法は、メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と溶媒とを混合して、メデトミジン溶液を形成するステップを含む。方法はまた、メデトミジン溶液を、分子当たり少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1種のイソシアナートおよび少なくとも1種のポリオールと反応させてポリウレタンを形成するステップを含む。メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩は、ポリウレタンのポリマーマトリックス中に存在する。方法は、ポリウレタンを防汚物品に形成するステップをさらに含む。メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩は、防汚物品の少なくとも0.1重量%の量で存在する。
【0089】
一実施形態において、溶媒は、ジオール、ポリオール、ジアミン、ポリマミン、およびそれらの混合物からなる群、好ましくはジオール、ジアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはジオール、特に1,4-ブタンジオールである。
【0090】
一実施形態において、溶媒は、メデトミジン溶液を少なくとも1種のイソシアナートおよび少なくとも1種のポリオールと反応させる際の鎖延長剤および/または架橋剤として使用される。
【0091】
特定の実施形態において、方法は、メデトミジンを1,4-ブタンジオール等の溶媒に溶解してメデトミジン溶液を形成するステップを含む。メデトミジン溶液は、好ましくは最初にポリオールと混合またはブレンドされて、メデトミジンおよびポリオールの混合物を形成する。次いで、このメデトミジンおよびポリオールの混合物は、好ましくはイソシアナートと混合またはブレンドされる。
【0092】
一実施形態において、メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と、1,4-ブタンジオール等の溶媒とを混合するステップは、メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩を、1,4-ブタンジオール等の溶媒に溶解して、メデトミジン溶液の0.1~20重量%まで、好ましくはメデトミジン溶液の5~20重量%まで、より好ましくはメデトミジン溶液の10~20重量%までのメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩を含むメデトミジン溶液を形成することを含む。
【0093】
一実施形態において、メデトミジン溶液を反応させるステップは、メデトミジン溶液をMDIおよび少なくとも1種のポリオールと反応させてポリウレタンを形成することを含む。
【0094】
特定の実施形態において、鎖延長剤、架橋剤、顔料、乾燥剤等のさらなる添加剤、および/または他の殺生物剤等のメデトミジン以外の活性剤が使用される場合、これらはメデトミジン溶液に添加、ポリオールに添加、またはポリオールおよびメデトミジン溶液の混合物に添加することができる。
【0095】
特定の実施形態において、メデトミジン溶液を反応させるステップは、メデトミジン溶液をMDIならびに少なくとも1種のポリエーテルポリオール、少なくとも1種のポリエステルポリオール、または少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび少なくとも1種のポリエーテルポリオールの混合物と反応させることを含む。
【0096】
一実施形態において、ポリウレタンを防汚物品に形成するステップは、メデトミジン溶液、少なくとも1種のイソシアナートおよび少なくとも1種のポリオールの混合物を表面に噴霧して、コーティング、フィルムまたは塗料を形成することを含む。この実施形態はまた、表面上のコーティング、フィルムまたは塗料を硬化させて防汚物品を形成することを含む。
【0097】
別の実施形態において、ポリウレタンを防汚物品に形成するステップは、メデトミジン溶液、少なくとも1種のイソシアナートおよび少なくとも1種のポリオールの混合物を型内で成形またはキャストすることを含む。この実施形態はまた、型内の混合物を硬化させて防汚物品を形成することを含む。
【0098】
実施形態のさらなる態様は、防汚物品を製造するためのキットに関する。キットは、少なくとも1種のポリオール、分子当たり少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1種のイソシアナート、溶媒、防汚剤の少なくとも0.1重量%のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩の濃度を達成するのに十分な量のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩、任意選択で、触媒、任意選択で、少なくとも1種の鎖延長剤および/または架橋剤、任意選択で、少なくとも1種の乾燥剤、任意選択で、少なくとも1種の顔料、任意選択で、メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩以外の少なくとも1種の殺生物剤、ならびに任意選択で、少なくとも制御放出剤からなる。
【0099】
一実施形態において、溶媒は、ジオール、ポリオール、ジアミン、ポリアミン、およびそれらの混合物からなる群、好ましくはジオール、ジアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはジオール、特に1,4-ブタンジオールである。
【0100】
一実施形態において、溶媒は、鎖延長剤および/または架橋剤である。
