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  • 特開-エキシマランプ 図1
  • 特開-エキシマランプ 図2
  • 特開-エキシマランプ 図3
  • 特開-エキシマランプ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140903
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】エキシマランプ
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/00 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H01J65/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046960
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000192
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135965
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 要泰
(74)【代理人】
【識別番号】100100169
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 剛
(72)【発明者】
【氏名】張 豪俊
(72)【発明者】
【氏名】野口 幸男
(57)【要約】
【課題】本発明は、エキシマランプの製造方法の簡素化を目的とする。同様に、エキシマランプの内管と外管の封止部の機械的強度の向上を目的とする。
【解決手段】本発明に係るエキシマランプは、各々、先端部が閉じられた内管と外管の二重管構造を有し、該内管と該外管の間の放電空間に放電ガスが封入されている発光管を備え、前記内管に内部電極が配置されており、前記外管の円周方向外周面を部分的に覆うように外部電極が配置され、前記外管と前記内管の先端部と反対方向の端部は一体化して気密封止されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々、先端部が閉じられた内管と外管の二重管構造を有し、該内管と該外管の間の放電空間に放電ガスが封入されている発光管を備え、
前記内管に内部電極が配置されており、
前記外管の円周方向外周面を部分的に覆うように外部電極が配置され、
前記外管と前記内管の先端部と反対方向の端部は一体化して気密封止されている、エキシマランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のエキシマランプにおいて、
前記外部電極は、アルミニウム又はSUSから成る板状又はブロック状の金属で形成され、
前記外部電極は、発光管から光を反射する反射板として機能する、エキシマランプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエキシマランプにおいて、
前記外部電極は、前記外管の円周方向の少なくとも1/2の範囲にわたって配置される、エキシマランプ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のエキシマランプにおいて、
前記外部電極は、前記内部電極よりもランプ軸線方向に長く延在している、エキシマランプ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のエキシマランプにおいて、
前記内部電極は、箔状金属であり、前記内管に溶封されている、エキシマランプ。
【請求項6】
各々、先端部が閉じられた内管と外管の二重管構造を有し、該内管と該外管の間の放電空間に放電ガスが封入されているエキシマランプの製造方法であって、
前記内管に内部電極を配置し、
前記内管を外管に挿入して、先端部と反対方向の端部は一体化して気密封止し、
前記外管の先端部に形成された排気管から前記放電ガスを封入して気密封止し、
前記内管を挿入した外管を、別個独立に形成された板状又はブロック状の外部電極の溝に沿って配置して固定する、エキシマランプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプに関する。
【背景技術】
【0002】
エキシマランプは、誘電体バリア放電の短時間放電が多数生じる特徴を生かして、希ガス原子や、希ガス原子とハロゲン原子によって形成されるエキシマからの光を放射する放電ランプである。誘電体バリア放電は、誘電体を挟んだ2つの電極間に数十Hz~数MHzの高周波高電圧を印加することで放電現象を発生している。現在、このエキシマランプは、主にLED製造工程、半導体製造工程等のウエット処理の前洗浄、成膜工程の前洗浄等に広く利用されている。
【0003】
本発明に係るエキシマランプは、具体的には、内管と外管の二重管構造を有し、内管と外管の間の放電空間に少なくとも1種類の希ガス、ハロゲン元素、あるいはこれらの混合ガスが封入されているエキシマランプに関する。関連する先行技術文献として、次の2件がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5504095号「放電ランプ」(発行日:2014.05.28)特許権者:株式会社オーク製作所
【特許文献2】特許第6431482号「エキシマランプ及びその製造法」(発行日:2018.11.28)特許権者:株式会社オーク製作所
【0005】
