(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140744
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】シフト装置のパネル構造
(51)【国際特許分類】
B60K 20/02 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B60K20/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046738
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】井立 和宏
【テーマコード(参考)】
3D040
【Fターム(参考)】
3D040AA01
3D040AA03
3D040AA04
3D040AB01
3D040AC07
3D040AC15
3D040AC70
3D040AD05
(57)【要約】
【課題】外観不良の発生を抑制する。
【解決手段】シフト装置10のパネルアセンブリ40では、カバー保持フック76が下ホルダ70に設けられており、カバー保持フック76は、初期位置から保持位置へ揺動したカバー80を保持する。また、カバー80の保持位置では、挿通部82が、パネル開口部50Aの縁部から離間している。このため、パネルアセンブリ40の単体において、カバー80を保持位置に揺動させることで、カバー保持フック76によって、上ホルダ60、下ホルダ70、及びパネル50に対する、カバー80の相対揺動を制限することができる。これにより、パネルアセンブリ40の搬送時における、挿通部82のパネル開口部50Aの縁部への衝突を抑制できる。その結果、挿通部82の傷つきを抑制することができると共に、パネルアセンブリ40の外観不良の発生を抑制できる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフト装置における上下方向に延在するシャフトが挿通される上側開口部を有する上ホルダ部と、
前記上ホルダ部の下側に配置され、前記シャフトが挿通される下側開口部を有する下ホルダ部と、
前記上ホルダ部を上側から覆うと共に、平面視で前記上側開口部の内側に配置され且つ前記シャフトが挿通されるパネル開口部を有するパネルと、
前記上ホルダ部と前記下ホルダ部との間に配置されて前記パネル開口部を閉塞すると共に、初期位置から上下方向に対して交差する方向に揺動可能に構成されたカバーと、
前記カバーに設けられ、前記カバーから上側へ突出して前記パネル開口部の内部に配置され、前記シャフトが挿通される筒状の挿通部と、
前記下ホルダ部に設けられ、前記初期位置から保持位置へ揺動した前記カバーを保持する保持部と、
を備え、
前記保持位置では、前記挿通部が前記パネル開口部の縁部から離間しているシフト装置のパネル構造。
【請求項2】
前記保持部は、上下方向に弾性変形可能に構成されており、
前記保持部による前記カバーへの保持状態では、前記カバーによって下側へ弾性変形した状態の前記保持部と、前記上ホルダ部と、によって前記カバーを上下方向に挟持する請求項1に記載のシフト装置のパネル構造。
【請求項3】
前記下ホルダ部には、複数の前記保持部が設けられており、複数の前記保持部が、平面視で、前記挿通部の周方向に離間して配置されている請求項1又は請求項2に記載のシフト装置のパネル構造。
【請求項4】
前記シャフトの前記挿通部への挿通状態では、前記シャフトの揺動に連動して、前記挿通部の揺動可能範囲が設定されており、
前記保持位置では、前記挿通部の少なくとも一部が揺動可能範囲の外側に位置する請求項1~請求項3の何れか1項に記載のシフト装置のパネル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフト装置のパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載されたシフト装置では、シフトレバーのシャフトが、カバーの挿通部を挿通しており、カバーは、上ホルダ及び下ホルダの間に移動可能に配置されている。また、パネルが上ホルダを上側から覆っており、シャフト及び挿通部が、パネルのパネル開口部内に配置されると共に、カバーがパネル開口部を閉塞している。これにより、パネル開口部からシフト装置の内部が視認されることを、カバーによって抑制している。