(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140954
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】塗工剤、塗膜および積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 201/08 20060101AFI20230928BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20230928BHJP
C09D 123/26 20060101ALI20230928BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230928BHJP
【FI】
C09D201/08
C09D167/00
C09D123/26
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047048
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 和史
(72)【発明者】
【氏名】大藤 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 宗紀
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CB141
4J038DD241
4J038HA026
4J038HA166
4J038NA20
(57)【要約】
【課題】導電性、透明性に優れる塗膜を形成し得る、塗工剤を提供する。
【解決手段】カルボキシル基を含有する樹脂と、カーボン系材料と、金属酸化物と、水性媒体とを含有することを特徴とする塗工剤である。カーボン系材料の含有量が、カルボキシル基を含有する樹脂100質量部に対して、10~200質量部であることが好ましい。金属酸化物の含有量が、カルボキシル基を含有する樹脂100質量部に対して、30~1500質量部であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を含有する樹脂と、カーボン系材料と、金属酸化物と、水性媒体とを含有する、塗工剤。
【請求項2】
カーボン系材料の含有量が、カルボキシル基を含有する樹脂100質量部に対して、10~200質量部である、請求項1に記載の塗工剤。
【請求項3】
カーボン系材料がカーボンナノチューブからなる、請求項1または2に記載の塗工剤。
【請求項4】
金属酸化物の含有量が、カルボキシル基を含有する樹脂100質量部に対して、30~1500質量部である、請求項1~3の何れか1項に記載の塗工剤。
【請求項5】
金属酸化物が、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、酸化スズドープインジウムのうちの少なくとも1以上である、請求項1~4の何れか1項に記載の塗工剤。
【請求項6】
カルボキシル基を含有する樹脂が、酸変性ポリオレフィン樹脂および/またはポリエステル樹脂である、請求項1~5の何れか1項に記載の塗工剤。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の塗工剤からなる、塗膜。
【請求項8】
請求項8に記載の塗膜を含む、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性に優れる塗膜を形成し得る塗工剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子部品や半導体素子の集積度の高度化により、埃や静電気発生による製品の損傷問題が多く発生している。このような製品の製造に用いられる各種部品の組立、運搬、包装工程で、埃や静電気が製品に与える影響を減らすために、導電性を有する物質を用いて、組立、運搬、包装に用いられる材料に帯電防止性、導電性を付与することが行われている。
【0003】
各種材料に導電性を付与する方法の一例として、導電性成分を含んだ塗工剤を、各種基材に塗布して塗膜を形成することが行われる。このような塗工剤としては、例えば、バインダー成分と導電性成分としてカーボン系材料を含んだ塗工剤が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された導電性塗工剤を用いて得られた塗膜は、導電性はあるものの、カーボン系材料由来の着色により透明性が低く、使用用途が限定される問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題に鑑みて、導電性と透明性に優れる塗膜を形成し得る、塗工剤を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、カルボキシル基を含有する樹脂と、カーボン系材料と、金属酸化物と、水性媒体とを含有する塗工剤が、上記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。
【0008】
(1)カルボキシル基を含有する樹脂と、カーボン系材料と、金属酸化物と、水性媒体とを含有する、塗工剤。
(2)カーボン系材料の含有量が、カルボキシル基を含有する樹脂100質量部に対して、10~200質量部である、(1)の塗工剤。
