(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140757
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】波長変換装置及び照明装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G02B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046755
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 啓次郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 康之
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 涼介
(72)【発明者】
【氏名】前村 要介
(72)【発明者】
【氏名】村井 俊介
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148AA01
2H148AA07
2H148AA25
(57)【要約】
【課題】
出射光の狭角化を達成しつつ、当該出射光の光束を増加させることが可能な波長変換装置及び照明装置を提供する。
【解決手段】
表面に励起光が入射される入射領域を有しかつ当該励起光に励起されて蛍光を発する蛍光体からなる蛍光体部分、及び蛍光体部分の入射領域を妨げることなく蛍光体部分に接して設けられ、励起光及び蛍光に対して透光性を有し、かつ蛍光体部分と共に平板形状をなす透光体部分からなる板状部分と、透光体部分の表面に形成されたナノアンテナとを有する波長変換装置であって、入射領域は板状部分の一方の主面に配され、板状部分の他方の主面に垂直な方向から見た上面視において、入射領域と重ならない非重畳領域において透光体部分の表面にナノアンテナが形成されていることを特徴とする。この構成によれば、波長変換装置の出射光の狭角化を達成しつつ、当該出射光の光束を増加させることが可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に励起光が入射される入射領域を有しかつ当該励起光に励起されて蛍光を発する蛍光体からなる蛍光体部分と出射面の表面に形成されたナノアンテナとを有する波長変換装置であって、
前記入射領域は前記波長変換装置の一方の主面に配され、前記波長変換装置の他方の主面である前記出射面に垂直な方向から見た上面視において、前記入射領域と重ならない非重畳領域において形成される前記ナノアンテナの配置密度は、前記入射領域と重なる重畳領域における前記ナノアンテナの配置密度より大きいことを特徴とする波長変換装置。
【請求項2】
前記蛍光体部分に接して設けられ、前記励起光及び前記蛍光に対して透光性を有し、かつ前記蛍光体部分と共に平板形状をなす透光体部分からなる板状部分をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項3】
前記重畳領域には、前記ナノアンテナが形成されていないことを特徴とする請求項1又は2に記載の波長変換装置。
【請求項4】
前記蛍光体部分は、前記入射領域を有する1の面及び前記1の面と反対側の他の面を有し、
前記透光体部分は、前記他の面を覆うように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の波長変換装置。
【請求項5】
前記透光体部分は、前記上面視において開口を有する枠形状を有し、
前記蛍光体部分は、前記透光体部分の前記開口内に配されていることを特徴とする請求項2に記載の波長変換装置。
【請求項6】
前記蛍光体部分は、前記上面視において長手形状を有し、
前記透光体部分は、前記蛍光体部分の短手方向において前記蛍光体部分を挟み込むように複数形成されていることを特徴とする請求項2に記載の波長変換装置。
【請求項7】
前記波長変換装置の前記一方の主面の前記入射領域の周囲には、前記励起光または前記蛍光に対して反射性を有する光反射膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の波長変換装置。
【請求項8】
前記ナノアンテナは、Alからなる柱状又は錘状の金属突起であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の波長変換装置。
【請求項9】
前記蛍光体部分は、単結晶の蛍光体からなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載の波長変換装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1つに記載の波長変換装置と、
前記入射領域に向けて前記励起光を出射する光源と、
を有することを特徴とする照明装置。
【請求項11】
複数の前記光源を有し、
前記入射領域および前記重畳領域は、複数の前記光源の各々に対応して複数形成されていることを特徴とする請求項10に記載の照明装置。
【請求項12】
表面に励起光が入射される入射領域を有しかつ当該励起光に励起されて蛍光を発する蛍光体からなる蛍光体部分と、出射面の表面に形成されたナノアンテナと、を有する波長変換装置であって、
前記入射領域は前記波長変換装置の一方の主面に配され、前記主面と前記出射面は同一の面であり、前記主面に垂直な方向から見た上面視において、前記主面の前記入射領域以外の非入射領域において形成される前記ナノアンテナの配置密度は、前記入射領域における前記ナノアンテナの配置密度より大きいことを特徴とする波長変換装置。
【請求項13】
励起光を出射する光源と、表面に前記励起光が入射される入射領域を有しかつ前記励起光に励起されて蛍光を発する蛍光体からなる蛍光体部分と出射面の表面に形成されたナノアンテナとを有する波長変換装置と、前記波長変換装置から出射される前記蛍光を受ける光学部材と、を有する照明装置であって、
