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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140982
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】車両用フロントピラー
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B62D25/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047080
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】山下 晶夫
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB12
3D203BB54
3D203BB57
3D203CA53
3D203DA33
(57)【要約】
【課題】車室内からの視界の確保、重量の削減および浸水対策を図ることが可能な車両用フロントピラーを提供する。
【解決手段】フロントピラー100は、インナパネルASSY107とサイドアウタパネル110とを備える。インナパネルASSY107は、ルーフ104の前端からウィンドウ用開口部109の前縁を形成するよう下方に延びる前側ピラー部材150と、ルーフ104からウィンドウ用開口部109の後縁を形成するよう下方に延びている後側ピラー部材152と、ウィンドウ用開口部109の下縁からサイドシル106までの範囲を形成するヒンジリンフォース108とを含む。サイドアウタパネル110は、インナパネルASSY107のルーフ104から後側ピラー部材152およびヒンジリンフォース108までの範囲を覆いつつ、少なくとも前側ピラー部材150を覆わない形状になっている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフからサイドシルにわたって設けられる車両用フロントピラーにおいて、
当該車両用フロントピラーは、
車内側のインナパネルASSYと、
前記インナパネルASSYの所定の範囲に開けられているウィンドウ用開口部と、
前記インナパネルASSYの車外側に接合されるサイドアウタパネルとを備え、
前記インナパネルASSYは、
前記ルーフの前端から前記ウィンドウ用開口部の前縁を形成するよう下方に延びる前側ピラー部材と、
前記ルーフから前記ウィンドウ用開口部の後縁を形成するよう下方に延びている後側ピラー部材と、
前記ウィンドウ用開口部の下縁から前記サイドシルまでの範囲を形成し前記車両のドアヒンジが取り付けられるヒンジリンフォースとを含み、
前記サイドアウタパネルは、前記インナパネルASSYの前記ルーフから前記後側ピラー部材および前記ヒンジリンフォースまでの範囲を覆いつつ、少なくとも前記前側ピラー部材を覆わない形状になっていることを特徴とする車両用フロントピラー。
【請求項2】
前記ヒンジリンフォースは、前記ウィンドウ用開口部の下方に設けられ前記ドアヒンジが取り付けられるヒンジ取付部を有し、
前記サイドアウタパネルのうち前記ウィンドウ用開口部よりも下方の部分は、前記後側ピラー部材から該ウィンドウ用開口部の下縁に沿って前記前側ピラー部材の手前まで延びて前記ヒンジ取付部を覆い、該部分の前縁は、下方へゆくほど後方に延びていることを特徴とする請求項1に記載の車両用フロントピラー。
【請求項3】
前記ヒンジリンフォースはさらに、
前記サイドアウタパネルの前縁が接合される側壁部と、
前記側壁部の前側から前方へゆくほど車内側に延びる前側傾斜部とを有し、
前記ヒンジ取付部は、前記側壁部に設けられていて、
前記側壁部のうち、前記ヒンジ取付部よりも前方かつ上方の範囲は、下方へゆくほど車内側に延びていることを特徴とする請求項2に記載の車両用フロントピラー。
【請求項4】
前記ヒンジリンフォースはさらに、前記側壁部のうち前記ヒンジ取付部よりも前方かつ上方の範囲に形成されて該ヒンジ取付部よりも車外側に膨出しているリンフォース膨出部を有し、
前記サイドアウタパネルは、前記ヒンジ取付部よりも前方の範囲に車外側に膨出するよう設けられて前記リンフォース膨出部から連続して該ヒンジ取付部よりも下方に延びるアウタ膨出部を有することを特徴とする請求項3に記載の車両用フロントピラー。
【請求項5】
当該車両用フロントピラーはさらに、前記サイドアウタパネルの前縁に沿って塗布されて該前縁と前記ヒンジリンフォースとの間を埋める第1のシーラを備えることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の車両用フロントピラー。
【請求項6】
