(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140804
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ブレードガイド
(51)【国際特許分類】
G21C 19/19 20060101AFI20230928BHJP
G21C 3/33 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G21C19/19 130
G21C3/33 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046829
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】赤池 正則
(72)【発明者】
【氏名】原田 清
(72)【発明者】
【氏名】菊地 義春
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慶太
(72)【発明者】
【氏名】大滝 健斗
(72)【発明者】
【氏名】毛利 亮太
(72)【発明者】
【氏名】小林 希士
(72)【発明者】
【氏名】李 典燦
(72)【発明者】
【氏名】栗原 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】菅野 正行
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 武裕
(72)【発明者】
【氏名】長野 真士
(72)【発明者】
【氏名】菅野 智
(57)【要約】
【課題】
燃料交換中の原子炉炉心において、ブレードガイドを確実に挿入でき、全挿入状態の自立型制御棒の傾きを矯正することができること。
【解決手段】
本発明のブレードガイドは、上記課題を解決するために、断面十字形の制御棒の交差点を挟んで対角に配置され、上端が連結部で連結された2つの制御棒ガイド部から成り、燃料交換中の原子炉炉心内における全挿入状態の制御棒の傾きを矯正するブレードガイドであって、前記制御棒ガイド部は短尺構造であり、かつ、その上端部側面には、前記ブレードガイドを燃料セル内に支持するための上部格子板と干渉し、前記ブレードガイドを鉛直方向に支持する上部格子板つかみ部が設けられていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面十字形の制御棒の交差点を挟んで対角に配置され、上端が連結部で連結された2つの制御棒ガイド部から成り、燃料交換中の原子炉炉心内における全挿入状態の制御棒の傾きを矯正するブレードガイドであって、
前記制御棒ガイド部は短尺構造であり、かつ、その上端部側面には、前記ブレードガイドを燃料セル内に支持するための上部格子板と干渉し、前記ブレードガイドを鉛直方向に支持する上部格子板つかみ部が設けられていることを特徴とするブレードガイド。
【請求項2】
請求項1に記載のブレードガイドであって、
前記上部格子板つかみ部は、隣接している前記燃料セル内の燃料移動及び前記ブレードガイドの移動を妨げないために、隣接している前記燃料セルに突出し、隣接している前記燃料セル内の燃料移動及び前記ブレードガイドに接触しないよう、前記上部格子板方向の長さが制限されると共に、1体の前記制御棒ガイド部の側面のみに設けられていることを特徴とするブレードガイド。
【請求項3】
請求項2に記載のブレードガイドであって、
前記上部格子板つかみ部は、前記ブレードガイドが自重により前記燃料セル内の中央位置にて支持されるようにくさび型に形成されていることを特徴とするブレードガイド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のブレードガイドであって、
前記制御棒ガイド部の先端には、鋭角な形状を持つ制御棒ガイド部先端部が形成されていることを特徴とするブレードガイド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のブレードガイドであって、
前記ブレードガイドの上部には、燃料交換機により原子炉内又は燃料プール内を移動するためのハンドル部が取り付けられており、前記燃料交換機は、前記ハンドル部で前記ブレードガイドを把持し、前記ブレードガイドを前記原子炉内又は前記燃料プール内の指定の位置に移動させることを特徴とするブレードガイド。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のブレードガイドであって、
