(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140899
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ドラム式洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 37/06 20060101AFI20230928BHJP
D06F 33/36 20200101ALI20230928BHJP
D06F 105/48 20200101ALN20230928BHJP
【FI】
D06F37/06
D06F33/36
D06F105:48
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046953
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(74)【代理人】
【識別番号】100129377
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 耕司
(72)【発明者】
【氏名】香月 淳吾
【テーマコード(参考)】
3B165
3B167
【Fターム(参考)】
3B165AA05
3B165AD02
3B165AE01
3B165AE02
3B165AE05
3B165AE07
3B165BA52
3B165BA53
3B165CA01
3B165CA04
3B165CA11
3B165CB01
3B165CB31
3B165CB55
3B165CB59
3B165DW03
3B165DW05
3B165GA02
3B165GA12
3B165GA25
3B165GH03
3B167AA04
3B167AA05
3B167AD02
3B167AE01
3B167AE02
3B167AE05
3B167AE07
3B167BA52
3B167BA53
3B167HA11
3B167HA31
3B167JB03
3B167LC02
3B167LD12
(57)【要約】
【課題】ドラムの内周面にバッフルが設けられたドラム式洗濯機においても、ドラムの周方向について部分的に洗濯性能および濯ぎ性能が低下するのを抑制する。
【解決手段】本発明のドラム式洗濯機は、外槽と、外槽内に配置され、水平軸を回転軸として回転可能なドラムと、ドラムの内周面に設けられる少なくとも1つ以上のバッフルとを備え、バッフルに穴が形成されるとともに、ドラムにおけるバッフルの裏側部分に通水口が形成され、外槽の内側面には、ドラムが回転しているときに通水口と対向可能な凸部が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外槽と、
前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾く傾斜軸を回転軸として回転可能なドラムと、
前記ドラムの内周面に設けられる少なくとも1つ以上のバッフルとを備え、
前記バッフルに穴が形成されるとともに、前記ドラムにおける前記バッフルの裏側部分に通水口が形成され、
前記外槽の内側面には、前記ドラムが回転しているときに前記通水口と対向可能な凸部が設けられていることを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項2】
前記凸部は、前記ドラムの前記回転軸よりも下方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
前記凸部は、前記ドラムの正面側から背面側に向けて互いに離れて配置される複数の突出部を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載のドラム式洗濯機。
【請求項4】
前記ドラムの正面側から背面側に向かう方向の所定位置について、
前記通水口は、1つの前記バッフルの裏側部分に2つ以上形成されないことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のドラム式洗濯機。
【請求項5】
前記ドラムを回転駆動するためのモータと、
