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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140937
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】係留ロープ保護用器具
(51)【国際特許分類】
   B63B 21/04 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B63B21/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047018
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】安田 幸一
(57)【要約】
【課題】本発明は、係留ロープがドルフィン等の係留用構造物の間に位置するプラットフォーム等の荷役用構造物の下方に入り込まないように、係留ロープの変位を規制した係留ロープ保護用器具を提供することを課題とする。
【解決手段】係留ロープ保護用器具1は、上面106Aが平面状に形成された台106及び台106を下方から支持する柱部107を有して構成された荷役用構造物105と、荷役用構造物105を間に挟んで配置された複数の係留用構造物102、103とを有する港湾施設100で用いられ、台106の立面106B、106Cに沿って縦方向に延びる第1の部位2と、台106の上面106Aに沿って横方向に延びる第2の部位3とを有し、第1の部位2の先端21を所定の位置C3よりも下方に位置させていると共に、第2の部位2が荷役用構造物105の台106に保持機構110により保持されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が平面状に形成された台及びこの台を下方から支持する柱部を有して構成され、且つ、船舶の荷役に使用される荷役用構造物と、前記荷役用構造物を間に挟んで配置され、且つ、前記船舶を係留するための係留ロープを掛けることが可能な複数の係留用構造物とを有する港湾施設で用いられ、
前記荷役用構造物の台に設けられて、前記係留ロープが前記荷役用構造物に接触するのを防止する係留ロープ保護用器具であって、
前記荷役用構造物の台の立面に沿って縦方向に延びた状態となる第1の部位と、前記荷役用構造物の台の上面に沿って横方向に延びた状態となる第2の部位とを有して構成され、
前記荷役用構造物の台の立面に沿って縦方向に延びた状態の前記第1の部位の先端を、前記荷役用構造物の台よりも下方となる所定の位置よりも更に下方に位置させたことを特徴とする係留ロープ保護用器具。
【請求項2】
前記第2の部位は、保持機構により、当該第2の部位が回転し、且つ、軸方向に移動することが可能に、前記荷役用構造物の台の上面に保持されていると共に、連結部位を有し、前記連結部位と前記荷役用構造物の台の上面に設けられた連結部とが線状部材を介して連結されていることを特徴とする請求項1に記載の係留ロープ保護用器具。
【請求項3】
前記第2の部位は、前記第1の部位とは反対側の端に落下防止用線状部材が取り付けられると共に、前記落下防止用線状部材が前記荷役用構造物の台の上面に設けられた柱状部にも取り付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の係留ロープ保護用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係留ロープ(係留索とも称する。以下同じ。)の保護のための器具に関する。特に、例えば大型のLNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガスの略称。以下、同じ。)を運搬する船舶の荷役に用いるプラットフォーム等の荷役用構造物と、この荷役用構造物を間に挟んで配置された、ムアリング・ドルフィン(Mooring Dolphin:MD)等の係留ロープを掛けるための係留用構造物とを有する港湾施設で用いられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図1(b)等に示されるように、港湾施設は、例えば大型LNG船等の船舶の係留のために、船舶の一方の側面側に位置する荷役用のプラットフォームと、この荷役用のプラットフォームに対し船舶の長手方向に沿って両側に配置されて、一方端が船舶に取り付けられた係留ロープの他方端が掛けられるドルフィンとを有する場合がある。