前記入射領域は前記波長変換装置の一方の主面に配され、前記波長変換装置の他方の主面である前記出射面の垂直な方向から見た上面視において、前記入射領域と重ならない非重畳領域において形成される前記ナノアンテナの配置密度は、前記入射領域と重なる重畳領域における前記ナノアンテナの配置密度より大きいことを特徴とする照明装置。
【請求項14】
前記光源は、ランバーシアン配光を有するLEDであり、かつ前記蛍光体部分の前記入射領域に接して設けられ、
前記光学部材は、前記波長変換装置からの照射光が所定角度範囲で入射される位置に配置されたレンズであり、
前記波長変換装置は、前記蛍光体部分が単結晶であり、前記主面の前記入射領域以外の領域において配置される拡散反射部材を有し、前記ナノアンテナが前記光源から前記励起光が前記出射面において前記所定角度範囲以内で広がる範囲まで形成されておらず、前記非重畳領域のうち前記光源から前記励起光が前記出射面において前記所定角度範囲より大きくかつ半値角度より小さい角度で広がる範囲を含め形成されていることを特徴とする請求項13に記載の照明装置。
【請求項15】
前記光源は、ランバーシアン配光を有するLEDであり、かつ前記蛍光体部分の前記入射領域に接して設けられ、
前記波長変換装置は、前記蛍光体部分が単結晶であり、前記主面の前記入射領域以外の領域において配置される拡散反射部材を有し、前記蛍光を所定角度範囲が前方光束の1/2になるように照射し、前記ナノアンテナが前記光源から前記励起光が前記出射面において前記所定角度範囲以内で広がる範囲まで形成されておらず、前記非重畳領域のうち前記光源から前記励起光が前記出射面において前記所定角度範囲より大きくかつ半値角度より小さい角度で広がる範囲を含め形成されていることを特徴とする請求項13に記載の照明装置。
【請求項16】
前記主面と前記拡散反射部材との間には、前記励起光及び前記蛍光を反射させる反射膜が形成されていることを特徴とする請求項14又は15に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノサイズの金属粒子からなる金属アンテナ(以下、ナノアンテナと称する)を用いて出射光の狭角化をなす照明装置が開示されている。例えば、特許文献1には、透明基板と当該透明基板上に配された波長変換体と、当該波長変換体上に形成された複数のナノアンテナとを有する照明装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような照明装置において、波長変換体中の蛍光体を励起させるための励起光が光源から出射された際に、波長変換体上に配されたナノアンテナが当該波長変換体を通過する励起光や蛍光体から生じる蛍光を吸収又は反射することで、波長変換体から出射される出射光の光束が低下してしまうという問題点が挙げられる。
【0005】
また、特許文献1のような照明装置においては、波長変換体とナノアンテナとの界面においてナノアンテナが励起光によって励起された波長変換体のエネルギーの一部を吸収して熱エネルギーに変換してしまうために、本来生じるべき蛍光の消光が発生してしまうという問題点が挙げられる。
【0006】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、出射光の狭角化を達成しつつ、当該出射光の光束を増加させることが可能な波長変換装置及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による波長変換装置は、表面に励起光が入射される入射領域を有しかつ当該励起光に励起されて蛍光を発する蛍光体からなる蛍光体部分、及び前記蛍光体部分の前記入射領域を妨げることなく前記蛍光体部分に接して設けられ、前記励起光及び前記蛍光に対して透光性を有し、かつ前記蛍光体部分と共に平板形状をなす透光体部分からなる板状部分と、前記透光体部分の表面に形成されたナノアンテナとを有する波長変換装置であって、前記入射領域は前記板状部分の一方の主面に配され、前記板状部分の他方の主面に垂直な方向から見た上面視において、前記入射領域と重なっている重畳領域において前記透光体部分の表面に前記ナノアンテナが形成されておらず、前記入射領域と重ならない非重畳領域において前記透光体部分の表面に前記ナノアンテナが形成されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、波長変換装置の出射光の狭角化を達成しつつ、当該出射光の光束を増加させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係る照明装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】実施例1に係る波長変換装置の上面図である。
【
図3】実施例1に係る波長変換装置の断面図である。
【
図4】変形例1に係る波長変換装置の断面図である。
【
図5】変形例2に係る波長変換装置の上面図である。
【
図6】変形例2に係る波長変換装置の断面図である。
【
図7】変形例2に係る波長変換装置及び比較例における実験結果を示す図である。
【
図8】変形例3に係る波長変換装置の断面図である。
【
図9】変形例4に係る波長変換装置の上面図である。
【
図10】実施例2に係る照明装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図11】実施例2に係る波長変換装置の上面図である。
【
図12】実施例2に係る波長変換装置の断面図である。
【
図13】実施例3に係る照明装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図14】実施例3に係る波長変換装置の断面図である。
【
図15】変形例5に係る波長変換装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照して具体的に説明する。なお、図面において同一の構成要素については同一の符号を付け、重複する構成要素の説明は省略する。
【実施例0011】
[実施例1の照明装置]
図1は、実施例1に係る照明装置10の構成を模式的に示す断面図である。
図1においては、視認性に鑑みてハッチングを省略している。
