(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140764
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
F15B 20/00 20060101AFI20230928BHJP
F01P 1/06 20060101ALI20230928BHJP
F01P 5/04 20060101ALI20230928BHJP
F01P 7/02 20060101ALI20230928BHJP
F15B 21/0423 20190101ALN20230928BHJP
【FI】
F15B20/00 Z
F01P1/06 Z
F01P5/04 C
F01P7/02 E
F15B21/0423
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046768
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 和典
(72)【発明者】
【氏名】北口 篤
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴照
(72)【発明者】
【氏名】高田 知範
【テーマコード(参考)】
3H082
【Fターム(参考)】
3H082AA18
3H082BB17
3H082CC02
3H082DA04
3H082DA17
3H082DA40
3H082DB08
3H082DB09
3H082DB34
3H082DE05
3H082EE07
(57)【要約】
【課題】オイルクーラにかかる圧力を低減した作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械は、油圧モータから出力された作動油を、オイルクーラをバイパスして作動油タンクに還流させる第1位置、及びオイルクーラに供給する第2位置に切り替え可能な方向切替弁と、油圧ポンプから油圧モータに供給される作動油の一部を減圧して、パイロット圧油を出力する減圧弁と、減圧弁から出力されたパイロット圧油の温度に応じて、方向切替弁のパイロットポートへのパイロット圧油の供給を制御するサーモ弁とを備え、サーモ弁は、パイロット圧油の温度が閾値未満のときに、方向切替弁(19)を第1位置(A)にし、パイロット圧油の温度が閾値以上になったことに応じて、方向切替弁(19)を第1位置(A)から第2位置(B)に切り替える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を発生させるパワーモジュールと、
作動油を貯留する作動油タンクと、
前記パワーモジュールが発生させる駆動力によって、前記作動油タンクに貯留された作動油を出力する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから出力される作動油によって、冷却風を生起させる冷却ファンを駆動する油圧モータと、
前記油圧ポンプから排出された作動油を、前記冷却ファンが生起させた冷却風と熱交換させて、前記作動油タンクに還流させるオイルクーラとを備える作業機械において、
前記油圧モータから出力された作動油を、前記オイルクーラをバイパスして前記作動油タンクに還流させる第1位置、及び前記オイルクーラに供給する第2位置に切り替え可能な方向切替弁と、
前記油圧ポンプから前記油圧モータに供給される作動油の一部を減圧して、パイロット圧油を出力する減圧弁と、
前記減圧弁から出力されたパイロット圧油の温度に応じて、前記方向切替弁のパイロットポートへのパイロット圧油の供給を制御するサーモ弁とを備え、
前記サーモ弁は、
パイロット圧油の温度が閾値未満のときに、前記方向切替弁を前記第1位置にし、
パイロット圧油の温度が前記閾値以上になったことに応じて、前記方向切替弁を前記第1位置から前記第2位置に切り替えることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記パワーモジュール、前記油圧モータ、前記オイルクーラ、前記方向切替弁、前記減圧弁、及び前記サーモ弁は、前記作業機械の前部領域に配置され、