前記モータの回転数を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、布団の洗濯を行う場合、布団に作用する遠心力が布団に作用する重力と同等または布団に作用する重力よりも大きくなるように、モータの回転数を制御することを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のドラム式洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム式洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラム式洗濯機で洗濯物を洗濯する場合、洗濯物がドラム内に投入された後、洗い工程、濯ぎ工程、脱水工程の順に運転が行われるのが一般的である。その洗い工程では、ドラム内に水を給水する給水動作、ドラムを回転させる洗浄動作、ドラム内から水を排水する排水動作が順に行われた後で脱水動作が行われる。
【0003】
洗濯物の洗浄動作の際には、底部に水を溜めた外槽内で横軸型のドラムを回転させ、ドラム内に設けたバッフルにより洗濯物を持ち上げては落下させて、洗濯物をドラムの内周面に叩き付けることにより洗濯物を洗浄する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、ドラム式洗濯機において衣類などの洗濯物の他に、布団の洗濯や濯ぎが行われる場合がある。ドラム式洗濯機301で布団の洗濯や濯ぎを行う方法として、
図11に示すように、布団をドラム303の内周面に貼りつく程度のやや速い回転数で、外槽302内においてドラム303を回転させながら、洗濯水を遠心力により布団の内部を通過させる方法(遠心力洗い)が考えられる。
【0006】
しかしながら、ドラム303の内周面にバッフル303bが設けられており、バッフル303bが洗濯水の通過を阻害すると共に、バッフル303b部分では回転半径が小さくなり遠心力が小さくなるため、布団の内部を通過する洗濯水が少なくなってしまう。そのため、ドラム303の周方向について部分的に洗濯性能および濯ぎ性能が低下する問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、ドラムの内周面にバッフルが設けられたドラム式洗濯機において布団の洗濯や濯ぎを行う場合でも、ドラムの周方向について部分的に洗濯性能および濯ぎ性能が低下するのを抑制可能なドラム式洗濯機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明のドラム式洗濯機は、外槽と、前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾く傾斜軸を回転軸として回転可能なドラムと、前記ドラムの内周面に設けられる少なくとも1つ以上のバッフルとを備え、前記バッフルに穴が形成されるとともに、前記ドラムにおける前記バッフルの裏側部分に通水口が形成され、前記外槽の内側面には、前記ドラムが回転しているときに前記通水口と対向可能な凸部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明のドラム式洗濯機において、前記凸部は、前記ドラムの前記回転軸よりも下方に設けられていることが好適である。
【0010】
本発明のドラム式洗濯機において、前記凸部は、前記ドラムの正面側から背面側に向けて互いに離れて配置される複数の突出部を含んでいることが好適である。
【0011】
本発明のドラム式洗濯機において、前記ドラムの正面側から背面側に向かう方向の所定位置について、前記通水口は、1つの前記バッフルの裏側部分に2つ以上形成されないことが好適である。
【0012】
本発明のドラム式洗濯機において、前記ドラムを回転駆動するためのモータと、前記モータの回転数を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、布団の洗濯を行う場合、布団に作用する遠心力が布団に作用する重力と同等または布団に作用する重力よりも大きくなるように、モータの回転数を制御することが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のドラム式洗濯機では、布団の洗濯や濯ぎを行う場合に、ドラム内の洗濯水がドラムの内周面におけるバッフルが設けられた部分からも外槽内に流出するため、ドラムの内周面にバッフルが設けられたドラム式洗濯機においても、ドラムの周方向について部分的に洗濯性能および濯ぎ性能が低下するのを抑制することができる。
【0014】
