(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000141
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】内径測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/12 20060101AFI20221222BHJP
G01B 21/14 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
G01B11/12 Z
G01B21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100782
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 伸一
【テーマコード(参考)】
2F065
2F069
【Fターム(参考)】
2F065AA27
2F065BB08
2F065DD03
2F065FF41
2F065FF65
2F065GG04
2F065HH04
2F065HH13
2F065LL01
2F065LL13
2F065MM16
2F065PP22
2F069AA40
2F069CC01
2F069DD19
2F069DD25
2F069GG04
2F069GG07
2F069GG09
2F069GG51
2F069GG62
2F069HH09
2F069HH15
2F069JJ10
2F069MM04
(57)【要約】
【課題】同一の軸方向位置にて全周にわたり高精度で内径の測定が可能な内径測定装置を提供する。
【解決手段】内径測定装置は、ストッパ部10と、内径測定部40とを備えている。ストッパ部10は、被測定物100の内周面101に接触して、内周面101の軸方向における内径測定装置の位置を決める。内径測定部40は、被測定物100の内径を測定する。内径測定部40は、ストッパ部10に対して内周面101の軸方向に相対移動不能に構成されている。かつ、内径測定部40は、ストッパ部10とは独立して内周面101の周方向に回転可能に構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の内周面を有する被測定物の内径を測定する内径測定装置において、
前記内周面に接触して前記内周面の軸方向における前記内径測定装置の位置を決めるストッパ部と、
前記ストッパ部に対して前記軸方向に相対移動不能かつ前記ストッパ部とは独立して前記内周面の周方向に回転可能に構成され、前記内径を測定する内径測定部と、を備える、内径測定装置。
【請求項2】
前記内径測定部は、非接触式の距離測定器を有する、請求項1に記載の内径測定装置。
【請求項3】
前記距離測定器は、レーザ光を射出するレーザ変位計と、前記レーザ光を直角に反射して前記内周面に到達させる直角ミラーとを有する、請求項2に記載の内径測定装置。
【請求項4】
前記内径測定部は、前記内周面の径方向における前記距離測定器の位置ずれを抑制するガイド部を有し、
前記ガイド部は、前記軸方向において、前記ストッパ部との間に前記距離測定器を挟んで配置される、請求項2または請求項3に記載の内径測定装置。
【請求項5】
前記ガイド部は、前記内周面に接触する押圧部材と、前記押圧部材を前記内周面に向けて付勢する付勢部材とを有する、請求項4に記載の内径測定装置。
【請求項6】
前記内周面に対する前記内径測定部の前記周方向の回転角度を検出するエンコーダをさらに備える、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の内径測定装置。
【請求項7】
前記被測定物の外部に配置される測定部操作ハンドルをさらに備え、
前記測定部操作ハンドルを回転操作することにより、前記内径測定部が前記周方向に回転移動する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の内径測定装置。
【請求項8】
前記ストッパ部は、テーパ面を有するテーパシャフトと、前記テーパ面に接触するストッパ本体とを有し、
前記テーパ面の前記軸方向の移動に伴って前記ストッパ本体が前記内周面の径方向に移動する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の内径測定装置。
【請求項9】
前記被測定物の外部に配置されるストッパ操作ハンドルをさらに備え、
前記ストッパ操作ハンドルを回転操作することにより、前記テーパシャフトが前記軸方向に移動する、請求項8に記載の内径測定装置。
【請求項10】
