(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140973
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】機能部品付き収容体及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 23/04 20060101AFI20230928BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B60C23/04 110A
B60C19/00 B
B60C23/04 110E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047068
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】若林 晴菜
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA02
3D131BA03
3D131BA20
3D131BB01
3D131BC31
3D131BC35
3D131LA02
(57)【要約】
【課題】機能部品を収容する収容体の内部形状を工夫することにより、収容体の内表面に形成された突起のクラックの発生を抑制しながら、機能部品がタイヤ内部情報を正確に取得できるようにした機能部品付き収容体及びタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ情報を取得するための機能部品20と、この機能部品20を収容する収容体10とを備えた機能部品付き収容体であって、機能部品20は、筐体21と、この筐体21の壁面に固定された圧電素子24とを有し、収容体10の内表面に突起15が形成され、無負荷状態でかつ機能部品20が収容体10に収容された状態で突起15と圧電素子24とが直接的に又は筐体21の壁面を挟んで間接的に接しており、突起15の上面視で、突起15の最上部15xの面積よりも突起15の最底面15yの面積が大きく、かつ突起15の最上部15xの外縁が突起15の最底面15yの外縁の内側にある。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ情報を取得するための機能部品と、この機能部品を収容する収容体とを備えた機能部品付き収容体であって、
前記機能部品が、電子部品を内蔵する筐体と、この筐体の壁面に固定されたフィルム状の圧電素子とを有し、
前記収容体の内表面に少なくとも一つの突起が形成され、無負荷状態でかつ前記機能部品が前記収容体に収容された状態で前記突起の少なくとも一部と前記圧電素子とが直接的に又は前記筐体の壁面を挟んで間接的に接しており、
前記突起の上面視で、前記突起の最上部の面積よりも前記突起の最底面の面積が大きく、かつ前記突起の最上部の外縁が前記突起の最底面の外縁の内側にあることを特徴とする機能部品付き収容体。
【請求項2】
前記収容体における前記突起が形成された内表面からの前記突起の高さhの95%の高さ位置を位置Gとするとき、この位置Gにおける前記突起の面積Sと前記突起の最底面の面積AとがA≧1.04×Sの関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の機能部品付き収容体。
【請求項3】
前記突起の最底面の面積Aと前記収容体内部の底面の面積A´とがA≦0.82×A´の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の機能部品付き収容体。
【請求項4】
前記収容体における前記突起が形成された内表面からの前記突起の高さhの半分の高さにおける前記突起の側方点を点Mとするとき、前記突起の最上部の端点Pと前記点Mとを結ぶ直線と、前記端点Pを通って前記突起の最底面に平行な直線とがなす角度αが30°~90°であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の機能部品付き収容体。
【請求項5】
前記収容体における前記突起が形成された内表面からの前記突起の高さhの半分の高さにおける前記突起の側方点を点Mとするとき、前記突起の最底面の端点Qと前記点Mとを結ぶ直線と、前記収容体における前記突起が形成された内表面とがなす角度βが90°~180°であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の機能部品付き収容体。
【請求項6】
前記突起と前記圧電素子との接触面積が、前記収容体における前記突起が形成された内表面の面積に対して50%以下であり、かつ前記圧電素子の感圧部の表面積に対して10%~100%であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の機能部品付き収容体。
【請求項7】
前記突起は前記収容体における前記突起が形成された内表面からの高さhが0.1mm~2.0mmであることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の機能部品付き収容体。
【請求項8】
前記突起は100%伸張時のモジュラスが1.0MPa以上12.0MPa未満の加硫ゴムからなることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の機能部品付き収容体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の機能部品付き収容体が前記タイヤ内表面に固定され、前記収容体に前記機能部品が収容されていることを特徴とするタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能部品付き収容体及びタイヤに関し、更に詳しくは、機能部品を収容する収容体の内部形状を工夫することにより、収容体の内表面に形成された突起のクラックの発生を抑制しながら、機能部品がタイヤ内部情報を正確に取得できるようにした機能部品付き収容体及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