また、シフトレバーの操作時には、カバーがシャフトと共に揺動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シフト装置では、車両のインストルメントパネルに設置される場合がある。この場合、シフト装置を、シフトレバーを有する本体部と、パネル、カバー、上ホルダ、及び下ホルダを有するパネルアセンブリと、に分離して、本体部及びパネルアセンブリが、別々に車両に取付けられる。具体的には、本体部を車体に取付け、その後に、インストルメントパネル等に組付けられたパネルアセンブリを、本体部の上側において、車両に取付ける。このため、シフト装置において、本体部及びパネルアセンブリが、別々に搬送され納入される。
【0005】
ここで、本体部とパネルアセンブリとの組付状態では、カバーの揺動範囲がシフトレバー(シャフト)の操作可能範囲に制限される。一方、パネルアセンブリの単体では、シフトレバーがカバーに組付けられていないため、カバーの揺動範囲をシフトレバーによって制限することができない。このため、パネルアセンブリの搬送中等において、振動等によってカバーが移動して、カバーの挿通部がパネルのパネル開口部に当たり、カバーの挿通部が傷つく可能性がある。これにより、シフト装置のパネルアセンブリにおいて外観不良が発生する虞がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、外観不良の発生を抑制できるシフト装置のパネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、シフト装置における上下方向に延在するシャフトが挿通される上側開口部を有する上ホルダ部と、前記上ホルダ部の下側に配置され、前記シャフトが挿通される下側開口部を有する下ホルダ部と、前記上ホルダ部を上側から覆うと共に、平面視で前記上側開口部の内側に配置され且つ前記シャフトが挿通されるパネル開口部を有するパネルと、前記上ホルダ部と前記下ホルダ部との間に配置されて前記パネル開口部を閉塞すると共に、初期位置から上下方向に対して交差する方向に揺動可能に構成されたカバーと、前記カバーに設けられ、前記カバーから上側へ突出して前記パネル開口部の内部に配置され、前記シャフトが挿通される筒状の挿通部と、前記下ホルダ部に設けられ、前記初期位置から保持位置へ揺動した前記カバーを保持する保持部と、を備え、前記保持位置では、前記挿通部が前記パネル開口部の縁部から離間しているシフト装置のパネル構造である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、外観不良の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のシフトレバー装置を示す上側から見た平面図である。
【
図2】
図1に示されるシフトレバー装置の右側から見た側面図である。
【
図3】
図1に示されるシフトレバー装置の後側から見た断面図(
図1の3-3線断面図)である。
【
図4】
図1に示されるシフトレバー装置の右側から見た断面図(
図1の4-4線断面図)である。
【
図5】
図1に示されるシフトレバー装置のパネルアセンブリの分解斜視図である。
【
図6】(A)は、
図5に示される下ホルダとカバーとの位置関係を説明するための平面図であり、(B)は、(A)のカバーが保持位置に配置されたときの下ホルダとカバーとの位置関係を説明するための平面図である。
【
図7】(A)は、パネルアセンブリにおける
図6(A)に示される状態のカバー保持フックとカバーとの位置関係を示す断面図(
図6(A)の7A―7A線位置の断面図)であり、(B)は、パネルアセンブリにおける
図6(B)に示される状態のカバー保持フックとカバーとの位置関係を示す断面図(
図6(B)の7B―7B線位置の断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本実施形態に係るシフト装置のパネル構造Sが適用されたシフト装置10について説明する。なお、図面において、適宜示される矢印UP、矢印FR、矢印RHは、それぞれシフト装置10の上側、前側、右側を示している。そして、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、シフト装置10の上下、前後、左右として説明する。
【0011】
図1及び
