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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140932
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】傾斜面用移動足場
(51)【国際特許分類】
   E04G 3/28 20060101AFI20230928BHJP
   E04G 3/34 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
E04G3/28 302A
E04G3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047010
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 健太
【テーマコード(参考)】
2E003
【Fターム(参考)】
2E003DA01
2E003EB06
(57)【要約】
【課題】傾斜面での作業における工数を低減する。
【解決手段】傾斜面用移動足場100は、一対のメインフレーム11と複数のサブフレーム12とを有する足場枠体10と、傾斜面に予め設けられた略水平方向に延在する小梁3に沿って足場枠体10を移動させることが可能な第1走行部20と、を備え、第1走行部10は、小梁3の平行面3aに接する走行ローラ21と、小梁3の第1直交面3bに接する伝達ローラ22と、小梁3から傾斜方向に沿って延びる孫梁4に乗り上げ可能な乗上ローラ23部材と、を有し、足場枠体10を移動させる際に、伝達ローラ22は、乗上ローラ23が孫梁4に乗り上げることに連動して第1直交面3bから離れ、孫梁4と干渉しない位置へと移動する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜面での作業を行う際に用いられる傾斜面用移動足場であって、
前記傾斜面の傾斜方向に沿って設けられた一対のメインフレームと、前記一対のメインフレームに対して直交するように設けられた複数のサブフレームと、を有する足場枠体と、
前記傾斜面に予め設けられた略水平方向に延在する既設部材に沿って前記足場枠体を移動させることが可能な第1走行部と、を備え、
前記第1走行部は、
前記既設部材の面のうち、前記傾斜面に対して略平行な平行面に接することにより前記足場枠体を移動させる第1走行ローラと、
前記既設部材の面のうち、前記平行面に対して略直交する上方側の第1直交面に接することにより、前記傾斜方向における前記足場枠体の荷重を前記既設部材に伝達する第1伝達ローラと、
前記既設部材から前記傾斜方向に沿って延びる阻害部材に乗り上げ可能に構成された乗上部材と、を有し、
前記第1走行ローラを回転させて前記足場枠体を移動させる際に、前記第1伝達ローラは、前記乗上部材が前記阻害部材に乗り上げることに連動して前記第1直交面から離れ、前記阻害部材と干渉しない位置へと移動する、
傾斜面用移動足場。
【請求項2】
前記乗上部材は、前記阻害部材に回転しながら乗り上げ可能なローラ部材であり、前記第1走行ローラを挟んで前記第1伝達ローラとは反対側に配置される、
請求項1に記載の傾斜面用移動足場。
【請求項3】
前記乗上部材は、前記足場枠体を移動させる方向に沿って設けられた第1支持軸を中心として回動可能な第1レバー部材の一端に設けられ、
前記第1伝達ローラは、前記第1支持軸と平行な第2支持軸を中心として回動可能な第2レバー部材の一端に設けられ、
前記第1レバー部材の他端と前記第2レバー部材の他端とは、前記第1支持軸及び前記第2支持軸と平行な第3支持軸を介して互いに回動可能に連結される、
請求項1または2に記載の傾斜面用移動足場。
【請求項4】
前記第1走行部は、前記足場枠体を移動させる方向に沿って複数配置され、
隣り合う前記第1走行部の間隔は、前記阻害部材が設けられる間隔とは異なる間隔に設定される、
請求項1から3の何れか1つに記載の傾斜面用移動足場。
【請求項5】
前記既設部材に沿って前記足場枠体を移動させることが可能な第2走行部をさらに備え、
前記第2走行部は、
前記平行面に接する第2走行ローラと、
前記第1直交面に接する第2伝達ローラと、
前記第2伝達ローラの位置を、前記第1直交面に接触可能な位置と、前記足場枠体を移動させる際に前記第2伝達ローラが前記阻害部材と干渉しない位置と、に切り換え可能な第1切換部と、を有する、
請求項1から4の何れか1つに記載の傾斜面用移動足場。
【請求項6】
前記第2走行部は、
前記既設部材の面のうち、前記平行面に対して略直交する下方側の第2直交面に接するガイドローラと、
前記ガイドローラの位置を、前記第2直交面に接触可能な位置と、前記足場枠体を移動させる際に前記ガイドローラが前記阻害部材と干渉しない位置と、に切り換え可能な第2切換部と、をさらに有し、
前記第2伝達ローラが前記第1直交面に接触可能な位置にあり、前記ガイドローラが前記第2直交面に接触可能な位置にあるとき、前記既設部材は、前記傾斜方向において前記第2伝達ローラと前記ガイドローラとにより挟まれた状態となる、
