(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140749
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】損傷測定方法、装置、プログラムおよびX線回折装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/2055 20180101AFI20230928BHJP
G01N 23/20008 20180101ALI20230928BHJP
【FI】
G01N23/2055
G01N23/20008
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046746
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】横山 亮一
(72)【発明者】
【氏名】表 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 大輔
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA18
2G001CA01
2G001DA09
2G001EA01
2G001KA03
2G001KA08
2G001LA02
2G001SA02
(57)【要約】
【課題】周囲の状態にかかわらず、単結晶状態の試料の損傷を測定できる損傷測定方法、装置、プログラムおよびX線回折装置を提供する。
【解決手段】細束の白色X線を、単結晶状態の試料に照射するステップ(S03)と、照射により生じた回折スポットを検出するステップ(S05)と、検出された回折スポットにおける特定方向の強度分布の分散にかかる係数を算出するステップ(S06)と、算出された係数から試料の損傷状態を特定するステップと、を含む「単結晶状態」とは、材料が単結晶または粗大結晶粒で形成されている状態をいう。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細束の白色X線を、単結晶状態の試料に照射するステップと、
前記照射により生じた回折スポットを検出するステップと、
前記検出された回折スポットにおける特定方向の強度分布の分散にかかる係数を算出するステップと、
前記算出された係数から前記試料の損傷状態を特定するステップと、を含むことを特徴とする損傷測定方法。
【請求項2】
前記損傷状態は、損傷度および損傷方向であることを特徴とする請求項1記載の損傷測定方法。
【請求項3】
前記試料は、デンドライト組織を有する金属材料であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の損傷測定方法。
【請求項4】
前記試料は、単結晶材、一方向凝固材または多結晶材であることを特徴とする請求項3記載の損傷測定方法。
【請求項5】
前記照射される白色X線を、前記試料の表面に対して90°に入射させ、透過法により前記回折スポットを検出することを特徴とする請求項3または請求項4記載の損傷測定方法。
【請求項6】
前記照射される白色X線のエネルギーは、前記試料への入射位置に対する前記試料内の深さ7mmの位置での透過率が1/e以上となるように設定されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の損傷測定方法。
【請求項7】
前記試料は、多結晶の被膜により被覆されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の損傷測定方法。
【請求項8】
前記照射される白色X線は、前記試料内の亜結晶粒の粒径と同等の試料位置における焦点サイズに成形されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の損傷測定方法。
【請求項9】
前記照射される白色X線は、試料位置において150μm以上500μm以下の焦点サイズに成形されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の損傷測定方法。
【請求項10】
前記照射される白色X線の発散角は、0.2°以下であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の損傷測定方法。
【請求項11】
細束の白色X線を試料に照射するX線照射部と、
前記試料を搭載する試料台と、
前記試料による回折X線を検出するX線検出部と、を備え、
前記試料は、単結晶状態であることを特徴とするX線回折装置。
【請求項12】
前記X線照射部は、前記照射される白色X線の発散角を0.2°以下に成形するコリメータを有することを特徴とする請求項11記載のX線回折装置。
【請求項13】
細束の白色X線を、単結晶状態の試料に照射して得られた強度データに基づいて、回折スポットにおける特定方向の強度分布の分散にかかる係数を算出する係数算出部と、
前記算出された係数から前記試料の損傷状態を特定する損傷状態特定部と、を備えることを特徴とする損傷測定装置。
【請求項14】
細束の白色X線を、単結晶状態の試料に照射して得られた強度データに基づいて、回折スポットにおける特定方向の強度分布の分散にかかる係数を算出する処理と、
前記算出された係数から前記試料の損傷状態を特定する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする損傷測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色X線を用いて試料の損傷を測定する損傷測定方法、装置、プログラムおよびX線回折装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高温高負荷の環境下で用いられる部材の損傷をX線回折法で測定する方法が知られている。特許文献1記載の方法は、ニッケル基超合金のγ’相に対して、γ相の禁制反射と同じ指数についてロッキングカーブを測定し、回折ピーク半価幅に基づいてニッケル基超合金の変形による損傷を診断している。しかし、このような方法は、主に放射光施設で用いられ、試料を回転して結晶方位を決定するという煩雑な作業を伴う。
【0003】
これに対し、特許文献2記載の方法は、損傷方向が試料台の表面に対し平行になるように試料を設置し、単結晶状態の試料に対して反射ラウエ法で得られる回折スポット像を2次元検出器で計測し、損傷方向の半価幅(FWHM)を算出して試料の劣化を診断している。その結果、煩雑な作業が不要となり、実験室での測定解析が可能になっている。
【0004】
特許文献3は、反射ラウエ像で単結晶の結晶方位を決定する方法を開示している。すなわち検出器の有感面を反射ラウエ像の投射される方向に配置し、ψ角方向に対して傾斜して設定している。その際には、鋳肌の歪み層を透過する短波長X線を用いて歪の少ない深さ約20μm程度の試料内部の結晶状態を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4719836号公報
【特許文献2】特開2020-159850号公報
【特許文献3】特許第5324735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、高温高負荷の環境下で用いられる部材のX線を用いた損傷測定技術の改良が進んでいる。しかしながら、周囲の状態にかかわらず、単結晶状態の試料をそのまま測定するとその領域の影響を受ける。
