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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140777
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】露光装置および露光方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20230928BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
H05K3/00 H
H05K3/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046789
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】水端 稔
(72)【発明者】
【氏名】秩父 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 泰充
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA22
2H197AA28
2H197AA29
2H197CA01
2H197CA15
2H197CA17
2H197CA18
2H197DA04
2H197DA06
2H197DA10
2H197DB05
2H197DB06
2H197DC02
2H197HA02
2H197HA03
2H197HA04
(57)【要約】
【課題】複数の光源から生成されるレーザー光ビームで基板を露光する技術において、描画中に生じ得る光源の経時的な変動にも適切に対処することのできる技術を提供する。
【解決手段】本発明に係る露光装置および露光方法は、レーザー光ビームの光路上でレーザー光ビームを検出する。描画の実行中に検出されたレーザー光ビームのスポットサイズが所定の適正範囲から外れたとき、所定のエラー処理が実行される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーザー光源を有し、前記複数のレーザー光源から出射されるレーザー光を合成して単一のレーザー光ビームを生成し、前記レーザー光ビームを露光データに基づき変調し露光ビームとして露光対象の基板に照射して描画する露光部と、
前記レーザー光ビームの光路上で前記レーザー光ビームを検出する検出部と、
前記基板に対する露光条件を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記描画の実行中に前記検出部により検出された前記レーザー光ビームのスポットサイズが所定の適正範囲から外れたとき所定のエラー処理を実行する、露光装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記光路上に設けられて前記レーザー光ビームの一部を分岐させるビームスプリッターと、前記レーザー光ビームからの分岐光を受光する受光器とを有する、請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記エラー処理において、前記制御部は、前記露光部に、前記複数のレーザー光源のうちエラーが発生したものを除く他の前記レーザー光源により前記レーザー光ビームを生成させるとともに、そのときの前記レーザー光ビームの強度に応じて前記露光条件を変更する、請求項1または2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記エラー処理において、前記制御部は、前記検出部に前記レーザー光源の各々から出射されるレーザー光を個別に検出させ、その検出結果に基づき前記エラーが発生した前記レーザー光源を特定する、請求項3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記基板を支持するステージと、
前記露光部と前記ステージとを相対移動させて前記基板への前記露光ビームの入射位置を変化させる移動部と
を備え、
前記制御部は、前記露光条件として前記移動部による前記相対移動における移動速度を変更する、請求項1ないし4のいずれかに記載の露光装置。
【請求項6】
前記露光部は、前記レーザー光ビームを前記露光データに基づき変調する光変調器を有し、
前記制御部は、前記露光条件として前記光変調器の動作パラメーターを変更する、請求項1ないし5のいずれかに記載の露光装置。
【請求項7】
一の前記基板に対し互いに並列的に前記描画を行う複数の前記露光部を備え、
前記制御部は、一の前記露光部について前記露光条件の変更を行う際には、他の前記露光部についても前記露光条件を変更する、請求項1ないし6のいずれかに記載の露光装置。
【請求項8】
一の前記基板に対し互いに並列的に前記描画を行う複数の前記露光部を備え、
前記制御部は、一の前記露光部について前記エラー処理を行う際には、他の前記露光部について前記露光条件を変更することなく前記基板に対する前記描画を継続させる、請求項1ないし6のいずれかに記載の露光装置。
【請求項9】
前記レーザー光ビームがラインビームであり、前記スポットサイズは前記ラインビームの短軸方向における幅として検出される、請求項1ないし8のいずれかに記載の露光装置。
【請求項10】
複数のレーザー光源から出射されるレーザー光を合成して単一のレーザー光ビームを生成し、前記レーザー光ビームを露光データに基づき変調し露光ビームとして露光対象の基板に照射して描画する露光方法において、
前記レーザー光ビームの光路上で前記レーザー光ビームを検出し、前記描画の実行中に検出された前記レーザー光ビームのスポットサイズが所定の適正範囲から外れたとき所定のエラー処理を実行する、露光方法。
【請求項11】
前記エラー処理では、前記複数のレーザー光源のうちエラーが発生したものを除く他の前記レーザー光源により前記レーザー光ビームを生成させるとともに、そのときの前記レーザー光ビームの強度に応じて露光条件を変更する、請求項10に記載の露光方法。
【請求項12】
前記エラー処理では、前記複数のレーザー光源の各々が出射する前記レーザー光を個別に検出し、その検出結果に基づきエラーが発生したものを特定する、請求項11に記載の露光方法。
【請求項13】
変更された前記露光条件を適用して前記描画を再開する、請求項11または12に記載の露光方法。
【請求項14】
前記レーザー光ビームを出射する露光部と前記基板とを相対移動させながら前記描画を行う請求項13に記載の露光方法であって、
