(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140955
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】処理ガラス繊維織物
(51)【国際特許分類】
D06M 15/277 20060101AFI20230928BHJP
D06M 15/333 20060101ALI20230928BHJP
D03D 15/267 20210101ALI20230928BHJP
C03C 25/1095 20180101ALI20230928BHJP
C03C 25/28 20180101ALI20230928BHJP
C03C 25/25 20180101ALI20230928BHJP
【FI】
D06M15/277
D06M15/333
D03D15/267
C03C25/1095
C03C25/28
C03C25/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047049
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌広
【テーマコード(参考)】
4G060
4L033
4L048
【Fターム(参考)】
4G060AD22
4G060AD42
4G060BA05
4L033AA09
4L033AB05
4L033AC03
4L033CA22
4L033CA28
4L048AA03
4L048AA34
4L048AB07
4L048AB11
4L048BA01
4L048CA15
4L048DA24
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】 優れた撥水性を備えつつ、目止め性の効果をより発揮し得る、処理ガラス繊維織物に関する技術の提供を主な課題とする。
【解決手段】 ガラス繊維糸を含むガラス繊維織物と、該ガラス繊維上に含まれる、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物と、を含む、処理ガラス繊維織物、を解決手段とする。これにより、優れた撥水性を備えつつ、目止め性の効果をより発揮し得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維糸を含むガラス繊維織物と、
該ガラス繊維上に含まれる、
エチレン-酢酸ビニル共重合体と、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物と、
を含む、処理ガラス繊維織物。
【請求項2】
前記フッ素系化合物の少なくとも一部が前記処理ガラス繊維織物の表面に存在している、請求項1に記載の処理ガラス繊維織物。
【請求項3】
JIS R 3420:2013 7.3に準じ測定される前記処理ガラス繊維織物の強熱減量が1.0~2.5質量%である、請求項1又は2に記載の処理ガラス繊維織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理ガラス繊維織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、処理ガラス繊維織物は様々な用途に使用されている。当該用途の1つとして、グラスウールやロックウールの表面に張り合わせることが知られている。例えば、作業機械の機体に貼付され、該機体内部で生じる騒音を吸収する吸音材において、ガラス繊維集合体のグラスウールからなる板状の吸音素材と、複数のガラス繊維を網目状に編んでなるガラスクロスを基材とし、該吸音素材の周囲に巻回された表皮材と、該吸音素材及び該表皮材間に介在し、該吸音素材及び該表皮材を糊着する接着剤とを備えた、作業機械の吸音材が知られている(例えば特許文献1参照。)。該文献には、前記表皮材は、ガラスクロスの表面に二重の表面加工が施されて形成されており、ガラスクロスの表面に第一層目の目止め層が被膜形成され、さらにその外周に第二層目の撥水層が被膜形成されていること、目止め層はアクリルエマルションに含浸させた後に乾燥させて形成された層であること、撥水層は目止め層の表面全体に形成された撥水性樹脂からなる層であり、撥水層を形成する樹脂にはシリコーン樹脂が用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が検討したところ、特許文献1に開示されている表皮材は、撥水層を形成すると、目止め層を形成する目止め性付与成分の効果が薄れ、ガラス繊維織物(ガラスクロス)の経糸又は緯糸がほつれやすいという問題があることを知得した。また、特許文献1に開示されている表皮材は、撥水性も十分でないという問題があることを知得した。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、優れた撥水性を備えつつ、目止め性の効果をより発揮し得る、処理ガラス繊維織物に関する技術の提供を主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記問題を解決すべく、特許文献1に開示されている表皮材における目止め層を形成する目止め性付与成分、及び撥水層を形成する撥水性付与成分、の組み合わせについて着目、検討した。そして、鋭意検討を重ね、数ある目止め性付与成分及び撥水性付与成分の中から、主として目止め性を付与する成分としてエチレン-酢酸ビニル共重合体を選択し、主として撥水性を付与する成分として炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物を選択し、これらを組み合わせることにより、初めて、上記課題を解決できることを見出した。本発明は、係る知見に基づき、さらに鋭意検討を重ねることにより完成された発明である。
