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特開2023-140784液化ガス貯蔵タンクのクールダウン方法
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  • 特開-液化ガス貯蔵タンクのクールダウン方法 図1
  • 特開-液化ガス貯蔵タンクのクールダウン方法 図2A
  • 特開-液化ガス貯蔵タンクのクールダウン方法 図2B
  • 特開-液化ガス貯蔵タンクのクールダウン方法 図2C
  • 特開-液化ガス貯蔵タンクのクールダウン方法 図2D
  • 特開-液化ガス貯蔵タンクのクールダウン方法 図2E
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140784
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】液化ガス貯蔵タンクのクールダウン方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20230928BHJP
   F17C 3/10 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F17C13/00 302Z
F17C3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046800
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】下田 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨永 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】三橋 麻子
(72)【発明者】
【氏名】池島 章司
(72)【発明者】
【氏名】持田 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 翔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 広崇
(72)【発明者】
【氏名】中島 隆博
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB03
3E172AB04
3E172AB05
3E172AB15
3E172BA06
3E172BB17
3E172DA05
3E172EA03
3E172EA12
3E172EA13
3E172EA22
3E172EA23
3E172EA48
3E172JA09
3E172KA03
3E172KA11
3E172KA22
3E172KA23
(57)【要約】
【課題】液化ガス貯蔵用の多重防熱構造タンクのクールダウンに要する時間を短縮し、コストを抑制する。
【解決手段】液化ガスを貯蔵するための、内槽(3)および外槽(5)を備えるタンクを、貯蔵対象である前記液化ガスを充填する前に冷却する方法が、内槽内空間に、冷却用液化ガス(CH)を導入することと、前記冷却用液化ガス(CH)の導入を開始した後、内外槽間空間(9)の温度が所定値以下になるまで、前記内外槽間空間(9)と内槽内空間(7)との間の連通路(11)の開状態を維持することとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを貯蔵するための、内槽および外槽を備えるタンクを、貯蔵対象である前記液化ガスを充填する前に冷却する方法であって、
内槽内空間に、冷却用液化ガスを導入することと、
前記冷却用液化ガスの導入を開始した後、内外槽間空間の温度が所定値以下になるまで、前記内外槽間空間と前記内槽内空間との間の連通路の開状態を維持することと、
を含む、
液化ガス貯蔵タンクのクールダウン方法。
【請求項2】
請求項1に記載のクールダウン方法において、
前記内外槽間空間の温度が前記所定値以下になった場合に前記連通路を閉じることを含む、
クールダウン方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のクールダウン方法において、
前記内槽内空間の圧力と前記内外槽間空間の圧力との差が所定範囲外にある場合に、前記所定範囲内となるよう内外槽間空間の圧力を調整することを含む、
