(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140908
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理プログラム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20230928BHJP
G01N 17/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G05B23/02 T
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046967
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日置 丹悟
(72)【発明者】
【氏名】柴村 純平
(72)【発明者】
【氏名】小山 越太郎
【テーマコード(参考)】
2G050
3C223
【Fターム(参考)】
2G050BA06
2G050BA10
2G050EB10
3C223AA02
3C223AA03
3C223AA04
3C223AA05
3C223AA06
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223EB02
3C223FF05
3C223FF08
3C223FF13
3C223FF22
3C223FF26
3C223FF33
3C223GG01
3C223HH02
(57)【要約】
【課題】周囲環境に起因する機器の劣化状態を推定し把握できるようにする。
【解決手段】情報処理装置は、機器において検出された環境値を含む環境データを取得する取得部と、取得部によって取得され蓄積された機器の環境データに基づいて、機器の周囲環境に起因する機器の劣化状態を推定する推定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器において検出された環境値を含む環境データを取得する取得部と、
前記取得部によって取得され蓄積された前記機器の前記環境データに基づいて、前記機器の周囲環境に起因する前記機器の劣化状態を推定する推定部と、
を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記機器は、第1の機器及び第2の機器を含む複数の機器であり、
前記推定部は、前記第1の機器の環境データ及び前記第2の機器の環境データのうち少なくとも前記第1の機器の環境データに基づいて、前記第1の機器の周囲環境と同様の周囲環境に置かれている前記第2の機器の劣化状態を推定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記環境データは、温度のデータ、気圧のデータ及び湿度のデータの少なくとも1つを含み、
前記推定部は、前記機器の前記環境データに示される環境変動に基づいて、前記機器の劣化状態を推定する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記環境データは、温度のデータ、気圧のデータ及び湿度のデータの少なくとも1つを含み、
前記推定部は、前記機器の前記環境データに基づいて、前記機器の周囲環境を推定し、推定した周囲環境に基づいて、前記機器の劣化状態を推定する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記機器は、第1の機器及び前記第1の機器の周囲環境と同様の周囲環境に置かれている第2の機器を含む複数の機器であり、
前記推定部は、前記第1の機器の環境データ及び前記第2の機器の環境データのうち少なくとも前記第1の機器の環境データに基づいて、前記第1の機器の近くに配置された前記第2の機器の劣化状態を推定する、
請求項2~4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記複数の機器が配置されたフィールドには、前記複数の機器のうち、同様の周囲環境下に置かれた機器が配置された区域が設定されており、
前記推定部は、前記第1の機器の環境データ及び前記第2の機器の環境データのうち少なくとも前記第1の機器の環境データに基づいて、前記第1の機器が配置された区域内に配置された前記第2の機器の劣化状態を推定する、
請求項2又は5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記区域は、前記取得部によって取得され蓄積された前記複数の機器の前記環境データに基づいて設定される、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記機器は、複数の機器であり、