【0007】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.ガラス繊維糸を含むガラス繊維織物と、該ガラス繊維上に含まれる、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物と、を含む、処理ガラス繊維織物。
項2.前記フッ素系化合物の少なくとも一部が前記処理ガラス繊維織物の表面に存在している、項1に記載の処理ガラス繊維織物。
項3.JIS R 3420:2013 7.3に準じ測定される前記処理ガラス繊維織物の強熱減量が1.0~2.5質量%である、項1又は2に記載の処理ガラス繊維織物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の処理ガラス繊維織物によれば、ガラス繊維糸を含むガラス繊維織物と、該ガラス繊維上に含まれる、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物と、を含むことから、優れた撥水性を備えつつ、目止め性の効果をより発揮し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ほつれ強力の測定方法を説明する模式図であり、処理ガラス繊維織物をカットした状態を示す模式図である。
【
図2】ほつれ強力の測定方法を説明する模式図であり、カットした処理ガラス繊維織物の両面に貼付する布テープを示す模式図である。
【
図3】ほつれ強力の測定方法を説明する模式図であり、処理ガラス繊維織物の両面に布テープを貼付した状態を示す模式図である。
【
図4】ほつれ強力の測定方法を説明する模式図であり、
図3に示す、布テープを両面に貼付した処理ガラス繊維織物を、緯糸方向の長さが5cmとなるように5枚にカットした試験片を示す模式図である。
【
図5】ほつれ強力の測定方法を説明する模式図であり、
図4に示す試験片から処理ガラス繊維織物の布テープが貼付されていない部分の経糸方向の端の緯糸を1本抜き取り、抜き取った後の試験片を測定サンプルとし、引張試験機を用い、引張試験機の上部つかみに先が尖った釣り針状のフックを固定し、当該フック先端を、測定サンプルの処理ガラス繊維織物1の布テープが貼付されていない部分の経糸方向端から数えて2本目の緯糸に引っかけた状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の処理ガラス繊維織物は、ガラス繊維糸を含むガラス繊維織物と、該ガラス繊維上に含まれる、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物と、を含む。以下、本発明の処理ガラス繊維織物について詳細に説明する。
【0011】
本発明の処理ガラス繊維織物は、ガラス繊維糸を含むガラス繊維織物を含む。具体的には、ガラス繊維織物は、ガラス繊維を含むガラス繊維糸を経糸及び緯糸として構成される。
【0012】
ガラス繊維糸を構成するガラス繊維のガラス材料については、特に制限されず、公知のガラス材料を用いることができる。ガラス材料としては、具体的には、無アルカリガラス(Eガラス)、耐酸性の含アルカリガラス(Cガラス)、高強度・高弾性率ガラス(Sガラス、Tガラス等)、耐アルカリ性ガラス(ARガラス)等が挙げられる。これらのガラス材料の中でも、好ましくは汎用性の高い無アルカリガラス(Eガラス)が挙げられる。ガラス繊維糸を構成するガラス繊維は、1種類のガラス材料からなるものであってもよいし、異なるガラス材料からなるガラス繊維を2種類以上組み合わせたものであってもよい。
【0013】
Eガラスの具体例としては、SiO2が52~56質量%、Al2O3が12~16質量%、CaO+MgOが20~25質量%、B2O3が5~10質量%を含むガラス組成物、SiO2が52~56質量%、Al2O3が12~16質量%、CaOが15~25質量%、MgOが0~6質量%、B2O3が5~13質量%、Na2O3及びK2O3が0~1質量%であるガラス組成物が挙げられる。また、高強度・高弾性率ガラスの具体例としては、例えば、SiO2の含有量が60.0~66.0質量%、Al2O3の含有量が18.0~26.0質量%、MgOの含有量が8.0~20.0%を含むガラス組成物とすることができる。
【0014】
本発明の処理ガラス繊維織物において、ガラス繊維の形態としては、長繊維とすることが好ましく、長繊維である単繊維が多数集合したマルチフィラメントであるガラス繊維糸とすることがより好ましい。また、長繊維である単繊維が多数集合したマルチフィラメントであるガラス繊維糸としては、長繊維である単繊維を多数撚りまとめて糸状にしたガラスヤーンとすることがより好ましい。
【0015】
本発明の処理ガラス繊維織物において、ガラス繊維(単繊維)の直径としては、4~11μmが好ましく、6~10μmがより好ましい。また、ガラス繊維糸とする場合、ガラス繊維糸中の単繊維の本数としては、30~3200本が好ましく、200~800本がより好ましい。また、ガラス繊維糸の番手としては、10~400texが好ましく、30~100texがより好ましい。なお、ガラス繊維の直径は、JIS R 3420:2013 7.6 A法に準じ、測定、算出する。また、上記番手は、JIS R 3420:2013 7.1に順じ測定、算出する。
【0016】
本発明において、ガラス繊維織物の織組織としては、例えば、平織、朱子織、ななこ織、綾織等が挙げられ、平織が好ましい。
【0017】