請求項5に記載の傾斜面用移動足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜面用移動足場に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、屋根組枠の構成要素であって梁の上方に固設された小梁を、足場を移動させるためのガイドレールとして利用した傾斜面用移動足場が開示されている。この傾斜面用移動足場は、小梁の上面に当接する転動ローラと側面に当接するガイドローラとにより小梁の延在方向に移動可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-101312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の傾斜面用移動足場では、小梁の側面に当接するガイドローラが足場のメインフレームに固定されている。このようにガイドローラがメインフレームに固定されていると、小梁の側面から傾斜方向に沿って孫梁等の部材が延在している場合には、孫梁等の部材にガイドローラが当たることによって足場の移動が制限される。このため、孫梁等の部材によって足場の移動が阻害される度にクレーン等によって足場を吊り上げて移動させなければならず、結果として、傾斜面での作業における工数が増大してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、傾斜面での作業における工数を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、傾斜面での作業を行う際に用いられる傾斜面用移動足場であって、傾斜面の傾斜方向に沿って設けられた一対のメインフレームと、一対のメインフレームに対して直交するように設けられた複数のサブフレームと、を有する足場枠体と、傾斜面に予め設けられた略水平方向に延在する既設部材に沿って足場枠体を移動させることが可能な第1走行部と、を備え、第1走行部は、既設部材の面のうち、傾斜面に対して略平行な平行面に接することにより足場枠体を移動させる第1走行ローラと、既設部材の面のうち、平行面に対して略直交する上方側の第1直交面に接することにより、傾斜方向における足場枠体の荷重を既設部材に伝達する第1伝達ローラと、既設部材から傾斜方向に沿って延びる阻害部材に乗り上げ可能に構成された乗上部材と、を有し、第1走行ローラを回転させて足場枠体を移動させる際に、第1伝達ローラは、乗上部材が阻害部材に乗り上げることに連動して第1直交面から離れ、阻害部材と干渉しない位置へと移動する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、傾斜面での作業における工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る傾斜面用移動足場が用いられる傾斜面の一例を説明するための図である。
図2図1の矢印Aで示される部分を拡大して示した拡大図である。
図3図2の矢印Bで示される方向から見た傾斜面用移動足場の図である。
図4図3のC-C線に沿う断面を示す断面図であり、第1走行部を示す図である。
図5図4の矢印Fで示される方向から見た第1走行部の図である。
図6図3のD-D線に沿う断面を示す断面図であり、第2走行部を示す図である。
図7図6のG-G線に沿う断面を示す断面図である。
図8図6のH-H線に沿う断面を示す断面図である。
図9図3の矢印Eで示される方向から見た図であり、補助走行部を示す図である。
図10】阻害部材を通過する際の第1走行部の状態を示す図である。
図11】阻害部材を通過する際の第2走行部の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る傾斜面用移動足場について説明する。
【0010】
まず、図1図3を参照して、本発明の実施形態に係る傾斜面用移動足場100について説明する。傾斜面用移動足場100は、傾斜面での作業を行う際に用いられる足場であり、作業が行われる傾斜面の傾斜方向に対して直交する水平方向に沿って移動させることが可能な構成を有する足場である。
【0011】
傾斜面用移動足場100は、例えば、図1及び図2に示すように、比較的急な勾配の屋根面1aを有する建築物1において、屋根材を取り付ける作業を行う際に用いられる。なお、傾斜面用移動足場100の用途は、屋根材の施工に限定されず、例えば、法面の補修作業やダムの傾斜面の点検作業などにおいて用いられてもよい。
【0012】
図1は、屋根に谷部を有する建築物1の側面図であり、棟の延在方向、すなわち、桁行方向を向いて見た状態を示している。図2は、図1の矢印Aで示される部分を拡大して示した拡大図であり、主に傾斜面用移動足場100の側面を示している。図3は、図2の矢印Bで示される方向から見た傾斜面用移動足場100を示す図である。
【0013】
傾斜面用移動足場100は、図2に示すように、建築物1の構造部材であって、屋根面1a(傾斜面)に予め設けられた略水平方向に延在する既設部材、例えば、建築物1の梁間方向に沿って設けられた図示しない梁に固設された小梁3を、足場を移動させるためのガイドレールとして利用するものである。
【0014】
図1に示すように、建築物1の屋根面1aが比較的大きい場合、傾斜面用移動足場100は、屋根面1aの傾斜方向に沿って複数配置される。なお、図1に示される例では、3台の傾斜面用移動足場100が配置されているが、傾斜面用移動足場100の配置台数はこれに限定されず、4台以上であってもよいし、1台であってもよい。
【0015】
