(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140898
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート
(51)【国際特許分類】
A23G 1/32 20060101AFI20230928BHJP
A23G 1/46 20060101ALI20230928BHJP
A21D 13/38 20170101ALN20230928BHJP
A21D 13/31 20170101ALN20230928BHJP
A21D 13/16 20170101ALN20230928BHJP
A21D 13/80 20170101ALN20230928BHJP
【FI】
A23G1/32
A23G1/46
A21D13/38
A21D13/31
A21D13/16
A21D13/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046952
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 文香
(72)【発明者】
【氏名】淺野 茂三
(72)【発明者】
【氏名】木村 太喜
(72)【発明者】
【氏名】片淵 真紀
【テーマコード(参考)】
4B014
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GB11
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG10
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4B014GK05
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4B032DK70
4B032DL03
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4B032DP08
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4B032DP29
4B032DP30
4B032DP33
4B032DP40
4B032DP60
(57)【要約】
【課題】本発明は、焼菓子生地やパン生地という水分含有生地と接している状態で焼成するにもかかわらず、焼成から時間が経っても、ザクザクとした硬いチョコレート食感を有する、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレートを提供することを課題とする
【解決手段】本発明により、(a)ブドウ糖、(b)粉乳、及び(c)澱粉及び/又は澱粉分解物を含有することで、焼菓子生地やパン生地という水分含有生地と接している状態で焼成するにもかかわらず、焼成から時間が経っても、ザクザクとした硬いチョコレート食感を有する、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレートを提供することができることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ブドウ糖、(b)粉乳、及び(c)澱粉及び/又は澱粉分解物を含有する、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート。
【請求項2】
焼成前の該チョコレート中の水分含量が3重量%未満である、請求項1に記載の水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート。
【請求項3】
該チョコレート中のブドウ糖が3~30重量%である、請求項1または2に記載の水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート。
【請求項4】
該チョコレート中の粉乳が3~30重量%である、請求項1~3いずれか1項に記載の水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート。
【請求項5】
該チョコレート中の澱粉及び/又は澱粉分解物が0.1~15重量%である、請求項1~4いずれか1項に記載の水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート。
【請求項6】
焼成用チョコレートであって、(a)ブドウ糖3~30重量%、(b)粉乳3~30重量%、及び(c)澱粉及び/又は澱粉分解物0.1~15重量%を含有し、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地に接して焼成する、硬いチョコレート食感付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは多くの菓子に使用される等、万人に好まれる食品である。チョコレートは菓子類やパン類との組み合わせで使用されることも多く、菓子やパンにトッピングされたり、菓子生地やパン生地に包餡されたりと、様々な用途で使用され、多種多様な製品が売り場を彩っている。