前記ヒンジリンフォースはさらに、前記ウィンドウ用開口部の下縁となる箇所の前側に車内側に窪むよう設けられて前記前側ピラー部材の下縁が車外側から接合される前側凹部を有し、
前記前側凹部は、前記ウィンドウ用開口部の下縁となる箇所から前方の斜め下方に延びていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用フロントピラー。
【請求項7】
当該車両用フロントピラーはさらに、前記前側ピラー部材の下縁に沿って塗布されて該下縁と前記前側凹部との間を埋める第2のシーラを備えることを特徴とする請求項6に記載の車両用フロントピラー。
【請求項8】
前記サイドアウタパネルはさらに、前記前側ピラー部材の上縁に沿って設けられて該前側ピラー部材の車外側に接合されるピラー接合部を有し、
前記ピラー接合部は、後方へゆくほど下方に延びていて、
当該車両用フロントピラーはさらに、前記ピラー接合部に沿って塗布されて該ピラー接合部と前記前側ピラー部材との間を埋める第3のシーラを備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用フロントピラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フロントピラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両のフロントピラーを形成する領域は、車外側のアウタパネルと車内側のインナパネルとを含んで構成されている。このようなフロントピラーには、固定式のピラーウィンドウが設けられることがある。例えば、特許文献1には、フロントピラー2に沿ってサブウィンドウを設けた車体前部構造1が開示されている。
【0003】
特許文献1の車体前部構造1では、フロントピラー2の付近の領域は、図1のサイドアウタパネル13と、図2のアウタパネル12と、図3のインナパネル11とによって構成されている。サブウィンドウの前側のサブピラー3は、段落0044にて、アウタパネル12とガーニッシュ14とによって形成されている旨が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-62838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、段落0059にて、荷重伝達部6を利用して荷重伝達性能を高めることで、サブピラー3を細くして運転者の視界を広く確保できる旨が述べられている。しかしながら、サブピラー3はアウタパネル12を含んで形成されている。このようなアウタパネルは、車外側に厚みを生みやすく、乗員がサブウィンドウから車外を見たときに視界に入りやすいおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、車室内からの視界の確保、重量の削減および浸水対策を図ることが可能な車両用フロントピラーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用フロントピラーの代表的な構成は、車両のルーフからサイドシルにわたって設けられる車両用フロントピラーにおいて、当該車両用フロントピラーは、車内側のインナパネルASSYと、インナパネルASSYの所定の範囲に開けられているウィンドウ用開口部と、インナパネルASSYの車外側に接合されるサイドアウタパネルとを備え、インナパネルASSYは、ルーフの前端からウィンドウ用開口部の前縁を形成するよう下方に延びる前側ピラー部材と、ルーフからウィンドウ用開口部の後縁を形成するよう下方に延びている後側ピラー部材と、ウィンドウ用開口部の下縁からサイドシルまでの範囲を形成し車両のドアヒンジが取り付けられるヒンジリンフォースとを含み、サイドアウタパネルは、インナパネルASSYのルーフから後側ピラー部材およびヒンジリンフォースまでの範囲を覆いつつ、少なくとも前側ピラー部材を覆わない形状になっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車室内からの視界の確保、重量の削減および浸水対策を図ることが可能な車両用フロントピラーを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係る車両用フロントピラーの概要を示した図である。
図2図1のサイドアウタパネルをインナパネルASSYから取り外した状態を示した図である。
図3図2のインナパネルASSYのウィンドウ用開口部の周囲を車内側から見て示した図である。
図4図2のヒンジリンフォースとサイドアウタパネルを示す斜視図である。
図5図4のヒンジリンフォースとサイドアウタパネルを車外側から見て示した図である。
図6図5の車両用フロントピラーの各断面図である。
図7図1の前側ピラー部材の上部および下部の拡大図である。