【0003】
一方で、係留ロープは、従来では、金属のワイヤ等の重い素材で形成されていたのに対し、近年では、例えば特許文献2に示されるように、ソフトロープ等、繊維等を用いた軽い素材で形成されるようになった。また、港に入るLNG船の大型化に伴い、例えば特許文献3の図4に示されるように、大型化したLNG船を所望の場所に係留させるために、船舶の長手方向の中央側となる部位からも係留ロープを延ばす等、従来よりも多い本数の係留ロープを用いる必要が生ずる場合がある。
【0004】
これに伴い、本願の図8に示されるように、プラットフォーム105が係留施設101から突出するかたちで配置され、且つムアリング・ドルフィン(以下、適宜にMDと略す。)102、103がプラットフォーム105よりも係留施設101側に配置された構成となっている港湾施設100の場合に、綱取りの時に、大型LNG船Sの長手方向においてリア寄りの中央からも係留ロープ200をハの字状に延ばして、プラットフォーム105の両側において当該プラットフォーム105に比較的近接して配置されたMD102、103のフック104に掛ける必要が生ずる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-319849号公報
【特許文献2】実用新案登録第3190215号公報
【特許文献3】特開2005-96638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
係留ロープが繊維ロープの場合には、海に垂らしても金属のワイヤ等で成る係留ロープとは異なり海中に沈まず水面を漂うので、上記した本願の図8に示されるような大型LNG船Sを係留するための港湾施設100では、綱取り時のうち、係留ロープ200の先端を例えば曳舟(図示せず。)で引っ張ってMD102、103まで運び、クイックリリースフック等のフック104に掛けるまでは、係留ロープ200の変位を制御することができたとしても、その後においては、海水の潮位の下降でプラットフォーム105の台106を支える柱部(図8では図示せず。以下同じ。)が水面上に現れる等によって、係留ロープ200がプラットフォーム105の台106の下側に入り込み、プラットフォーム105と接触して傷ついたりするおそれがある。或いは、綱取り時に、プラットフォーム105に係留ロープ200が接触して、係留ロープ200に張力をかけた際に、係留ロープ200が損傷してしまうおそれもある。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みたもので、係留ロープがドルフィン等の係留用構造物の間に位置するプラットフォーム等の荷役用の構造物の下方に入り込まないようにし、或いは、係留ロープが荷役用の構造物と接触しないようにした係留ロープの保護用器具を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明の係留ロープ保護用器具は、上面が平面状に形成された台及びこの台を下方から支持する柱部を有して構成され、且つ、船舶の荷役に使用される荷役用構造物と、前記荷役用構造物を間に挟んで配置され、且つ、前記船舶を係留するための係留ロープを掛けることが可能な複数の係留用構造物とを有する港湾施設で用いられ、前記荷役用構造物の台に設けられて、前記係留ロープが前記荷役用構造物に接触するのを防止する係留ロープ保護用器具であって、前記荷役用構造物の台の立面に沿って縦方向に延びた状態となる第1の部位と、前記荷役用構造物の台の上面に沿って横方向に延びた状態となる第2の部位とを有して構成され、前記荷役用構造物の台の立面に沿って縦方向に延びた状態の前記第1の部位の先端を、前記荷役用構造物の台よりも下方となる所定の位置よりも更に下方に位置させたことを特徴としている。荷役用構造物は、例えばプラットフォーム、更には荷役用プラットフォームやコンテナプラットフォーム等とも称される。荷役用構造物の柱部は海底から延びている。係留用構造物は、例えばムアリング・ドルフィンやその略称であるMD等とも称される。係留用構造物は、例えばクイックリリースフック等の係留ロープを掛けるためのフックを有する。係留ロープ保護用器具を構成する第1の部位や第2の部位は、例えばパイプ状の部材で形成されている。荷役用構造物の台よりも下方となる所定の位置とは、例えば港湾施設の大潮の平均低潮面の位置等を示す。
【0009】