前記作動油タンク及び前記油圧ポンプは、前記前部領域より後方の前記作業機械の後部領域に配置されていることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記パワーモジュール、前記油圧モータ、前記オイルクーラ、及び前記方向切替弁は、前記作業機械の前部領域に配置され、
前記作動油タンク、前記油圧ポンプ、前記減圧弁、及び前記サーモ弁は、前記前部領域より後方の前記作業機械の後部領域に配置され、
前記サーモ弁は、前記方向切替弁と異なる他の方向切替弁に対して、パイロット圧油を供給するパイロット回路と並列に、前記減圧弁に接続されていることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記オイルクーラから前記作動油タンクに至る還流流路において、前記オイルクーラ側から前記作動油タンク側への作動油の流れを許容し、前記作動油タンク側から前記オイルクーラ側への作動油の流れを阻止するチェック弁を備え、
前記第1位置の前記方向切替弁から前記作動油タンクに至るバイパス流路は、前記チェック弁より前記作動油タンク側において、前記還流流路に合流していることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルクーラを備える作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、駆動力を発生させるパワーモジュールと、作動油を貯留する作動油タンクと、パワーモジュールが発生させる駆動力によって、作動油タンクに貯留された作動油を出力する油圧ポンプと、油圧ポンプから出力される作動油によって、冷却風を生起させる冷却ファンを駆動する油圧モータと、油圧ポンプから出力された作動油を、冷却ファンが生起させた冷却風と熱交換させて、作動油タンクに還流させるオイルクーラとを備える作業機械が知られている。
【0003】
ここで、作動油の粘度は、温度が下がるほど高くなる。そして、粘度の高い作動油がオイルクーラに流入すると、オイルクーラに高い圧力が負荷されて破損する可能性がある。そこで、例えば特許文献1に記載されているように、油圧モータからオイルクーラをバイパスして作動油を還流させるバイパス配管にリリーフ弁を設けることによって、オイルクーラにかかる圧力を制御することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バイパス配管にリリーフ弁を設けるだけでは、オイルクーラの背圧を十分に低減できない可能性がある。このような課題は、レイアウトの制約上でバイパス配管を長くせざるを得ないダンプトラック等において、特に顕著になる。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、オイルクーラにかかる圧力を低減した作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、駆動力を発生させるパワーモジュールと、作動油を貯留する作動油タンクと、前記パワーモジュールが発生させる駆動力によって、前記作動油タンクに貯留された作動油を出力する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから出力される作動油によって、冷却風を生起させる冷却ファンを駆動する油圧モータと、前記油圧ポンプから排出された作動油を、前記冷却ファンが生起させた冷却風と熱交換させて、前記作動油タンクに還流させるオイルクーラとを備える作業機械において、前記油圧モータから出力された作動油を、前記オイルクーラをバイパスして前記作動油タンクに還流させる第1位置、及び前記オイルクーラに供給する第2位置に切り替え可能な方向切替弁と、前記油圧ポンプから前記油圧モータに供給される作動油の一部を減圧して、パイロット圧油を出力する減圧弁と、前記減圧弁から出力されたパイロット圧油の温度に応じて、前記方向切替弁のパイロットポートへのパイロット圧油の供給を制御するサーモ弁とを備え、前記サーモ弁は、パイロット圧油の温度が閾値未満のときに、前記方向切替弁を前記第1位置にし、パイロット圧油の温度が前記閾値以上になったことに応じて、前記方向切替弁を前記第1位置から前記第2位置に切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オイルクーラにかかる圧力を低減した作業機械を得ることができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るダンプトラックの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る作業機械の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係るダンプトラック1の側面図である。