(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140861
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーおよびポータブルトイレ
(51)【国際特許分類】
A47K 10/40 20060101AFI20230928BHJP
A47K 10/36 20060101ALI20230928BHJP
A47K 10/38 20060101ALI20230928BHJP
A47K 11/04 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A47K10/40 G
A47K10/36 Z
A47K10/38 L
A47K11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046902
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】永野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高濱 智久
(72)【発明者】
【氏名】青山 智之
(72)【発明者】
【氏名】李 剛
【テーマコード(参考)】
2D036
【Fターム(参考)】
2D036HA12
2D036HA22
2D036HA42
2D036HA48
(57)【要約】
【課題】利用者が片手で交換が容易、かつ、トイレットペーパーからペーパーを所望の長さに引き出して切り離すことが容易なポータブルトイレを提供すること。
【解決手段】ポータブルトイレ1は、便器としてのバケツ10と、肘掛け支柱8と、肘掛け7と、バケツ10の側方または前方に配置され、トイレットペーパーが保持されるロールペーパーホルダー20と、を備える。ロールペーパーホルダー20は、トイレットペーパーを回転可能に支持するペーパー支持部材30と、ペーパー支持部材30に摺動可能に係合したペーパー押さえ部材40と、を備える。ロールペーパーホルダー20は、ペーパー押さえ部材40とペーパー支持部材30とによってトイレットペーパーを挟み込むように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポータブルトイレに取り付けられ、トイレットペーパーを保持するポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーであって、
前記トイレットペーパーを回転可能に支持するペーパー支持部材と、
前記ペーパー支持部材に摺動可能に係合し、前記ペーパー支持部材に支持された前記トイレットペーパーを押さえるペーパー押さえ部材と、を備え、
前記ペーパー押さえ部材と前記ペーパー支持部材とによって前記トイレットペーパーを挟み込むように構成されている、ポータブルトイレ用ロールペーパーホルダー。
【請求項2】
前記ペーパー押さえ部材が前記ペーパー支持部材に支持される前記トイレットペーパーを30gf以上の荷重で押さえるように構成されている、請求項1に記載のポータブルトイレ用ロールペーパーホルダー。
【請求項3】
前記ペーパー押さえ部材は、前記ペーパー支持部材の上方に配置された押さえ棒と、前記押さえ棒の下側に設けられ、前記押さえ棒と一体または別体の切断刃とを有し、
前記押さえ棒と前記ペーパー支持部材とによって前記トイレットペーパーを挟み込むように構成されている、請求項1または2に記載のポータブルトイレ用ロールペーパーホルダー。
【請求項4】
前記ポータブルトイレは支柱を有し、
前記ペーパー支持部材は、断面C字状の嵌め込み部を有し、
前記嵌め込み部が前記支柱に嵌め込まれることによって前記支柱に支持されている、請求項1~3のいずれか一つに記載のポータブルトイレ用ロールペーパーホルダー。
【請求項5】
前記ペーパー支持部材は、前記トイレットペーパーのロール芯に挿入される支持棒と、前記支持棒の一端に設けられた摺動部と、前記摺動部に設けられた固定部と、を有し、
前記ペーパー押さえ部材は、前記摺動部に上下に摺動可能に係合する支柱と、前記支柱から側方に延び、前記支持棒の上方に配置された押さえ棒と、を有し、
前記押さえ棒と前記支持棒とによって前記トイレットペーパーを挟み込むように構成されている、請求項1~4のいずれか一つに記載のポータブルトイレ用ロールペーパーホルダー。
【請求項6】
前記摺動部に、フックが係止される係止部が形成され、
前記摺動部の係止部に係止されたフックによって吊り下げ支持される、請求項5に記載のポータブルトイレ用ロールペーパーホルダー。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一つに記載のポータブルトイレ用トイレットペーパーを備えたポータブルトイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットペーパーを保持するポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーおよびそれを備えたポータブルトイレに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高齢者の介護などの用途にポータブルトイレが用いられている。ポータブルトイレにおいて、利用者が便座に座ったままトイレットペーパーを利用することができれば便利である。そこで、トイレットペーパーを保持するロールペーパーホルダーを備えたポータブルトイレが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、肘掛けを支持する支柱にロールペーパーホルダーが取り付けられたポータブルトイレが記載されている。特許文献1に記載されたロールペーパーホルダーは、支柱に取り付けられる取付部と、取付部から延設された棒状のペーパーロール支持アームとにより構成されている。トイレットペーパーのロール芯にペーパーロール支持アームを挿入することにより、トイレットペーパーをロールペーパーホルダーに取り付けることができる。トイレットペーパーは、ペーパーロール支持アームに回転可能に支持される。利用者は、片方の手でペーパーを引っ張ることにより、トイレットペーパーからペーパーを引き出すことができ、もう一方の手でトイレットペーパーを押さえながらペーパーを更に引っ張ることにより、引き出したペーパーを切り離すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されたロールペーパーホルダーは、利用者がペーパーを引っ張るときにトイレットペーパーが回転しすぎる場合があり、思ったよりも長めにペーパーを引き出してしまう場合があった。その結果、切り離したペーパーが所望の長さ以上となる場合があった。また、ペーパーを切り離すためには、両手を使う必要があった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、利用者が片手でトイレットペーパーからペーパーを所望の長さに切り離すことが容易なポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーおよびそれを備えたポータブルトイレを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るロールペーパーホルダーは、ポータブルトイレに取り付けられ、トイレットペーパーを保持するポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーである。前記ポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーは、前記トイレットペーパーを回転可能に支持するペーパー支持部材と、前記ペーパー支持部材に摺動可能に係合し、前記ペーパー支持部材に支持された前記トイレットペーパーを押さえるペーパー押さえ部材と、を備える。前記ポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーは、前記ペーパー押さえ部材と前記ペーパー支持部材とによって前記トイレットペーパーを挟み込むように構成されている。
【0008】