【0003】
菓子やパンに使用する焼成チョコレートに関連する出願としては、例えば特許文献1~3が存在する。特許文献1では、包あん後加熱工程を経る菓子に用いられる常温流通菓子用含水チョコレートに関して記載されている。特許文献2では、「油脂が分離しにくい及び耐熱性を有するソフトチョコレートに適した加熱用チョコレート」について記載されている。特許文献3では、「総油分含量が20.0~32.2質量%、総油分含量に対するカカオ固形原料由来の固形分含量の比率が0.56以上である焼成食品用チョコレート」について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-191918号公報
【特許文献2】特開2021-045101号公報
【特許文献3】特開2012-070710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、焼菓子生地やパン生地という水分含有生地と接している状態で焼成するにもかかわらず、焼成から時間が経っても、ザクザクとした硬いチョコレート食感を有する、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレートを提供することを課題とする。特に、高水分を含有するパン生地と同時焼成した場合であっても、ザクザクとした食感を有する、トッピング用、練り込み用、内包用、又は包餡用である、同時焼成用チョコレートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
クッキー、ビスケットなどの焼菓子やパン類に成型チョコレートをトッピングした商品や、また、焼菓子やパン類のセンターにチョコレート類を内包、包餡した形態の食品は数多くの種類が市場に存在する。これらは生産効率などの面から、焼菓子生地またはパン生地にチョコレート類が接した状態で同時焼成する製造方法がとられることが多い。
しかしながら、同時焼成する場合、水分を含有する焼菓子生地やパン生地から、水分がチョコレート側へと移行し、焼成から時間が経つとザクザクとしたチョコレートの食感が失われるという課題を有していた。
【0007】
なお、特許文献1では、ブドウ糖を含有するが、水分が3重量%よりも多く含む常温流通菓子用含水チョコレートであるため、本発明を完成させる上で参考とはならなかった。特許文献2では、ソフトチョコレートに適した加熱用チョコレートに関する出願であり、本発明を完成させる上で参考とはならなかった。
また、特許文献3は「パン、焼き菓子等の焼成前の焼成食品生地に含ませた状態で焼成食品生地と共に焼成される焼成食品用チョコレート及び当該チョコレートを用いたパン、焼き菓子等の焼成食品に関する」発明であるが、本願とは、課題を解決する方法が異なる上に、更に、本願のような、ザクザクとした食感を有する、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレートを提供できる旨記載はなく、参考とならなかった。
【0008】
本発明者らは、焼菓子生地やパン生地という水分含有生地と共にチョコレートを焼成した場合であっても、焼成後、ザクザクとした硬いチョコレート食感を有する、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成チョコレートを提供することが出来れば、更なる市場の拡大につながるのではないかと鋭意検討を重ねた結果、(a)ブドウ糖、(b)粉乳、及び(c)澱粉及び/又は澱粉分解物を含有することで、前記課題を解決し本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、
(1)(a)ブドウ糖、(b)粉乳、及び(c)澱粉及び/又は澱粉分解物を含有する、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート、
(2)焼成前の該チョコレート中の水分含量が3重量%未満である、(1)に記載の水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート、
(3)該チョコレート中のブドウ糖が3~30重量%である、(1)または(2)に記載の水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート、
(4)該チョコレート中の粉乳が3~30重量%である、(1)~(3)いずれか1項に記載の水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート、