なお、作業機械の具体例はダンプトラック1に限定されず、油圧ショベル、ホイールローダ、クレーンなどでもよい。また、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、ダンプトラック1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係るダンプトラック1は、車体フレーム2と、車体フレーム2の前部の左右両端に回転可能に支持された一対の前タイヤ3と、車体フレーム2の後部の左右両端に回転可能に支持された一対の後タイヤ4と、車体フレーム2上に起伏可能に支持された荷台5と、ダンプトラック1を操作するオペレータが搭乗するキャブ6とを主に備える。
【0012】
一対の前タイヤ3は、オペレータによるステアリング操作によって舵角が変わる操舵輪である。一方、一対の後タイヤ4は、走行モータ(図示省略)の駆動力が伝達されて回転する駆動輪である。なお、ダンプトラック1は、一対の後タイヤ4それぞれに独立して駆動力を伝達するために、一対の走行モータを備える。
【0013】
荷台5は、ホイストシリンダ7の伸縮によって、車体フレーム2の後部のヒンジピン8を中心として、上下方向に起伏する。ホイストシリンダ7は、一端が車体フレーム2に接続され、他端が荷台5に接続され、油圧ポンプ13から作動油の供給を受けて伸縮する。そして、ホイストシリンダ7が伸長すると荷台5が起立し、ホイストシリンダ7が縮小すると荷台5が倒伏する。
【0014】
キャブ6は、車体フレーム2の前端のデッキ9上の左端に配置されている。キャブ6は、ダンプトラック1を操作するオペレータが搭乗する運転室を形成している。そして、キャブ6の内部には、ダンプトラック1を動作させるための操作装置(アクセルペダル、ブレーキペダル、ホイストペダル、ステアリング、レバー、スイッチなど)が配置されている。キャブ6に搭乗したオペレータが操作装置を操作することによって、ダンプトラック1が走行(加速、制動、旋回)し、荷台5が起伏する。
【0015】
図2は、ダンプトラック1の駆動回路の模式図である。
図1及び
図2に示すように、ダンプトラック1は、エンジン10(パワーモジュール)と、ラジエータ11と、作動油タンク12と、油圧ポンプ13と、リリーフ弁14と、油圧モータ15と、冷却ファン16と、オイルクーラ17と、チェック弁18と、方向切替弁19と、減圧弁20、21と、サーモ弁22と、パイロット回路23とを主に備える。また、
図2に示す油圧部品は、流路L1~L7によって接続されている。流路L1~L7は、鋼管、可撓性のあるホース、またはこれらの組み合わせで構成される。
【0016】
エンジン10は、燃料を燃焼させることによって、ダンプトラック1を駆動するための駆動力を発生させる。なお、パワーモジュールの具体例はエンジン10に限定されず、電動モータ等であってもよい。ラジエータ11は、エンジン10を冷却する。より詳細には、ラジエータ11は、エンジン10を冷却した冷却水を、冷却ファン16が生起させた冷却風と熱交換させ、再びエンジン10に供給する。
【0017】
供給流路L1は、作動油タンク12から油圧ポンプ13を通じて油圧モータ15に至る流路である。排出流路L2は、油圧モータ15から方向切替弁19に至る流路である。冷却流路L3は、方向切替弁19からオイルクーラ17に至る流路である。還流流路L4は、オイルクーラ17からチェック弁18を通じて作動油タンク12に至る流路である。パイロット流路L5は、分岐点P1で供給流路L1から分岐して、減圧弁20及びサーモ弁22を通じて方向切替弁19のパイロットポート19aに至る流路である。パイロット流路L6は、分岐点P2で供給流路L1から分岐して、減圧弁21を通じてパイロット回路23に至る流路である。バイパス流路L7は、方向切替弁19から合流点P3で還流流路L4に合流して作動油タンク12に至る流路である。