前記上部格子板によって区切られた前記燃料セルに燃料集合体が装荷され、前記上部格子板によって区切られた前記燃料セルの各々に断面十字形の前記制御棒が挿入されており、断面十字形の前記制御棒が偏った状態で挿入されている前記燃料セルに前記ブレードガイドを挿入して、断面十字形の前記制御棒を前記燃料セルの中央に位置するように矯正することを特徴とするブレードガイド。
【請求項7】
請求項6に記載のブレードガイドであって、
前記ブレードガイドの前記燃料セルへの挿入及び前記ブレードガイドによる断面十字形の前記制御棒の前記燃料セルの中央への矯正の駆動力は、前記ブレードガイドの自重であることを特徴とするブレードガイド。
【請求項8】
請求項5に記載のブレードガイドであって、
前記燃料交換機による前記ブレードガイドを介して、前記燃料プールから前記原子炉内の前記燃料セルへの移動、前記原子炉内の前記燃料セルから別の異なる燃料セルへの移動、前記原子炉内の前記燃料セルから前記燃料プールへの移動を行うものであり、
前記制御棒ガイド部は、前記燃料交換機による前記ブレードガイドの把持の検知が可能な範囲の重量、又は断面十字形の前記制御棒の傾きを矯正するために必要な駆動力を発生させる重量とするために、中身の詰まった先端鋭角な柱型に形成されていることを特徴とするブレードガイド。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のブレードガイドであって、
前記ブレードガイドの全部又は前記制御棒ガイド部の先端部及び端部が、可撓性を持つ素材で構成されていることを特徴とするブレードガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブレードガイドに係り、特に、原子炉への燃料装荷時に制御棒の傾きを矯正するものに好適なブレードガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉の制御棒を燃料セル内の中央部に直立するようセンタリングし、燃料装荷時の燃料集合体と制御棒の干渉を防止して、燃料装荷作業を円滑化するためのブレードガイドの一例として、特許文献1に記載されたセンタリング装置がある。
【0003】
この特許文献1には、吊り上げハンドルを有する横部材と、この横部材の下側に、横部材の長さに沿って配置され、横部材に固着された2つの支持ブロックであって、それぞれ隣接する横部材の端部を超えて延在する外方突出肩部分を有する2つの支持ブロックと、各支持ブロックから下方に懸垂された十字形のブレードとを備え、上記十字形のブレードは、それぞれ角度をつけた下端を有し、これにより十字形のブレードの制御棒を含む炉心の4つの燃料集合体のセルの中への十字形のブレードの下方への進入を容易にしたセンタリング装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)では、前運転サイクルと次運転サイクルとの間の原子炉停止時の作業として、(1)前運転サイクル終了時点で、燃焼度が高く次運転サイクルで使用されない使用済燃料や使用済燃料ではないが、原子炉内の作業の都合から取り出しが必要な一時取出燃料の取り出し、(2)使用済燃料と同数の新燃料及び一時取出燃料の装荷と次サイクル運転の燃料を配置するための燃料移動、(3)炉内構造物が次サイクルの運転で期待した性能を発揮できることを確認するための機器の検査及び機器の取替、等の各種作業が実施される。
【0006】
燃料集合体の原子炉炉心からの取り出し、原子炉炉心への装荷及び原子炉内での燃料移動には、燃料交換機(FHM:Fuel Handling Machine)が使用される。原子炉炉心から取り出された燃料集合体、及びこれから原子炉炉心へ装荷される燃料集合体は、使用済燃料プール(SFP:Spent Fuel Pool)に保管されている。
【0007】
制御棒(CR:Control Rod)は、中性子を吸収することで原子炉の起動、停止、及び運転中の出力調整などを制御する機構である。また、制御棒は十字形の断面形状をしており、隣接する4つの燃料集合体からなる燃料セルの間隙に挿入される。そして、原子炉停止時には、原子炉炉心内の制御棒は、全ての燃料集合体が取り出された燃料セル(空セル)を除く全ての燃料セルに挿入されている。
【0008】