図8図5の車両用フロントピラーのC-C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両用フロントピラーは、車両のルーフからサイドシルにわたって設けられる車両用フロントピラーにおいて、当該車両用フロントピラーは、車内側のインナパネルASSYと、インナパネルASSYの所定の範囲に開けられているウィンドウ用開口部と、インナパネルASSYの車外側に接合されるサイドアウタパネルとを備え、インナパネルASSYは、ルーフの前端からウィンドウ用開口部の前縁を形成するよう下方に延びる前側ピラー部材と、ルーフからウィンドウ用開口部の後縁を形成するよう下方に延びている後側ピラー部材と、ウィンドウ用開口部の下縁からサイドシルまでの範囲を形成し車両のドアヒンジが取り付けられるヒンジリンフォースとを含み、サイドアウタパネルは、インナパネルASSYのルーフから後側ピラー部材およびヒンジリンフォースまでの範囲を覆いつつ、少なくとも前側ピラー部材を覆わない形状になっていることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、サイドアウタパネルのうち前側ピラー部材を覆う範囲を省略することで、前側ピラー部材の車外側の厚みを抑え、乗員がピラーウィンドウから車外を見たときに視界を広く確保することが可能になる。また、サイドアウタパネルの材料および重量が削減できるため、車体の軽量化を図ることが可能になる。
【0012】
上記のヒンジリンフォースは、ウィンドウ用開口部の下方に設けられドアヒンジが取り付けられるヒンジ取付部を有し、サイドアウタパネルのうちウィンドウ用開口部よりも下方の部分は、後側ピラー部材からウィンドウ用開口部の下縁に沿って前側ピラー部材の手前まで延びてヒンジ取付部を覆い、当該部分の前縁は、下方へゆくほど後方に延びている。
【0013】
上記構成によれば、サイドアウタパネルによってヒンジ取付部を覆うことで、ヒンジ取付部の浸水を防ぐことができる。また、サイドアウタパネルの前縁の下側が後方に延びていることで、走行時に前方から侵入した雨水がこの前縁に沿って下方に流れ落やすく、雨水を効率的に排出して錆の発生を防ぐことができる。
【0014】
上記のヒンジリンフォースはさらに、サイドアウタパネルの前縁が接合される側壁部と、側壁部の前端から前方へゆくほど車内側に延びる前側傾斜部とを有し、ヒンジ取付部は、側壁部に設けられていて、側壁部のうち、ヒンジ取付部よりも前方かつ上方の範囲は、下方へゆくほど車内側に延びている。
【0015】
上記構成によれば、ヒンジリンフォースのうちヒンジ取付部の前方の部分が、上側から下側にかけて車内側に傾斜していることで、前方から侵入した雨水等が下方に流れ落ちやすくなっている。よって、ヒンジ取付部の浸水および錆の発生を防ぐことができる。
【0016】
上記のヒンジリンフォースはさらに、側壁部のうちヒンジ取付部よりも前方かつ上方の範囲に形成されてヒンジ取付部よりも車外側に膨出しているリンフォース膨出部を有し、サイドアウタパネルは、ヒンジ取付部よりも前方の範囲に車外側に膨出するよう設けられてリンフォース膨出部から連続してヒンジ取付部よりも下方に延びるアウタ膨出部を有する。
【0017】
上記構成によれば、ヒンジ取付部の前方にリンフォース膨出部およびアウタ膨出部が設けられていることで、前方からのヒンジ取付部への浸水と錆の発生を防ぐことができる。
【0018】
当該車両用フロントピラーはさらに、サイドアウタパネルの前縁に沿って塗布されて前縁とヒンジリンフォースとの間を埋める第1のシーラを備える。
【0019】
上記の第1のシーラによって、ヒンジ取付部の浸水を防ぎつつ、サイドアウタパネルの前縁に沿って雨水等を下方に導いて排出することが可能になる。
【0020】
上記のヒンジリンフォースはさらに、ウィンドウ用開口部の下縁となる箇所の前側に車内側に窪むよう設けられて前側ピラー部材の下縁が車外側から接合される前側凹部を有し、前側凹部は、ウィンドウ用開口部の下縁となる箇所から前方の斜め下方に延びている。
【0021】
上記構成によれば、ヒンジリンフォースに前側凹部を設けることで、前側ピラー部材を伝って流れる雨水等を前側凹部の縁の段差に沿わせて排出し、前側凹部から後方に水が流れ込むことを防止できる。すなわち、上記構成であれば、前側ピラー部材を伝った雨水等が前側凹部の後方のヒンジ取付部に流れ込まないようにすることができる。
【0022】
当該車両用フロントピラーはさらに、前側ピラー部材の下縁に沿って塗布されて下縁と前側凹部との間を埋める第2のシーラを備える。
【0023】
上記の第2のシーラによって、前側凹部の周辺の錆を防ぎつつ、雨水等を前側凹部の周囲の段差に沿わせて排出することが可能になる。
【0024】