【0018】
分岐点P1は、供給流路L1上において、分岐点P2より作動油の流通方向の下流側で、油圧モータ15より作動油の流通方向の上流側に位置している。分岐点P2は、供給流路L1上において、油圧ポンプ13より作動油の流通方向の下流側で、分岐点P1より作動油の流通方向の上流側に位置している。合流点P3は、還流流路L4上において、チェック弁18より作動油の流通方向の下流側で、作動油タンク12より作動油の供給方向の上流側に位置している。
【0019】
作動油タンク12は、作動油を貯留する。油圧ポンプ13は、エンジン10の出力軸に接続されている。油圧ポンプ13は、エンジン10が発生させる駆動力によって、作動油タンク12に貯留された作動油を、供給流路L1を通じて油圧アクチュエータ(例えば、ホイストシリンダ7、油圧モータ15)に出力する。リリーフ弁14は、油圧ポンプ13の出力側に過大な圧力が発生した場合に、当該圧力を開放する。
【0020】
油圧モータ15は、油圧ポンプ13から出力される作動油によって、冷却ファン16を駆動する。より詳細には、油圧モータ15は、供給流路L1を通じて油圧ポンプ13から供給される作動油によって回転し、排出流路L2に作動油を排出する。冷却ファン16は、油圧モータ15に駆動されて、冷却風を生起させる。
【0021】
オイルクーラ17は、油圧モータ15から排出された作動油を、冷却ファン16が生起させた冷却風と熱交換させて、作動油タンク12に還流させる。すなわち、オイルクーラ17は、車体フレーム2上において、冷却ファン16が生起させた冷却風の流通経路上に配置されている。作動油は、排出流路L2及び冷却流路L3を通じてオイルクーラ17に流入し、オイルクーラ17内で冷却風と熱交換した後に、還流流路L4を通じて作動油タンク12に還流する。
【0022】
チェック弁18は、還流流路L4に配置されている。チェック弁18は、オイルクーラ17側から作動油タンク12側への作動油の流れを許容し、作動油タンク12側からオイルクーラ17側への作動油の流れを阻止する。チェック弁18は、還流流路L4及びバイパス流路L7の合流点P3よりオイルクーラ17側に配置されている。換言すれば、バイパス流路L7は、チェック弁18より作動油タンク12側の合流点P3において、還流流路L4に合流している。
【0023】
方向切替弁19は、油圧モータ15から排出された作動油を、オイルクーラ17に供給するか、オイルクーラ17をバイパスして作動油タンク12に還流させるかを切り替える。方向切替弁19は、排出流路L2を通じて油圧モータ15に接続され、冷却流路L3を通じてオイルクーラ17に接続され、バイパス流路L7及び還流流路L4を通じて作動油タンク12に接続されている。また、方向切替弁19は、位置A(第1位置)と、位置B(第2位置)と、位置Cとに切り替え可能に構成されている。さらに、方向切替弁19は、サーモ弁22からパイロット圧油の供給を受けるパイロットポート19aを有する。
【0024】
位置Aは、排出流路L2から流入した作動油を、バイパス流路L7に流出させる位置である。位置Bは、排出流路L2から流入した作動油を、冷却流路L3に流出させる位置である。位置Cは、排出流路L2から流入した作動油を、冷却流路L3及びバイパス流路L7に配分して流出させる位置である。
【0025】
方向切替弁19の初期位置は、位置Aである。また、方向切替弁19は、パイロットポート19aにパイロット圧油が供給されることによって、位置Aから位置Cを経て位置Bに移動する。なお、パイロットポート19aに供給されるパイロット圧油の量が増加するほど、位置Cに近づく。すなわち、パイロットポート19aに供給されるパイロット圧油が増加するほど、冷却流路L3に流出される作動油の量が増加し、バイパス流路L7に流出する作動油の量が減少する。さらに、方向切替弁19は、パイロットポート19aへのパイロット圧油の供給が停止したことに応じて、位置Aに戻る。
【0026】