再開後の前記描画では、前記露光部と前記基板との相対移動速度を元の速度より低下させる、露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば半導体基板、プリント配線基板、ガラス基板等の基板にパターンを描画するために基板を露光する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、プリント配線基板、ガラス基板等の各種基板に配線パターン等のパターンを形成する技術として、基板表面に形成された感光層に、露光データに応じて変調された光ビームを入射し、感光層を露光させるものがある。例えば特許文献1には、扁平形状のビームスポットを有するレーザー光ビーム(ラインビーム)を光変調器により変調して基板に入射させることで基板に描画を行う描画装置が開示されている。この技術では、均一な強度分布を有する高強度のラインビームを発生させるために、複数のレーザー光源(レーザーダイオード)から出射されるレーザー光が合成されて単一のラインビームが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-192080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には複数の光源から均一な強度分布のラインビームを得るための照明光学系の構成が記載されている。しかしながら、各光源において起こり得るレーザー光の経時的変動への対応については考慮されていない。例えば部品の発熱や機械的振動に起因して、いずれかの光源においてレーザー光の出射方向にずれが生じる場合がある。このような場合には、基板表面における露光ビームのスポット径が大きくなるため、描画における分解能の低下につながる。また、いずれかの光源において光量が低下しあるいは点灯しなくなった場合には露光不足を生じることがある。
【0005】
このように、光源が出射するレーザー光の経時的変動は、描画により形成されるパターンに不良を生じさせ、基板の生産性を低下させるおそれがある。このことから、上記従来技術には、描画中に生じ得る光源の経時的な変動に対処するという点において改善の余地が残されていたということができる。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、複数の光源を用いて生成されたレーザー光ビームで基板を露光し描画する技術において、描画中に生じ得る光源の経時的な変動にも適切に対処することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る露光装置の一の態様は、複数のレーザー光源を有し、前記複数のレーザー光源から出射されるレーザー光を合成して単一のレーザー光ビームを生成し、前記レーザー光ビームを露光データに基づき変調し露光ビームとして露光対象の基板に照射して描画する露光部と、前記レーザー光ビームの光路上で前記レーザー光ビームを検出する検出部と、前記基板に対する露光条件を制御する制御部とを備えている。ここで、前記制御部は、前記描画の実行中に前記検出部により検出された前記レーザー光ビームのスポットサイズが所定の適正範囲から外れたとき所定のエラー処理を実行する。
【0008】
また、この発明に係る露光方法一の態様は、複数のレーザー光源から出射されるレーザー光を合成して単一のレーザー光ビームを生成し、前記レーザー光ビームを露光データに基づき変調し露光ビームとして露光対象の基板に照射して描画する露光方法であって、前記レーザー光ビームの光路上で前記レーザー光ビームを検出し、前記描画の実行中に検出された前記レーザー光ビームのスポットサイズが所定の適正範囲から外れたとき所定のエラー処理を実行する。
【0009】
このように構成された発明では、複数のレーザー光源のそれぞれから出射されるレーザー光が合成されてなるレーザー光ビームの光路上で、レーザー光ビームのスポットサイズが検出される。いずれかのレーザー光源の光軸がずれたり光量が増加した場合にはスポットサイズが大きくなる一方、いずれかのレーザー光源の光量が低下したり消灯したりした場合にはスポットサイズが小さくなる。したがって、スポットサイズが適正範囲から外れたことが検出されるとエラー処理を実行するようにすることで、描画中に生じ得る光源の経時的な変動に対応して、適切な措置を講じることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
上記のように、本発明によれば、レーザー光ビームの光路上におけるスポットサイズの変動を検出することで、複数のレーザー光源のいずれかが正しく動作しなくなった場合でも適切に対応して、そのまま描画動作を継続した場合に生じ得る生産性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明にかかる露光装置の概略構成を模式的に示す正面図である。
図2図1の露光装置が備える電気的構成の一例を示すブロック図である。
図3】光照射部の構成を示す図である。
図4】露光ヘッドが備える詳細構成の一例を模式的に示す図である。
図5】本実施形態の露光装置により実行される処理を示すフローチャートである。
図6】複数の露光ヘッドを設けた場合のジョブを説明する模式図である。
図7】エラー処理の第1の態様を示すフローチャートである。
図8】エラー処理の第2の態様を示すフローチャートである。
図9】異常発生後のGUI画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明にかかる露光装置の概略構成を模式的に示す正面図であり、図2図1の露光装置が備える電気的構成の一例を示すブロック図である。図1および以下の図では、水平方向であるX方向、X方向に直交する水平方向であるY方向、鉛直方向であるZ方向およびZ方向に平行な回転軸を中心とする回転方向θを適宜示す。
【0013】
露光装置1は、レジストなどの感光材料の層が形成された基板S(露光対象基板)に所定のパターンのレーザー光を照射することで、感光材料にパターンを描画する。基板Sとしては、例えばプリント配線基板、各種表示装置用のガラス基板、半導体基板などの各種基板を適用可能である。
【0014】
露光装置1は本体11を備え、本体11は、本体フレーム111と、本体フレーム111に取り付けられたカバーパネル(図示省略)とで構成される。そして、本体11の内部と外部とのそれぞれに、露光装置1の各種の構成要素が配置されている。
【0015】
露光装置1の本体11の内部は、処理領域112と受け渡し領域113とに区分されている。処理領域112には、主として、ステージ2、ステージ駆動機構3、露光ユニット4およびアライメントユニット5が配置される。また、本体11の外部には、アライメントユニット5に照明光を供給する照明ユニット6が配置されている。受け渡し領域113には、処理領域112に対して基板Sの搬出入を行う搬送ロボット等の搬送装置7が配置される。さらに、本体11の内部には制御部9が配置されており、制御部9は、露光装置1の各部と電気的に接続されて、これら各部の動作を制御する。
【0016】
本体11の内部の受け渡し領域113に配置された搬送装置7は、図示しない外部の搬送装置または基板保管装置から未処理の基板Sを受け取って処理領域112に搬入(ローディング)するとともに、処理領域112から処理済みの基板Sを搬出(アンローディング)し外部へ払い出す。未処理基板Sのローディングおよび処理済基板Sのアンローディングは制御部9からの指示に応じて搬送装置7により実行される。
【0017】
ステージ2は、平板状の外形を有し、その上面に載置された基板Sを水平姿勢に保持する。ステージ2の上面には、複数の吸引孔(図示省略)が形成されており、この吸引孔に負圧(吸引圧)を付与することによって、ステージ2上に載置された基板Sをステージ2の上面に固定する。このステージ2はステージ駆動機構3により駆動される。