【0007】
例えば、火力発電用のタービンブレードは、ニッケル基超合金に厚さ100μm以上の断熱被膜が形成されている。このようなタービンブレードにX線を照射すれば、X線が断熱被膜に吸収され、母材のニッケル基超合金結晶に至らない。そのため、従来技術で被膜を有する部材の損傷を測定する場合には、予めその表面の断熱被膜を除去しなければならない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、周囲の状態にかかわらず、単結晶状態の試料の損傷を測定できる損傷測定方法、装置、プログラムおよびX線回折装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の損傷測定方法は、細束の白色X線を、単結晶状態の試料に照射するステップと、前記照射により生じた回折スポットを検出するステップと、前記検出された回折スポットにおける特定方向の強度分布の分散にかかる係数を算出するステップと、前記算出された係数から前記試料の損傷状態を特定するステップと、を含むことを特徴としている。
【0010】
(2)また、本発明の損傷測定方法は、前記損傷状態が、損傷度および損傷方向であることを特徴としている。
【0011】
(3)また、本発明の損傷測定方法は、前記試料が、デンドライト組織を有する金属材料であることを特徴としている。
【0012】
(4)また、本発明の損傷測定方法は、前記試料が、単結晶材、一方向凝固材または多結晶材であることを特徴としている。
【0013】
(5)また、本発明の損傷測定方法は、前記照射される白色X線を、前記試料の表面に対して90°に入射させ、透過法により前記回折スポットを検出することを特徴としている。
【0014】
(6)また、本発明の損傷測定方法は、前記照射される白色X線のエネルギーが、前記試料への入射位置に対する前記試料内の深さ7mmの位置での透過率が1/e以上となるように設定されていることを特徴としている。
【0015】
(7)また、本発明の損傷測定方法は、前記試料が、多結晶の被膜により被覆されていることを特徴としている。
【0016】
(8)また、本発明の損傷測定方法は、前記照射される白色X線が、前記試料内の亜結晶粒の粒径と同等の試料位置における焦点サイズに成形されていることを特徴としている。
【0017】
(9)また、本発明の損傷測定方法は、前記照射される白色X線が、試料位置において150μm以上500μm以下の焦点サイズに成形されていることを特徴としている。
【0018】
(10)また、本発明の損傷測定方法は、前記照射される白色X線の発散角が、0.2°以下であることを特徴としている。
【0019】
(11)また、本発明のX線回折装置は、細束の白色X線を試料に照射するX線照射部と、前記試料を搭載する試料台と、前記試料による回折X線を検出するX線検出部と、を備え、前記試料は、単結晶状態であることを特徴としている。
【0020】
(12)また、本発明のX線回折装置は、前記X線照射部が、前記照射される白色X線の発散角を0.2°以下に成形するコリメータを有することを特徴としている。
【0021】
(13)また、本発明の損傷測定装置は、細束の白色X線を、単結晶状態の試料に照射して得られた強度データに基づいて、回折スポットにおける特定方向の強度分布の分散にかかる係数を算出する係数算出部と、前記算出された係数から前記試料の損傷状態を特定する損傷状態特定部と、を備えることを特徴としている。
【0022】
(14)また、本発明の損傷測定プログラムは、細束の白色X線を、単結晶状態の試料に照射して得られた強度データに基づいて、回折スポットにおける特定方向の強度分布の分散にかかる係数を算出する処理と、前記算出された係数から前記試料の損傷状態を特定する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(a)、(b)単結晶状態にあるデンドライト組織を有する試料内でのX線回折を示す模式図および拡大図である。
【
図2】損傷がない亜結晶粒によるX線回折を示す模式図である。
【
図3】損傷がある亜結晶粒によるX線回折を示す模式図である。
【
図4】X線の格子面と損傷の方向の関係を示す模式図である。
【
図5】単結晶材におけるX線回折と回折X線プロファイルの模式図である。
【
図6】本発明に係る損傷測定システムの構成を示す模式図である。
【
図8】本発明に係る損傷測定装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明に係る損傷測定方法を示すフローチャートである。
【
図10】ニッケル基超合金におけるq値と構造因子Fを示すグラフである。
【
図11】透過法における試料に対するX線の強度と試料の厚さの関係を示す断面図である。
【
図12】反射法における試料に対するX線の強度と侵入深さの関係を示す断面図である。
【
図13】回折X線立体角σごとのニッケルの単結晶試料と多結晶試料の回折強度を示す概略図である。
【
図14】一方向凝固材のデンドライト組織を構成する亜結晶粒界のトポグラフ画像である。
【
図15】厚さ1mmの単結晶状態にあるブロック材において計測したラウエ像を示す図である。
【
図16】(a)~(c)それぞれ
図15における回折スポットのプロファイルを示す図である。
【
図17】厚さ2mmの単結晶状態にあるブロック材において計測したラウエ像を示す図である。
【
図18】(a)~(c)それぞれ
図17におけるスポットの回折プロファイルを示す図である。
【
図19】厚さ3mmの単結晶状態にあるブロック材において計測したラウエ像を示す図である。
【
図20】(a)~(c)それぞれ
図19における回折スポットのプロファイルを示す図である。
【
図21】厚さ5mmの単結晶状態にあるブロック材において計測したラウエ像を示す図である。
【
図22】(a)~(c)それぞれ
図21における回折スポットのプロファイルを示す図である。
【
図23】厚さ7mmの単結晶状態にあるブロック材において計測したラウエ像を示す図である。
【
図24】(a)、(b)それぞれ
図23における回折スポットのプロファイルを示す図である。
【
図26】(a)、(b)それぞれ損傷度0%の円柱試験片の中心にX線を照射したときのラウエ像、およびそのラウエ像上の回折スポットのプロファイルを示す図である。
【
図27】円柱試験片S2の各損傷度と回折スポットの半価幅を示すグラフである。
【
図28】低角入射の150keVのX線で取得されたTBC被膜の回折画像である。
【
図29】(a)~(c)それぞれ試料の模式図、150keVのX線で取得された母材の回折画像、およびピークプロファイルである。
【
図30】(a)~(c)それぞれ試料の模式図、50keVのX線で取得された母材の回折画像、およびピークプロファイルである。
【
図31】実測値と計算値とを比較するためのX線エネルギーに対するX線強度の透過率を示すグラフである。
【
図32】130keVのX線で測定したときの母材金属組織におけるピークのFWHM解析の結果から推定した損傷度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
[対象となる試料]