本発明の処理ガラス繊維織物の織密度は特に制限されないが、例えば、経糸密度は、15~120本/25mmが挙げられ、20~50本/25mmがより好ましく挙げられ、20~40本/25mmがさらに好ましく挙げられ、25~35本が特に好ましく挙げられる。また、緯糸密度は、10~90本/25mmが挙げられ、110~40本/25mmがより好ましく挙げられ、18~37本がさらに好ましく挙げられ、20~30本が特に好ましく挙げられる。また、経糸密度と緯糸密度との比(=経糸密度/緯糸密度)は、例えば、1.0~1.5とすることが挙げられ、1.01~1.40とすることが好ましく挙げられ、1.15~1.35とすることがより好ましく挙げられる。なお、処理ガラス繊維織物の織密度は、JIS R 3420 2013 7.9に従い、測定、算出する。
【0018】
本発明の処理ガラス繊維織物は、ガラス繊維上に含まれる、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物と、を含む。
【0019】
前述のように、特許文献1に開示されている表皮材は、目止め性付与成分としてアクリルエマルション、撥水性付与成分としてシリコーン樹脂を用いることが開示されている。しかしながら、本発明者が検討したところ、該表皮材は、撥水層を形成すると、目止め層を形成する目止め性付与成分の効果が薄れ、ガラス繊維織物(ガラスクロス)の経糸又は緯糸がほつれやすいという問題があることを知得した。また、特許文献1に開示されている表皮材は、撥水性も十分でないという問題があることを知得した。
【0020】
そして、本発明者は、特許文献1に開示されている表皮材における目止め層を形成する目止め性付与成分、及び撥水層を形成する撥水性付与成分、の組み合わせについて着目、検討した。そして、鋭意検討を重ね、数ある目止め性付与成分及び撥水性付与成分の中から、主として目止め性を付与する成分としてエチレン-酢酸ビニル共重合体を選択し、主として撥水性を付与する成分として炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物を選択し、これらを組み合わせることにより、初めて、上記課題を解決できることを見出したのである。
【0021】
エチレン-酢酸ビニル共重合体としては、特に制限されないが、例えば、下記化学式(1)に示すものが好ましく挙げられる。
【0022】
【0023】
炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物としては、例えば、炭素数が1~6のパーフルオロアルキル基を含有する単量体由来の構成単位を含有する含フッ素共重合体が挙げられる。炭素数が1~6のパーフルオロアルキル基を含む単量体としては、炭素数が1~6のパーフルオロアルキル基を含むアクリレート、メタクリレート、またはα位がハロゲンで置換されたアクリレートが挙げられる。炭素数が1~6のパーフルオロアルキル基を含む単量体としては、下記式(2)で表わされる化合物が好ましい。当該炭素数としては、4~6がより好ましく、6が特に好ましい。
CpF2p+1CqH2qOCOCR=CH2・・・(2)
ただし、pは1~6の整数であり、qは1~4の整数であり、Rは水素原子、メチル基またはハロゲン原子である。Rとしては、水素原子、メチル基または塩素原子が好ましい。
【0024】
式(2)で表わされる化合物のうち、好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。
C6F13C2H4OCOC(CH3)=CH2、
C6F13C2H4OCOCH=CH2、
C6F13C2H4OCOCCl=CH2、
C4F9C2H4OCOC(CH3)=CH2、
C4F9C2H4OCOCH=CH2、
C4F9C2H4OCOCCl=CH2。
【0025】
含フッ素共重合体は、炭素数が1~6のポリフルオロアルキル基を含む単量体と種々の単量体とを共重合すること等により得られる。含フッ素共重合体の具体例としては、例えば、国際公開第2014/030648号公報、国際公開第2014/200029号公報に記載された含フッ素共重合体が挙げられる。
【0026】
炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物を含む市販品としては、AGC株式会社製のアサヒガード(登録商標)AG-E061、AG-E081、AG-E082、AG-E092、AG-E310、AG-E400、AG-E500D、AG-E550D、AG-E700D、ダイキン工業社株式会社製TG-4571、TG-4572、TG-5243、TG-5502、TG-5504、TG-5541、TG-5543、TG-5545、TG-5546、TG-5601、TG-5671、TG-5672のユニダイン(登録商標)等が挙げられる。
【0027】
本発明の処理ガラス繊維織物において、主として目止め性付与成分として寄与するエチレン-酢酸ビニル共重合体と、主として撥水性付与成分として寄与する炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物と、の質量比(エチレン-酢酸ビニル共重合体の質量(g/m2)/炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物の質量(g/m2))としては、特に制限されないが、1.5~10が好ましく、2~5がより好ましい。
【0028】
また、本発明の処理ガラス繊維織物は、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物の少なくとも一部が処理ガラス繊維織物の表面に存在していることが好ましい。このようにするには、後述する製造方法等により可能である。
【0029】