減圧弁20は、分岐点P1で供給流路L1から分岐して、方向切替弁19のパイロットポート19aに至るパイロット流路L5に配置されている。減圧弁21は、分岐点P2で供給流路L1から分岐して、パイロット回路23に至るパイロット流路L6に配置されている。そして、減圧弁20、21は、供給流路L1を通じて油圧ポンプ13から油圧モータ15に供給される作動油の一部を減圧して、パイロット圧油を出力する。
【0027】
サーモ弁22は、減圧弁20及びパイロットポート19aの間において、パイロット流路L5に配置されている。サーモ弁22は、減圧弁20から出力されたパイロット圧油の温度に応じて、パイロット圧油をパイロットポート19aに供給するか否か(より詳細には、供給量)を制御する。サーモ弁22は、位置Dと、位置Eとに切り替え可能に構成されている。位置Dは、パイロットポート19aにパイロット圧油を供給しない位置である。位置Eは、パイロットポート19aにパイロット圧油を供給する位置である。
【0028】
サーモ弁22は、パイロット圧油の温度が閾値未満の場合に、位置Dとなる。すなわち、サーモ弁22は、パイロット圧油の温度が閾値未満の場合に、パイロットポート19aへのパイロット圧油の供給を停止する。また、サーモ弁22は、パイロット圧油の温度が閾値以上になったことに応じて、位置Dから位置Eに移動する。すなわち、サーモ弁22は、パイロット圧油の温度が閾値以上の場合に、パイロットポート19aにパイロット圧油を供給する。さらに、サーモ弁22は、パイロット圧油の温度が高いほど、位置Eに近づく。すなわち、サーモ弁22は、パイロット圧油の温度が高いほど、パイロットポート19aへのパイロット圧油の供給量を増加させる。
【0029】
図3は、サーモ弁22の内部構造を示す図である。
図3に示すように、サーモ弁22は、ハウジング31と、バルブ32と、ケース33と、スリーブ34と、キャップ35と、ピストン36と、スプリング37とを主に備える。
【0030】
ハウジング31は、内部空間を有する略円筒形状の外形を呈する。ハウジング31には、内部空間に作動油を流入させる流入口31aと、内部空間から作動油を流出させる2つの流出口31b、31cとが形成されている。流入口31aは、ハウジング31の軸方向の一方側の端面に形成されている。流出口31b、31cは、ハウジング31の周面のうち、周方向及び軸方向にずれた位置に配置されている。流入口31aは、パイロット流路L5の減圧弁20側に接続されている。流出口31bは、パイロット流路L5のパイロットポート19a側に接続されている。流出口31cは、作動油タンク12に接続されている。そして、流入口31a及び流出口31b、31cは、ハウジング31の内部空間を通じて相互に連通している。
【0031】
バルブ32は、軸方向の両端が開放された円筒形状の外形を呈する。バルブ32は、ハウジング31の内部空間に収容されて、軸方向に移動可能に構成されている。また、バルブ32には、周面を厚み方向に貫通口32b、32cが形成されている。貫通口32b、32cは、バルブ32の周面のうち、周方向及び軸方向にずれた位置に配置されている。換言すれば、貫通口32b、32cは、流出口31b、31cに連通し得る位置に配置されている。そして、バルブ32は、ハウジング31の内部を移動することによって、流出口31b、31cを開閉する。
【0032】
より詳細には、
図3(A)に示すように、バルブ32が流入口31aから離れる方向に移動すると、流出口31bと貫通口32bとが軸方向にずれ、流出口31cと貫通口32cとが対面する。これにより、流入口31aを通じてハウジング31の内部空間に流入したパイロット圧油は、流出口31cを通じて作動油タンク12に還流する。また、
図3(B)に示すように、バルブ32が流入口31aに近づく方向に移動すると、流出口31bと貫通口32bとが対面し、流出口31cと貫通口32cとが軸方向にずれる。これにより、流入口31aを通じてハウジング31の内部空間に流入したパイロット圧油は、流出口31bを通じてパイロットポート19aに供給される。
【0033】
また、バルブ32は、
図3(A)及び
図3(B)の間に位置するとき、流出口31b、31bそれぞれを部分的に開放する。すなわち、バルブ32が流入口31aに近づく方向に移動するのに伴って、流出口31bの開放量が増加し、流出口31cの開放量が減少する。一方、バルブ32が流入口31aから離れる方向に移動するのに伴って、流出口31bの開放量が減少し、流出口31cの開放量が増加する。