内圧や温度等のタイヤ内部情報を取得する機能部品(例えば、センサを含むセンサユニット)をタイヤ内表面に設置することが行われている(例えば、特許文献1,2参照)。機能部品を設置する際、ゴム等からなる収容体(コンテナ)をタイヤ内表面に貼り付け、その貼り付けられた収容体の内部に機能部品を収容する。例えば、機能部品が筐体の壁面に取り付けられた圧電素子を有する場合、タイヤ内表面の曲率やブラダーに起因する凹凸やタイヤ転動の衝撃による上下動によって圧電素子が収容体の内表面に十分に接触せず、圧電素子のセンシング出力が安定せず、機能部品がタイヤ内部情報を正確に取得できないという問題がある。
【0003】
このような機能部品を収容する収容体に対して、その内面に圧電素子と接する突起部を設けることで、センシングの精度を高めることができるが、突起部の形状によっては、タイヤ転動時の振動やタイヤ接地時に収容体に衝撃が加わった場合に突起部の根元部分にクラックが発生することがある。それ故、突起部自体の耐久性に対して改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6272225号公報
【特許文献2】特表2016-505438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、機能部品を収容する収容体の内部形状を工夫することにより、収容体の内表面に形成された突起のクラックの発生を抑制しながら、機能部品がタイヤ内部情報を正確に取得できるようにした機能部品付き収容体及びタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の機能部品付き収容体は、タイヤ情報を取得するための機能部品と、この機能部品を収容する収容体とを備えた機能部品付き収容体であって、前記機能部品が、電子部品を内蔵する筐体と、この筐体の壁面に固定されたフィルム状の圧電素子とを有し、前記収容体の内表面に少なくとも一つの突起が形成され、無負荷状態でかつ前記機能部品が前記収容体に収容された状態で前記突起の少なくとも一部と前記圧電素子とが直接的に又は前記筐体の壁面を挟んで間接的に接しており、前記突起の上面視で、前記突起の最上部の面積よりも前記突起の最底面の面積が大きく、かつ前記突起の最上部の外縁が前記突起の最底面の外縁の内側にあることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明のタイヤは、上記の機能部品付き収容体が前記タイヤ内表面に固定され、前記収容体に前記機能部品が収容されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、タイヤ情報を取得するための機能部品と、この機能部品を収容する収容体とを備えた機能部品付き収容体であって、機能部品は、電子部品を内蔵する筐体と、この筐体の壁面に固定されたフィルム状の圧電素子とを有し、収容体の内表面に少なくとも一つの突起が形成され、無負荷状態でかつ機能部品が収容体に収容された状態で突起の少なくとも一部と圧電素子とは直接的に又は筐体の壁面を挟んで間接的に接しているので、走行中においてタイヤの振動により突起が圧電素子に対して押圧した状態が保持され、圧電素子による安定的なセンシングが可能になる。更に、突起の上面視で、突起の最上部の面積よりも突起の最底面の面積が大きく、かつ突起の最上部の外縁が突起の最底面の外縁の内側にあるので、タイヤ転動時の振動やタイヤ接地時に収容体に衝撃が加わった場合であっても、突起の形状に起因して突起の根本部分に応力が集中し難くなる。そのため、突起の根本部分におけるクラックの発生を抑制することができる。このように突起の根本部分におけるクラックの発生を抑制しながら、タイヤ内表面の曲率やブラダーに起因する凹凸等に影響を受けることなく、機能部品がタイヤ内部情報を正確に取得することができる。
【0009】
本発明の機能部品付き収容体において、収容体における突起が形成された内表面からの突起の高さhの95%の高さ位置を位置Gとするとき、この位置Gにおける突起の面積Sと突起の最底面の面積AとはA≧1.04×Sの関係を満たすことが好ましい。これにより、突起の根本部分におけるクラックの発生を効果的に抑制することができ、突起の耐久性を改善することができる。
【0010】
突起の最底面の面積Aと収容体内部の底面の面積A´とはA≦0.82×A´の関係を満たすことが好ましい。これにより、圧電素子の検知結果に基づいて収容体に対する機能部品の取り付け状態を把握することができる。
【0011】
収容体における突起が形成された内表面からの突起の高さhの半分の高さにおける突起の側方点を点Mとするとき、突起の最上部の端点Pと点Mとを結ぶ直線と、端点Pを通って突起の最底面に平行な直線とがなす角度αは30°~90°であることが好ましい。これにより、突起におけるクラックの発生を効果的に抑制することができ、突起の耐久性を改善することができる。また、圧電素子によるセンシング出力を十分に確保することができる。
【0012】
収容体における突起が形成された内表面からの突起の高さhの半分の高さにおける突起の側方点を点Mとするとき、突起の最底面の端点Qと点Mとを結ぶ直線と、収容体における突起が形成された内表面とがなす角度βは90°~180°であることが好ましい。これにより、突起の根本部分におけるクラックの発生を効果的に抑制することができ、突起の耐久性を改善することができる。
