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特開2023-140759太陽電池モジュールの配置方法及び太陽電池アレイ
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  • 特開-太陽電池モジュールの配置方法及び太陽電池アレイ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140759
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】太陽電池モジュールの配置方法及び太陽電池アレイ
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/042 20140101AFI20230928BHJP
【FI】
H01L31/04 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046757
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田飼 伸匡
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151BA17
5F151EA19
5F151EA20
5F151FA14
5F151JA02
5F151JA03
5F151JA30
5F251BA17
5F251EA19
5F251EA20
5F251FA14
5F251JA02
5F251JA03
5F251JA30
(57)【要約】
【課題】隣接する他の太陽電池モジュール等が太陽光の遮蔽物となった場合でも、発電量低下を緩和できる太陽電池モジュールの配置方法及び太陽電池アレイを提供する。
【解決手段】少なくとも一部が直列接続されている複数の太陽電池セルと、複数の太陽電池セルの受光面に接するように配置され、複数の太陽電池セルの各々において集電を行う、線状であって断面形状が真円状、楕円状、長円状のいずれかである配線材と、複数の太陽電池セルの受光面側に設けられ配線材を覆う透明な保護材と、を有する太陽電池モジュールを構造体に配置するに際し、太陽電池モジュールに対する太陽光の入射角度によって、複数の太陽電池セルのうち端部に位置する太陽電池セルに影がかかるように横長の遮蔽物が存在する配置条件となっており、配線材の延びる方向を、遮蔽物の延びる方向に沿うように太陽電池モジュールを配置する
【選択図】図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が直列接続されている複数の太陽電池セルと、
前記複数の太陽電池セルの受光面に接するように配置され、前記複数の太陽電池セルの各々において集電を行う、線状であって断面形状が真円状、楕円状、長円状のいずれかである配線材と、
前記複数の太陽電池セルの前記受光面側に設けられ前記配線材を覆う透明な保護材と、を有する太陽電池モジュールを構造体に配置するに際し、
前記太陽電池モジュールに対する太陽光の入射角度によって、前記複数の太陽電池セルのうち端部に位置する前記太陽電池セルに影がかかるように横長の遮蔽物が存在する配置条件となっており、
前記配線材の延びる方向を、前記遮蔽物の延びる方向に沿うように前記太陽電池モジュールを配置する、太陽電池モジュールの配置方法。
【請求項2】
前記配線材は、前記遮蔽物に対して接近、離反する方向において複数が平行に配置されている、請求項1に記載の太陽電池モジュールの配置方法。
【請求項3】
前記太陽電池モジュールは平面視が略長方形状であって、
前記配線材は、前記太陽電池モジュールの長辺に沿う方向に配置されている、請求項1または2に記載の太陽電池モジュールの配置方法。
【請求項4】
少なくとも一部が直列接続されている複数の太陽電池セルと、
前記複数の太陽電池セルの受光面に接するように配置され、前記複数の太陽電池セルの各々において集電を行う、線状であって断面形状が真円状、楕円状、長円状のいずれかである配線材と、前記複数の太陽電池セルの前記受光面側に設けられ前記配線材を覆う透明な保護材と、を有する太陽電池モジュールが複数組み合わされて構成された太陽電池アレイであって、