【0034】
ケース33は、軸方向の一端が閉塞され且つ他端が開放された有底円筒形状の外形を呈する。ケース33は、閉塞された端部を流入口31aに向けた状態で、バルブ32の内側に固定される。そして、ケース33は、バルブ32と共にハウジング31の軸方向に移動する。また、ケース33の内部には、弾性変形可能なスリーブ34が収容されている。さらに、ケース33の開放された端部は、キャップ35によって閉塞されている。
【0035】
ピストン36は、長尺棒状の部材である。ピストン36は、キャップ35を厚み方向に貫通する貫通口に挿通されている。ピストン36の基端は、ケース33から突出して、ハウジング31の流入口31aが設けられたのと反対の端面に固定されている。ピストン36の先端は、ケース33の内部に進入して、スリーブ34に接している。そのため、バルブ32及びケース33が流入口31aに近づく方向に移動すると、ピストン36の突出量が増加する。一方、バルブ32及びケース33が流入口31aから遠ざかる方向に移動すると、ピストン36の突出量が減少する。
【0036】
スプリング37は、ハウジング31の流入口31aが設けられた端面と、ケース33との間に配置されている。そして、スプリング37は、ピストン36の突出量を減少させる(すなわち、バルブ32及びケース33を流入口31aから遠ざける)方向に、ケース33を付勢している。さらに、
図3にハッチングで示すように、ケース33とスリーブ34との間には、温度が上昇するのに伴って膨張するワックスが封入されている。
【0037】
流入口31aを通じてハウジング31の内部空間に流入するパイロット圧油の温度が低いとき、ワックスは収縮している。そのため、バルブ32及びケース33は、スプリング37の付勢力によって、
図3(A)の位置に配置されている。これにより、流出口31bが閉塞され、流出口31cが開放される。その結果、パイロット圧油は、流出口31cを通じて作動油タンク12に還流する。
【0038】
パイロット圧油の温度は、ケース33を通じてワックスに伝搬する。そのため、パイロット圧油の温度が上昇すると、ワックスが膨張してスリーブ34を変形させ、ピストン36を押し出そうとする力が生じる。これにより、バルブ32及びケース33は、スプリング37の付勢力に抗して、流入口31aに近づく方向に移動する。その結果、パイロット圧油は、流出口31bを通じてパイロットポート19aに供給される。
【0039】
バルブ32及びケース33は、例えば、パイロット圧油の温度が第1温度(閾値)に達したタイミングで流入口31aに近づく方向への移動を開始し、パイロット圧の温度が第2温度(>第1温度)に達したタイミングで
図3(B)の位置に至る。一方、パイロット圧油の温度が低下すると、ワックスが収縮し、スプリング37の付勢力によって、バルブ32及びケース33が流入口31aから遠ざかる方向に移動する。第1温度及び第2温度の温度差は、例えば、10℃に設定される。
【0040】
すなわち、サーモ弁22は、パイロット圧油の温度が第1温度未満の場合にパイロットポート19aへのパイロット圧油の供給を停止し、パイロット圧油の温度が第1温度以上の場合にパイロットポート19aにパイロット圧油を供給する。また、サーモ弁22は、温度の上昇に伴ってパイロットポート19aへのパイロット圧油の供給量を増加させ、パイロット圧油の温度が第2温度以上の場合にパイロットポート19aへのパイロット圧油の供給量を最大にする。
【0041】
図2に戻って、パイロット回路23は、減圧弁21より作動油の流通方向の下流側において、パイロット流路L6に配置されている。パイロット回路23は、減圧弁21から出力されたパイロット圧油を、方向切替弁19と異なる他の方向切替弁(図示省略)に供給する。「方向切替弁19と異なる他の方向切替弁」とは、ダンプトラック1が備える油圧モータ15と異なる油圧アクチュエータ(例えば、ホイストシリンダ7)への作動油の給排を制御するものである。パイロット回路23の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0042】