上記ポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーによれば、トイレットペーパーはペーパー押さえ部材とペーパー支持部材とによって挟み込まれる。利用者がペーパーを引っ張るときに、ペーパー押さえ部材およびペーパー支持部材はトイレットペーパーの回転の抵抗となる。そのため、トイレットペーパーが回転しすぎることが抑制される。利用者はトイレットペーパーからペーパーを容易に所望の長さに引き出すことができる。また、トイレットペーパーはペーパー押さえ部材とペーパー支持部材とに挟まれているので、利用者は、片手でペーパーを引き出した後、ペーパーをペーパー押さえ部材の方に折り返して引っ張ることにより、ペーパーを切り離すことができる。したがって、上記ポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーによれば、片手でトイレットペーパーからペーパーを所望の長さに切り離すことが容易となる。
【0009】
前記ポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーは、前記ペーパー押さえ部材が前記ペーパー支持部材に支持される前記トイレットペーパーを30gf以上の荷重で押さえるように構成されていてもよい。
【0010】
上記事項によれば、ペーパー押さえ部材とペーパー支持部材とによりトイレットペーパーを良好に挟み込むことができる。利用者はペーパーを片手で容易に引き出すことができ、容易に切り離すことができる。
【0011】
前記ペーパー押さえ部材は、前記ペーパー支持部材の上方に配置された押さえ棒と、前記押さえ棒の下側に設けられ、前記押さえ棒と一体または別体の切断刃とを有していてもよい。前記ポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーは、前記押さえ棒と前記ペーパー支持部材とによって前記トイレットペーパーを挟み込むように構成されていてもよい。
【0012】
上記事項によれば、押さえ棒とペーパー支持部材とによりトイレットペーパーを良好に挟み込むことができる。
【0013】
前記ポータブルトイレは支柱を有していてもよい。前記ペーパー支持部材は、断面C字状の嵌め込み部を有していてもよい。前記嵌め込み部が前記支柱に嵌め込まれることによって前記ポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーが前記肘掛け支柱に支持されていてもよい。
【0014】
上記事項により、ペーパー支持部材の嵌め込み部を肘掛け支柱に嵌め込むことにより、ポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーをポータブルトイレに容易に取り付けることができる。
【0015】
前記ペーパー支持部材は、前記トイレットペーパーのロール芯に挿入される支持棒と、前記支持棒の一端に設けられた摺動部と、前記摺動部に設けられた固定部と、を有していてもよい。前記ペーパー押さえ部材は、前記摺動部に上下に摺動可能に係合する支柱と、前記支柱から延び、前記支持棒の上方に配置された押さえ棒と、を有していてもよい。前記ポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーは、前記押さえ棒と前記支持棒とによって前記トイレットペーパーを挟み込むように構成されていてもよい。
【0016】
上記事項によれば、押さえ棒と支持棒とにより、トイレットペーパーを安定して挟み込むことができる。よって、ペーパーの引き出しおよび切り離しをより良好に行うことができる。
【0017】
前記摺動部に、フックが係止される係止部が形成されていてもよい。前記摺動部の係止部に係止されたフックによって、前記ポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーが吊り下げ支持されていてもよい。
【0018】
上記事項によれば、フックを用いてポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーをポータブルトイレに容易に取り付けることができる。
【0019】
本発明に係るポータブルトイレは、前記ポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーを備えたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、利用者が片手でトイレットペーパーからペーパーを所望の長さに切り離すことが容易なポータブルトイレ用ロールペーパーホルダーおよびそれを備えたポータブルトイレを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係るポータブルトイレの斜視図である。
【
図9】変形例に係る切断刃の刃の先端形状を表す図である。
【
図13】切断刃によるトイレットペーパーの切断の仕方を表す模式図である。
【
図14】切り離されたペーパーの長手方向の破断長さを表す図である。
【
図15】第2実施形態に係るロールペーパーホルダーの斜視図である。
【
図17】支柱および固定アダプターの斜視図である。
【
図18】第3実施形態に係るロールペーパーホルダーの斜視図である。
【
図19】他の実施形態に係るロールペーパーホルダーの正面図である。
【
図20】他の実施形態に係るロールペーパーホルダーの平面図である。
【
図21】他の実施形態に係るロールペーパーホルダーの底面図である。
【
図22】(a)は他の実施形態に係る支柱の斜視図であり、(b)は他の実施形態に係る支柱に固定アダプターが嵌め込まれた状態を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るポータブルトイレ1の斜視図である。なお、以下のポータブルトイレ1に関する説明では、特に断らない限り、前、後、左、右、上、下とは、後述する便座5に座った利用者から見た前、後、左、右、上、下の各方向をそれぞれ意味するものとする。
【0023】
<ポータブルトイレ>
ポータブルトイレ1は、座部3と、座部3を支持する脚4と、便座5と、座部3の後方に配置された背もたれ6と、左右の肘掛け7と、肘掛け7を支持する肘掛け支柱8と、蓋9と、バケツ10とを備えている。また、ポータブルトイレ1は、トイレットペーパーを保持するロールペーパーホルダー20を備えている。
【0024】
座部3は、上方に開口した箱状に形成されている。バケツ10は、座部3の開口を通じて座部3の内側に装着される。バケツ10は、座部3に対して上下に着脱可能に構成されている。バケツ10は「便器」の一例である。脚4は、座部3を支持しており、座部3を介してバケツ10を支持している。
【0025】
便座5は、座部3の後部に回動可能に取り付けられている。便座5は前後に回動可能である。便座5を前方に回動させると、便座5を水平に倒すことができる。便座5を水平に倒すと、便座5はバケツ10の上方に配置され、利用者は便座5の上に座ることができる。便座5を後方に回動させると、便座5を立てることができ、座部3の内側を開放することができる。便座5を立てた状態にすることにより、座部3からバケツ10を上方に取り外すことができ、また、座部3に向けてバケツ10を上方から取り付けることができる。
【0026】
蓋9は、座部3の後部に回動可能に取り付けられている。特に限定される訳ではないが、本実施形態では蓋9は折り畳み可能に構成されている。蓋9を前方に回動させると共に展開させることにより、便座5およびバケツ10を蓋9によって覆うことができる。蓋9を後方に回動させると共に折り畳むことにより、便座5およびバケツ10が開放され、利用者は便座5の上に座ることができる。
【0027】
肘掛け支柱8はバケツ10の側方に配置されている。詳しくは、左側の肘掛け支柱8はバケツ10の左方に配置され、右側の肘掛け支柱8はバケツ10の右方に配置されている。本実施形態では、バケツ10の左側および右側のそれぞれに、前後に配置された2本の肘掛け支柱8が配置されている。肘掛け支柱8は座部3から上方に延びている。前側の肘掛け支柱8および後側の肘掛け支柱8は、前後に延びる棒8Aに接続されている。前側の肘掛け支柱8および後側の肘掛け支柱8は、棒8Aを介して互いに接続されている。
【0028】
肘掛け7は前後の肘掛け支柱8によって支持されている。肘掛け7は前後に延びている。肘掛け7はバケツ10の側方に配置されている。詳しくは、左側の肘掛け7はバケツ10の左方に配置され、右側の肘掛け7はバケツ10の右方に配置されている。肘掛け7の高さが調整可能なように、肘掛け支柱8は昇降可能に構成されていてもよい。
【0029】
<ロールペーパーホルダー>
ロールペーパーホルダー20は、前側の肘掛け支柱8に取り付けられている。ロールペーパーホルダー20は、肘掛け支柱8に対して着脱可能である。ロールペーパーホルダー20は、左前の肘掛け支柱8に取り付けられていてもよいが、ここでは右前の肘掛け支柱8に取り付けられている。