隣接する二つの前記太陽電池モジュールで、一方の太陽電池モジュールに対して他方の太陽電池モジュールが、空中で太陽が移動する軌跡に対して近い側であって、かつ上方に設けられていることにより、前記太陽電池アレイに対する太陽光の入射角度によって、前記複数の太陽電池セルのうち端部に位置する前記太陽電池セルに影がかかるように前記他方の太陽電池モジュールが位置しており、
前記配線材の延びる方向が、前記他方の太陽電池モジュールの延びる方向に沿っている、太陽電池アレイ。
【請求項5】
前記配線材は、前記他方の太陽電池モジュールに接近、離反する方向において複数が平行に配置されている、請求項4に記載の太陽電池アレイ。
【請求項6】
前記太陽電池モジュールは平面視が略長方形状であって、
前記配線材は、前記太陽電池モジュールの長辺に沿う方向に配置されている、請求項4または5に記載の太陽電池アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの配置方法及び太陽電池アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の屋根に複数配置される太陽電池モジュールが提案されている(特許文献1)。各太陽電池モジュールは、ガラス基板と、ガラス基板に設けられた複数の太陽電池セルと、外周縁に設けられた枠部と、を備える。
【0003】
この太陽電池モジュールにおいて、隣接する他の太陽電池モジュール等によって、一部の太陽電池セルに太陽光が遮られるものが発生する。そうなると、太陽光が遮られた太陽電池セルが太陽電池モジュール内で抵抗となり、太陽光が遮られていない太陽電池セルも含め、太陽電池モジュール全体で発電効率が低下するおそれがある。これに対して、この太陽電池モジュールでは、太陽光が遮られる可能性のある太陽電池セルが、他の太陽電池セルよりも広幅とした構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-349326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしこのような構成では、太陽電池モジュールに含まれる太陽電池セルの種類が増えるため、太陽電池モジュールの製造コストが増大してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、隣接する他の太陽電池モジュール等が太陽光の遮蔽物となった場合でも、発電量低下を緩和できる太陽電池モジュールの配置方法及び太陽電池アレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の太陽電池モジュールの配置方法は、少なくとも一部が直列接続されている複数の太陽電池セルと、前記複数の太陽電池セルの受光面に接するように配置され、前記複数の太陽電池セルの各々において集電を行う、線状であって断面形状が真円状、楕円状、長円状のいずれかである配線材と、前記複数の太陽電池セルの前記受光面側に設けられ前記配線材を覆う透明な保護材と、を有する太陽電池モジュールを構造体に配置するに際し、前記太陽電池モジュールに対する太陽光の入射角度によって、前記複数の太陽電池セルのうち端部に位置する前記太陽電池セルに影がかかるように横長の遮蔽物が存在する配置条件となっており、前記配線材の延びる方向を、前記遮蔽物の延びる方向に沿うように前記太陽電池モジュールを配置する。
【0008】
かかる構成によれば、配線材は、断面形状が真円状、楕円状、長円状のいずれかであることから外周面が湾曲している。このため、太陽電池セルにおいて、直達光では遮蔽部により影がかかる部分に、配線材の外周面で反射した光、または、配線材の外周面で反射してから保護材の表面で再反射した光を到達させられるため、反射光によって影による遮蔽の影響を低減することができる。これにより、直列接続されている影のかからない他の複数の太陽電池セルにとっての抵抗が低減されることになり、太陽電池モジュール全体の発電量を増加させられる。このように、太陽電池モジュールにおける遮蔽物による発電量低下を緩和できる。
【0009】
また、前記太陽電池モジュールの配置方法では、前記配線材は、前記遮蔽物に対して接近、離反する方向において複数が平行に配置されていてもよい。
【0010】
かかる構成によれば、配線材が複数、平行に設けられていることから、複数の太陽電池セルのうち端部に位置する太陽電池セルに影がかかった場合、複数の配線材のうち影に近い領域に位置する少なくとも一つの配線材であり、かつ、太陽光の当たる配線材を、影領域への再入射のために利用できる。