この制御棒は、隣接する燃料集合体との干渉により直立していることから、燃料セルから3つ以上の燃料集合体が取り出されると転倒する恐れがある。燃料集合体の交換時に制御棒の転倒を防ぐためには、制御棒の挿入された燃料セルに少なくとも燃料セル内の対角に2体の燃料集合体が装荷されている(市松状になっている)か、制御棒の転倒を防止するための対角状のブレードガイドが燃料セルに設置されている必要がある。
【0009】
そのため、燃料集合体が4体装荷された燃料セルを空セルにする手順は、燃料集合体を対角に2体取り出す第1の工程、ブレードガイドを燃料セルの対角に設置する第2の工程、残り2体の燃料集合体を取り出す第3の工程、となる。上記の手順の後に、更に空セルからブレードガイドを移動する手順は、制御棒を引抜く第4の工程、ブレードガイドを移動する第5の工程、となる。最後に空セルに燃料集合体を装荷する手順は、上記の手順の後に、ブレードガイドを燃料セルの対角に設置する第6の工程、制御棒を挿入する第7の工程、燃料集合体を対角に2体装荷する第8の工程、ブレードガイドを移動する第9の工程、残りの2体の燃料集合体を装荷する第10の工程、となる。
【0010】
自立型制御棒とは、燃料集合体やブレードガイドによる支持なしに空セル内で自立する制御棒のことである。自立型制御棒は、一般的に、制御棒が上部格子板により支持され空セル内で自立する構造とするため、全挿入状態で制御棒の上端が上部格子板と干渉する取合い関係となるように、制御棒上端のハンドル部を延長した構造を持つ。
【0011】
自立型制御棒を採用する場合、燃料集合体が4体装荷された燃料セルを空セルにする手順は、燃料集合体を4体取り出す工程のみとなる。加えて、空セルからブレードガイドを移動する手順も不要となる。
【0012】
従って、自立型制御棒を採用する場合は、通常の制御棒を採用する場合に比べて、燃料集合体が4体装荷された燃料セルを空セルにする手順から、ブレードガイドの設置、制御棒の引抜、ブレードガイドの移動の手順が省略され、作業が簡略化される。
【0013】
自立型制御棒を採用する場合、空セル内の制御棒の傾きにより、制御棒が傾いた側に燃料を装荷する際に、制御棒と燃料集合体が干渉し、燃料集合体を装荷できないことが懸念される。
【0014】
そのため、燃料集合体を装荷する前に、ブレードガイドを燃料セルの対角に設置し制御棒の傾きを矯正する手順が必要となる。即ち、自立型制御棒を採用する場合、上記の手順(燃料集合体を4体取り出す工程)の後に、空セルに燃料を装荷する手順は、ブレードガイドを燃料セルの対角に設置し制御棒の傾きを矯正する第2の工程、燃料集合体を対角に2体装荷する第3の工程、ブレードガイドを移動する第4の工程、残りの2体の燃料集合体を装荷する第5の工程、となる。
【0015】
従って、自立型制御棒を採用する場合は、通常の制御棒を採用する場合に比べて、空セルに燃料集合体が4体装荷する手順から制御棒の挿入の手順が省略され、作業が簡略化される。
【0016】
通常のブレードガイドは、制御棒の全挿入状態から全引抜状態の全てに渡って制御棒の転倒を防止するため、燃料集合体全長とほぼ等しい長さを持つ。
【0017】
自立型制御棒は、燃料集合体の原子炉炉心からの取り出し、燃料集合体の原子炉炉心への装荷、燃料集合体の原子炉内での移動の全ての過程に渡って全挿入状態である。
【0018】
従って、自立型制御棒に対して用いるブレードガイドは、全挿入状態の制御棒の傾きを矯正するための長さを持てばよいため、一般的なブレードガイドよりも短い長さとすることができる。
【0019】
即ち、後述する
図2の状態(ブレードガイド1を先端が燃料支持金具に達するまで挿入していない状態)であれば、全挿入状態の制御棒2の傾きを矯正できるため、
図2に示すブレードガイド1の長さであれば良い。この
図2のブレードガイド1の長さであれば、一般的なブレードガイドよりは短い。
【0020】
ブレードガイドの長さを短くした場合、ブレードガイドを移動するための移動時間、ブレードガイドを保管するための空間、ブレードガイドを作製するための資材、等が削減される。
【0021】
通常のブレードガイドは、燃料集合体と同様に燃料支持金具に着座し、鉛直方向に支持される。一方で、ブレードガイドの長さを短くした場合、ブレードガイドの先端部が燃料支持金具まで達しないため、通常のブレードガイドとは異なる方法で鉛直方向に支持する必要がある。
【0022】