(5)該チョコレート中の澱粉及び/又は澱粉分解物が0.1~15重量%である、(1)~(4)いずれか1項に記載の水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート、
(6)焼成用チョコレートであって、(a)ブドウ糖3~30重量%、(b)粉乳3~30重量%、及び(c)澱粉及び/又は澱粉分解物0.1~15重量%を含有し、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地に接して焼成する、硬いチョコレート食感付与方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、焼菓子生地やパン生地という水分含有生地と接している状態で焼成するにもかかわらず、焼成から時間が経っても、ザクザクとした硬いチョコレート食感を有する、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレートを提供することができる。特に、高水分含有生地であるパン生地との同時焼成であっても、焼成から時間が経っても、ザクザクとした硬いチョコレート食感を有する、トッピング用、練り込み用、内包用、又は包餡用である、同時焼成用チョコレートを提供することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で言う水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレートとは、焼菓子生地又はパン生地等の穀粉食品生地にチョコレート類をトッピングした状態や、チョコレート類を生地中に練り込んで点在させた状態、また、焼菓子やパン類のセンターにチョコレート類を内包もしくは包餡した状態、すなわち、チョコレート類と穀粉食品生地が接している状態のまま、オーブン等で焼成することができるチョコレート類を指す。
【0012】
本発明におけるチョコレート類とは、規約(「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」)ないし法規上の制約を受けるものではなく、ココアバター以外の動植物油脂を使用した各種チョコレート類および油脂加工食品、チョコレート製品を包含する。カカオマス、ココアバター、ココア、食用油脂類、糖類、粉乳、乳化剤、香料などの原材料を適宜配合し、常法によりチョコレート類を調製する。チョコレート類は、テンパー型チョコレート、ノーテンパー型チョコレートのいずれであっても、本発明の効果を得ることが可能である。
【0013】
本発明において使用する油脂は、本発明の効果を妨げない範囲で、一般的にチョコレート類に使用する油脂をいずれも使用することができる。たとえば、ココアバター、パーム油、菜種油、ひまわり油、シア脂、大豆油、綿実油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、米ぬか油、ゴマ油、カポック油、ヤシ油、パーム核油等の各種の植物油脂及びそれらの硬化油、分別油、エステル交換油等の加工油脂が例示でき、これらを適宜組み合わせて使用することができる。本発明では、特に、ココアバター、パーム油、菜種油、ひまわり油、及びシア脂から選ばれる1以上を使用することが好ましい。テンパー型であれば、ココアバター、CBE、CBIを使用することができる。ノーテンパー型であれば、CBSやCBRなどの油脂に低融点油脂を混合して調製するような、ソフトチョコであるフィリングタイプでもできる。
【0014】
本発明の該同時焼成用チョコレートは、所望のチョコレート類の配合をベースとし、(a)ブドウ糖、(b)粉乳、及び(c)澱粉及び/又は澱粉分解物を含有することに特徴がある。
(a)ブドウ糖は、該チョコレート中に、3~30重量%含有し、好ましくは5~25重量%、より好ましくは7~22重量%することが好ましい。ブドウ糖が3重量%よりも少ない場合、口に入れた際に最初に感じる、該チョコレートのザクザク食感が弱くなる。また、ブドウ糖が30重量%よりも多い場合、焼成から時間が経つにつれ、該チョコレートのザクザク食感が弱くなる。
(b)粉乳は、該チョコレート中に3~30重量%含有し、好ましくは5~25重量%、より好ましくは7~22重量%含有することが好ましい。粉乳が3重量%よりも少ない場合、ブドウ糖と併用した時のザクザク食感が弱くなる。また、粉乳が30重量%よりも多い場合、硬いザクザクとした食感ではなく、ホロホロとした食感になる。
(c)澱粉及び/又は澱粉分解物は、該チョコレート中に0.1~15重量%含有し、好ましくは1~10重量%、より好ましくは3~8重量%することが好ましい。澱粉が0.1重量%よりも少ない場合、口に入れた際に最初に感じる、該チョコレートのザクザク食感が弱くなり、さらに、焼成から時間が経つにつれ、該チョコレートのザクザク食感が弱く感じられる。また、澱粉が15重量%よりも多い場合、該チョコレートの風味が悪くなる傾向にあり、該チョコレートを口に入れた際の口溶けが悪くなる傾向にある。