(3)カーボン系材料がカーボンナノチューブからなる、(1)または(2)の塗工剤。
(4)金属酸化物の含有量が、カルボキシル基を含有する樹脂100質量部に対して、30~1500質量部である、(1)~(3)の何れかの塗工剤。
(5)金属酸化物が、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、酸化スズドープインジウムのうちの少なくとも1以上である、(1)~(4)の何れかの塗工剤。
(6)カルボキシル基を含有する樹脂が、酸変性ポリオレフィン樹脂および/またはポリエステル樹脂である、(1)~(5)の何れかの塗工剤。
(7)(1)~(6)の何れかの塗工剤からなる、塗膜。
(8)(7)の塗膜を含む、積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗工剤は、優れた導電性を発揮し、さらには透明性も良好な塗膜を得ることができる。そのため、従来では適用できなかった透明性が求められる用途に適用することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の塗工剤は、カルボキシル基を含有する樹脂と、カーボン系材料と、金属酸化物と、水性媒体とを含有する。カルボキシル基を含有する樹脂、カーボン系材料、金属酸化物は、水性媒体中に分散されていることが好ましい。
【0011】
<カルボキシル基を含有する樹脂>
本発明の塗工剤を構成するカルボキシル基を含有する樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。中でも、基材への塗工性、基材との密着性の観点から、ポリエステル樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
また、これらの樹脂を複数種含有していても良く、性能を損なわない範囲で、これ以外の樹脂成分、例えば、シリコーン樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂などを含有していてもよい。
【0012】
(ポリエステル樹脂)
カルボキシル基を含有する樹脂であるポリエステル樹脂は、主に多塩基酸成分および多価アルコール成分より構成されるものである。
【0013】
ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸成分としては、特に制限はされず、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、3-tert-ブチルイソフタル酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルネンジカルボン酸およびその無水物、テトラヒドロフタル酸およびその無水物等の脂環式ジカルボン酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸等の3官能以上のカルボン酸が挙げられる。これらの多塩基酸成分は、単独使用あるいは2種以上の併用が可能である。
【0014】
前記した多塩基酸の中でも、テレフタル酸やイソフタル酸が好ましい。多塩基酸成分中のテレフタル酸やイソフタル酸の含有量は、いずれか一方、または両者を合計した含有量が20モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましい。
【0015】
多塩基酸として、3官能以上の多塩基酸を用いる場合、ポリエステル樹脂の多塩基酸成分中、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましい。
【0016】
多塩基酸として、スルホン酸基を有する多塩基酸も使用することができる。このような多塩基酸としては、5-ナトリウムスルホイソフタル酸(SIPA-Na)、5-ナトリウムスルホテレフタル酸(STPA-Na)、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル(SIPM-Na)、5-ナトリウムスルホテレフタル酸ジメチル(STPM-Na)、5-カリウムスルホイソフタル酸ジメチル(SIPM-K)、5-リチウムスルホイソフタル酸ジメチル(SIPM-Li)等が挙げられる。このような多塩基酸を過剰に用いることは得られる塗膜の耐水性を損ねるものとなる。本発明においては、ポリエステル樹脂を構成する酸成分中、前記多塩基酸は1モル%未満であることが好ましく、0.5モル%未満であることがより好ましく、0モル%であることがさらに好ましい。
【0017】
ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分としては、特に制限はされず、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール等の脂肪族グリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロブタンジメタノール等の脂環族グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエーテル結合含有グリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上のアルコール、等が挙げられる。さらに、2,2-ビス[4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンのようなビスフェノール類(ビスフェノールA)のアルキレンオキシド付加体やビス[4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンのようなビスフェノール類(ビスフェノールS)のアルキレンオキシド付加体等も使用することができる。これらの多価アルコール成分は単独使用あるいは2種以上の併用が可能である。