【0101】
一実施形態において、少なくとも1種のイソシアナートは、メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)である。
【0102】
一実施形態において、少なくとも1種のポリオールは、少なくとも1種のポリエーテルポリオール、少なくとも1種のポリエステルポリオール、または少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび少なくとも1種のポリエステルポリオールの混合物である。
【0103】
一実施形態において、キットは、メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩、および1,4-ブタンジオール等の溶媒を含むメデトミジン溶液を形成するのに十分な量の、メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩、および1,4-ブタンジオール等の溶媒を含み、メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩は、メデトミジン溶液の0.1~20重量%まで、好ましくは前記メデトミジン溶液の5~20重量%まで、より好ましくは前記メデトミジン溶液の10~20重量%までである。
【0104】
一実施形態において、少なくとも1種の任意選択の制御放出剤は、金属酸化物、好ましくは酸化チタン(II)、酸化銅(II)、酸化銅(I)または酸化亜鉛(II)でできたナノ粒子である。
【0105】
一実施形態において、メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩、および/あるいはメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩以外の少なくとも1種の任意選択の殺生物剤は、少なくとも1種の制御放出剤に少なくとも部分的に結合している。
【0106】
例
例1
この例では、1,4-ブタンジオール(Brenntag Nordic AB、Malmo、スウェーデン)に対するSELEKTOPE(登録商標)(I-Tech AB、Molndal、Sweden)の溶解度を調査した。表1に従ってバイアルを調製し、攪拌しながら放置した。
【表1】
【0107】
約2時間後、ほとんどのSELEKTOPE(登録商標)材料が、バイアル番号1および2に溶解した。バイアル番号3には、溶解していないSELEKTOPE(登録商標)がまだ多く残っていた。24時間後、すべてのSELEKTOPE(登録商標)はバイアル番号1に溶解し、ごくわずかなSELEKTROPE(登録商標)粒子のみがバイアル番号2に残った。2時間後と比較して、調製から24時間後のバイアル番号3には大きな差はなかった。調製から48時間後に、すべてのSELEKTOPE(登録商標)材料がバイアル番号1および2に溶解した。バイアル番号3は、2時間後および24時間後と同様であった。
【0108】
バイアル番号4を調製し、バイアル番号1~3と同じ手法で攪拌しながら放置した。調製から24時間後、ほとんどのSELEKTOPE(登録商標)材料が溶解したが、いくつかの未溶解の粒が残っていた。結果は同じ48時間の調製であった。
【0109】
1,4-ブタンジオールに対するSELEKTOPE(登録商標)の溶解度は、1,4-ブタンジオール1g当たり約250mgのSELEKTOPE(登録商標)であると結論付けられた。
【0110】
例2
この実験では、ELASTURAN(登録商標)6005/178(BASF Polyurethanes GmbH、ドイツ)をベースとして作製されたポリウレタンシートを含むSELEKTOPE(登録商標)を製造および試験した。ELASTURAN(登録商標)6005/178は、優れた機械的特性を備えた半硬質の柔軟なキャストポリウレタンエラストマーをもたらす。ELASTURAN(登録商標)6005/178は、例えば、海底に配置されたケーブルの保護、船舶のシーリング材、水面下ポンプの振動減衰等に使用され得る。
【0111】
この実験では、表2に従って、1,4-ブタンジオール(Brenntag Nordic AB、Malmo、スウェーデン)中のSELEKTOPE(登録商標)(I-Tech AB、Molndal、スウェーデン)の4つの溶液を調製した。
【表2】
【0112】
この溶液を、4つのポリウレタン試験シート(シート番号1~4)の調製に使用した。また、参照ポリウレタンシート(シート番号0)を、SELECTOPE(登録商標)なしで調製した。
【0113】
以下の調製法を使用して、ポリウレタン試験シートを調製した。90重量部のELASTURAN(登録商標)6005/178A成分、すなわちポリオール成分(ポリエーテルポリオール、触媒、安定剤、添加剤をベースとする調製物)を、表2のシート番号1~4の10重量部のSELEKTOPE(登録商標)溶液と混合した。得られたポリオールおよびSELEKTOPE(登録商標)の混合物100重量部を、ELASTURAN(登録商標)6005/178B成分、すなわちイソシアナート成分(MDIをベースとする調製物)40重量部と混合した。
以下の表3は、4つの試験シートにおけるSELEKTOPEの重量パーセントを示す。
【表3】
【0114】
各試験シートを3つのパネルに分割し、そのうちの2つ(ここではaおよびbと表示)はフィールド試験で使用し、1つのパネルは非曝露参照として保持した。
【0115】
10個のパネル(1a、1b;2a、2b;3a、3b;4a、4b;0a、0b)を、アルミニウムフレーム内に配置し、2013年5月29日にスウェーデン西海岸のTjarno海洋基地で水中に浸漬した。パネルを定期的な訪問によって監視し、各訪問で写真を撮影した。