上記のサイドアウタパネルはさらに、前側ピラー部材の上縁に沿って設けられて前側ピラー部材の車外側に接合されるピラー接合部を有し、ピラー接合部は、後方へゆくほど下方に延びていて、当該車両用フロントピラーはさらに、ピラー接合部に沿って塗布されてピラー接合部と前側ピラー部材との間を埋める第3のシーラを備える。
【0025】
上記構成によれば、前側ピラー部材の上縁付近の浸水および錆の発生を効率よく防ぐことができる。
【実施例0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0027】
図1は、本発明の実施例に係る車両用フロントピラー(以下、フロントピラー100)の概要を示した図である。図1は、車両100の右側のフロントピラーを車外側から見て示している。以下、図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で例示する。
【0028】
フロントピラー100は、フロントサイドドア用の開口102の前縁を形成する領域であって、車両のルーフ104からサイドシル106にわたって設けられている。当該フロントピラー100は、車内側の複数のパネルを組み合わせたインナパネルASSY(assembly)107と、インナパネルASSY107の車外側に接合されるサイドアウタパネル110とを含んでいる。
【0029】
図2は、図1のサイドアウタパネル110をインナパネルASSY107から取り外した状態を示した図である。インナパネルASSY107は、上部にピラーウィンドウ用のウィンドウ用開口部109を有している。
【0030】
インナパネルASSY107は、前側ピラー部材150、後側ピラー部材152、およびヒンジリンフォース108を含んで構成されている。前側ピラー部材150は、ルーフ104の前端と前側のピラーを形成する部材であって、ルーフ104からウィンドウ用開口部109の前縁を形成するよう下方に延びている。
【0031】
後側ピラー部材152は、ルーフ104の一部と後側のピラーを形成する部材であって、ルーフ104からウィンドウ用開口部109の後縁を形成するよう下方に延びている。後側ピラー部材152は、ルーフ104の一部と後側のピラーの上部とを形成する上側部材152aと、当該ピラーの下部を形成する下側部材152bとを含んで構成されている。
【0032】
ヒンジリンフォース108は、フロントサイドドアのドアヒンジが取り付けられる部材であって、ウィンドウ用開口部109の下縁からサイドシル106までの範囲を形成する。ヒンジリンフォース108には、ウィンドウ用開口部109の下方の位置にて、フロントサイドドアのドアヒンジを取り付けるヒンジ取付部118、120が上下二か所に設けられている。
【0033】
図3は、図2のインナパネルASSY107のウィンドウ用開口部109の周囲を車内側から見て示した図である。ウィンドウ用開口部109の車内側は、補強部材156によって形成されている。補強部材156は、ウィンドウ用開口部109を縁取る一体形状の枠状の部材であり、ウィンドウ用開口部109からルーフ104の前端までの車内側の範囲を形成している。
【0034】
再び図2を参照する。サイドアウタパネル110は、インナパネルASSY107のルーフ104から後側ピラー部材152およびヒンジリンフォース108までの範囲を覆いつつ、少なくとも前側ピラー部材150を覆わない形状になっている。
【0035】
当該サイドアウタパネル110は、インナパネルASSY107の前側ピラー部材150を覆う範囲を省略することで、前側ピラー部材150の車外側の厚みを抑え、乗員がウィンドウ用開口部109に設置されるピラーウィンドウから車外を見たときに、視界を広く確保することができる。また、サイドアウタパネル110の材料および重量が削減できるため、車体の軽量化を図ることが可能になる。
【0036】
サイドアウタパネル110のうちウィンドウ用開口部109よりも下方の範囲は、後側ピラー部材152からウィンドウ用開口部109の下縁に沿って前側ピラー部材150の手前まで延びている。よって、サイドアウタパネル110は、ヒンジリンフォース108のうちヒンジ取付部118、120を含む主に後側の半分程度の範囲を覆う構成になっている。サイドアウタパネル110は、ヒンジ取付部118、120を覆うことで、ヒンジ取付部118、120の浸水を防いでいる。
【0037】
サイドアウタパネル110のうち、ウィンドウ用開口部109よりも下方の前縁158は、上側から下方へゆくほど後方に延びた形状になっている。この構成によって、前縁158は、走行時に前方から侵入した雨水を後側の下方に案内して流れ落とすことができ、雨水を効率的に排出して錆の発生を防いでいる。
【0038】
図4は、図2のヒンジリンフォース108とサイドアウタパネル110を示す斜視図である。図4では、ヒンジリンフォース108およびサイドアウタパネル110のうち、ウィンドウ用開口部の下側付近を拡大して示している。ヒンジリンフォース108およびサイドアウタパネル110は、共に車外側に膨出した形状になっている。