特許文献1の開示する内容は、エキシマランプである放電ランプにおいて、放電管内部に箔電極を管軸に沿って配置している。また、箔電極を,誘電体によって被覆している。一方、箔電極とは極性の異なる外部電極を、縁に行くほど薄くなるナイフエッジ状に形成している。
【0006】
特許文献2の開示する内容は、内側電極と内管の熱膨張係数の差に起因して内管が破損することを防止したエキシマランプを提供する。有底筒状の内管と、該内管との間に密封された放電空間を有する外管とを有し、上記放電空間内に放電ガスを封入した誘電体から成る発光管;前記発光管の外管の外周面側に配置された外側電極;及び前記内管内に挿入配置された棒状の内側電極;を備えたエキシマランプにおいて、前記内管の内周面と内側電極の外周面との間に、誘電体バリア放電によって前記内側電極が熱膨張したとき、該内側電極が内管に応力を及ぼすのを抑制し、かつ前記放電空間の大きさと放電電圧の大きさとを勘案して該放電空間における誘電体バリア放電を確保する断面積の緩衝空間を形成したエキシマランプ、である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら先行技術文献の開示するエキシマランプは、ランプの端部封止時には内管と金属電極の段継シールが必要になるため、ランプ製造方法が複雑になる。更に、長尺ランプの場合、内管と内部電極との質量が嵩むと、シール部の脆弱化が懸念される。
【0008】
従って、本発明は、ランプ製造方法の簡素化を目的とする。同様に、本発明は、ランプの内管と外管の封止部の機械的強度の向上を目的とする。
【0009】
前掲特許文献1と本願発明とを対比すると、本願発明は、同じ二重管構造で内部電極は箔状電極であるが、ナイフエッジ形状ではない。特許文献1では、内部電極をナイフエッジ形状にすることで、薄い電極縁部分において電界集中が生じて電界強度が強くなり、点灯始動性を改善しているが、本願発明の箔状電極は一様の厚みであり、ナイフエッジ形状を採用するまでもなく、所望の点灯始動性を確保している。
【0010】
前掲特許文献2と本願発明とを対比すると、本願発明では、内部電極と内管とは完全に溶封されているため、緩衝空間は存在しない。緩衝空間を設けなくても、短寿命ではなく、所望の寿命を確保している。ただし、本発明は、内部電極と内管の溶封構造に限定されない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るエキシマランプは、その一面において、各々、先端部が閉じられた内管と外管の二重管構造を有し、該内管と該外管の間の放電空間に放電ガスが封入されている発光管を備え、前記内管に内部電極が配置されており、前記外管の円周方向外周面を部分的に覆うように外部電極が配置され、前記外管と前記内管の先端部と反対方向の端部は一体化して気密封止されている。
【0012】
更に、上記エキシマランプにおいて、前記外部電極は、アルミニウム又はSUSから成る板状又はブロック状の金属で形成され、前記外部電極は、発光管から光を反射する反射板として機能してもよい。
【0013】
更に、上記エキシマランプにおいて、前記外部電極は、前記外管の円周方向の少なくとも1/2の範囲にわたって配置されていてもよい。
【0014】
更に、上記エキシマランプにおいて、前記外部電極は、前記内部電極よりも軸方向に長く延在していてもよい。
【0015】
更に、上記エキシマランプにおいて、前記内部電極は、箔状金属であり、前記内管に溶封されていてもよい。
【0016】
更に、本発明に係るエキシマランプの製造方法は、その一面において、各々、先端部が閉じられた内管と外管の二重管構造を有し、該内管と該外管の間の放電空間に放電ガスが封入されているエキシマランプの製造方法であって、前記内管に内部電極を配置し、前記内管を外管に挿入して、先端部と反対方向の端部は一体化して気密封止し、前記外管の先端部に形成された排気管から前記放電ガスを封入して気密封止し、前記内管を挿入した外管を、別個独立に形成された板状又はブロック状の外部電極の溝に沿って配置して固定する、製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ランプ製造方法の簡素化を実現することができ、更に、内管と外管の封止部の機械的強度の向上を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本実施形態に係るエキシマランプの発光管(外部電極を除いた部分)を説明する図である。
図2図2は、図1のエキシマランプの外部電極を説明する図である。
図3図3は、本実施形態に係るエキシマランプの全体を説明する図である。
図4図4は、本実施形態に係るエキシマランプの製造方法を説明する図であり、図の左側は製造工程のフローを示し、各工程の右側にその工程におけるエキシマランプの略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るエキシマランプの実施形態に関して、添付の図面を参照しながら説明する。図面の示す同じ要素に対しては同じ参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0020】
[エキシマランプ]
図1は、本実施形態に係るエキシマランプの発光管、即ち、外部電極を除いた部分を説明する図である。
エキシマランプの発光管10は、内管1と外管2の二重構造に形成され、内管1と外管2は、図で見て左端部において封止構造9となっている。内管1の内部には、内部電極4が配置されている。内部電極4は、好ましくは、箔状電極である。
【0021】
内部電極4は、電極導入部5を介して外部リード線8に接続され、その先端に端子7が取り付けられている。内管1と外管2で形成された内部空間3には、封入ガスが充填されている。