前記ストッパ操作ハンドルの回転を前記テーパシャフトの前記軸方向の移動に変換する動力変換機構をさらに備える、請求項9に記載の内径測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内径測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011-38814号公報(特許文献1)には、管路内径測定装置が開示されている。上記文献に記載の管路内径測定装置は、躯体部と、弾性力発生手段とを備えている。躯体部は、管路の内径を計測可能な内径計測手段を保持し管路内を走行する装置本体部を有している。装置本体部は、内径計測手段を内径の計測が可能な状態で保持している。弾性力発生手段は、躯体部に、管路内への導入状態にて、管路の周方向に等間隔に位置するように複数個固定され、それぞれ管路の内壁に押圧当接されて弾性変形し、躯体部をその中心位置が管路の中心位置と略一致するように支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載の装置では、弾性体によって装置が保持されており、装置の移動を完全に抑制する手段がない。同一の軸方向位置にて周方向に装置を回転させようとした場合、軸方向の位置がずれる可能性があり、正確に同一の軸方向位置での内径の測定が困難となっている。
【0005】
本開示では、同一の軸方向位置にて全周にわたり高精度で内径の測定が可能な、内径測定装置が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、円筒状の内周面を有する被測定物の内径を測定する、内径測定装置が提案される。内径測定装置は、ストッパ部と、内径測定部とを備えている。ストッパ部は、被測定物の内周面に接触して、内周面の軸方向における内径測定装置の位置を決める。内径測定部は、被測定物の内径を測定する。内径測定部は、ストッパ部に対して内周面の軸方向に相対移動不能に構成されている。かつ、内径測定部は、ストッパ部とは独立して内周面の周方向に回転可能に構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に従った内径測定装置によると、同一の軸方向位置にて全周にわたり高精度で内径を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】内径測定装置の異なる角度からの斜視図である。
【
図4】被測定物の内部に配置された内径測定装置の断面図である。
【
図5】ストッパ操作ハンドルおよび測定部操作ハンドルの断面図である。
【
図6】テーパシャフト移動前のストッパ本体の配置を示す断面図である。
【
図7】テーパシャフト移動後のストッパ本体の配置を示す断面図である。
【
図8】ガイド部の構成を示す内径測定装置の断面図である。
【
図9】電動モータおよび測定部操作ハンドルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。
【0010】
図1は、実施形態に係る内径測定装置1の斜視図である。
図2は、
図1に示される内径測定装置1の異なる角度からの斜視図である。
図3は、
図1に示される内径測定装置1の側面図である。
図4は、被測定物100の内部に配置された内径測定装置1の断面図である。
【0011】
内径測定装置1は、
図4に示される被測定物100の内径を測定するための装置である。被測定物100は、内周面101を有している。内周面101は、円筒状である。被測定物100は、たとえば中空円筒状の形状を有している。被測定物100は、たとえば管路である。
【0012】
内径測定装置1は、被測定物100の内部に配置可能である。内径測定装置1がその内部に配置される被測定物100の、円筒状の内周面101の軸方向、周方向および径方向を、実施形態において内径測定装置1の各構成要素の位置関係および動作を説明するための各方向として用いる。
図3,4においては、図中の左右方向が軸方向である。径方向は、軸方向に直交する方向である。
図3,4中の上下方向は径方向である。
【0013】
図1~
図4に示されるように、内径測定装置1は、ストッパ部10と、内径測定部40とを主に備えている。
【0014】
ストッパ部10は、保持部材11と、3つのストッパ本体14A,14B,14Cとを有している。保持部材11には、
図4に示される、径方向に延びる径方向収容穴11Bが3箇所に形成されている。3つの径方向収容穴11Bは、周方向に等間隔に配置されている。3つのストッパ本体14A,14B,14Cは、各々、径方向収容穴11Bに収容されて、保持部材11に保持されている。