【0039】
ヒンジリンフォース108のヒンジ取付部118には、車外側にサイドアウタパネル110の外側ヒンジ取付部126が重ねられる。そして、ヒンジ取付部118および外側ヒンジ取付部126に対し、車外側からドアヒンジが締結固定される。
【0040】
ヒンジリンフォース108のうち、ヒンジ取付部118の周囲には、リンフォース膨出部140が設けられている。リンフォース膨出部140は、ヒンジ取付部118よりも車外側に膨出した部位であって、側壁部116のうち上側のヒンジ取付部118の前方かつ上方の範囲を含んで形成されている。
【0041】
サイドアウタパネル110のうち、リンフォース膨出部140の車外側の範囲には、アウタ膨出部144が設けられている。アウタ膨出部144は、リンフォース膨出部140に沿って車外側に膨出した部位であって、サイドアウタパネル110のうち上側のヒンジ取付部118の前方の下方から上方にわたる範囲を含んで形成されている。
【0042】
アウタ膨出部144には、下方に延びる延長部146が設けられている。延長部146は、ヒンジ取付部よりも前方の範囲にて、車外側に膨出するよう設けられている。
【0043】
図5は、図4のヒンジリンフォース108とサイドアウタパネル110を車外側から見て示した図である。延長部146は、リンフォース膨出部140から連続して、下方に延びている。このとき、図2に示すように、延長部146は、上側の外側ヒンジ取付部126の前方から、下側の外側ヒンジ取付部127の上部に到達する程度にまで、上下方向に延びている。
【0044】
上記の延長部146は、ヒンジリンフォース108に対しては、ヒンジ取付部118の前側の上方から、当該ヒンジ取付部118よりも下方に延び、下側のヒンジ取付部120の前側上方にまで到達している。
【0045】
上記構成によれば、ヒンジ取付部118の前方にリンフォース膨出部140およびアウタ膨出部144が設けられていることで、走行中における前方からのヒンジ取付部118、120への浸水と錆の発生を防ぐことができる。
【0046】
図6は、図5のフロントピラー100の各断面図である。図6(a)は、図5のフロントピラー100のA-A断面図である。
【0047】
ヒンジリンフォース108は、後側フランジ部112から後壁部122が車外側に屈曲して延び、後壁部122から側壁部116が前方に屈曲して延びている。これら構成によって、ヒンジリンフォース108は、水平方向の断面が上方から見てハット型になっている。ヒンジ取付部118は、ヒンジリンフォース108のうちハット型断面の上面となる側壁部116に設けられている。
【0048】
サイドアウタパネル110は、当該サイドアウタパネル110の後縁を形成するフランジ部132と、前縁を形成するフランジ部134とが、それぞれヒンジリンフォース108の後側フランジ部112および側壁部116に接合される。
【0049】
ヒンジリンフォース108の前側の部位には、前側傾斜部125が設けられている。前側傾斜部125は、側壁部116の前側から斜め車内側に延びている。前側傾斜部125が車内側に傾いていることで、前側傾斜部125からヒンジ取付部118に向かうような水の流れを形成し難くし、ヒンジ取付部118等の存在する後方の部位に雨水等を浸入し難くすることができる。
【0050】
図6(b)は、図5のフロントピラー100のB-B断面図である。上述したように、側壁部116は、ヒンジ取付部118(図4参照)よりも前方かつ上方を含む範囲に、リンフォース膨出部140が設けられている。図6(b)に示すように、リンフォース膨出部140の下側には傾斜部142が設けられていて、これによってリンフォース膨出部140はヒンジ取付部118の前方にて上側から下側の斜め車内側に延びた構成になっている。
【0051】
上記構成によれば、ヒンジリンフォース108のうちヒンジ取付部118の前方のリンフォース膨出部140が、上側から下側にかけて車内側に傾斜していることで、上方や前方から侵入した雨水等が下方に流れ落ちやすくなっている。よって、ヒンジ取付部118の浸水および錆の発生を防ぐことができる。
【0052】
本実施例では、図6(a)のサイドアウタパネル110の前縁158に沿って、第1のシーラ160が塗布される。シーラ160は、サイドアウタパネル110の前縁158とヒンジリンフォース108との間を埋める材料である。第1のシーラ160によれば、ヒンジ取付部118の浸水を防ぎつつ、サイドアウタパネル110の前縁158に沿って雨水等を下方に導いて排出することが可能になる。
【0053】
図7は、図1の前側ピラー部材150の上部および下部の拡大図である。図7(a)は、図1の前側ピラー部材150の上部の拡大図である。前側ピラー部材150の上部には、サイドアウタパネル110のピラー接合部162が車外側から接合している。