本発明で損傷測定の対象としてX線を照射できる単結晶部を有する試料の状態を「単結晶状態」という。すなわち単結晶状態とは、X線ビーム径を成形して材料内の単結晶の一部または粗大結晶粒一粒に照射できる単結晶または粗大結晶粒で形成されている試料の状態をいう。単結晶状態では、材料内の測定領域とX線のビーム径とが相対的な関係になる。例えば、デンドライト組織を有する金属材料は、多数の粒径数百μm程度の樹状亜結晶粒で構成されている。この試料の単結晶状態とは、亜結晶粒の粒径に合わせてX線ビーム径を数百μmに成形した細束X線ビームを試料に照射する状態をいう。デンドライト組織内に存在する亜結晶粒界により、組織内部で隣り合う亜結晶粒(モザイク状の結晶子により構成)の方位は互いにばらつきを持っている。例えばタービンブレードの場合は材料全体で亜結晶粒の方位のばらつきは数度あることが知られており、隣合う亜結晶粒間のばらつきは5°以下である。
【0026】
火力発電所では、発電機は目的に応じて複数段のタービンが並んで取付けられている。特に高温環境下に晒される3~4段あるタービンブレード(動翼)には、すべてニッケル基超合金が使われている。第1および第2段のタービンブレードには、特に一方向凝固翼または単結晶翼が用いられる。このようなタービンブレード材として使われる一方向凝固材は、ニッケル基超合金を成分として幅数mmのロット状の単結晶で形成されており、単結晶状態である。
【0027】
ニッケル基超合金の亜結晶粒は、ニッケル固溶体母相(γ相(ガンマ相))およびニッケル基金属間化合物析出相(γ’相(ガンマプライム相))からなる複合材料が単結晶を形成している。γ相は、Ni原子の面心立方格子をもつfcc構造で形成されている。γ’相は、面心立方格子の各コーナーの原子をAlまたはTi原子に置換した立方体超格子構造で形成されている。
【0028】
ニッケル基超合金では、無数のγ’相の塊が3次元的に規則的に配列し、γ相からなる網目構造の枠がそれぞれのγ’相の塊を取り囲んで単結晶を形成している。異なる相からなる複合材料であるが、互いの方位は一致している。このようにニッケル基超合金では、γ相内にγ’相が整合的に散在して単結晶状態を構成している。
【0029】
タービンエンジンやジェットエンジンのタービンブレードは高温、高応力に晒されることから、損傷が早期に進行したり、寿命が予想以上に短くなったりする。
【0030】
例えば、ニッケル基超合金をタービンブレードに用いる場合、遠心力により亜結晶粒における[001]方向にタービンブレードが伸びる。この伸びる方向が損傷方向である。そして、損傷変形等により破断に至るまでの過程で単結晶状態の規則的な配列に乱れが生じる。この配列の乱れの方向および程度が、損傷方向および損傷度として表れる。なお、損傷状態とは、損傷度および損傷方向を指す。
【0031】
単結晶状態の母材に白色X線が照射されると、回折スポットとしていわゆるラウエ斑点が生じる。単結晶状態の母材が全く変形していない状態のラウエ斑点は外周が円の形状で現れるが、これが変形するにつれラウエ斑点の外周形状が円から楕円になり、さらに楕円の長軸が伸びる。例えば、ニッケル基超合金の損傷を評価する場合、γ相とγ’相の結晶構造の乱れは、結晶内の回折面の回折ピークの広がりとして観測される。
【0032】
本発明では実験室において回折ピークがγ相とγ’相が重合した1つの回折ピークとして観測される装置光学系を採用している。そして、回折スポットの分散にかかる係数が、係数のニッケル基超合金の損傷に対応することを利用している。このようにして、タービンブレードの損傷状態を特定することにより、タービンブレードの余寿命が推定できる。
【0033】
ニッケル基超合金の試料に白色X線を照射する場合、回折スポットにはγ相およびγ’相の両方の情報が入り、2つの相の単結晶状態を見ていることになる。損傷変形とともに転位密度が変化し、これが回折スポットに表れることで試料の損傷状態を特定できる。
【0034】
損傷測定の対象である試料は、周囲に単結晶状態にない領域があっても損傷を測定可能である。例えば、上記のタービンブレード材は、ニッケル基超合金の母材が100μm以上の断熱被膜(TBC)により覆われている。TBCは、表面側のYSZによるセラミックス層と、母材側のCo-Niの多結晶合金層とからなる二層構造である。
【0035】
このように試料は、多結晶の被膜により被覆されていても、後述の通り、損傷を測定可能である。このように試料の表面に遮蔽膜がある場合でも、X線を試料の遮蔽膜に透過させることで、内部の単結晶状態にある金属材料の損傷が評価できる。特に、細束X線に特化した効果が得られ、100μm以上の遮蔽膜を透過して母材の損傷を測定することが可能である。
【0036】
表面がTBCなどの遮蔽膜で覆われている金属材料の損傷を50keV程度のX線で測定しようとすると被膜によりX線が吸収される。特に、TBCが100μm以上2000μm以下の厚さを有する場合には、低エネルギーX線は遮蔽されやすい。TBC直下にある金属材料に発生する損傷度を測定する場合に、被膜を除去したり、特別な施設で高エネルギー放射線を用いたりすることもできるが非効率的である。実験室内でしかも非破壊で被覆試料を測定することが求められている。
【0037】
[損傷測定の原理]
図1(a)、(b)は、単結晶状態にあるデンドライト組織を有する試料S0内の白色X線回折を示す模式図および拡大図である。試料S0に、ラウエ法を用いてビーム幅が亜結晶粒径程度で0.2°以下の低発散角の細束の白色X線R1を照射する。細束とは、X線を照射しようとする亜結晶粒径と同等のビームサイズであることを指す。白色X線の発散角は、0.1°以下であることが特に好ましい。例えば、ビーム幅300μm以下で発散角0.1°の白色X線R1を用いることができる。
【0038】
上記のようにX線を照射することで、X線の行路内に含まれる亜結晶粒P1、P2の数は、透過力の観点から数十個程度に限定される。試料S0内を進む白色X線R1に対して行路内に存在する全ての亜結晶粒P1、P2においてX線回折が生じている。
【0039】
しかし、
図1(b)に示すように、亜結晶粒P1、P2を構成する亜結晶粒の方位のばらつきと亜結晶粒の形状のばらつきにより、回折に寄与する亜結晶粒P1に応じて方向と強度の異なる回折X線R2が発生する。回折X線R2は、X線検出部140により検出される。なお、亜結晶粒の方位のばらつきは、材料全体で数度、隣合う亜結晶粒間で5°以下である。その結果、回折条件を満たす亜結晶粒P1の数は、行路内で極少数(1~2個)に限定される(
図1(b)参照)。
【0040】
このように、入射X線のビーム幅を亜結晶粒P1、P2の粒径と同等のレベルまで低減させ、更にX線ビームの発散角を0.2°以下に低減させることにより、同一方向の回折に寄与する亜結晶粒P1の数を限定できる。その結果、計測される回折スポットが疎らになるとともに高強度の回折X線R2の数も減少し、各回折スポットが単一で半価幅一定のピークD1として計測される。なお、亜結晶粒P1、P2の粒径と同等のレベルとは、ビーム幅が亜結晶粒の粒径の3倍以内であることを指し、好ましくは2倍以内であることを指す。
【0041】
図1(a)に示す例では、亜結晶粒P1からは、各2θ
1、2θ
2、2θ
3方向へ高強度の回折X線R2が生じており、亜結晶粒P2からは殆ど計測不能な微弱な回折X線R3が生じている。回折X線R2からは、最大値の大きいピークD1が測定され、回折X線R3からは、最大値の小さいピークD2が測定される。アッテネータ132は、ダイレクトビームの強度を減衰させて、ダイレクトビームと回折スポットとの相対的な位置を認識可能にしている。ダイレクトビームの位置はピークD0により特定される。