【0116】
検査 2013年9月2日
アルミニウムフレームは非常に重く被嚢類で覆われていたため、フレームを水から持ち上げることが可能となる前に被嚢類を水中で除去する必要があった。参照パネル(0a、0b)は、大方被嚢類で覆われていた。パネル2b、3b、4aおよび4bには被嚢類はより少なかった。本発明の8つの試験パネル1a、1b~4a、4bには、フジツボは見られなかった。参照パネル0a、0bには、フジツボおよびコケムシの両方が見られた。
【0117】
検査 2013年11月5日
10個のパネルは、大方被嚢類で覆われていた。これらの被嚢を除去した。本発明の試験パネルには、フジツボは見られなかった。参照パネル0a、0bには、フジツボおよびコケムシの両方が見られた。
【0118】
検査 2014年4月9日
本発明の試験パネルにはフジツボはなかった。参照パネル0a、0bは、多少フジツボで覆われていた。これらのフジツボはすべて成体であった。パネルのほとんどは多くのスライムおよびヒドロ虫で覆われていたが、それを指でなぞるかまたは軽く濯ぐだけで簡単に除去された。
図1は、左側に参照パネル0b、中央に試験パネル1b、右側に試験パネル4bを示している。
【0119】
検査 2014年9月1日
本発明の試験パネルにはフジツボはなかった。参照パネル0a、0bには、多数の成体フジツボがあった。すべてのパネルは被嚢類で覆われており、これは検査時にその下にあるものを見るために除去された。パネルのほとんどにスライムおよびヒドロ虫があったが、それを手で掻き落とすことにより簡単に除去された。
【0120】
最終検査 2015年5月21日
ポリウレタンパネルはすべて汚損していたが、参照パネル0a、0aだけに多くのフジツボがあった。試験パネル1a、1bにはフジツボが数個あったが、試験パネル2a、2b、3a、3b、4a、4bにはフジツボはなかった。
【0121】
したがって、少なくとも0.1重量%のSELEKTOPE(登録商標)を含む本発明のポリウレタンパネルおよびシートは、フジツボで覆われた参照ポリウレタンパネルおよびシートと比較して、フジツボが著しく少なかった。
【0122】
例3
150gのSELEKTOPE(登録商標)(I-Tech AB、Molndal、スウェーデン)を1,4-ブタンジオール(Brenntag Nordic AB、Malmo、スウェーデン)に溶解して1000gのSELEKTOPE(登録商標)溶液を形成することにより、1,4-ブタンジオール中15重量%のSELEKTOPE(登録商標)溶液を調製した。250gのSELEKTOPE(登録商標)溶液を、ジエチルトルエンジアミン等のジアミンを含むポリオール混合物である5000gのBAYTEC(登録商標)TP PU0308と混合した。次いで、得られた5250gの混合物を、MDIを含むイソシアナート成分である4987gのDESMODUR(登録商標)TP PU0309と混合した。
【0123】
得られた混合物は、0.37重量%のSELEKTOPE(登録商標)を含有していた。混合物を平らな表面に注ぎ出し、シートに硬化させ、そこから2つの試験片AおよびBを切り出した。
【0124】
試験片をアルミニウムフレームに取り付け、2015年10月27日にスウェーデン西海岸のTjarno海洋基地で水中に浸漬した。
【0125】
検査 2016年4月19日
試験片Aに小さなフジツボがいくつか見つかった。試験片Bにはフジツボは見られなかった。アルミニウムフレームは、小さなフジツボで覆われていた。
【0126】
検査 2016年6月2日
パネルAおよびBのいずれにもフジツボは見られなかったが、アルミニウムフレームには多くの成体フジツボが見られた。
図2Aおよび
図2Bを参照されたい。
【0127】
検査 2016年7月2日
試験パネルAおよびBのいずれにもフジツボは見られなかった。試験パネルは被嚢類で覆われていたが、試験パネルを再び浸漬する前にそれらを除去した。
【0128】
検査 2016年9月20日
試験パネルAおよびBのいずれにもフジツボは見られなかった。試験パネルは被嚢類で覆われていたが、試験パネルを再び浸漬する前にそれらを除去した。
【0129】
検査 2016年10月26日
試験パネルAおよびBのいずれにもフジツボは見られず、スライムおよびヒドロ虫のみが見られた。
【0130】
0.37重量%のSELEKTOPE(登録商標)を含む本発明のポリウレタンパネルは、フジツボの付着および成長を防止するのに有効であった。
【0131】
例4
接触角は、液体界面が固体表面に接する角度である。これは、液体による固体表面の濡れ性を定量化するものである。一般に、水接触角が90°より小さい場合、固体表面は親水性であるとみなされ、水接触角が90°より大きい場合、固体表面は疎水性であるとみなされる。
【0132】
この例では、例2に従って製造された4つのポリウレタン試験シート(例2の表示に沿って本明細書で試料1~4と表示)とSELEKTOPE(登録商標)を有さないポリウレタン試験シート(本明細書で試料0と表示)を使用した。
【0133】
測定開始の24時間前に、すべての試料を2-プロパノールで拭いた。各試料について、6滴を評価した。各液滴について、各測定の間隔を1秒として、11の連続測定を実行した。11回の連続測定の最初の測定は、水が試料に触れた時点から0.5~1秒以内に行った。
【0134】
接触測定の結果を表4および表5に示す。表4では、11回の測定の平均接触角が各試料について6滴の液滴毎に示され、表5では、6滴の液滴の間での1回目と11回目の測定の平均接触角が示されている。
【表4】
【表5】
【0135】