傾斜面用移動足場100は、具体的には、図2及び図3に示すように、一対のメインフレーム11と複数のサブフレーム12とにより構成される足場枠体10と、足場枠体10を小梁3(既設部材)の長手方向に沿って移動させるために足場枠体10に取り付けられた第1走行部20,第2走行部40及び補助走行部70と、足場枠体10に設置される階段部14と、を備える。なお、図3では、階段部14の図示を省略している。
【0016】
足場枠体10を構成するメインフレーム11及びサブフレーム12は、H形鋼材であり、メインフレーム11は、屋根面1a(傾斜面)の傾斜方向に沿って一対設けられ、サブフレーム12は、メインフレーム11に対して直交するように設けられる。サブフレーム12は、一対のメインフレーム11に両端が突き合わせ溶接された第1サブフレーム12aと、メインフレーム11に一端が突き合わせ溶接された第2サブフレーム12bと、により構成される。
【0017】
サブフレーム12には、H形鋼材等で構成された屋根下地鉄骨である小梁3(既設部材)をガイドレールとして利用する後述の各走行部20,40,70が取り付けられている。このため、傾斜方向においてサブフレーム12が設けられる間隔は、建築物1において小梁3が設けられる間隔と同じ間隔に設定される。
【0018】
階段部14は、図2に示すように、複数の段部を有し、屋根面1a(傾斜面)の傾斜方向に沿って作業員が容易に昇り降りできるような形状となっている。また、階段部14には、傾斜方向に沿って所定の間隔で落下防止柵15が設けられている。
【0019】
落下防止柵15は、サブフレーム12の延在方向において階段部14の両端部に立設された一対の支柱15aと、一対の支柱15a間に架け渡される複数のバー部材15bと、によって主に構成される。なお、落下防止柵15の剛性を確保するために、一対の支柱15a間に、図示しない複数のサブ支柱を階段部14に立設しておき、複数のバー部材15bをこれらサブ支柱に接合した構成とすることが好ましい。
【0020】
このように、落下防止柵15を傾斜方向において所定の間隔で設けておくことにより、作業員の安全性を高めることができるとともに、作業員が階段部14を昇降する際に生じる恐怖感を抑えることができる。
【0021】
なお、落下防止柵15には、傾斜方向上方側に向かって開くことが可能な図示しない扉が設けられており、作業員は、この扉を開くことにより階段部14を上下方向に移動することが可能である。このような扉は、傾斜面用移動足場100の最上部及び最下部に設けられた落下防止柵15にも設置されている。このため、図1に示すように、傾斜方向に沿って傾斜面用移動足場100が複数配置されている場合、下方または上方に配置された別の傾斜面用移動足場100へと作業員が安全に移動することが可能である。
【0022】
また、階段部14には、上述の落下防止柵15とは別に、上方または下方への作業員の移動を安全にガイドするための手すり17が傾斜方向に沿って支柱15a間に設けられている。なお、手すり17は、サブフレーム12の延在方向において階段部14の一方の端部側のみに設けられており、手すり17が設けられていない階段部14の他方の端部側は、折板屋根材等の屋根材の取り付け作業を行うための作業スペースとなっている。
【0023】
ここで、建築物1においては、剛性を確保するために、傾斜方向に離れて設けられた小梁3間に傾斜方向に沿って孫梁が設けられている場合がある。孫梁が小梁3と交差するように設けられていると、小梁3に沿って足場枠体10を移動させる際に、孫梁が足場枠体10の移動を阻害する阻害部材となってしまうおそれがある。
【0024】
このため、本実施形態の傾斜面用移動足場100は、足場枠体10の移動を阻害するおそれがある孫梁等の阻害部材が設けられている場合であっても、足場枠体10を安全かつ円滑に移動させることを可能とする走行部20,40,70を備えている。
【0025】
次に、図4図9を参照し、各走行部20,40,70の構成について説明する。図4及び図5は、第1走行部20を示す図であり、図6図8は、第2走行部40を示す図であり、図9は、補助走行部70を示す図である。
【0026】
第1走行部20は、図4及び図5に示すように、小梁3(既設部材)の面のうち、屋根面1a(傾斜面)に対して略平行な平行面3aに接することにより足場枠体10を移動させる走行ローラ21(第1走行ローラ)と、小梁3の面のうち、平行面3aに対して略直交する上方側の第1直交面3bに接することにより、傾斜方向における足場枠体10の荷重を小梁3に伝達する伝達ローラ22(第1伝達ローラ)と、小梁3から傾斜方向に沿って延びる孫梁4等の阻害部材に乗り上げ可能に構成された乗上ローラ23(乗上部材)と、伝達ローラ22を回転自在に保持する第2レバー部材27と、乗上ローラ23を回転自在に保持する第1レバー部材32と、走行ローラ21、第2レバー部材27及び第1レバー部材32を支持する支持部24と、を有する。
【0027】
第1走行部20は、支持部24を介してサブフレーム12の屋根面1a側のフランジ部である第1フランジ13aに結合されている。なお、図4及び図5には、孫梁等の阻害部材がない場所に第1走行部20があるときの状態が示されている。
【0028】
走行ローラ21は、円筒状部材であり、傾斜方向、すなわち、サブフレーム12の長手方向に対して直交し、且つ、平行面3aと平行な方向に沿って設けられた支持軸26に図示しないベアリングを介して回転可能に取り付けられている。