本発明のドラム式洗濯機では、凸部が外槽内において洗濯水の量が多い部分に配置されるため、外槽の内周面に凸部を形成することによりドラム内から外槽内へ流出する洗濯水を効率よく増加させることができる。
【0015】
本発明のドラム式洗濯機では、例えば凸部がドラムの正面側から背面側に向けて連続している場合のように、ドラム内の洗濯水を排水する際に洗濯水が凸部の上方に残ってしまうのを防止できる。
【0016】
本発明のドラム式洗濯機では、ドラムの正面側から背面側に向かう方向の所定位置において、バッフルの裏側部分から外槽内へ流出する洗濯水を1つの通水口に集中させることにより、ドラム内から外槽内へ流出する洗濯水をさらに効率よく増加させることができる。
【0017】
本発明のドラム式洗濯機では、ドラムが回転しているとき、布団がドラムの内周面に貼りついた状態で回転するため、ドラム内の洗濯水を遠心力により布団の内部を通過させて外槽内へ流出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るドラム式洗濯機1の斜視図である。
【
図2】
図1のドラム式洗濯機1の構成を示す側面断面図である。
【
図3】
図1のドラム式洗濯機1の内部構造を示す正面図である。
【
図5】
図5(a)は、ドラム3の内周面に配置されるバッフル3bを内周側から見た図であり、
図5(b)は、バッフル3bを取り外した状態のドラム3の内周面を内周側から見た図であり、
図5(c)は、外槽2の内周面を内周側から見た図である。
【
図7】布団専用洗浄コースで洗い工程及び濯ぎ行程が行われるときのドラム3内の動作を説明する図である。
【
図8】布団専用洗浄コースで洗い工程及び濯ぎ行程が行われるときのドラム3内の動作を説明する図である。
【
図9】布団専用洗浄コースで洗い工程及び濯ぎ行程が行われるときのドラム3内の動作を説明する図である。
【
図10】
図10(a)は、本発明の変形例に係るドラム式洗濯機のドラム3の内周面に配置されるバッフル3bを内周側から見た図であり、
図10(b)は、本発明の変形例に係るドラム式洗濯機のバッフル3bを取り外した状態のドラム3の内周面を内周側から見た図であり、
図10(c)は、本発明の変形例に係るドラム式洗濯機の外槽2の内周面を内周側から見た図である。
【
図11】従来のドラム式洗濯機101の内部構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態であるドラム式洗濯機1について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態のドラム式洗濯機1の斜視図である。
図2は、
図1のドラム式洗濯機1の構成を示す側面断面図である。
【0020】
本実施形態のドラム式洗濯機1(以下、洗濯機1と称する場合がある)は、
図1及び
図2に示すように、箱形状の筐体1aを有しており、筐体1aの内部には、略円筒形状の内周面を有する外槽2が配置され、外槽2の内部には、洗濯物を収容するための略円筒形状の内周面を有するドラム3が前後方向に延伸する主軸5により軸支されている。ドラム3は、水平軸を回転軸として回転可能である。
【0021】
筐体1aの前面には、使用者が操作するための操作部1cと、ドラム3の前端に形成された開口3aと対向する衣類投入口6が形成される。筐体1aには、衣類投入口6を開閉するドア8が設けられており、衣類投入口6は、ドア8により開閉され、ドア8が開放された状態でドラム3内に洗濯物の出し入れが可能となっている。
【0022】
ドラム3の内周面には、3つのバッフル3bが周方向に等間隔で設けられている。バッフル3bは、ドラム3に収容された洗濯物を持ち上げるために、ドラム3内に突出するように形成された中空形状の突起であり、例えば、洗い工程時において、ドラム3が後述するモータ11の駆動力によって回転されると、ドラム3内の水を含んだ洗濯物がバッフル3bにより持ち上げられ自然落下される、いわゆる叩き洗いが行われる。
【0023】
ドラム3の内周面(バッフル3bが設けられていない部分)には、多数の通水孔3cが穿設されており、洗浄や濯ぎ時において、外槽2内に供給された水は、通水孔3cを通してドラム3内へ流入するとともに通水孔3cを通して外槽2側へ流出する。また、遠心脱水時において、ドラム3内で洗濯物から吐き出された水は、この通水孔3cを通して外槽2側へと飛散する。
【0024】