これにより、海面上に浮き或いは海面上を漂う係留ロープが荷役用構造物側に移動してきて、係留ロープが荷役用構造物の台の下方に入り込もうとしても、係留ロープ保護用器具の第1の部位に当接するので、係留ロープの荷役用構造物の台の下方への入り込みを防止することが可能である。また、綱取り時に係留ロープが荷役用構造物に接触するのを、係留ロープが先に係留ロープ保護用器具に接触することで防止することができるので、係留ロープに張力をかけた際に係留ロープが損傷することを防ぐことが可能である。
【0010】
そして、本発明の係留ロープ保護用器具にあって、前記第2の部位は、保持機構により、当該第2の部位が回転し、且つ、軸方向に移動することが可能に、前記荷役用構造物の台の上面に保持されていると共に、連結部位を有し、前記連結部位と前記荷役用構造物の台の上面に設けられた連結部とが線状部材を介して連結されていることを特徴としている(請求項2)。第2の部位の連結部位は、線状部材を取り付けることが可能な構成であれば良い。線状部材は例えば鎖等である。第2の部位は、常時、当該第2の部位が回転し、且つ、軸方向に移動することが可能な状態で、保持機構により保持されていなくてもよく、通常時は保持機構により固定されて、必要に応じて保持機構により固定が解除されて、第2の部位が回転し、且つ、軸方向に移動することが可能となっていればよい。
【0011】
これにより、第2の部位を、第1の部位の先端が第2の部材よりも下方に延びた状態から第2の部材と同じ位置となる横を向いた状態になるように回転させた後、線状部材を引っ張って第2の部位を台の上面に設けた連結部側に向けて軸方向に移動させることにより、係留ロープ保護用器具の全体を荷役用構造物の台の上に上げた状態とすることが可能である。
【0012】
更に、本発明の係留ロープ保護用器具にあって、前記第2の部位は、前記第1の部位とは反対側の端に落下防止用線状部材が取り付けられると共に、前記落下防止用線状部材が前記荷役用構造物の台の上面に設けられた柱状部にも取り付けられていることを特徴としている(請求項3)。第2の部位の第1の部位とは反対側の端への落下防止用線状部材の取り付けの態様は限定されない。これにより、係留ロープ保護用器具の荷役用構造物の台からの落下が防止される。
【発明の効果】
【0013】
以上に述べたように、本発明の係留ロープ保護用器具では、海面上に浮き或いは漂う係留ロープが荷役用構造物側に移動してきて、係留ロープが荷役用構造物の台の下方に入り込もうとしても、係留ロープ保護用器具の第1の部位に当接するので、係留ロープの荷役用構造物の台の下方への入り込みを防止することが可能である。また、綱取り時に係留ロープが荷役用構造物に接触するのを、係留ロープが先に係留ロープ保護用器具に接触することで防止することができるので、係留ロープに張力をかけた際に係留ロープが損傷することを防ぐことが可能である。
【0014】
特に、請求項2に記載の係留ロープ保護用器具によれば、第2の部位を、第1の部位の先端が第2の部材よりも下方に延びた状態から第2の部材と同じ位置となる横を向いた状態になるように回転させた後、線状部材を引っ張って第2の部位を台の上面に設けた連結部側に向けて軸方向に移動させることにより、係留ロープ保護用器具の全体を荷役用構造物の台の上に上げた状態とすることが可能である。
【0015】
特に、請求項3に記載の係留ロープ保護用器具によれば、係留ロープ保護用器具の荷役用構造物の台からの落下を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を適用することが可能なプラットフォームを有する港湾施設の一例を概略的に示した平面図である。
図2】本発明が適用されたプラットフォーム及びムアリング・ドルフィンの配置を中心に港湾施設を概略的に拡大した平面図である。
図3】本発明の係留ロープ保護用器具が取り付けられたプラットフォームの構成の一部を概略的に示した側面図である。
図4】本発明の係留ロープ保護用器具が取り付けられたプラットフォームの構成の一部を概略的に示した斜視図である。
図5】本発明の係留ロープ保護用器具の全体をプラットフォームの上に上げる工程を示した説明図である。
図6】本発明の係留ロープ保護用器具の全体がプラットフォームの上に上がった状態を示した平面図である。
図7】本発明の係留ロープ保護用器具の他例として落下防止用線状部材を介して台の上面の柱状部に連結された状態を概略的に示した側面図である。
