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  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図1
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図2
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図3A
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図3B
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図4
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  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図6
  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図7A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140748
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G03G15/20 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046745
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】大西 祥太
(72)【発明者】
【氏名】上原 雅和
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕徳
(72)【発明者】
【氏名】綿谷 友宏
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雄大
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA21
2H033AA23
2H033AA25
2H033AA31
2H033BA25
2H033BA54
2H033BB03
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BE00
(57)【要約】
【課題】定着ベルトの端部の座屈や端面の削れを抑制できる定着装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着装置9は、回転可能な無端状の定着ベルト21と、前記定着ベルト21の端部を回転可能に保持するホルダー31と、前記定着ベルト21の端面に当接可能なリング部材33と、を備える。前記ホルダー31は、前記定着ベルト21の内周面が摺動する摺動部材41と、前記定着ベルト21の端面が対向する対向部材51と、を有し、前記摺動部材41と前記対向部材51との間に、前記リング部材33が挟まれている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの端部を回転可能に保持するホルダーと、
前記定着ベルトの端面に当接可能なリング部材と、を備えた定着装置であって、
前記ホルダーは、
前記定着ベルトの内周面が摺動する摺動部材と、前記定着ベルトの端面が対向する対向部材と、を有し、
前記摺動部材と前記対向部材との間に、前記リング部材が挟まれていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記リング部材の内径は、前記定着ベルトの内径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記定着ベルトの前記リング部材に対する摩擦係数は、前記定着ベルトの前記対向部材に対する摩擦係数よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記定着ベルトの内周面は、前記摺動部材の平坦面に沿って摺動することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
トナー像を用紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部で形成されたトナー像を用紙に定着する請求項1~4のいずれか1項に記載の定着装置と、を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー像を用紙に定着する定着装置及び定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着装置において、省エネルギー化やクイックスタートが可能なベルト定着方式が広く知られている。ベルト定着方式の定着装置は、熱源によって加熱される無端状の定着ベルトと、定着ベルトとの間に加圧領域を形成し、回転駆動されることで定着ベルトを従動回転させる加圧部材と、を備えている。加圧領域において用紙に転写されたトナー像が加熱及び加圧されて用紙に定着される。