主軸5は、外槽2の背面壁に装着された軸受5aによって回転自在に支承され、さらに後方に突出した主軸5の先端には、主プーリ10が取り付けられている。筐体2の底部には、モータ11が設置され、モータ11の回転軸には、モータプーリ12が取り付けられており、モータプーリ12の回転動力は、タイミングベルト16を介して主プーリ10に伝達される。これにより、モータ11が駆動されると、ドラム3が主軸5を中心に回転する。
【0025】
外槽2の背面壁の上部には、途中に給水バルブ20aが設けられた給水管20が接続されており、給水バルブ20aが開放されると、外部から供給される水が給水管20を介して外槽2へと供給される。外槽2の底部に設けられた排水口には、途中に排水バルブ21aが設けられた排水管21が接続されており、排水バルブ21aが開放されると、外槽2内の水が排水管21を通して機外へと排出される。
【0026】
本実施形態のドラム式洗濯機1では、
図3及び
図4に示すように、バッフル3bの表面に複数の穴31が形成されている。そのため、ドラム3の内部空間とバッフル3bの内部空間とが、複数の穴31を介して連通している。複数の穴31は、何れも円形であり、
図5(a)に示すように、バッフル3bの正面側端部から背面側端部まで略全域にわたって略均等に配置されている。
【0027】
ドラム3におけるバッフル3bの裏側部分3Tには、
図5(b)に示すように、複数の通水口32が形成されている。なお、バッフル3bの裏側部分3Tは、ドラム3の内周面にバッフル3bが取り付けられているときに、ドラム3の内周面においてバッフル3bにより覆われる部分である。そのため、バッフル3bの内部空間と外槽2の内部空間とが、複数の通水口32を介して連通している。複数の通水口32は、何れも円形であり、ドラム3の正面側端部から背面側端部まで略全域にわたって配置されている。
【0028】
ドラム3における1つのバッフル3bの裏側部分3Tにおいて、複数の通水口32は、正面側から背面側に延びる1つの直線上において略均等に配置されている。そのため、ドラム3の内周面において、1つのバッフル3bの裏側部分3Tにおいて、ドラム3の正面側から背面側に向かう方向の所定位置N(例えば、
図5(b)において1点鎖線で示した位置)には、通水口32が1つ形成されているか、または、通水口32が形成されていないかの何れかである。すなわち、1つのバッフル3bの裏側部分3Tにおいて、ドラム3の正面側から背面側に向かう方向の所定位置Nには、2つ以上の通水口32が形成されていない。
【0029】
外槽2の内側面には、
図3に示すように、外槽2の内側に向かって突出するように凸部33が設けられている。凸部33は、周方向について離れた位置である4箇所に配置される。ドラム式洗濯機1では、凸部33は何れもドラム3の回転軸よりも下方に設けられている。凸部33は、それぞれ、正面側から背面側に延びる1つの直線に沿って配置される。凸部33の突出量は、
図4に示すように、外槽2の半径とドラム3の半径との差より小さい。そのため、ドラム3は、凸部33と接触しないように外槽2内で回転する。
【0030】
凸部33は、外槽2の内側に向かって突出する複数の突出部33aを有している。突出部33aは、その外槽2の内側面上にある底面が円形である略円錐形状である。突出部33aの底面の大きさは、ドラム3の通水口32の大きさと略同一である。複数の突出部33aは、ドラム3が回転しているときにドラム3の通水口32と対向可能な位置にそれぞれ配置される。突出部33aの数は、バッフル3bの裏側部分3Tに配置されるドラム3の通水口32の数と同一である。凸部33と通水口32とが対向する場合、凸部33の中心位置と通水口32の中心位置とは略一致する。
【0031】
図6は、ドラム式洗濯機1の制御ブロック図である。ドラム式洗濯機1の制御部50は、
図6に示すように、例えば、マイクロコンピュータなどで構成されており、CPUと、ドラム式洗濯機1の動作を制御するプログラムが格納されたROMと、上記プログラムを実行する際に用いられるデータ等が一時的に記憶されるRAMとを備えている。ドラム式洗濯機1の運転動作は、この制御部50によって制御される。制御部50には、操作部1cと、給水バルブ20aと、排水バルブ21aと、モータ11とが接続されている。
【0032】
ドラム式洗濯機1では、使用者が、筐体1aの操作部1bを操作することにより、例えば標準洗浄コースや布団専用洗浄コースを選択可能になっている。なお、ドラム式洗濯機1において、筐体1aの操作部1bを操作することにより種々の運転コースを選択可能であるが、以下の説明では、布団専用洗浄コースについてのみ説明する。