【0018】
前記した多価アルコールの中でも、エチレングリコールやネオペンチルグリコールが好ましい。これらの含有量はいずれか一方、または両者を合計した含有量が20モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましい。
【0019】
多価アルコールとして、3官能以上の多価アルコールを用いる場合、ポリエステル樹脂の多価アルコール成分中、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましい。
【0020】
ポリエステル樹脂の酸価は、3mgKOH/g以上であることが好ましく、3~30mgKOH/gであることがより好ましく、4~20mgKOH/gであることがさらに好ましく、5~15mgKOH/gであることが特に好ましい。ポリエステル樹脂の酸価が3mgKOH/g未満であると、水性媒体に分散させることが困難になる場合がある。あるいは、水性分散体が得られたとしても非常に、分散安定性が不安定になる場合がある。
【0021】
ポリエステル樹脂の数平均分子量は、5000~50000であることが好ましく、7000~30000であることがより好ましく、8000~25000であることがさらに好ましく、9000~20000であることが特に好ましい。ポリエステル樹脂の数平均分子量が5000未満であると、得られる塗膜の密着性が乏しくなる場合があり、50000を超えると、水性媒体への分散体が困難となる場合がある。
【0022】
ポリエステル樹脂の分子量分布における分散度(以下、分散度という)は、2~10であることが好ましく、2~9がより好ましく、2~8がさらに好ましい。ポリエステル樹脂の分散度2未満であるポリエステル樹脂を得ることは困難であり、分散度が10を超えると水性分散体の分散安定性が乏しくなる。なお、分散度とは、重量平均分子量を数平均分子量で除した値のことを指す。
【0023】
(酸変性ポリオレフィン樹脂)
カルボキシル基を含有する樹脂である酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸変性成分とオレフィン成分とを共重合成分として含有する共重合体であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂が酸変性されていることにより、本発明の塗工剤は、造膜性、基材への塗工性が向上する。
【0024】
酸変性成分は、不飽和カルボン酸成分であることが好ましく、不飽和カルボン酸や、その無水物により導入される。不飽和カルボン酸成分としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0025】
酸変性ポリオレフィン樹脂における酸変性成分の含有量は、特に限定されるものではないが、1~40質量%であることが好ましく、1~30質量%であることがより好ましく、2~20質量%であることがさらに好ましい。酸変性成分の含有量が1質量%未満であると、酸変性ポリオレフィン樹脂は、水性媒体中に安定して分散できない場合があり、40質量%を超えると、形成される塗膜は、基材密着性に劣る場合がある。
【0026】
酸変性ポリオレフィン樹脂を構成するオレフィン成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等の炭素数2~6のアルケンが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。中でも、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン等の炭素数2~4のアルケンが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0027】
酸変性ポリオレフィン樹脂におけるオレフィン成分の含有量は、耐水性、耐油性などの耐久性を向上させる観点から、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0028】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、基材との密着性を向上させる理由から、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有することが好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂における(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、0.5~40質量%であることが好ましく、1~35質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることがさらに好ましく、5~25質量%であることが特に好ましい。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1~30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1~20のアルコールとのエステル化物が好ましい。そのような化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、基材との密着性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがより好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸~」とは、「アクリル酸~またはメタクリル酸~」を意味する。