【0018】
ステージ駆動機構3は、ステージ2をY方向(主走査方向)、X方向(副走査方向)、Z方向および回転方向θ(ヨー方向)に移動させるX-Y-Z-θ駆動機構である。ステージ駆動機構3は、Y方向に延設された単軸ロボットであるY軸ロボット31と、Y軸ロボット31によってY方向に駆動されるテーブル32と、テーブル32の上面においてX方向に延設された単軸ロボットであるX軸ロボット33と、X軸ロボット33によってX方向に駆動されるテーブル34と、テーブル34の上面に支持されたステージ2をテーブル34に対して回転方向θに駆動するθ軸ロボット35とを有する。
【0019】
したがって、ステージ駆動機構3は、Y軸ロボット31が有するY軸サーボモーターによってステージ2をY方向に駆動し、X軸ロボット33が有するX軸サーボモーターによってステージ2をX方向に駆動し、θ軸ロボット35が有するθ軸サーボモーターによってステージ2を回転方向θに駆動することができる。これらのサーボモーターについては図示を省略する。また、ステージ駆動機構3は、図1では図示を省略するZ軸ロボット37によってステージ2をZ方向に駆動することができる。かかるステージ駆動機構3は、制御部9からの指令に応じて、Y軸ロボット31、X軸ロボット33、θ軸ロボット35およびZ軸ロボット37を動作させることで、ステージ2に載置された基板Sを移動させる。
【0020】
露光ユニット4は、ステージ2上の基板Sより上方に配置された露光ヘッド41と、光源駆動部42、レーザー出射部43および照明光学系44を含み露光ヘッド41に対してレーザー光を照射する光照射部40とを有する。露光ユニット4は、X方向に位置を異ならせて複数設けられてもよい。
【0021】
光源駆動部42の作動によりレーザー出射部43から射出されたレーザー光が、照明光学系44を介して露光ヘッド41へと照射される。露光ヘッド41は、光照射部から照射されたレーザー光を空間光変調器によって変調して、その直下を移動する基板Sに対して落射する。こうして基板Sをレーザー光ビームによって露光することで、パターンが基板Sに描画される(露光動作)。
【0022】
アライメントユニット5は、ステージ2上の基板Sより上方に配置されたアライメントカメラ51を有する。このアライメントカメラ51は、鏡筒、対物レンズおよびCCDイメージセンサを有し、その直下を移動する基板Sの上面に設けられたアライメントマークを撮像する。アライメントカメラ51が備えるCCDイメージセンサは、例えばエリアイメージセンサ(二次元イメージセンサ)により構成される。
【0023】
照明ユニット6は、アライメントカメラ51の鏡筒と光ファイバー61を介して接続され、アライメントカメラ51に対して照明光を供給する。照明ユニット6から延びる光ファイバー61によって導かれる照明光は、アライメントカメラ51の鏡筒を介して基板Sの上面に導かれ、基板Sでの反射光が、対物レンズを介してCCDイメージセンサに入射する。これによって、基板Sの上面が撮像されて撮像画像が取得されることになる。アライメントカメラ51は制御部9と電気的に接続されており、制御部9からの指示に応じて撮像画像を取得して、この撮像画像を制御部9に送信する。
【0024】
制御部9は、アライメントカメラ51により撮像された撮像画像が示すアライメントマークの位置を取得する。また制御部9は、アライメントマークの位置に基づき露光ユニット4を制御することで、露光動作において露光ヘッド41から基板Sに照射するレーザー光のパターンを調整する。そして、制御部9は、描画すべきパターンに応じて変調されたレーザー光を露光ヘッド41から基板Sに照射させることで、基板Sにパターンを描画する。
【0025】
制御部9は、上記した各ユニットの動作を制御することで各種の処理を実現する。この目的のために、制御部9は、CPU(Central Processing Unit)91、メモリー92、ストレージ93、入力94、表示部95およびインターフェース部96などを備えている。CPU91は、予めストレージ93に記憶されている制御プログラム931を読み出して実行し、後述する各種の動作を実行する。メモリー92はCPU91による演算処理に用いられ、あるいは演算処理の結果として生成されるデータを短期的に記憶する。ストレージ93は各種のデータや制御プログラムを長期的に記憶する。具体的には、ストレージ93は、CPU91が実行する制御プログラム931の他に例えば、描画すべきパターンの内容を表す設計データであるCAD(Computer Aided Design)データ932を記憶している。
【0026】
入力部94は、ユーザーからの操作入力を受け付け、この目的のために、キーボード、マウス、タッチパネル等の適宜の入力デバイス(図示省略)を有している。表示部95は、各種の情報を表示出力することでユーザーに報知し、この目的のために適宜の表示デバイスを有している。インターフェース部96は外部装置との間の通信を司る。例えば、この露光装置1が制御プログラム931およびCADデータ932を外部から受け取る際に、インターフェース部96が機能する。この目的のために、インターフェース部96は、外部記録媒体からデータを読み出すための機能を備えていてもよい。
【0027】
CPU91は、制御プログラム931を実行することにより、露光データ生成部911、露光制御部912、フォーカス制御部913、ステージ制御部914などの機能ブロックをソフトウェア的に実現する。なお、これらの機能ブロックのそれぞれは、少なくとも一部が専用ハードウェアにより実現されてもよい。
【0028】
露光データ生成部911は、ストレージ93から読み出されたCADデータ932に基づき、光ビームをパターンに応じて変調するための露光データ911を生成する。基板Sに歪み等の変形がある場合には、露光データ生成部911は、基板Sの歪み量に応じて露光データを修正することで、基板Sの形状に合わせた描画が可能となる。露光データは露光ヘッド41に送られ、該露光データに応じて露光ヘッド41が、光照射部40から出射されるレーザー光を変調する。こうしてパターンに応じて変調された変調光ビームが基板Sに照射され、基板S表面が部分的に露光されてパターンが描画される。
【0029】
露光制御部912は、光照射部40を制御して、所定のパワーおよびスポットサイズを有するレーザー光ビームを出射させる。フォーカス制御部913は、露光ヘッド41に設けられた投影光学系(後述)を制御してレーザー光ビームを基板Sの表面に収束させる。
【0030】
ステージ制御部914はステージ駆動機構3を制御して、アライメント調整のためのステージ2の移動および露光時の走査移動のためのステージ2の移動を実現する。アライメント調整においては、ステージ2に載置された基板Sと露光ヘッド41との間における露光開始時の相対的な位置関係が予め定められた関係となるように、ステージ2の位置がX方向、Y方向、Z方向およびθ方向に調整される。一方、走査移動においては、ステージ2を一定速度でY方向に移動させることで基板Sを露光ヘッド41の下方を通過させる主走査移動と、一定ピッチでのX方向へのステップ送り(副走査移動)とが組み合わせられる。
【0031】