【0003】
定着ベルトの両端部は、それぞれホルダーに回転可能に支持されている。定着動作中に定着ベルトが蛇行すると、定着ベルトの端面がホルダーに対して摺動し、定着ベルトの端部が座屈したり端面が削れたりするという問題が発生する。そこで、特許文献1に記載されている定着装置は、定着ベルトの端部を保護する環状の保護部材を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013―178291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されている定着装置では、保護部材は、ホルダーに形成された環状の溝部に装着されている。定着ベルトが蛇行した際に、定着ベルトの端面を保護部材に確実に突き当てるためには、保護部材の内径を定着ベルトの内径よりも小さくする必要がある。このため、保護部材を溝部に装着することで、保護部材の内径を定着ベルトの内径よりも小さくできる。ホルダーにこのような溝部を設ける場合、ホルダーの成形上、溝部の幅は保護部材の厚さよりも広くなってしまう。すると、定着ベルトの端部が溝部に落ち込んで座屈するという問題が生じる。例えば、溝の幅を0.25mm程度とした場合でも、定着ベルトの端部が座屈する場合がある。
【0006】
そこで、本発明は上記事情を考慮し、定着ベルトの端部の座屈や端面の削れを抑制できる定着装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の定着装置は、回転可能な無端状の定着ベルトと、前記定着ベルトの端部を回転可能に保持するホルダーと、前記定着ベルトの端面に当接可能なリング部材と、を備えた定着装置であって、前記ホルダーは、前記定着ベルトの内周面が摺動する摺動部材と、前記定着ベルトの端面が対向する対向部材と、を有し、前記摺動部材と前記対向部材との間に、前記リング部材が挟まれていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記リング部材の内径は、前記定着ベルトの内径よりも小さいことを特徴としてもよい。
【0009】
本発明において、前記定着ベルトの前記リング部材に対する摩擦係数は、前記定着ベルトの前記対向部材に対する摩擦係数よりも小さいことを特徴としてもよい。
【0010】
本発明において、前記定着ベルトの内周面は、前記摺動部材の平坦面に沿って摺動することを特徴としてもよい。
【0011】
本発明の画像形成装置は、トナー像を用紙に形成する画像形成部と、前記画像形成部で形成されたトナー像を用紙に定着する前記定着装置と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、定着ベルトの端部を回転可能に保持するホルダーに、端部が落ち込むような溝が存在しないので、定着ベルトが蛇行した場合でも、定着ベルトの端部を座屈させずに安定的に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部を模式的に示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る定着装置を示す斜視図である。
図3A】本発明の一実施形態に係る定着装置において、ベルト組立体を示す斜視図である。
図3B】本発明の一実施形態に係る定着装置において、ベルト組立体と加圧ローラーとを示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る定着装置において、ホルダーを示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る定着装置において、ホルダーを示す分解斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る定着装置において、ベルト組立体の端部を示す断面図である。
図7A】本発明の一実施形態に係る定着装置において、ホルダーの摺動部材を軸方向から見た正面図である。
図7B】本発明の一実施形態に係る定着装置において、ホルダーの対向部材を軸方向から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る画像形成装置及び定着装置について説明する。
【0015】
まず、図1を参照して、画像形成装置1について説明する。図1は画像形成装置1の内部を模式的に示す正面図である。各図に示すFr、Rr、L、Rは、それぞれ画像形成装置1の前側、後側、左側、右側を示す。
【0016】
画像形成装置1には、用紙Sが収容される給紙カセット3と、給紙カセット3から用紙Sを送り出す給紙装置5と、用紙Sにトナー像を形成する画像形成部7と、トナー像を用紙Sに定着する定着装置9と、用紙Sを排出する排紙装置11と、排出された用紙Sが積載される排紙トレイ13と、が設けられている。さらに、画像形成装置1には、給紙装置5から画像形成部7と定着装置9とを通って排紙装置11まで用紙Sが搬送される搬送経路15が形成されている。