燃料集合体及びブレードガイドは、燃料交換機により燃料プール及び原子炉炉心を移動する。燃料交換機の操作を自動化し、燃料交換機による燃料集合体又はブレードガイドの移動作業も自動化する場合、燃料交換機による燃料集合体又はブレードガイドの把持状態を自動的に確認することが必要となる。
【0023】
通常のブレードガイドは、燃料集合体と同等の重量を持ち、かつ、操作を自動化可能な燃料交換機は、重量センサにより燃料集合体又は通常のブレードガイドの把持を検知する機能を持つ。
【0024】
ブレードガイドの長さを短くした場合、ブレードガイドの重量が低下し、燃料交換機の重量センサにより把持を検知できない可能性が考えられる。
【0025】
通常のブレードガイドは、制御棒が全引抜された燃料セルに挿入されるが、ブレードガイドを、制御棒が全挿入された燃料セルに制御棒の傾きを矯正するために挿入する場合には、ブレードガイドと制御棒の干渉により、ブレードガイドが挿入できない可能性が考えられる。
【0026】
しかしながら、特許文献1には、ブレードガイドを制御棒が全挿入された燃料セルに制御棒の傾きを矯正するために挿入するときの課題に対しての解決策については、何も記載されていない。
【0027】
そして、燃料集合体の移動及び制御棒の駆動を伴う作業では、原子炉炉心が臨界になることを防ぐために、事前に作業中の未臨界度を評価して、常に一定以上の未臨界度が確保されるように作業計画を作成する必要がある。
【0028】
本発明は上述に点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、燃料交換中の原子炉炉心において、ブレードガイドを確実に挿入でき、全挿入状態の自立型制御棒の傾きを矯正することができるブレードガイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明のブレードガイドは、上記目的を達成するために、断面十字形の制御棒の交差点を挟んで対角に配置され、上端が連結部で連結された2つの制御棒ガイド部から成り、燃料交換中の原子炉炉心内における全挿入状態の制御棒の傾きを矯正するブレードガイドであって、前記制御棒ガイド部は短尺構造であり、かつ、その上端部側面には、前記ブレードガイドを燃料セル内に支持するための上部格子板と干渉し、前記ブレードガイドを鉛直方向に支持する上部格子板つかみ部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、燃料交換中の原子炉炉心において、ブレードガイドを確実に挿入でき、全挿入状態の自立型制御棒の傾きを矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明のブレードガイドの実施例1が採用されている原子力発電所を示す概略構成図である。
【
図2】本発明のブレードガイドの実施例1の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】燃料交換中の原子炉炉心において、ブレードガイドと、制御棒と、燃料集合体とが上部格子板により区切られた燃料セルに配置された状態を示す図である。
【
図4】本発明のブレードガイドの実施例1が燃料交換機を構成するクレーンの管により把持された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図示した実施例に基づいて本発明のブレードガイドを説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例0033】
図1は、本発明のブレードガイド1の実施例1が採用されている原子力発電所15の概略構成を示し、原子力発電所15は、燃料プール16と原子炉炉心17を備えている。
【0034】
図2は、本発明のブレードガイド1の実施例1の概略構成を示し、本実施例のブレードガイド1は、制御棒ガイド部10と、ハンドル部12と、ブレードガイド連結部13と、上部格子板つかみ部14とから構成され、このブレードガイド1が、断面十字形の制御棒2の上端部に挿入された状態を示している。なお、制御棒ガイド部10の下端を、制御棒ガイド部先端部11とする。
【0035】
図3は、燃料交換中の原子炉炉心17において、ブレードガイド1と、断面十字形の制御棒2と、燃料集合体3と、が上部格子板4により区切られた燃料セル7に配置された状態を示している。
【0036】
図4は、ブレードガイド1が燃料交換機を構成するクレーンの管5により把持された状態を示している。
【0037】
最初に、本発明のブレードガイド1の実施例1が採用されている原子力発電所15について、