【0012】
筐体11は、箱形の筐体であり、互いに対向する2つの面の各々にそれぞれ開口部OP1及びOP2を有している。筐体11は、開口部OP1と開口部OP2との間の位置において、物体を支持する支持構造11Aを有している。
【0013】
光源12は、開口部OP1内に固定され、開口部OP2に向けて特定の波長の光L1を出射する光源である。言い換えれば、開口部OP2は光L1の光軸OA上に形成されている。本実施例において、光源12は、InGaN系半導体からなる発光層を有するレーザ光源である。本実施例において、光源12からは、光L1として約450nmの波長の青色光が出射される。
【0014】
波長変換装置13は、光軸OA上に位置するように支持構造11Aによって支持されている。波長変換装置13は蛍光体を含み、光源12から出射される光L1を受けて光L1と波長の異なる蛍光を発する波長変換機能を有する波長変換装置である。すなわち、波長変換装置13は、光L1を励起光として励起される蛍光体を含み、当該蛍光体が励起されることで発せられる蛍光を出射する。以下、光L1を励起光L1とも称する。
【0015】
波長変換装置13からは、光L1を受けた際に蛍光の発生に寄与せずに波長変換装置13を通過する通過光と上記蛍光とを含む光L2が出射される。
【0016】
光学部材としてのレンズ14は、開口部OP2内に固定されている。すなわち、レンズ14は、光軸OA上に配されている。レンズ14は、波長変換装置13から出射される光L2を受けて、当該光L2を所望の配光に成形し、照明光としての光L3を生成する光学レンズである。レンズ14には、例えば、球面レンズや非球面レンズなどを用いることができる。レンズ14によって生成される光L3は、筐体11の外部に取り出される。
【0017】
本実施例において、筐体11内における光源12と波長変換装置13との間の空間及び波長変換装置13とレンズ14との間の空間は大気で満たされている。すなわち、波長変換装置13から出射される光L2は、大気中を通ってレンズ14に入射される。
【0018】
[実施例1の波長変換装置]
以下に、
図2及び
図3を用いて実施例1に係る照明装置10の波長変換装置13について説明する。
図2は、波長変換装置13の上面図である。
図2は、
図1における波長変換装置13の光L2を出射する主面を当該主面に垂直な方向から見たときの様子を示している。言い換えれば、
図2は、波長変換装置13を光軸OAに沿った方向から見た平面図である。また、
図3は、
図2における3-3線に沿った波長変換装置13の断面図である。
【0019】
波長変換板15は、上面形状が矩形の平板形状を有している。本実施例において、波長変換板15は、板状の波長変換部材18及び波長変換部材18の上面を覆うように設けられた透光層19によって形成されている。
【0020】
波長変換部材18は、波長変換装置13において上記した波長変換機能を有する平板状の部材である。波長変換部材18は、上記した光源12から入射される光L1によって励起されて蛍光を発する蛍光体からなる。すなわち、光源12から波長変換部材18に入射される励起光L1は、波長変換部材18の蛍光体を励起させる励起光として機能する。
【0021】
本実施例において、波長変換部材18の下面の中央の入射領域IAは、波長変換部材18を照明装置10に取り付けた際に励起光L1が入射する領域を含む矩形の領域である。
【0022】
なお、本実施例において、入射領域IAは、波長変換部材18の下面に励起光L1が入射される際の、当該下面における励起光L1の光強度が最大強度から当該最大強度の2分の1となる強度までの範囲を示す領域を含む。一般的な光源において、光強度は光軸(0度)が最も強く、光軸に対する角度が大きくなるほど弱まる。最大強度の2分の1となる角度を半値角度と呼び、入射領域IAは半値角度以内で励起光が広がる範囲である。すなわち、入射領域IAには、最大強度から当該強度の2分の1までの強度範囲の励起光L1が入射される。
【0023】
本実施例において、波長変換部材18は、内部で光散乱が生じにくい単結晶の蛍光体からなる。具体的には、波長変換部材18は、セリウム(Ce)を発光中心とした単結晶のイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)蛍光体からなるセラミックス蛍光体プレートである。波長変換部材18は、多結晶の蛍光体に置き換えてもよい。本実施例において、波長変換部材18の厚みは約200μmである。
【0024】
上記したように、本実施例において、光源12からは、励起光L1として約450nmの波長の青色光が出射される。波長変換部材18は、当該青色光を受けて蛍光として約460~750nmの波長の黄色光を発する。
【0025】
透光層19は、波長変換部材18の上面に形成されている透光性の膜体である。本実施例において、透光層19は、波長変換部材18よりも高い屈折率(>1.82)を有する材料からなる。
【0026】
具体的には、透光層19は、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)や五酸化ニオブ(Nb2O5)、五酸化タンタル(Ta2O5)、酸化チタン(TiO2)、酸化ランタン(La2O3)、窒化ケイ素(Si3N4)等の材料から構成される。透光層19は、例えば、波長変換部材18の上面に電子ビーム蒸着やスパッタリングによって成膜されて形成される。
【0027】
ナノアンテナ16は、波長変換板15の上面、すなわち透光層19の上面にアレイ状に複数形成され、各々の上面形状が円形の柱状の金属突起である。本実施例において、ナノアンテナ16は、波長変換板15の上面のうち、上面視において入射領域IAと重なる領域である重畳領域A1を除く枠形状の非重畳領域A2において複数列にて配置されている。言い換えれば、重畳領域A1にはナノアンテナ16が配置されていない。
【0028】
本実施例において、ナノアンテナ16は、上面視においてマトリクス状に配置されており、図中上下方向及び左右方向に隣り合うナノアンテナ16が互いに同一の周期Pで非重畳領域A2に配置されている。本実施例において、周期Pは350nmである。