【0011】
また、前記太陽電池モジュールでは、前記太陽電池モジュールは平面視が略長方形状であって、前記配線材は、前記太陽電池モジュールの長辺に沿う方向に配置されていてもよい。
【0012】
かかる構成によれば、太陽電池モジュールの長辺に沿う方向で配線材による反射を利用できるため、より効果的に影による遮蔽の影響を低減することができる。
【0013】
本発明の太陽電池アレイは、少なくとも一部が直列接続されている複数の太陽電池セルと、前記複数の太陽電池セルの受光面に接するように配置され、前記複数の太陽電池セルの各々において集電を行う、線状であって断面形状が真円状、楕円状、長円状のいずれかである配線材と、前記複数の太陽電池セルの前記受光面側に設けられ前記配線材を覆う透明な保護材と、を有する太陽電池モジュールが複数組み合わされて構成された太陽電池アレイであって、隣接する二つの前記太陽電池モジュールで、一方の太陽電池モジュールに対して他方の太陽電池モジュールが、空中で太陽が移動する軌跡に対して近い側であって、かつ上方に設けられていることにより、前記太陽電池アレイに対する太陽光の入射角度によって、前記複数の太陽電池セルのうち端部に位置する前記太陽電池セルに影がかかるように前記他方の太陽電池モジュールが位置しており、前記配線材の延びる方向が、前記他方の太陽電池モジュールの延びる方向に沿っている。
【0014】
かかる構成によれば、配線材は、断面形状が真円状、楕円状、長円状のいずれかであることから外周面が湾曲している。このため、太陽電池セルにおいて、直達光では遮蔽部により影がかかる部分に、配線材の外周面で反射した光、または、配線材の外周面で反射してから保護材の表面で再反射した光を到達させられるため、反射光によって影による遮蔽の影響を低減することができる。これにより、直列接続されている影のかからない他の複数の太陽電池セルにとっての抵抗が低減されることになり、太陽電池モジュール全体の発電量を増加させられる。このように、太陽電池アレイにおける遮蔽物による発電量低下を緩和できる。
【0015】
また、前記太陽電池アレイでは、前記配線材は、前記他方の太陽電池モジュールに接近、離反する方向において複数が平行に配置されていてもよい。
【0016】
かかる構成によれば、配線材が複数、平行に設けられていることから、複数の太陽電池セルのうち端部に位置する太陽電池セルに影がかかった場合、複数の配線材のうち影に近い領域に位置する少なくとも一つの配線材であり、かつ、太陽光の当たる配線材を、影領域への再入射のために利用できる。
【0017】
また、前記太陽電池モジュールでは、前記太陽電池モジュールは平面視が略長方形状であって、前記配線材は、前記太陽電池モジュールの長辺に沿う方向に配置されている。
【0018】
かかる構成によれば、太陽電池モジュールの長辺に沿う方向で配線材による反射を利用できるため、より効果的に影による遮蔽の影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上より、本発明によれば、隣接する他の太陽電池モジュール等が太陽光の遮蔽物となった場合でも、発電量低下を緩和できる太陽電池モジュールの配置方法及び太陽電池アレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本実施形態に係る太陽電池アレイの設置状態における模式的な側面図である。
図2図2は、本実施形態に係る太陽電池モジュールの模式的な平面図である。
図3図3は、図2の太陽電池モジュールの模式的な拡大断面図である。
図4A図4Aは、図3のIVで示した領域の拡大図であり、光L1を説明するための拡大図である。
図4B図4Bは、図3のIVで示した領域の拡大図であり、光L2を説明するための拡大図である。
図5A図5Aは、前記太陽電池モジュールの効果を説明するための図であり、比較例に係る太陽電池モジュールの模式的な平面図である。
図5B図5Bは、前記太陽電池モジュールの効果を説明するための図であり、前記太陽電池モジュールの模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図1図5Bを参照しつつ説明する。
【0022】