前記環境データは、加速度のデータ及び振動のデータの少なくとも1つを含み、
前記推定部は、前記複数の機器の前記環境データに基づいて、前記複数の機器が配置されたフィールドにおいて振動が大きくなる共振点位置を推定し、前記複数の機器のうち、推定した共振点位置の近くに配置された機器の劣化状態を推定する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記機器は、複数の機器であり、
前記環境データは、音のデータを含み、
前記推定部は、前記複数の機器の環境データに基づいて、前記複数の機器が配置されたフィールドにおいて音が大きくなる音源位置を推定し、前記複数の機器のうち、推定した音源位置の近くに配置された機器の劣化状態を推定する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記環境データは、位置のデータを含み、
前記推定部は、前記機器の移動に起因して前記機器に発生する応力集中に基づいて、前記機器の劣化状態を推定する、
請求項1~9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記取得部は、前記機器が配置された地域の気象データを取得し、
前記推定部は、前記取得部によって取得された前記気象データにも基づいて、前記機器の劣化状態を推定する、
請求項1~10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
コンピュータに、
機器において検出された環境値を含む環境データを取得する処理と、
取得して蓄積した前記機器の前記環境データに基づいて、前記機器の周囲環境に起因する前記機器の劣化状態を推定する処理と、
を実行させる、
情報処理プログラム。
【請求項13】
機器において検出された環境値を含む環境データを取得することと、
取得して蓄積した前記機器の前記環境データに基づいて、前記機器の周囲環境に起因する前記機器の劣化状態を推定することと、
を含む、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理プログラム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示されるように、プラント等に設けられた機器が劣化することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機器の劣化の進行は、機器の周囲環境に起因することがある。この点を考慮して機器の劣化等の状態を把握できないと、想定した各種生成物(最終目的物)を得られなくなる可能性がある。
【0005】
本発明の一側面は、周囲環境に起因する機器の劣化状態を推定し把握できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面に係る情報処理装置は、機器において検出された環境値を含む環境データを取得する取得部と、取得部によって取得され蓄積された機器の環境データに基づいて、機器の周囲環境に起因する機器の劣化状態を推定する推定部と、を備える。
【0007】
一側面に係る情報処理プログラムは、コンピュータに、機器において検出された環境値を含む環境データを取得する処理と、取得して蓄積した機器の環境データに基づいて、機器の周囲環境に起因する機器の劣化状態を推定する処理と、を実行させる。
【0008】
一側面に係る情報処理方法は、機器において検出された環境値を含む環境データを取得することと、取得して蓄積した機器の環境データに基づいて、機器の周囲環境に起因する機器の劣化状態を推定することと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、周囲環境に起因する機器の劣化状態を推定し把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る情報処理装置が用いられる情報処理システムの概略構成の例を示す図である。
【
図3】記憶部に蓄積された環境データの例を示す図である。
【
図4】情報処理装置において実行される処理(情報処理方法)の例を示すフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係る情報処理装置が用いられる情報処理システムの概略構成の例を示す図である。
【
図6】第3実施形態に係る情報処理装置が用いられる情報処理システムの概略構成の例を示す図である。
