(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140961
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】プラスチック成形体
(51)【国際特許分類】
B65D 47/08 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B65D47/08 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047056
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】田中 香帆
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA06
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA03
3E084CA01
3E084CC04
3E084DA01
3E084DB09
3E084DB13
3E084DC04
3E084EA04
3E084EB01
3E084EB02
3E084EC04
3E084FA03
3E084FC07
3E084GA06
3E084GB06
3E084HA04
3E084HA05
3E084HB02
3E084HC03
3E084HD02
3E084HD04
3E084KB01
3E084LA03
3E084LB02
3E084LB07
3E084LC01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、上蓋を確実に閉じて注出用ノズルを密閉でき、使用者の負担なく開閉が可能で、製造コストの増加を抑制可能なプラスチック成形体を提供すること。
【解決手段】キャップ本体110と上蓋120とを有するプラスチック成形体100であって、キャップ本体110の頂板部111の上面側には注出用ノズル116が設けられ、注出用ノズル116の上部の内周面は、上方に向かうに従って徐々に拡径する拡径面117を全周に渡って有し、上蓋120には天面121と天面121の下方に突出する突出部123を有し、突出部123の下部には弾性シール片125が設けられ、弾性シール片125の内面側には、環状シール面126が形成され、弾性シール片125は内外面を反転可能に構成され、上蓋120をキャップ本体110に被せた際、環状シール面126が拡径面117に当接すること。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に固定される本体と、前記本体に被さって容器を閉塞可能な上蓋とを有するプラスチック成形体であって、
前記本体には頂板部と前記頂板部から垂下するスカート部とが設けられ、
前記頂板部の上面側には、前記頂板部から突出する筒状に形成された注出用ノズルが設けられ、
前記注出用ノズルの上部の内周面は、上方に向かうに従って徐々に拡径する拡径面を全周に渡って有し、
前記上蓋には天面と前記天面の外周縁から垂下する周状壁とが設けられ、
前記上蓋は、前記天面の前記周状壁よりも内側から下方に突出する突出部をさらに有し、
前記突出部の下部には、薄肉に形成された薄肉部を介して接続された弾性シール片が設けられ、
前記弾性シール片の内面側には、前記注出用ノズルの内周面に密着可能な環状シール面が形成され、
前記弾性シール片は上方へ向かって内外面を反転可能に構成され、
前記上蓋を前記本体に被せた際、前記環状シール面が前記拡径面に当接することを特徴とするプラスチック成形体。
【請求項2】
前記突出部の外径は、前記拡径面のうち最も内径の小さい箇所よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック成形体。
【請求項3】
前記拡径面は、R面状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラスチック成形体。
【請求項4】
前記注出用ノズルの内周面には、上下方向に伸び、内径が均一な円筒面が設けられ、
前記拡径面は、前記円筒面の上端に接続していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のプラスチック成形体。
【請求項5】
前記上蓋を前記本体に被せた際、前記環状シール面と接触する位置の前記拡径面の傾斜角度は、前記頂板部から見て20度以上80度以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のプラスチック成形体
【請求項6】