【0042】
上記の測定は、透過法で行ってもよいし、反射法で行ってもよい。反射法の場合は、入射したX線の行路内に存在する何れかの亜結晶粒で回折され再び表面から出て来たX線を測定する。透過法と反射法との違いはX線の出射する方向が裏面か表面かの違いだけである。実際、複雑な形状をした材料においては、側面や上面や下面などあらゆる方向から回折X線が出射する可能性がある。
【0043】
図2は、損傷がない亜結晶粒P1によるX線回折を示す模式図である。強度分布B1を有する白色X線R1を損傷のない亜結晶粒P1に照射すると、亜結晶粒P1内の結晶子C1により回折X線R2が生じ回折ピークD11が得られる。
【0044】
図3は、損傷がある亜結晶粒P1によるX線回折を示す模式図である。強度分布B1を有する白色X線R1を損傷が生じた亜結晶粒P1に照射すると、亜結晶粒P1内で方位がばらつき格子面間隔が若干広がった結晶子C1により回折X線R2が生じ、半価幅が大きくなった回折ピークD12が得られる。
【0045】
金属材料の損傷度を評価する場合、回折ピークの半価幅によって損傷度を評価する。回折ピークの半価幅には、結晶が損傷することによる亜結晶粒P1の方位のばらつきが大きくなる現象と格子面間隔が若干広がる現象が重合して表れる。評価対象の見極めが重要である。
【0046】
図4は、X線の格子面(lattice plane)F1と損傷の方向の関係を示す模式図である。
図4に示すように、強度分布B1を有する白色X線R1が格子面F1を有する試料に入射角θで照射され、出射角θで回折X線R2が生じ、回折ピークD1が測定される。白色X線R1および回折X線R2により回折面(diffraction plane)G1が特定される。
【0047】
X線が回折する格子面F1と回折面G1の交線に平行な方向を結晶が損傷する方向と一致するようにX線を入射すると、損傷による回折ピークD1の半価幅の変化が最も大きくなる。したがって、単結晶状態にあるデンドライト組織を有する金属材料の損傷度を評価する場合、損傷方向に平行かそれに近い方向を向いている回折スポットの広がりにより最も効率的に損傷度を評価できる。
【0048】
なお、入射X線のエネルギーは、照射対象となる試料に応じて決められる。7mm透過したX線の透過度が1/e以上となるエネルギーで試料にX線を入射させることが好ましい。試料を被覆する膜がある場合には、X線照射部から照射されるX線のエネルギーは、膜で減衰する分を上乗せした数値に調整する。例えば、厚さ7mmのMg試料に32.5keVで1/eまで透過度が低下するため、入射X線のエネルギーを30keV以上にすることができる。
【0049】
試料に対するX線のエネルギーと透過率と透過幅の関係については、以下の表に示す通りである。
【表1】
【0050】
表の1列目のデータは、150keVのX線の透過率が1/eとなる透過幅を示している。表の2列目のデータは、150keVのX線による厚さ7mmの試料に対する透過率を示している。透過率が1/eで36.8%であることから、重金属である鉄やニッケルでも150keV入射による透過X線が有効強度に達している。これに対して、軽金属であるマグネシウム、アルミニウム、チタンでは150keV入射による透過X線が十分に有効強度範囲内にある。なお、鉄の結晶系は常温でαFeと呼ばれる体心立方格子を形成している。
【0051】
表の3列目のデータは、100keVのX線による厚さ7mmの試料に対する透過率を示している。鉄やニッケルの試料ではX線の透過率が1/eを大きく下回っているが、マグネシウム、アルミニウム、チタンでは透過率が1/e以上であり十分有効強度範囲内に入っている。表の4列目のデータは、7mmでの透過率が1/eになるX線のエネルギーを示している。マグネシウム、アルミニウム、チタンに対しては100keVもあれば試料の測定が十分に可能であるが、鉄やニッケルのような重金属に対しては150keV程度のX線エネルギーが必要であることが分かる。このようなデータを利用して測定材料に応じたX線エネルギーを選択できる。
【0052】
表面がTBCなどの遮蔽膜で覆われている金属材料に対して照射されるX線は70keV以上であることが好ましい。表面がTBCなどの遮蔽膜で覆われている金属材料に、50keV程度のエネルギーのX線を照射しても遮蔽膜で全てX線が吸収されてしまい、母材の金属組織の結晶状態を測定することはできない。70keV以上のX線を用いて遮蔽膜を透過させることで、母材の金属組織の損傷の状態を評価できる。
【0053】
試料には、単結晶材、一方向凝固材または多結晶材を用いることができる。
図5は、単結晶材におけるX線回折と回折X線プロファイルの模式図である。試料S1は、単結晶状態にあるデンドライト組織ではなく、通常の単結晶材である。単結晶材では、結晶内の局所的な結晶方位のずれは0.2°よりも桁違いに小さい。このような試料S1に対して、細束の白色X線R1を照射した場合には、試料S1の厚さに応じてX線の行路全体から幅広い回折X線R4が発生し、半価幅の大きいピークD3が観測される。
【0054】
このように、単結晶材の試料S1においては回折スポットの半価幅が試料S1の厚さの影響を受けるため、半価幅の広がりから結晶性を評価することは難しい。上記の理由から、試料は、デンドライト組織を有する金属材料であることが好ましい。細束の白色X線がデンドライト組織内で数が限定された亜結晶粒に照射されることで試料の損傷を評価できる。
【0055】
[システム全体の構成]
損傷測定に用いられるシステムを説明する。
図6は、損傷測定システム100の構成を示す模式図である。損傷測定システム100は、X線回折装置110および処理装置150(損傷測定装置)を備えている。X線回折装置110は、回折スポットを検出するための測定に用いられる装置である。処理装置150は、主に検出された回折スポットから損傷状態を特定する装置である。X線回折装置110と処理装置150とは、有線無線を問わず情報を送受できるように接続されていることが好ましい。また、処理装置150は、クラウド上に置かれていてもよい。
【0056】
[X線回折装置]
X線回折装置110は、X線照射部120、試料台130、位置調整機構135およびX線検出部140を備えている。
図7は、X線照射部120および試料S0を示す概略図である。
【0057】
X線照射部120は、本体部121およびコリメータ122を備えており、細束の白色X線を発生させ、試料S0に照射する。本体部121は、筐体125、X線源126およびX線シールド窓127を備えている。X線照射部120は、70keV以上の白色X線を発生できることが好ましい。
【0058】
X線源126には微焦点X線ターゲットが用いられることが好ましく、微焦点X線ターゲットから発生するX線がX線シールド窓127を透過して外部に放出される仕組みになっている。70keV以上の白色X線を得るためには、一般的なX線回折装置には無い専用の構成として、X線の透過撮影やX線CTに使用される広域照射型のX線発生装置の構成が採られることが好ましい。上記のようなX線源126からは本来の広域X線照射領域126aにX線が放出される。
【0059】
照射される白色X線のエネルギーは、回折位置での透過率が1/e以上となるように調整されていることが好ましい。このような目安により、被膜で保護された母材に対して測定に必要なX線強度を予測することにより、高い精度で試料の余寿命を推定できる。そのために入射X線に必要なエネルギーについては後述する。