本発明の処理ガラス繊維織物は、主として目止め性付与成分として寄与するエチレン-酢酸ビニル共重合体、及び、主として撥水性付与成分として寄与する炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物、以外の他の処理剤を含むことができる。当該他の成分としては、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、難燃剤、防虫剤、化学物質吸着剤、吸放湿性物質、香料、顔料、着色剤、触媒、光触媒、蓄光剤、蛍光剤、光輝性顔料、界面活性剤等が挙げられる。また、本発明の処理ガラス繊維織物に含まれる有機質量(g/m2)に対する、前述した目止め性付与成分として寄与するエチレン-酢酸ビニル共重合体の質量(g/m2)と炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物の質量(g/m2)との和の割合(=(エチレン-酢酸ビニル共重合体の質量(g/m2)+炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物の質量(g/m2))/本発明の処理ガラス繊維織物に含まれる有機質量(g/m2)×100)としては、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、95~100質量%がさらに好ましい。
【0030】
本発明の処理ガラス繊維織物は、JIS R 3420:2013 7.3に準じ測定される前記処理ガラス繊維織物の強熱減量が1.0~2.5質量%であることが好ましい。このような強熱減量とすることにより、柔軟性がより向上し、本発明の処理ガラス繊維織物をロール製品としたときのシワの発生等をより低減することができる。
【0031】
本発明の処理ガラス繊維織物は、ガラス繊維上に含まれる、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物と、を含むことから、撥水性を備える。本発明の処理ガラス繊維織物が備える好適な撥水性能としては、JIS L 1092:2009 7.2 はっ水度試験にて評価されるはっ水度が4級以上が好ましい。このようなはっ水度とするには、ガラス繊維上に、エチレン-酢酸ビニル共重合体と炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物と、を含むようにすることの他、エチレン-酢酸ビニル共重合体と炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物との質量比、ガラス繊維織物の織密度、処理ガラス繊維織物の強熱減量等を調整したり、後述する製造方法とすること等により可能である。
【0032】
本発明の処理ガラス繊維織物は、該ガラス繊維上に含まれる、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物と、を含むことから、ガラス繊維織物を構成するガラス糸の目止め性の効果をより発揮し得る。本発明の処理ガラス繊維織物が備える目止め性としては、経糸方向のほつれ強力が5g以上が好ましく、10g以上がより好ましく、20g以上がさらに好ましい。このようなほつれ強力とするには、ガラス繊維上に、エチレン-酢酸ビニル共重合体と炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物と、を含むようにすることの他、目止め性付与成分として寄与するエチレン-酢酸ビニル共重合体と炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物との質量比、ガラス繊維織物の織密度、処理ガラス繊維織物の強熱減量等を調整したり、後述する製造方法とすること等により可能である。
【0033】
上記経糸方向のほつれ強力は次のように測定されるものである。
図1~
図5は、当該ほつれ強力の測定方法を説明する模式図である。まず、
図1に示すように、処理ガラス繊維織物1を、サンプリング箇所として処理ガラス繊維織物1の緯糸方向(緯糸が連続する方向)の中心とし、経糸方向の長さ4.5cm、緯糸方向の長さ25cmに、緯糸が途中で途切れず緯糸方向に連続するようにカットする(
図1~5において、紙面上下方向が経糸方向(経糸が連続する方向)、紙面左右方向が緯糸方向(緯糸が連続する方向)である。)。次に、
図2に示すように、幅3.8cm、長さ25cmの布テープ2(ニチバン株式会社製商品名102N7-38)を2枚準備し、
図3に示すように、当該布テープ2を、処理ガラス繊維織物1の経糸方向の端と当該布テープ2の幅方向端とが一致するように、上記カットした処理ガラス繊維織物1の両面に貼付する。次いで、
図4に示すように、上記布テープ2を両面に貼付した処理ガラス繊維織物1を、緯糸方向の長さが5cmとなるように5枚にカットする。そして、5枚にカットした試験片それぞれについて、
図5に示すように、処理ガラス繊維織物1の布テープ2が貼付されていない部分の経糸方向の端の緯糸を1本抜き取り、抜き取った後の試験片を測定サンプルとする。そして、引張試験機を用い、引張試験機の上部つかみに先が尖った釣り針状のフックを固定し、当該フック先端を、
図5に示すように、測定サンプルの処理ガラス繊維織物1の布テープ2が貼付されていない部分の経糸方向端から数えて2本目の緯糸に、緯糸方向中央部において引っかけ、下部つかみで測定サンプルの布テープ2が貼付されている部分をつかみ、つかみ間距離を15cmとして、TestSpeedを2mm/minの条件で引張試験をおこない最大荷重を測定する。5つの測定サンプルについて当該最大荷重(g)を測定し、その平均値を経糸方向のほつれ強力(g)とする。