前記弾性シール片の下端部には、反転補助延長部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のプラスチック成形体。
【請求項7】
前記反転補助延長部は、下方に開放した切り欠き部を有することを特徴とする請求項6に記載のプラスチック成形体。
【請求項8】
前記本体と前記上蓋とは、一体成形され、ヒンジを介して接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のプラスチック成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に固定される本体と、本体に被さって容器を閉塞可能な上蓋とで構成されたプラスチック成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器口部や吐出キャップ等を閉塞するプラスチック成形体として、容器に固定された本体と、本体に係止して注出用ノズルを塞ぐ上蓋とをヒンジ接続したプラスチック成形体が特許文献1等で公知である。
【0003】
この特許文献1に記載のプラスチック成形体(分別機能付きヒンジキャップ1)は、本体(キャップ本体2)と、上蓋(3)とを有し、上蓋(3)の天面(天板14)には環状壁(16)が天面(天板14)から垂下しており、本体(キャップ本体2)の頂板部(頂板6)には注出用ノズル(注出筒12)が設けられ、注出用ノズル(注出筒12)の上部のうちヒンジ(4)と反対側の一部には、上方且つ半径方向外方に向かって突出形成されたクチバシ形状部(12a)が形成されている。
このプラスチック成形体(分別機能付きヒンジキャップ1)は、頂板部(頂板6)には開口予定部(5)が形成されており、開口予定部(5)を切り取って生成した開口を通して容器内の液状内容物を注出できるものである。
【0004】
また、クチバシ形状部(12a)は、液状内容物を注出する際の注ぎ性を向上させるために設けられているものである。
なお、上蓋(3)を閉じた際に環状壁(16)の外周面が注出用ノズル(注出筒12)の下部内周面の周方向均一に形成されたストレート部に密着するため、開口予定部(5)を切り取って液状内容物を注出した後は、環状壁(16)と注出用ノズル(注出筒12)との密着面によってプラスチック成形体(分別機能付きヒンジキャップ1)は密閉され、液状内容物の漏出を防ぐものである。
【0005】
また、注出用ノズル(注出口1)の上部の全周に、外方に向け湾曲した鍔部を形成する拡径面(液切口縁部2)が設けられたプラスチック成形体も特許文献2等で公知である。
【0006】
この特許文献2に記載のプラスチック成形体は、本体(キャップ本体9)に上蓋(外キャップ10)がヒンジ接続されており、上蓋(キャップ10)を閉じると、注出用ノズル(注出口1)の内周面に上蓋(外キャップ10)に設けられた環状壁の外周面が密着することで、プラスチック成形体を密閉するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-298447号公報
【特許文献2】特開昭53-144966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献等で公知の分別機能付きヒンジキャップには、未だ改善の余地があった。
【0009】
すなわち、上記特許文献等で公知の分別機能付きヒンジキャップは、開口予定部を切り取った後は、環状壁の外周面を注出筒や注出口の下部内周面まで進入させて密着させることで密閉されるため、環状壁を長く形成する必要があるが、拡径面を注出筒や注出口の全周に設け、内容物の注ぎ出し方向を規制されないようにした場合、ヒンジ側の環状壁が拡径面の先端に干渉して上蓋を閉じることができなくなってしまう、所謂上蓋被り性を損なう虞があった。
また、環状壁の外周面と注出筒や注出口の内周面とのストレート部同士の密着によって分別機能付きヒンジキャップを密閉するため、互いの接触面が多くなり、環状壁と注出筒や注出口とが過度に密着して上蓋の開閉時に使用者の負担が増加する虞があった。
また、環状壁を長く形成するため、成形に必要な樹脂の量が増加し、コストアップしてしまう虞があった。
【0010】