【0033】
布団専用洗浄コースは、羽毛布団などの布団を洗濯する際に使用されるコースであり、洗い工程、濯ぎ工程及び脱水工程の順に運転が実施される。
【0034】
布団専用洗浄コースの洗い工程または濯ぎ工程において、ドラム3は、布団に作用する遠心力が布団に作用する重力よりも大きくなるようにやや速い回転数で回転駆動される。そのため、ドラム3が回転しているとき、布団がドラム3の内周面に貼りついた状態で回転する。本実施形態では、ドラム3は、常に所定方向に回転駆動される。
【0035】
なお、布団専用洗浄コースの洗い工程または濯ぎ工程において、ドラム3内の洗濯水は、遠心力により布団の内部を通過した後、バッフル3bの裏側部分3Tに形成される複数の通水口32の他、ドラム3の内周面(バッフル3bが設けられていない部分)に形成された多数の通水孔3cを通過して外槽2内に流出するが、以下の説明では、バッフル3bの裏側部分3Tに形成される複数の通水口32から流出する洗濯水の流れについて詳細に説明する。
【0036】
図7に示すように、ドラム3の通水口32が外槽2の凸部33に向かってドラム3が回転している場合、ドラム3内の洗濯水は、遠心力により布団の内部を通過した後、バッフル3bの穴31、ドラム3の通水口32の順に通過して、ドラム3の内部空間から外槽2の内部空間に流出する。
【0037】
このように、ドラム式洗濯機1では、バッフル3bに複数の穴31が形成され、バッフル3bの裏側部分3Tに複数の通水口32が形成されているため、ドラム3内の洗濯水が、その穴31及び通水口32を通過して、外槽2の内部空間に流出しやすくなる。
【0038】
その後、ドラム3が回転して、
図8に示すように、ドラム3の通水口32が外槽2の凸部33と対向する位置の直前まで移動した場合、ドラム3の通水口32を外側に向かって流出する水流は凸部33に衝突するため、ドラム3の通水口32での内向きの水圧が高まる。これにより、遠心力によりドラム3の通水口32から外槽2内に流出する水流の一部が打ち消されて、ドラム3の内部空間から外槽2の内部空間に流出する水流が減少する。
【0039】
その後、ドラム3が回転して、
図9に示すように、ドラム3の通水口32が外槽2の凸部33と対向する位置を通過した直後において、ドラム3の通水口32を外側に向かって流出する水流は凸部33に衝突しなくなるため、ドラム3の通水口32での外向きの水圧が高まる。これにより、ドラム3の内部空間から外槽2の内部空間に向かう水流が増加する。
【0040】
すなわち、ドラム3の通水口32が外槽2の凸部33と対向する部分を通過した直後に、外槽2の凸部33の下流側の領域が負圧になり、ドラム3内の洗濯水をバッフル3bの穴31及びドラム3の通水口32を通じて外槽2へ流す水流が発生する。この水流により、遠心力では不足していた布団を通過する洗濯水量を増加する効果となり、洗濯性能及び濯ぎ性能が向上する。
【0041】
以上説明したように本実施形態のドラム式洗濯機1は、外槽2と、外槽2内に配置され、水平軸を回転軸として回転可能なドラム3と、ドラム3の内周面に設けられる3つのバッフル3bとを備え、バッフル3bに穴31が形成されるとともに、ドラム3におけるバッフル3bの裏側部分3Tに通水口32が形成され、外槽2の内側面には、ドラム3が回転しているときに通水口32と対向可能な凸部33が設けられている。
【0042】
これにより、本実施形態のドラム式洗濯機1では、布団の洗濯や濯ぎを行う場合に、ドラム3内の洗濯水がドラム3の内周面におけるバッフル3bが設けられた部分からも外槽2内に流出するため、ドラム3の内周面にバッフル3bが設けられたドラム式洗濯機においても、ドラム3の周方向について部分的に洗濯性能および濯ぎ性能が低下するのを抑制することができる。
【0043】
本実施形態のドラム式洗濯機1において、凸部33が、ドラム3の回転軸よりも下方に設けられている。
【0044】
これにより、本実施形態のドラム式洗濯機1では、凸部33が外槽2内において洗濯水の量が多い部分に形成されるため、外槽2の内周面に凸部33を形成することによりドラム3内から外槽3内へ流出する洗濯水を効率よく増加させることができる。
【0045】
本実施形態のドラム式洗濯機1において、凸部33は、ドラム3の正面側から背面側に向けて互いに離れて配置される複数の突出部33aを含んでいる。
【0046】