図8】本発明が適用されていないプラットフォーム及びムアリング・ドルフィンの配置を概略的に示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1において、本発明の係留ロープ保護用器具1を適用することが可能な港湾施設100の一例について、その一部分が概略的に示されている。図1に示される港湾施設100は、天然ガスを燃料に用いる火力発電所に近接して設けられ、火力発電所の付属施設300のガスタンク301、302、303等のタンクに大型LNG船Sから天然ガスを送り出すことができるように、当該大型LNG船Sを係留することが可能に整備されたものである。港湾施設100は、この実施形態では、大型LNG船Sから所定の貨物を荷上げ、荷下ろしするための荷役用構造物であるプラットフォーム105と、大型LNG船Sを後述する係留ロープ200にて係留するための係留用構造物であるムアリング・ドルフィン(以下、MD)102、103とをすくなくとも有して構成されている。以下、これらのMD102、103、プラットフォーム105、係留ロープ200等について順次説明した後、本発明の係留ロープ保護用器具1について説明する。
【0019】
MD102、103は、この実施形態では、図1の港湾施設100の概略的な説明図及び図2の港湾施設100の概略的な拡大図に示されるように、ガスタンク301、302、303に近接した岸壁から海に延出した係留施設101に沿って並び、且つ、係留された状態の大型LNG船Sの後部側となるように配置されている。MD102、103は、後述する係留ロープ200を掛けることが可能なクイックリリースフック等のフック104(図2で記号的に示す。)をそれぞれ有している。MD102、103自体は、公知のものであり、本発明に対応した変更点がないので、その構成の説明を省略する。
【0020】
プラットフォーム105は、この実施形態では、コンテナプラットフォームであり、図1の港湾施設100の概略的な説明図及び図2の港湾施設100の概略的な拡大図に示されるように、MD102とMD103との間に配置され、且つ係留施設101から突出した(離れた)位置に下記する台106が配置されている。プラットフォーム105は、例えばコンクリート製の台106と、台106と係留施設101とを結ぶ突出部108とを有して構成されている。台106は、図3から図6に示されるように、少なくとも上面106Aが平面状に形成されたプレート形状のものであり、下方から柱部107で支持されている。柱部107は、海底から延出している。なお、図3では、複数の柱部107のうちの1つについて便宜的に図示している。台106は、図3に示されるように、少なくとも港湾施設100における大潮の平均高潮面の位置C2(一点鎖線で示す。)よりも上になるように、その高さが設定されている。
【0021】
そして、プラットフォーム105の台106は、この実施形態では、上方から見た形状が、図2に示されるように、大型LNG船S側に進むにつれて先細りとなる台形状になっていると共に、大型LNG船S側と対峙する部位に、当該大型LNG船Sに対応した接舷機構109が設けられている。台106は、接舷機構109の両側に、突出部108の延びる方向と同方向に延びる基準線を想起した場合にこの基準線に対し斜めに延びる立面106Bをそれぞれ有した構成となっている。台106は、これらの立面106Bの大型LNG船Sとは反対側にて、立面106Cをそれぞれ有している。立面106Cは、この実施形態では、突出部108の延びる方向と同方向に延びている。立面106Bの立面106C側端と立面106Cの立面106B側端とは、図4図6に示されるように広角状に接して、境界線Lが形成さている。このように台106を上記した台形状としたことにより、例えば、図2に示されるように、大型LNG船SとMD102、103とを係留ロープ200で繋ぐときに、プラットフォーム105がその妨げとなるのを防止することができる。
【0022】
係留ロープ200は、この実施形態では、ソフトロープ等、繊維等を用いた軽い素材で形成されており、海に垂らしても海面に浮かぶことが可能なものが用いられている。係留ロープ200の一方側は、図2に示されるように、大型LNG船Sに設けられた繰り出し・巻取り装置201のドラムに取り付けられており、曳舟や作業員による引っ張りで係留ロープ200が繰り出されたり、繰り出し・巻取り装置201のドラムの回転で係留ロープ200が巻き取られたりする。係留ロープ200の他方側は、前述したMD102、103のクイックリリースフック等のフック104に掛けることが可能な構造を有した部位となっている。
【0023】