【0015】
保持部材11は、内径測定装置1の前方(
図3,4においては図中の左方)から見て略円形状の形状を有している。保持部材11には、周方向に等間隔に配置され径方向に延びる3つの長孔13A,13B,13Cが形成されている。
【0016】
長孔13Aには保持ボルト12Aが挿通されている。保持ボルト12Aはストッパ本体14Aにねじ作用で嵌め合わされている。保持ボルト12Aとストッパ本体14Aとは一体的に、保持部材11に対して径方向に相対移動可能である。径方向に延びる長孔13A内に保持ボルト12Aが配置されており、ストッパ本体14Aは長孔13Aの延びる方向に往復移動可能とされている。
【0017】
同様に、長孔13B,13Cには保持ボルト12B,12Cがそれぞれ挿通されている。保持ボルト12B,12Cは、ストッパ本体14B,14Cに、それぞれ嵌め合わされている。保持ボルト12Bとストッパ本体14Bとは一体的に、保持部材11に対して径方向に相対移動可能である。保持ボルト12Cとストッパ本体14Cとは一体的に、保持部材11に対して径方向に相対移動可能である。
【0018】
ストッパ本体14Aは、径方向の最外周に押圧面15Aを有している。ストッパ本体14Bは、径方向の最外周に押圧面15Bを有している。ストッパ本体14Cは、径方向の最外周に押圧面15Cを有している。ストッパ本体14Aは、
図4に示されるように、径方向の最内側にテーパ面16Aを有している。ストッパ本体14B,14Cも同様に、径方向の最内側にテーパ面を有している。
【0019】
ストッパ部10を操作するためのストッパ操作ロッド20が、内径測定装置1の径方向の中心位置に設置されている。ストッパ操作ロッド20は、軸方向に延びている。ストッパ操作ロッド20の第一端に、有底の嵌合穴21が形成されている。嵌合穴21の内周面は、雌ねじ面22として形成されている。
【0020】
ストッパ部10は、テーパシャフト24をさらに有している。テーパシャフト24は、内径測定装置1の径方向の中心位置に設置されている。テーパシャフト24は、テーパ部25と、軸部27とを有している。保持部材11には径方向の中心部に軸方向収容穴11Aが形成されており、テーパ部25はこの軸方向収容穴11Aに収容されている。テーパ部25は、その外周面にテーパ面26を有している。ストッパ本体14Aのテーパ面16Aが、テーパシャフト24のテーパ面26に接触している。軸部27の少なくとも一部が、嵌合穴21の内部に配置されている。軸部27の外周面は、雄ねじ面28として形成されている。軸部27の雄ねじ面28は、嵌合穴21の雌ねじ面22と噛み合っている。
【0021】
ストッパ操作ロッド20の第二端は、被測定物100の外部に配置されている。
図5は、ストッパ操作ハンドル23および測定部操作ハンドル73の断面図である。
図5に示されるように、ストッパ操作ロッド20の第二端に、ストッパ操作ハンドル23が取り付けられている。ストッパ操作ハンドル23は、被測定物100の外部に配置されている。
【0022】
ストッパ操作ロッド20の外周面に、軸受32,33の内輪が固定されている。軸受31,32,33の外輪は、内径測定部40に固定されている。軸受31の内輪は、ストッパ部10に固定されている。ストッパ部10と内径測定部40とは、軸受31を介して連結されている。これにより内径測定部40は、ストッパ部10とは独立して周方向に回転可能に構成されている。
【0023】
内径測定部40は、ストッパ部10に対して軸方向に相対移動不能に構成されている。内径測定部40は、レーザ変位計41A,41Bと、直角ミラー42A,42Bとを有している。レーザ変位計41Aと直角ミラー42Aとは、軸方向に間隔を空けて、互いに向き合って配置されている。レーザ変位計41Bと直角ミラー42Bとは、軸方向に間隔を空けて、互いに向き合って配置されている。レーザ変位計41A,41Bと、直角ミラー42A,42Bとは、非接触式の距離測定器を構成している。
【0024】
レーザ変位計41Aは、直角ミラー42Aに向けてレーザ光を軸方向に射出する。直角ミラー42Aは、レーザ光を直角に反射して径方向外側にレーザ光を向けて、被測定物100の内周面101にレーザ光を到達させる。内周面101で反射して戻る反射レーザ光を、直角ミラー42Aで再び直角に反射して、レーザ変位計41Aが検知する。レーザ光が到達した距離が検出され、検出されたレーザ光到達距離のデータから被測定物100の内径が測定される。レーザ変位計41Bと直角ミラー42Bとによっても同様に、被測定物100の内径が測定される。
【0025】