本発明の太陽電池アレイ100は、図1に示すように、太陽電池モジュール1が複数組み合わされて構成されている。本実施形態の太陽電池アレイ100は、三つの太陽電池モジュール1が組み合わされて構成されているが、二つ、又は、四つ以上の太陽電池モジュール1が組み合わされて構成されていてもよい。また、太陽電池アレイ100は、建物の屋根や地面接地用の架台といった構造体Cに配置される。
【0023】
この太陽電池アレイ100において、図1の一部拡大図に示すように、隣接する二つの太陽電池モジュール1で、一方の太陽電池モジュール11(図示右側の太陽電池モジュール11)に対して他方の太陽電池モジュール12(図示左側の太陽電池モジュール12)が、空中で太陽が移動する軌跡に対して近い側(図示左側)であって、かつ上方に設けられている。これにより、太陽電池アレイ100に対する太陽光の入射角度によって、複数の太陽電池セル2のうち端部(図示左端部)に位置する太陽電池セル2に影がかかるように他方の太陽電池モジュール12が位置している。具体的に、太陽電池アレイ100が、北半球において、太陽電池モジュール1を北面に向けて、図示のように(切妻屋根における北側の屋根に)設置される場合、この太陽電池アレイ100では、直達光が上方に位置する太陽電池モジュール12により遮蔽されることにより、この太陽電池モジュール12の軒側に影が生じ、この影が下方に位置する太陽電池モジュール11の棟側にかかることがある。
【0024】
各太陽電池モジュール1は、図2及び図3に示すように、少なくとも一部が直列接続されている複数(本実施形態では、20個)の太陽電池セル2と、複数の太陽電池セル2の受光面20に接するように配置され、複数の太陽電池セル2の各々において集電を行う、線状であって断面形状が真円状の配線材3と、複数の太陽電池セル2の受光面20側に設けられ配線材3を覆う透明な保護材4と、を有する。また、太陽電池モジュール1は、板状である。なお、配線材3の断面形状は、真円状以外に、楕円状、長円状のいずれかであってもよい。さらに、配線材3の延びる方向が、他方の太陽電池モジュール12の延びる方向に沿っている。以下、本実施形態では、他方の太陽電池モジュール12の延びる方向を横方向、隣り合う太陽電池モジュール11、12の並び方向を縦方向として説明する。
【0025】
保護材4は、例えば、透明な硬質材料により構成される。また、保護材4は、板状の部材であり、具体的には、ガラス板である。また、保護材4の厚みは、例えば、2mm以上8mm以下である。本実施形態の太陽電池モジュール1では、保護材4は、太陽電池セル2の表面(受光面)20のみに設けられている(図3参照)。この場合、太陽電池セル2の裏面21には、樹脂シート6が設けられている。なお、保護材4は、太陽電池セル2の受光面20(表面20)及び裏面21の両方に設けられていてもよい。
【0026】
太陽電池セル2は、例えば、長方形の板状である。また、太陽電池セル2は、結晶系太陽電池である。本実施形態の太陽電池モジュール1では、太陽電池モジュール1に備えられた各太陽電池セル2の大きさ及び形状は同じである。
【0027】
配線材3は、各太陽電池セル2の集電を行う部材である。また、配線材3によってバスバー電極から集電が行われる。本実施形態では、配線材3は、太陽電池セル2の受光面20上に接して配置されるとともに、封止材5に埋め込まれている。さらに、配線材3は、受光面20上では、フィンガー電極(図示なし)に交差するように設けられている。また、配線材3は、太陽電池セル2にのみ設けられていてもよいし、複数の太陽電池セル2のうち隣り合う太陽電池セル2を接続してもよい。さらに、配線材3は、複数の太陽電池セル2にまたがって設けられていてもよい。なお、配線材3が、各太陽電池セル2にのみ設けられる場合、各太陽電池セル2の配線材3は、インターコネクタ(接続材)により接続される。
【0028】
本実施形態では、配線材3は、横方向で隣り合う太陽電池セル2を接続している。本実施形態では、各太陽電池セル2に対して、4本の配線材3が配置されている。なお、各太陽電池セル2に対する配線材3の本数は4本以外であってもよく、その本数は限定されない。
【0029】
なお、配線材3の断面形状が楕円状や長円状である場合、配線材3は、配線材3が太陽電池セル2を覆う面積を小さくするために、断面視における配線材3の長手方向が上下方向に沿うように配置されていることが好ましい。
【0030】