【
図7】第4実施形態に係る情報処理装置が用いられる情報処理システムの概略構成の例を示す図である。
【
図8】情報処理装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ実施形態について説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る情報処理装置が用いられる情報処理システムの概略構成の例を示す図である。情報処理システム100は、機器1と、情報処理装置2とを含む。機器1として、複数の機器1が例示される。各機器1を区別できるように、機器1-1等と称し図示する。
【0013】
複数の機器1は、フィールドF内に配置される。フィールドFの例は、各種の生成物(最終目的物)を得るためのプラント内の場所である。プラントにおける生成物の例は、液化天然ガス、樹脂、化学製品等である。なお、複数の機器1が配置されるプラントとしては、化学等の工業プラントの他、ガス田や油田等の井戸元やその周辺を管理制御するプラント、水力・火力・原子力等の発電を管理制御するプラント、太陽光や風力等の環境発電を管理制御するプラント、上下水やダム等を管理制御するプラント等がある。
【0014】
機器1の周辺設備として、配管P及びバルブV(バルブV-1等)が例示される。白抜き矢印で示されるように、配管Pの流れ方向に沿ってプロセスが進められる。各機器1及び各バルブVは、配管Pの異なる位置に対して設けられる。
【0015】
図2は、機器の概略構成の例を示す図である。機器1は、主センサ部11と、演算部12とを含む。主センサ部11は、機器1の主な目的であるフィールドF内の物理量、より具体的に、この例では配管Pを流れる流体の物理量を検出する。物理量の例は、温度、圧力、流量等の値であり、プロセス値等とも称される。主センサ部11は、それらを検出可能な温度センサ、圧力センサ、流量センサ等を含んで構成される。
【0016】
演算部12は、主センサ部11の検出信号に基づく演算を行い、例えば物理量を示す信号を生成する。演算部12は、演算を行うための内部回路等を含んで構成される。信頼性向上等の観点から、演算部12は、例えばOリング等のシール材で封止された領域内に設けられる。演算部12による演算によって得られた物理量を示す信号は、その物理量を示すデータとして機器1から情報処理装置2に送信される。このデータを、「プロセスデータ」とも称する。
【0017】
図2には、機器1の構成として、2種類の構成が示される。
図2の(A)に示される機器1の演算部12は、副センサ部121を含む。このような機器1を、「第1の機器1」とも称する。
図2の(B)に示される機器1の演算部12は、副センサ部121を含まない。とくに説明がある場合を除き、このような機器1を、「第2の機器1」とも称する。
【0018】
副センサ部121は、演算部12内の環境値を検出する。環境値の一例は温度であり、その場合、副センサ部121は温度センサを含んで構成される。演算部12内の環境は、機器1が置かれている環境、すなわち機器1の周囲環境と実質的に同じとみなせる。
【0019】
副センサ部121によって検出された環境値(例えば温度)は、演算部12による演算の補正、例えば内部回路の温度補償等に用いられる。また、副センサ部121によって検出された環境値を含むデータが、機器1から情報処理装置2に送信される。環境値を含むこのデータを、「環境データ」とも称する。環境値が温度の場合、環境データは、温度のデータを含む。
【0020】
図1に戻り、情報処理装置2は、複数の機器1からデータを収集して処理する上位計算機である。情報処理装置2は、取得部21と、制御部22と、記憶部23と、推定部24とを含む。
【0021】
取得部21は、各機器1のプロセスデータを取得し、また、各機器1の環境データ、より具体的には各第1の機器1の環境データを取得する。なお、副センサ部121を含む第2の機器1があれば、その第2の機器1の環境データも取得される。取得部21によって取得されたそれらのデータは、記憶部23に記憶され蓄積される。
【0022】
制御部22は、取得部21によって取得された各機器1のプロセスデータに基づいて、効率よく生成物が得られるようにプロセスを制御する。プロセス制御の例は、各バルブVの開度の制御である。バルブV以外にも、プロセスに関するさまざまな設備が制御され得る。
【0023】
記憶部23は、機器1で用いられる情報を記憶する。記憶部23に記憶される情報として、環境データ231及び情報処理プログラム232が例示される。環境データ231は、上述の取得部21によって取得され蓄積された各機器1の環境データである。情報処理プログラム232は、コンピュータを情報処理装置2として機能させるためのプログラム(ソフトウェア等)である。環境データ231について、