図1を用いて説明する。
【0038】
原子炉炉心17とは、燃料集合体3を臨界状態とし、核分裂反応によるエネルギーを発生させるための設備であり、運転と運転との間の原子炉停止時には、原子炉炉心17内の燃料集合体3の交換と並べ替えを行う必要がある。
【0039】
燃料プール16とは、主に使用済の燃料集合体3の保管と冷却を行うための設備であり、使用前の燃料集合体3やブレードガイド1についても燃料プール16内に保管される。
【0040】
原子力発電所15において、ブレードガイド1及び燃料集合体3は、原子炉炉心17又は燃料プール16に存在する(
図1の状態)。ブレードガイド1と燃料集合体3の原子炉炉心17と燃料プール16間、又は原子炉炉心17内での移動は、燃料交換機を構成するクレーンの管5に把持されることによって行われる。
【0041】
原子炉炉心17は、上部格子板4によって4体の燃料集合体3が
図3の縦横に2体ずつ格子状に装荷されて、多数の燃料セル7内に分割配置されて構成される。燃料セル7には、最大4体の燃料集合体3に加えて、4体の燃料集合体3の間隙に挿入される十字形の制御棒2が1体、及び燃料集合体3の下側を支持する燃料支持金具6が1体存在する。ブレードガイド1は、1つの燃料セル7に対して最大1体(
図2に示すブレードガイド1が1体)挿入される。
【0042】
なお、本実施例における断面十字形の制御棒2は、特に補足のない限りにおいて、ブレードガイド1や燃料集合体3が存在しない燃料セル7においても、全挿入状態で上部格子板4との干渉により転倒しない、自立型制御棒であるとする。
【0043】
次に、本実施例のブレードガイド1の構造の一例について、
図2を用いて説明する。
【0044】
図2に示すように、本実施例のブレードガイド1は、2つの制御棒ガイド部10a及び10bがブレードガイド連結部13により連結されている。ブレードガイド1の2つの制御棒ガイド部10a及び10bにより、断面十字形の制御棒2は水平方向に支持され、断面十字形の制御棒2の傾きは矯正される。
【0045】
制御棒ガイド部10a及び10bの先端部には、鋭角な形状を持つ制御棒ガイド部先端部11が形成されている。この制御棒ガイド部先端部11で傾いた断面十字形の制御棒2を垂直になるように起こし、2体の制御棒ガイド部10a及び10bの間隙に誘導する。
【0046】
ブレードガイド1の上部には、燃料交換機を構成するクレーンの管5により、原子炉内又は燃料プール16内を移動するためのハンドル部12が取り付けられている。燃料交換機を構成するクレーンの管5は、ハンドル部12にてブレードガイド1を把持し、ブレードガイド1を原子炉内又は燃料プール16内の指定の位置に移動させる。
【0047】
また、制御棒ガイド部10a及び10bは、その上端部側面に上部格子板つかみ部14が取り付けられており、この上部格子板つかみ部14が上部格子板4の上面と干渉することで、ブレードガイド1を鉛直方向に支持でき、上部格子板4から下方に落下することを防止している。
【0048】
また、上部格子板つかみ部14は、ブレードガイド1が自重により燃料セル7内の中央位置にて支持されるために、くさび型の形状を成している。
【0049】
なお、断面十字形の制御棒2にブレードガイド1との干渉よる擦過痕を与えないために、ブレードガイド1の全部又は断面十字形の制御棒2と干渉が想定される制御棒ガイド部先端部11及び端部には、可撓性を持つ素材(例えば、レジン等)を用いると良い。
【0050】
本実施例のブレードガイド1は、制御棒ガイド部10a及び10bが従来に比べて短縮されていることで、制御棒ガイド部先端部11が燃料支持金具6に接触しないため、通常のブレードガイドと異なる方法で、鉛直方向に上部格子板つかみ部14で支持できる。また、本実施例のブレードガイド1は、制御棒ガイド部10a及び10bの側面が上部格子板4の側面と干渉することで、水平方向に保持され燃料セル7の中央位置からのずれや回転が防止される。
【0051】
次に、本実施例のブレードガイド1の果たす機能について、
図3を用いて説明する。
【0052】
図3に示すように、上部格子板4によって区切られた燃料セル7に燃料集合体3を装荷する場合、
図3の右上の燃料セル7aのように、断面十字形の制御棒2が偏った状態で挿入された状態のセルにおいて、燃料集合体3と十字形の制御棒2が干渉して、燃料集合体3が装荷できないことが懸念される。
【0053】
従って、