図2に示されるように、シフト装置10は、シフト本体20と、パネルアセンブリ40と、を含んで構成されている。本実施の形態のシフト装置10は、車両(自動車)に搭載されており、パネルアセンブリ40が車両のインストルメントパネル90(
図1参照)に組付けられ、シフト本体20が車体に組付けられている。また、シフト装置10では、シフト本体20のシフトレバー22が、上下方向に延在された初期位置(
図1及び
図2に示される位置)に配置されており、上下方向に対して交差する方向に揺動操作可能に構成されている。具体的には、シフトレバー22が、前後方向(シフト方向とも称し、広義には、第1方向として把握される方向である)及び左右方向(セレクト方向とも称し、広義には、第2方向として把握される方向である)に揺動操作可能に構成されており、初期位置から所定のシフト位置に配置される構成になっている。以下、先に、シフト本体20について説明し、次いで、パネルアセンブリ40について説明する。
【0012】
(シフト本体20について)
図1~
図4に示されるように、シフト本体20は、操作者に操作されるシフトレバー22を有している。シフトレバー22は、シャフトホルダ24と、シャフト26と、を含んで構成されている。シャフトホルダ24は、全体として上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されている。また、シャフト26は、上下方向を軸方向とする略円柱状に形成されている。そして、シャフト26がシャフトホルダ24内に挿入されて、シャフトホルダ24及びシャフト26が一体揺動可能に連結されている。
【0013】
シフトレバー22の下部は、シフト本体20の外郭を構成するケース30に収容されており、図示しないレバーホルダ(図示省略)によってケース30に前後方向及び左右方向に揺動操作可能に連結されている。具体的には、シフトレバー22が、シャフト26の中心線を前後方向に通過する軸線L1(
図4参照)の軸回りに左右方向に揺動可能に構成されている。また、シフトレバー22は、軸線L1を左右方向に通過する軸線L2(
図3参照)の軸回りに前後方向に揺動可能に構成されている。なお、軸線L1と軸線L2との交点を、仮想中心点CP(
図3及び
図4参照)としている。
【0014】
また、シャフトホルダ24の上端部は、ケース30の上壁に形成された挿通孔30A内を挿通しており、シャフト26の上端部が、ケース30から上側へ突出している。挿通孔30Aは、上下方向を長手方向とする略矩形状に形成されている。シャフト26の上端部には、ノブ32が設けられており、シフトレバー22の操作時には、操作者がノブ32を把持するように構成されている。
【0015】
なお、シフトレバー22の初期位置では、シャフト26が挿通孔30Aの略中央部に対して左側にずれた位置に配置されている(
図1参照)。シフトレバー22の操作時には、初期位置からシフト方向又はセレクト方向へ操作されることで、シフトレバー22が所定のシフト位置に配置される構成になっている。具体的には、シフトレバー22が、初期位置から前側へ揺動した+位置、初期位置から後側へ揺動した-位置、初期位置から右側へ揺動したN位置、N位置から前側へ揺動したR位置、N位置から後側へ揺動したD位置、の何れかのシフト位置に配置される。なお、シャフト26の下端部は、ケース30の底壁に形成されたシフト溝(図示省略)内に挿入されており、シフトレバー22の揺動操作時には、シャフト26の下端部がシフト溝内に沿って移動する。
【0016】
(パネルアセンブリ40について)
図1~
図5に示されるように、パネルアセンブリ40は、ケース30の上側に配置されている。パネルアセンブリ40は、パネル50と、上ホルダ60と、下ホルダ70と、カバー80と、を含んで構成されている。
【0017】
(パネル50について)
パネル50は、下側へ開放された比較的底の浅い略矩形箱状に形成されている。パネル50は、車両のインストルメントパネル90の露出孔90A内に配置されており(
図1参照)、パネル50の外周部が、インストルメントパネル90の下側(裏面側)に配置されて、インストルメントパネル90に組付けられている。パネル50の前部における左右方向中央部には、前後方向を長手方向とする略矩形状のパネル開口部50Aが貫通形成されている。そして、シフトレバー22のシャフト26が、パネル開口部50Aを挿通しており、ノブ32がパネル50の上側に操作可能に配置されている。なお、パネル開口部50Aは、パネル50の上面よりも下側へ一段下がった位置に配置されている。また、シフトレバー22の初期位置では、シャフト26がパネル開口部50Aの中央部に対して左側へ寄った位置に配置されている。