図3を参照して説明する。
【0024】
図3は、記憶部に蓄積された環境データの例を示す図である。機器1ごとに、環境データ231が対応付けられる。この例では、機器1-1~機器1-4及び機器1-7が第1の機器1であり、それらの環境データ231を、環境データ231-1~環境データ231-4及び環境データ231-7と称し図示する。機器1-5及び機器1-6の環境データ231は、ここでは副センサ部121を含まない第2の機器1であり、それらの環境データ231は存在しない。
【0025】
図1に戻り、情報処理装置2の推定部24は、機器1の環境データ231に基づいて、機器1の周囲環境に起因する機器1の劣化状態を推定する。機器1の劣化状態は、機器1の周囲環境によって異なり得る。一例として、屋外であって且つ日中に日光が直接当たる場所(日なた)に機器1が配置されている場合で説明する。日中の晴れているときは、日光が機器1に直接当たるので、機器1の演算部12内は高温になり、気圧は上がる。雨が降ると演算部12内は雨水で冷却されて低温になり、気圧は下がる。このように温度変動等の環境変動が繰り返されると、演算部12内に湿気が流入する等して、機器1のOリング等のシール材の劣化が進む。
【0026】
蓄積された環境データ231は、上述のような環境変動を示す。例えば、推定部24は、機器1の環境データ231に示される環境変動に基づいて、機器1の劣化の指標を算出してよい。例えば、環境変動は、温度等が極大値(最大値を含み得る)又は極小値(最小値を含み得る)を示すような変動である。指標の例は、環境変動の回数であり、より具体的には、温度変動における極大値の出現回数、極小値の出現回数等である。推定部24は、算出した指標に基づいて、機器1の劣化状態を推定する。例えば、指標が大きいほど、機器1の劣化が進んでいると推定される。
【0027】
推定部24は、機器1の環境データ231に基づいて、機器1の周囲環境を推定してもよい。周囲環境の例は、機器1が設置されている場所である、屋内環境、屋外環境、日中に日光が直接当たる環境(日なた環境)、日中でも日光が直接には当たらない環境(日かげ環境)等である。例えば、推定部24は、環境値である温度が所定値を超えた場合、機器1の周囲環境は、屋外環境又は日中に日光が直接当たる環境(日なた環境)であると推定する。推定部24は、推定した周囲環境に基づいて、機器1の劣化状態を推定する。例えば、屋外環境の場合は、屋内環境の場合よりも機器1の劣化が進んでいると推定される。日なた環境の場合は、日かげ環境よりも第1の機器1の劣化が進んでいると推定される。機器1の設置期間が長いほど、設置期間が短い機器よりも機器1の劣化が進んでいると推定される。
【0028】
例えば上記のようにして機器1の劣化状態が推定される。上述の推定処理を実行するように設計されたさまざまなアルゴリズムが用いられてよい。アルゴリズムを用いた推定処理は、訓練データを用いた機械学習によって生成された学習済みモデルを用いた推定処理であってもよい。
【0029】
先に述べたように、第1の機器1の場合には、環境データ231が得られる。従って、推定部24は、第1の機器1の環境データ231に基づいて、第1の機器1の劣化状態を推定する。
【0030】
一方で、第2の機器1の場合には、環境データ231が得られない場合もあるし、得られる場合もある。そこで、推定部24は、第1の機器1の環境データ231及び第2の機器1の環境データ231のうち少なくとも第1の機器1の環境データ231に基づいて、第1の機器1の周囲環境と同様の周囲環境に置かれている第2の機器1の劣化状態を推定する。すなわち、推定部24は、第1の機器1の周囲環境を第2の機器1の周囲環境として用いることで、第2の機器1の劣化状態を推定する。
【0031】
例えば、推定部24は、第1の機器1の環境データ231に基づいて、その第1の機器1の近くに配置された第2の機器1の劣化状態を推定する。第1の機器1の近くに配置された第2の機器1の特定は、例えば、予め定められた、近くに配置された機器として登録されている登録情報等に基づいて行われたり、第1の機器1からの距離に基づいて行われたりしてよい。例えば、第1の機器1からの距離が所定の距離以下であれば、第2の機器1は第1の機器1の近くに配置されているとする。
【0032】
一例として機器1-1及び機器1-5を用いて説明する。機器1-1は、第1の機器1である。機器1-5は、機器1-1の近くに配置されている第2の機器1である。推定部24は、機器1-1の環境データ231-1(