【0054】
ピラー接合部162は、前側ピラー部材150の上縁に沿って設けられていて、前側から後方へゆくほど斜め下方に延びている。よって、ピラー接合部162は、前方からの雨水が後方に流れ落ちやすくなっている。
【0055】
図7(b)は、図1の前側ピラー部材150の下部の拡大図である。前側フロントピラーの下端部151は、後方に裾野が広がった形状になっている。
【0056】
ヒンジリンフォース108には、ウィンドウ用開口部109の下縁となる箇所の前側に、前側凹部164が設けられている。前側凹部164は、車内側に窪むよう設けられていて、前側ピラー部材150の下縁が車外側から接合される。
【0057】
前側凹部164の後部166は、ウィンドウ用開口部109の下縁となる箇所から前方の斜め下方に延びている。この構成によれば、ヒンジリンフォース108に前側凹部164を設けることで、前側ピラー部材150を伝って流れる雨水等を前側凹部164の後縁166の段差に沿わせていったん前側に案内し、そこから下方に流れ落とすことが可能になる。
【0058】
前側凹部164の後部166は、後方のサイドアウタパネル110の前縁158とは距離を空けて設けられている。よって、したがって、前側凹部164で受けた雨水等がサイドアウタパパネル110の前縁158に付着することが防止できる。すなわち、この構成であれば、前側ピラー部材150を伝った雨水等が前側凹部164の後方のヒンジ取付部118(図2参照)に流れ込まないようにすることができる。
【0059】
図8は、図5のフロントピラー100のC-C断面図である。ヒンジリンフォース108には、上述した前側凹部164の他にも、上部の後方に、後側ピラー部材152(図2参照)の下側部品152bが接合される後側凹部172が設けられている。後側凹部172もまた、下側部品152bに沿って車内側に窪んだ構成になっている。
【0060】
ヒンジリンフォース108のうち、前側凹部164と後側凹部172との間の中間部174は、これら前側凹部164等に対して、相対的に車外側に突出した形状になっている。ここで、後側凹部172は、図7(b)の前側凹部164の後部166が前側下方に延びているのとは対称に、不図示の前部が後側下方に延びた形状になっている。よって、中間部174は、下側に向かうほど範囲が前後に広がった構成になっている。この構成に寄って、中間部174から真下に水が流れ落ち難くなっていて、中間部174の下方のヒンジ取付部118等の浸水を防ぐことが可能になっている。
【0061】
本実施例では、図7(b)に示すように、前側ピラー部材150の下縁に沿って、第2のシーラ168を塗布している。シーラ168は、前側ピラー部材150の下縁と前側凹部164との間を埋める材料である。シーラ168によって、前側凹部164の周辺の錆を防ぎつつ、雨水等を前側凹部164の周囲の段差に沿わせて下方に排出することが可能になる。このとき、シーラ168は、サイドアウタパネル110の前縁158のシーラ160とは連続していない。よって、シーラ168を伝う水が、シーラ160に流れ落ちることは回避されている。
【0062】
さらに、本実施例では、図7(a)に示すように、ピラー接合部162に沿って、第3のシーラ170を塗布している。シーラ170は、ピラー接合部162と前側ピラー部材150との間を埋める材料である。シーラ170によって、前側ピラー部材150の上縁付近の浸水および錆の発生を効率よく防ぐことができる。
【0063】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、車両用フロントピラーに利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
100…フロントピラー、102…開口、104…ルーフ、106…サイドシル、107…インナパネルASSY、108…ヒンジリンフォース、109…ウィンドウ用開口部、110…サイドアウタパネル、112…後側フランジ部、116…側壁部、118…ヒンジ取付部、122…後壁部、125…前側傾斜部、126、127…外側ヒンジ取付部、132、134…フランジ部、140…リンフォース膨出部、142…傾斜部、144…アウタ膨出部、146…延長部、150…前側ピラー部材、151…下端部、152…後側ピラー部材、152a…上側部材、152b…下側部材、156…補強部材、158…前縁、160…シーラ、162…ピラー接合部、164…前側凹部、166…後部、168…シーラ、170…シーラ、172…後側凹部、174…中間部
図1
図2
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図5
図6
図7
図8