【0018】
(上ホルダ60について)
図3~
図5に示されるように、上ホルダ60は、上ホルダ部62を有しており、上ホルダ部62は、下側へ開放された略半球状の椀形に形成されて、パネル50のパネル開口部50Aの下側に配置されている。上ホルダ部62の上面及び下面は、仮想中心点CPを中心とする球面状に形成されている。
【0019】
上ホルダ60は、上ホルダ部62の外周部から右側へ延出した右側プレート部64と、上ホルダ部62の外周部から左側へ延出した左側プレート部66と、を有している。右側プレート部64の先端部には、前後一対の取付片64Aが一体に形成されている。取付片64Aは、左右方向を板厚方向として、右側プレート部64の先端部における前端部及び後端部から下側へ延出している。左側プレート部66の先端部には、前後一対の取付片66Aが一体に形成されている。取付片66Aは、左右方向を板厚方向として、左側プレート部66の先端部における前端部及び後端部から下側へ延出している。取付片64A及び取付片66Aは、後述する下ホルダ70に爪篏合によって取付けられている。
【0020】
上ホルダ部62の略中央部には、略矩形状の上側開口部62Aが貫通形成されている。上側開口部62Aは、平面視で、パネル50のパネル開口部50Aと相似形を成すように形成されており、上側開口部62Aの形状が、パネル開口部50Aの形状よりも大きく設定されている(
図1参照)。すなわち、平面視で、パネル開口部50Aが上側開口部62Aの内側に配置されている。そして、シフトレバー22のシャフト26が、上側開口部62Aの内部を挿通している。上ホルダ部62の下面には、複数の上側リブ部62B(
図3及び
図4参照)が形成されており、複数の上側リブ部62Bは、上ホルダ部62の径方向に延在されると共に、上ホルダ部62の周方向に所定の間隔を空けて配置されている。
【0021】
(下ホルダ70について)
図1~
図6に示されるように、下ホルダ70は、樹脂材によって構成されている。下ホルダ70は、下ホルダ部72と、ベース部74と、を含んで構成されている。下ホルダ部72は、上ホルダ部62と同様に、下側へ開放された略半球状の椀形に形成されて、上ホルダ部62の下側に配置されている。また、下ホルダ部72の上面及び下面は、仮想中心点CPを中心とした球面状に形成されている。つまり、上側から見た平面視で、下ホルダ部72が、上ホルダ部62と同軸上に配置されており、仮想中心点CPから下ホルダ部72までの距離が、仮想中心点CPから上ホルダ部62までの距離よりも小さく設定されている。これにより、上ホルダ部62と下ホルダ部72との間には、隙間G(
図3及び
図4参照)が形成されている。
【0022】
ベース部74は、平面視で後側へ開放された略U字形状に形成されている。そして、下ホルダ部72が、ベース部74の左右の両側部の間に配置されて、ベース部74に接続されている。ベース部74の左右の両側部には、上ホルダ60における取付片64A及び取付片66Aに対応する位置において、4箇所のベース取付孔部74Aが形成されており、取付片64A及び取付片66Aが、ベース取付孔部74A内に挿入されて、ベース部74に爪篏合によって取付けられている。ベース部74には、3箇所のベース取付部74Bが一体に形成されており、ベース取付部74Bは、ベース部74の左右の両側部及び前端部にそれぞれ配置されている。ベース取付部74Bは、パネル50の外周部に形成された取付孔部50Bに挿入されて、爪篏合によってパネル50に取付けられている。
【0023】
下ホルダ部72の略中央部には、円形状の下側開口部72Aが貫通形成されており、平面視で、パネル50のパネル開口部50Aの略全体が下側開口部72Aに重なるように、下側開口部72Aが配置されている。そして、シフトレバー22のシャフト26が、下側開口部72Aの内部を挿通している。下ホルダ部72の上面には、下側開口部72Aの縁部において、上側へ突出した下側第1リブ72Bが形成されており、下側第1リブ72Bは、下側開口部72Aの周方向全周に亘って延在されている。また、下ホルダ部72の上面には、上側へ突出した複数の下側第2リブ72Cが形成されており、下側第2リブ72Cは、下ホルダ部72の径方向に延在されると共に、下ホルダ部72の周方向に所定の間隔を空けて配置されている。下側第1リブ72B及び下側第2リブ72Cの下ホルダ部72の上面からの突出量は、同じに設定されている。