(a)ブドウ糖、(b)粉乳、及び(c)澱粉及び/又は澱粉分解物を所定量配合することで、水分を含有する焼菓子生地やパン生地と接している状態で焼成するにもかかわらず、ザクザクとした食感を有する、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレートを提供することができる。
本発明で言う硬いチョコレート食感とは、硬いクッキーやビスケットを食した際のようなザクザクとした食感であり、例えば、パンと同時に食した場合においても、該同時焼成用チョコレートが口の中で存在感のある、明らかにザクザクとした食感のこと言う。
【0015】
本発明で使用するブドウ糖は、無水結晶、または含水結晶のどちらも使用することができる。ただし、チョコレート液の製造適性を考慮すると、特に無水結晶の方が好ましい。
また、本発明で使用する粉乳は、全粉乳及び/又は脱脂粉乳が好ましく、特に全粉乳が好ましい。
全粉乳は、噴霧乾燥法、ドラム乾燥法、凍結乾燥法等の製法があるが、いずれの方法でもよく、特に噴霧乾燥法での全粉乳が最も好ましい。また、脱脂粉乳は、噴霧乾燥法、ドラム乾燥法、凍結乾燥法等の製法があるが、いずれの方法でもよく、特に噴霧乾燥法での脱脂粉乳が最も好ましい。
【0016】
本発明で使用する澱粉は、食用として用いられているものであれば何れを用いてもよいが、例えば、小麦澱粉、米澱粉、モチ米澱粉、サゴ澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ、デントコーン澱粉、ワキシーコーン澱粉等の生澱粉や、これらに架橋処理、α化処理、エーテル化処理、エステル化処理、分解処理等の処理が施された加工澱粉等が挙げられる。特に、本発明では、コーンスターチ、デントコーン澱粉、ワキシーコーン澱粉、タピオカ澱粉の生澱粉、およびこれらに架橋処理、α化処理、エーテル化処理、エステル化処理、分解処理の処理が施された加工澱粉であることが好ましく、より好ましくはコーン澱粉またはタピオカ澱粉、およびこれらに架橋処理、α化処理、エーテル化処理、エステル化処理、分解処理の処理が施された加工澱粉であり、更に好ましくは酸化澱粉又はコーン澱粉のヒドロキシプロピル化した加工澱粉であることが好ましい。また、澱粉の代わりまたは澱粉と同時に、澱粉分解物を用いることができる。澱粉分解物は、デキストリン、マルトデキストリン、粉飴が挙げられる。澱粉分解物は、同時焼成用チョコレート中、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上又は5重量%以上などとすることができる。また、さらに15重量%以下、14重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、11重量%以下、10重量%以下、9重量%以下又は8重量%以下などとすることができる。なお、澱粉分解物はそのDE(デキストロース当量)値を問わず、いずれのDE値であってもよい。
また、本発明の該同時焼成用チョコレートは、焼成前のチョコレート中の水分含量が3重量%未満であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る該同時焼成用チョコレートは、特定ないしは不定形状に成型されたものである。具体的には、キューブやチャンク(立方体~直方体)、円柱、プレート、チップ、ペレット、タブレット、粒状、球状、碁石状、薄片状、削り粉、フレーク、カール状に例示される。該チョコレートを、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地に組み合わせ、同時焼成することができるものである。
【0018】
本発明で言う水分を含有するパン生地又は焼菓子生地は、穀粉を原料とする生地をオーブン等で加熱して焼成される食品の生地であって、生地に使用する穀粉は、小麦粉、米粉、大豆粉、トウモロコシ由来物、芋澱粉等の穀粉から選ばれる1以上であることが好ましい。より好ましくは小麦粉又は米粉であり、更に好ましくは小麦粉である。
穀粉食品の例は、焼成菓子ではクッキー、ビスケット、クラッカー、タルト生地、サブレ、マフィン、パウンドケーキ、フィナンシェ、マドレーヌ、スポンジ、イースト菓子、各種スナック類、またパン類ではデニッシュ、クロワッサン、蒸しパン、ドーナツ、スコーン、パイ生地や、その他種々の、穀粉を主原料として使用した食品を例示できる。本発明では、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地は、クッキー生地、デニッシュ生地、クロワッサン生地又はパイ生地が好ましく、特に、デニッシュ生地またはクロワッサン生地がより好ましい。