【0029】
支持軸26は、図5に示すように、支持部24に設けられた一対の支持プレート25間に、サブフレーム12の長手方向に間隔をあけて2つ設けられている。つまり、走行ローラ21は、サブフレーム12の長手方向において互いに離れた2箇所に設けられる。
【0030】
このように設けられた2つの走行ローラ21は、伝達ローラ22が傾斜方向における足場枠体10の荷重を小梁3に伝達しているのに対して、傾斜方向に対して垂直な方向における足場枠体10の荷重を小梁3へと伝達している。
【0031】
走行ローラ21を支持する一対の支持プレート25間には、第2レバー部材27を支持する一対の支持プレート28が設けられる。この一対の支持プレート28間には、第2レバー部材27の回動中心となる第2支持軸29が足場枠体10を移動させる方向、すなわち、サブフレーム12の長手方向に沿うようにして設けられている。
【0032】
第2レバー部材27に保持される伝達ローラ22は、小梁3の第1直交面3bに接する円筒部22aと、円筒部22aの両端に設けられ円筒部22aよりも外径が大きい鍔部22bと、を有する筒状部材であり、第2レバー部材27の一端側に設けられた支持軸30に図示しないベアリングを介して回転可能に取り付けられている。
【0033】
支持軸30は、第2レバー部材27の位置が、図4に示されるように、伝達ローラ22の円筒部22aと小梁3の第1直交面3bとが接触可能な位置にあるときに、第2支持軸29の軸方向に対して直交し、且つ、第1直交面3bと平行な方向に沿うように第2レバー部材27に設けられる。
【0034】
なお、鍔部22bは、小梁3の第1直交面3bに接して回転する伝達ローラ22が、振動等によって第1直交面3bから外れてしまうことを防止するために設けられている。
【0035】
また、走行ローラ21を支持する一対の支持プレート25のうち傾斜方向下方に位置する支持プレート25には、第1レバー部材32を支持する一対の支持プレート34が傾斜方向下方に向かって設けられている。
【0036】
この一対の支持プレート34間には、第1レバー部材32の回動中心となる第1支持軸35が足場枠体10を移動させる方向、すなわち、サブフレーム12の長手方向に沿うようにして設けられている。つまり、第1支持軸35は、第2支持軸29と平行に配置されている。
【0037】
第1レバー部材32に保持される乗上ローラ23は、円盤状のローラ部材であり、第1レバー部材32の一端側に設けられた支持軸33に図示しないベアリングを介して回転可能に取り付けられている。
【0038】
支持軸33は、第1レバー部材32の位置が、図4に示されるように、乗上ローラ23が何れの部材にも接触していない位置にあるときに、第2支持軸29の軸方向に対して直交し、且つ、小梁3の平行面3aと平行な方向に沿うように第1レバー部材32に設けられる。
【0039】
また、支持軸33に取り付けられた乗上ローラ23は、図4に示されるように、何れの部材にも接触していない場合、回転中心軸が小梁3の平行面3aよりもサブフレーム12側に位置し、乗上ローラ23の外周面の少なくとも一部が、小梁3の平行面3aを超えて小梁3側に位置した状態となっている。つまり、乗上ローラ23は、小梁3と交差するようにして孫梁等の阻害部材が設けられている場合、阻害部材に対して回転しながら乗り上がることが可能な位置に配置されている。なお、第1レバー部材32は、例えば、第1支持軸35によって保持された図示しないトーションスプリングによって、乗上ローラ23を保持する一端側が小梁3に向かい、他端側がサブフレーム12に向かうように付勢されている。
【0040】
乗上ローラ23を保持する第1レバー部材32は、図5に示すように、一対の支持プレート34間に、サブフレーム12の長手方向に間隔をあけて2つ設けられている。つまり、乗上ローラ23は、サブフレーム12の長手方向において所定の第1距離L1だけ互いに離れた2つの箇所に設けられる。
【0041】
第1支持軸35を中心に回動する第1レバー部材32の他端と、第2支持軸29を中心に回動する第2レバー部材27の他端とは、第1支持軸35及び第2支持軸29と平行に設けられた第3支持軸36を介して互いに回動可能に連結されている。
【0042】
具体的には、第3支持軸36は、第1レバー部材32の他端部に固設されており、第2レバー部材27には、図4に示すように、第3支持軸36が挿通する長孔31が形成されている。
【0043】
このように、第1走行部20において、乗上ローラ23は、足場枠体10を移動させる方向に沿って設けられた第1支持軸35を中心として回動可能な第1レバー部材32の一端に設けられ、伝達ローラ22は、第1支持軸35と平行に設けられた第2支持軸29を中心として回動可能な第2レバー部材27の一端に設けられ、第1レバー部材32の他端と第2レバー部材27の他端とは、第1支持軸35及び第2支持軸29と平行に設けられた第3支持軸36を介して互いに回動可能に連結されている。
【0044】
換言すれば、伝達ローラ22が設けられた第2レバー部材27は、乗上ローラ23が設けられた第1レバー部材32の回動に応じて回動する構成となっている。
【0045】