図3は光照射部の構成を示す図である。図3(a)は光照射部40のうちレーザー出射部43および照明光学系44の主要構成を模式的に示す上面図であり、図3(b)はその側面図である。また、図3(c)は光照射部40から出射されるレーザー光ビームの強度分布を例示する図である。なお、以下に示す光照射部40の基本的な構造は、特許文献1に記載されているものと共通である。このため、詳しい構造やその動作原理等については特許文献1を参照することとして、ここでは主要な構成を簡単に説明するに留める。
【0032】
図3(a)に示すように、レーザー出射部43は、複数の光源ユニット430を備えている。ここでは5組の光源ユニット430が用いられているが、光源ユニットの配設数はこれに限定されず任意である。
【0033】
各光源ユニット430は、レーザー光を出射するレーザー光源431と、コリメーターレンズ432と、シャッター433とを有している。レーザー光源431は所定波長のレーザー光を出力する、例えばレーザーダイオードである。コリメーターレンズ432はレーザー光源431から出射されるレーザー光をコリメート光に変換する。
【0034】
シャッター433は、光源駆動部42により制御されて、コリメート光の光路を機械的に開閉する。具体的には、図3(b)に示すように、シャッター433は図示しない開閉機構により、コリメート光の光路を遮る遮蔽位置(点線)と、コリメート光の光路から退避してコリメート光を通過させる通過位置(実線)との間を移動する。この例では、シャッター433は上下方向(Z方向)に移動する。詳しくは後述するが、通常の使用状態ではシャッター433は通過位置に位置決めされる。
【0035】
各光源ユニット430は、二点鎖線で示される各光源ユニット430の光軸が同一の水平面(XY平面)に含まれるように、X方向に並べて配置される。各光源ユニット430の光軸は一点で交わっている。
【0036】
この交点に相当する位置に、照明光学系44の分割レンズ441が配置されている。分割レンズ441は、X方向のみにパワーを有する複数の要素レンズが配列された、いわゆるシリンドリカルレンズアレイ(またはシリンドリカルフライアイレンズ)である。特許文献1に記載されているように、分割レンズ部441は、その(-Y)側端面に各光源ユニット430から入射するレーザー光をX方向に広がりを有する光ビームとして(+Y)側端面から出力する。これにより、複数のレーザー光源431のそれぞれから出射されるレーザー光は合成され、単一のレーザー光ビームとして出力される。これにより、高強度の露光ビームを得ることができる。
【0037】
合成されたレーザー光ビームは2つのシリンドリカルレンズ、具体的には、X方向のみにパワーを有するシリンドリカルレンズ442と、Z方向のみにパワーを有するシリンドリカルレンズ443とをこの順番で通過する。これにより、レーザー光ビームLは、X方向に広くZ方向に狭い扁平なビームスポット形状を有する光ビーム、いわゆるラインビームに整形される。
【0038】
仮に、図3(a)に破線で示す位置に受光面を配置したとすると、右上図に示すように、該受光面にはX方向に長くZ方向に短いビームスポットが現れる。このときの受光面における光強度Iは、図3(c)に示すように、Z方向に狭く、かつ、X方向には幅広く均一な分布を有していることが望ましい。
【0039】
レーザー光ビームLの強度を検出するために、その光路上に検出部440が設けられる。検出部440は、光の進行方向において分割レンズ441の直前に設けられたビームスプリッター444と、ビームスプリッター444によりレーザー光ビームLから分岐された光を受光する光検出器445とを備えている。
【0040】
なお、検出部440の配設位置はこの例に限定されず、レーザー光ビームLの強度を検出可能である限りにおいて、その光路上の適宜の位置に配置することができる。すなわち、各光源ユニット430からのレーザー光が合成されて以後、後述する光変調器による変調を受ける前の光路上の任意の位置に配置可能である。例えば、光の進行方向において分割レンズ441よりも後方に設けられてもよい。ただし、基板Sの被露光面において鮮明な像を得るためには、各種の光学素子によるビーム整形を受ける前の光路上に置かれることがより好ましい。
【0041】
このため、本実施形態では、各光源ユニット430から出射される光が全て検出部440に入射するとの前提の下で、分割レンズ441の直前に検出部440が配置されている。この位置では必ずしも全ての光源ユニット430からの光が完全に合成されているとは言えないが、ここで検出される光量と合成後の光量との対応関係を予め求めておくことで、十分な精度で検出を行うことが可能である。例えば光源と検出部440との距離をより大きくすれば、各光源ユニット430からの光は全体として平行光に近づくため検出精度は向上するが、光照射部40の寸法が大きくなってしまうという問題が生じ得る点に注意を要する。
【0042】
検出部440は、レーザー光ビームLのビームスポットにおける短軸方向、すなわちZ方向のビーム幅Ws(図3(c))を検出する目的で設けられる。例えば、ビームスプリッター444で分岐された光を光検出器445としての二次元イメージセンサで受光し、ビームスポットの二次元像を取得することができる。検出位置におけるビームスポット形状と整形後のビームスポット形状との対応関係を予め求めておくことで、取得された二次元像からスポット幅Wsを求めることができる。例えば、光強度Iに対して所定の閾値を定めておき、検出された光強度Iが閾値を超える部分の幅を求めればよい。
【0043】
この実施形態では、各光源ユニット430から出射されるレーザー光をそれぞれX方向に広げてラインビームを得ており、また特許文献2にも記載された照明光学系44を用いることで、X方向における光強度Iの均一性が確保されている。このことから、X方向の適宜の位置で代表的にスポット幅Wsを検出することも可能である。その意味においては、Z方向を長手方向とする一次元イメージセンサを光検出器445として用いることもできる。
【0044】
また、ここではレーザー光ビームLをビームスプリッター444で分岐させて光検出器445に導き光検出を行っているが、露光動作中にもリアルタイムで光検出を行うことのできる構成であればよく、上記事例に限定されるものではない。
【0045】
このように、光照射部40は、X方向に長く延びて強度が均一であり、Z方向には短い扁平のスポット形状を有する高強度のレーザー光ビーム(ラインビーム)Lを生成し、これを次に説明する露光ヘッド41に案内する。このときのレーザー光ビームLの進行方向は(+Y)方向である。
【0046】
図4は露光ヘッドが備える詳細構成の一例を模式的に示す図である。図4に示すように、露光ヘッド41では、回折光学素子411を有する空間光変調器410が設けられている。具体的には、露光ヘッド41に上下方向(Z方向)に延設された支柱400の上部に取り付けられた空間光変調器410は、回折光学素子411の反射面を下方に向けた状態で、可動ステージ412を介して支柱400に支持されている。
【0047】
露光ヘッド41において、回折光学素子411は、その反射面の法線が入射光ビームLの進行方向に対して傾斜して配置されており、照明光学系53から射出された光は、支柱400の開口を通してミラー413に入射し、ミラー413によって反射された後に回折光学素子411に照射される。そして、回折光学素子411の各チャンネルの状態が露光データに応じて制御部9によって切り換えられて、回折光学素子411に入射したレーザー光ビームLが変調される。