図3)に基づいて、機器1-1の劣化状態を推定する。また、推定部24は、機器1-1の環境データ231-1に基づいて、機器1-5の劣化状態を推定する。
【0033】
同様の原理により、機器1-1の近くに配置された周辺設備の劣化状態が推定されてもよい。この場合の周辺設備の例は、バルブV-1、バルブV-2、配管Pの一部等である。
【0034】
例えば以上のようにして、機器1の環境データ231に基づいて機器1の劣化状態を推定したり、さらには、その周辺設備の劣化状態を推定したりすることができる。推定部24による推定結果は、例えば、図示しないモニタ等を介して、情報処理システム100の管理者等に提示される。機器1や部品(例えば上述のシール材)等の寿命、交換時期等の判断に供することができる。
【0035】
なお、第2の機器1が副センサ部121を含む場合、推定部24は、第1の機器1の環境データだけでなく、第2の機器1の環境データにも基づいて、第2の機器1の劣化状態を推定してよい。一実施形態において、第1の機器1の副センサ部121と、第2の機器1の副センサ部121とは、異なる種類の環境値を検出してよい。例えば、第1の機器1の副センサ部121が湿度を検出し、第2の機器1の副センサ部121が温度を検出してよい。この場合、異なる種類の環境データに基づいて、第2の機器1の劣化状態を推定することができる。同じ種類の環境データに基づく場合よりも、推定精度を向上できる可能性がある。
【0036】
なお、環境データ231のもととなる機器1で検出された温度等の環境値は、従来は、演算部12の演算補正に用いられるだけであった。本実施形態によれば、機器1において検出された環境値を含む環境データ231を、その機器1の演算部12の演算補正以外にも活用することができる。
【0037】
図4は、情報処理装置において実行される処理(情報処理方法)の例を示すフローチャートである。各処理の具体的な内容はこれまで説明したとおりであるので、詳細な説明は省略する。ステップS1において、情報処理装置2の取得部21は、少なくとも第1の機器1の環境データ231を取得する。副センサ部121を含む第2の機器1があれば、その環境データ231も取得されてよい。取得された環境データ231は、記憶部23に記憶され蓄積される。ステップS2において、情報処理装置2の推定部24は、蓄積された第1の機器1の環境データ231に基づいて、第1の機器1の劣化状態を推定する。ステップS3において、情報処理装置2の推定部24は、蓄積された少なくとも第1の機器1の環境データ231に基づいて、第2の機器1の劣化状態を推定する。
【0038】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る情報処理装置が用いられる情報処理システムの概略構成の例を示す図である。情報処理装置2の取得部21は、情報処理システム100の外部からのデータ(外部データ)も取得する。
【0039】
外部データは、機器1が配置された地域、すなわちフィールドFを含む地域の気象データを含む。気象データの例は、天気のデータ、温度のデータ、湿度のデータ、気圧のデータ、降水量のデータ、日射時間のデータ、風速のデータ等である。気象データは、例えばインターネット等を介して取得される。なお、取得した気象データが適用される地域が、機器1が配置された地域を含んでいればよい。
【0040】
推定部24は、取得部21によって取得された気象データにも基づいて、機器1の劣化状態を推定する。機器1の環境データ231だけでなく、気象データも用いることで、環境変動をより正確に把握し、機器1の劣化状態の推定精度を向上させることができる。例えば、気象データを用いない場合と比較して、所定期間内の温度が高いという気象データを用いた方が、劣化はより進行していると推定でき、推定精度を向上させることができる。
【0041】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係る情報処理装置が用いられる情報処理システムの概略構成の例を示す図である。複数の機器1が配置されたフィールドFには、区域Aが設定される。複数の機器1のうち、同様の周囲環境下に置かれた機器1が同じ区域A内に配置されるように、区域Aが設定される。各区域Aに1つ以上の第1の機器1が配置されるように、各区域Aが設定される。
【0042】