第2走行部40は、図6図8に示すように、小梁3の平行面3aに接することにより足場枠体10を移動させる走行ローラ41(第2走行ローラ)と、小梁3の第1直交面3bに接することにより、傾斜方向における足場枠体10の荷重を小梁3に伝達する伝達ローラ42(第2伝達ローラ)と、小梁3の面のうち、平行面3aに対して略直交する下方側の第2直交面3cに接するガイドローラ43と、伝達ローラ42を回転自在に保持する第1保持体44と、ガイドローラ43を回転自在に保持する第2保持体45と、走行ローラ41、第1保持体44及び第2保持体45を支持する第1支持体46と、第1支持体46とともに第1保持体44を支持する第2支持体47と、を有する。
【0046】
第2走行部40は、サブフレーム12の一対のフランジ部のうち、屋根面1a側のフランジ部である第1フランジ13aに第1支持体46を介して結合され、サブフレーム12の他方のフランジ部である第2フランジ13bに第2支持体47を介して結合されている。なお、図6には、孫梁等の阻害部材がない場所に第2走行部40があるときの状態が示されている。
【0047】
第1フランジ13aに結合される第1支持体46は、サブフレーム12の長手方向に対して直交する方向(傾斜方向)に延在する一対の支持板56により主に構成され、第2フランジ13bに結合される第2支持体47は、サブフレーム12の長手方向に対して直交する方向(傾斜方向)に延在する一対の支持板58により主に構成される。
【0048】
第1支持体46及び第2支持体47により支持される第1保持体44は、図7に示すように、一対の支持板56間及び一対の支持板58間に僅かな隙間を介して挿入される厚さを有する形状に形成され、第2支持体47により支持される第2保持体45は、図8に示すように、一対の支持板56間に僅かな隙間を介して挿入される厚さを有する形状に形成される。
【0049】
走行ローラ41は、円筒状部材であり、傾斜方向、すなわち、サブフレーム12の長手方向に対して直交し、且つ、平行面3aと平行な方向に沿って設けられた支持軸49に図示しないベアリングを介して回転可能に取り付けられている。
【0050】
支持軸49は、第1支持体46に設けられた一対の支持プレート48間に設けられる。このように設けられた走行ローラ41は、伝達ローラ42が傾斜方向における足場枠体10の荷重を小梁3に伝達しているのに対して、傾斜方向に対して垂直な方向における足場枠体10の荷重を小梁3へと伝達している。
【0051】
第1保持体44に保持される伝達ローラ42は、筒状部材であり、第1保持体44の一端側に設けられた支持軸50に図示しないベアリングを介して回転可能に取り付けられている。
【0052】
支持軸50は、第1保持体44の位置が、図6に示されるように、伝達ローラ42と小梁3の第1直交面3bとが接触可能な位置にあるときに、サブフレーム12の長手方向に対して直交し、且つ、第1直交面3bと平行な方向に沿うように第1保持体44に設けられる。
【0053】
また、伝達ローラ42を保持する第1保持体44には、第1支持体46に対して第1保持体44が傾斜方向上方へと変位することを防止するために用いられる変位防止プレート51が設けられるとともに、第2支持体47に対して第1保持体44を連結させるために用いられる長孔52a及び貫通孔52bが設けられている。
【0054】
これに対して第1支持体46には、第1保持体44の変位防止プレート51に当接する変位規制部材57が、傾斜方向に沿って位置調整可能に設けられている。具体的には、変位規制部材57は、ネジ部を有し、第1保持体44の位置が、図6に示されるように、伝達ローラ42と小梁3の第1直交面3bとが接触可能な位置にあるときに、変位防止プレート51に対向する箇所に螺着されている。このため、変位規制部材57の端部が変位防止プレート51に当接した状態とすることによって、第1保持体44が傾斜方向上方へと変位することを防止することが可能である。
【0055】
また、第2支持体47には、第1保持体44の長手方向に沿って形成された長孔52aに対して交差するように形成された長孔58aが設けられているとともに、貫通孔52bに対応して形成された第1ピン規制部58b及び第2ピン規制部58cが設けられている。図6に示すように、第1ピン規制部58bは、貫通孔で形成される一方、第2ピン規制部58cは、一対の支持板58を切り欠くことによって形成された切欠部である。なお、第2ピン規制部58cは、第1ピン規制部58bと同様に貫通孔で形成されていてもよい。
【0056】
第1保持体44の長孔52aと第2支持体47の長孔58aとには、図7に示されるように、1本のピン部材61が引き抜けない状態で挿入されている。つまり、第1保持体44と第2支持体47とは、ピン部材61を介して連結されており、第1保持体44は、第2支持体47に対して、長孔52aと長孔58aとが交差する範囲においてのみ移動可能となっている。
【0057】
また、第2支持体47に対する第1保持体44の位置は、図6に示されるように、抜き差し可能な差込ピン部材62を、第1保持体44の貫通孔52bと第2支持体47の第1ピン規制部58bとに挿入することによって規定される。なお、第2支持体47に対する第1保持体44の位置は、後述のように、差込ピン部材62を第1保持体44の長孔52aと第2支持体47の第2ピン規制部58cとに挿入することによっても規定可能である。
【0058】