【0048】
そして、回折光学素子411から0次回折光として反射されたレーザー光が投影光学系414のレンズへ入射する一方、回折光学素子411から1次以上の回折光として反射されたレーザー光は投影光学系414のレンズへ入射しない。つまり、基本的には回折光学素子411で反射された0次回折光のみが投影光学系414へ入射するように構成されている。0次回折光が(-Z)方向へ出射されるように、回折光学素子411は配置されている。
【0049】
投影光学系414のレンズを通過した光は、フォーカシングレンズ415により収束され、(-Z)方向を進行方向とする、つまり下向きの露光ビームとして所定の倍率にて基板S上へ導かれる。投影光学系414は縮小光学系を構成している。このフォーカシングレンズ415はフォーカス駆動機構416に取り付けられている。そして、制御部9のフォーカス制御部913からの制御指令に応じてフォーカス駆動機構416がフォーカシングレンズ415を鉛直方向(Z軸方向)に沿って昇降させることで、フォーカシングレンズ415から射出された露光ビームの収束位置が基板Sの上面に調整される。
【0050】
図4に一点鎖線で示されるレーザー光ビームLの光路に沿って示すように、光照射部40から露光ヘッド41へ案内されるレーザー光ビームLは、X方向を長軸方向、Z方向を短軸方向としてX方向に均一に細長く延びるビームスポット形状を有している。一方、光変調器410により変調された後の変調レーザー光ビームLmは、X方向を長軸方向、Y方向を短軸方向としており、しかも、X方向の各位置における強度が露光データに応じて変調されている。さらに、投影光学系414から基板Sに向けて出射される露光ビームLeは、変調されたレーザー光ビームLmをX方向およびY方向に縮小したものとなっている。このようにスポットサイズが絞り込まれた露光ビームLeを基板Sの被露光面に入射させることで、基板Sの表面に微細なパターンを描画することができる。
【0051】
露光データに応じて変調された露光ビームLeを基板Sに入射させながら、露光ヘッド41と基板SとをY方向に相対移動させることで、基板Sのうち、露光ビームLeのX方向におけるスポットサイズと同等の幅を有しY方向に延びる帯状の領域を露光することができる。X方向における露光ヘッド41と基板Sとの相対位置を順次変更しながら露光を繰り返し行うことで、最終的には基板Sの全体を露光することができる。
【0052】
このように、露光ヘッド41と基板Sとの間で、Y方向への走査移動とX方向への走査移動とを組み合わせることで、基板Sの全体に描画を行うことができる。本明細書では、Y方向への走査移動を「主走査移動」と称し、Y方向を「主走査方向Dm」と称する。一方、X方向への走査移動を「副走査移動」と称し、Y方向を「副走査方向Ds」と称する。この実施形態では、固定された露光ヘッド41に対し基板Sを支持するステージ2が移動することで、これらの走査移動が実現される。
【0053】
上記のような構成を有する露光ユニット4については、X方向に位置を異ならせて複数設けることが可能である。この実施形態では、互いに同一の構成を有する露光ユニット4が5組設けられており、これらが並列的に露光ビームLeを出射し描画を行うことで、描画処理のスループット向上が図られている。なお、これらの露光ユニット4は互いに独立して動作し得るが、構造上、基板Sに対する走査移動については画一的である。
【0054】
図5は上記のように構成された露光装置により実行される処理を示すフローチャートである。この動作は、制御部9のCPU91がストレージ93に予め記録された制御プログラム931を実行し、上記した装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。
【0055】
露光対象となる基板Sがステージ2にセットされると(ステップS101)、ステージ2上における基板Sの姿勢と描画パターンとの位置を合わせるためのアライメント調整が行われる(ステップS102)。アライメント調整の方法については多くの公知技術があるため、ここでは説明を省略する。
【0056】
アライメント調整後、ステージ2が所定の描画開始位置に位置決めされ(ステップS103)、検出部440による光検出が開始される(ステップS104)。そして、露光ヘッド41に対し基板Sを主走査方向に移動させながら露光ヘッド41から露光ビームLeを基板Sに照射して描画を行う(露光動作、ステップS105)。1回の主走査移動で露光される領域を、ここでは「ストライプ」と称する。また、1枚の基板Sに対する一連の処理を、1つの「ジョブ」と称する。
【0057】
1ストライプ分の露光が終了するまで(ステップS106においてNO)、露光動作は継続される。1ストライプ分の露光が終了すると(ステップS106においてYES)、1ジョブ分の処理が終了したか否かが判断される(ステップS107)。処理が終了していなければ(ステップS107においてNO)、つまり未露光の領域が残っていれば、ステージSが副走査方向(X方向)へ所定のピッチだけステップ送りされる(副走査移動、ステップS108)。そして、ステップS105に戻って次の1ストライプ分の露光動作が行われる。
【0058】
1ジョブ分の処理が終了していれば(ステップS107においてYES)、検出部440による光検出が終了され(ステップS109)、当該ジョブの処理結果をユーザーに報知して(ステップS110)、基板Sは搬出される(ステップS111)。これにより、1枚の基板Sに対する処理が完了する。ジョブが正常に終了した場合、ステップS110ではその旨の報知がなされる。
【0059】
図6は複数の露光ヘッドを設けた場合のジョブを説明する模式図である。図6(a)に示すように、露光ヘッド41がX方向に複数(この例では符号41a,41b,41c,41d,41eで区別される5組)並べて配置されている場合には、基板S表面のうち露光対象となる露光領域Reがこれらの露光ヘッド41a~41eに対応して5つの領域に区分される。
【0060】
図6(b)に示すように、基板Sの1回の主走査方向Dmへの走査移動で、各露光ヘッド41a,41b,41c,41d,41eはそれぞれ1ストライプ分の領域R1a,R1b,R1c,R1d,R1eを露光する。基板Sが副走査方向Dsへ1ステップ分移動した後、次の主走査移動で新たに1ストライプ分の領域R2a,R2b,R2c,R2d,R2eがそれぞれ露光される。これを繰り返して露光領域Reが全て露光されると、1つのジョブが完了する。
【0061】
このように、本実施形態の露光装置1では、複数の露光ユニット4を用いて並列的に露光動作を実行し、個々の露光ユニット4の各々は、露光ビームLeの光源として複数のレーザー光源431をそれぞれ有している。これらのレーザー光源431のいずれかが露光動作中に異常を来たすおそれがある。
【0062】
