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  • 特開-水冷壁及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140935
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】水冷壁及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 5/40 20060101AFI20230928BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C21C5/40 A
F27D17/00 105A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047013
(22)【出願日】2022-03-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000237259
【氏名又は名称】富士岐工産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】渡口 真二
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩
(72)【発明者】
【氏名】田籠 康児
【テーマコード(参考)】
4K056
4K070
【Fターム(参考)】
4K056AA02
4K056BA06
4K056CA02
4K056DC05
4K070CA01
(57)【要約】
【課題】耐熱衝撃性を従来と同等以上にすることが可能で経済性にも優れ、更には補修作業と交換作業を容易に実施することが可能な水冷壁及びその製造方法を提供する。
【解決手段】内部を冷媒11が流れる複数の冷媒用配管12が平行に並べて配置され、隣り合う冷媒用配管12同士がフィン13で連結された伝熱構造を有する水冷壁10及びその製造方法であり、高温ガス通過面側の冷媒用配管12の表面のみに耐熱性合金を肉盛溶接又は溶射して、高温ガス通過面側の冷媒用配管12の表面を耐熱性合金層14で覆い、高温ガス通過面側のフィン13の表面を露出させて高温ガスに曝す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を冷媒が流れる複数の冷媒用配管が平行に並べて配置され、隣り合う該冷媒用配管同士がフィンで連結された伝熱構造を有する水冷壁において、
高温ガス通過面側の前記冷媒用配管の表面は耐熱性合金層で覆われ、該高温ガス通過面側の前記フィンの表面は露出して高温ガスに曝されることを特徴とする水冷壁。
【請求項2】
請求項1記載の水冷壁において、前記冷媒用配管と前記フィンとの高温ガス通過面側のコーナ部には隅アールが形成されていることを特徴とする水冷壁。
【請求項3】
内部を冷媒が流れる複数の冷媒用配管が平行に並べて配置され、隣り合う該冷媒用配管同士がフィンで連結された伝熱構造を有する水冷壁の製造方法において、
高温ガス通過面側の前記冷媒用配管の表面のみに耐熱性合金を肉盛溶接又は溶射して耐熱性合金層を形成することを特徴とする水冷壁の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の水冷壁の製造方法において、前記冷媒用配管と前記フィンとの前記高温ガス通過面側のコーナ部に研磨処理を施して隅アールを形成することを特徴とする水冷壁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱構造を有する水冷壁及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼などの精錬に使用する転炉においては、転炉の排出ガスを回収し燃焼ガスとして再利用するため、OG設備(非燃焼式排ガス処理設備)が用いられている。転炉からの排ガスは1400℃を超える高温であるため、OG設備のボイラや水冷パネルには、図2(A)、(B)に示すメンブレンパネル90等(水冷壁)が用いられている。
このメンブレンパネル90は、一般的に内部を冷却水(冷媒)が流れる複数の鋼管(冷媒用配管:以下、水管とも記載)91と放熱用のフィン92とを交互に接合した構造となっており、円筒状に形成したメンブレンパネル90内に高温の排ガスを通過させることで熱交換を行っている。
【0003】
メンブレンパネル90は、高温の排ガスによる繰返しの熱衝撃を受けるため、熱衝撃起因のき裂や割れが排ガス通過面側の水管91表面に生じ、冷却水が漏洩することがある。そのため、水管91の補修を定期的に行い、損傷の程度の軽いものは肉盛補修をし、また、損傷の程度の重いものは損傷部を抜管して新しい水管と交換している。この交換する新しい水管は、損傷した水管の本数に応じて、フィンで接合された複数の水管の場合もある。