【0013】
突起と圧電素子との接触面積は、収容体における突起が形成された内表面の面積に対して50%以下であり、かつ圧電素子の感圧部の表面積に対して10%~100%であることが好ましい。これにより、突起と圧電素子の接触面積が十分に確保され、突起と圧電素子の接触状態が良好に保たれるので、圧電素子による安定的なセンシングに寄与する。
【0014】
突起は収容体における突起が形成された内表面からの高さhが0.1mm~2.0mmであることが好ましい。これにより、突起と圧電素子の接触状態を適度に維持することができる。また、収容体への機能部品の収容作業に影響を与えず、走行中の機能部品の脱落を防止することができる。
【0015】
突起は100%伸張時のモジュラスが1.0MPa以上12.0MPa未満の加硫ゴムからなることが好ましい。これにより、収容体の耐久性と収容体への機能部品の収容し易さとを両立することができる。
【0016】
本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましいが、非空気式タイヤであっても良い。空気入りタイヤの場合、その内部には空気、窒素等の不活性ガス又はその他の気体を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】機能部品付き収容体がタイヤ内表面に固定された空気入りタイヤの実施形態を例示する子午線断面図である。
【
図2】(A)~(C)は機能部品付き収容体の実施形態を例示し、(A)は収容体全体の断面図、(B)及び(C)はそれぞれ収容体の要部の断面図である。
【
図3】(A),(B)は機能部品の収容前における機能部品付き収容体の実施形態を例示し、(A)は収容体の上面視(上図)と断面視(下図)での説明図、(B)は収容体に形成された突起を拡大して示す断面図である。
【
図4】(A)~(D)はそれぞれ突起の他の実施形態を例示する断面図である。
【
図5】(A),(B)は突起の他の実施形態を例示し、(A)は突起の断面図、(B)は突起の斜視図である。
【
図6】突起の他の実施形態を例示する断面図である。
【
図7】(A)~(D)は機能部品の収容前後における機能部品付き収容体の実施形態を例示し、(A)は機能部品が収容されていない状態の斜視図、(B)は機能部品が収容されていない状態の断面図、(C)は機能部品が収容された状態の斜視図、(D)は機能部品が収容された状態の断面図である。
【
図8】(A)~(C)はそれぞれ収容体の寸法を説明するための機能部品付き収容体の半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の空気入りタイヤの実施形態を添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は機能部品付き収容体がタイヤ内表面に固定された空気入りタイヤを示すものである。
【0019】
図1に例示するように、空気入りタイヤTは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。
【0020】
一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。そして、タイヤ内表面Tsにおける一対のビード部3間の領域にはインナーライナー層9が配置されている。このインナーライナー層9はタイヤ内表面Tsをなす。
【0021】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0022】
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤにおける代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。
【0023】
上記空気入りタイヤにおいて、タイヤ内表面Tsには、少なくとも一つの機能部品付き収容体30が取り付けられている。機能部品付き収容体30は、タイヤ内表面Tsのいずれの部位にも取付可能であるが、走行中の変形が少なく、遠心力が掛かるので外れ難いことから、特にトレッド部1に対応するタイヤ内表面Tsに取り付けることが望ましい。機能部品付き収容体30は、タイヤ情報を取得するための機能部品20と、この機能部品20を収容する収容体10とを備えている。機能部品付き収容体30は、例えば接着剤や両面粘着テープからなる接着層によりタイヤ内表面Tsに固定されている。
【0024】
図2(A)~(C)に例示するように、収容体10は、タイヤ内表面Tsに固定される平板状の底部11と、この底部11から突出した筒状のクラウン部12と、これら底部11とクラウン部12により形成される収容空間13と、この収容空間13に連通する開口部14とを有している。
【0025】
底部11は、収容体10を構成する部位の中で最長である(最大径を有している)。クラウン部12は、底部11に対して直交する方向から内側に傾斜するように形成されている。そのため、底部11とクラウン部12により形成される収容空間13は略台形の断面形状を有している。即ち、収容空間13は、上側部分に向かって断面幅が漸減し、最大高さ位置において最も断面幅が狭くなる。また、クラウン部12は、一方側の端部12aに開口部14に向かって屈曲するように形成された係止部12eを有し、他方側の端部12bが底部11に固定されている。機能部品20の収容後において、係止部12eは、機能部品20の上面に当接し、機能部品20の収容時に固定する役割を果たす。機能部品20が挿入される開口部14の幅は、収容空間13の断面視での最小幅(開口部14に隣接する位置での幅)よりも狭くなっている。
