IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日鐵住金建材株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コンクリートスラブの支持構造 図1
  • 特開-コンクリートスラブの支持構造 図2
  • 特開-コンクリートスラブの支持構造 図3
  • 特開-コンクリートスラブの支持構造 図4
  • 特開-コンクリートスラブの支持構造 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140780
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】コンクリートスラブの支持構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/32 20060101AFI20230928BHJP
   E04B 5/40 20060101ALI20230928BHJP
   E04B 1/16 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
E04B5/32 D
E04B5/40 A
E04B1/16 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046792
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮林 航希
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 由悟
(57)【要約】
【課題】コンクリートスラブの水平力を支持部材に伝達するにあたり、コンクリート内の応力集中によるひび割れの発生を効果的に防止する。
【解決手段】支持部材と、上記支持部材の上方に打設されるコンクリートと上記コンクリートに定着させられるスタッドボルトとを備え、上記スタッドボルトの一方の端部は上記支持部材に溶接される、コンクリートスラブの支持構造が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、
前記支持部材の上方に打設されるコンクリートと
前記コンクリートに定着させられるスタッドボルトと
を備え、
前記スタッドボルトの一方の端部は前記支持部材に溶接される、コンクリートスラブの支持構造。
【請求項2】
前記スタッドボルトの前記支持部材とは反対側の端部から前記スタッドボルトに螺合させられる第1のナットをさらに備え、
前記第1のナットは、前記支持部材から離隔している、請求項1に記載のコンクリートスラブの支持構造。
【請求項3】
前記スタッドボルトの前記支持部材とは反対側の端部から前記スタッドボルトに螺合させられる第2のナットをさらに備え、
前記第2のナットは、前記第1のナットと前記支持部材との間に配置される、請求項2に記載のコンクリートスラブの支持構造。
【請求項4】
前記第1のナットと前記第2のナットとの間に挟持される板状部材をさらに備える、請求項3に記載のコンクリートスラブの支持構造。
【請求項5】
前記コンクリートは、合成スラブを構成する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコンクリートスラブの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートスラブの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートスラブの水平力を梁に伝達する方法として、頭付きスタッドや焼抜き栓溶接、打込み鋲、溶接(隅肉溶接またはプラグ溶接)、ボルトまたは高力ボルトが用いられることがある。このうち、コンクリートスラブと梁とをより強固に一体化するために、頭付きスタッドが用いられることが多い。例えば、特許文献1には、コンクリートとデッキプレートとのコンクリートスラブと鉄骨梁とが頭付きスタッドを用いたシアコネクタで一体になっている合成梁の例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-280687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されたような技術では、コンクリートスラブに曲げが生じた場合に、コンクリート内の応力が頭付きスタッドの頭部に集中するため、スタッド頭部を起点としたひび割れが生じやすいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、コンクリートスラブの水平力を支持部材に伝達するにあたり、コンクリート内の応力集中によるひび割れの発生を効果的に防止することが可能なコンクリートスラブの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]支持部材と、上記支持部材の上方に打設されるコンクリートと上記コンクリートに定着させられるスタッドボルトとを備え、上記スタッドボルトの一方の端部は上記支持部材に溶接される、コンクリートスラブの支持構造。
[2]上記スタッドボルトの上記支持部材とは反対側の端部から上記スタッドボルトに螺合させられる第1のナットをさらに備え、上記第1のナットは、上記支持部材から離隔している、[1]に記載のコンクリートスラブの支持構造。
[3]上記スタッドボルトの上記支持部材とは反対側の端部から上記スタッドボルトに螺合させられる第2のナットをさらに備え、上記第2のナットは、上記第1のナットと上記支持部材との間に配置される、[2]に記載のコンクリートスラブの支持構造。
[4]上記第1のナットと上記第2のナットとの間に挟持される板状部材をさらに備える、[3]に記載のコンクリートスラブの支持構造。
[5]上記コンクリートは、合成スラブを構成する、[1]から[4]のいずれか1項に記載のコンクリートスラブの支持構造。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、支持部材に溶接されたスタッドボルトを介して、コンクリートスラブの水平力が支持部材に伝達される。スタッドボルトの表面にはねじの凹凸が形成されているため、頭付きスタッドの場合と同様にコンクリートからの引き抜きに抵抗することができる。その一方で、ねじの凹凸はスタッドボルトの長さ方向の所定の区間にわたって形成されているため、頭部のみに応力が集中する頭付きスタッドの場合に比べてコンクリート内の応力を分散させることができ、応力集中によるひび割れの発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るコンクリートスラブの支持構造を示す図である。
図2】本発明の実施形態においてスタッドボルトに螺合するナットおよび板状部材を配置する例を示す図である。