なお、上記した繰返しの熱衝撃への対策としては、排ガス通過面側のメンブレンパネル90全面(排ガス通過面側の水管91とフィン92の全表面)にNi基(例えば、インコネル(登録商標)625)等の耐熱性及び耐摩耗性に優れた合金層93を、肉盛溶接や溶射にて形成する手段が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-137398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記手段を採用したとしても、メンブレンパネル90を構成する一部の水管91にき裂や割れが発生することから、この水管91の交換作業や補修作業を定期的に行っており、メンブレンパネル90の使用時に負荷される熱応力の軽減が課題である。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、耐熱衝撃性を従来と同等以上にすることが可能で経済性にも優れ、更には補修作業と交換作業を容易に実施することが可能な水冷壁及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る水冷壁は、内部を冷媒が流れる複数の冷媒用配管が平行に並べて配置され、隣り合う該冷媒用配管同士がフィンで連結された伝熱構造を有する水冷壁において、
高温ガス通過面側の前記冷媒用配管の表面は耐熱性合金層で覆われ、該高温ガス通過面側の前記フィンの表面は露出して高温ガスに曝される。
【0008】
本発明に係る水冷壁において、前記冷媒用配管と前記フィンとが連続する(接合される)高温ガス通過面側のコーナ部には隅アールが形成されていることが好ましい。
ここで、隅アールとは断面凹状の曲面を意味する(以下同じ)。
【0009】
前記目的に沿う本発明に係る水冷壁の製造方法は、内部を冷媒が流れる複数の冷媒用配管が平行に並べて配置され、隣り合う該冷媒用配管同士がフィンで連結された伝熱構造を有する水冷壁の製造方法において、
高温ガス通過面側の前記冷媒用配管の表面のみに耐熱性合金を肉盛溶接又は溶射して耐熱性合金層を形成する。
【0010】
本発明に係る水冷壁の製造方法において、前記冷媒用配管と前記フィンとが連続する(接合される)前記高温ガス通過面側のコーナ部に研磨処理を施して隅アールを形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る水冷壁及びその製造方法は、高温ガス通過面側の冷媒用配管表面を耐熱性合金層で覆い、一方、高温ガス通過面側のフィン表面を露出させ高温ガスに曝しており、フィン表面が耐熱性合金層で覆われていないことが特徴である。
このように、フィン表面を耐熱性合金層で覆わないことにより、水冷壁の使用時に負荷される耐熱性合金層への熱応力が軽減されるため、耐熱衝撃性を従来と同等以上にでき、その結果、従来と同等以上の寿命を達成することができる。
特に、冷媒用配管とフィンとの高温ガス通過面側のコーナ部に隅アールを形成する場合、水冷壁の使用時に負荷される熱応力が更に軽減されるため、耐熱衝撃性を更に向上でき、その結果、更なる長寿命化が図れる。
また、従来のように、フィン表面を耐熱性合金層で覆う必要がなくなることから、耐熱性合金の使用量を削減でき、製造コストの低減が図れる。
【0012】
更に、従来の水管の交換作業では、前記したように、フィンの表面に耐摩耗性に優れた合金層が形成されているため、グラインダー等による合金層の除去作業や、抜管のための合金層を含むフィンの切断作業を行っているが、合金層が切断部近傍に残留したまま、損傷部に新たな水管を溶接しようとした場合、高温割れ等の溶接欠陥が生じ易くなる。このため、合金層を完全に除去することに時間を要していたが、フィンの表面が合金層で覆われていないことから、水管の補修作業や交換作業を、従来よりも容易かつ短時間に実施することができ、作業性と作業効率の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係るメンブレンパネルの部分断面図である。
図2】(A)、(B)はそれぞれ従来例に係るメンブレンパネルの斜視図、部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るメンブレンパネル(水冷壁の一例)10は、内部を冷却水(冷媒の一例)11が流れる複数の冷却水用配管(冷媒用配管の一例:以下単に配管(水管)とも記載)12が平行に並べて配置され、隣り合う配管12同士がフィン13で連結された伝熱構造を有するものであり、耐熱衝撃性を従来と同等以上にすることが可能で経済性にも優れ、更には補修作業と交換作業を容易に実施可能なものである。