【0026】
なお、
図2(A)~(C)において、底部11とクラウン部12と開口部14はいずれも円形の平面形状を有している。底部11とクラウン部12と開口部14の平面形状は、特に限定されるものではなく、他の任意の平面形状で構成しても良く、互いに異なる平面形状で構成しても良い。また、収容空間13の形状は、円錐台の形状を有しているが、特に限定されるものではない。
【0027】
収容体10の内表面には、少なくとも一つの突起15が形成されている。
図2(A)~(C)において、突起15は、収容体10の底部11から突出するように形成されている。突起15は、収容体10の底部11に2つ以上形成されていても良いが、耐久性の観点からは1つであることが好ましい。また、突起15は、収容体10の他の部位(例えばクラウン部12)に一つ又は2つ以上形成されていても良い。
【0028】
機能部品20は、
図2(A)に例示するように、筐体21と電子部品22とを含むものである。筐体21は中空構造を有し、その内部に電子部品22が収容される。電子部品22は、タイヤ情報を取得するためのセンサ23、送信機、受信機、制御回路及びバッテリー等を適宜含むように構成することができる。センサ23により取得されるタイヤ情報として、空気入りタイヤのトレッド部1の摩耗量等を挙げることができる。トレッド部1の摩耗量を検出する場合、センサ23として、少なくとも一つの圧電素子24を有する圧電センサを用いることができ、その圧電素子24が走行時のタイヤ変形に応じた出力電圧を検出し、その出力電圧に基づいてトレッド部1の摩耗量を検出する。それ以外に、温度センサや、圧力センサ、加速度センサ、磁気センサ等を任意に付加することが可能である。また、機能部品20は、センサ23により取得されたタイヤ情報をタイヤ外部に送信するよう構成されている。更に、機能部品20を把持し易くするため、筐体21の上面から突出したつまみ部を設けても良く、このつまみ部にアンテナの機能を担持させることもできる。
【0029】
機能部品20の筐体21の壁面には、少なくとも一つのフィルム状の圧電素子24が固定されている。この圧電素子24は、筐体21の外表面又は内表面のいずれかに配置することができる。本発明では、突起15は、圧電素子24に対応する位置に設けられており、圧電素子24側にそれとの接触面を有している。このような圧電素子24は、機能部品付き収容体又はタイヤが無負荷状態であり、かつ機能部品20が収容体10に収容された状態において、突起15の少なくとも一部と直接的に又は筐体21の壁面を挟んで間接的に接するように構成されている。具体的に、
図2(B)は、圧電素子24が筐体21の底部の外表面21xに設けられ、圧電素子24と突起15とが直接的に接した状態を示しており、
図2(C)は、圧電素子24が筐体21の底部の内表面21yに設けられ、圧電素子24と突起15とが筐体21の壁面を挟んで間接的に接した状態を示している。また、圧電素子24は、突起15側にそれとの接触面である感圧部24xを有している。なお、センサ23と圧電素子24は互いに接続されている。
【0030】
なお、本発明では、突起15は、圧電素子24を押圧するための部位であり、機能部品20の収容後に、機能部品20により突起15が押されて、収容体10の底部11がタイヤ内表面Tsに沿って変形するものではない。また、収容体10の突起15と機能部品20の筐体21は互いに嵌合するものではなく、筐体21の底部に突起15と嵌合する凹部は設けられていない。
【0031】
このような収容体10において、
図3(A),(B)に例示するように、突起15にはテーパが付与されている。即ち、突起15の上面視で最底面15yの面積が最上部15xの面積よりも大きく、かつ最上部15xの外縁15xeが最底面15yの外縁15yeの内側にある。このような条件を満たす形状として、
図3(A),(B)のように円錐台が例示されるが、他にも
図4(A)のように全体が略半球状であるものや、
図4(B)のように上側部分が円柱状であって下側部分が円錐台であるもの、
図4(C)のように上側部分が半球状であって下側部分がそれに連続するように直径が底部11に向かって徐々に拡大するもの、
図4(D)のように上側部分が円柱状であって下側部分がそれに連続するように直径が底部11に向かって徐々に拡大するものあってもよい。即ち、突起15の最上部15xは、形状に応じて面又は点である場合の双方を含んでいる。また、突起15の平面形状は、特に限定されるものではなく、円形や三角形、四角形等の任意の形状を採用することができる。
【0032】
上述した空気入りタイヤでは、機能部品20は、電子部品22を内蔵する筐体21と、この筐体21の壁面に固定されたフィルム状の圧電素子24とを有し、収容体10の内表面に少なくとも一つの突起15が形成され、無負荷状態でかつ機能部品20が収容体10に収容された状態で突起15の少なくとも一部と圧電素子24とは直接的に又は筐体21の壁面を挟んで間接的に接しているので、走行中においてタイヤの振動により突起15が圧電素子24に対して押圧した状態が保持され、圧電素子24による安定的なセンシングが可能になる。更に、突起15の上面視で、最上部15xの面積よりも最底面15yの面積が大きく、かつ最上部15xの外縁15xeが最底面15yの外縁15yeの内側にあるので、タイヤ転動時の振動やタイヤ接地時に収容体10に衝撃が加わった場合であっても、突起15の形状に起因して突起15の根本部分に応力が集中し難くなる。そのため、突起15の根本部分におけるクラックの発生を抑制することができる。このように突起15の根本部分におけるクラックの発生を抑制しながら、タイヤ内表面Tsの曲率やブラダーに起因する凹凸等に影響を受けることなく、機能部品20がタイヤ内部情報を正確に取得することができる。
