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  • 特開-粘着シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140835
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230928BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230928BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20230928BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J133/00
C09J11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046873
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河村 明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴紀
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA02
4J004AA04
4J004AA05
4J004AA10
4J004AA14
4J004AA15
4J004AB01
4J004CA02
4J004CA03
4J004CA04
4J004CA06
4J004CA08
4J004CB02
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004DA02
4J004DA03
4J004DB02
4J040BA192
4J040BA202
4J040DF001
4J040DN032
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA26
4J040LA07
4J040MA10
4J040MB09
4J040PA23
(57)【要約】
【課題】多層粘着シートにおける層間の粘着付与剤の移行を抑制する粘着シートを提供する。
【解決手段】基材、第1の粘着剤層、および第2の粘着剤層をこの順に有する粘着シートであって、前記第1の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)は、前記第2の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)よりも少なく、ガラス転移温度が10℃以上であり、かつ、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリウレタン系樹脂からなる群から選択される樹脂を主成分とするブロック層が前記第1の粘着剤層および前記第2の粘着剤層の間に配置されてなる、粘着シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、第1の粘着剤層、および第2の粘着剤層をこの順に有する粘着シートであって、
前記第1の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)は、前記第2の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)よりも少なく、
ガラス転移温度が10℃以上であり、かつ、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリウレタン系樹脂からなる群から選択される樹脂を主成分とするブロック層が前記第1の粘着剤層および前記第2の粘着剤層の間に配置されてなる、粘着シート。
【請求項2】
前記第1の粘着剤層および前記第2の粘着剤層に含まれる粘着剤が、ゴム系粘着剤および/またはアクリル系粘着剤である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記第2の粘着剤層に含まれる粘着付与剤が、脂環族系石油樹脂、テルペン系樹脂、およびロジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記ブロック層の厚さが5μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の目的から、被着体側の粘着剤層中の粘着付与剤の含有量と、基材側の粘着剤層中の粘着付与剤の含有量とに傾斜をかける場合がある。例えば、特許文献1では、ポリオレフィンの被着体に対して良好な接着性を示し、かつ比較的低量の粘着付与剤を有するアクリル系ポリマーを含有する粘着剤層を提供することを目的として、基材、-10℃以下のTgを有するアクリル系ポリマーを含む粘着付与剤不含粘着剤層、および粘着付与剤及び-10℃のTgを有する1つ以上の炭化水素ポリマーを含む粘着付与剤含有粘着剤層を含む、粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016-514184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように粘着付与剤の含有量が異なる粘着剤層の積層体において、粘着付与剤の層間移動、具体的には、粘着付与剤の含有量が多い層から濃度勾配によって粘着付与剤の含有量の少ない層に粘着付与剤が移行すると、所望の効果が発揮されないこととなる。
【0005】
したがって、本発明は、多層粘着シートにおける層間の粘着付与剤の移行を抑制する粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材、第1の粘着剤層、および第2の粘着剤層をこの順に有する粘着シートであって、前記第1の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)は、前記第2の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)よりも少なく、ガラス転移温度が10℃以上であり、かつ、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリウレタン系樹脂からなる群から選択される樹脂を主成分とするブロック層が前記第1の粘着剤層および前記第2の粘着剤層の間に配置されてなる、粘着シートである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粘着シートによれば、多層粘着シートにおける層間の粘着付与剤の移行を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の粘着シートの一態様を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、基材、第1の粘着剤層、および第2の粘着剤層をこの順に有する粘着シートであって、前記第1の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)は、前記第2の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)よりも少なく、ガラス転移温度が10℃以上であり、かつ、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリウレタン系樹脂からなる群から選択される樹脂を主成分とするブロック層が前記第1の粘着剤層および前記第2の粘着剤層の間に配置されてなる、粘着シートである。
【0010】