本発明の係留ロープ保護用器具1は、この実施形態では、図2に示されるように、プラットフォーム105の台106の立面106Bと立面106Cとの境界線Lと重なる位置(若しくは、図示しないが境界線Lよりも立面106B寄り)に、それぞれ設置されている。すなわち、係留ロープ保護用器具1は台106に2つ設置されている。このように、係留ロープ保護用器具1を台106の境界線Lと重なる位置若しくはその近傍となる部位に設置したことにより、特に台106の立面106Bと立面106Cとの境界線Lの部位において、係留ロープ200が、台106と接触したり、台106の下方に入り込んだりするのを防止することができる。
【0024】
各係留ロープ保護用器具1は、図3から図6に示されるように、プラットフォーム105の台106に設置して運用時(或いは通常時、使用時)に、台106の立面106B、106Cに沿って縦方向に直線状に延びた状態となる第1の部位2と、プラットフォーム105の台106に設置して運用時(或いは通常時、使用時)に、台106の上面106Aに沿って横方向に直線状に延びた状態となる第2の部位3とを有して構成されている。第1の部位2は、第2の部位3とは反対側に、運用時において海中に入った状態となる先端21を有する。
【0025】
第1の部位2と第2の部位3とは、例えばパイプ状の部材等を用いて一体に形成されたものであり、第1の部位2の一方端と第2の部位3の一方端とが略直角に連接した状態となって、それらの全体形状は図3図6に示されるように略L字状をなしている。
【0026】
第1の部位2が、上記の運用時にあって台106の立面106B、106Cに沿って縦方向に延びたときに先端21が海中に常時入るように、先端21は、図3に示されるように、台106の下端を通る基準線C1(実線で示す。)や港湾施設100における大潮の平均高潮面の位置C2(一点鎖線で示す。)よりも下方となるのみならず、港湾施設100における大潮の平均低潮面の位置C3(二点鎖線で示す。)よりも下方になるように設定されている。大潮の平均低潮面とは、例えば、港湾施設100において所定期間にわたって計測された、大潮における低潮の潮位を平均したものである。もっとも、港湾施設100における大潮の平均低潮面の位置C3を基準とすることには限定されず、例えば港湾施設100において計測された過去で最も低い潮位の位置を基準とすることもできる。
【0027】
第2の部位3は、図3から図6(特に図3(b))に示されるように、その中腹部分において、2つの保持機構110により、プラットフォーム105の台106に保持されている。保持機構110は、この実施形態では、台106の上面106Aに設置される基台111と、基台111に装着されて第2の部位3を保持するU字状ボルト115とで構成されている。図3(b)に示されるように、基台111は、台106の上面106Aに面状に接し、且つ、ボルト等の固定具112により台106の上面106Aに固定されるプレート部113と、このプレート部113の上方に配置され、2つの立状部位114a、114aとこれらの立状部位114a、114aを連接する連接部位114bとからなる取付部114とで構成されている。取付部114の連接部位114bにはU字状ボルト115の両端部位が挿通する通孔が設けられている。
【0028】
このような保持機構110の構成とすることにより、それぞれの保持機構110において、基台111の取付部114の連接部位114bの上方に第2の部位3を置いて、U字状ボルト115を上方から被せつつ連接部位114bの通孔にその両端部位を挿通させた後、取付部114の連接部位114bの下方に突出したU字状ボルト115の両端部位にナット116を適宜に外挿し締め付けることで、第2の部位3は、保持機構110を介して台106の上面106Aに保持されて固定される。このような保持機構110を用いれば、ナット116を緩める等により、第2の部位3についてその軸心を回転中心として回転可能にし、また、ナット116を外し、U字状ボルト115を取り除くことにより、第2の部位3を簡易に取り外すことが可能である。
もっとも、本発明において係留ロープ保護用器具1の第2の部位3を台106の上面106Aに保持するための保持機構は、上記した構成に限定されない。例えば、図示しないが、U字状ボルト115を、台106の上面6Aに置かれた係留ロープ保護用器具1の第2の部位3に被さるかたちで、台106の上面6Aに直接に取り付けて、必要に応じて第2の部位3の着脱をすることができる状態にて、係留ロープ保護用器具1の第2の部位3を保持する構成にすることも可能である。
【0029】