上述の実施形態は、本発明のいくつかの例示的な例として理解されるべきである。本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態に対して様々な修正、組合せ、および変更を行うことができることが、当業者には理解されるであろう。特に、異なる実施形態における異なる部分の解決策は、技術的に可能な他の構成で組み合わせることができる。しかし、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0136】
参考文献
[1]米国特許出願公開第2014/0141263号明細書(US2014/0141263)
[2]英国特許第1307001号明細書(GB1307001)
[3]米国特許第3,702,778号明細書(US3,702,778)
[4]ASTM D5618-94(2011)、せん断下でのフジツボ接着強度の標準測定法(ASTM D5618-94(2011),Standard Test Method for Measurement of Barnacle Adhesion Strength in Shear)
[5]Lewthwaiteら、「汚損による船外板架空耐性の変動の研究」、王立海軍建築家協会年次報告および記録、127:269~284、1984年(Lewthwaite et al., "An Investigation into the variation of ship skin fictional resistance with fouling", Annual report and transactions of the Royal Institution of Naval Architects, 127: 269- 284, 1984)
[6]Swain、「防汚コーティングの再定義」、ジャーナル・オブ・プロテクティブ・コーティング・アンド・ライニング、26~35、1999年9月(Swain, “Redefining antifouling coatings”, Journal of Protective Coatings and Linings, 26-35, September 1999)
[7]米国特許出願公開第2014/0247690号明細書(US 2014/0247690)
[8]欧州特許第0072615号明細書(EP 0 072 615)
[9]MacDonaldら、「メデトミジンの2つの光学対掌体の挙動および神経化学的作用の比較、選択的α2-アドレナリン受容体アゴニスト」、ジャーナル・オブ・ファーマコロジー・アンド・エクスペリメンタル・セラピューティクス、259:848~854、1991年(MacDonald et al., “Comparison of the behavioral and neurochemical effects of the 2 optical enantiomers of medetomidine, a selective alpha2-adrenoreceptor agonist”, Journal of pharmacology and experimental therapeutics, 259: 848-854, 1991)
[10]SavolaおよびVirtanen、「中枢2-アドレナリン受容体はメデトミジンのデクストロエナンチオマーであるデクスメデトミジンに極めて立体選択的である」、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー、195:193~199、1991年(Savola and Virtanen, “Central 2-adrenoceptors are highly stereoselective for dexmedetomidine, the dextroenantiomer of medetomidine”, European Journal of Pharmacology, 195:193-199, 1991)
[11]国際公開第2011/070069号パンフレット(WO 2011/070069)
[12]米国特許出願公開第2006/0201379号明細書(US 2006/0201379)
[13]国際公開第2007/007901号パンフレット(WO 2007/007901)
【手続補正書】
【提出日】2022-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンと、
前記防汚物品の0.1重量%以上の量で前記ポリウレタンのポリマーマトリックス中に存在する、メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と
を含む防汚物品であって、
前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と溶媒とを混合して、メデトミジン溶液を形成するステップと、
前記メデトミジン溶液を、分子当たり少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1種のイソシアナートおよび少なくとも1種のポリオールと反応させてポリウレタンを形成するステップであって、前記メデトミジンまたはその前記エナンチオマーもしくは塩は、前記ポリマーマトリックス中に存在する、ステップと、
前記ポリウレタンを前記防汚物品に形成するステップであって、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩は、前記防汚物品の少なくとも0.1重量%の量で存在する、ステップと
により得られる、前記防汚物品。
【請求項2】
前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と、ジオール、ポリオール、ジアミン、ポリアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒と混合することを含む、請求項1に記載の防汚物品。