【0024】
下ホルダ部72には、後述するカバー80を保持するための複数(本実施形態では、2箇所)の保持部としてのカバー保持フック76が設けられている。カバー保持フック76の構成については、後述する。
【0025】
(カバー80について)
カバー80は、上ホルダ60の上ホルダ部62及び下ホルダ70の下ホルダ部72と同様に、下側へ開放された略半球状の椀形に形成されている。また、カバー80の上面及び下面は、仮想中心点CPを中心とした球面状に形成されており、カバー80は、上ホルダ部62と下ホルダ部72との間の隙間Gに配置されて、下ホルダ70の下側第1リブ72B及び下側第2リブ72Cによって支持されている。
【0026】
また、平面視での、カバー80の外形は、パネル50のパネル開口部50A、上ホルダ60の上側開口部62A、及び下ホルダ70の下側開口部72Aよりも大きく設定されており、カバー80によって、パネル開口部50A、上側開口部62A、及び下側開口部72Aを閉塞すると共に、カバー80の一部がパネル開口部50Aから露出している(
図1参照)。
【0027】
カバー80の中央部には、上側へ突出した略円筒状の挿通部82が形成されており、挿通部82は、パネル50のパネル開口部50A内に配置されている。挿通部82内には、シフトレバー22のシャフト26が挿通している。すなわち、シフトレバー22の非操作状態では、カバー80が、シフトレバー22と共に初期位置に配置されている。また、シフトレバー22の揺動操作に連動して、カバー80が前後方向又は左右方向に揺動する構成になっている。すなわち、シャフト26が挿通部82内を挿通した状態では、挿通部82(カバー80)の揺動可能範囲が設定されており、当該揺動可能範囲において、挿通部82が、パネル開口部50Aの内側を揺動する。
【0028】
(カバー保持フック76について)
図5~
図7に示されるように、2箇所のカバー保持フック76は、前述した下ホルダ70の下ホルダ部72に一体に形成されている。2箇所のカバー保持フック76は、下ホルダ部72の前部にそれぞれ形成されており、平面視で下ホルダ部72の周方向に離間して配置されている。下ホルダ部72には、カバー保持フック76を形成するための溝部72Dが貫通形成されており、溝部72Dは、平面視で下ホルダ70の径方向外側へ開放された略U字形状に形成されている。そして、下ホルダ部72における溝部72Dの内側部分が、カバー保持フック76として構成されている。すなわち、カバー保持フック76における下ホルダ部72の径方向外側部分が、カバー保持フック76の基端部として構成されており、カバー保持フック76の基端部が下ホルダ部72に接続されている。カバー保持フック76は、基端部を起点として上下方向に弾性変形可能に構成されている。つまり、カバー保持フック76は、所謂板バネとして構成されて、下ホルダ部72に一体に形成されている。
【0029】
カバー保持フック76の先端部には、上側へ突出したフック部76Aが形成されており、フック部76Aは、下ホルダ部72の上面よりも上側へ突出している。下ホルダ部72の上面からのフック部76Aの突出量が、下ホルダ部72の上面からの下側第1リブ72B及び下側第2リブ72Cの突出量よりも大きくなっている。そして、カバー保持フック76によって、初期位置から移動したカバー80の外周部を保持するようになっている(
図6(B)に示される位置であり、このカバー80の位置を保持位置という)。具体的には、保持位置では、カバー80の外周部によって、カバー保持フック76が、下側へ弾性変形し、カバー80を上側へ付勢することで、カバー保持フック76と上ホルダ60(の上側リブ部62B)とによってカバー80の外周部を上下方向に挟持する(
図7(B)参照)。
【0030】
また、カバー80の保持位置では、カバー80における挿通部82の少なくとも一部が揺動可能範囲外に配置されるようになっている。すなわち、シフトレバー22の揺動操作時には、カバー保持フック76によってカバー80が保持されないように設定されている。一方、パネルアセンブリ40の単体状態では、カバー80の保持位置への移動が可能となるため、パネルアセンブリ40の単体状態において、保持位置に配置されたカバー80をカバー保持フック76によって保持するようになっている。また、カバー80の保持位置では、カバー80の挿通部82が、パネル50のパネル開口部50Aの縁部に対して離間した位置に配置される。すなわち、挿通部82とパネル開口部50Aの縁部とが当接しない設定になっている。