【0060】
コリメータ122は、コリメータ本体128、遮蔽カバー129を有しており、細束X線ビームを形成できる。遮蔽カバー129は、例えば鉛製であることが好ましい。コリメータ122を用いて、試料の亜結晶粒の大きさに合わせてビームサイズを調整することが好ましい。その場合、試料位置における焦点サイズに合わせる。特に、デンドライト組織を有する金属材料に対して試料位置において150μm以上500μm以下の焦点サイズに成形することが好ましい。これにより、試料内を進むX線行路内の亜結晶粒の数を極少数に限定でき、試料の損傷状態を測定できる。また、コリメータ122は、白色X線の発散角を0.2°以下に成形できる。
【0061】
このようにしてX線の散乱強度を低減させ、母材を構成する単一の亜結晶粒P1に細束X線ビームを限定して照射することでその回折スポットSP1を検出し、損傷状態の特定が可能になる。回折スポットSP1から試料の損傷度と損傷方向の2つの情報を同時に評価できる。検出された回折スポットSP1が伸びる方向から、損傷が発生している方向が分かる。
【0062】
試料台130は、白色X線を照射する測定対象として試料を搭載し、X線照射位置に位置調整して固定することができる。試料台130は、
図6に示すように位置調整機構135により3軸でその角度位置を調整可能に構成されている。
【0063】
位置調整機構135は、照射される白色X線に対して試料の格子面の角度を調整可能にする。試料の角度位置は、処理装置150からの制御信号によりモータ等で調整できる。X線照射部120から放出される入射X線R1は試料S0で回折して回折X線R2を生じ、空間中に複数の回折スポットSP1を発生させる。位置調整機構135は、X線検出部140に回折X線が入射するようにX線照射部120からのX線入射軸を角度調整可能である。また、位置調整機構135は、試料台130の傾きを調整できる。なお、白色X線に放射光を利用する場合には、X線照射部120を容易に動かせない。このような場合には、X線照射部120を固定して試料台130との位置をダイレクトビーム方向に調整してもよい。
【0064】
試料S0の格子面は、母材の単結晶における格子面である。入射X線は試料で回折して空間中に複数の回折スポットSP1を生じる。回折スポットSP1の発生位置は、試料S0に存在する格子面に対応して決まる。位置調整機構135は、試料S0から3次元空間中に発生した回折スポットの中から選択したものを2次元検出面で検出するように位置調整ができる。
【0065】
X線検出部140は、検出面に入射するX線の強度に応じて電気信号を発生する。これにより、試料S0により生じる回折スポットを検出する。X線検出部140は、回折スポットの形状を容易に検出するために2次元検出器であることが好ましく、具体的にはイメージングプレートまたは半導体検出器を用いることができる。
【0066】
測定時において、回折X線R2はX線検出部140の様々な位置で検出される。特に半導体検出器は、読み出しが速いため好適である。検出面はフラットであることが好ましいが、必ずしもフラットでなくてもよい。X線検出部140の位置は、処理装置150からの制御信号により調整できる。これにより、試料S0から3次元空間中に発生した回折スポットの中から選択したものを検出面で検出できる。
【0067】
コリメータ122は細束X線ビームを作る。X線源で発生した広域X線ビームを成形して幅数百μm以下の細束X線ビームを生成する。これにより、試料S0内の単一亜結晶粒に限定してX線を照射できる。タービンブレード内の母材を試料として損傷を測定する場合、入射X線は、タービンブレード内の母材の表面にコーティングされたTBCを透過して亜結晶粒にフォーカスされることで、回折X線が発生する。ここで発生した回折X線はX線検出部140で計測される。
【0068】
図6に示すように、入射X線R1に対する回折X線R2の角度は、2θで表せる。X線のダイレクトビームDB1の位置は2θ=0となる。試料S0に対するX線検出部140の角度はβ、試料S0に対するX線の入射角度はαで表す。入射角度αおよびX線検出部140の角度βは通常は固定されており、測定時にスキャンは行わない。したがって、測定時には、X線照射部120、試料台130およびX線検出部140のいずれも動かさない。
【0069】
なお、白色X線に放射光を利用してX線照射部120を容易に動かせない場合などには、X線照射部120を固定して試料台130との位置をX線検出部140のダイレクトビーム方向からの位置で調整するようにしてもよい。
【0070】
[処理装置の構成]
図8は、処理装置(損傷測定装置)150の構成を示すブロック図である。処理装置150は、PC等のCPUおよびメモリを備える装置で構成でき、プログラムを実行することでX線回折装置110の制御および検出データの処理を行う。処理装置150は、位置調整部151、係数算出部153、損傷状態特定部155および記憶部156を備えている。
【0071】
処理装置150は、入力装置160および出力装置170と接続されている。入力装置160は、マウス、タッチパネルやキーボード等のユーザからの入力を受け付ける装置である。出力装置170は、ディスプレイやプリンタ等の装置である。
【0072】
処理装置150は、X線照射部120、試料台130およびX線検出部140の位置情報の入力、ユーザからの指示内容の入力、X線検出部140の測定結果の入力に対し、データの処理や装置の制御を行う。処理装置150は、試料における特定された損傷状態を出力させる。撮影された回折スポットの画像およびピーク形状を見ようとする方向を出力させてもよい。
【0073】
位置調整部151は、入力された情報に基づいてX線照射部120に対するX線検出部140の配置を調整する。これにより、X線検出部140に回折X線が入射するようにX線照射部120からの入射X線に対する角度調整が可能になる。具体的には、X線検出部140の位置角度調整(φ角度等)、X線照射部120の角度の調整を行う。
【0074】
また、位置調整部151は、位置調整機構135を介して試料台130の傾きを調整することができる。なお、X線照射部120を固定して試料台130とX線検出部140の位置で調整するようにしてもよい。
【0075】
係数算出部153は、2θ方向の回折ピークを解析して回折ピークの裾の広がり具合を把握する。具体的には、回折スポットSP1の検出データに基づいて、検出データの回折スポットSP1における特定方向の強度分布の分散にかかる係数を算出する。
【0076】
回折スポットにおける特定方向の強度分布の分散にかかる係数から試料の損傷状態の特定が可能になる。回折スポットSP1の強度分布の分散にかかる係数は、特定方向のピークの半価幅であることが好ましい。半価幅とは、ピークの高さの半分の位置におけるピーク幅を意味する。
【0077】
損傷により試料の結晶構造が変形するのはタービンブレードの先端方向であるが、それに垂直な方向であっても、明確に試料の損傷状態を特定できる。なお、測定している変形の方向は、試料の配置、試料に対する入射X線の位置および回折X線の位置に基づいて特定できる。
【0078】
損傷状態特定部155は、算出された係数から試料の損傷状態を特定する。その際には記憶部156から供給される関数を参照し、回折スポットSP1における特定方向の強度分布の分散にかかる係数と損傷寿命消費率との関数の検量線を利用する。