クールダウン方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化ガス貯蔵タンクのクールダウン方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液化ガス、例えば極低温の液化水素を貯蔵するタンクとして、内槽および外槽を備える二重殻タンクを用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般的に、低温の液化ガスをタンクに貯蔵する場合、常温のタンクに一度に多量の貯蔵対象の液化ガスを充填することによってタンクを急激に冷却することを回避するため、貯蔵対象の液化ガスを充填する前に、予めタンクを比較的低速で冷却すること(以下、「クールダウン」という。)が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-151291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、液化ガス用二重殻タンクのような多重防熱構造のタンクの場合、高い断熱性を有することから、内槽を冷却するのみではタンク全体の冷却に長時間を要し、かつ多量の冷却用の液化ガスを要することになる。したがって、クールダウンに要するコストが増大する。
【0006】
本開示の目的は、上記の課題を解決するために、液化ガス貯蔵用の多重防熱構造タンクのクールダウンに要する時間を短縮し、コストを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示に係る液化ガス貯蔵タンクのクールダウン方法は、
液化ガスを貯蔵するための、内槽および外槽を備えるタンクを、貯蔵対象である前記液化ガスを充填する前に冷却する方法であって、
内槽内空間に、冷却用液化ガスを導入することと、
前記冷却用液化ガスの導入を開始した後、内外槽間空間の温度が所定値以下になるまで、前記内外槽間空間と前記内槽内空間との間の連通路の開状態を維持することと、
を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る液化ガス貯蔵タンクのクールダウン方法によれば、液化ガス貯蔵用の多重防熱構造タンクのクールダウンに要する時間を短縮し、コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係るクールダウン方法が適用される液化ガス貯蔵タンクの概略構成を示す断面図である。
図2A】本開示の一実施形態に係るクールダウン方法の開始前の初期状態を示す模式図である。
図2B】本開示の一実施形態に係るクールダウン方法における内槽冷却中の状態を示す模式図である。
図2C】本開示の一実施形態の一変形例に係るクールダウン方法における内槽冷却中の状態を示す模式図である。
図2D】本開示の一実施形態の他の変形例に係るクールダウン方法における内槽冷却中の状態を示す模式図である。
図2E】本開示の一実施形態に係るクールダウン方法の終了した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に本開示の一実施形態に係るクールダウン方法が適用される液化ガス貯蔵タンク(以下、単に「貯蔵タンク」という。)1を示す。この貯蔵タンク1は、液化ガスを貯蔵するためのタンクであり、内槽3および外槽5を備える二重殻タンクとして構成されている。なお、本明細書において、「クールダウン」とは、貯蔵対象である液化ガスを貯蔵タンク1に充填する前に、貯蔵タンク1を冷却することを意味する。
【0011】
以下に説明する本実施形態においては、貯蔵対象である液化ガスとして極低温(約-250℃)の液化水素を例として説明する。もっとも、液化ガスは他の種類のガス、例えば、液化石油ガス(LPG、約-45℃)、液化エチレンガス(LEG、約-100℃)、液化天然ガス(LNG、約-160℃)、液化ヘリウム(LHe、約-270℃)などであってよい。
【0012】
貯蔵タンク1は、例えば液化水素運搬船のような船舶に設置される。もっとも、貯蔵タンク1が設置される液化水素貯蔵設備は、液化水素を貯蔵することが可能な構造、機能を有する設備であればこの例に限定されない。貯蔵タンク1が設置される液化水素貯蔵設備は、例えば、液化水素を推進用燃料として使用する船舶であってもよく、船舶以外の地上の液化水素貯蔵設備や、液化水素を利用するプラントであってよい。