本発明では、被着体側に接する(貼付面である)第2の粘着剤層に粘着付与剤が相対的に多く存在する。粘着付与剤は、例えば、低極性被着体への粘着性向上のために配合されるため、被着体側の粘着剤層面に粘着付与剤を多く存在させることで、低極性被着体に対する粘着シートの高い粘着性を担保しつつ、粘着付与剤の使用量を少なくすることができる。一方、本発明者らは、粘着付与剤を単に被着体側に相対的に多く含有するだけでは、所望の効果が得られにくい(例えば、低極性被着体への粘着性が予測よりも低い)ことを知見した。この理由として、製造時には、被着体側の粘着剤層に粘着付与剤を多く配合しても、粘着付与剤が粘着剤層内での濃度勾配により拡散し、被着体側の粘着剤層面に存在する粘着付与剤の含有濃度(質量%)が製造時の配合量よりも少なくなるためであると推測した。そして、当該推測の元、基材側の粘着剤層に粘着付与剤が移行しないように、ブロック層を設けることにより、上記問題点を解決した。なお、上記推測は本発明の技術的範囲を制限するものではない。
【0011】
ブロック層は、粘着付与剤の移行を抑制するために、特定の樹脂、すなわち、ガラス転移温度が10℃以上であり、かつ、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリウレタン系樹脂からなる群から選択される樹脂を主成分とする。
【0012】
以下、本実施形態の詳細を説明する。
【0013】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性の測定等は、室温(20~25℃)/相対湿度45~55%RHの条件で行う。また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸またはメタクリル酸」を指し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートまたはメタクリレート」を指す。
【0014】
なお、シートの概念には、テープ、ラベル、フィルム等と称されるものが包含される。
【0015】
図1は、本発明の粘着シートの一態様を示す断面模式図である。なお、図面は説明の便宜上誇張されて表現されており、図面における各構成要素の寸法比率が実際とは異なる場合がある。図1において、粘着シート10は、基材20、第1の粘着剤層30、ブロック層40、第2の粘着剤層50、および剥離ライナー60から構成される。剥離ライナー60は、粘着シート10が被着体に貼付されるまで、第2の粘着剤層にごみなどの付着物が付着することを防止するために形成される。ゆえに、剥離ライナー60は、被着体にシートを貼付する際には剥離される。
【0016】
第2の粘着剤層は、被着体に貼付する際に被着体に対して粘着性を発現する粘着剤層である。よって、第2の粘着剤層は、貼付する際には最表層となる(貼付前は、上記の通り、通常剥離ライナーによって、保護されている)。そして、第2の粘着剤層は、例えば、低極性被着体に対する粘着性を担保させるために、比較的多くの粘着付与剤が配合される。一方、第1の粘着剤層は、例えば基材に隣接して配置されるため、第1の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度は、第2の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度より少なくてよい。
【0017】
また、第1の粘着剤層は、図1の形態においては基材に直接貼付される粘着剤層であるが、基材に隣接して配置される形態に限定されず、基材と第1の粘着剤層との間に易接着層等の他の機能層や他の粘着剤層が配置されていてもよい。
【0018】
以下、粘着シートを構成する各層の構成について説明する。
【0019】
(第1の粘着剤層および第2の粘着剤層)
第1の粘着剤層および第2の粘着剤層は、それぞれ粘着剤を含む。以下、第1の粘着剤層に含まれる粘着剤を第1の粘着剤、第2の層に含まれる粘着剤を第2の粘着剤とする。また、第1の粘着剤および第2の粘着剤をまとめて粘着剤とも称する。
【0020】
粘着剤としては、特に限定されず、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などを用いることができる。上記粘着剤は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0021】
第1の粘着剤および第2の粘着剤は同一であっても異なるものであってもよい。
【0022】
第1の粘着剤層における第1の粘着剤の含有量は、特に制限されるものではないが、70質量%以上(上限100質量%)であることが好ましく、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上であってもよい。
【0023】
第2の粘着剤層における粘着剤の含有量は、特に制限されるものではないが、60~99.9質量%であることが好ましく、70~99質量%であることがより好ましく、75~98質量%であることがさらにより好ましく、80~95質量%であることが特に好ましい。
【0024】
第2の粘着剤は、粘着付与剤を添加することによる粘着力向上効果がより発現しやすいことから、ゴム系粘着剤および/またはアクリル系粘着剤であることが好ましく、アクリル系粘着剤であることがより好ましい。また、第1の粘着剤も第2の粘着剤と同じものであることが好ましく、この点で、(第1および第2の)粘着剤は、ゴム系粘着剤および/またはアクリル系粘着剤であることが好ましく、アクリル系粘着剤であることがより好ましい。
【0025】
アクリル系粘着剤を構成するアクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とし、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体(共重合性単量体)を用いることにより形成される。ここで、主成分とは、単量体中50質量%以上(上限100質量%)であることを指し、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単量体全体に対する含有割合は、好ましい順に、65質量%以上、85質量%以上、90質量%以上である。
【0026】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な共重合性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体またはその無水物;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレートなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;ジアセトンアクリルアミド、アクリル酸アセトアセトキシメチルなどのジケト基含有単量体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な共重合性単量体としては、単量体全量に対して、10質量%以下であることが好ましい。
【0028】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な共重合性単量体として、カルボキシル基含有単量体を含む形態は、粘着性向上の観点から、好適である。カルボキシル基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、およびオレイン酸などが挙げられる。カルボキシル基含有単量体の含有量は、アクリル系重合体を製造する際に用いられる単量体混合物中、0.1~5質量%であることが好ましく、0.3~3質量%であることがより好ましい。
【0029】
アクリル系重合体の重量平均分子量は特に限定されるものではなく、例えば、10万~500万である。