本発明はこれらの問題点を解決するものであり、簡単な構成で、上蓋を確実に閉じて注出用ノズルを密閉でき、使用者の負担なく開閉が可能で、製造コストの増加を抑制可能なプラスチック成形体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のプラスチック成形体は、容器に固定される本体と、前記本体に被さって容器を閉塞可能な上蓋とを有するプラスチック成形体であって、前記本体には頂板部と前記頂板部から垂下するスカート部とが設けられ、前記頂板部の上面側には、前記頂板部から突出する筒状に形成された注出用ノズルが設けられ、前記注出用ノズルの上部の内周面は、上方に向かうに従って徐々に拡径する拡径面を全周に渡って有し、前記上蓋には天面と前記天面の外周縁から垂下する周状壁とが設けられ、前記上蓋は、前記天面の前記周状壁よりも内側から下方に突出する突出部をさらに有し、前記突出部の下部には、薄肉に形成された薄肉部を介して接続された弾性シール片が設けられ、前記弾性シール片の内面側には、前記注出用ノズルの内周面に密着可能な環状シール面が形成され、前記弾性シール片は上方へ向かって内外面を反転可能に構成され、前記上蓋を前記本体に被せた際、前記環状シール面が前記拡径面に当接することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係るプラスチック成形体によれば、突出部と弾性シール片との間には薄肉に形成された薄肉部が設けられているため、薄肉部を折り曲げて弾性シール片を反転させ、突出部の外周面側に弾性シール片を位置させることができる。
これによって、突出部の外径を小さくすることができ、突出部と注出用ノズルとの干渉を抑制できる。
また、環状シール面が拡径面に当接した際、突出部と注出用ノズルとの間に弾性シール片が挟まることで反発力が発生するため、環状シール面と拡径面との密着力を高め、注出用ノズルを確実に封止することができ、耐振動・耐落下衝撃性を向上できる。
また、環状シール面を注出用ノズルの上部に設けた拡径面に当接させてプラスチック成形体を密閉可能なため、突出部を長く形成する必要がなく、内容物を注ぎ易くするために拡径面を注出用ノズルの上部に周方向均一に設け、内容物の注ぎ出し方向を規制されないようにしても、上蓋を閉じる際に突出部が拡径面に干渉することがなく、弾性シール片が注出ノズルの上部の形状に追従するように反転するため、所謂上蓋被り性を損なうことなく環状シール面と拡径面とのシールを形成することができる。
また、突出部を注出用ノズルの下部まで届くほど長く形成する必要がないため、成形に必要な樹脂の量の増加を抑制でき、製造コストの増加を抑制できる。
また、拡径面の内周面は、上方に向かうに従って徐々に拡径しているため、上蓋を閉じた際、弾性シール片は突出部と拡径面とで斜め方向に挟まれるように位置する。
これによって、突出部と注出用ノズルのストレート部とで弾性シール片を側方から挟む場合に比べて、過度な弾性シール片の圧迫を防ぐことができ、環状シール面と拡径面との過度な密着を防ぎ、開封時に使用者にかかる負担を軽減して簡単に環状シール面を拡径面から離脱できる。
また、成形直後のプラスチック成形体が温まっている状態で環状シール面を拡径面に当接させる場合は、薄肉部がより変形しやすく簡単に弾性シール片を反転させて突出部の外周面に位置させることができ、さらに薄肉部を変形させたまま冷却して薄肉部を癖付けすることで、弾性シール片を突出部の外周面側に留まらせることもできる。
また、突出部と弾性シール片と薄肉部とを一体成形することができ、これによって突出部を注出用ノズルから取り外す際に弾性シール片のみ注出用ノズル内に残って開封不良になることがなく、部品点数の増加を抑え、製造コストの増加を抑制できる。
【0013】
請求項2に記載の構成によれば、突出部の外径は、拡径面のうち最も内径の小さい箇所よりも大きく形成されているため、突出部を注出用ノズルの拡径面よりも下方に進入させることを防ぎ、確実に環状シール面を拡径面の上方側から当接させることができる。
これによって、より確実に過度な弾性シール片の圧迫を防ぎ、環状シール面と拡径面との過度な密着を防ぐことができる。
請求項3に記載の構成によれば、拡径面はR面状に形成されているため、環状シール面と拡径面との接触面積をより一層少なくすることができ、環状シール面と拡径面との過度な密着を防ぎ、開封時に使用者にかかる負担を軽減して簡単に環状シール面を拡径面から離脱することもできる。
【0014】
請求項4に記載の構成によれば、注出用ノズルの内周面には、上下方向に伸び、内径が均一な円筒面が設けられ、拡径面は円筒面の上端に接続しているため、環状シール面が拡径面の下端と接触する場合でも、拡径面より下方の円筒面には環状シール面が干渉することがなく、環状シール面と拡径面との密着を安定させることができる。
請求項5に記載の構成によれば、上蓋を本体に被せた際、環状シール面と接触する拡径面の傾斜角度は、頂板部から見て20度以上80度以下であるため、適度な密封性を維持しつつ過度な弾性シール片の圧迫をより一層確実に防ぐことができ、環状シール面と拡径面との過度な密着を防ぎ、開封時に使用者にかかる負担を軽減して簡単に環状シール面を拡径面から離脱することができる。