【0030】
また、酸変性ポリオレフィン樹脂は、上記成分以外に他の成分を酸変性ポリオレフィン樹脂の10質量%以下程度、含有してもよい。他の成分としては、1-オクテン、ノルボルネン類等の炭素数6を超えるアルケン類やジエン類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、一酸化炭素、二酸化硫黄などが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。
【0031】
また、酸変性ポリオレフィン樹脂を構成する酸変性成分は、カルボキシル基の水酸基が、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基等で置換されたN-置換アミド構造を含有していてもよい。
【0032】
酸変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸-無水マレイン酸共重合体、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、酸変性エチレン-プロピレン樹脂、酸変性エチレン-ブテン樹脂、酸変性プロピレン-ブテン樹脂、酸変性エチレン-プロピレン-ブテン樹脂、あるいはこれらの酸変性樹脂にさらに(メタ)アクリル酸エステル等でアクリル変性したエチレン-(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸共重合体等が挙げられる。中でも、エチレン-(メタ)アクリル酸-無水マレイン酸共重合体が好ましい。さらに、酸変性ポリオレフィン樹脂は5~40質量%の範囲で塩素化されていてもよい。
【0033】
酸変性ポリオレフィン樹脂として、アルケマ社製のボンダインシリーズ、エボニックジャパン社製のベストプラストシリーズ、ダウ・ケミカル社製のプリマコールシリーズ、三洋化成社製のユーメックスシリーズ、三井化学社製のアドマーシリーズ、東洋紡社製のトーヨータックシリーズなどの市販品を使用することができる。また、市販の水系のものも使用することができ、日本製紙ケミカル社製のスーパークロンシリーズ、住友精化社製のザイクセンシリーズ、三井化学社製のケミパールシリーズ、東洋紡社製のハードレンシリーズ等を使用することができる。
【0034】
<カーボン系材料>
本発明の塗工剤は、導電性向上を目的として、カーボン系材料を含有するものである。
カーボン系材料の種類については、特に限定されず、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、カーボンファイバー、カーボンブラック等が挙げられるが、高い導電性が得られることからカーボンナノチューブが好ましい。
【0035】
カーボンナノチューブの種類としては、特に限定されないが、例えば、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブが挙げられ、本発明中においてはこれらが混在していても良い。樹脂との親和性が高く、密着性によりいっそう優れることから、多層カーボンナノチューブを用いるのが好ましい。
【0036】
カーボンナノチューブの平均直径としては、特に限定されないが、0.5~100nmが好ましく、0.8~50nmがより好ましく、1~30nmがさらに好ましい。
【0037】
カーボンナノチューブの平均長さとしては、特に限定されないが、0.1~1000μmが好ましく、0.2~800μmがより好ましく、0.5~500μmがさらに好ましい。
【0038】
カーボン系材料は、カルボキシル基を含有する樹脂100質量部に対して10~200質量部であることが好ましく、15~150質量部であることがより好ましく、20~100質量部であることがさらに好ましい。カーボン系材料の含有量が10質量部未満であると、導電性に劣る場合があり、200質量部を超えると、基材への密着性が低下する場合がある。
【0039】
<金属酸化物>
本発明の塗工剤は、金属酸化物とカーボン系材料を同時に含有することにより、カーボン系材料のみを含有する場合よりも、透明性が向上する。さらには、耐溶剤性も向上する。
【0040】
本発明の塗工剤を構成する金属酸化物は、例えば、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、酸化スズドープインジウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化バナジウムなどが挙げられる。中でも、導電性が高いことから酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、酸化スズドープインジウムが、好ましい。さらに、扱いやすさの観点から、酸化スズがより好ましい。酸化スズは、予め水中または水を主成分とする溶媒に分散した、分散液(ゾル)の形態で使用することが好ましい。