このように第1保持体44に設けられた長孔52a及び貫通孔52bと、第2支持体47に設けられた長孔58a、第1ピン規制部58b及び第2ピン規制部58cと、ピン部材61と、差込ピン部材62と、は、伝達ローラ42の位置を、第1直交面3bに接触可能な位置と、足場枠体10を移動させる際に伝達ローラ42が孫梁等の阻害部材と干渉しない位置と、に切り換え可能な第1切換部60として機能する。
【0059】
第2保持体45に保持されるガイドローラ43は、伝達ローラ42と同様に筒状部材であり、第2保持体45の一端側に設けられた支持軸53に図示しないベアリングを介して回転可能に取り付けられている。
【0060】
支持軸53は、第2保持体45の位置が、図6に示されるように、ガイドローラ43と小梁3の第2直交面3cとが接触可能な位置にあるときに、サブフレーム12の長手方向に対して直交し、且つ、第2直交面3cと平行な方向に沿うように第2保持体45に設けられる。
【0061】
ガイドローラ43を保持する第2保持体45には、第1支持体46に対して第2保持体45を連結させるために用いられる第1貫通孔54a及び第2貫通孔54bが設けられている。
【0062】
これに対して第1支持体46には、第1貫通孔54aに対応して形成された第1貫通孔56aと、第2貫通孔54bに対応して形成された第2貫通孔56b及び第3貫通孔56cと、が設けられている。
【0063】
第2保持体45の第1貫通孔54aと第1支持体46の第1貫通孔56aとには、図8に示されるように、ピン部材65が引き抜けない状態で挿入されている。つまり、第2保持体45と第1支持体46とは、ピン部材65を介して連結されており、第2保持体45は、第1支持体46に対して、ピン部材65を中心として回動可能となっている。
【0064】
また、第1支持体46に対する第2保持体45の位置は、図6及び図8に示されるように、抜き差し可能な差込ピン部材66を、第2保持体45の第2貫通孔54bと第1支持体46の第2貫通孔56bとに挿入することによって規定される。なお、第1支持体46に対する第2保持体45の位置は、後述のように、差込ピン部材66を第2保持体45の第2貫通孔54bと第1支持体46の第3貫通孔56cとに挿入することによっても規定可能である。
【0065】
このように第2保持体45に設けられた第1貫通孔54a及び第2貫通孔54bと、第1支持体46に設けられた第1貫通孔56a、第2貫通孔56b及び第3貫通孔56cと、ピン部材65と、差込ピン部材66と、は、ガイドローラ43の位置を、第2直交面3cに接触可能な位置と、足場枠体10を移動させる際にガイドローラ43が孫梁等の阻害部材と干渉しない位置と、に切り換え可能な第2切換部64として機能する。
【0066】
図6に示すように、第1切換部60によって伝達ローラ42の位置が第1直交面3bに接触可能な位置とされ、第2切換部64によってガイドローラ43の位置が第2直交面3cに接触可能な位置とされたとき、既設部材である小梁3は、傾斜方向において伝達ローラ42とガイドローラ43とにより挟まれた状態となる。
【0067】
このように小梁3が伝達ローラ42とガイドローラ43とにより挟み込まれた状態とすることによって、足場枠体10を比較的安定して移動させることが可能となることから、小梁3を挟み込んだ状態で回転する伝達ローラ42及びガイドローラ43が、振動等によって小梁3から外れてしまうことを防止するために、第1保持体44及び第2保持体45には、小梁3に向かって突出して形成された鍔部67,68がそれぞれ設けられる。
【0068】
具体的には、第1保持体44には、図6に示されるように、伝達ローラ42と小梁3の第1直交面3bとが接触可能な位置にあるときに、第1直交面3bを超えて小梁3側に向かって延びる鍔部67が、伝達ローラ42を挟んで第1支持体46とは反対側に設けられる。
【0069】
同様に、第2保持体45には、図6に示されるように、ガイドローラ43と小梁3の第2直交面3cとが接触可能な位置にあるときに、第2直交面3cを超えて小梁3側に向かって延びる鍔部68が、ガイドローラ43を挟んで第1支持体46とは反対側に設けられる。
【0070】
なお、鍔部67,68は、上述の第1走行部20の伝達ローラ22の鍔部22bのように、伝達ローラ42自体またはガイドローラ43自体に形成されていてもよい。
【0071】
補助走行部70は、図9に示すように、2つの走行ローラ71と、走行ローラ71を支持する支持部72と、を有しており、支持部72を介してサブフレーム12の第1フランジ13aに結合されている。
【0072】
支持部72には、走行ローラ71を支持する一対の支持プレート73がサブフレーム12の長手方向に沿って設けられており、一対の支持プレート73間には、2つの支持軸73aが傾斜方向、すなわち、サブフレーム12の長手方向に対して直交し、且つ、平行面3aと平行な方向に沿うようにして設けられている。2つの支持軸73aには、図示しないベアリングを介して円筒状の走行ローラ71がそれぞれ回転可能に取り付けられている。
【0073】
このように小梁3の各面3a,3b,3cに接触可能なローラを備えた走行部20,40,70を介して、足場枠体10は小梁3に沿って移動可能となっている。
【0074】
なお、図3において、第1走行部20が傾斜方向上方側に配置され、補助走行部70が傾斜方向下方側に配置され、第2走行部40が中段に配置されているが、この配置は一例であって、各走行部20,40,70が配置される場所や配置される数はこれに限定されない。例えば、補助走行部70は、傾斜方向下方側だけではなく、第1走行部20や第2走行部40に隣接して設けられていてもよい。