【0015】
請求項6に記載の構成によれば、弾性シール片の下部には、反転補助延長部が設けられているため、本体に上蓋を被せる際に反転補助延長部の内面側を注出用ノズルの上部に当接させながら移動することのみで、反転補助延長部に接続している弾性シール片を自動的に薄肉部を曲げながら反転させて突出部の外周面側に簡単に移動させることができる。
請求項7に記載の構成によれば、反転補助延長部は、下方に開放した切り欠き部を有しているため、反転補助延長部が開きやすくなり、本体に上蓋を被せる際、より一層簡単に弾性シール片を反転させて環状シール面を拡径面に当接可能な位置へ移動させることができる。
【0016】
請求項8に記載の構成によれば、本体と上蓋とは、一体成形されているため、金型の作製数を削減でき、コストアップを抑制できる。
また、本体と上蓋とは、ヒンジを介して接続されているため、開閉時の上蓋の動作を安定させることができ、より確実に環状シール面を拡径面に当接させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプラスチック成形体100の斜視図。
【
図2】本発明の一実施形態に係るプラスチック成形体100の上面図。
【
図3】本発明の一実施形態に係るプラスチック成形体100の側面断面図。
【
図4】本発明の一実施形態に係るプラスチック成形体100の、無端状スコア128を破断した状態を示す側面断面図。
【
図5】本発明の一実施形態に係るプラスチック成形体100の閉栓途中の状態を示す側面断面図。
【
図6】本発明の一実施形態に係るプラスチック成形体100の閉栓後の状態を示す側面断面図。
【
図7】本発明の一実施形態に係るプラスチック成形体100の閉栓後の状態を示すA部拡大図。
【
図8】本発明の一実施形態に係るプラスチック成形体100の開栓後の状態を示す側面断面図。
【
図9】本発明の一実施形態に係るプラスチック成形体100の、無端状スコア128を破断する前の閉栓後の状態を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の一実施形態に係るプラスチック成形体100について、図面に基づいて説明する。
なお、プラスチック成形体100が固定される容器は図示しない。
プラスチック成形体100は、
図1乃至
図3に示すように、容器に固定される本体であるキャップ本体110と、キャップ本体110に被さって容器を閉塞可能な上蓋120とを有している。
【0019】
キャップ本体110には、頂板部111と、頂板部111の上方からリング状に突出する係止リング119と、頂板部111の外周縁から垂下するスカート部114と、頂板部111の下方に円状に形成された無端状スコア128と、スカート部114よりも内側且つ無端状スコア128よりも外側から垂下する嵌合筒113とが設けられ、スカート部114の下部内周側には、半径方向内方に突出した嵌合部115とが形成されている。
キャップ本体110は、容器の口部をスカート部114と嵌合筒113とで挟むように嵌合し、嵌合部115で抜け止めしている。
【0020】
頂板部111の上面側には、無端状スコア128を囲むように上方へ延びる注出用ノズル116が設けられ、注出用ノズル116の内周面は、下端からほぼ鉛直に上方向に延びるストレート面で形成された内径の均一な円筒面133と、円筒面133の上端から上方に向かうに従って徐々に拡径するR面状の拡径面117が全周に渡って形成されている。
また、円筒面133は注出用ノズル116の上下方向の長さの半分以上の高さまで形成されており、拡径面117は全周同一の高さまで形成されている。
【0021】
上蓋120は、天面121と、天面121の外周縁から垂下する周状壁122とが設けられ、周状壁122よりも内側にはアウターリング130が形成され、アウターリング130よりも内側には突出部123が形成されている。
周状壁122の内周面には、係止リング119と係合可能な係止部134が形成されている。
突出部123の下部、すなわち、天面121に接続されていない先端側には、突出部123の外面に沿うように弾性シール片125が設けられており、突出部123と弾性シール片125とは、薄肉に形成された薄肉部124によって接続されている。
なお、弾性シール片125は、薄肉部124側から薄肉部124と接続されていない端部側に向かって拡径、すなわち、突出部123の外面から遠ざかる方向へ徐々に拡がるよういに形成されている。
【0022】
弾性シール片125は、半径方向内方側に曲面状に突出形成された環状シール面126を有しており、弾性シール片125の先端側には、切り欠き部129によって周状に離間配置された反転補助延長部127が設けられている。