例えば、装置の温度変化や振動等により、いずれかのレーザー光源431の光軸が僅かにずれてしまうことがあり得る。この場合、露光ビームLeの広がりが大きくなり(スポットサイズの増加)、描画の分解能が低下してしまうおそれがある。また、いずれかのレーザー光源431が劣化して光量が低下したり、点灯しなくなったりすることがあり得る。この場合、合成されたレーザー光ビームLにおける光強度Iが低下し(スポットサイズの減少)、露光不良を招くおそれがある。このように、スポットサイズの変動は描画処理の結果品質に大きな影響を及ぼす。
【0063】
これらの変動は、露光動作中のレーザー光ビームLのスポットサイズをリアルタイムで監視しておくことにより検知可能である。この実施形態では、検出部440からの出力を制御部9の露光制御部912が常時受信して(ステップS104からS109まで)、レーザー光ビームLのスポット幅Wsが予め定められた適正範囲内に収まっているか否かを監視している。そして、スポット幅Wsが適正範囲を外れたことが検知されると、いずれかのレーザー光源431に異常が発生している蓋然性が高いため、エラー状態と判定し、次に説明するエラー処理を割り込み処理として実行する。
【0064】
まず、エラー処理の考え方を示すために、露光ユニット4が1組だけ設けられている場合について説明する。いずれかのレーザー光源431に異常が発生したとき、エラー処理として最も簡単なのは装置の動作を止めることである。このことは当然に生産性の低下を招くから、動作停止期間を最小限に留め、また可能な限り自動的に処理を再開することが求められる。次に説明するエラー処理は、このようなニーズに対応するものである。
【0065】
図7はエラー処理の第1の態様を示すフローチャートである。この処理は、制御部9が露光動作の実行中に、検出部440が検出するレーザー光ビームLのスポット幅Wsが所定の適正範囲から外れていることを検知したとき、割り込み処理として実行される。エラー処理の内容は、制御プログラム931として予めストレージ93に記憶しておくことができる。
【0066】
最初に、ビームスポット幅の変動があった旨のエラーログが記録される(ステップS201)。これにより、オペレーターが装置の動作状況を事後的に把握することが可能になる。また、露光ビームLeに異常がある状態で露光動作を継続する意義がないため、実行中の露光動作が中断されて、描画は停止される(ステップS202)。描画の停止は、基板Sへの露光ビームLeの照射およびステージ2による基板Sの移動を停止させることにより実現される。
【0067】
エラー処理として直ちに動作を止める場合には、ここまでの処理を行えばよい。この状態で、例えばオペレーターによる確認・保守作業が可能となる。一方、以下の処理は、そのときの状況に応じて描画が可能となるように露光条件を整えて、動作をできるだけ早く再開させることを可能とするための処理である。その基本的な考え方は、ビームスポット幅の変動の原因となった光源ユニット(ここでは「異常光源」と称する)を除外し、正常な光源ユニットだけを用いて露光ビームLeを形成することで、露光の再開を可能とする、というものである。
【0068】
まず、異常光源を特定するための処理が行われる(ステップS203)。前記したように、スポット幅Wsの変動は、複数の光源ユニット430のいずれかの異常(光軸ずれ、出力光量の変動など)を原因として生じ得る。どの光源ユニット430が異常光源であるかが特定される。
【0069】
具体的には、レーザー駆動部42から全光源ユニット430のレーザー光源431を点灯させるための電力を供給した状態で、シャッター433の開閉により、1つの光源ユニット430からの光のみが検出部440に入射するようにする。各光源ユニット430のシャッター433の開閉状態の組み合わせを変えることで、レーザー光源431から出射される光を光源ユニット430ごとに個別に検出することが可能である。
【0070】
検出される光量、位置、スポットサイズ等が規定値を満たしている光源ユニット430については「正常」、これらのいずれかが規定値を満たさない光源ユニット430については、当該光源ユニット430を「異常光源」と判定することができる。このようにして、異常光源が特定される。
【0071】
次に、正常な光源ユニット430についてはシャッター433を通過位置に位置決めすることでレーザー光源431から出射されるレーザー光を通過させる一方、異常光源と判定された光源ユニット430についてはシャッター433を遮蔽位置に位置決めしてレーザー光を遮蔽する(ステップS204)。これにより、異常光源が除外され、正常な光源ユニット430から出射されるレーザー光のみが合成されてレーザー光ビームLが形成されることになる。
【0072】
この場合、光源の構成が変化することで、合成されたレーザー光ビームの強度およびその均一性が変動してしまう。このうち均一性の変動については、空間光変調器410のキャリブレーションを行うことにより対応する(ステップS205)。このキャリブレーションでは、空間光変調器410の動作パラメーターを操作して、回折光学素子411から出射される回折光の強度を位置ごとに調整することにより、X方向におけるビーム強度の均一化が図られる。例えば、空間光変調器を構成する光変調素子に印加する電圧を、操作対象の動作パラメーターとすることができる。
【0073】
この場合のキャリブレーション処理としては、例えば本願出願人が先に開示した特開2016-139074号公報に記載されたものを適用することが可能である。また、これに限定されず、正常な光源ユニット430のみを用いて短軸方向に狭く長軸方向に強度が均一なラインビームを生成することが可能な各種の調整方法を適用することができる。そのため、ここではキャリブレーション処理の内容についての説明は省略する。
【0074】
また、使用される光源ユニット430の数が減少することによる光強度の低下に対しては、主走査速度の変更により対応する(ステップS206)。すなわち、露光ビームLeにおける全体的な光量低下は基板Sにおける露光不足の原因となるから、主走査速度を低下させることにより、必要な露光量を確保する。具体的には、光量と露光時間との積が一定となるように、変更後の光量に応じて主走査速度を変更設定すればよい。
【0075】
こうして露光条件の再設定(光量および主走査速度の調整)を行うことで、新たな露光条件で描画を再開することができる(ステップS207)。このときの露光動作を、通常の動作モードと区別するため、ここでは「生産継続モード」と称することとする。生産継続モードでは、主走査速度が通常より遅くなっているため描画に要する時間は長くなる。このため生産性は幾らか低下するが、描画の品質については通常動作と同程度を確保することができる。
【0076】
ジョブの途中でこのような異常が発生しエラー処理が行われた場合、ステップS110(図5)ではその旨の報知が行われる。この際の報知の内容としては、ジョブ実行中に異常が発生したという事実のほかに例えば、異常が発生した基板S上の位置、特定された異常光源に関する情報、変更された露光条件に関する情報等を、記録されたエラーログに基づき適宜含めることができる。
【0077】
ここまで、1組の露光ユニット4のみに着目した場合のエラー処理について説明した。一方、複数の露光ユニット4を用いて並列的に描画を行う構成においていずれかの露光ユニット4に異常が発生した場合、異常の発生していない露光ユニット4についても描画を停止してしまうことは必ずしも好ましくない。正常に描画が行われているにもかかわらず動作が停止されることで、描画途中の基板が不良品となってしまうからである。