一行の太陽電池セル2に設けられた配線材3の横方向における端部は、それぞれ、横方向に延びる集電部材7に接続されている。集電部材7は、複数の太陽電池セル2にて、複数の配線材3が集電した電流を集電する部材であり、例えば、縦方向に延びている。配線材3は、銅、アルミニウムといった金属により構成される。配線材3の断面の直径は、0.2~0.5mmである。また、配線材3の外周面30は、光沢面となっており、光を反射する。
【0031】
仮に、配線材3の断面形状が矩形状であれば、配線材3の外周面のうち頂面が上方を向いた平面であるため、直達光が外周面30で反射した光は前方(図3の右側)に進むため、太陽電池セル2において、他方の太陽電池モジュール12により影がかかる部分Pに反射光が到達しない。これに対して、太陽電池アレイ100では、配線材3の外周面30が湾曲しているため、太陽電池セル2において、図4Aに示すように、直達光が配線材3の外周面30で反射した光L1は、後方(図示左側)に進む。また、図4Bに示すように、配線材3の外周面30で反射してから保護材4の表面40で再反射した光L2が、後方(図示左側)に進む。そのため、直達光が入射したときに他方の太陽電池モジュール12により影がかかる部分Pに、直達光が配線材3の外周面30で反射した光L1、または、配線材3の外周面30で反射してから保護材4の表面40で再反射した光L2を到達させられる。
【0032】
また、仮に、配線材3の外周面30が湾曲していても、図5Aに示すように、配線材3の延びる方向が他方の太陽電池モジュール12の延びる方向と垂直な方向(図示縦方向)であれば、図示下向きのベクトルを有する直達光が外周面30で反射した光において、図示下向き(図1の例では軒の向き)に進む成分が多くなる。
【0033】
また、長方形状の太陽電池モジュールに対して、図2に示すように、配線材3の延びる方向が太陽電池モジュール12の長手方向に沿っている構成とすると、配線材3が長くなり、配線材3の抵抗(電気抵抗)が大きくなるので、当業者の通常の知見では太陽電池モジュールの短手方向に配線を行うことを選択する。この理由は、特に、線状の配線材3を用いた場合、断面が薄い矩形状の配線材(平タブ配線材)を用いた場合よりも断面積が大きくなることがあり、この場合には配線材3の長さが抵抗に及ぼす影響がさらに大きくなる。また、太陽電池モジュールの定格出力は影の影響のない標準試験条件において決定することに定められている。このため、実設置環境における影の影響を緩和することよりも、配線材3の抵抗を下げて定格出力を向上させる方が重要視されてきたからである。
【0034】
これに対して、太陽電池アレイ100では、図5Bに示す配線材3の延びる方向が、他方の太陽電池モジュール12の延びる方向(横方向)に沿っているため、図示下向きのベクトルを有する直達光は、外周面30で反射されると、図示上向き(図1の例では棟の向き)に進む成分が多くなり、その結果、反射光(光L1、L2)によって影による遮蔽の影響を低減することができる。このように、太陽電池モジュール11では、影のかかった太陽電池セル2だけではなく、直列接続されている影のかからない他の複数の太陽電池セル2にとっての抵抗が低減されることになり、太陽電池モジュール11全体の発電量を増加させられる。これにより、太陽電池アレイ100における他方の太陽電池モジュール12による発電量低下を緩和できる。
【0035】
本実施形態の太陽電池モジュール1は、太陽電池セル2と保護材4の間に設けられた透明の封止材5を備える(図3参照)。また、太陽電池モジュール1の配置方法は、太陽電池モジュール12を構造体Cに配置するに際し、太陽電池モジュール1に対する太陽光の入射角度によって、複数の太陽電池セル2のうち端部(例えば、図5Bの上側に位置する端部)に位置する太陽電池セル2に影がかかるように他方の太陽電池モジュール11が存在する配置条件となっている。
【0036】
太陽電池モジュール1は平面視が略長方形状である(図2参照)。また、配線材3は、太陽電池モジュール1の長辺に沿う方向に配置されていている。この略長方形状の太陽電池モジュール1を、前記配置条件で複数配置する(具体的には、隣り合う太陽電池モジュール1の長辺同士を対向させて配置する)場合、太陽電池モジュール1の短手方向における端部に影がかかる。これに対して、太陽電池アレイ100では、太陽電池モジュール1の長辺に沿う方向で配線材3による反射を利用できるため、より効果的に影による遮蔽の影響を低減することができる。