【0030】
図2はロールペーパーホルダー20の斜視図である。
図3、
図4、
図5、
図6、
図7は、それぞれロールペーパーホルダー20の正面図、背面図、左側面図、平面図、底面図である。次に、
図2~
図7を参照しながら、ロールペーパーホルダー20の詳細について説明する。
【0031】
図2に示すように、ロールペーパーホルダー20は、ペーパー支持部材30と、ペーパー押さえ部材40とを備えている。
図3に示すように、ロールペーパーホルダー20は、ペーパー支持部材30とペーパー押さえ部材40とによってトイレットペーパー100を挟み込むように構成されている。なお、
図3において、符号101はトイレットペーパー100のロール芯を表し、符号102はロール芯101に巻かれたペーパー102を表している。トイレットペーパー100は、ロール芯101に巻かれたペーパー102によって構成されている。
【0032】
まず、ペーパー支持部材30について説明する。ペーパー支持部材30は、トイレットペーパー100を回転可能に支持する。
図2に示すように、ペーパー支持部材30は、支持棒31と、支持棒31の一端に設けられた第1摺動部32Aと、支持棒31の他端に設けられた第2摺動部32Bと、第1摺動部32Aに設けられた固定部33とを備えている。第2摺動部32Bは支持棒31に対して凸条の形状となっており、トイレットペーパー100の横方向のずれを防止している。支持棒31の他端には、支持棒31の他端の上端から支持棒31の径方向の外方(ここでは側方であるが、上方であってもよい)に延び、トイレットペーパー100の横方向の移動を規制する壁部31Wが設けられている。本実施形態では、ペーパー支持部材30は単一の部材である。支持棒31、第1摺動部32A、第2摺動部32B、および固定部33は、一体的に形成されている。ただし、特に限定される訳ではなく、ペーパー支持部材30は複数の部材によって構成されていてもよい。支持棒31、第1摺動部32A、第2摺動部32B、および固定部33の少なくとも一つは、他の少なくとも一つと別体に形成され、互いに組み付けられていてもよい。ペーパー支持部材30は、例えば合成樹脂によって形成することができる。ペーパー支持部材30は、例えば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ABS、PVC(ポリ塩化ビニル)樹脂等によって形成することができる。
【0033】
支持棒31は真っ直ぐに延びている。支持棒31は、トイレットペーパー100のロール芯101に挿入される(
図3参照)。支持棒31はトイレットペーパー100を支持するように構成されている。実施形態では、支持棒31の横断面形状は円形に形成されている。ただし、支持棒31の横断面形状は特に限定されず、例えば、楕円形状、多角形状等であってもよい。支持棒31は、中実体であってもよく、中空体であってもよい。
【0034】
第1摺動部32Aには第1摺動孔35Aが形成され、第2摺動部32Bには第2摺動孔35Bが形成されている。第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bは、支持棒31が延びる方向と垂直な方向に延びている。以下では、支持棒31が延びる方向をX方向と言い、第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bが延びる方向をZ方向と言うこととする。Z方向はX方向に対して垂直な方向である。X方向に沿って第1摺動孔35Aから第2摺動孔35Bに向かう方向をX1方向と言い、X1方向と逆方向のことをX2方向と言う(
図6参照)。また、X方向およびZ方向に垂直な方向をY方向と言う。ここでは、X方向およびY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0035】
第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bの断面形状は、X方向の寸法がY方向の寸法よりも小さな楕円形に形成されている。ただし、第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bの形状は特に限定されず、例えば、円形、長円(楕円、トラック形状などを含む)や多角形(例えば四角形、六角形など)、凸形状、凹形状の周の一部を切り欠いたような断面形状が含まれる。本実施形態では、第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bの形状および寸法は互いに等しい。ただし、特に限定される訳ではなく、第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bの形状および寸法のいずれか一方または両方は、互いに異なっていてもよい。
【0036】
本実施形態では、第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bは、内周縁が閉じた孔からなっている。第1摺動部32Aおよび第2摺動部32Bは、それぞれ後述する第1支柱41および第2支柱42の全周囲を囲むように形成されている。ただし、第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bの一方または両方は、内周縁の一部が開いた孔からなっていてもよい。第1摺動部32Aおよび第2摺動部32Bは、一部が側方に切り欠かれたような形状、または、上面部分と下面部部のみが全周囲を囲むような形状に形成されていてもよい。
【0037】
本実施形態のように、第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bが円孔でない場合、第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bの内径とは、それぞれの水力直径を意味するものとする。例えば、第1摺動孔35Aの開口面積をA、周長をPとしたとき、第1摺動孔35Aの内径Dは、D=(4A)/Pである。第1摺動孔35Aが内周縁の一部が開いた孔からなっている場合、厳密には水力直径を算出することができない。そこで、第1摺動孔35Aが内周縁の一部が開いた孔からなっている場合、第1摺動孔35Aの内径は、互いに離間した内周縁の一端と他端とが直線状の縁で繋がっていると仮定した上で算出するものとする。第2摺動孔35Bの内径も同様に定義される。第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bの内径の値は特に限定されないが、5mm以上が好ましく、15mm以上がより好ましい。また、第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bの内径の値は、40mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、25mm以下が更に好ましい。
【0038】
第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35BのZ方向の長さは特に限定されないが、本実施形態では20mmである。第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bの内径に対するZ方向の長さの比率(ここでは、Z方向は上下方向であるので、高さ/内径)は、例えば10/20以上であり、好ましくは15/20以上、より好ましくは、20/20以上である。上記比率は、例えば、100/20以下であり、好ましくは、80/20以下、更に好ましくは50/20以下である。
【0039】
第1摺動部32Aおよび第2摺動部32Bの上面(なお、本実施形態では上面は平面であるため、第1摺動部32Aおよび第2摺動部32Bの上端と上面とは同義となる。)の位置は、支持棒31の上端の位置より10mm以下の高さにある。第1摺動部32Aおよび第2摺動部32Bの上面の位置は、好ましくは支持棒31の上端の位置より5mm以下、より好ましくは2mm以下の高さである。
【0040】
第1摺動部32Aの上下方向の長さは100mm以下であり、好ましくは60mm以下、より好ましくは40mm以下である。トイレットペーパー100のロール芯101は支持棒31に挿入されるが、本実施形態では、ロール芯101は第2摺動部32Bの方から挿入される。ロール芯101が挿入しやすいよう、第2摺動部32Bの上下方向の長さは40mm以下であり、より好ましくは30mm以下である。
【0041】