【0078】
例えば、異常の発生した露光ユニット4については露光動作を停止し、他の露光ユニット4についてはそのまま通常の露光動作を継続するという対応が考えられる。この場合、基板Sの表面のうち、異常の発生した露光ユニット4が露光動作を担った露光領域については、異常が発生して以降の領域は露光されていない無効領域となる。一方、正常な露光ユニット4が露光動作を担う領域については、その全体において正常に描画が完了する。
【0079】
これに対して、異常の発生した露光ユニット4についても、第1の態様のエラー処理と同様に、露光条件の変更により描画を再開することが望まれる場合がある。こうすることで、基板の損失を最小限に抑えることができるからである。次に説明するエラー処理の第2の態様は、この点を考慮したものである。
【0080】
図8はエラー処理の第2の態様を示すフローチャートである。エラー処理の基本的な考え方は第1の態様と同様であるが、複数の露光ユニット4が並列的に動作していることに起因して、一部の処理が変更されている。このエラー処理は、複数の露光ユニット4のうち少なくとも1つにおいてビームスポット幅の異常が検知されたときに、割り込み処理として実行される。
【0081】
いずれかの露光ユニット4においてビームスポット幅の異常が検知されたとき、まずエラーログが記録される点は第1の態様と同じである(ステップS301)。ただし、他の露光ユニット4では異常は検知されていないため、直ちに動作を停止させることはせず、まず異常が生じた露光ユニット4について異常光源を特定するための処理を開始する(ステップS302)。描画処理は、異常の発生後、1つのストライプまたはジョブが終了した時点で停止される(ステップS303、S304)。
【0082】
1つのストライプの処理中に動作を停止させた場合、露光ユニット4に異常がなくても描画結果は無効となる。1つのストライプ分の処理が終了した後、または1つのジョブが終了した後に描画を停止するようにすれば、このように描画結果が無効となることを回避することができる。また、処理の再開時には新たなストライプの先頭部分から描画を行うことができる。したがって、異常の発生していない露光ユニット4においては、当該露光ユニット4が露光すべき露光領域の全体について適切に描画を行うことが可能である。
【0083】
異常が発生した露光ユニット4については、第1の態様と同様に、異常光源の特定(ステップS302)、異常光源を遮蔽してのキャリブレーション(ステップS305、S306)および主走査速度の変更が行われる(ステップS307)。これにより、露光条件を変更した「生産継続モード」での描画処理が実行可能な状態となる。
【0084】
一方、主走査速度が変更されたことに伴って、正常な露光ユニット4のそれぞれについてもキャリブレーションが行われる(ステップS308)。すなわち、新たに設定された主走査速度に応じて出力光量を低減することで、速度変更の前後で同じ露光量が確保されるようにする。こうして各露光ユニット4のキャリブレーションが実行され、新たな主走査速度が設定されることで、主走査速度を落とした生産継続モードでの描画を再開することができる(ステップS309)。
【0085】
このように露光条件を変更して描画を再開することで、動作停止期間を短くして生産性の低下を最小限に抑えることができる。また、基板Sのうち正常に露光できず無効となる領域についても、必要最小限に抑えられる。
【0086】
描画再開後のステップS110(図5)では、第1の態様のエラー処理と同様に、ジョブ実行中に異常が発生したという事実、異常が発生した露光ユニットに関する情報、異常が発生した基板上の位置、特定された異常光源に関する情報、変更された露光条件に関する情報等を、適宜含めることができる。
【0087】
また、異常が発生していない露光ユニット4についても、当該露光ユニット4が露光動作を担った露光領域のうち、通常動作モードで露光された部分と生産継続モードで露光された部分とが判別可能となるような報知がなされると便宜である。いずれも規定の露光量で露光されているものの、露光条件の変化が描画品質に何らかの影響を与えた可能性がないとは言えないからである。例えば次のようなGUI(Graphical User Interface)画面を用いて、このような報知を行うことができる。
【0088】
図9は異常発生後のGUI画面の例を示す図である。図は基板Sの表面を模式的に示しており、通常の動作モードで露光された領域、生産継続モードで露光された領域、および、正しく露光されなかった無効領域を識別可能なように塗り分けたものである。ここでは、5組設けられた露光ユニット4のうち、露光ヘッド41aを含む1つの露光ユニット4において、(-Y)方向への主走査移動による描画途中に異常が発生した場合を想定する。また、副走査移動は(+X)方向に行われたものとする。
【0089】
図9(a)は、異常の発生した露光ユニット4のみ露光を停止させ、正常な露光ユニット4については露光条件を変えることなく描画を継続した場合の事例を示している。基板Sの表面のうち、異常が発生した露光ユニット4の露光ヘッド41aにより露光された露光領域R3aでは、異常が発生したときの露光位置が「×」印で示され、それ以前に正常な状態で露光された領域と、それ以降の露光されなかった、あるいは正しく露光されなかった無効領域とが塗り分けられている。一方、他の正常な露光ユニット4が露光を担った露光領域R3b~R3eについては、全体が正常な状態で露光された領域であることが示される。
【0090】
図9(b)は、描画途中で通常動作モードから生産継続モードに切り替わった事例を示している。1つのストライプの処理中に「×」印の位置で異常が発生すると、当該ストライプのうち異常発生位置以降は無効領域となる。ただし、露光条件の再調整が行われ生産継続モードで描画が再開された次のストライプ以降については、生産継続モードで露光されたことを示す塗り分けが施される。
【0091】
他の露光ユニット4が露光を担った露光領域R3b~R3eでは、異常が発生したストライプの処理が終了するまでは描画が継続されるため、当該ストライプの全体およびそれ以前に露光されたストライプが正常に露光された領域として示される。一方、キャリブレーション実行後、生産継続モードで露光された領域については、その旨を示す塗り分けが施される。
【0092】
ジョブ終了後の報知(図5のステップS110)において、このようなGUI画面が例えば表示部95に表示されることで、オペレーターは、基板Sがどのような条件で描画されたかを容易に視認することが可能となる。
【0093】
以上説明したように、本実施形態の露光装置1においては、光源ユニット430のレーザー光源431が本発明の「レーザー光源」として機能する一方、空間光変調器410が本発明の「光変調器」として機能している。そして、露光ユニット4が本発明の「露光部」に相当している。また、光検出器445が本発明の「受光器」として機能しており、これとビームスプリッター444とを有する検出部440が、本発明の「検出部」として機能している。
【0094】
また、制御部9が本発明の「制御部」として機能している。また、本実施形態ではステージ2が本発明の「ステージ」として機能しており、ステージ移動機構3が本発明の「移動部」として機能している。