【0033】
上記空気入りタイヤにおいて、突起15は下記の構成を有していると良い。具体的には、
図5(A),(B)に示すように、収容体10における突起15が形成された内表面(底部11)からの突起15の高さhの95%(0.95×h)の高さ位置を位置Gとする。このとき、位置Gにおける突起15の面積Sと、突起15の最底面15yの面積Aとは、A≧1.04×Sの関係を満たすことが好ましく、A≧1.10×Sの関係を満たすことがより好ましく、A≧1.19×Sの関係を満たすことが最も好ましい。このような関係式を満たすように突起15の各部の面積を設定することで、突起15の根本部分におけるクラックの発生を効果的に抑制することができ、突起15の耐久性を改善することができる。
【0034】
また、突起15の最底面15yの面積Aと、収容体10の内部の底面(即ち、収容空間13の底面)の面積A´とは、A≦0.82×A´の関係を満たすことが好ましく、A≦0.74×A´の関係を満たすことがより好ましい。このような関係式を満たすように突起15の最底面15yの面積Aを適度に設定することで、圧電素子24の検知結果に基づいて、収容体10に対する機能部品20の取り付け状態を把握することができる。例えば、収容体10に対して機能部品20が適切に取り付けられていない場合、圧電素子24の検知結果が正常な波形を示さないため、機能部品20の取り付け状態に異常があることを検知することができる。
【0035】
図6に示すように、収容体10における突起15が形成された内表面(底部11)からの突起15の高さhの半分(0.5×h)の高さ位置における突起15の端点を点Mとする。このとき、突起15の最上部15xの端点Pと点Mとを結ぶ直線と、端点Pを通って突起15の最底面15yに平行な直線とがなす角度αは、30°~90°であることが好ましく、30°~75°であることがより好ましい。このように角度αを適度に設定することで、突起15におけるクラックの発生を効果的に抑制することができ、突起15の耐久性を改善することができる。また、圧電素子24によるセンシング出力を十分に確保することができる。なお、角度αは、端点Pと点Mとを結ぶ直線と、端点Pを通って突起15の最底面15yに平行な直線とがなす角度において鋭角側の角度を測定したものである。
【0036】
ここで、角度αが90°より大きい場合、突起15の高さ方向の中途位置にくびれ部が形成されることになるため、クラックが発生し易くなり、突起15の耐久性を十分に改善することができない。逆に、角度αが30°より小さい場合、突起15の突出量を十分に確保できず、突起15による圧電素子24への押圧力が低下するので、圧電素子24によるセンシング出力を十分に確保することができない。
【0037】
更に、突起15の最底面15yの端点Qと点Mとを結ぶ直線と、収容体10における突起15が形成された内表面(底部11)とがなす角度βは、90°~180°であることが好ましく、120°~180°であることがより好ましい。特に、角度βとして、170°以下であることが好ましく、160°以下であることがより好ましい。このように角度βを適度に設定することで、突起15の根本部分におけるクラックの発生を効果的に抑制することができ、突起15の耐久性を改善することができる。なお、角度βは、端点Qと点Mとを結ぶ直線と、収容体10における突起15が形成された内表面とがなす角度において鈍角側の角度を測定したものである。
【0038】
ここで、角度βが90°より小さい場合、突起15の最底面15yの端点Qでのクラックが発生し易くなり、突起15の耐久性を十分に改善することができない。
【0039】
上記空気入りタイヤにおいて、突起15(最上部15x)と圧電素子24(感圧部24x)との接触面積は、収容体10における突起15が形成された内表面の面積に対して50%以下であることが好ましい。ここで、収容体10における突起15が形成された内表面の面積とは、突起15が形成された内表面に対応する収容空間13の面13xの面積であり、例えば、
図2(A)では収容空間13の底面の面積を意味する。その際、更に、突起15と圧電素子24との接触面積は、圧電素子24の感圧部24xの表面積に対して、10%~100%であることが好ましく、40%~100%であることがより好ましい。なお、収容体10の内表面に複数個の突起15が形成されている場合、これら突起15と圧電素子24との接触面積の総和が上記範囲内にあるように構成される。突起15の形状が、例えば、円錐形のように先端部が尖った形状である場合、機能部品付き収容体又はタイヤが無負荷状態であり、かつ機能部品20が収容体10に収容された状態において、突起15の先端部が潰れて平坦になった際に測定される接触面積に基づくものとする。
【0040】
このように突起15と圧電素子24の接触面積を適度に設定することで、突起15と圧電素子24の接触面積が十分に確保され、突起15と圧電素子24の接触状態が良好に保たれるので、圧電素子24による安定的なセンシングに寄与する。
【0041】
機能部品20の収容後、収容体10の弾性により突起15は圧電素子24又は筐体21の壁面に押し付けられるが、突起15と圧電素子24の接触面積が圧電素子24の感圧部24xの表面積に対して過度に大きいと、タイヤ転動による押圧が圧電素子24以外の部位にも分散し、圧電素子24によるセンシング出力が小さくなることがある。逆に、突起15と圧電素子24の接触面積が圧電素子24の感圧部24xの表面積に対して過度に小さいと、圧電素子24が局所的に負荷を受けることになるため、圧電素子24の耐久性を悪化させる可能性があり、好ましくない。
【0042】