【0030】
アクリル系重合体の製造方法は、特に制限されず、重合開始剤を使用する溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法など従来公知の方法を用いることができる。また、重合開始剤により重合を開始させる方法の他に、放射線、電子線、紫外線等を照射して重合を開始させる方法を採用することもできる。中でも本発明の効果が一層奏されることから、乳化重合法を用いることが好ましい。すなわち、本発明の好適な実施形態は、アクリル系重合体がエマルジョン系重合体である。
【0031】
乳化重合法としては、例えば、上述の単量体を含む単量体混合物に、乳化剤および重合開始剤を添加し、乳化重合する方法が挙げられる。
【0032】
なお、乳化重合において、重合安定性の観点から、単量体混合物は、乳化剤(または乳化剤の一部)を、単量体混合物に溶解しておくか、または、予めO/W型の乳化液の状態としておくことが好ましい。
【0033】
乳化重合を行う際の手順としては、例えば、以下の(1)~(3)の方法が挙げられる。
(1)単量体混合物、乳化剤、水等の全量を仕込み、昇温し、水に溶かした重合開始剤を全量滴下または分割添加して、重合する。
(2)反応容器内に水、乳化剤、単量体混合物の一部を仕込み、昇温した後、水に溶かした重合開始剤を滴下または分割添加して重合反応を進行させた後、残りの単量体混合物を全量滴下または分割添加して重合を継続する。
(3)反応容器内に水に溶かした重合開始剤を仕込んでおき昇温した後、単量体混合物、乳化剤、および水からなる乳化液を全量滴下または分割添加して重合する。
【0034】
乳化剤としては、特に制限は無いが、エマルジョン系重合体の分散安定性を向上させる観点から、アニオン系乳化剤またはノニオン系乳化剤が好ましく、アニオン系乳化剤がより好ましい。
【0035】
アニオン系乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩、アリルアルキルスルホコハク酸エステル塩等が挙げられる。また、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
乳化剤の添加量としては、乳化重合反応の安定性の観点、および、未反応の乳化剤が残存することによる物性低下を防ぐ観点から、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.5~12質量部、より好ましくは0.8~8質量部、更に好ましくは1~6質量部である。
【0037】
なお、乳化剤は、単量体混合物に水を加えた溶液に直接添加してもよく、予め重合容器に添加しておいてもよく、またはそれらを併用してもよい。
【0038】
重合開始剤としては、水溶性、油溶性のいずれであってもよく、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド等のアゾ系化合物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物等が挙げられ、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせや、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせ等からなるレドックス開始剤を用いてもよい。重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、重合安定性に優れているという観点から、過硫酸塩またはレドックス開始剤が好ましい。
【0039】
重合開始剤の添加量としては、重合速度を速める観点から、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.01~6質量部、より好ましくは0.03~4質量部、さらに好ましくは0.05~2質量部である。
【0040】
なお、重合開始剤は、予め反応容器内に加えておいてもよく、重合開始直前に加えてもよく、重合開始後に複数回に分けて加えてもよく、単量体混合物中に予め加えておいてもよく、該単量体混合物からなる乳化液を調製後、当該乳化液に加えてもよい。
【0041】
また、乳化重合時に、公知の連鎖移動剤やpH緩衝剤をさらに添加してもよい。
【0042】
乳化重合に際し、用いる水としては、イオン交換水が好ましい。水の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは30~400質量部、より好ましくは35~200質量部、更に好ましくは40~150質量部である。
【0043】
乳化重合により得られたエマルジョン系重合体分散液に対して、さらに、アンモニア水、各種水溶性アミン、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液を添加して、pH5~9(好ましくはpH6~8.5)に調整してもよい。
【0044】
エマルジョン系重合体分散液の固形分濃度は、好ましくは10~80質量%、より好ましくは25~70質量%、更に好ましくは45~65質量%である。
【0045】
エマルジョン系重合体は、エマルジョン系重合体が分散しているエマルション形状(粒子形状)を有する。この際、エマルジョン系重合体の平均粒子径は、好ましくは50~500nmであり、より好ましくは100~300nmである。ここで、エマルジョン系重合体の平均粒子径は、レーザー回折分散法により測定される体積基準のメジアン径である。
【0046】
ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム、天然ゴムに(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、(メタ)アクリロニトリルから選ばれる1種又は2種以上の単量体をグラフト重合させた変性天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系ホモポリマー、ポリスチレン-ポリブタジエン、ポリスチレン-ポリイソプレン等のジエン系コポリマー、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル-ブタジエンゴム、ウレタンゴム、ポリイソブチレン系樹脂、ポリブテン樹脂等が挙げられる。
【0047】
第1の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)は、第2の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)よりも少ない。
【0048】
具体的には、第1の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)は、第2の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)の1/2以下であることが好ましく、1/10以下であることがより好ましい。
【0049】
粘着剤層中の粘着付与剤の添加量を低減できることから、第1の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)は、10質量%以下(下限0質量%)であることが好ましく、5質量%以下(下限0質量%)であることがより好ましく、3質量%以下(下限0質量%)であることがさらにより好ましい。なお、第1の粘着剤組成物に粘着付与剤を添加しない場合であっても、ごくわずかには第2の粘着剤層からの粘着付与剤の移行を避けることは難しく、ゆえに、第1の粘着剤組成物への粘着付与剤の添加量に比して、第1の粘着剤層における粘着付与剤の含有量は多くなる傾向にある。