以下、詳しく説明する。
【0015】
メンブレンパネル10は、転炉での脱炭精錬時に転炉から発生する、一酸化炭素を主成分とする排出ガスを燃焼させずに回収するOG設備のボイラ又は水冷パネルに用いられるものである。なお、ボイラ又は水冷パネルは、排ガスを回収するための煙道(ダクト)の下端側に設置された、転炉の炉口を向いて開口する円筒状のものである。
このボイラ又は水冷パネルは一般的に、メンブレンパネル10を全体として円筒状となるように形成し、その外周面が断熱材で覆われ、その内部を、転炉から発生した1400℃を超える高温の排出ガス(以下、高温ガスとも記載)が通過する構造となっている。
これにより、配管12内部を流れる(循環する)冷却水11が高温となるため、この熱を回収する設備がボイラとなり、単に冷却する設備が水冷パネルとなる。
【0016】
メンブレンパネル10を構成する冷却水用配管12には、例えば、JIS G 3461(2019)で規定されるボイラ・熱交換器用炭素鋼鋼管(STB410、外径38.1mm、厚み4.0~6.5mm)を使用することができ、隣り合う冷却水用配管12同士を連結するフィン13には、例えば、JIS G 3505(2017)で規定される軟鋼線材(例えばSWRM10)を使用することができる。なお、冷却水用配管には、例えば、ボイラ・熱交換器用合金鋼鋼管(JIS G 3462(2014))やボイラ・熱交換器用ステンレス鋼鋼管(JIS G 3463(2012))等を使用することもできる。
この冷却水用配管12とフィン13の材質は、冷却水用配管とフィンを溶接により接合することができれば、特に限定されるものではない。
【0017】
メンブレンパネル10の高温ガスが通過する側(以下、高温ガス通過面側とも記載)であって、冷却水用配管12の表面は耐熱性合金層14で覆われている。この耐熱性合金層14は、耐熱性合金を冷却水用配管12の表面に、肉盛溶接や溶射を施すことで形成される。なお、耐熱性合金層14の厚みは、例えば、1~3mm(好ましくは2.5mm以下)程度であるが、この厚みは、肉盛溶接や溶射で形成した肉厚の耐熱性合金層の表面をグラインダー等で研磨処理(表面研磨)することで調整できる。
耐熱性合金は、例えば、耐摩耗性も備えるインコネル系合金(ニッケル基合金)であり、具体的には、インコネル625であるが、インコネル600、インコネル718、インコネルX750等を使用することもでき、また、耐熱性(更には耐摩耗性)を備えていればインコネル系合金以外の合金を耐熱性合金として使用することもできる。
【0018】
メンブレンパネル10の高温ガス通過面側であって、フィン13の表面は、露出して(上記した耐熱性合金層14で覆われておらず)高温ガスに曝されている。なお、フィンの表面は、その全面が露出していることが好ましいが、冷却水用配管の表面に耐熱性合金を肉盛溶接や溶射する際に、冷却水用配管に隣接するフィン表面に不可避に付着する場合や、フィンの幅によっては肉盛溶接や溶射の特性によりフィン表面の大半が耐熱性合金層で覆われる(フィン表面の少なくとも一部は耐熱性合金層で覆われていない)場合もあるが、この場合も、本発明の権利範囲に含まれる。
このフィン13には、例えば、6mmの厚みを有するものを使用できるが、露出したフィン表面に、例えば、高温ガスに含まれる、飛散した鉄粒やスラグ粒等からなるダストが衝突することによる摩耗や減肉に対処するため、フィンの材質を従来よりも硬質にすることも、また、フィンの厚みを更に厚くする(例えば、6mm超10mm以下程度にする)こともできる。
【0019】
冷却水用配管12とフィン13とが溶接接合された高温ガス通過面側のコーナ部15には溶接金属16があり、この溶接金属16の表面を覆う耐熱性合金層14に隅アール17が形成されている。なお、フィンに隣接する溶接金属表面が耐熱性合金層で覆われていない場合(露出している場合)は、耐熱性合金層の表面から溶接金属の表面にかけて、上記した隅アールが形成されている。
隅アール17は、断面凹状となった曲面であり、冷却水用配管12の表面に肉盛溶接や溶射を行って形成された耐熱性合金層の表面(又は、耐熱性合金層から溶接金属にかけての表面)に、研磨処理を施すことで形成できる。
この隅アール17は、冷却水用配管12とフィン13との高温ガス通過面側のコーナ部15において、応力集中を受けにくくするという観点から、なめらかな曲面であればよいが、具体的には、曲率半径を2.5mm以上にすることが好ましく、更には3mm以上にすることが好ましい。一方、上限値については、上記した理由から特に限定されるものではないが、現実的には20mm程度である。