図6に示される例では、3つの区域Aが設定される。各区域Aを区別できるように、区域A-1、区域A-2及び区域A-3と称し図示する。例えば、区域A-1内に配置された機器1の周囲環境は、屋外日なた環境である。区域A-2内に配置された機器1の周囲環境は、屋外日かげ環境である。区域A-3内に配置された機器1の周囲環境は、屋内環境である。
【0043】
推定部24は、第1の機器1の環境データ231及び第2の機器1の環境データ231のうち少なくとも第1の機器1の環境データ231に基づいて、その第1の機器1が配置された区域A内に配置された第2の機器1の劣化状態を推定する。区域A-1を例に挙げて説明すると、機器1-1及び機器1-2が第1の機器1であり、機器1-5は第2の機器1である。推定部24は、機器1-1の環境データ231-1(
図3)又は機器1-2の環境データ231-2(
図3)の少なくともいずれかに基づいて、機器1-5の劣化状態を推定する。同様に、区域A-1内のバルブV-1、バルブV-2、配管Pの一部等の劣化状態が推定されてもよい。
【0044】
なお、区域Aの設定は、情報処理システム100の管理者等が手動で設定してもよいし、情報処理装置2が自動的に設定してもよい。後者について、次の実施形態で説明する。なお、手動の場合、管理者等が、環境データに基づいて設定した区域を記憶部に記憶させ、推定部は、記憶された区域に基づいて推定する。
【0045】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態に係る情報処理装置が用いられる情報処理システムの概略構成の例を示す図である。区域A-4が例示される。環境データ231に基づいて、1つ以上の機器1、並びに、その近くに配置された第2の機器1及び周辺設備を含む領域が、区域A-4として設定される。例えば推定部24が、そのような設定を行う設定部としても機能する。設定部は、推定部24とは別に設けられた機能ブロックであってもよい。設定された区域A-4に基づく機器1の推定については、上述の第3実施形態と同様であるので、説明は繰り返さない。
【0046】
一実施形態において、推定部24又は設定部は、環境データ231に基づいて、同様の周囲環境下に置かれた2つ以上の第1の機器1、並びに、それらの近くに配置された第2の機器及び周辺設備を含む領域を、区域A-4として設定する。この例では、区域A-4は、機器1-1、機器1-5、バルブV-1及びバルブV-2が配置された第1の領域と、機器1-4及びバルブV-4が配置された第2の領域との複数の領域を含む。第1の領域及び第2の領域は、物理的に互いに離れてはいるが、同様の周囲環境を有する。例えば、第1の領域は建物の入口付近であり、第2の領域は建物の出口付近である。
【0047】
<変形例>
開示される技術は、上記実施形態に限定されない。いくつかの変形例について述べる。
【0048】
温度以外のさまざまな周囲環境が検出されてもよい。他の周囲環境の例は、湿度、気圧、加速度、振動、音、位置等であり、その場合、演算部12の副センサ部121は、湿度センサ、気圧センサ、加速度センサ、振動センサ、音センサ、GPS(Global Positioning System)センサ等を含んで構成されてよい。環境データ231は、気圧のデータ、湿度のデータ、加速度のデータ、振動のデータ、音のデータ、位置のデータ等を含む。情報処理装置2の推定部24は、このような環境データ231に基づいて機器1の劣化状態を推定してもよい。データごとに説明する。
【0049】
気圧のデータや湿度のデータは、気圧変動や湿度変動を示し、先に説明した温度変動と同様に扱うことができる。このような環境変動に基づいて、機器1の劣化状態を推定することもできる。
【0050】
加速度のデータや振動のデータは、機器1の振動周波数、振動周期、振動振幅、振動期間等を示す。振動期間は、振動が発生している期間の合計の期間である。機器1の振動周波数、振動周期及び振動振幅の変動は、機器1や周辺設備における部品の脱落等に起因する機器1の変化を示し得る。このような環境変動に基づいて、機器1やその周辺設備の劣化状態を推定することもできる。振動期間が長いほど、劣化が進んでいると推定することもできる。
【0051】
環境データ231が加速度のデータや振動のデータを含む場合、情報処理装置2の推定部24は、複数の機器1の環境データ231に基づいて、共振点位置を推定してよい。共振点位置は、フィールドFにおいて振動が大きくなる(例えば最大になる)位置である。例えば、複数の機器1の環境データ231に示されるフィールドF内の振動振幅の分布に基づいて、共振点位置が推定される。共振点位置の近くに配置された機器1や周辺設備ほど、劣化が進みやすい。一実施形態において、推定部24は、推定した共振点位置の近くに配置された機器1の劣化状態を推定してよい。保守重点個所の判断、予測等に供することができる。