【0050】
被着体(特に低極性被着体)への接着性能を考慮すると、第2の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)は、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらにより好ましい。また、粘着剤への相溶性を考慮すると、第2の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)は、粘着剤層中、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
なお、粘着剤層中の粘着付与剤の含有濃度(質量%)は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)を使用し、粘着剤層のスペクトル内における粘着付与剤由来のピークの強度を確認することによって測定することができる。
【0052】
各粘着剤層に含まれる粘着付与剤としては、特に制限されず、脂環族系石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。好適な一実施形態としては、粘着剤(特にアクリル系粘着剤やゴム系粘着剤)との相溶性の観点から、第2の粘着剤層に含まれる粘着付与剤が、脂環族系石油樹脂、テルペン系樹脂、およびロジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0053】
石油樹脂とは、石油類のスチームクラッキングによるエチレン類の製造の際に副生する分解油の、留分中のジオレフィン及びモノオレフィン類を、公知の方法で重合して得られるものである。留分がイソプレン、1,3-ペンタジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエンなどのC5留分を原料とするものがC5系石油樹脂であり、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデン、アルキルインデン、ジシクロペンタジエンなどのC9留分を原料とするものがC9系石油樹脂である。
【0054】
脂環族系石油樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂を環化二量体化した後重合させた脂環式炭化水素系樹脂、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン、エチリデンビシクロヘプテン、ビニルシクロヘプテン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、リモネンなど)の重合体又はその水素添加物、C9系石油樹脂またはC5/C9系樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂などが挙げられる。
【0055】
脂環族系石油樹脂は、市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、アルコン(登録商標)シリーズ(アルコン(登録商標)P-90、P-100、P-115、P-125、P-140、M-90、M-100、M-115、M-135(以上、荒川化学工業社製))、Quintone(登録商標)シリーズ(Quintone(登録商標)1105、1325、1340、TD-401、1500、1525L、1920、2940など)(以上、日本ゼオン社製)などが挙げられる。
【0056】
脂環族系石油樹脂は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0057】
テルペン系樹脂としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、これらを水素化した水添テルペンフェノール樹脂などが挙げられ、中でもテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂が好ましい。
【0058】
テルペン系樹脂は、市販品を用いてもよい。テルペン樹脂としては、YSレジン(登録商標)PX1250、PX1150、PX1000、PX800、PX1150N、PX300N(以上、ヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。テルペンフェノール樹脂としては、YSポリスター(登録商標)U130、U115、T160、T145、T130、T115、T100、T80、T30、S145、G150、G125、N125、K125、TH130(以上、ヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、YSレジン(登録商標)TO125、TO115、TO105、TO85(以上、ヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。水添テルペンフェノール樹脂としては、YSポリスター(登録商標)UH115(以上、ヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
【0059】
テルペン系樹脂は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0060】
ロジン系樹脂としては、天然ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、および不均化ロジンエステルなどが挙げられる。これらは市販品を用いてもよい。また、ロジン系樹脂は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0061】
粘着付与剤の添加方法は、特に制限されない。例えば、好適な形態である、アクリル系重合体を乳化重合法によって得る形態においては、例えば、(1)重合開始前の単量体混合物、乳化剤、水等に粘着付与剤を添加した後、単量体を重合する方法;(2)粘着付与剤、乳化剤および水等を用いて、粘着付与剤の乳化液を作製し、当該乳化液を用いて粘着剤組成物に配合する方法;などが挙げられる。上記で用いられる乳化剤は、アクリル系重合体の乳化重合の欄に記載した乳化剤等を適宜用いることができる。
【0062】
各粘着剤層は、粘着剤、粘着付与剤、その他の添加剤を含む粘着剤組成物から形成される。本発明の他の好適な態様は、第1の粘着剤層は、第1の粘着剤組成物から形成され、第2の粘着剤層は、第2の粘着剤組成物から形成され、第1の粘着剤組成物に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)は、第2の粘着剤層形成用組成物に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)よりも少ない。
【0063】
粘着剤層中の粘着付与剤の添加量を低減できることから、第1の粘着剤組成物に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)は、10質量%以下(下限0質量%)であることが好ましく、5質量%以下(下限0質量%)であることがより好ましく、3質量%以下(下限0質量%)であることがさらにより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
【0064】
また、被着体(特に低極性被着体)への接着性能を考慮すると、第2の粘着剤組成物に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)は、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらにより好ましい。また、粘着剤への相溶性を考慮すると、第2の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)は、粘着剤層中、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0065】