【0079】
検量線は、予め損傷寿命消費率が既知である試料を用いて各ピークの半価幅に対する損傷寿命消費率をプロットし、最小二乗法で近似曲線を引くことで求められる。その際には、破断間近の信頼性の低いデータを無視し、例えば0%~50%の損傷寿命消費率のデータのみを用いて直線近似できる。
【0080】
なお、検量線は直線である必要はなく曲線であってもよい。得られた検量線を用いることで、試料S0の損傷寿命消費率を求め、さらに試料S0の余寿命を求めることができる。このようにして難度の高い4軸ゴニオメータを用いた角度調整作業等をしなくても容易に試料の損傷状態を診断できる。
【0081】
特定される試料S0の損傷状態は、回折スポットの強度分布の分散にかかる係数から算出される損傷寿命消費率であることが好ましい。これにより、損傷変形により破断するまでどの程度寿命が残っているかを特定することができる。
【0082】
記憶部156は、標準試料をもとに準備された、回折スポットにおける特定方向の強度分布の分散にかかる係数と損傷寿命消費率の関数を格納する。記憶部156は、試料S0の損傷を評価するときに参照される。記憶部156は、損傷状態特定部155の要求に応じて適宜必要な関数を供給する。
【0083】
[損傷測定方法]
上記のように構成された損傷測定システム100を用いて試料の損傷を診断する方法を説明する。
図9は、損傷測定方法を示すフローチャートである。まず、遮蔽カバー付コリメータを有するX線照射部120により細束に絞られた白色X線ビームを試料台130の回転中心位置に調整する(ステップS01)。
【0084】
試料を試料台130にセットする(ステップS02)。試料は、例えば遮熱被膜(TBC)に被覆された単結晶状態の母材である。このときに試料の損傷方向を試料台の表面に平行な方向に合わせることが好ましい。例えば、タービンブレードから切り出した試料S0は、タービンの回転中心側からブレードの先端側に向かう方向が損傷方向となる。測定の際には、損傷方向を入射X線R1からαだけ傾けて試料を設置する。特に、単結晶状態のデンドライト組織をもつ金属材料に対する損傷測定方法では、αを90°に設定し、試料の表面に対して垂直にX線を入射することが好ましい。αを90°に設定することで、各方位の伸び率を比較できる。
【0085】
測定位置によるデータのばらつきを低減するために、所定領域内の複数の照射点で測定する。照射点の間隔は1mm以上空けることが好ましい。領域は6箇所程度、スポット10点程度を選択して平均値を算出することが好ましい。
【0086】
次に、細束の白色X線ビームを単結晶状態の試料まで透過させて、離散的な回折スポットを生成する(ステップS03)。観測する回折スポットSP1は比較的にX線強度の強い低角側(反射法では20°程度が最低角)の回折スポットを選択することが好ましい(ステップS04)。なお、低角側とは2θが90°以下であることを指す。2θが50°以下であれば、低角側としてさらに好ましい。
【0087】
検出器の位置合わせ後は、各測定系の機器を静止したまま回折スポットを検出できる。白色X線を用いることで、検出器を低角にセットし、結晶の方位に関係なく、機器を回転することなく静止したままの位置で、多数の高強度な回折スポットを検出できる。
【0088】
ただし、高角側(例えば2θが90°超)の回折スポットを選択することもありうる。この場合には、試料に対してX線を入射させて反射したX線を測定できる。したがって、装置構成をコンパクトにできるとともに手順が簡単になる。
【0089】
次に、試料S0を静止したままX線検出部140の検出面に入力されたX線による2次元の回折スポットSP1の形状を測定する(ステップS05)。なお、10以上の格子面による回折スポットに基づいて試料の損傷状態を特定することが好ましい。これにより、試料の損傷を正確に評価できる。
【0090】
試料に白色X線を照射するとラウエ斑点として離散的で規則的な回折スポットが生成する。例えば、ニッケル基超合金は亜結晶粒が0.1mm程度と大きく、高精度測定のためX線照射面積を同程度、例えばX線ビームをφ0.1mm程度にすることにより、1~2個の亜結晶粒に限って白色X線を照射できる。
【0091】
X線検出部140で測定した各回折スポットSP1の形状から損傷状態を表す損傷方向のピーク形状を切り出して、データ処理により分散に掛かる係数を算出する(ステップS06)。なお、分散に係る係数を算出する方向は、2θ方向である。タービンブレード側面に平行な格子面の回折スポットを測定することが好ましい。
【0092】
次に、記憶部156に格納された損傷評価曲線(マスターカーブ)を読み出し、ピーク形状に関する分散に係る係数に基づいて試料の損傷状態を特定する(ステップS07)。そして、試料の損傷状態について余寿命を推定する(ステップS08)。演算結果は、ディスプレイ、プリンタ等で出力して(ステップS09)、一連の処理を終了する。
【0093】
なお、特に反射法を適用する場合、検出する回折スポットは、照射される白色X線と試料の母材の単結晶における格子面とによる回折角度が特定角度のものを選ぶことが好ましい。特定角度は、19°以上21°以下であることが好ましい。これにより、高強度の回折X線が計測可能となり、損傷状態の特定が容易となる。
【0094】
[入射X線のエネルギーと回折強度]
図10は、ニッケル基超合金におけるq値(=sinθ/λ)と構造因子Fを示すグラフである。特定の回折角を指定することで、
図10に示すグラフからX線のエネルギー(=12.4/λkeV、ただしλの単位:Å)とX線の回折強度(∝F
2)の関係が分かる。ただし、これは一例であり、試料に応じて入射X線の適切なエネルギーは異なる。
【0095】
グラフによれば、回折角20°付近の同一の回折領域に対して、X線の波長が0.3Å(低エネルギー側41keV)から0.08Å(高エネルギー側150keV)に変わると構造因子は1/10以下になる。通常のX線回折(運動学的理論)では、回折強度は構造因子の2乗に比例するため、上記のX線の波長の変化により回折強度は1/100以下に減少する。
【0096】
100keV以上(λ=0.124Å以下)のX線でニッケル基超合金試料を測定すると、低エネルギーX線による測定に比べて、構造因子の適応範囲が(35~30)から殆ど裾野付近(3~2)に減少する。すなわち、本発明で使用する100keV以上のX線のエネルギーと41keVのX線のエネルギーで同様に2θ=20°付近を測定した場合、測定強度比は1/100程度になることが分かる。
【0097】
このような著しい回折強度の低下のため、従来は100keV以上のX線を用いてラウエ像が測定され、有意な実験結果が示されたことはない。これに対し、特に100keV以上のX線を用いた反射ラウエ法で母材の結晶情報を測定できる。1/100以下に減少する微弱なX線の強度を測定するためには、極度に散乱X線を抑えた環境下で長時間計測を行うのが有効である。
【0098】
その結果、後述の実験では反射ラウエ像が10分間計測で数十カウント/秒程度観測されることを見出した。この測定の適合条件は、後述のようにグラフを用いて、シミュレーションにより導くことも可能である。
【0099】
[入射X線の透過率]
透過法および反射法のそれぞれを適用する場面での試料に対するX線の透過率を説明する。
【0100】
(透過法)