次に、
図2の駆動回路の動作を説明する。まず、エンジン10が始動すると、油圧ポンプ13が回転することによって、作動油タンク12に貯留された作動油が供給流路L1を通じて油圧モータ15及び減圧弁20、21に供給される。油圧モータ15は、供給流路L1を通じて供給された作動油によって冷却ファン16を回転させ、作動油を排出流路L2に排出する。また、減圧弁20は、供給流路L1を通過する作動油の一部を減圧して、パイロット圧油をパイロット流路L5に出力する。
【0043】
ここで、エンジン10の始動直後は作動油の温度が低いので、サーモ弁22は位置Dとなっている。そのため、減圧弁20から出力されたパイロット圧油は、サーモ弁22に遮断されて、方向切替弁19のパイロットポート19aに供給されないので、方向切替弁19は位置Aとなる。その結果、方向切替弁19は、排出流路L2を通じて流入した作動油を、バイパス流路L7に排出する。すなわち、油圧モータ15から排出された作動油は、オイルクーラ17をバイパスして作動油タンク12に還流する。
【0044】
一方、パイロット圧油(≒作動油)の温度が上昇すると、サーモ弁22が徐々に位置Dから位置Eに移動(すなわち、開度が増加)して、パイロットポート19aに対するパイロット圧油の供給量が増加する。これにより、方向切替弁19が位置Aから位置Cを経て位置Bに向かって移動することによって、排出流路L2を通じて流入した作動油を、冷却流路L3及びバイパス流路L7に分配する。その結果、油圧モータ15から排出された作動油の一部がオイルクーラ17で冷却されて、作動油タンク12に還流する。さらに、パイロット圧油の温度が高くなるほど、冷却流路L3への分配比率が上昇する。すなわち、パイロット圧油の温度が高くなるほど、オイルクーラ17で冷却される作動油の量が増加する。
【0045】
また、
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るダンプトラック1は、前部領域と、後部領域とに区分される。前部領域及び後部領域は、前後方向に隣接する領域である。前部領域及び後部領域の境界は、例えば、エンジン10の後端位置である。但し、前部領域及び後部領域の境界は前述の例に限定されず、前後方向におけるダンプトラック1の中央位置であってもよい。
【0046】
そして、本実施形態に係るエンジン10、ラジエータ11、油圧モータ15、冷却ファン16、オイルクーラ17、チェック弁18、方向切替弁19、減圧弁20、及びサーモ弁22は、前部領域に配置されている。一方、本実施形態に係る作動油タンク12、油圧ポンプ13、リリーフ弁14、減圧弁21、及びパイロット回路23は、後部領域に配置されている。
【0047】
ここで、エンジン10、ラジエータ11、作動油タンク12、油圧ポンプ13、リリーフ弁14、油圧モータ15、冷却ファン16、オイルクーラ17、減圧弁21、及びパイロット回路23のレイアウトは、従来のダンプトラックと大きく変わらない。そのため、供給流路L1及び還流流路L4の流路長は、従来と大きく変化しない。
【0048】
一方、本実施形態に係るダンプトラック1は、チェック弁18、方向切替弁19、減圧弁20、及びサーモ弁22を備える点で、従来のダンプトラックと相違する。その結果、本実施形態に係るダンプトラック1では、排出流路L2、冷却流路L3、パイロット流路L5、及びバイパス流路L7を新たに設ける必要がある。そこで、本実施形態では、チェック弁18、方向切替弁19、減圧弁20、及びサーモ弁22を、油圧モータ15及びオイルクーラ17に近い前部領域に配置することによって、新設の流路L2、L3、L5、L4の流路長を短くすることができる。
【0049】
上記の実施形態によれば、パイロット圧油(≒作動油)の温度が低いときは方向切替弁19を位置Aにするので、粘度が高い作動油がオイルクーラ17に流入することによって、オイルクーラ17に大きな圧力がかかるのを防止できる。一方、パイロット圧油(≒作動油)の温度が高くなると方向切替弁19が位置Bに切り替わるので、作動油の温度を適正範囲に維持することができる。
【0050】