【0017】
給紙カセット3から給紙装置5によって送り出された用紙Sは、搬送経路15に沿って画像形成部7に搬送され、画像形成部7において、用紙にトナー像が形成される。トナー像が形成された用紙Sは、搬送経路15に沿って定着装置9に搬送され、定着装置9において、用紙Sにトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙Sは、排紙装置11によって排紙トレイ13に排出される。
【0018】
次に、定着装置9について、図2図3A及び図3Bを参照して説明する。図2は定着装置9を示す斜視図、図3Aはベルト組立体23を示す斜視図、図3Bはベルト組立体23と加圧ローラー25を示す断面図である。
【0019】
定着装置9は、定着ベルト21が組付けられたベルト組立体23(図3A参照)と、ベルト組立体23の下方に配置される加圧ローラー25(図3B参照)と、ベルト組立体23と加圧ローラー25とが収容されるハウジング27(図2参照)と、を備えている。
【0020】
ベルト組立体23は、図3Aに示されるように、定着ベルト21と、定着ベルトの両端部をそれぞれ保持するホルダー31と、定着ベルト21と各ホルダー31との間に配置されるリング部材33と、定着ベルト21を加熱するハロゲンヒーター35(図3B参照)と、定着ベルト21を加圧ローラー25に対して押し当てる押し当て部材37(図3B参照)と、を備えている。
【0021】
定着ベルト21は、所定の内径と用紙の幅よりも長い幅とを有する無端状ベルトである。定着ベルト21は、可撓性を有する材料で形成され、基材層と、基材層の外周面に設けられる弾性層と、弾性層の外周面に設けられる離型層と、を有している。基材層は、SUSやNi等の金属で形成されている。弾性層は、シリコンゴム等で形成される。離型層は、PFAチューブ等で形成される。
【0022】
定着ベルト21の両端部は、それぞれホルダー31に回転可能に支持されている。以降の説明において、軸方向は、定着ベルト21の回転軸に沿う方向を示し、周方向は、定着ベルト21の周方向を示す。両ホルダー31は、ハウジング27に支持されている。ホルダー31とリング部材33とについては後述する。
【0023】
図3Bに示されるように、定着ベルト21の中空部には、ステー39が貫通している。ステー39の両端部は、両ホルダー31に固定されている。
【0024】
ハロゲンヒーター35は、ステー39の上面に固定され、定着ベルト21の内周面に輻射熱を放射して、定着ベルト21を加熱する。押し当て部材37は、ステー39の下面に固定され、定着ベルト21の内周面を加圧ローラー25に押し当てて、定着ベルト21と加圧ローラー25との間に加圧領域Nを形成する。
【0025】
次に、図4図6を参照して、ホルダー31について説明する。図4はホルダー31を示す斜視図、図5はホルダー31を示す分解斜視図、図6はベルト組立体23の前端部を示す断面図である。ホルダー31は、定着ベルト21の内周面が摺動する摺動部材41と、定着ベルト21の端面が対向する対向部材51と、で構成される。
【0026】
摺動部材41について、図4図6と、図7Aとを参照して説明する。図7Aは摺動部材41を軸方向から見た正面図である。摺動部材41は、軸方向に沿った略半円筒形状の部材である。図7Aに示されるように、摺動部材41は、軸方向から見た断面形状が、中心角度が約270度の円弧状であり、周方向における両端部の間が下方に開口している。図5及び図6に示されるように、摺動部材41の外周面は、軸方向の外側の平坦面41aと、軸方向の内側の傾斜面41bと、を有している。平坦面41aの外径は、定着ベルト21の内径よりもやや小さい。傾斜面41bは、平坦面41aから軸方向の内側に向かって先細に形成されている。
【0027】
図4及び図5に示されるように、摺動部材41の内周面には、周方向の端部に沿ってリブ43が形成されている。さらに、図7に示されるように、摺動部材41の軸方向における外側の端部には、半円状の端壁45が設けられている。端壁45には、軸方向から見て矩形状の切り欠き45aが形成されている。端壁45には、切り欠き45aの周方向における両側に、位置決め穴47が形成されている。一方の位置決め穴47は、円形の貫通穴であり、もう一方の位置決め穴47は、切り欠き45aの縦縁から横方向に延びる位置決め溝である。
【0028】
また、図5に示されるように、摺動部材41の端壁45には、軸方向に沿って外方向に突出する係合片49が設けられている。
【0029】
次に、対向部材51について、図4図6と、図7Bとを参照して説明する。図7Bは対向部材51を軸方向から見た正面図である。対向部材51は、定着ベルト21の端面に対向する突き当て壁53と、ハウジング27に固定される固定片55と、を有している。突き当て壁53は、矩形状の端壁と、端壁の上縁及び両側縁に沿った側壁と、を有している。図7Bに示されるように、突き当て壁53には、矩形状の切り欠き53aが形成されている。また、突き当て壁53には、切り欠き53aの両側に、軸方向に沿って内側に延びる2つのボス57が立設されている。2つのボス57は、摺動部材41の2つの位置決め穴47に対応している。また、突き当て壁53に、摺動部材41の係合片49とスナップフィット可能な係合片59が形成されている。