【0029】
また、本実施例において、ナノアンテナ16の各々は円柱状であり、互いに同一の径Wを有する。本実施例において、ナノアンテナ16の各々の径Wは150±20nmである。また、ナノアンテナ16の各々の高さは130nmである。また、ナノアンテナ16は、アルミニウム(Al)からなる。
【0030】
なお、本実施例においては、ナノアンテナ16が周期的に所定の間隔で配置されているが、当該配置されているナノアンテナ16の配置周期に従った位置でありながらナノアンテナ16が形成されていない領域をナノアンテナ16が配置されていない領域といえる。すなわち、透光層19の上面においてナノアンテナ16が互いに上記した周期Pで隣接していない領域でありかつナノアンテナ16が形成されていない領域を、本実施例におけるナノアンテナ16が配置されていない領域としている。
【0031】
光反射部材17は、波長変換板15の外側面を覆うように連続的に延在している光反射を有する部材である。光反射部材17は、光散乱性の粒子を含有する透光性の樹脂から構成され、例えば、シリコーン樹脂にTiO2粒子を含有させた樹脂材からなる。
【0032】
上記したように、波長変換装置13は、励起光によって励起されて蛍光を発する蛍光体からなる平板状の波長変換部材18及び当該波長変換部材18上に形成された透光層19からなる波長変換板15と、透光層19上に配置されたナノアンテナ16とから構成される。言い換えれば、波長変換装置13は、励起光によって励起されて蛍光を発する蛍光体からなる蛍光体部分及び当該蛍光体部分と共に平板形状をなす透光体部分からなる板状部分と、当該透光体部分の表面に形成されたナノアンテナとを有する。
【0033】
また、本実施例においては、上記したように、波長変換板15の下面に露出されている入射領域IAと重畳する重畳領域A1にはナノアンテナ16を配置せず、当該重畳領域A1以外の領域である非重畳領域A2にナノアンテナ16を配置している。
【0034】
すなわち、本実施例においては、波長変換板15の一方の主面において上記入射領域IAが露出しており、波長変換板15の他方の主面の当該主面に垂直な方向から見た上面視において、入射領域IAと重畳しない非重畳領域A2において透光層19が露出しており、当該非重畳領域A2において露出している透光層19の表面にナノアンテナ16が形成されている。
【0035】
[重畳領域A1から出射される光]
以下に、
図3を用いて上記した重畳領域A1から出射される光L21について説明する。
【0036】
本実施例において、波長変換部材18は、上記したように、内部で光散乱が生じにくい単結晶のYAG:Ce蛍光体からなる。そのため、波長変換部材18の入射領域IAに垂直に入射した励起光L1は、レーザ光としての指向性を保った状態のまま重畳領域A1へと進行する。
【0037】
このとき、波長変換部材18の内部を進行する励起光L1によって励起されて生じた蛍光は、波長変換部材18内において全方位に亘って散乱する。波長変換部材18から透光層19を介して大気中へと進行する蛍光のうち重畳領域A1へと進行する成分、すなわち波長変換板15内から大気中に進行する蛍光の角度が臨界角未満となる成分については、そのまま重畳領域A1から大気中に出射される。
【0038】
本実施例においては、上記したように、透光層19の重畳領域A1にはナノアンテナ16が形成されていない。そのため、波長変換部材18を通過して透光層19の重畳領域A1に到達した励起光L1及び上記した蛍光の臨界角未満の成分は、ナノアンテナ16による反射や吸収が生じることなく大気中へと出射される。すなわち、透光層19の重畳領域A1からは、波長変換部材18を通過した青色光と蛍光としての黄色光とが混色して生成される白色光である光L21が出射される。
【0039】
このようにして、本実施例においては、入射領域IAの直上の重畳領域A1にはナノアンテナ16を配置しない構成とすることによって、当該ナノアンテナ16による励起光L1及び蛍光の反射や吸収が生じることを防ぐことができ、高い光束を有する光L21を出射させることができる。
【0040】
本実施例において、波長変換装置13を照明装置10に用いた際には、光L21は、重畳領域A1から前方(-90度から+90度範囲)へ照射される前方光束の2分の1までを示す角度範囲の光を示し、上記したレンズ14に取り込まれる。具体的には、
図3に示すように、重畳領域A1の外端において波長変換板15の上面に垂直な方向の角度を0度としたときに、図中左右方向に45度の角度で広がって出射される光L21が上記したレンズ14に取り込まれる。
【0041】
[非重畳領域A2から出射される光]
次に、
図3を用いて上記した非重畳領域A2から出射される光L22について説明する。
【0042】
本実施例において、励起光L1のうち入射領域IA以外を進行する励起光L1、すなわち励起光L1のうち強度が最大強度の2分の1未満となる成分や、波長変換板15内から大気中に進行する蛍光の角度が臨界角以上となる成分は、非重畳領域A2へと進行し、当該非重畳領域A2を介して大気中に出射される。
【0043】
非重畳領域A2から出射される光L22のうち蛍光成分は、当該非重畳領域A2に形成されている複数のナノアンテナ16の各々の作用により、狭角な配光分布(低エタンデュ)となって出射される。すなわち、ナノアンテナ16は、非重畳領域A2から出射される光の配光角度を狭角化する。
【0044】
本実施例においては、
図3に示すように、非重畳領域A2の外端において波長変換板15の上面に垂直な方向の角度を0度としたときに、図中左右方向に35度の角度で広がって出射される光L22が上記したレンズ14に取り込まれる。なお、この光L21は非重畳領域A2から前方(-90度から+90度範囲)へ照射される前方光束の2分の1までの光束を含む角度範囲の光を示している。このように、ナノアンテナ16を介して非重畳領域A2から出射される光L22は、重畳領域A1から出射される光L21よりも狭角化されて出射される。
【0045】