【0020】
続いて、本発明の一実施の形態に係るメンブレンパネルの製造方法について、図1を参照しながら説明する。
まず、準備した複数の冷却水用配管12と複数のフィン13とが交互に配置されるように、かつ、複数の冷却水用配管12は平行となるように、溶接により、隣り合う冷却水用配管12同士をフィン13で連結する。これにより、パネル本体を製造できる。
次に、連結された冷却水用配管12の高温ガス通過面側の表面のみに、前記した耐熱性合金を肉盛溶接又は溶射して耐熱性合金層14を形成する。なお、耐熱性合金層14は、肉盛溶接又は溶射により形成された肉厚の耐熱性合金層の表面をグラインダー等で研磨処理して厚みを調整することで形成できる。この研磨処理により、例えば、肉盛り施工時のビードによる凹凸が除去され、凹部での熱応力の集中が妨げられる。即ち、研磨処理は、少なくとも肉盛り施工時のビードによる凹凸が除去されるまで実施するのがよい。
【0021】
ここで、冷却水用配管12とフィン13とが溶接接合された高温ガス通過面側のコーナ部15に存在する溶接金属16の表面を覆う耐熱性合金層に研磨処理を施し、この研磨処理された耐熱性合金層14の表面に隅アール17(例えば、曲率半径が2.5mm以上、更には3mm以上であることが好ましい)を形成する。なお、この研磨処理により、フィンに隣接する溶接金属表面から耐熱性合金層が除去される場合(溶接金属16の表面が露出する場合)もある。
また、フィンに隣接する溶接金属の表面が耐熱性合金層で覆われていない場合は、耐熱性合金層の表面から溶接金属の表面にかけて研磨処理を施し、上記した隅アールを形成するのがよい。
上記した方法で製造したメンブレンパネル10は、フィン13の高温ガス通過面側の表面が耐熱性合金層で被覆されておらず、当然のことながら、フィン13の断熱材側の表面も耐熱性合金層で被覆されていない。このため、従来のように、フィン表面を耐熱性合金層で覆う必要がなくなることから、耐熱性合金の使用量を削減でき、製造コストの低減が図れる。
【実施例0022】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ここでは、本発明のメンブレンパネル(実施例)が、従来のメンブレンパネル(比較例と従来例)と同等以上の寿命を確保することが可能であるか否かを確認するため、従来公知の熱応力解析にて、精錬開始(昇温)から精錬完了(冷却)までの1サイクルにおけるメンブレンパネルに負荷される熱応力を算出し、得られた熱応力から求まる応力値の振幅(最大値と最小値との差)を、JIS B 8266(2003)に規定されている設計疲労曲線と照合することで、疲労破壊に至るまでの繰返し回数を求め、寿命を予測した。この寿命の予測は、精錬条件(1日当たりのチャージ回数:18チャージ、年間稼動日数:330日)を基に行った。
表1に、比較例、従来例、及び、実施例の各メンブレンパネルの構成と試験結果を示す。比較例は高温ガス通過面側の配管とフィンの双方の表面が露出し、従来例は高温ガス通過面側の配管とフィンの双方の表面が耐熱性合金層で覆われ(図2(A)、(B)参照)、実施例は高温ガス通過面側の配管の表面のみが耐熱性合金層で覆われ、更に、高温ガス通過面側のコーナ部に曲率半径が4mmの隅アールを形成している。
【0023】
【表1】
【0024】
表1に示すように、比較例は、高温ガス通過面側の配管とフィンの双方の表面が露出して高温ガスに曝されるため、疲労破壊までの繰返し回数は5.7×10(回)となり、寿命は9.6年となった。
また、従来例は、高温ガス通過面側の配管とフィンの双方の表面が耐熱性合金層で覆われているため、配管とフィンの応力振幅値は比較例よりも低減できたが、その表面を覆う耐熱性合金層の応力振幅値が非常に高くなった。このため、耐熱性合金層における疲労破壊までの繰返し回数が7.1×10(回)となり、寿命は12.0年となった。
一方、実施例は、高温ガス通過面側の配管の表面のみが耐熱性合金層で覆われているため、配管とフィンの応力振幅値は従来例よりも高くなるが、比較例よりも低減でき、配管表面を覆う耐熱性合金層の応力振幅値は従来例よりも大幅に低減できた。このため、配管とフィンにおける疲労破壊までの繰返し回数が9.0×10(回)となり、寿命は15.2年となった。
従って、高温ガス通過面側の配管の表面を耐熱性合金層で覆い、かつ、高温ガス通過面側のフィンの表面を露出させることにより、従来例と同等以上の寿命を確保できることを確認できた。