固定部33は、ポータブルトイレ1に固定される部分である。本実施形態では、固定部33は、ポータブルトイレ1の肘掛け支柱8に着脱可能に取り付けられるように構成されている。
図6に示すように、固定部33は、断面C字状の嵌め込み部33Aと、嵌め込み部33Aと第1摺動部32Aとをつなぐアーム部33Bとを有している。ただし、固定部33の構成は特に限定されない。例えば、アーム部33Bが無く、嵌め込み部33Aが第1摺動部32Aに直接繋がっていてもよい。
【0042】
なお、本明細書において「断面C字状」とは、180度よりも大きくかつ360度よりも小さな角度θの範囲に亘って中心(
図6の符号33c参照)を取り囲む断面形状のことである。断面C字状には、真円の周の一部を切り欠いたような断面形状に限らず、長円(楕円、トラック形状などを含む)や多角形(例えば四角形、六角形など)の周の一部を切り欠いたような断面形状が含まれる。なお、C字の開く向きは任意の方向に設定できる。例えば、支持棒31の軸線方向であってもよく、支持棒31の軸線方向から左方または右方に傾いた方向であってもよい。
【0043】
本実施形態では、アーム部33Bは湾曲している。ただし、アーム部33Bの形状は特に限定されず、屈曲していてもよく、真っ直ぐに延びていてもよい。アーム部33Bは、第1摺動孔35Aの中心と第2摺動孔35Bの中心とを通る直線L1(
図6参照)に沿って延びていてもよいが、本実施形態では第1摺動部32AからX2方向かつY1方向に延びている。
【0044】
図6に示すように、嵌め込み部33AはZ方向から見て、第1摺動孔35Aの中心と第2摺動孔35Bの中心とを結ぶ直線L1に対して、Y1方向の側に設けられている。本実施形態では、嵌め込み部33Aの断面形状は、真円の周の一部を切り欠いたような形状に形成されている。嵌め込み部33Aの内周部には、周方向に並んだ複数の凹部36が形成されている。各凹部36はZ方向に延びている(
図4参照)。ただし、凹部36は必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。
【0045】
図5に示すように、嵌め込み部33Aには、ゴム製またはエラストマー製のバンド37が巻かれている。バンド37の本数は特に限定されないが、ここでは2本のバンド37が嵌め込み部33Aに巻かれている。
図6に示すように、一方のバンド37は嵌め込み部33Aの周方向の一方の半部に巻かれ、他方のバンド37は嵌め込み部33Aの周方向の他方の半部に巻かれている。
図5に示すように、バンド37はZ方向に沿って巻かれている。バンド37の一部は、嵌め込み部33Aの内周面に設けられている。バンド37は弾性体の一例であり、「回転規制部」を構成している。バンド37には一般的なものを用いることができるが、本実施形態ではJIS K 6253-3準拠のデュロメータ タイプA硬度で80~30度のものを用いている。ゴム材料としては、シリコンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、ブチルゴムなどを用いることができる。エラストマー材料としては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどを用いることができる。特に、洗剤への耐久性や反発弾性の長期安定性の観点から、シリコンゴムが最も適している。
【0046】
次に、ペーパー押さえ部材40について説明する。
図2に示すように、ペーパー押さえ部材40は、第1支柱41と、第2支柱42と、押さえ棒43とを有している。本実施形態では、ペーパー押さえ部材40は単一の部材であり、第1支柱41と第2支柱42と押さえ棒43とは一体的に形成されている。ただし特に限定される訳ではなく、ペーパー押さえ部材40は複数の部材によって構成されていてもよい。ペーパー押さえ部材40は、例えば合成樹脂によって形成することができる。ペーパー押さえ部材40は、例えば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ABS、PVC(ポリ塩化ビニル)樹脂等によって形成することができる。
【0047】
第1支柱41および第2支柱42は、それぞれペーパー支持部材30の第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bに摺動可能に挿入されている。第1支柱41および第2支柱42の横断面形状は特に限定されない。ただし、第1支柱41が第1摺動孔35Aに良好に摺動できるよう、第1支柱41の横断面形状は第1摺動孔35Aの形状に適合していることが好ましい。また、第2支柱42が第2摺動孔35Bに良好に摺動できるよう、第2支柱42の横断面形状は第2摺動孔35Bの形状に適合していることが好ましい。ここでは、第1支柱41および第2支柱42の横断面形状は、それぞれ第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bの形状と同様の形状に形成されており、X方向の寸法がY方向の寸法よりも小さな楕円形に形成されている。第1支柱41および第2支柱42はZ方向に延びている。第1支柱41および第2支柱42は、中実体であってもよく、中空体であってもよい。
【0048】
第1支柱41の外周面と第1摺動孔35Aの内周面とのクリアランス、および、第2支柱42の外周面と第2摺動孔35Bの内周面とのクリアランスは特に限定されないが、好ましくは1.2mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更に好ましくは0.5mm以下である。なお、第1支柱41の外周面と第1摺動孔35Aの内周面とのクリアランスとは、第1摺動孔35Aの内径と第1支柱41の外径との差の半分のことである。第2支柱42の外周面と第2摺動孔35Bの内周面とのクリアランスとは、第2摺動孔35Bの内径と第2支柱42の外径との差の半分のことである。
【0049】
押さえ棒43は第1支柱41からX方向に延びており、第1支柱41の上端部と第2支柱42の上端部とに架け渡されている。押さえ棒43は、ペーパー支持部材30の支持棒31の上方に配置されている。押さえ棒43は、支持棒31との間でトイレットペーパー100を挟み込むように構成されている(
図3参照)。押さえ棒43は、X方向に延びる棒状体43Aと、棒状体43Aの下側に設けられた切断刃43Bとを有している。
【0050】
ペーパー押さえ部材40は、ペーパー押さえ部材40の自重によってトイレットペーパー100を押さえるように構成されている。言い換えると、ペーパー押さえ部材40は、ペーパー押さえ部材40の自重により、押さえ棒43と支持棒31とによってトイレットペーパー100を挟み込むように構成されている。ペーパー押さえ部材40の質量は特に限定されないが、本実施形態では30g以上である。ペーパー押さえ部材40は、押さえ棒43がトイレットペーパー100を30gf以上の荷重で押さえるように構成されている。
【0051】
切断刃43Bは、トイレットペーパー100を切断するために用いられる刃である。切断刃43Bの形状は特に限定されないが、ここでは
図8に示すように、櫛歯状に配置された複数の刃43Baを有している。切断刃43Bの刃43Baの横幅43Bwおよびピッチ43Bpは特に限定されないが、例えば1mm~5mmが好ましい。本実施形態では、横幅43Bwおよびピッチ43Bpは1.2mmとなっている。刃43Baの先端の形状は特に限定されない。
図8に示すように、刃43Baの先端は直線状に形成されていてもよい。また、
図9(a)に示すように、刃43Baの先端は凹状に形成されていてもよい。
図9(b)に示すように、刃43Baの先端は凸状に形成されていてもよい。
【0052】
なお、上記の切断刃43Bの形状は一例に過ぎない。切断刃43Bは櫛歯状に形成されていなくてもよい。切断刃43Bは、例えば、X方向に延びる連続した単一の刃によって形成されていてもよい。
【0053】
図10に示すように、切断刃43Bの刃43BaはY2方向に突出している。以下では、切断刃43Bの刃43Baの先端のことを切断刃43Bの刃先と呼ぶこととする。切断刃43Bの刃先角度αは特に限定されないが、例えば15°~80°とすることができる。本実施形態では、刃先角度αは60°となっている。切断刃43Bは棒状体43AからY2方向に延びており、棒状体43Aから水平に延びている。本実施形態では、切断刃43Bが延びる方向のY方向(水平方向)に対する角度(以下、切断刃43Bの取付角度という)βは0°である。ただし、切断刃43Bの取付角度βの値は特に限定されない。例えば