【0013】
貯蔵タンク1は、内槽3および外槽5を有する二重殻タンクとして構成されている。具体的には、内槽3は、その内側に貯蔵対象である液化水素の貯蔵空間(以下、「内槽内空間7」と呼ぶ。)を形成する内槽殻と、内槽殻の外周面を覆う内槽防熱層とを有する。外槽5は、内槽3との間に断熱層である内外槽間空間9を形成する外槽殻と、外槽殻の外周面を覆う外槽防熱層とを有する。なお、内槽3および外槽5の防熱層を設置する箇所はこの例に限定されず任意であり、例えば防熱層を外槽殻の内周面を覆うように設置してもよい。また、内槽3および外槽5の防熱層の一方または両方を省略してもよい。この貯蔵タンク1は、断熱層である内外槽間空間9に低温の水素ガスを封入した状態で定常運用される。
【0014】
本実施形態では、内槽内空間7と内外槽間空間9とを連通させる連通路11が設けられている。連通路11は開閉可能に構成されている。図示の例では、具体的には、内槽内空間7で生じた液化水素の気化ガス(以下、単に「気化ガス」と呼ぶ。)G1を貯蔵タンク1の外部へ排出する気化ガス排出通路13と、貯蔵タンク1の外部に設けられた水素ガス源(図示せず)からの水素ガス(以下、「外部水素ガス」と呼ぶ。)G2を内外槽間空間9に導入する水素ガス導入通路15と、貯蔵タンク1の外部において気化ガス排出通路13と水素ガス導入通路15とを接続する接続通路17とが設けられている。これら気化ガス排出通路13、接続通路17および水素ガス導入通路15によって連通路11が形成されている。また、連通路11に開閉弁19が設けられており、この開閉弁19によって連通路11が開閉可能に構成されている。この例では、水素ガス導入通路15における接続通路17との接続点の下流側の部分に開閉弁19が設けられているが、開閉弁19の位置および個数はこの例に限定されない。また、開閉弁19は、手動で開閉可能な弁のほか、設定された差圧に応じて自動的に開閉する弁であってもよい。
【0015】
なお、内槽内空間7と内外槽間空間9との間の連通路11の具体的な構成、および連通路11を開閉可能とする具体的な構成は、この例に限定されない。また、上記「水素ガス源」は、水素ガスの供給源となり得るものであればどのような構成であってもよく、典型的には水素ガスを貯蔵したタンクであるが、例えば液化水素を貯蔵したタンクと気化器を組み合わせたものであってもよい。
【0016】
また、本実施形態では、内槽3の温度を検知する内槽温度検知装置21、内槽内空間7の圧力を監視する内槽内空間圧力検知装置23、内外槽間空間9の温度を検知する内外槽間空間温度検知装置25、および内外槽間空間9の圧力を検知する内外槽間空間圧力検知装置27を備えている。これらの検知装置は、検知対象の物理量(温度、圧力)を検知するセンサ素子、取得した検出量に対して信号変換処理、演算処理等必要な処理を行う各種回路、これらの処理に必要な情報を格納するためのメモリ、電池等の電源素子または外部から電源供給を受けるための電源回路、出力信号を有線または無線で外部へ送信するための送信回路等を備えている。なお、このような温度検知装置,圧力検知装置として、上記以外の部分を計測する装置、例えば内槽温度検知装置や外槽温度検知装置が設けられていてもよい。また、これらの温度検知装置,圧力検知装置は、後述するクールダウン方法の実施の態様に応じて必要なもののみが設けられていてよい。
【0017】
このように構成された貯蔵タンク1のクールダウン方法について、以下に詳細に説明する。
【0018】
本実施形態では、図2Aに示すクールダウンを開始する時点での初期状態の貯蔵タンク1において、連通路11の開閉弁19を開いた状態とされており、内槽内空間7および内外槽間空間9には、いずれも、例えば常温,大気圧(0kPaG)の水素ガスが存在している。もっとも、初期状態の水素ガスの温度,圧力は常温,大気圧に限定されない。この状態から、図2Bに示すように、内槽内空間7に冷却用の液化水素(以下、単に「冷却用水素」と呼ぶ。)CHを導入する。この例では、噴霧器29を用いて、内槽内空間7に、冷却用水素CHを噴霧する。
【0019】