第1の粘着剤組成物に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)は、第2の粘着剤組成物に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)よりも少ない。
【0066】
具体的には、第1の粘着剤組成物に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)は、第2の粘着剤組成物に含まれる粘着付与剤の含有濃度(質量%)の1/2以下であることが好ましく、1/10以下であることがより好ましい。
【0067】
各粘着剤層を形成するための粘着剤組成物は、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、公知の架橋剤が使用できる。例えば、以下に制限されないが、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤などが挙げられる。なお、粘着剤組成物が架橋剤を含まない形態も好適である。
【0068】
架橋剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0069】
架橋剤を添加する場合、架橋剤の添加量は、例えば、組成物がアクリル系重合体を含む場合、アクリル系重合体100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.3~5質量部であることがより好ましい。
【0070】
粘着剤組成物は、従来公知のその他の添加剤をさらに含みうる。かような添加剤としては、例えば、充填剤、顔料、紫外線吸収剤、濡れ剤、防腐剤などが挙げられる。充填剤としては、例えば、亜鉛華、シリカ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0071】
各粘着剤層の厚み(乾燥後膜厚)は、通常5~100μm、好ましくは5~50μmである。また、各粘着剤層の厚みは異なるものであってもよいし、同じであってもよい。例えば、第2の粘着剤層を第1の粘着剤層よりも薄くすることで、粘着付与剤の使用量を減らすことができる。
【0072】
(ブロック層)
ブロック層は樹脂を主成分として含む。ここで主成分とは、ブロック層中、50質量%以上(上限100質量%)であることを指し、75質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがさらにより好ましい。
【0073】
ブロック層に含まれる樹脂のガラス転移温度は10℃以上である。ガラス転移温度が10℃以上であると、各粘着剤層中に含まれる粘着付与剤の泳動性が抑制され、粘着付与剤の移行が抑制される。上記ガラス転移温度は、移行抑制の観点から、25℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。また、上記ガラス転移温度は、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度は、JIS K 7121-2012に準じて測定することができる。具体的には、ガラス転移温度は、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計「DSC Q2000」を用い、窒素雰囲気下、測定温度範囲-50~150℃、昇温速度10℃/分の条件で測定することができる。
【0074】
ブロック層に含まれる樹脂は1種単独であっても2種以上併用されていてもよい。ブロック層に含まれる樹脂が2種以上である場合のガラス転移温度は、混合された樹脂のガラス転移温度がブロック層に含まれる樹脂のガラス転移温度となる。
【0075】
ブロック層に含まれる樹脂は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリウレタン系樹脂からなる群から選択される。これらの樹脂は、粘着付与剤との相溶性が悪く、粘着付与剤のブロック層への侵入を抑制することができる。また、これらの樹脂を用いたブロック層は、粘着剤層との密着性も良好である。中でも、本発明の効果の点から、ブロック層に含まれる樹脂は、ポリエステル系樹脂であることが好ましい。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0076】
ポリエステル系樹脂は、単量体としてのポリオールと多価カルボン酸および/またはカルボン酸無水物(本実施形態において「カルボン酸成分」ともいう。)とが共重合してなるエステル結合を主鎖中に有する重合体である。
【0077】
上記のポリオールの具体例として、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、グリセリン、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0078】
上記のカルボン酸成分の具体例として、マロン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、グルタル酸、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、デカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、シクロペンタンジカルボン酸等の多価カルボン酸およびこれらの多価カルボン酸の無水物が挙げられる。
【0079】
これらのポリオールおよびカルボン酸成分の組み合わせは限定されない。
【0080】
さらに、ポリエステル系樹脂は、ウレタン変性ポリエステルなど変性されていてもよい。ウレタン変性ポリエステルの具体例として、上記のポリオールとカルボン酸成分とを縮重合させて得られた重合体の末端にヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールに、各種のポリイソシアネート化合物を反応させて得られた重合体(ポリエステルウレタン)などを挙げることができる。本実施形態において、ポリエステル、ウレタン変性ポリエステルなど、エステル結合を主鎖中に有する樹脂材料をポリエステル系樹脂という。
【0081】
ポリエステル系樹脂は水性であってもよい。
【0082】
「水性ポリエステル系樹脂」は、水性溶媒に溶解して水溶液の形態をとり得るポリエステル系樹脂、もしくは、水性溶媒中にエマルジョンとして分散した水分散体の形態をとり得るポリエステル系樹脂を意味する。このような「水性」のポリエステル系樹脂を用いることで、塗工時の揮発性有機化合物排出量の削減が可能である。ここで、水性溶媒とは水を60質量%以上(上限100質量%)含有されたものを指し、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上であり、最も好ましくは95質量%以上である。
【0083】
水性溶媒中に含まれる水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができる。水に溶解する有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテルなどが挙げられる。
【0084】
なお、本発明の一態様において、水中で水性ポリエステル系樹脂のエマルジョンとして分散した水分散体とするために、本発明の効果を損なわない範囲において、少量の乳化剤や界面活性剤等を用いてもよい。