【0034】
なお、ガラス繊維織物は、製造する際、経糸が緯糸に比べてより張力がかかった状態で製造されることが技術常識である。従って、ガラス繊維織物の緯糸は、比較的張力フリーな状態で製造されることから、ガラス繊維織物平面方向から見たときの糸幅が経糸より大きくなる。従って、本発明において、経糸とは、経糸及び緯糸のうち、平面方向から見たときの糸幅の平均値が小さい方のガラス繊維糸であるとも定義することができる。ここで、経糸及び緯糸の糸幅の平均値は、処理ガラス繊維織物を20cm×20cmにカットし、光学顕微鏡等で平面方向から観察し、経糸及び緯糸を25本ずつ任意に選択し、25本それぞれについて、端から1cmの箇所の糸幅を測定し、その地点から1cm毎に測定を残り18回繰り返し、合計19か所の糸幅を測定する。これを上記25本についておこない、19か所×25本のそれぞれで求められる糸幅の平均値を求め、これを糸幅の平均値とする。
【0035】
本発明の処理ガラス繊維織物は、JIS L 1096:2010 8.21のA法に準じ測定される、経糸方向の剛軟度が100~200mmであることが好ましい。このような剛軟度とすることにより、ガラス繊維織物を構成するガラス糸がほつれることを低減することと、本発明の処理ガラス繊維織物をロール製品としたときのシワの発生を低減することとをより両立しやすくなる。このような剛軟度とするには、上記本願発明の構成とすることの他、目止め性付与成分として寄与するエチレン-酢酸ビニル共重合体と炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物との質量比、ガラス繊維織物の織密度、質量、処理ガラス繊維織物の強熱減量等を調整したり、後述する製造方法とすること等により可能である。
【0036】
本発明の処理ガラス繊維織物の質量としては特に制限されないが、例えば、100~200g/m2が好ましく、130~170g/m2がより好ましい。なお、本明細書において、処理ガラス繊維織物及びガラス繊維織物の質量は、JIS R 3420 2013 7.2に従い、測定、算出する。また、本発明の処理ガラス繊維織物の厚さとしては特に制限されないが、30~300μmが好ましく、100~200μmがより好ましい。なお、本明細書において、処理ガラス繊維織物及びガラス繊維織物の厚さは、JIS R 3420 2013 7.10.1A法に従い、測定、算出する。
【0037】
本発明の処理ガラス繊維織物の製造方法としては特に限定されない。以下、本発明の処理ガラス繊維織物の好ましい態様の一例として、例えば、(1)ガラス繊維織物を準備する工程、(2)準備したガラス繊維織物を、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む処理剤で処理する第1処理工程、(3)前記第1処理工程で処理したガラス繊維織物を、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物を含む処理剤で処理する第2含浸処理工程、を含む製造方法が挙げられる。このようにすることにより、前記フッ素系化合物を前記処理ガラス繊維織物の表面により多く存在させることができ、得られる処理ガラス繊維織物を撥水性により優れたものとしやすくなる。
【0038】
ガラス繊維織物を準備する工程において、ガラス繊維織物は、公知の方法によって製造することができる。具体的には、前述したガラス糸を経糸及び緯糸として準備し、当該経糸、緯糸を用いてエアージェット織機、レピア織機、ウォータージェット織機等で製織し、ヒートクリーニング処理等で経糸及び緯糸の紡糸集束剤等有機成分を除去することが挙げられる。ここで、第1含浸処理工程の樹脂の、ガラス繊維織物に対する含浸性を高める目的で、当該準備したガラス繊維織物にはシランカップリング剤等表面処理剤にて表面処理することもできる。
【0039】
前記第1処理工程において、ガラス繊維織物に前記樹脂を含む処理剤を付与する方法としては公知の方法が採用できる。例えば、ガラス繊維織物を前記樹脂を含む溶液に含浸する含浸法、スプレーコート法、ロールコート法、ナイフコート法等が挙げられ、含浸法が好ましい。また、第1処理工程ではエチレン-酢酸ビニル共重合体の付着量を調整することができる。付着量の調整も公知の方法でおこなうことができ、例えば、処理液中の樹脂の濃度を調整したり、ニップロールのニップ圧を調整して樹脂が所定の付着量となるよう絞り率を調整したりすることが挙げられる。処理剤は、例えば、樹脂を含むエマルション、当該エマルションを含む水溶液等が挙げられる。第1処理工程では、ガラス繊維織物に前記樹脂を含む処理液を付与し、必要に応じて付着量を調整した後、乾燥をおこなう。乾燥条件としては、例えば、温度130~230℃で、時間1~10分間乾燥することが好ましく挙げられる。
【0040】
前記第2処理工程において、ガラス繊維織物に炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物を含む処理剤を付与する方法としては公知の方法が採用できる。例えば、第1処理工程で処理されたガラス繊維織物を前記樹脂を含む溶液に含浸する含浸法、スプレーコート法、ロールコート法、ナイフコート法等が挙げられ、含浸法が好ましい。また、第2処理工程では前記フッ素系化合物の付着量を調整することができる。付着量の調整も公知の方法でおこなうことができ、例えば、処理液中の前記フッ素系化合物の濃度を調整したり、ニップロールのニップ圧を調整して前記フッ素系化合物が所定の付着量となるよう絞り率を調整したりすることが挙げられる。第2処理工程では、第1処理工程で処理されたガラス繊維織物に前記フッ素系化合物を含む処理剤を付与し、必要に応じて付着量を調整した後、乾燥をおこなう。乾燥条件としては、例えば、温度170~200℃で、時間1~10分間乾燥することが好ましく挙げられる。斯くして、本発明の処理ガラス繊維織物を得ることができる。