この状態で冷却用水素CHの噴霧を続けることにより、内槽3の温度が低下する。内槽3の温度が低下することにより、内外槽間空間9の温度も低下する。また、内槽内空間7においては、冷却用水素CHが気化した気化ガスG1が発生して圧力が上昇する一方、内外槽間空間9においては温度低下によって圧力が低下する。上記のように連通路11が開かれているので、内槽内空間7で発生した気化ガスG1は、両空間7,9の圧力差によって、連通路11を介して内外槽間空間9に流入する。冷却用水素CHの噴霧を開始した後、内外槽間空間9の温度が所定値(以下、この温度を「第1所定温度」と呼ぶ。)以下になるまで、内外槽間空間9と内槽内空間7との間の連通路11の開状態を維持する。
【0020】
なお、連通路11を開状態としながら内槽3を冷却している間、両空間の圧力差が所定の範囲を超えた場合には、圧力差を調整する装置を用いて両空間の圧力差が所定の範囲内に収まるように調整してもよい。例えば、内外槽間空間9の圧力が過度に低い場合には、水素ガスを強制的に内外槽間空間9に送給する装置(以下、単に「ガス送給装置」と呼ぶ。)31を連通路11上、例えば接続通路17に設けて、このガス送給装置31によって内槽内空間7の気化ガスG1を内外槽間空間9に供給してもよい。ガス送給装置31は、例えばターボ式または容積式の圧縮機、ブロワ、ファンといったガスに圧力をかけることによりガスを移動させる装置である。気化ガスG1の強制的な供給に代えて、または追加して、水素ガス導入通路15から外部水素ガスG2を内外槽間空間9に供給してもよい。この場合には、図2Cに変形例として示すように、ガス送給装置31を水素ガス導入通路15上に設けると共に、ガス送給装置31を使用しない場合のためのバイパス通路15aを設けてもよい。
【0021】
また、内外槽間空間9の圧力が過度に高い場合には、図2Dに変形例として示すように、排気装置33を用いて内外槽間空間9の水素ガスを排気してもよい。この排気装置33は、同図に示すように、専用に設けた排気通路35上に設けることができる。もっとも、排気装置33の設置態様はこの例に限定されず、例えば水素ガス導入通路15の途中に設けてもよい。上記の内槽内空間7と内外槽間空間9の圧力差の「所定の範囲」は、例えば、内槽3に設置された安全弁の設定圧に基づいて定められる。なお、排気通路35に排気装置33を設けることは必須ではない。例えば、内槽内空間7の圧力を大気圧よりも高く保つ場合、内外槽間空間9のガスの排出は排気通路35のみによって行うことができる。
【0022】
また、連通路11を開いているにもかかわらず内外槽間空間9の圧力が低下する場合にも、ガス送給装置31を用いて内外槽間空間9の圧力調整を行ってもよい。
【0023】
このように、内槽3を冷却用水素CHで冷却しながら、内槽内空間7と内外槽間空間9とを連通させることにより、内槽内空間7で発生した低温の気化ガスG1が、内槽内空間7の圧力上昇および内外槽間空間9の圧力低下に伴って内外槽間空間9に導入される。これにより、内外槽間空間9および外槽5の冷却が促進されるので、単に内槽3のみを冷却する場合に比べて貯蔵タンク1全体のクールダウンに要する時間を短縮し、コストを抑制することができる。さらに、気化ガスG1の流入によって内外槽間空間9の過度な圧力の低下が抑制されるので、内槽3および外槽5の機械的強度を考慮した、内外槽間空間9の許容最低圧力を維持することが容易となる。
【0024】
なお、内外槽間空間9に導入される気化ガスG1および/または外部水素ガスG2の温度が、内外槽間空間9を第1所定温度まで冷却するのに十分低くない場合や過度に低い場合には、連通路11(例えば水素ガス導入通路15)上に温度調整装置(図示せず)を設け、この温度調整装置を用いて第1所定温度程度に温度調整した水素ガスを内外槽間空間9に導入してもよい。
【0025】
その後、内外槽間空間9の温度が第1所定温度まで低下した場合に、開閉弁19を閉じ、連通路11を閉状態として、内外槽間空間9への水素ガス供給を停止する。連通路11を閉じることにより、内外槽間空間9の温度が過度に低下することが防止される。もっとも、連通路11を閉じることは必須ではない。また、いったん連通路11を閉じた後、必要に応じて連通路11を開いてもよい。
【0026】
上記の内外槽間空間9の第1所定温度は、貯蔵タンク1の定常運用時における内外槽間空間9の設定温度(例えば110K)を基準として定められる。本実施形態では、内外槽間空間温度を設定温度以上に維持するため、設定温度を若干上回る温度(例えば120K)を第1所定温度としている。