更に、係留ロープ保護用器具1は、図3から図6に示されるように、第1の部位2とは反対側の端の近傍に、当該第2の部位3から径方向に突出した連結部位31を有すると共に、第1の部位2に近接する側と成る部位に、当該第2の部位3から径方向に突出した連結部位32を有している。連結部位31及び連結部位32は、この実施形態では略逆U字状若しくは半環状となっており、通孔31a、通孔32aに例えば鎖等の線状部材5又は線状部材6を通した後、線状部材5、6の端が環状になるように結んだり、線状部材5、6を連結部位31又は連結部位32に巻き回したりすることで、連結部位31に線状部材5が連結され、連結部位32に線状部材6が連結される。
【0030】
そして、この実施形態では、第2の部位3の連結部位31、32の並ぶ方向の延長線上となるかたちで、プラットフォーム105の台106の上面106Aに、図3から図6に示されるように、線状部材5、6との連結が可能な連結部130が設けられている。連結部130は、特に図4及び図6に示されるように、台106の上面106Aにボルト等の固定具131により固定されたプレート132と、このプレート132に設けられ、線状部材5、6を挿通可能な略逆U字状若しくは半環状の連結部本体133とを有して構成されている。
【0031】
これにより、前記の図示した保持機構110を用いる場合には、例えば少なくとも係留ロープ保護用器具1のメンテナンスをするときに、第2の部位3の連結部位31、32と台106の連結部130とに鎖等の線状部材5又は線状部材6をそれぞれ取り付けた状態とし、U字状ボルト115においてナット116を緩める等して、第2の部位3をその軸心を回転中心として回転可能な状態とした後、図5(a)の係留ロープ保護用器具1の運用時の状態から、図5(b)に示されるように、第2の部位3をその軸心を回転中心として回転させて、第1の部位2の先端21が側方を向くようにし、更に、図5(c)に示されるように、鎖等の線状部材5,6を白抜き矢印の方向に引っ張ることで、係留ロープ保護用器具1の第1の部位2、第2の部位3の双方が台106の上面106Aの上に上がった状態とすることが可能である。これに伴い、係留ロープ保護用器具1についてメンテナンス作業の簡易化を図ることが可能となる。
【0032】
更に、係留ロープ保護用器具1は、図7に示されるように、第2の部位3のうちの第1の部位2とは反対側に位置する端33に、例えば7mから10mの長さのロープ等の落下防止用線状部材7が固定等により適宜に取り付けられた状態とすることができる。そして、係留ロープ保護用器具1の第2の部位3の軸方向の延長線上となるように、台106の上面106Aに例えば上方に向けて立設した柱状部140を設けて、ロープ等の落下防止用線状部材7を固定し或いは巻き付けることで、柱状部140に取り付けた状態とすることができる。このような構成とすることにより、係留ロープ保護用器具1の台106から海中への落下を防止することが可能である。
【0033】
かかる係留ロープ保護用器具1を、運用時において、例えば立面106Bと立面106Cとの境界線Lと重なるかその近傍の部位となるように、第1の部位2が位置し、且つ、第1の部位2の先端21が例えば港湾施設100の大潮の平均低潮面の位置C3等の所定の位置よりも下方となるように、プラットフォーム105の台106に設置することで、海面上に浮き或いは漂う係留ロープ200がプラットフォーム105の台106側に移動してきて、係留ロープ200が台106の下方に入り込もうとしても、係留ロープ保護用器具1の第1の部位2に当接するので、係留ロープ200の台106の下方への入り込みを防止することが可能である。また、綱取り時に係留ロープ200がプラットフォーム105に接触するのを、係留ロープ200が先に係留ロープ保護用器具1に接触することにより防止することができるので、係留ロープ200に張力をかけた際に係留ロープ200が損傷することを防ぐことが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 係留ロープ保護用器具
2 第1の部位
21 先端
3 第2の部位
31 連結部位
32 連結部位
33 端
5、6 線状部材
7 落下防止用線状部材
100 港湾施設
102 ムアリング・ドルフィン、MD(係留用構造物)
103 ムアリング・ドルフィン、MD(係留用構造物)
105 プラットフォーム(荷役用構造物)
106 台
106A 上面
106B、106C 立面
107 柱部
110 保持機構
130 連結部
140 柱状部
200 係留用ロープ
S 大型LNG船(船舶)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8