ナノアンテナ16を波長変換部材18に直接形成した場合においても当該ナノアンテナ16を機能させることができるが、本実施例においては、上記したように、非重畳領域A2の透光層19上にナノアンテナ16を形成している。そのため、波長変換部材18のナノアンテナ16を臨む上面近傍において励起光L1によって励起されて生じるエネルギーは、透光層19が障壁となることでナノアンテナ16に吸収されることなく蛍光の生成に活かされる。
【0046】
従って、本実施例の波長変換装置13においては、波長変換部材とナノアンテナとが接していることにより生じる蛍光の消光が発生しにくくなり、当該消光せずに生じた蛍光をナノアンテナ16からの出射に寄与させることができる。
【0047】
すなわち、本実施例においては、ナノアンテナ16による光の狭角化をなしつつ、非重畳領域A2から出射される光L22の光束を増加させることができ、延いては波長変換装置13から出射される光L2の光束を増加させることができる。
【0048】
本実施例によれば、波長変換板15の入射領域IAの直上の重畳領域A1以外の非重畳領域A2にナノアンテナ16を配置する構成とすることにより、波長変換装置13から出射される光L2の光束を増加させることができる。従って、照明装置10に波長変換装置13を用いた際において、上記したレンズ14から出射される光L3の光取出し効率を向上させることができる。
【0049】
なお、本実施例において、波長変換部材18が単結晶のYAG:Ce蛍光体からなる場合について説明したが、当該波長変換部材18はその内部で光散乱が生じにくい構成であればよく、例えば、黄色蛍光を発する蛍光体粒子を含有する樹脂又はガラスを媒体としたプレートであってもよい。
【0050】
本実施例において、透光層19は、波長変換部材18よりも高い屈折率を有するとしたが、この限りではない。例えば、透光層19は、二酸化ケイ素(SiO2)や酸化アルミニウム(Al2O3)等の波長変換部材18よりも低い屈折率を有する材料から構成されていてもよい。なお、透光層19の厚みは、波長変換部材18に生じる蛍光の波長、すなわち黄色光の波長以上の厚みを有していることが好ましい。
【0051】
本実施例において、透光層19は、例えば、電子ビーム蒸着やスパッタリング成膜などによって成膜されるとしたが、これに限られず、透光性部材としての透明な基板を波長変換部材18に接合させる態様としてもよい。例えば、透明なガラス基板やサファイア基板を表面活性化接合やプラズマ親水化接合によって波長変換部材18に接合させる態様としてもよい。
【0052】
本実施例において、ナノアンテナ16は、円柱形状を有するとしたが、上記した光の狭角化作用を発揮可能であればよく、形状はこれに限られない。例えば、ナノアンテナ16は、他の柱形状であってもよく、錐状を有していてもよい。
【0053】
なお、本実施例において、隣り合うナノアンテナ16の周期Pを350nmとしたが、当該周期Pは波長変換部材18に生じる蛍光の光学波長程度であればよく、この限りではない。具体的には、YAG:Ce蛍光体は約1.82の屈折率を有し、460nm~750nmの波長の光を発する。これにより、光学波長は(発光波長/屈折率)で計算され、ナノアンテナ16の周期Pは250nm~420nmの範囲内であることが好ましい。さらに、YAG:Ce蛍光体は500nm以上の波長領域で強い発光を示すため、周期Pは300nm~420nmとするのがより好ましい。
【0054】
本実施例において、波長変換板15の側面に光反射部材17が設けられる場合について説明したが、求められる配光によっては光反射部材17を設けなくてもよい。なお、求められる配光によっては光反射部材17の代わりに光学多層反射膜や金属反射膜を用いてもよく、また、これらを組み合わせたものを波長変換板15の側面に設けてもよい。
【0055】
[変形例1の波長変換装置]
以下に、
図4を用いて波長変換装置13の変形例1について説明する。
図4は、変形例1に係る波長変換装置13の断面図である。波長変換装置13は、波長変換部材18の下面に光反射膜を備える点で実施例1と異なっており、それ以外の点で実施例1と同様の構成を有する。
【0056】
光反射膜23は、
図4に示すように、上記した入射領域IAを露出させるように波長変換部材18の下面に形成されている膜体である。言い換えれば、入射領域IAは、波長変換部材18の下面において光反射膜23から露出している。
【0057】
本変形例において、光反射膜23は、低屈折材料と高屈折材料とを積層した誘電体多層膜である。低屈折材料としては、例えば、SiO2、Al2O3であり、高屈折材料としては、例えば、ZrO2、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Si3N4である。
【0058】
実施例1で説明したように、波長変換部材18の内部にて生じた蛍光は、波長変換部材18内にて全方位に亘って散乱する。このとき、本変形例においては、波長変換部材18の下面に向かって進行する蛍光の成分は、波長変換部材18と光反射膜23との界面において反射され、波長変換部材18の上面側、すなわち光出射面側へと進行させる。
【0059】
また、本変形例において、非重畳領域A2に進行した励起光L1や蛍光のうち、ナノアンテナ16によって反射された一部の励起光L1や蛍光についても、波長変換部材18と光反射膜23との界面において反射させることで、再び光出射面側へと進行させることができる。
【0060】
このように、本変形例によれば、波長変換部材18の下面に光反射膜23を形成することによって、波長変換部材18の下面に向かう励起光L1や蛍光を光出射面側へと反射させることができる。従って、波長変換装置13から出射される光L2の光束を増加させることできる。
【0061】
なお、本変形例において、光反射部材17及び光反射膜23は、互いに同一の構成としてもよく、波長変換板15の側面及び下面に一体として設けてもよい。また、光反射率に応じて光反射部材17及び光反射膜23を組み合せて設けてもよい。
【0062】
[変形例2の波長変換装置]
以下に、
図5及び6を用いて波長変換装置13の変形例2について説明する。波長変換装置13は、波長変換板15の構成が実施例1と異なっており、それ以外の構成、例えばナノアンテナ16の配置態様などについては実施例1と同様である。