図3】本発明の実施形態においてスタッドボルトに螺合するナットおよび板状部材を配置する例を示す図である。
図4】本発明の実施形態においてスタッドボルトに螺合するナットおよび板状部材を配置する例を示す図である。
図5】本発明の実施形態の適用部位の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るコンクリートスラブの支持構造を示す図である。図示された例では、支持部材であるH形鋼1の上方にコンクリート2が打設されてコンクリートスラブが構築される。フランジ11およびウェブ12を含むH形鋼1は支持部材の例であり、例えば建築物における梁を構成する。支持部材はH形鋼には限定されず、例えば溝形鋼や山形鋼などの各種の形鋼を支持部材として用いることができる。H形鋼1のフランジ11の上面にはスタッドボルト3の一方の端部が溶接され、スタッドボルト3はコンクリート2に定着させられている。これによって、コンクリートスラブの水平力を支持部材であるH形鋼1に伝達する支持構造が構成される。スタッドボルト3の表面にはねじの凹凸が形成されているため、頭付きスタッドの場合と同様にコンクリート2からの引き抜きに抵抗することができる。その一方で、ねじの凹凸はスタッドボルト3の長さ方向の所定の区間にわたって形成されているため(必ずしも全体ではなくてもよく、端部付近など、ねじが形成されない部分が存在してもよい)、頭部のみに応力が集中する頭付きスタッドの場合に比べてコンクリート2内の応力を分散させることができ、応力集中によるひび割れの発生を効果的に防止することができる。
【0011】
図示された例において、コンクリート2はデッキプレート4の上に打設されて合成スラブを構成しているが、スタッドボルト3が定着させられる部分にはデッキプレート4は配置されていない。スタッドボルト3とは別の部分で、デッキプレート4を貫通してH形鋼1に溶接されるスタッドが配置されてもよい。デッキプレート4は、例えば交互に配置された台形の山部と溝底部とが互いに平行に延びる波板状の薄板である。山部および溝底部は、H形鋼1の材軸に対して直交する方向に延びていてもよいし、H形鋼1の材軸に対して平行な方向に延びていてもよい。また、デッキプレートと鉄筋トラスとが一体になった型枠部材が用いられてもよい。他の例では、フラットデッキのような専ら型枠として用いられる部材の上にコンクリート2を打設してコンクリートスラブを構築してもよいし、コンクリート2の打設後に型枠部材を撤去し、コンクリートスラブの構築後に型枠部材が残されなくてもよい。
【0012】
図2から図4は、本発明の実施形態においてスタッドボルトに螺合するナットおよび板状部材を配置する例を示す図である。図2に示された例では、スタッドボルト3のH形鋼1とは反対側の端部からナット5Aが螺合させられる。ナット5Aは、デッキプレート4から離隔しており、例えばスタッドボルト3の端部に近い位置に配置される。スタッドボルト3のねじの凹凸に加えてナット5Aがスタッドボルト3からの張り出しを形成することによって、スタッドボルト3のコンクリート2からの引き抜きに対する抵抗が強化される。スタッドボルト3およびナット5Aを合わせた全体の形状は頭付きスタッドに近いが、上述のようにねじの凹凸がスタッドボルト3の長さ方向の所定の区間にわたって形成されていることによって、頭付きスタッドの場合に比べてコンクリート2内の応力を分散させることができる。
【0013】
図3に示された例では、スタッドボルト3のH形鋼1とは反対側の端部から2つのナット5A,5Bが螺合させられる。ナット5Aは図2の例と同様にスタッドボルト3の端部に近い位置に配置され、ナット5Bはナット5AとH形鋼1のフランジ11との間に配置される。より具体的には、ナット5Bは、ナット5Aとフランジ11との中間付近であって、それらの両方から離隔した位置に配置される。ねじの凹凸がスタッドボルト3の長さ方向の所定の区間にわたって形成されているのに加えて、ナットによって形成されるスタッドボルト3からの張り出しがナット5A,5Bの2箇所に増えることによって、スタッドボルト3のコンクリート2からの引き抜きに対する抵抗がさらに強化され、またコンクリート2内の応力をさらに分散させることができる。
【0014】
図4に示された例では、ナット5Bが図3の例よりもナット5A側に配置され、ナット5A,5Bの間に板状部材6が挟持される。ねじの凹凸がスタッドボルト3の長さ方向の所定の区間にわたって形成されているのに加えて、ナット5A,5B、さらに板状部材6によってスタッドボルト3からの張り出しが形成されることによって、スタッドボルト3のコンクリート2からの引き抜きに対する抵抗がさらに強化され、またコンクリート2内の応力をさらに分散させることができる。なお、板状部材6は平板状の部材として図示されているが、例えば波板状やU字形の湾曲形状など、断面形状は特に限定されない。
【0015】
スタッドボルト3にはナットを螺合させることが容易であるため、上記の例のようにナットを螺合させたり、ナットで板状部材を挟持したりしてスタッドボルト3からの張り出しを形成し、引き抜きに対する抵抗を強化するとともにコンクリート2内の応力を分散させることができる。他の例では、スタッドボルト3にナット5A,5B以外に1または複数のナットが螺合させられてもよいし、板状部材6と同様の1または複数の板状部材が、スタッドボルト3に螺合させられたナットによって挟持されてもよい。
【0016】
図5は、本発明の実施形態の適用部位の別の例を示す図である。図1に示された例において、コンクリート2はデッキプレート4の上に打設されて合成スラブを構成するものとして説明されたが、コンクリート2は図5に示された例のようにRCスラブを構成してもよい。図示された例では、いずれもH形鋼で構成される大梁1Aおよび小梁1Bの上に、コンクリート2にメッシュ筋71および補強鉄筋72が埋設されたRCスラブが構築される。スタッドボルト3は、大梁1Aのフランジ11Aの上面、および小梁1Bのフランジ11Bの上面にそれぞれ一方の端部が溶接され、コンクリート2に定着させられる。この場合も、スタッドボルト3を介してRCスラブの水平力が支持部材である大梁1Aおよび小梁1Bに伝達され、スタッドボルト3によるコンクリート2内の応力を分散させる効果を得ることができる。また、上記で図2から図4を参照して説明した例は、図5のようなRCスラブの場合にも適用可能である。
【0017】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野の当業者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0018】
1…H形鋼、1A…大梁、1B…小梁、11,11A,11B…フランジ、12…ウェブ、2…コンクリート、3…スタッドボルト、4…デッキプレート、5A,5B…ナット、6…板状部材、71…メッシュ筋、72…補強鉄筋。
図1
図2
図3
図4
図5