【0085】
ただし、乳化剤や界面活性剤等の低分子量成分は、ブロック層中で局在化することで、接着性が低下し、層間密着性の低下の原因となる場合がある。当該現象を抑制する観点から、本発明の一態様において、水性ポリエステル系樹脂は、自己乳化型の水性ポリエステル系樹脂(例えば、自己乳化型の水分散型ポリエステル系樹脂)であることが好ましい。
【0086】
自己乳化型の水性ポリエステル系樹脂であれば、層間密着性の低下の原因となる乳化剤や界面活性剤等の低分子量成分を使用せずにエマルジョンを形成することもできるため、得られる粘着シートの層間密着力をより向上させることができる。なお、「自己乳化型」とは、樹脂骨格に何らかの親水性基を化学的に導入し、乳化剤や界面活性剤の添加を必要とせず、樹脂自体が乳化能を有することを意味する。
【0087】
ポリエステル系樹脂の水酸基価は、2mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは4mgKOH/g以上、さらにより好ましくは6mgKOH/g以上、特に好ましくは8mgKOH/g以上である。水酸基価が上記下限以上であることで、粘着付与剤の移行が一層低減できる。ポリエステル系樹脂の水酸基価は、JIS K 0070-1992に準拠して測定した値である。ポリエステル系樹脂の水酸基価の上限は、例えば、30mgKOH/g以下である。
【0088】
ポリエステル系樹脂の数平均分子量(Mn)としては、水性の場合、水への溶解性又は分散性を良好とし、粘着剤層などとの層間密着性を向上させる観点から、好ましくは1,000~30,000、より好ましくは3,000~25,000、更に好ましくは5,000~20,000である。
【0089】
なお、本発明において、数平均分子量(Mn)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には以下に記載の方法に基づいて測定した値である。
【0090】
数平均分子量(Mn)
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー社製、製品名「HLC-8320」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いる。
・カラム:「TSK guard column super H-H」「TSK gel super HM-H(×2)」「TSK gel super H2000」(いずれも東ソー社製)
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とし、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体(共重合性単量体)を用いることにより形成される樹脂が好ましい。ここで、主成分とは、単量体中50質量%以上(上限100質量%)であることを指し、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単量体全体に対する含有割合は、好ましい順に、65質量%以上、85質量%以上、90質量%以上である。
【0091】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル系樹脂のガラス転移温度を10℃以上にするため、単独重合体のガラス転移温度が高い単量体を含むことは好ましい一形態である。単独重合体のガラス転移温度が高い単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル等が挙げられ、これらの単量体を(メタ)アクリル酸アルキルエステルの全量中、例えば、合計で40~80質量%含むことができる。ただし、アクリル系樹脂のガラス転移温度が10℃以上になる限り、他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含んでもよい。
【0092】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な共重合性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体またはその無水物;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレートなどの水酸基含有単量体;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;ジアセトンアクリルアミド、アクリル酸アセトアセトキシメチルなどのジケト基含有単量体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
本発明においては、ガラス転移温度が10℃以上となるように、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な共重合性単量体が選択されてもよい。中でも、アクリル系樹脂の極性を高め、粘着付与剤をより移行させにくくする観点から、カルボキシル基含有単量体や水酸基含有単量体、アミド基含有単量体、アミノ基含有単量体を用いることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な共重合性単量体の含有割合は、単量体全量に対して、例えば、0.05~5.0質量%である。
【0094】
アクリル系樹脂は水分散体であってもよい。
【0095】
アクリル系樹脂の水分散体は、水性溶媒中にエマルジョンとして分散した水分散体の形態である。このような水分散体を用いることで、塗工時の揮発性有機化合物排出量の削減が可能である。
【0096】
水性溶媒中にエマルジョンとして分散した水分散体の形態については、粘着剤の欄で説明したような乳化重合法によるエマルジョン系重合体と同様である。
【0097】
アクリル系樹脂の数平均分子量(Mn)としては、水性の場合、水への溶解性又は分散性を良好とし、粘着剤層などとの層間密着性を向上させる観点から、好ましくは3,000~500,000、より好ましくは5,000~200,000、さらにより好ましくは10,000~100,000である。
【0098】
アクリル系樹脂は、単量体成分を重合して得られた重合体を架橋剤で架橋させた重合体であってもよい。架橋剤としては、上記粘着剤層の欄で例示したものが挙げられる。
【0099】
ポリウレタン系樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリオールと、多官能イソシアネート系化合物とを反応させることによって製造することができる。
【0100】
ポリエステルポリオールは、例えば、ポリカルボン酸等の酸成分とグリコール成分またはポリオール成分から合成されうる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の酸成分と、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、プロピレングリコール等のグリコール成分またはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール成分と、を反応させて得られるものが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、ポリカプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等も挙げられる。ポリエステルポリオールの分子量は、1,000~6,000であることが好ましい。