図11に示すように、切断刃43Bの取付角度βは0~30°であってもよい。αとβとの合計は90°以下である。
【0054】
切断刃43Bの刃先のY方向の位置は特に限定されないが、例えば、支持棒31の軸線31cから30mm以内とすることができる。
図12は、
図3のXII-XII線断面図であり、切断刃43BのX方向の中間位置におけるロールペーパーホルダー20の断面図である。
図12に示すように、ここではY方向の位置に関して、切断刃43BのX方向の中間位置における刃先43Btは、支持棒31の軸線31cと同じ位置にある。ただし、切断刃43Bの刃先43Btの位置は、支持棒31の軸線31cからY1方向に30mm以内の位置であってもよく、Y2方向に30mm以内の位置であってもよい。すなわち、切断刃43Bの刃先43Btと支持棒31の軸線31cとのY方向の距離は、30mm以下であってもよい。更に、切断刃43Bの刃先43Btと支持棒31の軸線31cとのY方向の距離は、20mm以下であってもよく、17mm以下であってもよい。より好ましくは、切断刃43Bの刃先43Btと支持棒31の軸線31cとのY方向の距離は15mm以下であり、更に好ましくは10mm以下であり、更に好ましくは5mm以下であり、2mm以下であることが特に好ましい。
【0055】
図6に示すようにZ方向から見て、切断刃43BはY1方向に凹状となるように湾曲している。詳しくは、本実施形態では切断刃43Bは櫛歯状に形成されており、X方向に並ぶ複数の刃の先端は、Z方向から見てY1方向に凹んだ湾曲線に沿って並んでいる。ただし、Z方向から見た切断刃43Bの形状は凹状に限定されない。例えば、切断刃43Bは、Z方向から見て直線状に延びていてもよく、Z方向から見てY2方向に凸状となるように湾曲していてもよい。
【0056】
トイレットペーパー100を挟んでいないときのペーパー押さえ部材40の上端と切断刃43Bの下端との高低差は、5mm以下であり、好ましくは3mm以下である。
【0057】
以上がロールペーパーホルダー20の構成である。次に、ロールペーパーホルダー20の利用方法について説明する。
【0058】
<ロールペーパーホルダーの利用方法>
本実施形態に係るロールペーパーホルダー20は、ポータブルトイレ1の肘掛け支柱8に容易に着脱することができる。ロールペーパーホルダー20をポータブルトイレ1に取り付ける際には、例えば、利用者はペーパー支持部材30の支持棒31を握りながら、肘掛け支柱8の側方から、断面C字状の嵌め込み部33Aの開口部を肘掛け支柱8に押しつける。本実施形態では、ペーパー支持部材30は合成樹脂製であり、嵌め込み部33Aは可撓性を有している。嵌め込み部33Aの開口部を肘掛け支柱8に押しつけると、嵌め込み部33Aが肘掛け支柱8によって押し広げられ、嵌め込み部33Aは肘掛け支柱8に嵌まり込む。これにより、ペーパー支持部材30は肘掛け支柱8に取り付けられる。その後、第1支柱41、第2支柱42をそれぞれ第1摺動孔35A、第2摺動孔35Bに上方から挿入し、ペーパー押さえ部材40をペーパー支持部材30に組み付ける。これにより、ロールペーパーホルダー20をポータブルトイレ1に取り付けることができる(
図1参照)。
【0059】
なお、上記の取付例では、ペーパー支持部材30を肘掛け支柱8に取り付けた後、ペーパー押さえ部材40をペーパー支持部材30に組み付けることとしたが、ペーパー押さえ部材40をペーパー支持部材30に組み付けた後に、ペーパー支持部材30を肘掛け支柱8に取り付けることも可能である。すなわち、ペーパー押さえ部材40およびペーパー支持部材30が互いに組み付けられた状態のまま、ペーパー支持部材30を肘掛け支柱8に取り付けることも可能である。
【0060】
ロールペーパーホルダー20にトイレットペーパー100を取り付ける際には、まず、ペーパー支持部材30からペーパー押さえ部材40を取り外す。第1支柱41および第2支柱42はそれぞれ第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bに対して摺動可能であるので、利用者は押さえ棒43を掴んで持ち上げるだけで、第1支柱41および第2支柱42を第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bから引き抜くことができる。よって、ペーパー押さえ部材40をペーパー支持部材30から容易に取り外すことができる。利用者は、ペーパー押さえ部材40を取り外した後、第2摺動部32Bから支持棒31に向けてトイレットペーパー100のロール芯101を差し込む。そして、トイレットペーパー100のロール芯101を支持棒31に差し込んだ後、ペーパー押さえ部材40をペーパー支持部材30に取り付ける。すなわち、利用者は、押さえ棒43を掴みながら、第1摺動孔35Aに第1支柱41を挿入し、第2摺動孔35Bに第2支柱42を挿入する。第1支柱41、第2支柱42をそれぞれ第1摺動孔35A、第2摺動孔35Bに挿入した後、押さえ棒43を放すと、トイレットペーパー100はペーパー押さえ部材40の自重により、ペーパー押さえ部材40とペーパー支持部材30とに挟まれる。このようにして、ロールペーパーホルダー20にトイレットペーパー100を取り付けることができる。
【0061】
ロールペーパーホルダー20は、断面C字状の嵌め込み部33Aが肘掛け支柱8に嵌め込まれることによってポータブルトイレ1に取り付けられている。嵌め込み部33Aは、嵌め込み部33Aの内周面と肘掛け支柱8の外周面との間の摩擦力、および、嵌め込み部33Aに巻かれたバンド37と肘掛け支柱8の外周面との間の摩擦力により、肘掛け支柱8に保持されている。そのため、嵌め込み部33Aの回転は規制されており、それらの摩擦力を超える所定値以上の力を加えない限り、嵌め込み部33Aは肘掛け支柱8に対して回転しない。一方、それらの摩擦力を超える所定値以上の力を加えることにより、嵌め込み部33Aを肘掛け支柱8に対して回転させることができる。そのため、利用者は、ロールペーパーホルダー20の位置を所望の位置に変更することができる。利用者は、ペーパーを取り出しやすい位置にトイレットペーパー100を設置することができる。
【0062】
例えば
図1に示すように、ロールペーパーホルダー20は、切断刃43Bが右方かつ後方を向くように右前の肘掛け支柱8に設置することができる。言い換えると、右前の肘掛け支柱8に取り付けられたロールペーパーホルダー20を、Y2方向(
図6参照)が右方かつ後方となる姿勢に設置することができる。この場合、ポータブルトイレ1の便座5に座る利用者は、右手でトイレットペーパー100のペーパー102を掴んで右方かつ後方に引っ張るだけで、ロールペーパーホルダー20からペーパー102を引き出すことができる。トイレットペーパー100はペーパー押さえ部材40の自重により下方に押されており、ペーパー押さえ部材40とペーパー支持部材30とに挟み込まれている。そのため、利用者は、左手でトイレットペーパー100を押さえる必要がなく、右手だけでトイレットペーパー100を良好に引き出すことができる。
【0063】
また、ロールペーパーホルダー20の右方かつ後方は開放されている。ロールペーパーホルダー20の右方かつ後方には、壁等の干渉物は存在しない。そのため、利用者がロールペーパーホルダー20からペーパー102を引き出すときに、右手が干渉物に当たることがない。利用者は、ロールペーパーホルダー20からペーパー102を容易に引き出すことができる。また、トイレットペーパー100を囲むような板部材が無いため、トイレットペーパー100自体を掴んで回転させても、ペーパー102を引き出すことができる。
【0064】
ところで、ペーパー102の先端位置と切断刃43Bの刃先の位置とが一致している場合、ペーパー102の先端をつまむことが難しい。しかし、本実施形態によれば、トイレットペーパー100を切断刃43Bの向きに対して容易に逆回転させることができ、逆回転させることにより、ペーパー102の先端部は垂れ落ちることになる。そのため、ペーパー102の先端を容易につまむことができる。本実施形態によれば、ペーパー102の先端位置と切断刃43Bの刃先の位置とが一致している場合に、トイレットペーパー100を逆回転させてペーパー102を容易に引き出すことができる。
【0065】
利用者は、ロールペーパーホルダー20から所望の長さのペーパー102を引き出した後、切断刃43Bを用いてペーパー102を切断する。詳しくは、利用者は、ペーパー102を掴んだ右手を押さえ棒43の上方を超えて左方かつ後方に移動させ、所望のペーパー長さを引き出した後、右方かつ前方に引っ張る。これにより、ペーパー102は、切断刃43Bと接触している部分にて折り返され、切断刃43Bにより切断される。なお、