【0041】
含有される金属酸化物の形状は、例えば粒子形状である。その大きさは特に限定されないが、粒子径が小さくなると透明性が高くなることから、平均粒子径が200nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。
【0042】
金属酸化物の含有量は、カルボキシル基を含有する樹脂100質量部に対して30~1500質量部であることが好ましく、50~1200質量部であることがより好ましく、100~1000質量部であることがさらに好ましい。金属酸化物の含有量が、30質量部未満であると、透明性に劣る場合があり、1500質量部を超えると、基材への密着性が低下する場合がある。
【0043】
<水性媒体>
本発明の塗工剤を構成する水性媒体は、水または、水を主成分とする液体である。水性媒体を用いることは環境面から好ましく、また、本発明の塗工剤を塗膜とした場合に、より薄膜としやすくなる。
水性媒体は、塩基性化合物や親水性有機溶媒を含有してもよい。水性媒体が親水性有機溶媒を含有することで、塗工剤は、基材への濡れ性が向上し、塗工性および造膜性が向上するという効果が奏される。
【0044】
親水性有機溶媒の含有量は、基材への適度な濡れ性付与のために、塗工剤全量に対して1~50質量%であることが好ましく、3~30質量%であることがより好ましく、5~25質量%であることがさらに好ましい。
【0045】
親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-sec-ブチル、酢酸-3-メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、1,2-ジメチルグリセリン、1,3-ジメチルグリセリン、またはトリメチルグリセリン等が挙げられる。
【0046】
塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、sec-ブチルアミン、プロピルアミン、n-ブチルアミン、2-メトキシエチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、2,2-ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ピロール、またはピリジン等が挙げられる。
【0047】
<添加剤>
本発明の塗工剤は、目的に応じて性能をさらに向上させるために、架橋剤等の添加剤を含有してもよい。
【0048】
架橋剤としては、特に限定されず、例えば、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属等が挙げられる。具体的には、イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が好ましい。また、これらの架橋剤も複数同時に使用してもよい。
【0049】
架橋剤の含有量は、カルボキシル基を含有する樹脂100質量部に対し、0.01~80質量部であることが好ましく、0.1~50質量部であることがより好ましく、0.5~30質量部であることがさらに好ましい。架橋剤の含有量が0.01質量部未満の場合には、形成される塗膜の性能の向上が見込めなくなる傾向にあり、80質量部を超える場合には、加工性等の性能が低下することがある。
【0050】
本発明の塗工剤は、さらに必要に応じて、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、耐候剤、難燃剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0051】
本発明の塗工剤は、上記カルボキシル基を含有する樹脂と、カーボン系材料と、金属酸化物と、水性媒体とを含有するものであり、カルボキシル基を含有する樹脂は、水性媒体に分散していることが好ましい。
本発明の塗工剤における、不揮発成分の含有率は、塗工条件、目的とする塗膜の厚みや性能等により適宜選択でき、特に限定されないが、粘度を適度に保ち、かつ良好な造膜性を発現させる点で、1~60質量%であることが好ましく、3~55質量%であることがより好ましく、5~50質量%であることがさらに好ましく、10~45質量%であることが特に好ましい。
【0052】
本発明の塗工剤の粘度は、基材へ塗工性の観点から、1~2000mPa・sであることが好ましく、3~1000mPa・sであることがより好ましく、5~500mPa・sであることがさらに好ましい。
【0053】
本発明の塗工剤を製造する方法は、特に限定されず、上記の原料を混合する方法が挙げられ、それらの混合順序は任意である。カルボキシル基を含有する樹脂は、水性媒体に分散した水性分散体の状態で混合してもよい。
【0054】
<塗膜>
本発明の塗工剤は、フィルムや不織布等の基材に対して、公知の塗工方法を用いて塗工し、本発明の塗膜とすることができる。例えば、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により、基材表面に均一に塗工し、乾燥のための加熱処理に供することにより、均一な塗膜を基材表面に密着させて形成することができる。加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、経済性等を考慮して、適宜に選択される。