【0101】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば多価アルコールのポリアルキレングリコール付加物が好ましく用いられる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール(テトラメチレングリコール)、ネオペンチルグリコール等の脂肪族二価アルコール;グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール、ペンタメチルグリセリン、ペンタグリセリン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、トリメチロールプロパン等の三価アルコール;エリスリトール、ペンタエリスリトール、1,2,3,4-ペンタンテトラオール、2,3,4,5-ヘキサンテトラオール、1,2,3,5-ペンタンテトラオール、1,3,4,5-ヘキサンテトラオール等の四価アルコール;アドニトール、アラビトール、キシリトール等の五価アルコール;ソルビトール、マンニトール、イジトール等の六価アルコール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールの分子量は、1,000~6,000であることが好ましい。
【0102】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ジオール等のポリオールモノマーと、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどのカーボネート類とを反応して得られるものが好ましく用いられる。ポリオールモノマーとしては、上記例示した多価アルコール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘプタンジオール、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)-1,4-ジオキサン、2,7-ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、イソソルビドなどの脂環式構造を有するポリオールモノマー;1,4-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,2-ベンゼンジメタノール、4,4’-ナフタレンジメタノール、3,4’-ナフタレンジメタノールなどの芳香族ポリオールモノマー等が挙げられる。
【0103】
多官能イソシアネート系化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート三量体付加物等が挙げられる。
【0104】
ポリウレタン樹脂の分子量を調整するために、鎖延長剤をポリウレタン樹脂製造時に使用してもよい。鎖延長剤としては、例えば、エチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン等のポリアミン;エチレングリコール、プロピレングリコール等のポリオール;ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0105】
ポリウレタン系樹脂は水分散体であってもよい。
【0106】
ポリウレタン系樹脂の水分散体は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させて得られるポリウレタンを水中に分散させたものであり、必要に応じてジオール、ジアミン等のような2個以上の活性水素をもつ低分子量化合物である鎖伸長剤の存在下で鎖伸長し、水中に安定に分散もしくは溶解させたものである。水分散体とはウレタン樹脂に親水基や親水セグメントを付与し自己分散させたポリウレタンディスパージョン、疎水性のウレタン樹脂を界面活性剤により強制的に乳化させたポリウレタンエマルジョン、水に溶解した水溶性ウレタン樹脂等がある。特に自己分散させたポリウレタンディスパージョンが好ましい。ポリウレタン樹脂は特に限定されず、アセトン法、プレポリマー法等通常のポリウレタン樹脂の水性化技術を利用して調製したものを用いることができる。
【0107】
ウレタン系樹脂の数平均分子量(Mn)としては、水性の場合、水への溶解性又は分散性を良好とし、粘着剤層などとの層間密着性を向上させる観点から、好ましくは10,000~200,000、より好ましくは30,000~150,000である。
【0108】
ブロック層の厚さは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらにより好ましい。ブロック層は、粘着付与剤の移行を抑制する目的であるため、基材のような機械的特性は要しない。このため、粘着付与剤の移行を抑制することができる限り、極力薄いことが好ましい。ブロック層の厚さは、効果の発現の点から、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。
【0109】
(基材)
基材としては、特に制限はなく、粘着シートの支持基材として用いられている各種の基材を使用することができる。基材としては、樹脂基材;樹脂から構成されるいわゆる合成紙;銅、アルミニウム、ステンレス等の金属箔、金属箔とプラスチックフィルムとを積層した複合シート基材、アルミニウムやシリカ等を蒸着した蒸着箔基材、不織布基材、または、上質紙、クラフト紙、グラシン紙、アート紙、コート紙、感熱発色紙、防湿加工紙等の紙基材等が挙げられる。中でも、基材は、樹脂基材、合成紙、または紙基材であることが好ましい。好適な形態である樹脂基材を構成する樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィン樹脂等を挙げることができる。
【0110】
本実施形態では、基材側の粘着剤層の粘着付与剤の量が相対的に低いため、基材は低極性の基材以外のものが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリエチレンナフタレートなどのポリエステルなどが挙げられる。中でも、機械的強度が高く、耐熱性等にも優れることから、基材はポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0111】
基材の厚みについては、特に制限はないが、機械的特性の観点からは、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがさらにより好ましい。また、薄膜化の観点からは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらにより好ましい。
【0112】
(剥離ライナー)
剥離ライナーは、粘着剤層を保護し、粘着性の低下を防止する機能を有する部材である。そして、剥離ライナーは、被着体に貼付する際に粘着シートから剥離される。このため、本発明における粘着シートは、剥離ライナーを有していないものも包含される。
【0113】
剥離ライナーとしては、特に限定されるものではないが、上質紙、グラシン紙、クレーコート紙、ポリエチレンラミネート紙などの紙;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルム;などが挙げられる。
【0114】
剥離ライナーの厚みは、通常10~400μm程度である。また、剥離ライナーの表面には、粘着剤層の剥離性を向上させるためのシリコーンなどから構成される剥離剤からなる層が設けられてもよい。かような層が設けられる場合の当該層の厚みは、通常0.01~5μm程度である。
【0115】
(製造方法)