図11は、透過法における試料に対するX線の強度と試料の厚さの関係を示す断面図である。
図11において、入射X線と回折X線との間には以下の関係がある。
【0101】
【0102】
図11に示される例では、2層の膜(TBCの第1層がYSZ、第2層がCo合金)が積層された試料にX線を照射している。試料の表面と裏面とに同一の被膜層がそれぞれの表面から同じ順番で積層し、強度I
0、入射角α(=90°)でX線が試料の表面から入射している。そして、試料厚τmをX線の入射方向から深さ方向にm:nに分ける位置において出射角β
mで強度I
mのX線が回折することを仮定している。
【0103】
X線強度の透過率Im/I0は、式(1―1)を解くことで求まる。第1層、第2層の膜厚τ1、τ2に対し、入射X線のエネルギーに対する各層の線吸収係数μ1、μ2およびμmを用いることができる。
【0104】
この原理に基づいて、X線エネルギーに対する透過率(Im/I0)を計算し、TBCで保護された母材のニッケル基超合金に対して測定に必要なエネルギーやX線強度を予測する。その結果、高い精度で試料の余寿命を推定できる。
【0105】
(反射法)
図12は、反射法における試料に対するX線の強度と侵入深さの関係を示す断面図である。
図12において、入射X線と回折X線との間には以下の関係がある。
【数2】
【0106】
図12に示される例では、2層の膜(TBCの第1層がYSZ、第2層がCo合金)が積層された試料にX線を照射している。強度I
0、入射角αで入射したX線が、第1層、第2層および母材でそれぞれ出射角β
1、β
2およびβ
m、X線強度I
1、I
2およびI
mで回折している。
【0107】
X線強度の透過率(Im/I0)が1/eに低下するときのX線侵入深さτmは、式(1)を解いて求まる。第1層、第2層の膜厚τ1、τ2に対し、入射X線のエネルギーに対する各層の線吸収係数μ1、μ2およびμmを用いることができる。
【0108】
この原理に基づいて、X線エネルギーに対する透過率(Im/I0)を計算し、TBCで保護された母材のニッケル基超合金に対して測定に必要なエネルギーやX線強度を予測する。その結果、高い精度で試料の余寿命を推定できる。
【0109】
[多結晶の回折強度]
図13は、回折X線立体角σごとのニッケルの単結晶試料と多結晶試料の回折強度を示す概略図である。例えば、TBCで保護された母材のニッケル基超合金の試料に対して検出されるX線には、被膜で回折されるX線も含まれる。試料の母材は単結晶状態であるが、被膜は多結晶である。
図13に示すように、多結晶(fcc)の回折強度I
polyは、回折X線立体角σとして以下の数式で表される。
【数3】
【0110】
例えば、散乱角σ=0.5°のとき、多結晶体試料における(111)反射の回折X線強度は、以下の通りになる。
【数4】
【0111】
一般的に、単結晶試料では回折に寄与する結晶子は1個であるが、多結晶体試料では回折に寄与する結晶子の数は無数に存在する。したがって、
図13に示すように単結晶試料の1つの回折X線の立体角σ
singleの回折強度をI
singleとすると、多結晶体試料における同一の立体角内で観測されるX線の回折X線強度は最も多重度の高い多重度48の反射面(111)でも、単結晶試料の場合の約1.5×10
-4倍程度と桁違いに小さくなる。
【0112】
タービンブレードの場合、TBC層はYSZやCoとNi合金のような多結晶体試料で構成されている。YSZによる回折X線の強度は、Niによるものの500倍程度であり、CoおよびNi合金による回折X線の強度はNiによるものと同等である。
【0113】
TBCを構成する多結晶体試料からの回折X線強度は、母材のニッケル単結晶試料の回折X線強度に比べて桁違いに小さい。したがって、表面から100μm以上下にあるニッケル単結晶によるラウエ像とTBCによるデバイシェラー環との回折X線強度のコントラストは非常に大きい。そのため、TBC層の下にある母材のラウエ像が鮮明に観測される。
【0114】
[実施例1]
一方向凝固材をなすニッケル基超合金のトポグラフ画像を取得した。
図14は、一方向凝固材のデンドライト組織を構成する亜結晶粒界のトポグラフ画像である。
図14に示すように、デンドライト組織を有する結晶内に亜結晶粒が生じている。
図14に示す画像では、矢印の方向が100方位であり、デンドライト組織内に無数の単結晶状態の亜結晶粒が黒い斑点として現れている。
【0115】
[実施例2]
粒径が数百μm程度の亜結晶粒をもつデンドライト組織で構成される単結晶ブロックのニッケル基超合金材を試料として用いて、ラウエ法に基づく光学系で回折スポットを測定した。1mm、2mm、3mm、5mmおよび7mmの5段階の厚さで損傷の無い試料を準備した。
【0116】
0.2°以下の発散角を有する、100keV以上の細束白色X線を、亜結晶粒サイズと同等の数百μmのビーム幅に成形し、試料に照射したところ、単一ピークの回折スポットが複数現れた。回折スポットの現れ方から、X線行路内における回折条件を満たす亜結晶粒の数が極少数(1~2個)に限定されていることを確認できた。
【0117】
図15は、厚さ1mmの単結晶状態にあるブロック材において計測したラウエ像を示す図である。
図16(a)~(c)は、それぞれ
図15における回折スポットNo.1~3のプロファイルを示す図である。
【0118】
図17は、厚さ2mmの単結晶状態にあるブロック材において計測したラウエ像を示す図である。
図18(a)~(c)は、それぞれ
図17における回折スポットNo.1~3のプロファイルを示す図である。
【0119】
図19は、厚さ3mmの単結晶状態にあるブロック材において計測したラウエ像を示す図である。
図20(a)~(c)は、それぞれ
図19における回折スポットNo.1~3のプロファイルを示す図である。
【0120】
図21は、厚さ5mmの単結晶状態にあるブロック材において計測したラウエ像を示す図である。
図22(a)~(c)は、それぞれ
図21における回折スポットNo.1~3のプロファイルを示す図である。
【0121】
図23は、厚さ7mmの単結晶状態にあるブロック材において計測したラウエ像を示す図である。
図24(a)、(b)は、それぞれ
図23における回折スポットNo.1、2のプロファイルを示す図である。回折スポットNo.2にはピークの重なりが見られたが、単一のピークに分離可能であった。
【0122】
図15から
図24に示すように、測定された殆どの回折スポットのプロファイルにはピークが1個含まれるのみである。異なる回折スポットにおけるピークを比較すると半価幅は同等であった。回折スポットのプロファイルの一部には稀に複数のピークの重なりも測定された。
【0123】
ここで観測されたピークは、入射X線行路内に並ぶニッケル基超合金の試料深層部の亜結晶粒において発生した回折X線によるものである。したがって、上記の厚さの異なる試料に対しても、回折スポットの半価幅の広がりを観測することにより、ニッケル基超合金材である試料の深層部の損傷度を評価できることが分かった。この際、実験結果から各回折スポットの半価幅FWHM(=w)は回折角2θに依存せずに同等であることも確認できた。
【0124】
[実施例3]
次に、粒径が数百μm程度の亜結晶粒をもつデンドライト組織を有するニッケル基超合金で形成された直径5mmの円柱試験片に損傷を与えてX線を照射する実験を行なった。
図25は、円柱試験片S2の断面を示す概略図である。