【請求項3】
前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と、ジオール、ジアミン、またはそれらの混合物からなる群から選択される溶媒と混合することを含む、請求項1に記載の防汚物品。
【請求項4】
前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と、1,4-ブタンジオールである溶媒と混合することを含む、請求項1に記載の防汚物品。
【請求項5】
前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と、前記メデトミジン溶液を前記少なくとも1種のイソシアナートおよび前記少なくとも1種のポリオールと反応させる際に鎖延長剤および/または架橋剤として使用される溶媒とを混合することを含む、請求項1に記載の防汚物品。
【請求項6】
前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と、前記メデトミジン溶液を前記少なくとも1種のイソシアナートおよび前記少なくとも1種のポリオールと反応させる際に鎖延長剤および/または架橋剤として使用される溶媒とを混合することを含む、請求項2に記載の防汚物品。
【請求項7】
前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩を前記溶媒に溶解して、前記メデトミジン溶液の0.1~20重量%までの、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩を含む前記メデトミジン溶液を形成することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の防汚物品。
【請求項8】
前記メデトミジン溶液が、前記メデトミジン溶液の5~20重量%までの、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩を含む、請求項7に記載の防汚物品。
【請求項9】
前記メデトミジン溶液が、前記メデトミジン溶液の10~20重量%までの、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩を含む、請求項7に記載の防汚物品。
【請求項10】
前記メデトミジン溶液を反応させるステップが、前記メデトミジン溶液をメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)および少なくとも1種のポリオールと反応させてポリウレタンを形成することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の防汚物品。
【請求項11】
前記メデトミジン溶液を反応させるステップが、前記メデトミジン溶液をメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)および少なくとも1種のポリオールと反応させてポリウレタンを形成することを含む、請求項7に記載の防汚物品。
【請求項12】
前記メデトミジン溶液を反応させるステップが、前記メデトミジン溶液を、MDIならびに少なくとも1種のポリエーテルポリオール、少なくとも1種のポリエステルポリオール、または少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび少なくとも1種のポリエステルポリオールの混合物と反応させることを含む、請求項10に記載の防汚物品。
【請求項13】
前記防汚物品の0.1~2重量%までの、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の防汚物品。
【請求項14】
前記防汚物品の0.1~1.5重量%までの、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩を含む、請求項13に記載の防汚物品。
【請求項15】
前記防汚物品の0.1~1重量%までの、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩を含む、請求項13に記載の防汚物品。
【請求項16】
前記防汚物品の0.1~2重量%までの、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩を含む、請求項11に記載の防汚物品。
【請求項17】
ポリウレタン、
前記防汚物品の0.1重量%以上の量で前記ポリマーマトリックス中に存在する、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩、
任意選択で、少なくとも1種の顔料、
任意選択で、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩以外の少なくとも1種の殺生物剤、および
任意選択で、少なくとも1種の制御放出剤
からなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の防汚物品。
【請求項18】
前記防汚物品が、
ポリウレタン、
前記防汚物品の0.1重量%以上の量で前記ポリマーマトリックス中に存在する、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩、
任意選択で、少なくとも1種の顔料、
任意選択で、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩以外の少なくとも1種の殺生物剤、および
少なくとも1種の制御放出剤