これにより、本実施形態のドラム式洗濯機1では、例えば凸部33がドラム3の正面側から背面側に向けて連続している場合のように、ドラム3内の洗濯水を排水する際に洗濯水が凸部33の上方に残ってしまうのを防止できる。
【0047】
本実施形態のドラム式洗濯機1において、ドラム3の正面側から背面側に向かう方向の所定位置について、通水口32は、1つのバッフル3bの裏側部分3Tに2つ以上形成されない。
【0048】
これにより、本実施形態のドラム式洗濯機1では、ドラム3の正面側から背面側に向かう方向の所定位置において、バッフル3bの裏側部分3Tから外槽2内へ流出する洗濯水を1つの通水口32に集中させることにより、ドラム3内から外槽2内へ流出する洗濯水をさらに効率よく増加させることができる。
【0049】
本実施形態のドラム式洗濯機1において、ドラム3を回転駆動するためのモータ11と、モータ11の回転数を制御する制御部50とを備え、制御部50は、布団の洗濯を行う場合、布団に作用する遠心力が布団に作用する重力と同等または布団に作用する重力よりも大きくなるように、モータ11の回転数を制御する。
【0050】
これにより、本実施形態のドラム式洗濯機1では、ドラム3が回転しているとき、布団がドラム3の内周面に貼りついた状態で回転するため、ドラム3内の洗濯水を遠心力により布団の内部を通過させて外槽2内へ流出させることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0052】
例えば上記実施形態では、バッフル3bに形成される穴31、ドラム3におけるバッフル3bの裏側部分3Tに形成される通水口32、外槽2の内側面に形成される凸部33(突出部33a)の例を示したが、それらに限られない。穴31、通水口32、凸部33(突出部33a)のそれぞれについて、数、大きさ、形状、配置は任意である。また、バッフル3bの数、大きさ、形状、配置は任意である。
【0053】
上記実施形態では、凸部33が、ドラム3の回転軸よりも下方にのみ設けられているが、それに限られない。例えば、ドラム3の回転軸よりも上方に設けられた凸部33を含んでいてもよい
【0054】
上記実施形態では、複数の通水口32が形成されるとともに、凸部33が互いに離れて配置される複数の突出部33aを有しているが、それに限られない。例えば、
図10(b)に示すように、バッフル3bの裏側部分3Tに、ドラム3の正面側から背面側に向かって連続して延びる1つの通水口32が形成されるとともに、
図10(c)に示すように、外槽2の内周面に、ドラム3の正面側から背面側に向かって連続して延びる1つの突出部133aを有する凸部133が形成されてもよい。その場合、突出部133aは、正面側から背面側に向かう方向に垂直な断面が、略台形状または略長方形状に形成されてもよい。また、突出部133aは、正面側から背面側に向かって複数に分割されてもよい。
【0055】
上記実施形態では、3つのバッフル3bがドラム3の内周面に周方向に等間隔で設けられているが、それに限られない。ドラム3の内周面に設けられるバッフル3bの数は、1つでも、2つでも、4つ以上でもよい。また、ドラム3の内周面に2以上のバッフル3bが設けられる場合において、2以上のバッフル3bは、必ずしも、周方向に等間隔で設けられなくてもよい。
【0056】
上記実施形態では、ドラム3の正面側から背面側に向かう方向の所定位置について、通水口32が1つのバッフル3bの裏側部分3Tに2つ以上形成されないが、それに限られない。例えば、ドラム3の正面側から背面側に向かう方向の所定位置について、通水口32が1つのバッフル3bの裏側部分3Tに2つ以上形成されてもよい。
【0057】
上記実施形態では、ドラム式洗濯機1のドラム3が水平軸を中心に回転可能であるが、ドラム3が水平方向に対して傾く傾斜軸を中心に回転可能でもよい。
【0058】
上記実施形態では、洗い工程、濯ぎ工程及び脱水工程を実施可能なドラム式洗濯機1について説明したが、本発明は、洗い工程、濯ぎ工程及び脱水工程と共に乾燥工程を実施可能な洗濯乾燥機にも適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 ドラム式洗濯機
2 外槽
3 ドラム
3b バッフル
3T バッフルの裏側部分
11 モータ
31 穴
32 通水口
33 凸部
33a 突出部
50 制御部(制御手段)
132 通水口
133 凸部
133a 突出部