突起15の高さhは、0.1mm~2.0mmであることが好ましく、0.5mm~1.0mmであることがより好ましい。ここで、突起15の高さhは、収容体10における突起15が形成された内表面(例えば
図3(B)では収容体10の底部11の端面)からの高さであり、機能部品20が収容体10に収容されていない状態で測定されるものである。このように突起15の高さhを適度に設定することで、突起15と圧電素子24の接触状態を適度に維持することができる。また、収容体10への機能部品20の収容作業に影響を与えず、走行中の機能部品20の脱落を防止することができる。
【0043】
ここで、突起15の高さhが0.1mmより小さくなると、圧電素子24との接触状態を改善する効果を十分に得ることができなくなる。逆に、突起15の高さhが2.0mmより大きくなると、機能部品20を収容体10に収容し難くなると共に、走行中に機能部品20が脱落するリスクが高まる。
【0044】
突起15は、100%伸張時のモジュラスが1.0MPa以上12.0MPa未満の加硫ゴムからなることが好ましい。突起15がこのような物性を有することで、収容体10の耐久性と収容体10への機能部品20の収容し易さとを両立することができる。また、突起15は、収容体10と同一材料で構成することができる。例えば、収容体10の成形用金型を用いて、収容体10と硬度が異なるゴムにより一体的に突起15を成形しても良く、或いは、収容体10とは別に成形した突起15を収容体10の内表面に接着して成形しても良い。
【0045】
図7(A)~(D)は機能部品の収容前後における機能部品付き収容体の実施形態を示すものである。
図7(A),(B)の機能部品付き収容体30は、収容体10に機能部品20が収容されていない状態であり、
図7(C),(D)の機能部品付き収容体30は、収容体10に機能部品20が収容された状態である。
【0046】
図7(A)~(D)に例示するように、機能部品付き収容体30において、収容空間13に機能部品20が収容された状態でクラウン部12の底部11に対する傾斜角度θ2は、収容空間13に機能部品20が収容されていない状態でクラウン部12の底部11に対する傾斜角度θ1よりも小さくなるように構成されている。これら傾斜角度θ1,θ2は、いずれもクラウン部12の外壁側で測定される角度である。機能部品20が開口部14から収容空間13に収容されると、クラウン部12が外側に向かって倒れ、開口部14の幅が拡張するように変形することにより、クラウン部12の底部11に対する傾斜角度θが小さくなる。機能部品20の収容前の傾斜角度θ1と機能部品20の収容後の傾斜角度θ2との角度差(θ1-θ2)は、5°~15°の範囲になるように構成されると良い。
【0047】
ここで、クラウン部12の傾斜角度θ(θ1,θ2)を測定する際、CTスキャン等を用いて角度を算出することができる。また、
図2(A)に例示するように、傾斜角度θ1,θ2を測定する場合、断面視における両側のクラウン部12の他方側の端部12bを通る直線L1とクラウン部12とがなす角度を測定する。また、例えば、底部に相当する部材がなく、クラウン部がタイヤ内表面に直接的に固定された機能部品付き収容体であっても上記と同様の方法で測定することができる。
【0048】
更に、クラウン部12の傾斜角度θを測定する際に限って、
図8(A)に示すように、クラウン部12の外表面における収容体10の総高さHの1/2(0.5×H)の位置と1/4(0.25×H)の位置の2点を通る直線L2をクラウン部12と見做して、機能部品20の収容前の傾斜角度θ1と機能部品20の収容後の傾斜角度θ2をそれぞれ測定する。収容体10の総高さH(最大高さH)は、機能部品20の収容前後で変わり、それぞれの高さに基づいてクラウン部12の傾斜角度θ(θ1,θ2)を測定する。また、収容体10の総高さHの1/2の位置及び/又は1/4の位置においてクラウン部12の外表面に突出部が形成されている場合、この突出部を含めずに突出部の下端部を新たな基準点として規定される直線に基づいて、クラウン部12の傾斜角度θを測定するものとする。なお、収容体10の総高さHは、底部11の下面から係止部12eの上面までの高さである。
【0049】
このような機能部品付き収容体30では、収容体10は、タイヤ内表面Tsに固定される底部11と、この底部11から突出したクラウン部12と、底部11とクラウン部12により形成される収容空間13と、この収容空間13に連通する開口部14とを有し、収容空間13に機能部品20が収容された状態でクラウン部12の外壁側で測定されるクラウン部12の底部11に対する傾斜角度θ2が収容空間13に機能部品20が収容されていない状態でクラウン部12の外壁側で測定されるクラウン部12の底部11に対する傾斜角度θ1よりも小さいので、機能部品20を収容した状態の収容体10において、機能部品20を十分に拘束できる拘束力を確保しながら、過度な変形を防止することができる。特に、機能部品20の収容前後における傾斜角度の角度差(θ1-θ2)が5°~15°の範囲にあると、機能部品20に対する収容体10の拘束力と、収容体10に損傷が生じない変形度合とのバランスが極めて良い。これにより、走行中の機能部品20の脱落を防止しながら、収容体10の損傷を防止することができる。
【0050】
ここで、傾斜角度の角度差(θ1-θ2)が5°より小さくなると、機能部品20に対する収容体10の拘束力が低下するため、走行中に機能部品20が脱落するリスクが増大すると共に、機能部品20の動きが大きくなり、収容体10の耐久性が低下する。逆に、傾斜角度の角度差(θ1-θ2)が15°より大きくなると、収容体10の変形が過度に大きくなり、長距離走行時に収容体10にクラックが発生し易くなる。
【0051】