【0055】
本発明の塗膜は、厚みが、0.05~20μmであることが好ましく、0.08~10μmであることがより好ましく、0.1~5μmであることがさらに好ましい。厚みが上記範囲となるように形成された塗膜は、厚みの均一性に優れる。また、本発明の塗膜は薄膜でも導電性に優れるため、導電性と透明性を両立することができる。
【0056】
塗膜の厚みを調節するためには、塗工に用いる装置やその使用条件を適宜選択することに加えて、目的とする厚みに適した濃度の塗工剤を使用することが好ましい。塗工剤の濃度は、調製時の仕込み組成により調節することができ、また、一旦調製した塗工剤を適宜希釈あるいは濃縮して調節してもよい。
【0057】
<積層体>
本発明の積層体は、本発明の塗膜を含むものであり、例えば、各種基材表面、接着層またはプライマー層に、本発明の塗膜を含む積層体が挙げられる。
本発明の積層体は、例えば、半導体や電子部品などの包装材料、半導体素子、表面保護用フィルム、再剥離型ラベル、キャリアテープ、マスキングテープ、偏光板用途、透明タッチパネルやディスプレイ、発光ダイオード、磁気記録材料、電子写真記録材料、磁気テープ、太陽電池、二次電池、燃料電池、コンピュータ部品、携帯電話部品、自動車部品等に用いることができる。
【実施例0058】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
各種の特性について、以下の方法で測定または評価した。
【0059】
1.積層体の表面抵抗率(導電性)
JIS K6911に準じ、デジタル超高抵抗/微小電流計(アドバンテスト社製 R8340型)を用い、温度20℃、湿度60%RH雰囲気下で、積層体の塗膜表面の表面抵抗率測定を行い、次の基準で導電性の評価を行った。
◎:表面固有抵抗率が1×106Ω/□以下
〇:表面固有抵抗率が1×106Ω/□超え1×108Ω/□以下
△:表面固有抵抗率が1×108Ω/□超え1×109Ω/□以下
×:表面固有抵抗率が1×109Ω/□超え
【0060】
2.積層体の全光線透過率(透明性)
JIS K7361-1に準じ、濁度計(日本電色工業社製 NDH2000型)を用いて、積層体の全光線透過率を測定した。バックグラウンドとして空気を基準に測定した。基材の全光線透過率は90%であった。次の基準で透明性を評価した。
◎:全光線透過率80%以上
〇:全光線透過率75%以上80%未満
△:全光線透過率70%以上75%未満
×:全光線透過率70%未満
【0061】
3.積層体の耐溶剤性
積層体をトルエン中に20℃下、1時間浸漬した。処理後の積層体を十分に乾燥した後、目視による外観変化(剥がれ)の観察と表面抵抗率測定を行い、次の基準で耐溶剤性を評価した。
〇:塗膜の変化はなく、表面抵抗率の増加が10倍未満
△:塗膜の変化はないが、表面抵抗率が10倍以上増加
×:塗膜が剥がれる
【0062】
4.塗膜の密着性の評価
JIS K5400 8.5.2の方法で積層体の塗膜表面の密着性試験を行った。塗膜をカットして1mm×1mm×100個の碁盤目部分を作成し、これを粘着テープにより引き剥がし、100個の碁盤目中で剥離せず残っている個数を数えて、次の基準により塗膜の密着性を評価した。
◎:100
〇:95以上99以下
△:85以上94以下
×:84以下
【0063】
塗工剤の原料および基材として、下記のものを使用した。
【0064】
1.ポリエステル樹脂
ポリエステル樹脂の水性分散体(A-1)の製造
[ポリエステル樹脂(a1)の調製]
テレフタル酸2077g、イソフタル酸2077g、エチレングリコール1102g、ネオペンチルグリコール1666gからなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒として酢酸亜鉛3.3gを添加し、系の温度を265℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1 .5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、260℃になったところで無水トリメリット酸29gを添加し、260℃で2時間撹拌して、解重合反応を行った。その後、系の圧力を除々に減じて0.5時間後に13Paとし、その後1時間、脱泡を行った。次いで、系を窒素ガスで加圧状態にして、ストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、カッティングして、ペレット状(直径約3mm、長さ約3mm)のポリエステル樹脂(a1)を得た。
【0065】
[溶解工程]
3Lのポリエチレン製容器にポリエステル樹脂(a1)を400g、メチルエチルケトンを600g投入し、系内温度が約60℃になるように加熱攪拌し、ポリエステル樹脂(a1)をメチルエチルケトンに完全に溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂(a1)溶液を得た。
【0066】
[転相乳化工程]