【0041】
本発明の処理ガラス繊維織物の用途としては特に制限されない。例えば、グラスウール又はロックウールと貼り合わせるために用いることができる。貼り合わせの態様としては、グラスウール又はロックウールからなるボード材の表面に本発明の処理ガラス繊維織物を貼着させることが挙げられる。上記グラスウール又はロックウールからなるボードは、吸音素材の一例とすることができる。当該貼着は、上記ボード材の表面、四辺小口及び裏面の一部を処理ガラス繊維織物で覆う所謂額縁貼り、ボード材の一方の表面を処理ガラス繊維織物で覆う所謂片面貼り、または、当該ボードの前面を処理ガラス繊維織物で覆う所謂全面貼りとすることが挙げられる。本発明の処理ガラス繊維織物は撥水性に優れることから、当該処理ガラス繊維織物と前記ボード材とを貼り合わせた製品は屋外で使用することができ、例えば屋外で使用される防音壁や断熱材等として使用することができる。
【実施例0042】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0043】
<評価方法>
1.強熱減量(質量%)
JIS R 3420:2013 7.3に準じ、測定、算出した。
2.撥水性
JIS L 1092:2009 7.2 はっ水度試験に準じて評価をおこなった。はっ水度の等級が4以上を合格とした。
3.目止め性
上記経糸方向のほつれ強力は次のように測定されるものである。
図1~
図5は、当該ほつれ強力の測定方法を説明する模式図である。まず、
図1に示すように、処理ガラス繊維織物1を、サンプリング箇所として処理ガラス繊維織物1の緯糸方向(緯糸が連続する方向)の中心とし、経糸方向の長さ4.5cm、緯糸方向の長さ25cmに、緯糸が途中で途切れず緯糸方向に連続するようにカットした(
図1~5において、紙面上下方向が経糸方向(経糸が連続する方向)、紙面左右方向が緯糸方向(緯糸が連続する方向)である。)。次に、
図2に示すように、幅3.8cm、長さ25cmの布テープ2(ニチバン株式会社製商品名102N7-38)を2枚準備し、
図3に示すように、当該布テープ2を、処理ガラス繊維織物1の経糸方向の端と当該布テープ2の幅方向端とが一致するように、上記カットした処理ガラス繊維織物1の両面に貼付した。次いで、
図4に示すように、上記布テープ2を両面に貼付した処理ガラス繊維織物1を、緯糸方向の長さが5cmとなるように5枚にカットした。そして、5枚にカットした試験片それぞれについて、
図5に示すように、処理ガラス繊維織物1の布テープ2が貼付されていない部分の経糸方向の端の緯糸を1本抜き取り、抜き取った後の試験片を測定サンプルとした。そして、引張試験機を用い、引張試験機の上部つかみに先が尖った釣り針状のフックを固定し、当該フック先端を、
図5に示すように、測定サンプルの処理ガラス繊維織物1の布テープ2が貼付されていない部分の経糸方向端から数えて2本目の緯糸に、緯糸方向中央部において引っかけ、下部つかみで測定サンプルの布テープ2が貼付されている部分をつかみ、つかみ間距離を15cmとして、TestSpeedを2mm/minの条件で引張試験をおこない最大荷重を測定した。5つの測定サンプルについて当該最大荷重(g)を測定し、その平均値を経糸方向のほつれ強力(g)とした。
4.剛軟度
JIS L 1096:2010 8.21のA法(45°カンチレバー法)に準じ経糸方向の剛軟度を測定した。
【0044】
(実施例1)
1.ガラス繊維織物を準備する工程
経糸及び緯糸として、ガラス材料がEガラスであるガラスヤーン(ユニチカグラスファイバー株式会社製「G75 1/0 0.7Z」(単繊維直径9μm、単繊維本数400本、撚り数0.7Z、番手67.5tex)を用い、エアージェット織機で製織し、ヒートクリーニング処理によりガラスヤーンに付着する有機成分を完全に除去し、ガラス繊維織物を得た。当該ガラス繊維織物は、経糸密度が31本/25mm、緯糸密度が25本/25mm、質量152g/m2の平織組織とした。
【0045】
2.第1処理工程
第1処理工程で用いる処理液として、以下の処方A1の処理液を準備した。
(処方A1)
エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルション(昭和電工株式会社製商品名ポリゾールEVA AD-18、不揮発分54%)を濃度50g/Lとなるように純水に加えた処理液
【0046】
準備したガラス繊維織物を、準備した処方A1の処理液に浸漬させ、ニップロールでエチレン-酢酸ビニル共重合体の乾燥後付着量(固形分付着量)が2.3g/m2となるように絞り、温度180℃、時間3分の条件で乾燥させ、中間体を得た。得られた中間体は、質量が154.3g/m2(すなわち、エチレン-酢酸ビニル共重合体の乾燥後付着量(固形分付着量)が2.3g/m2)であった。また、当該中間体を用いて、第1処理工程後(第2処理工程前)の中間体の目止め性の測定をおこなった。
【0047】
3.第2処理工程
第2処理工程で用いる処理液として、以下の処方B1の処理液を準備した。
(処方B1)
炭素数6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物(AGC株式会社製フッ素系撥水・撥油加工剤商品名アサヒガードAsahiGuard(登録商標)AG-E550D、不揮発成分30%)を濃度50g/Lとなるように純水に加えた処理液
【0048】