【0063】
図5は、波長変換装置13の上面図である。
図5は、
図2と同様に、
図1における波長変換装置13の光L2を出射する主面を当該主面に垂直な方向から見たときの様子を示している。また、
図6は、
図5における6-6線に沿った波長変換装置13の断面図である。
【0064】
本変形例において、波長変換部材18は、上面形状が矩形の角柱状の部材である。波長変換部材18は、上面視において波長変換板15の中央に配されている。本変形例において、波長変換部材18の上面及び下面は、波長変換板15の上面及び下面においてそれぞれ露出している。
【0065】
本変形例において、波長変換部材18の下面は、波長変換部材18を照明装置10に取り付けた際に励起光L1が入射する入射領域IAである。すなわち、本変形例においては、波長変換部材18の下面の大きさが入射領域IAの大きさである。波長変換部材18の下面には、光強度が最大強度から当該最大強度の2分の1となる強度までの範囲を示す励起光L1が入射される。
【0066】
また、本変形例において、波長変換部材18の上面は、波長変換板15の重畳領域A1である。すなわち、本変形例においては、波長変換部材18の下面全体が入射領域IAであり、波長変換部材18の上面全体が重畳領域A1である。なお、波長変換部材18の材料構成は実施例1と同様である。
【0067】
透光性部材24は、上面視において中央に開口24Oを有する枠形状を有している平板状の透明基板である。透光性部材24の上面及び下面は、波長変換板15の上面及び下面においてそれぞれ露出している。透光性部材24は、例えば、波長変換部材18よりも高い屈折率を有するZrO2、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Si3N4等の材料から構成される。
【0068】
本変形例において、透光性部材24の上面における開口24Oからは波長変換部材18の上面が露出しており、透光性部材24の下面における開口24Oからは波長変換部材18の下面が露出している。すなわち、本変形例において、波長変換板15の上面において波長変換部材18が露出している面が重畳領域A1であり、透光性部材24が露出している面が非重畳領域A2である。なお、本変形例においては、波長変換部材18及び透光性部材24の厚みは共に約200μmである。
【0069】
ナノアンテナ16は、実施例1と同様に、波長変換板15の上面における透光性部材24が露出している面、すなわち非重畳領域A2にアレイ状に配置されている。言い換えれば、ナノアンテナ16は、波長変換板15の上面において波長変換部材18の上面を除く領域である透光性部材24の上面にアレイ状に配置されている。
【0070】
本変形例における上記した波長変換装置13の構成は、例えば、角柱状の波長変換部材の側面と枠型状の透光性部材の内側面とを光学接着剤やガラス材料等の接着剤によって接合し、当該接合して一体化したものを所望の厚みとなるように切断及び研磨した後に透光性部材の上面にナノアンテナを形成することで得ることができる。
【0071】
[重畳領域A1から出射される光]
以下に、
図6を用いて上記した重畳領域A1から出射される光L21について説明する。
【0072】
本変形例において、波長変換部材18の入射領域IAに垂直に入射した励起光L1は、実施例1と同様に、レーザ光としての指向性を保った状態のまま重畳領域A1へと進行する。このとき、波長変換部材18の内部を進行する励起光L1によって励起されて生じた蛍光は、波長変換部材18内において全方位に亘って散乱する。
【0073】
本変形例において、上記した蛍光のうち、重畳領域A1へと進行する成分、すなわち波長変換部材18から大気中に進行する蛍光の角度が臨界角未満となる成分については、実施例1と同様に、そのまま重畳領域A1から大気中に出射される。
【0074】
また、本変形例においても、重畳領域A1である波長変換部材18の上面にはナノアンテナ16を配置していない。そのため、重畳領域A1に到達した励起光L1及び上記した蛍光の臨界角未満の成分は、ナノアンテナ16による反射や吸収が生じることなく大気中へと出射される。すなわち、重畳領域A1からは、実施例1と同様に、波長変換部材18を通過した青色光と蛍光としての黄色光とが混色して生成される白色光である光L21が出射される。
【0075】
このようにして、本変形例においても、入射領域IAの直上の重畳領域A1にナノアンテナ16を配置しない構成とすることによって、当該ナノアンテナ16による励起光L1及び蛍光の反射や吸収が生じることを防ぐことができ、高い光束を有する光L21を出射させることができる。
【0076】
[非重畳領域A2から出射される光]
次に、
図6を用いて上記した非重畳領域A2から出射される光L22について説明する。
【0077】
本変形例において、透光性部材24には、励起光L1のうち入射領域IA以外を進行する励起光L1が入射される。また、透光性部材24は、上記したように、波長変換部材18よりも高い屈折率を有する材料からなる。そのため、波長変換部材18内にて生じた蛍光のうち、波長変換部材18から透光性部材24へと向かう成分、例えば上記した臨界角以上の成分については、波長変換部材18と透光性部材24との界面で全反射されずに透光性部材24へと進行する。
【0078】
透光性部材24内を進行する蛍光は、直接非重畳領域A2に向かうか、又は光反射部材17によって反射されて非重畳領域A2へと進行する。非重畳領域A2に到達した蛍光は、実施例1と同様に、ナノアンテナ16によって狭角化されて光L22として出射される。
【0079】
本変形例においても、非重畳領域A2から出射される光L22の蛍光成分は、当該非重畳領域A2に形成されている複数のナノアンテナ16の各々の作用により、狭角な配光分布となって出射される。
【0080】
また、本変形例においては、実施例1と同様に、透光性部材24上にナノアンテナ16が形成されているため、透光性部材24が障壁となることで上記蛍光の消光が発生しにくくなり、消光せずに生じた蛍光をナノアンテナ16からの出射に寄与させることができる。従って、ナノアンテナ16による光の狭角化をなしつつ、非重畳領域A2から出射される光L22の光束を増加させることができ、延いては波長変換装置13から出射される光L2の光束を増加させることができる。