なお、日本食品標準成分表2020年版(八訂、文部科学省)によれば、焼成後のクロワッサンの水分は20重量%、クッキーの水分は3重量%である。本発明では、たとえば、前記のクロワッサンやクッキーなど、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地に接しているにもかかわらず、(a)ブドウ糖、(b)粉乳、及び(c)澱粉及び/又は澱粉分解物を含有することで、焼成から時間が経っても、ザクザクとした硬いチョコレート食感を有するという顕著な効果を有するものである。
【0019】
本発明の水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレートは、上記に挙げた焼成菓子生地やパン生地、デニッシュ生地などのベーカリー生地と混合、内包、包餡、載置などに例示される手段により適宜組み合わせ、オーブン焼成することにより得られる。これにより、水分を含有する焼菓子生地やパン生地と接しているにもかかわらず、焼成から時間が経っても、ザクザクとした食感を有する、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレートを提供することができる。
【0020】
以下に実施例を記載する。以下「%」及び「部」は特に断りのない限り「重量%」及び「重量部」を意味するものとする。
【実施例0021】
○水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレートの調製
表1-1~表1-3の配合に従い、常法にてチョコレートを調製した。調製したチョコレートを60℃で溶解し、テンパリングを行ったものを、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレートとした。その後、65×25×8mmのサイズに成型した。
なお、実施例1~11及び比較例1~9の各チョコレートは、いずれも水分含量が3重量%未満であった。
【0022】
○パン生地との同時焼成方法
冷凍クロワッサンシートを20℃で30分解凍し、上記の該同時焼成用チョコレートをクロワッサンシートで内包し、更に解凍後、ホイロを行い、オーブン(上火200℃/下火200℃)で16分間焼成した。焼成後、該同時焼成用チョコレートが包まれたクロワッサンを室温で冷まし、室温になったものを官能評価した。
【0023】
【0024】
【0025】
表1-3.配合(比較例9及び実施例7~11)
・ブドウ糖には、昭和産業株式会社製「昭和無水結晶ぶどう糖」を使用した。
・全粉乳には、よつ葉乳業株式会社製「よつ葉全粉乳」を使用した。
・澱粉Aには、Tate & Lyle Ingredients Americas LLC製「ミラシック468」を使用した。澱粉Aは、コーン由来のヒドロキシプロピル化澱粉(加工澱粉)であった。
・澱粉Bには、日澱化學株式会社製「ラスターゲンFO」を使用した。澱粉Bは、酸化澱粉(加工澱粉)であった。
・澱粉分解物Aには、松谷化学工業株式会社製のデキストリン「パインデックス#100」(DE値:2~5)を使用した。
・澱粉分解物Bには、松谷化学工業株式会社製の粉飴「パインデックス#6」(DE値:38~42)を使用した。
・植物油脂には、不二製油株式会社製のテンパー型ハードバター「NEW-SS7」を使用した。
・乳化剤は、大豆レシチンを使用した。
【0026】
○評価法
実施例及び比較例について、評価を行った。上記で調製した該同時焼成用チョコレートを包んだクロワッサンを焼成した直後及び2日後について官能評価した。焼成から2日後までの保管条件は、焼成後に室温になるまで冷ましたものをプラスチック製包材に詰め、20℃で保管した。官能評価は、パネラー10名にて盲検にて試食を行い、チョコレート部分の食感について、合議にて以下の基準に従って評価した。
なお、本評価におけるパネラーは、従前からチョコレートおよび焼成チョコレートの研究に従事し、熟練したパネラー10名であった。
【0027】
<官能評価>
5点:非常に良好(非常にザクザクとした食感が感じられる)
4点:良好(ザクザクとした食感が感じられる)
3点:許容できる
2点:やや不良(ザクザクとした食感が弱く、サクサク又はホロホロといった食感が感じられる)
1点:不良(ザクザクとした食感が感じられず、なめらかな食感が感じられる)
なお、ホロホロとした食感とは、脆く、口の中で容易に崩れるような食感を指す。
【0028】
各パネラーの評点の平均値を求めた。そして平均値より、
A:4.5点以上
B:3.5点以上4.5点未満
C:3.0点以上3.5点未満
D:1.5点以上3.0点未満
E:1.5点未満
の5段階で評価付けを行い、直後及び2日後の両方の官能評価がC評価以上のものを、合格品質とした。結果を表2に示した。
【0029】
【0030】