図13に模式的に示すように、本実施形態では切断刃43BはY1方向に凹むように湾曲している。そのため、ペーパー102をY1方向に引っ張ると、ペーパー102は切断刃43Bとの接触部分においてY1方向に折り返されるが、ペーパー102の切断箇所102aは切断刃43Bと点接触する傾向がある。よって、切断箇所102aが切断刃43Bと線接触する場合に比べて、ペーパー102は局所的に大きな力で切断される。したがって、利用者は、比較的小さな力でペーパー102を良好に切断することができる。
【0066】
また、ロールペーパーホルダー20の左方かつ前方は開放されており、ロールペーパーホルダー20の左方かつ前方には干渉物が存在しない。そのため、利用者がペーパー102を折り返して切断するときに、ペーパー102を掴んだ右手が干渉物に当たることはない。したがって、利用者は、トイレットペーパー100からペーパー102を容易に切り離すことができる。以上のようにして、利用者は、ロールペーパーホルダー20に保持されたトイレットペーパー100から、所望の長さのペーパー102を切り離すことができる。また、トイレットペーパー100を囲むような板部材が無いため、トイレットペーパー100自体を掴んで回転させて、ペーパー102を引き出すことができる。更に、トイレットペーパー100を切断刃43Bの向きに対して逆回転させても、ペーパー102を引き出すことができる。
【0067】
ところで、トイレットペーパー100の使用に伴い、ロールペーパーホルダー20に保持されるトイレットペーパー100の残量は減っていく。すなわち、ロール芯101に巻かれているトイレットペーパー100の直径(以下、巻き径と言う)は、トイレットペーパー100の使用に伴い徐々に小さくなる。本実施形態によれば、ロールペーパーホルダー20は、押さえ棒43と支持棒31とによりトイレットペーパー100を挟み込むように構成されている。また、第1摺動部32Aおよび第2摺動部32Bが第1支柱41および第2支柱42を下方に案内するので、トイレットペーパー100の使用に伴い、押さえ棒43は真っ直ぐ下方に移動する。トイレットペーパー100の残量が減っても、トイレットペーパー100に対する押さえ棒43のY方向の位置および角度は、あまり変化しない。そのため、トイレットペーパー100の残量に拘わらず、押さえ棒43によりトイレットペーパー100を良好に押さえることができる。また、トイレットペーパー100の残量に拘わらず、切断刃43Bによりトイレットペーパー100を良好に切断することができる。
【0068】
<トイレットペーパーの切り取り試験および引き出し試験>
本願発明者は、前記実施形態に係るロールペーパーホルダー20を用いたトイレットペーパー100の切り取り試験および引き出し試験を行った。次に、その試験について説明する。
【0069】
試験には、王子ネピア株式会社製の製品名「nepia(ネピア)ネピネピ無香料[ダブル/25m/無香]」、ミシン目間隔22cmのミシン目有りのトイレットペーパー100を用いた。切り取り試験の手順は以下の操作1~3の通りである。
操作1:ミシン目部分でトイレットペーパー100を切断し、先端状態を揃える。次いで、ペーパー102の先端部分を水平方向(
図6のY2方向)に15cm引き出した後、ペーパー102を切断刃43Bに押し当てた状態で鉛直方向(Z方向)に立てる。
操作2:トイレットペーパー100から引き出したペーパー102が弛まないようにしつつ、ペーパー102の先端の一方の端部(ペーパー102の短手方向の一端部であって、
図6のX2方向側の端部)をつまむ。
操作3:つまんだ端部とは逆側の端部(ペーパー102の短手方向の他端部)の方(X1方向)に向けて、ペーパー102を素早く引っ張る。この際、反動をつけないようにする。
【0070】
トイレットペーパー100の引き出し試験の手順は以下の通りである。まず、ミシン目部分でペーパー102を切断し、先端状態を揃える。次いで、ペーパー102の先端部分を片手の人差し指と親指で摘まみ、水平方向(
図6のY2方向)に勢いよく60cm引っ張り出す。そして、そのときの、ペーパー102の撓みや抵抗感を評価し、下記の基準に基づいてつけた点数の多い方が良好と判断した。
ペーパーが必要以上に引き出され、撓んだ:1点
ペーパーが適度に引き出されたが、引き出す動作は重い:2点
ペーパーが適度に引き出され、引き出す動作も軽い:3点
【0071】
各部材の仕様は下記の通りである。
(1)ペーパー支持部材
ペーパー支持部材30は、ポリプロピレン樹脂を用いて一体で射出成型した。支持棒31の直径は20mm、長さは125mmである。第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bの直径は、20mmに後述の表1および表2のクリアランス(mm)の2倍を加算した値とした。ペーパー支持部材30は、射出成形で一体成型した。材料にはポリプロピレンを用いた。
(2)ペーパー押さえ部材
押さえ棒43は、ポリプロピレン樹脂を用いて一体で射出成型した。押さえ棒43は、長さ180mm、幅20mm、厚さ2mmの板状に形成し、中心から左右60mmに渡り、切断刃43Bを形成した。幅1.2mm、ピッチ1.2mm間隔の櫛歯状の切断刃43Bとした。切断刃43Bの取付角度や刃先角度は、それぞれ表2に示す通りである。押さえ棒43の両端の下面に、ポリプロピレン樹脂製パイプ(外径20mm、内径16.2mm)を接続し、第1支柱41および第2支柱42とした。
(3)ペーパー押さえ部材の質量
質量が20gのペーパー押さえ部材40には、ポリプロピレン樹脂製パイプ(第1支柱41および第2支柱42)の長さが60mmのものを用いた。質量が30gのペーパー押さえ部材40には、ポリプロピレン樹脂製パイプの長さが100mmのものを用いた。質量が50g以上の場合は、板状の押さえ棒43の上に板状の錘を載せて質量を調整した。
【0072】
各実施例のロールペーパーホルダー20を用いて操作1~3を行った後、トイレットペーパー100から切り離したペーパー102の長手方向の破断長さLP(
図14参照)を測定した。なお、ペーパー102の破断部102dが短手方向に一直線に切れている場合、破断長さLPは0となる。破断長さLPが短いほど、ペーパー102は良好に切り離されたと評価することができる。各実施例について操作1~3を3回行い、3回の測定を行った。3回の測定の平均値を各実施例の破断長さLPとして算出した。
【0073】
前記実施形態に係るロールペーパーホルダー20では、第1支柱41と第1摺動孔35Aの内周面とのクリアランスと、第2支柱42と第2摺動孔35Bの内周面とのクリアランスとは、互いに等しい。以下に示す表1および表2では、それらのクリアランスを「支柱と摺動孔とのクリアランス」と表記する。また、第1摺動孔35Aおよび第2摺動孔35Bについて、内径/高さの値は等しい。表1および表2では、それらを「摺動孔の内径/高さ」と表記する。
【0074】
【表1】
実施例1~4では、ペーパー押さえ部材40の質量が異なり、その他の条件は同じである。表1から分かるように、実施例1~4では、それぞれ質量が軽くなるに従い、破断長さLPの値(以下、単にLP値という)は大きくなる。質量30gの場合は、50gの場合よりやや劣り、20gでは更に劣る結果となった。実施例5では、クリアランスを実施例3より小さくした結果、30gでもLP値は優れた結果となった。更に、実施例4では、押さえ部材の質量が低すぎるため、ペーパーを押さえる力が弱く、必要以上にペーパーが引き出された。
【0075】
【表2】
摺動孔の内径/高さの比が2を超える実施例6では、ペーパーが縦に裂けて、切断できなかった。実施例7~8では、摺動孔の内径/高さの比が2以下であり、LP値は良好であった。実施例9~12では、ペーパー押さえ部材40の質量を大きく、かつ、クリアランスを小さくした。しかしながら、摺動孔の内径/高さの比が2を超える実施例9では、ペーパーが裂けて切断できなかった。一方、実施例10~12では、摺動孔の内径/高さの比が2以下ではペーパーを切断できる結果となり、また、摺動孔の内径/高さの比が小さくなるに従い、LP値が良好となる結果であった。更に、実施例9~12では、ペーパー押さえ部材40の質量が大きいため、ペーパー引き出し試験の結果がやや劣ることとなった。
【0076】
下記の表3は、いくつかの実施例について、切断刃43Bの刃先角度αと取付角度βについてデータをまとめたものである。
【表3】