【0022】
内管1は、紫外線透過率が高い誘電体材料、例えば、石英から形成されている。内管1の内部には、内部電極4が挿入されている。内管に希ガスを封入してもよいし、内管の一部又は全部を溶封してもよい。この出願書類における「溶封」は、例えば、内管1の内部にモリブデン箔の内部電極4を配置し、負圧にした状態でバーナーによる加熱もしくは高周波加熱等して、内管1と内部電極4とを固着させて封止状態にすることを意味している。
【0023】
外管2は、封体であって、同様に紫外線透過率が高い誘電体材料、例えば、石英から形成されている。内部空間3には、希ガス、ハロゲン若しくはこれらの混合物、例えばクリプトンと塩素の混合ガスが封入されている。箔状の内部電極4は、一様の厚みであり、例えば、モリブデン箔(Mo箔)から形成されている。電極導入部5は、例えば、モリブデン箔(Mo箔)から形成されている。さらに、内部電極4と電極導入部5は、一体に形成されていてもよい。その先端は、絶縁被覆された金属線の外部リード線8に接続されている。
【0024】
図2は、図1のエキシマランプ10の外部電極12を説明する図である。図の(A)は、正面図で示す外部電極12a、(B)は平面図で示す外部電極12bである。図2の外部電極12bには溝12b-1が形成され、図1に示す状態のエキシマランプの発光管10を収納する形状となっている。なお、外部電極12は、導電部材であり、主として金属から形成されている。外部電極12は、例えば、SUS又はアルミニウムから形成されている。なお、図2の外部電極12は、ブロック状で図示されているが、エキシマランプの発光管10の外表面に沿って形成されるランプ保持面を有していればよく、例えば、板状であってもよい。
【0025】
外部電極12の溝12b-1にエキシマランプを配置して固定すると、外部電極12は、エキシマランプの発光管10の外管外周面の一部に接触している。即ち、外部電極12は、エキシマランプの発光管10の円周方向外周面を、部分的に覆っている。非接触箇所(覆われてない方向)からエキシマ発光が通過する。図2に示す外部電極12では、ランプを溝に収納しているため、図2の紙面に対して垂直方向上方に発光が向かう形態である。
【0026】
接触箇所(覆われた方向)の外部電極12の内周面は、反射板として機能している。外部電極12の内周面は、光の反射率が高いため、反射光の利用率が向上する。この外部電極12は、概して、発光管10の外管2の周囲を円周方向に少なくとも1/2の範囲にわたって配置されるのが好ましい。
【0027】
図3は、本実施形態に係るエキシマランプの全体を説明する図である。図3の(A)は、図1のエキシマランプの発光管10を図2の外部電極12の溝に収納して両端部で固定した正面から見た図である。図3の(B)は、左方から側面を見たときの左端部のカバー14aを示す図であり、(C)は、右方から側面を見たときの右端部のカバー14bを示す図である。図3の(D)は、上方から側面を見たときの外部電極12を示す図であり、(E)は、下方から側面を見たときの外部電極12を示す図である。図で分かるように、外部電極12は、内部電極4よりもランプ軸線方向に長く延在している。
【0028】
[エキシマランプの製造方法]
図4は、本実施形態に係るエキシマランプの製造方法の一例を説明する図であり、図4の左側は製造工程のフローを示し、各工程の右側にその工程におけるエキシマランプの略図を示している。略図の詳細は、図1及び3を参照されたい。
【0029】
ステップS1で、箔状の内部電極4を、筒状の内管1に挿入する。
ステップS2で、内部電極4の一部又は全部を、内管1と溶封する。
ステップS3で、内管1を、外管2に挿入し、両者の左端部で封止構造9を形成する。封止構造9は、シュリンクシール方式又はピンチシール方式のいずれでもよい。
ステップS4で、ランプの外管2の先端2aから、少なくとも1種類の希ガス、ハロゲン元素、あるいはこれらの混合ガスを内部空間3に封入し、その後、先端部は気密封止する。
ステップS5で、外部電極12の溝12aに沿ってエキシマランプの発光管10を配置して、エキシマランプの発光管10の両端を外部電極12に固定する。
【0030】
[本実施形態の利点・効果]
本実施形態に係るエキシマランプ及びその製造方法は、次のような利点・効果を有している。
【0031】
(1)ランプの製造が簡易化できる。
従来のエキシマランプでは、一般に、内管-外管間を段継シールで形成していた。本実施形態では、内管-外管間をシュリンクシール方式又はピンチシール方式のいずれかで気密封止することにより、ランプの製造が簡易化できる。
【0032】
(2)ランプが長尺になっても、内管-外管間の機械的強度を強く維持することが出来る。本実施形態では、内管-外管間を直接に封止しているので、従来のランプの段継シールに比較して、機械的強度を強く維持することが出来る。
【0033】
(3)ランプを搭載する照射装置の小型化が可能になる。
【0034】
(4)外部電極と反射板を1つの部材で兼用することで、照射装置の小型化が可能になる。また、外部電極は光の反射率が高いため、反射光の利用率が向上する。
【0035】
(5)外部電極を発光管上に直接形成する先行技術と比較して、本実施形態では、発光管と外部電極とを別個独立に形成し、最終工程で外部電極に発光管を組み込み固定する構造なので、ランプのメンテナンス、交換等が容易である。また、製造期間の短縮、製造工程の簡素化が図れる。
【符号の説明】
【0036】
1:内管、 2:外管、 3:内部空間、 4:内部電極、 5:電極導入部、 8:外部リード線、 9:封止構造、 10:エキシマランプの発光管、 12,12a,12b:外部電極、 14a、14b:カバー、
図1
図2
図3
図4