ジャケット付きガラス容器(内容量2L)に、前記ポリエステル樹脂(a1)溶液を500g仕込み、系内温度を13℃に保ちながら攪拌し、塩基性化合物としてトリエチルアミンを22.7g添加した。続いて100g/分の速度で13℃の蒸留水477.3gを添加し、その後、攪拌を30分間続けた。蒸留水を全量添加する間の系内温度は常に15℃以下であった。蒸留水添加終了後、固形分濃度が20質量%の水性分散体を得た。
【0067】
[脱溶剤工程]
得られたポリエステル樹脂(a1)の分散体800gと蒸留水52.3gを2Lの丸底フラスコに仕込み、内温が50℃以下になるように調整しながら減圧で脱溶剤を行った。脱溶剤は留去量が約360gになったところで終了し、室温まで冷却後、300メッシュのステンレス製フィルターで濾過した。次いで、この水性分散体の固形分濃度を測定した後、固形分濃度が30質量%になるように蒸留水を添加して、ポリエステル樹脂の水性分散体(A-1)を得た。
【0068】
2.酸変性ポリオレフィン樹脂
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体(B-1)の製造
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂(エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体、アクリル酸エチル6質量%、無水マレイン酸2質量%、融点105℃、ガラス転移温度0℃未満)、75.0gのイソプロパノール(以下、IPA)、3.9g(樹脂中の無水マレイン酸のカルボキシル基に対して1.0当量)のN-ジメチルエタノールアミン(以下、DMEA)および161.1gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)した。このようにして得られた水性分散体250g、蒸留水90gを0.5リットルの2口丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ型冷却器を設置し、フラスコをオイルバスで加熱していき、水性媒体を留去した。約90gの水性媒体を留去したところで、加熱を終了し、室温まで冷却した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)して乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体(B-1)を得た。
【0069】
3.アクリル樹脂
アクリル樹脂の水性分散体(C-1):サイデン化学社製、EK-61、固形分濃度40質量%。
【0070】
4.金属酸化物
酸化スズゾル:
塩化第二スズ五水和物0.1モルを200mlの水に溶解して0.5Mの水溶液とし、撹拌しながら28%のアンモニア水を添加することでpH1.5の白色酸化スズ超微粒子含有スラリーを得た。得られた酸化スズ超微粒子含有スラリーを70℃まで加熱した後、50℃ 前後まで自然冷却したうえで純水を加え1Lの酸化スズ超微粒子含有スラリーとし、遠心分離器を用いて固液分離を行った。この含水固形分に800mlの純水を加えて、ホモジナイザーにより撹拌・分散を行った後、遠心分離器を用いて固液分離を行うことで洗浄を行った。洗浄後の含水固形分に純水を75ml加えて酸化スズ超微粒子含有スラリーを調製した。得られた酸化スズ超微粒子含有スラリーにトリエチルアミン3.0mlを加え撹拌し、透明感が出てきたところで70℃まで昇温した後、加温をやめ自然冷却することで固形分濃度10.5質量%の有機アミンを分散安定剤とする酸化スズゾルを得た。
【0071】
アンチモンドープ酸化スズ(ATO):石原産業社製、SN-100D、固形分濃度30質量%。
【0072】
5.カーボン系材料
多層カーボンナノチューブ:水分散体、日本資材社製、固形分濃度3.0質量%。
単層カーボンナノチューブ:水分散体、日本資材社製、固形分濃度0.1質量%
グラフェン:水分散体、仁科マテリアル社製、固形分濃度20質量%
【0073】
6.フィルム基材
ユニチカ社製、50μmPETフィルム、全光線透過率90%
【0074】
実施例1
ポリエステル樹脂水性分散体3.8gに対して酸化スズゾルを76.5gと、多層カーボンナノチューブ水分散体19.7gとを添加し(固形分質量比100/600/50)、塗工剤を作製した。
作製した塗工液を、フィルム基材上に、バーコーターを用いて乾燥後の塗膜厚みが0.1μmになるように塗工し、100℃に設定した熱風乾燥機内で60秒間乾燥させることにより、塗膜を形成し、積層体を作製した。
【0075】
実施例2~28、比較例1~4
表1、表2に記載のように、樹脂、金属酸化物、カーボン系材料の種類、または各固形分質量比(含有量)を変更して塗工剤を作製し、実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0076】
実施例、比較例で作製した塗工剤の構成、各種特性の評価結果を表1、表2に示す。
【0077】
【0078】
【0079】
実施例1~28で得られた塗工剤により形成された塗膜は、カーボン系材料と金属酸化物とを組み合わせて含有することで、導電性を維持したまま透明性を向上させることができた。また、金属酸化物を含有することで、耐溶剤性にも優れる塗膜を得ることができた。
【0080】
比較例1、3において、金属酸化物を含有しない塗工剤により形成された塗膜は、実施例よりも透明性に劣っていた。また、比較例2,4において、カーボン系材料を含有しない塗工剤により形成された塗膜は、実施例よりも導電性に劣るものであった。