なお、キャップ本体110と上蓋120とは、ヒンジ132で接続された一体成形品であり、上蓋120の周状壁122のうち、ヒンジ132との接続部と反対側には、開封用鍔131が形成されている。
【0023】
次に、本発明の一実施形態に係るプラスチック成形体100の、閉栓および開栓について、
図3乃至
図8を用いて説明する。
【0024】
まず、
図3の状態からプルリング118を上方に引き上げると、無端状スコア128が破断し、
図4に示すように、内容液を注ぎ出すための開口部112が頂板部111に形成される。
次に、
図4の状態から上蓋120をヒンジ132を回転中心としてキャップ本体110に被せていくと、
図5に示すように、拡径面117にヒンジ132側の弾性シール片125の内側(環状シール面126)が当たり始める。
このとき、弾性シール片125は突出部123と薄肉部124で接続されているため、薄肉部124の変形に伴って弾性シール片125が外側に倒れて反転し始める。
また、弾性シール片125の先端側には、反転補助延長部127が設けられているため、より確実に拡径面117に弾性シール片125の内側が当たりやすくなり、一層反転しやすくなる。
【0025】
さらに上蓋120をキャップ本体110に被せていくと、弾性シール片125はヒンジ132に近い側から次々に拡径面117に接触して外側に倒れて反転することで、環状シール面126が外側に向く。
上蓋120がキャップ本体110に被さる際、突出部123は注出用ノズル116の上方に位置し、環状シール面126と拡径面117とが徐々に接触し、上蓋120がキャップ本体110に完全に被さると、
図6に示すように、係止リング119と係止部134とが係合して上蓋120はキャップ本体110に係止され、弾性シール片125(環状シール面126)は拡径面117と突出部123の外面とで挟まれるようにして拡径面117と全周に渡って密着する。
【0026】
これによって、周状に連続した環状シール面126が拡径面117と周方向に隙間なく密着できるため、注出用ノズル116に連通する開口部112を塞ぐことができ、内容液の漏出を防止できる。
また、振動・落下衝撃によって一時的に拡径面117が変形した場合でも、拡径面117の変形に追従するように弾性シール片125も変形するため、環状シール面126と拡径面117との間から内容液が漏出することがない。
さらに、弾性シール片125を弾性変形しやすい材料で構成すれば、拡径面117と環状シール面126との密着をより強固にでき、容器内の内容液の漏出をより一層防止できる。
【0027】
また、薄肉部124を折り曲げて弾性シール片125を反転させ、突出部123の外周面側に弾性シール片125を位置させることから、突出部123の外径を小さく形成することもできるため、閉栓時の突出部123と注出用ノズル116との干渉を抑制することもできる。
また、環状シール面126を注出用ノズルの上部に設けた拡径面117に当接させて閉栓するため、突出部123を注出用ノズルの下方まで到達させるように長く形成する必要がなく、周方向均一に拡径面117を設けていても、閉栓時に突出部123が拡径面117に干渉することがなく、確実に環状シール面126と拡径面117とのシールを形成することができる。
また、突出部123を長く形成する必要がないため、成形に必要な樹脂の量の増加を抑制でき、製造コストの増加を抑制できる。
【0028】
また、拡径面117の内周面は、上方に向かうに従って徐々に拡径するR面状に形成されているため、上蓋120を閉じた際、
図7に示すように、弾性シール片125は突出部123と拡径面117とで斜め方向に挟まれるように位置する。
これによって、突出部123と注出用ノズル116のストレート部とで弾性シール片125を側方から挟む場合に比べて、過度な弾性シール片125の圧迫を防ぐことができ、環状シール面126と拡径面117との過度な密着を防ぎ、開封時に使用者にかかる負担を軽減して簡単に環状シール面126を拡径面117から離脱できる。
なお、上蓋120をキャップ本体110に被せた際、環状シール面126と接触している位置の拡径面117の傾斜角度Bは20度以上80度以下であれば、適度な密封性を維持しつつ過度な弾性シール片125の圧迫を防ぐことができ、環状シール面126と拡径面117との過度な密着を防ぐことができる。
【0029】
開栓する際は、開封用鍔131を上方に向けて押し上げて上蓋120を離脱させるように動作させることで係止リング119と係止部134との係合を解除し、環状シール面126を拡径面117から徐々に離脱させる。