【0081】
加えて、本変形例においては、波長変換部材18が平面方向の限られた領域にのみ存在することから、蛍光への波長変換はこの限られた領域でのみ生じる。さらに波長変換部材18の直上にはナノアンテナ16が形成されていない。よって、実施例1と比べても蛍光のうち臨界角未満の光がナノアンテナ16により吸収されてしまうことを抑制することが可能となる。
【0082】
[検証]
以下に、本発明の波長変換装置13に対して行った検証について、比較例としての波長変換装置との比較結果を交えて説明する。本検証においては、上記した変形例2の構成の波長変換装置13を用いている。
【0083】
本検証においては、上記した変形例2を用いたが、直上にナノアンテナ16が配置されていない波長変換部材18をφ2.26mmの円形とした点のみ変形例2と異なる。透光性部材24は透明YAG基板(Ceドープなし)を想定している。
【0084】
検証に用いた比較例の波長変換装置について説明する。比較例としての波長変換装置は、実施例1に示した本発明の波長変換装置13のうち、透光層19が形成されてない構成を有している。すなわち、比較例の波長変換装置は、波長変換部材18の上面にナノアンテナ16が直接アレイ状に配置されている構成となっている。
【0085】
また、比較例の波長変換装置は、上面視において上記した重畳領域A1に対応する波長変換部材18の上面にもナノアンテナ16が配置されている構成となっている。すなわち、比較例の波長変換装置は、波長変換部材18の上面に均等にナノアンテナ16が配置されている。
【0086】
検証に用いた比較例および変形例2の共通要素について説明する。波長変換部材18の厚みは、共に200μmとしている。また、波長変換部材18は、共にYAG:Ce基板である。
【0087】
ナノアンテナ16は、正方格子の配列を有しかつ周期間隔を350nmとし、6×6mmの範囲にパターン形成している。また、ナノアンテナ16は、形状が円柱構造(高さ130nmで固定)である。また、ナノアンテナ16は、材料が金属Alである。
【0088】
波長変換装置に照射する励起光は、コリメートした青色レーザ光(波長440nm、強度350mW)であり、これがφ2mmでナノアンテナ16の形成パターンの中心部分に対し照射される。
【0089】
検証としては、波長変換装置から出射される蛍光の前方に対する放射束(波長460~800nm、±90度)を比較することで行った。
【0090】
図7は、本発明の波長変換装置13及び比較例の波長変換装置において、光出射面(波長変換板15の上面)におけるナノアンテナ16の面積割合に対する光取出し増強度を示すグラフである。当該グラフにおいては、本発明の波長変換装置13の光取出し増強度を実線で示し、比較例の波長変換装置の光取出し増強度を破線で示している。
【0091】
なお、比較例は実際の測定データから求めた3次近似曲線であり、本発明の結果は計算によるものである。また、ナノアンテナ16の面積割合の変化はナノアンテナ16の径を変化させることで行った。
【0092】
図7において、本発明の波長変換装置13及び比較例の波長変換装置の光取出し増強度は、ナノアンテナ16を形成していない透明YAG蛍光基板(厚み:200μm)における蛍光放射束を基準として算出している。
【0093】
図7より、本発明の波長変換装置13及び比較例の波長変換装置の光取出し増強度は、共にナノアンテナ16の面積割合が約25%を示すときに最大となっている。
【0094】
また、
図7より、ナノアンテナ16の面積割合が約25%を示すときの本発明の波長変換装置13の光取出し増強度は、約2.60を示している。また、ナノアンテナ16の面積割合が約25%を示すときの比較例の波長変換装置の光取出し増強度は、約2.25を示している。
【0095】
上記結果より、ナノアンテナ16の面積割合が約25%を示す場合において、本発明の波長変換装置13の光取出し増強度は、比較例の波長変換装置よりも約15%向上していることが分かる。すなわち、本発明の波長変換装置13は、比較例の波長変換装置に比べてより多くの出射光を取り出すことができる。
【0096】
なお、本変形例において、波長変換板15は、当該波長変換板15の上面及び下面において透光性部材24の開口24Oから波長変換部材18がそれぞれ露出していると説明したが、構成態様はこれに限られない。
【0097】
[変形例3の波長変換装置]
以下に、
図8を用いて変形例3について説明する。
図8は、変形例3に係る波長変換装置13の断面図である。波長変換装置13は、波長変換板15の構成が変形例2と異なっており、それ以外の構成、例えばナノアンテナ16の配置態様などについては変形例2と同様である。
【0098】
本変形例において、波長変換装置13は、平板形状を有する透光性部材24と透光性部材24の下面に接合されている波長変換部材18とからなる波長変換板15を有している。すなわち、本変形例において、透光性部材24には上記した開口24Oが形成されていない。
【0099】
具体的には、波長変換装置13は、波長変換部材18の上面が透光性部材24の下面中央に接合されている構成を有し、透光性部材24の下面のうち透光性部材24と波長変換部材18との接合部分を除く領域が光反射膜23によって覆われている構成を有している。光反射膜23は、例えば、蛍光の波長を反射する誘電体多層膜からなる。このような構成を有する波長変換装置13においても、上記した実施例および変形例と同様の効果を発揮させることができる。
【0100】
なお、他の構成としては、例えば、透光性部材24が凹部状に形成されていてもよく、当該凹部内に波長変換部材18が接合されていてもよい。すなわち、波長変換部材18の上面のみが露出され、波長変換部材18の下面が露出していない構成としてもよい。
【0101】