本発明の粘着シートの製造方法は、特に限定されるものではないが、(1)剥離ライナー上に第2の粘着剤層形成用組成物(粘着剤組成物)を塗工して第2の粘着剤層を形成し、次いで、粘着剤層上にブロック層形成用組成物を塗工してブロック層を形成し、さらにブロック層上に第1の粘着剤層形成用組成物(粘着剤組成物)を塗工して第1の粘着剤層を形成し、さらに第1の粘着剤層上に樹脂基材に貼り合わせる方法、(2)剥離ライナー上に、第2の粘着剤層形成用組成物、ブロック層形成用組成物、さらに第1の粘着剤層形成用組成物を多層塗工して第2の粘着剤層、ブロック層、第1の粘着剤層を形成し、さらに樹脂基材に貼り合わせる方法などが挙げられる。
【0116】
粘着剤組成物の剥離ライナーやブロック層への塗工方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スロットダイコーター、リップコーターなどの公知の塗布装置を用いて塗布することができる。
【0117】
また、ダイコーター、スライドカーテンコーター、スライドビードコーターなどの連続塗布装置を用いることで、第2の粘着剤層形成用組成物、ブロック層形成用組成物、さらに第1の粘着剤層形成用組成物を多層塗工することができる。
【0118】
<粘着シートの低極性被着体への貼付方法>
本実施形態の粘着シートは、低極性被着体に好適に用いられる。
【0119】
したがって、本発明の他の一実施形態は、第一実施形態または第二実施形態の粘着シートを低極性被着体に貼付する、貼付方法である。
【0120】
ここで、低極性被着体としては、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0121】
低極性被着体に対する粘着力は、5N/25mm以上であることが好ましい。ここで、粘着力は、各被着体に対して、実施例に記載の方法により測定された値を採用する。
【実施例0122】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0123】
(実施例1)
(1)第2の粘着剤層形成用組成物の調製
イオン交換水125質量部、アニオン性の反応性乳化剤「ラテムルS-180A」(花王社製)3質量部、第二リン酸ナトリウム0.3質量部、過硫酸アンモニウム0.5質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル42質量部、アクリル酸n-ブチル53質量部、アクリル酸3質量部、ジアセトンアクリルアミド2質量部及び粘着付与剤「YSポリスターN-125」(ヤスハラケミカル社製、テルペンフェノール系)18質量部からなる混合液を、高圧ホモジナイザーにより乳化処理して、平均粒子径250nmの乳化液を調製した。次いで、この乳化液を80℃で8時間加熱して乳化重合を行い、アクリル系樹脂エマルジョンを得た。
【0124】
上記で得たアクリル系樹脂エマルジョン100質量部(固形分)に対し、アジピン酸ヒドラジド0.45重量部を添加し、アクリル系エマルジョン型粘着剤を調製した。このアクリル系エマルジョン型粘着剤の平均粒子径は180nmであった。
【0125】
(2)第1の粘着剤層形成用組成物の調製
(1)の第2の粘着剤層形成用組成物の調製において、粘着付与剤を添加しなかったこと以外は、同様にして第1の粘着剤層形成用組成物を得た。
【0126】
(3)粘着シートの作成
剥離ライナー(シリコーンを塗布したグラシン紙)上に第2の粘着剤層形成用組成物、ブロック層形成用組成物として水分散型ポリエステル系樹脂溶液(バイロナール MD-1200(東洋紡社製)、固形分34質量%、ポリエステル系樹脂:水酸基価6mgKOH/g、数平均分子量15,000、Tg67℃、自己乳化型)、および第1の粘着剤層形成用組成物をスライドカーテンコーターを用いて多層塗工し、100℃で1分間乾燥させて剥離ライナー上に第2の粘着剤層(厚さ10μm)、ブロック層(厚さ1μm)、第1の粘着剤層(厚さ10μm)の積層体を得た。
【0127】
上記積層体の第1の粘着剤層面に、基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:50μm)を貼り合わせ、粘着シートを得た。
【0128】
(実施例2)
実施例1において、水分散型ポリエステル系樹脂溶液として、水分散型ポリエステル系樹脂溶液(バイロナール MD-1500(東洋紡社製)、固形分30質量%、ポリエステル系樹脂:水酸基価14mgKOH/g、数平均分子量8,000、Tg77℃、自己乳化型)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0129】
(実施例3)
実施例1において、水分散型ポリエステル系樹脂溶液に代えて、水分散型アクリル系樹脂溶液(固形分30質量%、アクリル系樹脂:モノマー組成:メタクリル酸メチル/アクリル酸n-ブチル/アクリル酸=64.0/35.4/0.6(質量比)、数平均分子量30,000、Tg28℃)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0130】
(比較例1)
実施例1において、水分散型ポリエステル系樹脂溶液として、水分散型ポリエステル系樹脂溶液(バイロナール MD-1985(東洋紡社製)、固形分27質量%、ポリエステル系樹脂:水酸基価4mgKOH/g、数平均分子量25,000、Tg-20℃)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0131】
(比較例2)
実施例1において、ブロック層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0132】
(評価方法1:粘着付与剤の移行評価)
粘着シート製造直後と、製造7日後に FT-IRにて第2の粘着剤層表面を測定した。粘着付与剤に由来するピークの減少量から、移行の程度を下記評価基準にしたがって評価した。なお、評価◎、〇、△のものについては、粘着付与剤由来のピークの減少量が30%未満であることから、第1の粘着剤層に移行した粘着付与剤の量も30%未満となるため、製造7日後の粘着シートの第1の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度は、第2の粘着剤層に含まれる粘着付与剤の含有濃度よりも少ない。
【0133】
◎:粘着付与剤由来のピークの減少量が10%未満であった
○:粘着付与剤由来のピークの減少量が10%以上20%未満であった
△:粘着付与剤由来のピークの減少量が20%以上30%未満であった
×:粘着付与剤由来のピークの減少量が30%以上であった
(評価方法2:ブロック層と粘着剤層の密着性評価)
第2の粘着剤層面を指で擦り、粘着剤層の剥がれの有無を確認し、下記評価基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。
【0134】
◎:第2の粘着剤層/ブロック層間での剥がれが発生しなかった
○:第2の粘着剤層/ブロック層間での剥がれがわずかに発生した
(評価方法3:粘着力)
実施例および比較例で得た粘着シートを7日標準環境下(23℃50%RH)に静置し、剥離ライナーを剥がしてポリエチレン板に粘着剤層面を貼付し30分間標準環境下に静置した後、粘着力を測定した。具体的には、引張試験機により、180°方向に試験速度300mm/分でシートを引き剥がし、粘着力を測定した。数値は、シート幅25mm当たりの引き剥がし力に換算したもの(N/25mm)である。結果を表1に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
以上の結果から、実施例の粘着シートは、粘着付与剤の移行が抑制され、また、密着性にも優れることがわかる。
【符号の説明】
【0137】
10 粘着シート
20 基材
30 第1の粘着剤層
40 ブロック層
50 第2の粘着剤層
60 剥離ライナー
図1