前記中間体を、準備した処方B1の処理液に浸漬させ、ニップロールで前記フッ素系化合物の乾燥後付着量(固形分付着量)が0.7g/m2となるように絞り、温度200℃、時間3分の条件で乾燥させ、本発明の処理ガラス繊維織物を得た。得られた処理ガラス繊維織物は、質量が155g/m2(すなわち、前記フッ素系化合物の乾燥後付着量(固形分付着量)が0.7g/m2)、厚さ151μm、強熱減量は1.99質量%であった。得られた処理ガラス繊維織物を用いて撥水性、目止め性、剛軟度の測定をおこなった。
【0049】
(比較例1)
1.ガラス繊維織物を準備する工程
実施例1と同一のガラス繊維織物を準備した。
【0050】
2.第1処理工程
第1処理工程で用いる処理液として、以下の処方A2の処理液を準備した。
(処方A2)
アクリル・スチレン共重合体エマルション(サイデン化学株式会社製商品名サイビノールEK-61、不揮発分40%)を濃度50g/Lとなるように純水に加えた処理液
【0051】
準備したガラス繊維織物を、準備した処方A2の処理液に浸漬させ、ニップロールでアクリル・スチレン共重合体の乾燥後付着量(固形分付着量)が1.9g/m2となるように絞り、温度180℃、時間3分の条件で乾燥させ、中間体を得た。得られた中間体は、質量が153.9g/m2(すなわち、アクリル・スチレン共重合体の乾燥後付着量(固形分付着量)が1.9g/m2)であった。また、当該中間体を用いて、第1処理工程後(第2処理工程前)の中間体の目止め性の測定をおこなった。
【0052】
3.第2処理工程
第2処理工程で用いる処理液として、前記処方B1の処理液を準備した。
【0053】
前記中間体を、準備した処方B1の処理液に浸漬させ、ニップロールで前記フッ素系化合物の乾燥後付着量(固形分付着量)が0.4g/m2となるように絞り、温度200℃、時間3分の条件で乾燥させ、比較例1の処理ガラス繊維織物を得た。得られた処理ガラス繊維織物は、質量が154.3g/m2(すなわち、前記フッ素系化合物の乾燥後付着量(固形分付着量)が0.4g/m2)、厚さ151μm、強熱減量は1.54質量%であった。得られた処理ガラス繊維織物を用いて撥水性、目止め性、剛軟度の測定をおこなった。
【0054】
(比較例2)
1.ガラス繊維織物を準備する工程
実施例1と同一のガラス繊維織物を準備した。
【0055】
2.第1処理工程
第1処理工程で用いる処理液として、以下の処方A3の処理液を準備した。
(処方A3)
アクリル樹脂エマルション(昭和電工株式会社製商品名ポリゾールUG-201、不揮発分46%)を濃度50g/Lとなるように純水に加えた処理液
【0056】
準備したガラス繊維織物を、準備した処方A3の処理液に浸漬させ、ニップロールでアクリル樹脂の乾燥後付着量(固形分付着量)が2.0g/m2となるように絞り、温度180℃、時間3分の条件で乾燥させ、中間体を得た。得られた中間体は、質量が154.0g/m2(すなわち、アクリル樹脂の乾燥後付着量(固形分付着量)が2.0g/m2)であった。また、当該中間体を用いて、第1処理工程後(第2処理工程前)の中間体の目止め性の測定をおこなった。
【0057】
3.第2処理工程
第2処理工程で用いる処理液として、前記処方B1の処理液を準備した。
【0058】
前記中間体を、準備した処方B1の処理液に浸漬させ、ニップロールで前記フッ素系化合物の乾燥後付着量(固形分付着量)が0.6g/m2となるように絞り、温度200℃、時間3分の条件で乾燥させ、比較例2の処理ガラス繊維織物を得た。得られた処理ガラス繊維織物は、質量が154.6g/m2(すなわち、前記フッ素系化合物の乾燥後付着量(固形分付着量)が0.6g/m2)、厚さ147μm、強熱減量は1.71質量%であった。得られた処理ガラス繊維織物を用いて撥水性、目止め性、剛軟度の測定をおこなった。
【0059】
(比較例3)
1.ガラス繊維織物を準備する工程
実施例1と同一のガラス繊維織物を準備した。
【0060】
2.第1処理工程
第1処理工程で用いる処理液として、前述した処方A1の処理液を準備した。
【0061】
準備したガラス繊維織物を、準備した処方A1の処理液に浸漬させ、ニップロールでエチレン-酢酸ビニル共重合体の乾燥後付着量(固形分付着量)が2.3g/m2となるように絞り、温度180℃、時間3分の条件で乾燥させ、中間体を得た。得られた中間体は、質量が154.3g/m2(すなわち、エチレン-酢酸ビニル共重合体の乾燥後付着量(固形分付着量)が2.3g/m2)であった。また、当該中間体を用いて、第1処理工程後(第2処理工程前)の中間体の目止め性の測定をおこなった。
【0062】
3.第2処理工程
第2処理工程で用いる処理液として、以下の処方B2の処理液を準備した。
(処方B2)
反応性シリコーン樹脂エマルション(信越化学工業株式会社製商品名POLON(登録商標)MF-32、不揮発成分30%)を濃度160g/Lとなるように純水に加えた処理液
【0063】
前記中間体を、準備した処方B2の処理液に浸漬させ、ニップロールで前記フッ素系化合物の乾燥後付着量(固形分付着量)が0.3g/m2となるように絞り、温度200℃、時間3分の条件で乾燥させ、比較例3の処理ガラス繊維織物を得た。得られた処理ガラス繊維織物は、質量が154.6g/m2(すなわち、前記シリコーン樹脂の乾燥後付着量(固形分付着量)が0.3g/m2)、厚さ149μm、強熱減量は1.73質量%であった。得られた処理ガラス繊維織物を用いて撥水性、目止め性、剛軟度の測定をおこなった。
【0064】
(比較例4)
1.ガラス繊維織物を準備する工程
実施例1と同一のガラス繊維織物を準備した。
【0065】
2.第1処理工程
第1処理工程で用いる処理液として、前述した処方A2の処理液を準備した。
【0066】