【0052】
音のデータは、機器1の音の周波数、音量等を示す。機器1の音の周波数の変動は、機器1の劣化を示す。例えば、機器1の劣化が進むと、機器1内部の軸受けの摩耗が進行し、機器1の音の周波数が高くなる。このような環境変動に基づいて、機器1の劣化状態を推定することもできる。
【0053】
環境データ231が音のデータを含む場合、情報処理装置2の推定部24は、複数の機器1の環境データ231に基づいて、音源位置を推定してもよい。音源位置は、フィールドFにおいて音の周波数が高くなることに従い音が大きくなる(例えば最大になる)位置である。例えば、複数の機器1の環境データ231に示されるフィールドF内の音の大きさ(音量)の分布に基づいて、音源位置が推定される。音源位置の近くに配置された機器1や周辺設備ほど、劣化が進みやすい。一実施形態において、推定部24は、推定した音源位置の近くに配置された機器1の劣化状態を推定してよい。保守重点個所の判断、予測等に供することができる。
【0054】
位置データは、機器1の予期せぬ移動を示す。例えば、災害等によって機器1が移動すると、その移動に起因して、機器1、及び配管Pに応力集中が発生し、機器1、及び配管Pの劣化が進みやすくなる。例えば、機器1内の歪センサによって応力集中を検出できる。このような環境変動に基づいて、機器1の劣化状態を推定することもできる。応力集中個所の判断、予測等に供することができる。また、応力集中により、機器の一部の破損やクラックの発生を推定できる。
【0055】
上記実施形態では、機器1の周囲環境を検出する副センサ部として、演算部12内の副センサ部121を例に挙げて説明した。ただし、副センサ部121以外の副センサ部によって機器1の周囲環境が検出されてもよい。また、そのような副センサ部が上記実施形態における主センサ部11である場合を妨げない。
【0056】
上記実施形態では、フィールドFがプラント内の場所である場合を例に挙げて説明した。ただし、フィールドFは、プラント以外のさまざまな場所であってもよい。
【0057】
上記実施形態では、フィールドF内に複数の機器1が配置される場合を例に挙げて説明した。ただし、フィールドF内に配置される機器1の数は、1つであってもよい。
【0058】
<ハードウェア構成の例>
図8は、情報処理装置のハードウェア構成の例を示す図である。例示されるようなコンピュータが、これまで説明した情報処理装置2として機能する。装置のハードウェア構成として、バス等で相互に接続される通信装置2a、表示装置2b、記憶装置2c、メモリ2d及びプロセッサ2e等が例示される。記憶装置2cの例は、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等である。なお、メモリ2dは、記憶装置2cに含まれてもよい。
【0059】
通信装置2aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他の装置との通信を可能にする。表示装置2bは、例えばタッチパネルやディスプレイなどである。記憶装置2cは、記憶部23等として機能する。
【0060】
例えば、プロセッサ2eは、
図2の情報処理プログラム232等のプログラムを記憶装置2c等から読み込んで(読み出して)メモリ2dに展開することで、情報処理装置2による処理をコンピュータに実行させる。
【0061】
プログラムは、インターネットなどのネットワークを介してまとめて又は別々に配布することができる。また、それらのプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体にまとめて又は別々に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み込まれることによって実行することができる。
【0062】
以上で説明した技術は、例えば次のように特定される。開示される技術の1つは、情報処理装置2である。
図1~
図3等を参照して説明したように、情報処理装置2は、取得部21と、推定部24と、を備える。取得部21は、機器1において検出された環境値を含む環境データ231を取得する。推定部24は、取得部21によって取得され蓄積された機器1の環境データ231に基づいて、機器1の周囲環境に起因する機器1の劣化状態を推定する。例えば、環境データ231は、温度のデータ、気圧のデータ及び湿度のデータの少なくとも1つを含み、推定部24は、機器1の環境データ231に示される環境変動に基づいて、機器1の劣化状態を推定してよい。推定部24は、機器1の環境データ231に基づいて、機器1の周囲環境を推定し、推定した周囲環境に基づいて、機器1の劣化状態を推定してもよい。機器1において検出された環境値を含む環境データ231を用いることで、機器1の周囲環境に起因する機器1の劣化状態を推定することができる。例えば、機器1や部品(シール材等)の寿命、交換時期等の判断に供することができる。