なお、上記の実施形態では、方向切替弁19のパイロットポート19aへのパイロット圧油の供給及び供給停止を、作動油の温度に応じて切り替えるサーモ弁22の例を説明した。しかしながら、作動油の温度に応じて方向切替弁19の位置を切り替えることができれば、具体的な方法は前述の例に限定されない。
【0051】
また、上記の実施形態によれば、作動油の温度に応じた油圧ポンプ13の流量制限を行わないので、作動油の温度が低い場合でも冷却ファン16を駆動することができる。これにより、作動油の冷却が不要な場合でも、ラジエータ11で冷却水を冷却することが可能になる。
【0052】
また、上記の実施形態では、チェック弁18、方向切替弁19、減圧弁20、及びサーモ弁22を、油圧モータ15及びオイルクーラ17に近い前部領域に集約することによって、流路L2、L3、L5、L4の流路長を短くすることができる。その結果、ダンプトラック1の軽量化が実現できる。
【0053】
但し、構成部品のレイアウトは、
図2の例に限定されない。
図4は、ダンプトラック1の駆動回路の変形例である。なお、
図2と共通の構成要素には、同一の参照番号を付している。また、
図2との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0054】
変形例では、減圧弁20が省略されている。また、減圧弁21よりパイロット圧油の流通方向の下流側の分岐点P4において、パイロット流路L5、L6が分岐している。すなわち、サーモ弁22及びパイロット回路23は、共通の減圧弁21に並列に接続されている。さらに、サーモ弁22は、ダンプトラック1の後部領域に配置されている。このように、既存の減圧弁21にサーモ弁22を接続することによって、減圧弁20を省略することができる。
【0055】
また、変形例では、チェック弁18が省略されている。そして、還流流路L4及びバイパス流路L7は、互いに合流せずに、それぞれが直接作動油タンク12に接続されている。これにより、チェック弁18を省略することができるので、オイルクーラ17から作動油タンク12に至る還流流路L4の圧損を低減することができる。
【0056】
また、上記の実施形態によれば、ワックス式のサーモ弁22を採用することによって、電気式サーモスタット、またはコントローラによるソレノイドバルブの制御に比べて、誤動作等を防止し信頼性の向上が図れる。また、減圧弁21で減圧されたパイロット圧油をサーモ弁22に流入させることによって、サーモ弁22の耐久性を向上することができる。さらに、流出口31bの全閉(
図3(A))から全開(
図3(B))までに温度差を設けることによって、パイロット圧油の急な流量変化を防止できるので、オイルクーラ17へのサージ圧を抑えることができ、オイルクーラ17の耐久性も向上する。
【0057】
但し、ダンプトラック1は、方向切替弁19及びサーモ弁22に代えて、作動油の温度を検知する温度センサと、排出流路L2を通じて流入した作動油を冷却流路L3及びバイパス流路L7に分配するソレノイドバルブと、温度センサの検知結果に基づいてソレノイドバルブを制御するコントローラと備えてもよい。
【0058】
そして、コントローラは、温度センサで検知された作動油の温度が閾値未満の場合に、排出流路L2を通じて流入した作動油がバイパス流路L7に流出するように、ソレノイドバルブを制御してもよい。また、コントローラは、温度センサで検知された作動油の温度が閾値以上の場合に、排出流路L2を通じて流入した作動油が冷却流路L3に流出するように、ソレノイドバルブを制御してもよい。
【0059】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ダンプトラック
2 車体フレーム
3 前タイヤ
4 後タイヤ
5 荷台
6 キャブ
7 ホイストシリンダ
8 ヒンジピン
9 デッキ
10 エンジン
11 ラジエータ
12 作動油タンク
13 油圧ポンプ
14 リリーフ弁
15 油圧モータ
16 冷却ファン
17 オイルクーラ
18 チェック弁
19 方向切替弁
19a パイロットポート
20,21 減圧弁
22 サーモ弁
23 パイロット回路
31 ハウジング
31a 流入口
31b,31c 流出口
32 バルブ
32b,32c 貫通口
33 ケース
34 スリーブ
35 キャップ
36 ピストン
37 スプリング