実施例2、13の刃先角度αはそれぞれ60°、15°であり、LP値は良好であった。実施例14の刃先角度αは80°であり、LP値が実施例2,13よりやや劣る結果となった。実施例15の刃先角度αは90°であり、LP値が実施例14より更に劣る結果となった。実施例16~17は、刃先角度αが60°で共通し、取付角度βが異なる実施例である。角度α+βが90°を超えた実施例18は、角度α+βが90°以下の実施例16、17よりも劣る結果となった。
【0077】
次に、本実施形態に係るロールペーパーホルダー20およびポータブルトイレ1によってもたらされる効果について説明する。
【0078】
本実施形態に係るポータブルトイレ1によれば、バケツ10と、バケツ10の後方に配置された背もたれ6と、バケツ10の側方に配置された肘掛け支柱8と、肘掛け支柱8に支持された肘掛け7と、バケツ10の側方または前方に配置されたロールペーパーホルダー20とを備えている。ロールペーパーホルダー20は、トイレットペーパー100を回転可能に支持するペーパー支持部材30と、ペーパー支持部材30に支持されたトイレットペーパー100を押さえるペーパー押さえ部材40とを備えている。ペーパー押さえ部材40はペーパー支持部材30に摺動可能に係合しており、ロールペーパーホルダー20はペーパー押さえ部材40とペーパー支持部材30とによってトイレットペーパー100を挟み込むように構成されている。
【0079】
利用者がペーパー102を引っ張るときに、ペーパー押さえ部材40およびペーパー支持部材30はトイレットペーパー100の回転の抵抗となる。そのため、トイレットペーパー100が回転しすぎることが抑制される。利用者は、ロールペーパーホルダー20からペーパー102を容易に所望の長さに引き出すことができる。また、トイレットペーパー100はペーパー押さえ部材40とペーパー支持部材30とに挟まれているので、利用者は、片手でペーパー102を引き出した後、ペーパー102をペーパー押さえ部材40の方に折り返して引っ張ることにより、ペーパー102を切り離すことができる。利用者は、トイレットペーパー100からペーパー102を片手で容易に所望の長さに切り離すことができる。本実施形態に係るポータブルトイレ1によれば、利用者は容易にトイレットペーパー100を利用することができる。
【0080】
本実施形態によれば、ペーパー支持部材30に支持されるトイレットペーパー100をペーパー押さえ部材40が30gf以上の荷重で押さえるように構成されている。このことにより、トイレットペーパー100をペーパー押さえ部材40によって良好に押さえることができ、ペーパー押さえ部材40とペーパー支持部材30とによりトイレットペーパー100を良好に挟み込むことができる。したがって、利用者は、ペーパー102を片手で容易に引き出すことができ、容易に切り離すことができる。
【0081】
ペーパー押さえ部材40によってトイレットペーパー100を押さえるために、ペーパー押さえ部材40をトイレットペーパー100に向けて付勢する部材として、ばねや磁石等の部材を付加してもよい。例えば、ペーパー押さえ部材40に、下向きの力を与えるばねまたは磁石を設けるようにしてもよい。しかし、本実施形態によれば、ペーパー押さえ部材40の質量を30g以上に設定し、ペーパー押さえ部材40の自重により、ペーパー押さえ部材40とペーパー支持部材30とによってトイレットペーパー100を挟み込むように構成されている。そのため、ばねや磁石等の部材は不要である。本実施形態によれば、安価かつ簡易な構成により、トイレットペーパー100を良好に挟み込んで保持することができる。
【0082】
本実施形態によれば、ペーパー押さえ部材40はペーパー支持部材30の上方に配置された押さえ棒43を有し、押さえ棒43とペーパー支持部材30とによってトイレットペーパー100を挟み込むように構成されている。これにより、トイレットペーパー100を良好に挟み込んで保持することができる。
【0083】
本実施形態によれば、ペーパー支持部材30は、トイレットペーパー100のロール芯101に挿入される支持棒31を有している。これにより、ペーパー押さえ部材40と支持棒31とによってトイレットペーパー100を挟み込むことができる。トイレットペーパー100を良好に挟み込んで保持することができる。
【0084】
本実施形態によれば、ロールペーパーホルダー20は、ペーパー支持部材30の嵌め込み部33Aが肘掛け支柱8に嵌め込まれることにより、肘掛け支柱8に支持されている。ロールペーパーホルダー20をポータブルトイレ1に容易に取り付けることができる。また、ロールペーパーホルダー20を、便座5に座った利用者にとって使いやすい位置に容易に設置することができる。
【0085】
本実施形態によれば、嵌め込み部33Aにゴム製またはエラストマー製のバンド37が巻かれている。バンド37における嵌め込み部33Aの内周面に設けられた部分は、嵌め込み部33Aが肘掛け支柱8に対して回転することを規制する回転規制部として機能する。本実施形態によれば、利用者がロールペーパーホルダー20からペーパー102を引き出すとき、および、ペーパー102を切り離すときに、嵌め込み部33Aが肘掛け支柱8に対して回転してしまうことを規制することができる。よって、ペーパー102の引き出しおよび切り離しが容易となる。
【0086】
本実施形態によれば、ペーパー支持部材30は、トイレットペーパー100のロール芯101に挿入される支持棒31と、支持棒31の一端に形成された第1摺動部32Aと、支持棒31の他端に形成された第2摺動部32Bとを有している。ペーパー押さえ部材40は、第1摺動部32Aに上下に摺動可能に係合する第1支柱41と、第2摺動部32Bに上下に摺動可能に係合する第2支柱42と、第1支柱41と第2支柱42とに架け渡された押さえ棒43とを有している。押さえ棒43は支持棒31の上方に配置されており、ロールペーパーホルダー20は、押さえ棒43と支持棒31とによってトイレットペーパー100を挟み込むように構成されている。ロールペーパーホルダー20がこのような構成を備えていることにより、利用者は、トイレットペーパー100の残量に依存せずに、ペーパー102を片手で容易に引き出すことができ、容易に切り離すことができる。
【0087】
(第2実施形態)
第1実施形態では、ロールペーパーホルダー20のペーパー支持部材30は、ポータブルトイレ1の肘掛け支柱8に直接的に取り付けられている。ペーパー支持部材30の嵌め込み部33Aの内周面は、肘掛け支柱8の外周面と接触している。しかし、ペーパー支持部材30の取り付け形態は特に限定されない。
図15に示すように、第2実施形態は、ペーパー支持部材30の嵌め込み部33Aとポータブルトイレ1の肘掛け支柱8との間に、固定アダプター50を介在させたものである。なお、
図15では、肘掛け支柱8の一部のみを図示している。以下の説明では、第1実施形態と同様の部材および部分には同様の符号を付し、それらの説明は省略する。
【0088】
図16は固定アダプター50の斜視図である。固定アダプター50は、断面C字状に形成されている。固定アダプター50は、円筒の一部を切り欠いたような断面C字状の胴部53と、胴部53の一端に設けられた第1フランジ部51と、胴部53の他端に設けられた第2フランジ部52とを有している。胴部53と同様、第1フランジ部51および第2フランジ部52は断面C字状に形成されている。第1フランジ部51および第2フランジ部52は、胴部53よりも径方向の外方に突出している。
【0089】
図15に示すように、固定アダプター50は肘掛け支柱8に取り付けられる。固定アダプター50は合成樹脂製であり、可撓性を有している。固定アダプター50の材料は特に限定されず、例えば、PP、PE、ABS、PVC(ポリ塩化ビニル)樹脂等であってもよい。断面C字状の固定アダプター50の開口部を肘掛け支柱8に押しつけることにより、固定アダプター50を肘掛け支柱8に容易に嵌め込むことができる。
【0090】
本実施形態では、ペーパー支持部材30の嵌め込み部33Aは、固定アダプター50に取り付けられている。断面C字状の嵌め込み部33Aの開口部を固定アダプター50に押しつけることにより、嵌め込み部33Aを固定アダプター50に嵌め込むことができる。嵌め込み部33Aは、固定アダプター50を介して肘掛け支柱8に間接的に取り付けられる。本実施形態においても、ペーパー支持部材30の嵌め込み部33Aを容易に嵌め込むことができる。
【0091】