表2の結果より、焼成直後及び2日後の両結果が合格であった、実施例1~11が最終合格であった。実施例1~11は、(a)ブドウ糖3~30重量%、(b)粉乳3~30重量%、及び(c)澱粉及び/又は澱粉分解物0.1~15重量%を含有する該チョコレートであった。なお、実施例1~11の該チョコレートは、硬いクッキーやビスケットを食した際のようなザクザクとした食感であり、パンと同時に食した際であっても、口の中で存在感のある、ザクザクとした硬いチョコレート食感を有するものであった。
【0031】
なお、官能評価の結果、比較例1は、(a)ブドウ糖、(b)粉乳、及び(c)澱粉及び/又は澱粉分解物を含有せず、直後及び2日後において、なめらかな食感であり不合格であった。
比較例2は、直後はザクザクとした食感であったが、2日後は硬さが弱まり、サクサクとした食感程度のものであり、不合格であった。(a)ブドウ糖が30重量%よりも多く、かつ(b)粉乳を含まず、焼成から時間が経つにつれ、ザクザクとした食感が弱くなった。
比較例3は、(b)粉乳及び(c)澱粉及び/又は澱粉分解物を含有せず、直後はザクザクとした食感であったが、2日後は硬さが弱まり、サクサクとした食感程度のものであり、不合格であった。
比較例4は、直後はサクサクかつホロホロとした食感であり、2日後はなめらかな食感であり不合格であった。(a)ブドウ糖及び(c)澱粉及び/又は澱粉分解物を含有しておらず、ザクザク食感とはならなかった。
比較例5は、(b)粉乳を含有せず、直後はザクザクとした食感であったが、2日後は硬さが弱まり、サクサクとした食感程度のものであり、不合格であった。
比較例6は、(a)ブドウ糖を含まず、直後からホロホロとした食感で、硬い食感とは言えず、2日後はなめらかな食感であり不合格であった。
比較例7は、(c)澱粉及び/又は澱粉分解物を含有せず、直後はザクザクとした食感であったが、2日後は硬さが弱まり、サクサクとした食感程度のものであり、不合格であった。
比較例8は、(a)ブドウ糖及び(b)粉乳を含有せず、直後及び2日後において、なめらかな食感であり不合格であった。
比較例9は、(c)澱粉及び/又は澱粉分解物を含有せず、直後はザクザクとした食感であったが、2日後は硬さが弱まり、サクサクとした食感程度のものであり、不合格であった。
【0032】
○水分測定
実施例1及び比較例9について、焼成前及び焼成後の該同時焼成用チョコレートの水分値を海砂法で測定した。焼成後の該同時焼成用チョコレートについては、「○パン生地との同時焼成方法」で調製した、クロワッサンに該同時焼成用チョコレートを内包し焼成した直後及び2日後のものについて水分値を測定した。それぞれn=3測定し、平均値を表3に示した。
【0033】
【0034】
表3の結果より、ザクザクとした食感が得られた実施例1について、焼成前に比べ焼成後の水分値は増加した。水分を含有するパン生地又は焼菓子生地から該同時焼成用チョコレートへ水分移行したにもかかわらず、本発明に係る該同時焼成用チョコレートは、ザクザクとした硬いチョコレート食感が得られるものであった。
【0035】
○焼菓子生地との同時焼成方法
表4の配合に従い、ショートニング、バニラフレーバー、砂糖をケンミックスで比重0.85になるまで混合し、そこへ全卵、炭酸アンモニウム、重曹を添加し、更に混合した。その後、水を添加し、比重0.80になるまで混合した後、ふるった薄力粉を加え、混合した。クッキー生地がまとまった段階で、実施例1の該同時焼成用チョコレート50部を加え、さらに混合した。なお、該同時焼成用チョコレートは、7mm角に成型したものを使用した。
上記の、該同時焼成用チョコレートが練り込まれたクッキー生地を、厚さ10mmに延ばし、40mmの丸形の型で抜き、オーブン(上火180℃/下火170℃)で20分間焼成した。焼成後、該同時焼成用チョコレートが練り込まれたクッキーを室温で静置して冷まし、室温になったものを、上記の「○評価法」と同様の基準で官能評価した。
【0036】
表4.配合
・ショートニングには、不二製油株式会社製「パンパスパーミーBBNLT30」を使用した。
【0037】
該同時焼成用チョコレートが練り込まれたクッキーの官能評価結果は、直後A評価、2日後A評価であり、両結果ともC評価以上となり合格であった。よって、焼菓子生地との同時焼成した場合においても、本発明の効果を有していた。
【0038】
考察
以上の結果より、本発明において、(a)ブドウ糖、(b)粉乳、及び(c)澱粉及び/又は澱粉分解物を含有することで、焼菓子生地やパン生地という水分含有生地と接している状態で焼成するにもかかわらず、焼成から時間が経っても、ザクザクとした硬いチョコレート食感を有する、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレートを提供することができることを見出した。
また、焼成前と焼成後において、該同時焼成用チョコレート中の水分値が増加しているにもかかわらず、焼成から2日経ってもザクザクとした硬いチョコレート食感を有しており、本発明で得られる該同時焼成用チョコレートは、顕著な効果を有するものであった。