【0030】
次に、リング部材33について、図5図6を参照して説明する。リング部材33は、所定の厚さと、定着ベルト21の外径よりも大きい外径と、定着ベルト21の内径よりも小さい内径と、を有している。リング部材33には、内周縁から径方向の内側に突出する2つの突出片61が形成されている。突出片61は、周方向に所定の間隔を開けて配置されている。各突出片61には、位置決め穴63が開けられている。リング部材33は、シート状の樹脂で形成されている。さらに、定着ベルト21のリング部材33に対する摩擦係数は、定着ベルト21のホルダー31に対する摩擦係数よりも小さい。
【0031】
図5及び図6を参照して、ベルト組立体23の端部について説明する。リング部材33は、摺動部材41の端壁45と対向部材51の突き当て壁53との間に配置されて、リング部材33の位置決め穴63と、摺動部材41の位置決め穴47とに、対向部材51のボス57が挿入されている。これにより、摺動部材41とリング部材33とが対向部材51に対して回り止めされる。また、摺動部材41の係合片49と対向部材51の係合片59とは、スナップフィット結合により結合している。これにより、ホルダー31が組み立てられるとともに、リング部材33が、摺動部材41の端壁45と対向部材51の突き当て壁53との間に挟まれて、ホルダー31に固定される。リング部材33の外周縁は、摺動部材41の外周面の平坦面41aよりも径方向の外側に位置し、リング部材33の内周縁は、摺動部材41の外周面の平坦面41aよりも径方向の内側に位置する。すなわち、平坦面41aに沿って回転する定着ベルト21の端面は、リング部材33に対向する。
【0032】
また、ステー39は、摺動部材41の周方向の両端の間、摺動部材41の端壁45の切り欠き45a、及び、対向部材51の突き当て壁53の切り欠き53aを貫通している。
【0033】
上記構成を有する定着装置9における定着動作について説明する。定着動作時、加圧ローラー25が駆動されて回転すると、定着ベルト21は加圧ローラー25の回転に従動して回転する(図3Bの矢印参照)。この際、定着ベルト21の端部は、摺動部材41の平坦面41aに沿って摺動する。また、押し当て部材37は、定着ベルト21の内周面を加圧ローラー25に対して押し当て、定着ベルト21と加圧ローラー25との間に加圧領域Nを形成する。さらに、ハロゲンヒーター35が駆動されて定着ベルト21に輻射熱を放射し、定着ベルト21を加熱する。用紙が加圧領域Nに搬送されると、用紙上のトナー像が加熱されると共に加圧されて、用紙に定着される。
【0034】
定着ベルト21は、前述のように摺動部材41の平坦面41aに沿って摺動する。定着ベルト21が正常に回転する場合、定着ベルト21の端面はリング部材33に対向し、端面とリング部材33との間には所定の隙間が開いている。一方で、定着ベルト21が蛇行すると、定着ベルト21はホルダー31の方向に移動し、定着ベルト21の端面がリング部材33に当接する。この際、平坦面41aには、定着ベルト21の端部が落ち込むような溝が形成されていないので、定着ベルト21の端部は座屈しない。
【0035】
上記説明したように、本発明の定着装置9によれば、定着ベルト21の端部を回転可能に保持するホルダー31に、端部が落ち込むような溝が存在しないので、定着ベルト21が蛇行した場合でも、定着ベルト21の端部を座屈させずに安定的に回転させることができる。
【0036】
定着ベルト21が蛇行した場合、定着ベルト21の端面はリング部材33に当接する。リング部材33の内径は定着ベルト21の内径よりも小さいので、定着ベルト21の端面をリング部材33に確実に当接させることができる。さらに、定着ベルト21のリング部材33に対する摩擦係数は、定着ベルト21の対向部材51に対する摩擦係数よりも小さい。したがって、定着ベルト21が蛇行した場合でも、定着ベルト21を安定的に回転させることができると共に、定着ベルト21の端面の摩耗を抑制して定着ベルト21の耐久性を向上できる。
【0037】
なお、ホルダー31の摺動部材41と対向部材51とは、スナップフィット結合以外にビス止め等で固定されてもよい。
【0038】
本発明は特定の実施形態について記載されてきたが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の範囲及び主旨を逸脱しない限りにおいて、当業者は上記実施形態を改変可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 画像形成装置
7 画像形成部
9 定着装置
21 定着ベルト
31 ホルダー
33 リング部材
41 摺動部材
51 対向部材
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B