【0063】
第1の機器1及び第2の機器1を含む複数の機器1が存在する場合、推定部24は、第1の機器1の環境データ231及び第2の機器1の環境データ231のうち少なくとも第1の機器1の環境データ231に基づいて、第1の機器1の周囲環境と同様の周囲環境に置かれている第2の機器1の劣化状態を推定してよい。例えば、推定部24は、第1の機器1の環境データ231及び第2の機器1の環境データ231のうち少なくとも第1の機器1の環境データ231に基づいて、第1の機器1の近くに配置された第2の機器1の劣化状態を推定してよい。
図6等を参照して説明したように、複数の機器1が配置されたフィールドFには、複数の機器1のうち、同様の周囲環境下に置かれた機器1が配置された区域Aが設定されており、推定部24は、第1の機器1の環境データ231及び第2の機器1の環境データ231のうち少なくとも第1の機器1の環境データ231に基づいて、第1の機器1が配置された区域A内に配置された第2の機器1の劣化状態を推定してもよい。この場合、
図7等を参照して説明したように、区域Aは、取得部21によって取得され蓄積された複数の機器1の環境データ231に基づいて設定されてよい。第2の機器1の環境データ231が無くとも、第2の機器1の劣化状態を推定することができる。
【0064】
複数の機器1が存在する場合、環境データは、加速度のデータ及び振動のデータの少なくとも1つを含み、推定部24は、複数の機器1の環境データ231に基づいて、複数の機器1が配置されたフィールドにおいて振動が大きくなる共振点位置を推定し、複数の機器1のうち、推定した共振点位置の近くに配置された機器1の劣化状態を推定してよい。環境データは、音のデータを含み、推定部24は、複数の機器1の環境データ231に基づいて、複数の機器1が配置されたフィールドFにおいて音が大きくなる音源位置を推定し、複数の機器1のうち、推定した音源位置の近くに配置された機器1の劣化状態を推定してもよい。環境データは、位置のデータを含み、推定部24は、機器1の移動に起因して機器1に発生する応力集中に基づいて、機器1の劣化状態を推定してもよい。劣化が進みやすい位置に配置された機器1の劣化状態を推定することで、例えば保守重点個所の判断、予測等に供することができる。
【0065】
図5等を参照して説明したように、取得部21は、機器1が配置された地域の気象データ(外部データ)を取得し、推定部24は、取得部21によって取得された気象データにも基づいて、機器1の劣化状態を推定してよい。これにより、機器1の劣化状態の推定精度を向上させることができる。
【0066】
図1及び
図8等を参照して説明した情報処理プログラム232も、開示される技術の1つである。情報処理プログラム232は、コンピュータに、機器1において検出された環境値を含む環境データ231を取得する処理と、取得して蓄積した機器1の環境データ231に基づいて、機器1の周囲環境に起因する機器1の劣化状態を推定する処理と、を実行させる。このような情報処理プログラム232によっても、これまで説明したように、機器1の周囲環境に起因する機器1の劣化状態を推定することができる。情報処理プログラム232が記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、開示される技術の1つである。
【0067】
図4等を参照して説明した情報処理方法も、開示される技術の1つである。情報処理方法は、機器1において検出された環境値を含む環境データ231を取得すること(ステップS1)と、取得して蓄積した機器1の環境データ231に基づいて、機器1の周囲環境に起因する機器1の劣化状態を推定すること(ステップS2、ステップS3)と、を含む。このような情報処理方法によっても、これまで説明したように、機器1の周囲環境に起因する機器1の劣化状態を推定することができる。
【符号の説明】
【0068】
100 情報処理システム
1 機器
2 情報処理装置
21 取得部
22 制御部
23 記憶部
231 環境データ
232 情報処理プログラム
24 推定部
A 区域
F フィールド
P 配管
V バルブ
2a 通信装置
2b 表示装置
2c 記憶装置
2d メモリ
2e プロセッサ