からなり、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩、および/あるいは、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩以外の前記少なくとも1種の任意選択の殺生物剤が、前記少なくとも1種の制御放出剤に少なくとも部分的に結合している、請求項17に記載の防汚物品。
【請求項19】
防汚コーティング、防汚フィルム、および防汚塗料からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の防汚物品。
【請求項20】
プロペラトンネル、ガイドベーン、フェンダー、船体、係留機器、水中ロープ、水中ワイヤーおよび水中ネットからなる群から選択される水中または水面下デバイスまたは構造の、防汚コーティング、防汚フィルムまたは防汚塗料である、請求項19に記載の防汚物品。
【請求項21】
曲げ補強材、曲げ制限器、ビーチバンパー、フェンダー、および係留機器からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の防汚物品。
【請求項22】
防汚物品の製造方法であって、
メデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と溶媒とを混合して、メデトミジン溶液を形成するステップと、
前記メデトミジン溶液を、分子当たり少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1種のイソシアナートおよび少なくとも1種のポリオールと反応させてポリウレタンを形成するステップであって、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩は、前記ポリウレタンのポリマーマトリックス中に存在するステップと、
前記ポリウレタンを前記防汚物品に形成するステップであって、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩は、前記防汚物品の少なくとも0.1重量%の量で存在するステップと
を含む方法。
【請求項23】
前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と、ジオール、ポリオール、ジアミン、ポリアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒と混合することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と、ジオール、ジアミン、またはそれらの混合物からなる群から選択される溶媒と混合することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と、1,4-ブタンジオールである溶媒と混合することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と、前記メデトミジン溶液を前記少なくとも1種のイソシアナートおよび前記少なくとも1種のポリオールと反応させる際に鎖延長剤および/または架橋剤として使用される溶媒とを混合することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と、前記メデトミジン溶液を前記少なくとも1種のイソシアナートおよび前記少なくとも1種のポリオールと反応させる際に鎖延長剤および/または架橋剤として使用される溶媒とを混合することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩と前記溶媒とを混合するステップが、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩を前記溶媒に溶解して、前記メデトミジン溶液の0.1~20重量%までの、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩を含む前記メデトミジン溶液を形成することを含む、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記メデトミジン溶液が、前記メデトミジン溶液の5~20重量%までの、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記メデトミジン溶液が、前記メデトミジン溶液の10~20重量%までの、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記メデトミジン溶液を反応させるステップが、前記メデトミジン溶液をメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)および少なくとも1種のポリオールと反応させてポリウレタンを形成することを含む、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記メデトミジン溶液を反応させるステップが、前記メデトミジン溶液をメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)および少なくとも1種のポリオールと反応させてポリウレタンを形成することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記メデトミジン溶液を反応させるステップが、前記メデトミジン溶液を、MDIならびに少なくとも1種のポリエーテルポリオール、少なくとも1種のポリエステルポリオール、または少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび少なくとも1種のポリエステルポリオールと反応させることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリウレタンを前記防汚物品に形成するステップが、