特に、収容空間13に機能部品20が収容された状態でクラウン部12の底部11に対する傾斜角度θ2は、90°以上であることが好ましく、90°~115°の範囲にあることがより好ましい。このように機能部品20の収容後の傾斜角度θ2を適度に設定することで、収容体10のクラウン部12の根本における応力集中を緩和することができ、収容体10の耐久性を向上させることができる。更に、収容体10の開口部14が過度に狭くならず、機能部品20を取り外す際にも好適である。
【0052】
ここで、機能部品20の収容後の傾斜角度θ2が90°より小さくなると、収容体10のクラウン部12の根本における応力集中が増大すると共に、走行中の歪エネルギーが増大するため、クラウン部12の根本でクラックが発生し易くなる。一方、機能部品20の収容後の傾斜角度θ2が115°より大きくなると、機能部品20の収容後もクラウン部12の倒れ込みが過度に大きい状態であるので、開口部14の幅が過度に狭くなり、機能部品20が取り外し難くなる。
【0053】
また、収容空間13に機能部品20が収容された状態で、クラウン部12の厚さGaは、1.0mm~3.5mmであることが好ましい。ここで、
図8(B)に示すように、機能部品20の収容後における収容体10の総高さHの半分の高さをh1とし、この高さh1の位置(中心位置)を基準として高さh1の±30%(0.3×h1)の範囲内を中心範囲Cとする。このとき、中心範囲Cの全域において、水平方向に測定されるクラウン部12の厚さGaが1.0mm~3.5mmの範囲にあるように構成されていると良い。
【0054】
このようにクラウン部12の厚さGaを適度に設定することで、収容体10のクラウン部12におけるクラックの発生を抑制し、収容体10の耐久性を向上させることができる。更に、収容体10のクラウン部12の厚さGaが過度に厚いと収容体10の発熱が大きくなるが、上記の厚さGaの範囲内であれば収容体10の発熱を抑制することができ、機能部品20の筐体21の破損を防止することができる。
【0055】
ここで、クラウン部12の厚さGaが1.0mm未満であると、クラウン部12の厚さGaが過度に薄く、クラウン部12でクラックが発生し易くなる。逆に、クラウン部12の厚さGaが3.5mmより大きいと、収容体10(例えばゴム)の発熱が大きくなり、機能部品20の筐体21の破損が生じ易くなる。
【0056】
クラウン部12の端部12aは開口部14に向かって屈曲した係止部12eを有し、機能部品20の高さH1と収容体10の内側総高さH2とは、0.85≦H2/H1≦0.98の関係を満たすことが好ましい。ここで、機能部品20の高さH1は、
図8(B)に示すように、機能部品20の収容後の状態において、機能部品20が収容体10に収容された範囲内での最大高さ、言い換えれば、収容空間13内での機能部品20の最大高さである。これは、例えば、機能部品20の上部に設けられたつまみ部が収容空間13から突き出ている場合、機能部品20の高さH1はつまみ部における収容空間13外の部位の高さを含まないことを意味する。なお、収容体10の内側総高さH2は、機能部品20の収容前における底部11の上面から係止部12eの下面までの高さである。
【0057】
機能部品20の高さH1と収容体10の内側総高さH2を適度に設定することで、機能部品20に対する収容体10の拘束力と、収容体10に損傷が生じない変形度合とのバランスが良好になり、高速走行時における機能部品20の耐久性を向上させることができる。
【0058】
ここで、比H2/H1が0.85未満であると、係止部12eが機能部品20を覆うように収容できなくなるので、高速走行時における機能部品20の耐久性の改善効果が低下する。逆に、比H2/H1が0.98より大きいと、収容体10の拘束力が弱くなり、収容体10内での機能部品20の動きが大きくなるので、高速走行時における機能部品20の耐久性の改善効果を得ることができなくなる。
【0059】
また、開口部14の幅は収容空間13の最小幅よりも狭く、収容空間13の上側部分の周長D2
uと機能部品20の上側部分の周長D1
uとは、0.60≦D2
u/D1
u≦0.95の関係を満たすことが好ましい。即ち、収容空間13の周長D2
uを機能部品20の周長D1
uに対して特定の範囲で小さく設定することにより、収容体10による拘束力を高めることを意図している。ここで、収容空間13の周長D2
uは、
図8(C)に示すように、機能部品20の収容前の状態において、収容体10の内側総高さH2の3/4(0.75×H2)の高さをh2とし、この高さh2の位置と、高さh2の位置を基準として高さh2の±25%(0.25×h2)に相当する位置の計3つの位置で収容空間13の周長を測定し、これら3つの位置で測定された周長を平均したものである。また、機能部品20の上側部分の周長D1
uは、機能部品20における上記3つの位置に対応する位置で機能部品20の周長を測定し、これら3つの位置で測定された周長を平均したものである。
【0060】
このように収容空間13の周長D2uと機能部品20の周長D1uを適度に設定することで、機能部品20に対する収容体10の拘束力を高め、機能部品20の動きを抑制できるため、高速走行時に機能部品20の筐体21が破損することを防止することができる。更に、機能部品20に対する収容体10の拘束力と、収容体10に損傷が生じない変形度合とのバランスが良好であるため、収容体10の損傷も防止することができる。
【0061】
ここで、比D2u/D1uが0.60未満であると、収容体10による拘束力が大きくなるものの、クラウン部12の変形度合も増大するので、長距離走行時に収容体10にクラックが発生し、収容体10が破損する可能性が高まる。逆に、比D2u/D1uが0.95より大きいと、収容体10による拘束力が小さくなり、収容体10内での機能部品20の動きが大きくなるため、収容体10と機能部品20との摩擦によって発熱が増大し、機能部品20の筐体21が破損に至る。