【0027】
その後、図2Eに示すように、内槽3の温度および内外槽間空間9の温度がそれぞれ目標温度まで低下した時点で、連通路11を閉状態にするとともに、冷却用水素CHの噴霧を停止してクールダウンを終了する。
【0028】
本実施形態では、クールダウンを冷却用の液化水素を用いて行う例について説明したが、クールダウンは液化水素以外の液化ガスを用いて行ってもよい。例えば、内槽3内に空気が存在する状態から、液化窒素を導入した後、さらに液化窒素を液化水素で置換するというように、段階的にクールダウンを進めてもよい。
【0029】
なお、図1には、貯蔵タンク1の一例として、船体とは独立に形成される独立型の二重殻タンクを示したが、本実施形態に係るクールダウン方法は、この例に限定されず、いか
なるタイプの貯蔵タンクにも適用することができる。例えば、本実施形態に係るクールダウン方法は、船体と一体に形成されるタイプの貯蔵タンクにも適用することができる。また、貯蔵タンクの多重防熱構造は、三重構造以上であってよく、そのような多重防熱構造の内槽内空間と他の任意の槽間空間とに本実施形態に係るクールダウン方法を適用することができる。
【0030】
本実施形態に係るクールダウンは、典型的には、例えば、貯蔵タンク1の建造後、貯蔵タンク1が設置される船舶のような液化ガス貯蔵設備の建造後、または、当該設備や貯蔵タンク1のメンテナンスのために貯蔵タンク1をウォームアップした後に再度積荷を実施する前に行われる。もっとも、本実施形態に係るクールダウン方法は、貯蔵タンク1が船舶に設置される場合において、貯蔵タンク1内の液化ガスを揚荷した後の空荷航海(バラスト航海)する際にも適用することができる。すなわち、バラスト航海においては内槽3の温度が徐々に上昇する場合があり、その場合に上記クールダウン方法を適用することができる。なお、バラスト航海中の貯蔵タンク1のクールダウンにおいては、例えば、揚荷せずにクールダウン用として内槽3内に残した液化ガスを用いて、内槽3内に設置されたポンプ等の送給装置によって液化ガスをタンク上部まで移送してクールダウンを行う。貯蔵タンク1が複数設置される場合には、他の貯蔵タンク1からクールダウン用の液化ガスや気化ガスの供給を受けてもよい。
【0031】
以上説明した本実施形態に係るクールダウン方法によれば、内槽3を液化水素で冷却しながら、内槽内空間7と内外槽間空間9とを連通させることにより、内槽内空間7で発生した低温の気化ガスG1が、内外槽間空間9の圧力低下に伴って、内外槽間空間9に導入される。これにより、内外槽間空間9および外槽5の冷却が促進されるので、単に内槽3のみを冷却する場合に比べて貯蔵タンク1全体のクールダウンに要する時間を短縮し、コストを抑制することができる。さらに、気化ガスG1の流入によって内外槽間空間9の圧力の低下が抑制されるので、内槽3および外槽5の機械的強度を考慮した、内外槽間空間9の許容最低圧力を維持することが容易になる。
【0032】
本実施形態に係るクールダウン方法において、内槽内空間7の圧力と内外槽間空間9の圧力との差が所定範囲外にある場合に、所定範囲内となるよう内外槽間空間9の圧力を調整してもよい。これにより、内槽3および外槽5の機械的強度を考慮した、内外槽間空間9の許容最低圧力を維持することが一層容易になる。
【0033】
本実施形態に係るクールダウン方法において、内外槽間空間9の温度が第1所定温度以下になった場合に連通路11を閉じてもよい。これにより、内外槽間空間9の温度が過度に低下することが防止される。
【0034】
以上のとおり、図面を参照しながら本開示の好適な実施形態を説明したが、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本開示の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1 液化ガス貯蔵タンク
3 内槽
5 外槽
7 内槽内空間
9 内外槽間空間
11 連通路
29 噴霧器
31 ガス送給装置
CH 冷却用液化ガス
G1 気化ガス
G2 外部水素ガス
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E