準備したガラス繊維織物を、準備した処方A2の処理液に浸漬させ、ニップロールでアクリル・スチレン共重合体の乾燥後付着量(固形分付着量)が1.9g/m2となるように絞り、温度180℃、時間3分の条件で乾燥させ、中間体を得た。得られた中間体は、質量が153.9g/m2(すなわち、アクリル・スチレン共重合体の乾燥後付着量(固形分付着量)が1.9g/m2)であった。また、当該中間体を用いて、第2処理工程前の中間体の目止め性の測定をおこなった。
【0067】
3.第2処理工程
第2処理工程で用いる処理液として、前述した処方B2の処理液を準備した。
【0068】
前記中間体を、準備した処方B2の処理液に浸漬させ、ニップロールで前記フッ素系化合物の乾燥後付着量(固形分付着量)が0.4g/m2となるように絞り、温度200℃、時間3分の条件で乾燥させ、比較例4の処理ガラス繊維織物を得た。得られた処理ガラス繊維織物は、質量が154.3g/m2(すなわち、前記シリコーン樹脂の乾燥後付着量(固形分付着量)が0.4g/m2)、厚さ148μm、強熱減量は1.51質量%であった。得られた処理ガラス繊維織物を用いて撥水性、目止め性、剛軟度の測定をおこなった。
【0069】
(比較例5)
1.ガラス繊維織物を準備する工程
実施例1と同一のガラス繊維織物を準備した。
【0070】
2.第1処理工程
第1処理工程で用いる処理液として、前述した処方A3の処理液を準備した。
【0071】
準備したガラス繊維織物を、準備した処方A3の処理液に浸漬させ、ニップロールでアクリル樹脂の乾燥後付着量(固形分付着量)が2.0g/m2となるように絞り、温度180℃、時間3分の条件で乾燥させ、中間体を得た。得られた中間体は、質量が154.0g/m2(すなわち、アクリル樹脂の乾燥後付着量(固形分付着量)が2.0g/m2)であった。また、当該中間体を用いて、第2処理工程前の中間体の目止め性の測定をおこなった。
【0072】
3.第2処理工程
第2処理工程で用いる処理液として、前述した処方B2の処理液を準備した。
【0073】
前記中間体を、準備した処方B2の処理液に浸漬させ、ニップロールで前記フッ素系化合物の乾燥後付着量(固形分付着量)が0.4g/m2となるように絞り、温度200℃、時間3分の条件で乾燥させ、比較例5の処理ガラス繊維織物を得た。得られた処理ガラス繊維織物は、質量が154.4g/m2(すなわち、前記シリコーン樹脂の乾燥後付着量(固形分付着量)が0.4g/m2)、厚さ143μm、強熱減量は1.59質量%であった。得られた処理ガラス繊維織物を用いて撥水性、目止め性、剛軟度の測定をおこなった。
【0074】
結果を表1に示す。
【0075】
【0076】
実施例1の処理ガラス繊維織物は、ガラス繊維糸を含むガラス繊維織物と、該ガラス繊維上に含まれる、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物と、を含むことから、優れた撥水性を備えつつ、目止め性の効果をより発揮し得るものであった。また、得られた処理ガラス繊維織物は、経糸方向の剛軟度が100~200mmであったことから、ガラス繊維織物を構成するガラス糸がほつれることを低減することと、本発明の処理ガラス繊維織物をロール製品としたときのシワの発生を低減することとをより両立させるものであった。
【0077】
一方、比較例1の処理ガラス繊維織物は、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含まず、アクリル・スチレン共重合体を含むものであったことから、目止め性が、第1処理工程後のガラス繊維織物(中間体)における目止め性から低下し、目止め性の効果をより発揮することができないものであった。
【0078】
比較例2の処理ガラス繊維織物は、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含まず、アクリル樹脂を含むものであったことから、実施例1よりも撥水性が低くなり、優れた撥水性を備えることができなかった。
【0079】
比較例3の処理ガラス繊維織物は、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物を含まず、シリコーン樹脂を含むものであったことから、撥水性に劣り、また、目止め性が、第1処理工程後のガラス繊維織物(中間体)における目止め性から低下し、目止め性の効果をより発揮することができないものであった。
【0080】
比較例4の処理ガラス繊維織物は、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含まず、アクリル・スチレン共重合体を含み、また、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物を含まず、シリコーン樹脂を含むものであったことから、撥水性に劣り、また、目止め性が、第1処理工程後のガラス繊維織物(中間体)における目止め性から低下し、目止め性の効果をより発揮することができないものであった。
【0081】
比較例5の処理ガラス繊維織物は、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含まず、アクリル樹脂を含み、また、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系化合物を含まず、シリコーン樹脂を含むものであったことから、撥水性に劣り、また、目止め性が、第1処理工程後のガラス繊維織物(中間体)における目止め性から低下し、目止め性の効果をより発揮することができないものであった。
【0082】
なお、実施例1及び比較例1~5の処理ガラス繊維織物は、経糸及び緯糸の平面方向から見たときの糸幅の平均値について、経糸のほうが小さかった。