また、透光性部材24が凹部と逆の形状を有していてもよく、すなわち下面側に開口を有する形状としてもよく、当該開口内に波長変換部材18が接合されていてもよい。すなわち、波長変換部材18の下面のみが露出され、波長変換部材18の上面が露出していない構成としてもよい。
【0102】
なお、上記したいずれの構成の場合においても、上面視において上記した重畳領域A1にはナノアンテナ16を形成せず、非重畳領域A2のみにナノアンテナ16を形成することで上記した本発明の効果を得ることができる。
【0103】
[変形例4の波長変換装置]
以下に、
図9を用いて実施例1の波長変換装置13の変形例4について説明する。
図9は、変形例4に係る波長変換装置13の上面図である。波長変換装置13は、波長変換板15の構成が変形例2と異なっており、それ以外の点で変形例2と同様の構成を有する。
【0104】
本変形例において、波長変換部材18は、上面視において図中上下方向に伸長する長手形状を有している。また、本変形例において、透光性部材24は、波長変換部材18の短手方向において当該波長変換部材18を挟み込むように2つ形成されている。本変形例において、当該2つの透光性部材24は互いに同一の大きさを有する。
【0105】
本変形例において、上記した入射領域IAに対応する重畳領域A1は、波長変換部材18の上面の中央部分であり、非重畳領域A2は、重畳領域A1を除く波長変換部材18の上面及び透光性部材24の上面である。
【0106】
ナノアンテナ16は、透光性部材24の上面にアレイ状に配置されている。すなわち、本変形例においては、非重畳領域A2のうち透光性部材24の上面のみにナノアンテナ16を配置し、重畳領域A1を除く波長変換部材18の上面にはナノアンテナ16を配置しない構成としている。これにより、上記した蛍光の消光が生じることを防ぐことができ、当該蛍光を光束の増加に寄与させることができる。
【0107】
本変形例における波長変換装置13の構成は、例えば、2つの透光性部材の間に板状の波長変換部材を配置して互いに接合し、当該接合して一体化したものを所望の厚みとなるように切断及び研磨した後に透光性部材の上面にナノアンテナを形成することで得ることができる。このため、本変形例においては、変形例2と比較して製造が容易である。
筐体11は、箱形の筐体であり、互いに対向する2つの面において、一方の面には開口部OP1を有し、他方の面には開口部OP2を有している。また、筐体11は、上記した2つの面が対向する方向に垂直な方向において互いに対向する2つの面のうちの一方の面に開口部OP3を有している。
光源12は、開口部OP1内に固定され、開口部OP2に向けて青色の波長の光L1を出射するレーザ光源である。言い換えれば、開口部OP1は光L1の光軸OA上に形成されている。
波長変換装置25は、開口部OP2内に固定され、光源12から出射される光L1を受けて光L1と波長の異なる蛍光を発する波長変換機能を有する波長変換装置である。本実施例において、波長変換装置25は、光源12から出射される光L1を受けて開口部OP1に向けて光L2を出射する。
本実施例において、ダイクロイックミラーDMは、青色の波長の光を透過させ、蛍光の波長の光を反射させる。よって、ダイクロイックミラーDMに入射した青色の波長の光L1は透過されて波長変換装置25に進行する。
レンズ14は、開口部OP3内に固定されている。レンズ14は、ダイクロイックミラーDMによって反射される光L2’を受けて、当該光L2’を所望の配光に成形し、照明光としての光L3を生成する。当該光L3は、実施例1と同様に、筐体11の外部に取り出される。
金属反射膜27は、波長変換部材18の下面に亘って形成されている光反射性を有する金属膜である。本実施例において、金属反射膜27は、例えば、銀(Ag)やAl等からなる。
金属反射膜27の下面は、接合部材28を介してサブマウント26の上面に接合されている。言い換えれば、波長変換板15は、金属反射膜27及び接合部材28を介してサブマウント26に接合されている。本実施例において、接合部材28は、例えば、共晶はんだやナノ銀焼結材である。
本実施例において、光反射部材17は、波長変換板15及び金属反射膜27の側面を覆ってサブマウント26の上面に達している。すなわち、本実施例においては、波長変換板15は、その下面が金属反射膜27及びサブマウント26で覆われており、波長変換板15の上面、すなわち光出射面のみが外部に露出している構成となっている。
本実施例において、入射領域IAに入射した励起光L1は、波長変換部材18の内部において蛍光を発しつつ図中下方に向かって進行する。本実施例においては、上記したように、波長変換部材18の下面に亘って金属反射膜27が形成されている。そのため、上記励起光L1及び蛍光は、波長変換部材18と金属反射膜27との界面において上方に向けて反射される。
本実施例においても、波長変換部材18は、その内部において光散乱が生じにくい構成となっている。そのため、実施例1と同様に、上記した反射光(励起光L1及び蛍光)は、波長変換部材18内で散乱がほとんど生じることなく透光層19へと向かっていく。従って、実施例1と同様に、重畳領域A1からは光L21が取り出され、非重畳領域A2からは光L22が取り出される。
よって、本実施例においても、実施例1と同様の理由により、重畳領域A1及び非重畳領域A2から出射される光L22の光束を増加させることができ、波長変換装置25から出射される光L2の光束を増加させることができる。
加えて、本実施例において、波長変換装置25の入射領域IAは、出射領域と同じ面に存在する。よって、本実施例の波長変換装置では波長変換部材18の背面からサブマウント26を介した放熱が可能であり、熱による波長変換効率の低下を抑制することができる。
なお、本実施例においては、波長変換部材18の下面に金属反射膜27を形成する構成としたが、これに限られない。例えば、波長変換部材18と金属反射膜27との間に上記した誘電体多層膜を形成してもよい。これにより、上記した蛍光の反射率を向上させることができ、出射光としての光L2の光束を増加させることができる。
なお、本実施例における波長変換装置25の構成には、上記した変形例2~4の構成を適用してもよい。すなわち、波長変換板15の構成については適宜変更可能である。