【0025】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の水冷壁及びその製造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施の形態においては、本発明の水冷壁を、製鉄設備であるOG設備のメンブレンパネル構造のパネルに用いた場合について説明したが、冷却水用配管とフィンで構成される構造のパネルであれば特に限定されるものではなく、例えば、水管の径方向両側にフィンが一体となって設けられたひれ付水管(フィンチューブ)同士を溶接して一体としたパネル等に用いることもできる。この場合、隣り合う水管に設けられたフィンの端部同士を溶接接合するため、水管とフィンとの高温ガス通過面側のコーナ部には溶接金属がない。このため、隅アールの形成に際しては、水管とフィンとの高温ガス通過面側のコーナ部を覆う耐熱性合金層に対して研磨処理を施す。
また、前記実施の形態においては、冷却水用配管とフィンとが連結された高温ガス通過面側のコーナ部に隅アールが形成された構成について説明したが、隅アールは必ずしも必須な構成ではなく、例えば、水冷壁の設置環境等に応じて隅アールを設けなくてもよい。具体的には、冷却水用配管の高温ガス通過面側の表面のみに、耐熱性合金を肉盛溶接又は溶射して耐熱性合金層を形成し、その表面をグラインダー等で研磨処理(表面研磨)して厚みのみを調整した状態でもよい。
そして、前記実施の形態においては、冷媒に冷却水を使用した場合について説明したが、水冷壁の設置環境に応じて、他の冷媒を使用することもできる。
【符号の説明】
【0026】
10:メンブレンパネル(水冷壁)、11:冷却水(冷媒)、12:冷却水用配管(冷媒用配管)、13:フィン、14:耐熱性合金層、15:コーナ部、16:溶接金属、17:隅アール
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を冷媒が流れる複数の冷媒用配管が平行に並べて配置され、隣り合う該冷媒用配管同士がフィンで連結され、該冷媒用配管と該フィンとが連続した伝熱構造を有する水冷壁において、
高温ガス通過面側の前記冷媒用配管の表面のみが耐熱性合金層で覆われ、該高温ガス通過面側の前記フィンの表面は露出して高温ガスに曝されることを特徴とする水冷壁。
【請求項2】
請求項1記載の水冷壁において、前記冷媒用配管と前記フィンとの高温ガス通過面側のコーナ部には隅アールが形成され、該隅アールの曲率半径が2.5mm以上であることを特徴とする水冷壁。
【請求項3】
内部を冷媒が流れる複数の冷媒用配管が平行に並べて配置され、隣り合う該冷媒用配管同士がフィンで連結され、該冷媒用配管と該フィンとが連続した伝熱構造を有する水冷壁の製造方法において、
高温ガス通過面側の前記冷媒用配管の表面のみに耐熱性合金を肉盛溶接又は溶射して耐熱性合金層を形成することを特徴とする水冷壁の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の水冷壁の製造方法において、前記冷媒用配管と前記フィンとの前記高温ガス通過面側のコーナ部に研磨処理を施して隅アールを形成し、該隅アールの曲率半径を2.5mm以上にすることを特徴とする水冷壁の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る水冷壁は、内部を冷媒が流れる複数の冷媒用配管が平行に並べて配置され、隣り合う該冷媒用配管同士がフィンで連結され、該冷媒用配管と該フィンとが連続した伝熱構造を有する水冷壁において、
高温ガス通過面側の前記冷媒用配管の表面のみが耐熱性合金層で覆われ、該高温ガス通過面側の前記フィンの表面は露出して高温ガスに曝される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明に係る水冷壁において、前記冷媒用配管と前記フィンとが連続する(接合される)高温ガス通過面側のコーナ部には隅アールが形成され、該隅アールの曲率半径が2.5mm以上であることが好ましい。
ここで、隅アールとは断面凹状の曲面を意味する(以下同じ)。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
前記目的に沿う本発明に係る水冷壁の製造方法は、内部を冷媒が流れる複数の冷媒用配管が平行に並べて配置され、隣り合う該冷媒用配管同士がフィンで連結され、該冷媒用配管と該フィンとが連続した伝熱構造を有する水冷壁の製造方法において、
高温ガス通過面側の前記冷媒用配管の表面のみに耐熱性合金を肉盛溶接又は溶射して耐熱性合金層を形成する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明に係る水冷壁の製造方法において、前記冷媒用配管と前記フィンとが連続する(接合される)前記高温ガス通過面側のコーナ部に研磨処理を施して隅アールを形成し、該隅アールの曲率半径を2.5mm以上にすることが好ましい。