図25に示すように、円柱試験片S2内には、回折に寄与する亜結晶粒P1および回折に寄与しない亜結晶粒P2が存在する。0.2°以下の発散角を有する、100keV以上の細束白色X線を、亜結晶粒サイズと同等の数百μmのビーム幅に成形し、円柱試験片の中心からの距離0mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mmおよび2.5mmの位置にそれぞれ照射した。
【0125】
各損傷度の円柱試験片S2に、単一ピークの回折スポットが複数現れた。回折スポットの現れ方から、X線行路内における回折条件を満たす亜結晶粒の数が極少数(1~2個)に限定されていることを確認できた。
図26(a)、(b)は、それぞれ損傷度0%の円柱試験片の中心にX線を照射したときのラウエ像、およびそのラウエ像上の回折スポットNo.1のプロファイルを示す図である。回折スポットのプロファイルにはピークが1個含まれるのみである。また、異なる回折スポットにおけるピークを比較すると半価幅は同等であった。
【0126】
図27は、円柱試験片S2の各損傷度と回折スポットの半価幅を示すグラフである。
図27に示すように、試料の厚さに依存せずに損傷度のみに依存してラウエスポットの半価幅が変化する結果が得られた。したがって、試料の厚さに依存せず検量線を作成でき、不規則形状の材料でも安定した損傷度の評価が可能であることが実証された。
【0127】
[実施例4]
ニッケル基超合金の試料にTBCの被膜が形成されたタービンブレードに対して、150keVのX線を低角で入射させた。ニッケル基超合金は、鋳造されたものであり、TBCの被膜の第1層がYSZで形成され、第2層はCo合金で形成されている。
【0128】
図28は、低角入射の150keVのX線で取得されたTBC被膜の回折画像である。X線の入射角が低いために、150keVのX線を用いてもTBC内でX線が全て回折されてしまい母材試料までX線が到達していない。回折画像には、ダイレクトビームを中心にTBCの被膜の合金層のデバイシェラー環が観測されている。また、TBCの第1層のセラミックス層内の粗大結晶粒で回折された小さな回折スポットが多数観測されている。
【0129】
[実施例5]
ニッケル基超合金の試料にTBCの被膜が形成されたタービンブレードにそれぞれ150keVおよび50keVのX線を照射して母材の金属組織の回折ピークを検出した。ニッケル基超合金は、鋳造されたものであり、TBCの被膜の第1層がYSZで形成され、第2層はCo合金で形成されている。検出された回折ピークからピークプロファイルを確認した。
【0130】
図29(a)~(c)は、それぞれ試料の模式図、150keVのX線で取得された母材の回折画像、およびピークプロファイルである。
図29(a)に示すように、回折スポットを測定する際に、タービンブレードTB1の損傷の変形の方向に測定した。
図29(b)に示すように、X線の回折スポットが幾つも観測されている。X線エネルギーが十分に高く、TBCをX線が透過して母材まで到達したと考えられる。
【0131】
図29(c)は、スポット1で示される回折スポットの位置を一方向にスキャンした時のピークプロファイルを示している。
図29(c)に示すように、母材試料の亜結晶粒による回折スポットのピークが明確に観測されている。
【0132】
図30(a)~(c)は、それぞれ試料の模式図、50keVのX線で取得された母材の回折画像、およびピークプロファイルである。
図30(c)に示すように、回折スポットを測定する際に、タービンブレードTB1の損傷の変形の方向に測定した。
【0133】
図30(b)に示すように、X線の回折スポットが1つも観測されていない。スポット1と表示された位置は、150keVのX線を照射した際の回折スポットの位置を示している。X線エネルギーが低いため、TBCの被膜でX線が全て吸収されてしまい母材までX線が到達していないと考えられる。
【0134】
図30(c)は、150keVのX線を照射した際の回折スポットの位置を一方向にスキャンした時のピークプロファイルを示している。
図30(c)に示すように、この場合はピークが一つも見えない。
【0135】
[実施例6]
ニッケル基超合金の試料にTBCの被膜が形成されたタービンブレードに150keVのX線を照射し、回折像を取得した。ニッケル基超合金は、鋳造されたものであり、TBCの被膜の第1層がYSZで形成され、第2層はCo合金で形成されている。得られた回折ピークに対しFWHM解析を行ない、その結果から検量線を作成し、損傷度を推定した。
【0136】
図31は、実測値と計算値とを比較するためのX線エネルギーに対するX線強度の透過率を示すグラフである。
図31は、X線エネルギーとX線透過率(I
m/I
0)の関係の計算結果を示している。TBCは、空孔率15.7%の1000μm厚のYSZ膜で構成された第1層と、160μm厚のCo-Ni(1:1)膜で構成された第2層とを備えている。
【0137】
X線エネルギーが150keVであるときの計算値で示されるX線透過率が36%のとき、X線のエネルギー150keVにおけるX線強度101unitsがX線透過率36%に相当するものと仮定する。X線エネルギー100keVおよび130keVに対し、それぞれ観測されたX線強度は25unitsおよび64unitsであった。それらに対し上記の対応関係から求まるX線透過率は、それぞれ8%および22%であった。これらの観測値から求まる値は、計算値10%および22%と同等であり、本計算の精度が確認できた。
【0138】
上記の計算方法を用いると、上記試料に対し有効なX線感度が1/e以上となるX線エネルギーが145keVと算出できる。このようにして、組成が既知の材料に対して、本計算に基づいたグラフを作成することで、測定に必要なX線強度が1/eになるX線のエネルギーが予測できる。
【0139】
[実施例7]
図32は、130keVのX線で測定したときの母材金属組織におけるピークのFWHM解析の結果から推定した損傷度を示す図である。
図31に示すグラフは、ニッケル基超合金の試料にTBCの被膜が形成されたタービンブレードに対して作成された母材損傷評価曲線(マスターカーブ)である。母材損傷評価曲線は、あらかじめタービンブレードについて高温高負荷(例えば760℃、440Mpa)で破断するまで損傷変形を与えてデータを取ることで得られる。
【0140】
グラフ中に示されたFWHM=1.2unitsは、タービンブレードの評価部位に対する回折スポットの平均測定値である。このとき、マスターカーブを用いると、被検試料の損傷度を48%と推定できる。
【符号の説明】
【0141】
100 損傷測定システム
110 X線回折装置
120 X線照射部
121 本体部
122 コリメータ
125 筐体
126 X線源
126a 広域X線照射領域
127 X線シールド窓
128 コリメータ本体
129 遮蔽カバー
130 試料台
132 アッテネータ
135 位置調整機構
140 X線検出部
150 処理装置(損傷測定装置)
151 位置調整部
153 係数算出部
155 損傷状態特定部
156 記憶部
160 入力装置
170 出力装置
DB1 ダイレクトビーム
I0 入射X線の強度
C1 結晶子
B1 強度分布
R1 入射X線
R2、R3、R4 回折X線
S0、S1 試料
SP1 回折スポット
TB1 タービンブレード
D0、D1、D11、D12、D2、D3 ピーク
P1、P2 亜結晶粒
F1 格子面
G1 回折面