図3の右下の燃料セル7bのように、ブレードガイド1を燃料セル7bに挿入して、断面十字形の制御棒2を燃料セル7bの中央に位置するように矯正する。
【0054】
ブレードガイド1の燃料セル7への挿入及びブレードガイド1による断面十字形の制御棒2の燃料セル7の中央への矯正の駆動力は、ブレードガイド1の自重である。従って、ブレードガイド1は、必要な駆動力を達成するために必要な重量を持つ。
【0055】
また、本実施例のブレードガイド1は、上部格子板つかみ部14が上部格子板4の上面に接触して鉛直方向に上部格子板4を支持している。上部格子板つかみ部14は、隣接している燃料セル7a、7b、7c、7d内の燃料集合体3及びブレードガイド1の移動を妨げないために、隣接している燃料セル7a、7b、7c、7dに突出し、隣接する燃料セル7a、7b、7c、7d内の燃料集合体3又はブレードガイド1に接触しないよう、上部格子板4方向の長さが制限されると共に、1体の制御棒ガイド部10a又は10bの1面にのみに設けられる構造とを持つ。
【0056】
図3の左下の燃料セル7cのように、ブレードガイド1と断面十字形の制御棒2が挿入された燃料セル7cに燃料集合体3を装荷する際には、燃料集合体3とブレードガイド1が干渉しないため、ハンドル部12及びブレードガイド連結部13は、厚さが制限された構造を持つ。
【0057】
図3の左上の燃料セル7dのように、燃料集合体3が対角に2体以上装荷された燃料セル7において、断面十字形の制御棒2は燃料集合体3との干渉により、ブレードガイド1による支持なしに、燃料セル7dの中央位置に矯正される。
【0058】
最後に、本実施例のブレードガイド1の原子炉内又は燃料プール16内での移動方法について、
図4を用いて説明する。
【0059】
本実施例のブレードガイド1は燃料交換機を構成するクレーンの管5により、燃料プール16から原子炉内の燃料セル7への移動と、原子炉内の燃料セル7から別の異なる燃料セルへの移動と、原子炉内の燃料セル7から燃料プール16への移動とを行う。燃料交換機の操作を自動化し、燃料交換機を構成するクレーンの管5による燃料集合体3又はブレードガイド1の移動作業を合理化する場合、燃料交換機を構成するクレーンの管5によるブレードガイド1の把持状態を自動的に確認することが必要となる。
【0060】
一般的に操作を自動化可能な燃料交換機は、重量センサにより燃料集合体3の把持を検知する機能を持つ。燃料交換機を構成するクレーンの管5による把持の検知を可能とするため、ブレードガイド1は、中身の詰まった先端が鋭角な柱型の制御棒ガイド部10a及び10bを持ち、燃料集合体3と同等の重量を持つ。
【0061】
このような本実施例によれば、燃料交換中の原子炉炉心17において、ブレードガイド1を確実に挿入でき、全挿入状態の自立型制御棒の傾きを矯正することができる。また、ブレードガイド1を移動するための移動時間、ブレードガイド1を保管するための空間、ブレードガイド1を作製するための資材等が削減される。
【0062】
なお、本発明は、上述した実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【0063】
例えば、上記実施例では自立型制御棒との併用を例に説明したが、本発明のブレードガイドが対象とする制御棒は、自立型制御棒に限らず適切に手順を見直すことで、他の型の制御棒にも適用することができる。
【0064】
また、本発明のブレードガイドは、通常のブレードガイドから全て置き換える場合に限られず、通常のブレードガイドと併用することが可能である。即ち、通常の制御棒と自立型制御棒が混在する原子炉炉心において、通常の制御棒が用いられた燃料セルに対しては通常のブレードガイドを適用し、自立型制御棒が用いられた燃料セルに対しては本発明のブレードガイドを適用することも可能である。また、通常の制御棒が用いられた燃料セルであっても、制御棒の引き抜き及びブレードガイドの移動との手順が省略可能な空セルについては、通常のブレードガイドに代わり、本発明のブレードガイドを適用することも可能である。
1…ブレードガイド、2…断面十字形の制御棒、3…燃料集合体、4…上部格子板、5…燃料交換機を構成するクレーンの管、6…燃料支持金具、7、7a、7b、7c、7d…燃料セル、10、10a、10b…制御棒ガイド部、11…制御棒ガイド部先端部、12…ハンドル部、13…ブレードガイド連結部、14…上部格子板つかみ部、15…原子力発電所、16…燃料プール、17…原子炉炉心。