【0062】
更に、収容体10の開口部14の周長D2Oと機能部品20の上側部分の周長D1uとは、0.4≦D2O/D1u≦0.8の関係を満たすことが好ましい。ここで、開口部14の周長D2Oは、機能部品20が収容体10に収容されていない状態で測定される開口部14の周長である。このように開口部14の周長D2Oと機能部品20の周長D1uを適度に設定することで、機能部品20に対する収容体10の拘束力と、収容体10に損傷が生じない変形度合とのバランスが良好になり、高速走行時における機能部品20の耐久性を向上させることができる。更に、収容体10の開口部14が過度に狭くならず、機能部品20を取り外す際にも好適である。
【0063】
ここで、比D2O/D1uが0.4未満であると、開口部14が過度に狭くなるので、機能部品20が取り外し難くなる。逆に、比D2O/D1uが0.8より大きいと、収容体10による拘束力が小さくなり、収容体10内での機能部品20の動きが大きくなるので、収容体10と機能部品20との摩擦によって発熱が増大し、機能部品20の筐体21が破損に至る。
【0064】
また、収容体10は、ゴムやエラストマー、樹脂等により構成することができる。特に、収容体10の構成材料は以下の物性を有すると良い。収容体10の20℃における100%伸張時のモジュラスは0.5MPa以上10.0MPa未満であり、収容体10の60℃における損失弾性率は0.4MPa以上20.0MPa未満であることが好ましい。このようにモジュラスを適度に設定することにより、収容体10の耐久性と収容体10への機能部品20の収容し易さとを両立することができる。また、このように損失弾性率を適度に設定することにより、機能部品20の収容体10に対する擦れや収容体10の繰り返し変形によって生じる機能部品20の筐体21の破損を防止することができる。
【0065】
上述した実施形態では、機能部品付き収容体を空気入りタイヤに取り付けた例について説明したが、これに限定されるものではなく、非空気式タイヤに適用することもできる。
【実施例0066】
タイヤサイズ225/45R18で、タイヤ情報を取得するための機能部品と、この機能部品を収容するゴム製の収容体とを備え、機能部品が収容された収容体がタイヤ内表面に固定された空気入りタイヤにおいて、機能部品は、電子部品を内蔵する筐体と、この筐体の壁面に固定されたフィルム状の圧電素子とを有し、収容体の底面に一つの突起が形成され、無負荷状態でかつ機能部品が収容体に収容された状態で突起の少なくとも一部と圧電素子とが直接的に接しており、突起の有無、突起の上面の面積S、突起の底面の面積A、面積比A/S、面積比A/A´、突起の上部の角度α、突起の底部の角度β、収容体の突起が形成された内表面の面積に対する突起の接触面積の比率、圧電素子の感圧部の表面積に対する突起の接触面積の比率、突起の高さh、突起のM100を表1のように設定した従来例、比較例及び実施例1~8のタイヤを製作した。
【0067】
各試験タイヤにおいて、機能部品の筐体内に配置された圧電素子は、直径d1が10mmの円形を有しており、機能部品の筐体の底面の中央部に配置されている。比較例のタイヤにおいて、収容体に設けられた突起は円柱状である。また、比較例及び実施例1~8のタイヤにおいて、突起は収容体の底面に形成されている。
【0068】
なお、表1において、「突起のM100」は、100%伸張時のモジュラス[MPa]を意味し、JIS K6251(3号ダンベル使用)に準拠した23℃での引張試験により測定され、100%伸張時の引張り応力を示す。
【0069】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、センシング強度及び耐破損性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0070】
センシング強度:
各試験タイヤをリムサイズ18×7.5Jのホイールに組み付け、最大負荷能力の80%の荷重を負荷し、空気圧230kPa、走行速度30km/h、走行距離10kmの条件でドラム試験機にて走行試験を実施した。具体的には、各試験タイヤに対して10本ずつタイヤを用いて、圧電素子によりタイヤ内表面のひずみ測定を行い、測定されたひずみ値を平均化した。評価結果は、従来例の測定値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどセンシング強度が優れていることを意味する。
【0071】
耐破損性:
各試験タイヤをリムサイズ18×7.5Jのホイールに組み付け、最大負荷能力の80%の荷重を負荷し、空気圧360kPa、走行速度300km/h、走行距離15000kmの条件でドラム試験機にて走行試験を実施した後、突起の破損具合を目視で確認し、突起におけるクラックの発生箇所数をカウントした。評価結果は、測定値の逆数を用いて、比較例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐破損性が優れていることを意味する。
【0072】
【0073】
この表1から判るように、実施例1~8の空気入りタイヤは、従来例に比して、センシング強度が改善されると共に、比較例に比して、突起の耐破損性が改善されていた。実施例1~8の空気入りタイヤでは、センシング強度の改善効果を十分に得ることができ、タイヤ内部情報を正確に取得できることが確認された。
【0074】
突起を有する比較例は、従来例に比べてセンシング強度を改善することができたが、突起が円柱状であったため、突起の耐破損性の改善効果を十分に得ることができなかった。