前記メデトミジン溶液、前記少なくとも1種のイソシアナートおよび前記少なくとも1種のポリオールの混合物を表面に噴霧して、コーティング、フィルムまたは塗料を形成することと、
前記表面上の前記コーティング、前記フィルムまたは前記塗料を硬化させて、前記防汚物品を形成することと
を含む、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ポリウレタンを前記防汚物品に形成するステップが、
前記メデトミジン溶液、前記少なくとも1種のイソシアナートおよび前記少なくとも1種のポリオールの混合物を表面に噴霧して、コーティング、フィルムまたは塗料を形成することと、
前記表面上の前記コーティング、前記フィルムまたは前記塗料を硬化させて、前記防汚物品を形成することと
を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリウレタンを前記防汚物品に形成するステップが、
前記メデトミジン溶液、前記少なくとも1種のイソシアナートおよび前記少なくとも1種のポリオールの混合物を型内で成形またはキャストすることと、
前記型内の前記混合物を硬化させて、前記防汚物品を形成することと
を含む、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリウレタンを前記防汚物品に形成するステップが、
前記メデトミジン溶液、前記少なくとも1種のイソシアナートおよび前記少なくとも1種のポリオールの混合物を型内で成形またはキャストすることと、
前記型内の前記混合物を硬化させて、前記防汚物品を形成することと
を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
請求項1に記載の防汚物品を製造するためのキットであって、
少なくとも1種のポリオールと、
分子当たり少なくとも2つのイソシアナート基を含む少なくとも1種のイソシアナートと、
溶媒と、
前記防汚剤の少なくとも0.1重量%のメデトミジン濃度を達成するのに十分な量のメデトミジン、またはそのエナンチオマーもしくは塩と、
任意選択で、触媒と、
任意選択で、少なくとも1種の鎖延長剤および/または架橋剤と、
任意選択で、少なくとも1種の乾燥剤と、
任意選択で、少なくとも1種の顔料と、
任意選択で、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩以外の少なくとも1種の殺生物剤と、
任意選択で、少なくとも制御放出剤と
からなるキット。
【請求項39】
前記溶媒が、ジオール、ポリオール、ジアミン、ポリアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
前記溶媒が、ジオール、ジアミン、またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項38に記載のキット。
【請求項41】
前記溶媒が、1,4-ブタンジオールである、請求項38に記載のキット。
【請求項42】
前記溶媒が、鎖延長剤および/または架橋剤である、請求項38に記載のキット。
【請求項43】
前記溶媒が、鎖延長剤および/または架橋剤である、請求項39に記載のキット。
【請求項44】
前記少なくとも1種のイソシアナートが、メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)である、請求項38~43のいずれか一項に記載のキット。
【請求項45】
前記少なくとも1種のポリオールが、少なくとも1種のポリエーテルポリオール、少なくとも1種のポリエステルポリオール、または少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび少なくとも1種のポリエステルポリオールの混合物である、請求項38~43のいずれか一項に記載のキット。
【請求項46】
前記少なくとも1種のポリオールが、少なくとも1種のポリエーテルポリオール、少なくとも1種のポリエステルポリオール、または少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび少なくとも1種のポリエステルポリオールの混合物である、請求項44に記載のキット。
【請求項47】
前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩、および前記溶媒を含むメデトミジン溶液を形成するのに十分な量の、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩、および前記溶媒を含み、前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩は、前記メデトミジン溶液の0.1~20重量%までである、請求項38~43のいずれか一項に記載のキット。
【請求項48】
前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩が、前記メデトミジン溶液の5~20重量%までである、請求項47に記載のキット。
【請求項49】
前記のメデトミジンまたはそのエナンチオマーもしくは塩が、前記メデトミジン溶液の10~20重量%までである、請求項47に記載のキット。
【請求項50】
前記少なくとも1種の任意選択の制御放出剤が、金属酸化物でできたナノ粒子である、請求項38~43のいずれか一項に記載のキット。
【請求項51】
前記金属酸化物が、酸化チタン(II)、酸化銅(II)、酸化銅(I)または酸化亜鉛(II)である、請求項50に記載のキット。
【外国語明細書】