固定アダプター50の外径は肘掛け支柱8の外径よりも大きい。本実施形態によれば、肘掛け支柱8が比較的細いポータブルトイレ1に対して、ロールペーパーホルダー20を取り付けることができる。比較的太い肘掛け支柱8を備えるポータブルトイレ1に対しては、嵌め込み部33Aを直接的に嵌め込む一方、比較的細い肘掛け支柱8を備えるポータブルトイレ1に対しては、固定アダプター50を介して嵌め込み部33Aを間接的に嵌め込むこととすれば、肘掛け支柱8の太さが異なる複数種類のポータブルトイレ1に対して、同一のロールペーパーホルダー20を利用することができる。本実施形態によれば、ロールペーパーホルダー20の利便性を向上させることができる。
【0092】
本実施形態によれば、固定アダプター50は少なくとも1つのフランジを固定アダプター50の下部に有しており、ロールペーパーホルダー20の下方へのずれを防止する。ここでは、固定アダプター50は第1フランジ部51および第2フランジ部52を有している。第1フランジ部51により、嵌め込み部33Aの上方への移動を阻止することができ、ロールペーパーホルダー20の上方への位置ずれを防止することができる。第2フランジ部52により、嵌め込み部33Aの下方への移動を阻止することができ、ロールペーパーホルダー20の下方への位置ずれを防止することができる。ただし、第1フランジ部51および第2フランジ部52は必ずしも必要ではなく、いずれか一方または両方を省略することが可能である。
【0093】
固定アダプター50の外周面は平滑面であってもよいが、
図17に示すように、固定アダプター50の外周面に凸部55が設けられていてもよい。嵌め込み部33Aの内周面には、凹部36が設けられている(
図4および
図6参照)。固定アダプター50の凸部55と嵌め込み部33Aの凹部36とが係合することにより、固定アダプター50に対する嵌め込み部33Aの回転が規制される。本実施形態では、嵌め込み部33Aに巻かれたバンド37に加えて、上記の凸部55および凹部36によって、嵌め込み部33Aの回転を規制する回転規制部が構成されている。本実施形態においても、利用者がロールペーパーホルダー20からペーパー102を勢いよく引っ張った場合に、ロールペーパーホルダー20が肘掛け支柱8の周りに回転してしまうことを防止することができる。
【0094】
なお、本実施形態では、固定アダプター50の外周面に凸部55が設けられ、嵌め込み部33Aの内周面に上記凸部55と係合する凹部36が形成されているが、固定アダプター50の外周面に凹部が形成され、嵌め込み部33Aの内周面に上記凹部と係合する凸部が形成されていてもよい。また、固定アダプター50の凸部55および嵌め込み部33Aの凹部36は必ずしも必要ではない。回転規制部は、バンド37のみにより構成されていてもよい。また、バンド37を省略し、回転規制部を上記の凸部55および凹部36のみにより構成してもよい。
【0095】
(第3実施形態)
第1および第2実施形態では、ロールペーパーホルダー20のペーパー支持部材30は、嵌め込み部33Aを有する固定部33を備えている。ロールペーパーホルダー20は、ポータブルトイレ1の肘掛け支柱8に嵌め込み部33Aを直接的または間接的に嵌め込むことにより、ポータブルトイレ1に取り付けられている。しかし、ロールペーパーホルダー20をポータブルトイレ1に取り付ける形態は特に限定されない。ロールペーパーホルダー20は、ポータブルトイレ1に設けられた任意の支柱に取り付けることができる。
【0096】
また、ペーパー支持部材30の支持棒31の一端側および他端側には、孔30aが形成されている(
図3参照)。これらの孔30aをポータブルトイレ1の一部、または、ポータブルトイレ1に取り付けられた部材に引っ掛けることにより、ロールペーパーホルダー20をポータブルトイレ1に取り付けるようにしてもよい。例えば、
図18に示すように、ポータブルトイレ1における水平に延びる部材(例えば、肘掛け7の下の棒8A(
図1参照))にフック65を引っ掛け、そのフック65をペーパー支持部材30の孔30aに引っ掛けるようにしてもよい。このように、フック65を用いてロールペーパーホルダー20をポータブルトイレ1に取り付けることも可能である。その他、介護用ベッドのフレーム、手摺り、椅子フレーム、棚などに取り付けることも可能である。
【0097】
(その他の実施形態)
支持棒31が水平に延びるような姿勢でロールペーパーホルダー20を設置する場合、上下方向に延びる任意の支柱が、嵌め込み部33Aに嵌め込まれる支柱となり得る。ペーパー支持部材30は、第1摺動部32Aおよび第2摺動部32Bに加えて、1つまたは2つ以上の他の摺動部を備えていてもよい。ペーパー押さえ部材40は、第1支柱41および第2支柱42に加えて、ペーパー支持部材20の摺動部に摺動可能に挿入される1本または2本以上の他の支柱を備えていてもよい。
【0098】
前記実施形態では、ペーパー支持部材30は第1摺動部32Aおよび第2摺動部32Bを備え、ペーパー押さえ部材40は第1支柱41および第2支柱42を備えているが、第1摺動部32Aおよび第2摺動部32Bのいずれか一方は無くてもよく、第1支柱41および第2支柱42のいずれか一方は無くてもよい。例えば、
図19に示すように、ペーパー押さえ部材40は支柱として第1支柱41のみを備え、第2支柱42が無くてもよい。ロールペーパーホルダー20は、1本支柱式であってもよい。
【0099】
図6に示すように、前記実施形態では、ペーパー押さえ部材40はペーパー支持部材30に対して、切断刃43BがY2方向を向くように組み付けられている。しかし、ペーパー押さえ部材40は、ペーパー支持部材30に対して前後反転して組み付けることが可能である。利用者の使いやすい向きにペーパー押さえ部材40を配置することができる。
図20に示すように、ペーパー押さえ部材40はペーパー支持部材30に対して、切断刃43BがY1方向を向くように組み付けられてもよい。この場合、ペーパー押さえ部材40の第1支柱41は第2摺動孔35Bに挿入され、第2支柱42は第1摺動孔35Aに挿入される。第2摺動孔35Bは、ペーパー押さえ部材40の第1支柱41が、第1摺動孔35Aに挿入されているときの姿勢から左右に180°回転した姿勢で挿入可能に構成されている。
【0100】
図7に示すように、前記実施形態では、ペーパー支持部材30は、固定部33のアーム部33Bが第1摺動部32AからX2方向かつY1方向に延びている。しかし、ペーパー支持部材30は、肘掛け支柱8等の支柱に対して上下反転して嵌め込むことが可能である。
図21に示すように、ペーパー支持部材30は、アーム部33Bが第1摺動部32AからX2方向かつY2方向に延びるように配置されてもよい。
【0101】
図16に示すように、固定アダプター50の胴部53の縁に、係止爪56が設けられていてもよい。
図22(a)に示すように、固定アダプター50が嵌め込まれる支柱8に、係止爪56が係止する凹部8dが形成されていてもよい。
図22(b)に示すように、固定アダプター50を支柱8に嵌め込んだときに、係止爪56が凹部8dに係止することにより、固定アダプター50が下方に滑り落ちることが防止される。また、係止爪56を凹部8dに嵌め込むことにより、固定アダプター50の支柱8に対する上下位置を所定の位置に設定することができる。
【0102】
前述のポータブルトイレ1の構成は一例に過ぎない。座部3の構成は特に限定されない。また、肘掛け7、背もたれ6、および蓋9のうちの一つまたは二つ以上は、必ずしも必要ではない。座部3が床に直接載置されるように形成されている場合、脚4は無くてもよい。
【0103】
前記実施形態では、ロールペーパーホルダー20はZ方向が上下方向となるような姿勢で使用されるが、ロールペーパーホルダー20の設置姿勢は特に限定されない。例えば、ばねまたは磁石等によって押さえ棒43を支持棒31に向けて付勢し、X方向が上下方向となるような姿勢でロールペーパーホルダー20を設置してもよい。押さえ棒43のロールペーパーに対する荷重は30gf以上が好ましい。
【0104】
前記実施形態では、ペーパー支持部材30の嵌め込み部33Aの回転を規制する回転規制部は、嵌め込み部33Aに巻かれたゴム製またはエラストマー製のバンド37を有するが、バンド37に代えて、嵌め込み部33Aの内周面に点状または線状のゴムまたはエラストマーを設けるようにしてもよい。回転規制部の具体的構成は特に限定されない。
【符号の説明】
【0105】
1 ポータブルトイレ
8 肘掛け支柱
20 ロールペーパーホルダー
30 ペーパー支持部材
31 支持棒
32A 第1摺動部
32B 第2摺動部
33 固定部
33A 嵌め込み部
35A 第1摺動孔
35B 第2摺動孔
40 押さえ部材
41 第1支柱
42 第2支柱
43 押さえ棒
43A 棒状体
43B 切断刃
100 トイレットペーパー
102 ペーパー