また、環状シール面126と接触している位置の拡径面117の傾斜角度Bが、前述の通り20度以上80度以下であれば、環状シール面126と拡径面117との過度な密着が防がれているため、開封時に使用者かかる負担を軽減して簡単に環状シール面126を拡径面117から離脱することもできる。
薄肉部124は閉栓時に折り曲げられてクセ付けされているため、
図7に示すように弾性シール片125は反転した状態を維持したまま開栓される。
【0030】
なお、プラスチック成形体100を成形直後に閉栓することで、冷却されていない状態の薄肉部124が曲がりやすく簡単に弾性シール片125を反転でき、プラスチック成形体100が冷却した後に閉栓する場合に比べて、薄肉部124のクセ付けが容易に実施できる。
また、キャップ本体110は容器に固定されるものであればその形態は特に限定されず、ペットボトル等の容器の口部に嵌合固定される構成だけでなく、パウチ等の容器の口部に溶着固定されたスパウト状に形成されたものも含むものである。
本発明の一実施形態に係るプラスチック成形体100の製造過程の一例を説明する。
プラスチック成形体100は、まず、
図3に示すような状態でポリエチレンを材料に射出成形された直後、プラスチック成形体100が冷却していないうちに、
図9に示すように上蓋120を閉じてキャップ本体110に係止して、薄肉部124が柔らかいうちに弾性シール片125を反転する。
上蓋120を閉じてキャップ本体110に係止したプラスチック成形体100は、
図9に示すような状態で内容物の充填された容器の口部に固定されることで、容器を密封する。
【0031】
次に、容器の口部に固定されたプラスチック成形体100の注出用ノズル116から内容物を取り出す手順の一例を説明する。
内容物を取り出す際は、まず、上蓋120をキャップ本体110から離脱させて拡径面117から環状シール面126を離脱させ、プルリング118を上方に引き上げて無端状スコア128を破断し開口部112を形成する。
【0032】
このとき、既にプラスチック成形体100は射出成形後から時間が経過して十分に冷却されているため、薄肉部124は曲がった状態を維持し、
図8に示すように弾性シール片125も射出成形直後の位置には戻らず、反転した状態を維持する。
内容物を取り出し終わり容器を正立状態に戻した後、上蓋120をキャップ本体110に再び被せることで、
図6に示すように環状シール面126は拡径面117に密着して再封止を完了する。
【0033】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0034】
なお、上述した実施形態では、プラスチック成形体はキャップ本体と上蓋とをヒンジで接続した一体成形品であるとして説明したが、プラスチック成形体の構成はこれに限定されず、例えば、ヒンジを設けずにキャップ本体と上蓋とが別体で構成されていてもよく、ヒンジの代わりにキャップ本体と上蓋とをピンで連結してピンを回転中心として開閉栓可能に構成してもよい。
また、上述した実施形態では、拡径面は全周同一の高さで形成されているものとして説明したが、拡径面の構成はこれに限定されず、例えば、拡径面のヒンジ形成部のみ低く形成されていてもよい。
【0035】
また、上述した実施形態では、弾性シール片の先端側には、切り欠き部によって周状に離間配置された反転補助延長部が設けられているものとして説明したが、弾性シール片周辺の構成はこれに限定されず、例えば、反転補助延長部がなくてもよく、反転補助延長部が切り欠き部を有することなく周方向均一に形成されていてもよい。
また、上述した実施形態では、円筒面は、注出用ノズルの内周面の下端からほぼ鉛直に上方向に延びるストレート面で形成されているものとして説明したが、円筒面の構成はこれに限定されず、例えば、注出用ノズルの内周面の下端よりも上方の位置から上方向に延びるように形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0036】
100 ・・・ プラスチック成形体
110 ・・・ キャップ本体
111 ・・・ 頂板部
112 ・・・ 開口部
113 ・・・ 嵌合筒
114 ・・・ スカート部
115 ・・・ 嵌合部
116 ・・・ 注出用ノズル
117 ・・・ 拡径面
118 ・・・ プルリング
119 ・・・ 係止リング
120 ・・・ 上蓋
121 ・・・ 天面
122 ・・・ 周状壁
123 ・・・ 突出部
124 ・・・ 薄肉部
125 ・・・ 弾性シール片
126 ・・・ 環状シール面
127 ・・・ 反転補助延長部
128 ・・・ 無端状スコア
129 ・・・ 切り欠き部
130 ・・・ アウターリング
131 ・・・ 開封用鍔
132 ・・・ ヒンジ
133 ・・・ 円筒面
134 ・・・ 係止部