【0037】
配線材3は、図5Bに示すように、遮蔽物(他方の太陽電池モジュール12)に対して接近、離反する方向(縦方向)において複数が平行に配置されている。かかる構成によれば、配線材3が複数、平行に設けられていることから、複数の太陽電池セル2のうち他方の太陽電池モジュール12に対して接近、離反する方向における端部に位置する太陽電池セル2に影がかかった場合、複数の配線材3のうち影に近い領域に位置する少なくとも一つの配線材3であり、かつ、太陽光の当たる配線材31で直達光を反射させて、この配線材31を、影領域への再入射のために利用できる。
【0038】
本願の発明者は、この太陽電池モジュール1における影による遮蔽の影響を低減についてシミュレーションを行った。この太陽電池モジュール1では、配線材3の半径は0.2mmであり、太陽電池セル2の表面20からの封止材5の厚み(太陽電池セル2の表面20と、封止材5及び保護材4の界面との間の寸法)は1mmである。また、太陽電池モジュール1に対する太陽光の入射角は45°であり、直達光では遮蔽部(他方の太陽電池モジュール12)により影がかかる部分Pの寸法は、太陽電池セル2の端縁から10mmである。
【0039】
この太陽電池モジュール1に対して、各配線材3に当たる光がどのような反射軌道で進むかを検討したところ、配線材3に入射した太陽光は、配線材3における光が当たる位置から、配線材3で反射された後、封止材5及び保護材4の界面で再反射され、さらに太陽電池セル2に再入射することがわかった。また、太陽電池セル2の端縁から該端縁に最も近い配線材31までの距離を11.11mmとし、隣り合う配線材3の間隔を11.11mmとすると、直達光では遮蔽部(他方の太陽電池モジュール12)により影がかかる部分Pに最も近い配線材3に入射した直達光のうち、入射した位置を基準に太陽電池セル2に対する再入射位置が1.11mm~11.11mmだけ離れた光が、直達光では遮蔽部(他方の太陽電池モジュール12)により影がかかる部分Pに対する入射光となることがわかった。
【0040】
このシミュレーションの結果、影がかかる部分Pに最も近い配線材31に入射した直達光のうちの29.9%が、太陽電池セル2の影がかかる部分Pに再入射するとの結果が得られた。また、影がかかる部分Pから二番目に近い配線材3に入射した直達光のうちの2.0%が、太陽電池セル2の配影がかかる部分Pに再入射するとの結果が得られた。さらに、影がかかる部分Pから三番目に近い配線材3に入射した直達光のうちの0.7%が、太陽電池セル2の影がかかる部分Pに再入射するとの結果が得られた。このように、太陽電池セル2において影がかかる部分Pに、配線材3に入射して反射された光が、封止材5及び保護材4の界面で再反射された後、再入射するため、影による遮蔽の影響を低減できる。
【0041】
本発明の太陽電池モジュールの配置方法、及び、太陽電池アレイは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0042】
上記実施形態等では、太陽電池モジュール1への直達光が、隣り合う太陽電池モジュール12により遮蔽されていたが、太陽電池モジュール12以外の横長の遮蔽物により遮蔽されることも考えられる。この場合であっても、太陽電池モジュール1を構造体Cに配置するに際し、太陽電池モジュール1に対する太陽光の入射角度によって、複数の太陽電池セル2のうち端部に位置する太陽電池セル2に影がかかるように横長の遮蔽物が存在する配置条件とする。また、配線材3の延びる方向を、遮蔽物の延びる方向に沿うように太陽電池モジュール1を配置する。さらに、配線材3は、遮蔽物に対して接近、離反する方向において複数が平行に配置されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0043】
1…太陽電池モジュール、2…太陽電池セル、3…配線材、4…保護材、5…封止材、6…樹脂シート、7…集電部材、11、12…太陽電池モジュール、20…表面(受光面)、21…裏面、30…外周面、40…表面、100…太陽電池アレイ、101…太陽電池モジュール、C…構造体、L1、L2…光、P…部分
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B