【0075】
傾斜面用移動足場100の移動は、例えば、レバーブロック(登録商標)の一方のフックを小梁3に掛け、他方のフックを足場枠体10に掛けた状態において、レバーブロック(登録商標)のレバーを動かすことによって行われる。傾斜面用移動足場100の移動方法は、これに限定されず、例えば、屋根面1aに桁行方向に沿って張られたロープ部材を手動または傾斜面用移動足場100に設置された牽引機等により牽引することによって行われてもよい。
【0076】
傾斜面用移動足場100の移動が完了すると、足場枠体10に設けられた図示しないストッパを小梁3に係止させることにより、傾斜面用移動足場100は、屋根面1aに対して固定された状態となる。
【0077】
続いて、上記構成の第1走行部20及び第2走行部40が、小梁3と交差するように設けられた孫梁4(阻害部材)を通過する際の状態について、図10及び図11を参照して説明する。図10は、孫梁4等の阻害部材がある場所を第1走行部20が通過する際の状態を示しており、図11は、孫梁4等の阻害部材がある場所を第2走行部40が通過する際の状態を示している。
【0078】
まず、第1走行部20の状態について、図10を参照して説明する。
【0079】
小梁3と交差するように設けられた孫梁4に第1走行部20が差し掛かると、小梁3の平行面3aを超えて小梁3側に位置していた乗上ローラ23の外周面の一部が、回転しながら孫梁4に乗り上げる。そして、図10に示すように、第1走行部20の乗上ローラ23が孫梁4に乗り上げた状態、すなわち、乗上ローラ23を保持する第1レバー部材32が第1支持軸35を中心として、矢印R1で示される方向に回動した状態となる。
【0080】
第1レバー部材32は、伝達ローラ22を保持する第2レバー部材27と第3支持軸36を介して回動可能に連結されているため、第2レバー部材27は、第1レバー部材32の回動に応じて第2支持軸29を中心として矢印R2で示される方向に回動する。
【0081】
そして、第2レバー部材27が回動することによって、伝達ローラ22は、小梁3の第1直交面3bから離れ、孫梁4(阻害部材)と干渉しない位置へと移動する。
【0082】
このように、孫梁4等の阻害部材がある場合、伝達ローラ22は、孫梁4に衝突しない位置へと自動的に移動することになる。このため、孫梁4等の阻害部材を跨ぐ度にクレーン等によって傾斜面用移動足場100を吊り上げて移動させる必要がないことから、傾斜面用移動足場100を安全かつ円滑に移動させることができる。
【0083】
また、乗上ローラ23が孫梁4に乗り上げている間、乗上ローラ23は、第1レバー部材32に作用する図示しないトーションスプリングの復元力によって、孫梁4に押し付けられた状態となる。このため、孫梁4が設けられた場所を通過すると、乗上ローラ23は、再び、外周面の一部が小梁3の平行面3aを超えて小梁3側に位置した状態(図4に示す状態)に戻り、これに応じて、伝達ローラ22も小梁3の第1直交面3bに接した状態に戻る。
【0084】
なお、伝達ローラ22が孫梁4(阻害部材)と干渉しない位置へと確実に移動するように、各レバー部材27,32の回動中心の位置や各レバー部材27,32の長さ、乗上ローラ23の外径の大きさ、乗上ローラ23間の第1距離L1の長さが予め最適化される。
【0085】
例えば、図5に示される乗上ローラ23間の第1距離L1の長さは、小梁3の延在方向における孫梁4(阻害部材)の幅よりも大きく設定されている。このように乗上ローラ23間の第1距離L1を設定しておくことにより、孫梁4を通過するまで伝達ローラ22を孫梁4(阻害部材)と干渉しない位置に確実に保持することができる。なお、孫梁4(阻害部材)の幅が大きい場合や乗上ローラ23の外径の大きさが制限される場合は、乗上ローラ23の数、すなわち、第1レバー部材32の数を3つ以上に増やしてもよいし、孫梁4(阻害部材)の幅が小さい場合は、乗上ローラ23を1つだけにしてもよい。
【0086】
また、足場枠体10を移動させる方向に沿って配置される複数の第1走行部20において、同時に伝達ローラ22が小梁3の第1直交面3bから離れると、傾斜方向における足場枠体10の荷重を小梁3に伝達することができず、傾斜方向において足場枠体10が小梁3により支えられなくなるおそれがある。このため、隣り合う第1走行部20の間隔を、孫梁4(阻害部材)が設けられる間隔とは異なる間隔に設定しておくことにより、複数の第1走行部20において、同時に伝達ローラ22が小梁3の第1直交面3bから離れないようにすることが好ましい。
【0087】
続いて、第2走行部40について、図11を参照して説明する。
【0088】
小梁3と交差するように設けられた孫梁4に第2走行部40が差し掛かる前に、第2走行部40は、作業員によって、図11に示すように、伝達ローラ42及びガイドローラ43の位置が、孫梁4(阻害部材)と干渉しない位置へと切り換えられる。
【0089】
伝達ローラ42の位置の切り換えに関しては、まず、第1切換部60の差込ピン部材62が引き抜かれ、変位規制部材57が変位防止プレート51から離れるように操作される。そして、図11に矢印D1で示される方向に伝達ローラ42を保持する第1保持体44を移動し、小梁3の第1直交面3bから伝達ローラ42を離す。
【0090】