【0031】
(作用効果)
次に、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0032】
上記のように構成されたシフト装置10では、シフトレバー22を初期位置から前後方向又は左右方向に揺動操作することで、シフトレバー22が所定のシフト位置に配置される。また、このときには、カバー80がシフトレバー22のシャフト26と共に初期位置から揺動するが、カバー80によるパネル50のパネル開口部50Aの閉塞状態が維持される。したがって、シフト装置10の内部が視認されることをカバー80によって防止できる。
【0033】
また、シフト装置10では、パネルアセンブリ40が、車両のインストルメントパネル90に組付けられて、シフト本体20が車体に組付けられている。このため、シフト装置10では、シフト本体20とパネルアセンブリ40とが、別々に搬送されて、車両に組付けられる。そして、パネルアセンブリ40の単体状態では、シフトレバー22のシャフト26がカバー80の挿通部82を挿通していないため、カバー80の揺動範囲が制限されていない。このため、パネルアセンブリ40の搬送中に、カバー80が上ホルダ60及び下ホルダ70に対して揺動して、挿通部82がパネル50のパネル開口部50Aの縁部に当たることで、挿通部82が傷つく可能性がある。すなわち、シフト装置10において、外観不良が発生する可能性がある。
【0034】
ここで、下ホルダ70には、カバー保持フック76が設けられており、カバー保持フック76は、初期位置から保持位置へ揺動したカバー80を保持する(
図7(A)及び(B)参照)。また、カバー80の保持位置では、挿通部82が、パネル開口部50Aの縁部から離間している。このため、パネルアセンブリ40の単体において、カバー80を保持位置に揺動させることで、カバー保持フック76によって、上ホルダ60、下ホルダ70、及びパネル50に対する、カバー80の相対揺動を制限することができる。これにより、パネルアセンブリ40の搬送時における、挿通部82のパネル開口部50Aの縁部への衝突を抑制できる。その結果、挿通部82の傷つきを抑制することができると共に、パネルアセンブリ40の外観不良の発生を抑制できる。
【0035】
また、カバー保持フック76は、下ホルダ70と一体に形成され且つ上下方向に弾性変形可能な板バネとして構成されている。そして、カバー保持フック76によるカバー80への保持状態では、カバー80によって下側へ弾性変形した状態のカバー保持フック76と、上ホルダ60と、によってカバー80を上下方向に挟持する。これにより、簡易な構成でカバー80を保持位置に保持することができる。また、カバー保持フック76が、下ホルダ70と一体に形成されているため、パネルアセンブリ40の部品点数の削減及びコストダウンに寄与することができる。
【0036】
また、下ホルダ70には、複数(2箇所)のカバー保持フック76が設けられており、複数のカバー保持フック76が、平面視で、挿通部82の周方向に離間して配置されている。このため、カバー80の保持位置を複数設定することができる。したがって、カバー80を保持位置に揺動するときの作業性を向上することができる。
【0037】
また、シフトレバー22のシャフト26の挿通部82への挿通状態では、カバー80が、シャフト26の揺動に連動して、挿通部82が揺動可能範囲内を移動する。そして、カバー80の保持位置では、挿通部82の少なくとも一部が、揺動可能範囲外に位置する。すなわち、シフト装置10におけるシフトレバー22の揺動操作では、カバー80が保持位置に配置されない。このため、シフトレバー22の操作性に影響を与えることなく、カバー保持フック76を下ホルダ70に設けることができる。したがって、シフトレバー22の操作性の低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0038】
10 シフト装置
26 シャフト
50 パネル
50A パネル開口部
62 上ホルダ部
62A 上側開口部
72 下ホルダ部
72A 下側開口部
76 カバー保持フック(保持部)
80 カバー
82 挿通部
S シフト装置のパネル構造