【0095】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、各光源ユニット430に機械的に動作するシャッター433が設けられており、異常が発生した光源ユニット430については光路上にシャッター433を配置することで光を遮蔽する。これにより、当該光源ユニット430は以後の動作から除外されることになる。しかしながら、異常が発生した光源ユニットを除外する方法はこれに限定されず、例えば光学的に光路を曲げることにより、出射光を照明光学系44に入射させないようにしてもよい。また、レーザー光源431への電力供給を遮断して消灯させることも考えられる。ただし、このことが他の光源ユニットに温度変動を生じさせ、それらの動作が不安定になるおそれがあることから、レーザー光源の駆動については継続したまま、出射光が照明光学系44に入射しないような手法が取られることがより好ましい。
【0096】
また例えば、上記実施形態の説明ではエラー処理として、直ちに動作を停止するものも含めたいくつかの態様について記述した。これらは目的に応じたいずれかが予め選択されて採用されてもよく、またこれら複数の態様からユーザーの操作入力により選択させ実行するようにしてもよい。
【0097】
また例えば、上記実施形態におけるエラー処理の第2の態様では、主走査速度の変更に伴い、正常な露光ユニット4についてもキャリブレーションを実行している。この場合、正常な露光ユニット4においては単に走査速度が変更されるだけであるから、例えば空間光変調器410の動作パラメーターの最適値と走査速度との関係を予め求めておけば、キャリブレーションを行うことなくパラメーター変更のみで生産継続モードを実行することが可能となる。
【0098】
また上記実施形態では、エラー処理によって露光条件の再調整が可能となることを前提としているが、場合によっては露光条件を変更しても適切な描画を行える状態とならないこともあり得る。このような場合には描画の再開を断念し、その旨を報知するような態様であってもよい。
【0099】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る露光装置および露光方法において、例えば検出部は、光路上に設けられてレーザー光ビームの一部を分岐させるビームスプリッターと、レーザー光ビームからの分岐光を受光する受光器とを有するものであってもよい。このような構成によれば、レーザー光ビームの変動をリアルタイムに検出することができ、変動があった場合には直ちにエラー処理を実行することができる。
【0100】
また例えば、エラー処理において、露光部に、複数のレーザー光源のうちエラーが発生したものを除く他のレーザー光源によりレーザー光ビームを生成させるとともに、そのときのレーザー光ビームの強度に応じて露光条件を変更するように構成されてもよい。複数のレーザー光源のうちエラー状態となったものが除外されることで、全体としての光量は低下する。このため、通常の状態と同じ動作条件では適切な露光を行えなくなると考えられる。このような光量の変化に応じて露光条件を変更することで、新たな露光条件の下で露光を再開することが可能となる。
【0101】
この場合のエラー処理において、例えば、検出部にレーザー光源の各々から出射されるレーザー光を個別に検出させ、その検出結果に基づきエラーが発生したレーザー光源を特定するように構成されてもよい。このような構成によれば、複数のレーザー光源からのレーザー光が合成された後の光路上でも、個々のレーザー光源からの光を個別に検出することが可能である。
【0102】
また例えば、基板を支持するステージと、露光部とステージとを相対移動させて基板への露光ビームの入射位置を変化させる移動部とを備える構成においては、露光条件として移動部による相対移動における移動速度を変更するようにしてもよい。このような構成によれば、光量の変化分を移動速度で補うことにより、規定の露光量を確保することが可能となる。
【0103】
また例えば、露光部がレーザー光ビームを露光データに基づき変調する光変調器を有する構成においては、露光条件として光変調器の動作パラメーターを変更するようにしてもよい。レーザー光ビームの強度の均一性を得るために光変調器の動作パラメーターを操作する技術は公知であり、本発明でもこの技術を適用して露光条件の調整を行うことが可能である。
【0104】
また例えば、一の基板に対し互いに並列的に描画を行う複数の露光部を備える構成においては、一の露光部について露光条件の変更を行う際には、他の露光部についても露光条件を変更するようにしてもよい。このような構成によれば、例えば露光部と基板との相対移動速度のように、1つの露光部での変更による影響が他の露光部にも及ぶような露光条件についても調整対象とすることができる。
【0105】
また例えば、一の基板に対し互いに並列的に描画を行う複数の露光部を備える構成においては、一の露光部についてエラー処理を行う際には、他の露光部について露光条件を変更することなく基板に対する描画を継続させるようにしてもよい。このような構成によれば、エラー状態ではない他の露光部についてそれまでと同じ処理を継続して実行することで、動作停止に伴う生産性の低下を最小限に抑えることができる。
【0106】
また例えば、レーザー光ビームがラインビームであり、そのスポットサイズはラインビームの短軸方向における幅として検出されてもよい。ラインビームの幅は描画における分解能に関わるパラメーターであるから、その変動を検知してエラー処理を行うことで、描画が品質の低下した状態で継続されてしまうという問題を回避することができる。
【0107】
また、本発明に係る露光方法は、例えば、エラー処理により変更された露光条件を適用して描画を再開するように構成されてもよい。エラー状態のレーザー光源を内包した状態でも適切な露光が行えるように露光条件を変更すれば、変更後の露光条件を適用することで、描画品質の低下を抑制しつつ描画を継続することが可能である。
【0108】
特に、レーザー光ビームを出射する露光部と基板とを相対移動させながら描画を行う場合においては、再開後の描画では露光部と基板との相対移動速度を元の速度より低下させるように構成されてもよい。エラー状態のレーザー光源が除外されることで全体の光量は低下するが、露光部と基板との相対移動速度を低下させて露光時間を長くすることで、実効的な露光量については規定値を維持することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
この発明は、例えば半導体基板、プリント配線基板あるいはガラス基板等の基板にパターンを形成するために基板を露光する技術分野に好適である。
【符号の説明】
【0110】
1 露光装置
2 ステージ
3 ステージ移動機構(移動部)
4 露光ユニット(露光部)
9 制御部
410 空間光変調器(光変調器)
430 光源ユニット
431 レーザー光源
440 検出部
444 ビームスプリッター
445 光検出器(受光器)
L レーザー光ビーム
Le 露光ビーム
S 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9