続いて、長孔52aに沿って矢印D2で示される方向に第1保持体44を移動し、さらに、長孔58aに沿って矢印D3で示される方向に第1保持体44を移動させる。
【0091】
このように第1保持体44を移動させた後、差込ピン部材62を第2ピン規制部58c及び長孔52aに差し込むことによって、第2支持体47に対する第1保持体44の位置が位置決めされる。
【0092】
これにより伝達ローラ42の位置は、孫梁4(阻害部材)と干渉しない位置へと切り換えられる。
【0093】
一方、ガイドローラ43の位置の切り換えに関しては、まず、第2切換部64の差込ピン部材66が引き抜かれる。そして、ピン部材65を中心として第2保持体45を、図11に矢印R3で示される方向へと回動し、小梁3の第2直交面3cからガイドローラ43を離す。
【0094】
このように第2保持体45を回動させた後、差込ピン部材66を第2貫通孔54b及び第3貫通孔56cに差し込むことによって、第1支持体46に対する第2保持体45の位置が位置決めされる。
【0095】
これによりガイドローラ43の位置は、孫梁4(阻害部材)と干渉しない位置へと切り換えられる。
【0096】
このように、孫梁4等の阻害部材がある場合、伝達ローラ42及びガイドローラ43は、孫梁4に衝突しない位置へと予め移動される。このため、孫梁4等の阻害部材を跨ぐ度にクレーン等によって傾斜面用移動足場100を吊り上げて移動させる必要がないことから、傾斜面用移動足場100を安全かつ円滑に移動させることができる。
【0097】
また、第1走行部20では、自動的に伝達ローラ22の位置が変更されるのに対して、第2走行部40では、手動で伝達ローラ42及びガイドローラ43の位置が変更される。このため、第2走行部40の伝達ローラ42及びガイドローラ43の位置を敢えて変更せず、第2走行部40を孫梁4等の阻害部材に当接する状態としておくことにより、第2走行部40を傾斜面用移動足場100の移動を制限する移動制限部として機能させることも可能である。
【0098】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0099】
本実施形態に係る傾斜面用移動足場100によれば、小梁3(既設部材)の第1直交面3bに接する第1走行部20の伝達ローラ22は、足場枠体10を移動させる際に、乗上ローラ23が孫梁4(阻害部材)に乗り上げることに連動して第1直交面3bから離れ、孫梁4と干渉しない位置へと移動する。
【0100】
このように伝達ローラ22が孫梁4(阻害部材)に当たることは自動的に回避される。したがって、孫梁4等の阻害部材を跨ぐ度にクレーン等によって傾斜面用移動足場100を吊り上げて移動させる必要がないことから、傾斜面用移動足場100を安全かつ円滑に移動させることが可能となり、結果として、屋根面1a(傾斜面)での作業における工数を低減させることができる。
【0101】
また、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0102】
上記実施形態では、第1走行部20及び第2走行部40が足場枠体10に設けられている。これに代えて、第1走行部20のみが足場枠体10に設けられていてもよい。この場合、手動でローラの位置が切り換えられる第2走行部40がないため、より円滑に傾斜面用移動足場100を移動させることが可能となる。
【0103】
また、上記実施形態では、各走行部20,40,70は、足場枠体10のサブフレーム12に取り付けられている。これに代えて、各走行部20,40,70は、足場枠体10のメインフレーム11に取り付けられていてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、乗上部材は、阻害部材(孫梁4)に回転しながら乗り上げ可能な乗上ローラ23である。乗上部材は、阻害部材に回転しながら乗り上げるものに限定されず、例えば、傾斜面を介して滑りながら阻害部材に乗り上げるものであってもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、第2走行部40に伝達ローラ42とガイドローラ43とが小梁3を挟み込むようにして設けられている。例えば、比較的傾斜面の角度が緩やかである場合には、伝達ローラ42が小梁3の第1直交面3bから外れるおそれは小さい。このため、第2走行部40はガイドローラ43を備えていない構成としてもよい。
【0106】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0107】
100・・・傾斜面用移動足場
1・・・建築物
1a・・・屋根面(傾斜面)
3・・・小梁(既設部材)
3a・・・平行面
3b・・・第1直交面
3c・・・第2直交面
4・・・孫梁(阻害部材)
10・・・足場枠体
11・・・メインフレーム
12・・・サブフレーム
20・・・第1走行部
21・・・走行ローラ(第1走行ローラ)
22・・・伝達ローラ(第1伝達ローラ)
23・・・乗上ローラ(乗上部材)
27・・・第2レバー部材
29・・・第2支持軸
32・・・第1レバー部材
35・・・第1支持軸
36・・・第3支持軸
40・・・第2走行部
41・・・走行ローラ(第2走行ローラ)
42・・・伝達ローラ(第2伝達ローラ)
43・・・ガイドローラ
60・・・第1切換部
64・・・第2切換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11