一対の直角ミラー42A,42Bは、ミラー保持部43によって保持されている。ミラー保持部43は略平板状の形状を有しており、ミラー保持部43の一方の表面に直角ミラー42Aが固定され、ミラー保持部43の他方の表面に直角ミラー42Bが固定されている。
【0026】
レーザ変位計41Aは、変位計保持部45Aによって保持されている。変位計保持部45Aは、直角ミラー42Aが固定されているミラー保持部43の一方の表面に固定されている。レーザ変位計41Bは、変位計保持部45Bによって保持されている。変位計保持部45Bは、直角ミラー42Bが固定されているミラー保持部43の他方の表面に固定されている。レーザ変位計41A,41Bと直角ミラー42A,42Bとは、ミラー保持部43および変位計保持部45A,45Bを介して、一体の構造物を構成している。
【0027】
レーザ変位計41Aに、レーザ伝送路44Aが接続されている。レーザ変位計41Aから射出されるレーザ光は、図示しないレーザ光源からレーザ伝送路44Aを経由してレーザ変位計41Aに伝送される。レーザ変位計41Bに、レーザ伝送路44Bが接続されている。レーザ変位計41Bから射出されるレーザ光は、図示しないレーザ光源からレーザ伝送路44Bを経由してレーザ変位計41Bに伝送される。
【0028】
図4,5に示されるように、ストッパ操作ロッド20の径方向外側に、測定部操作ロッド70が配置されている。測定部操作ロッド70は中空に形成されており、測定部操作ロッド70の内部の中空空間にストッパ操作ロッド20が収容されている。ストッパ操作ロッド20と測定部操作ロッド70とは、互いに非接触に配置されている。測定部操作ロッド70は、軸方向に延びている。
【0029】
測定部操作ロッド70の第一端付近に、板部材62が固定されている。板部材62は軸方向に直交して延びる平板状の概略形状を有している。板部材62に、軸方向に延びる複数の柱部材63が固定されている。柱部材63は、板部材62に固定されている一端と、板部材61に固定されている他端とを有している。板部材61は、板部材62と平行に配置されている。板部材61は、板部材62よりも内径測定装置1の前方に、板部材62から軸方向に離れて、ミラー保持部43に固定されている。板部材61と板部材62とは、複数の柱部材63によって、一体に連結されている。
【0030】
板部材61と板部材62との間に、エンコーダ46が配置されている。エンコーダ46は、被測定物100の内周面101に対する、内径測定部40の周方向の回転角度を検出する。
【0031】
測定部操作ロッド70の第二端は、被測定物100の外部に配置されている。
図5に示されるように、測定部操作ロッド70の第二端に、測定部操作ハンドル73が取り付けられている。測定部操作ハンドル73は、被測定物100の外部に配置されている。
【0032】
図6は、テーパシャフト24移動前のストッパ本体14Aの配置を示す断面図である。テーパシャフト24のテーパ部25は、前方に向かうにつれて先細る形状を有している。
図6に示されるテーパシャフト24は、軸部27の全体が嵌合穴21の内部に配置されており、テーパ部25の先端の小径の部分がストッパ本体14Aのテーパ面16Aに接触している。このとき、ストッパ本体14Aの押圧面15Aは、被測定物100の内周面101から離れている。押圧面15Aは内周面101に接触しておらず、内径測定装置1は被測定物100に対して自在に軸方向の移動が可能である。
【0033】
この状態で、内径測定装置1を用いて被測定物100の内径を測定しようとするオペレータが、測定部操作ハンドル73を軸方向に移動させることで、内径測定装置1の全体を軸方向に移動させることが可能である。ストッパ部10と内径測定部40との軸方向の相対位置は決まっているので、測定部操作ハンドル73の軸方向への操作によって、ストッパ部10と内径測定部40との両方を一体として軸方向に動かすことができる。
【0034】
図7は、テーパシャフト24移動後のストッパ本体14Aの配置を示す断面図である。オペレータが、ストッパ操作ハンドル23(
図5)を回転操作することにより、ストッパ操作ハンドル23と一体にストッパ操作ロッド20が回転する。ストッパ操作ロッド20に形成されている雌ねじ面22と、テーパシャフト24の雄ねじ面28とが噛み合っていることにより、ストッパ操作ロッド20が回転すると、テーパシャフト24が軸方向に移動する。
【0035】
ストッパ操作ロッド20の雌ねじ面22と、テーパシャフト24の雄ねじ面28とは、ストッパ操作ハンドル23の回転をテーパシャフト24の軸方向の移動に変換する動力変換機構を構成している。
【0036】
テーパシャフト24が前方(
図7においては図中の左方)へ移動することで、ストッパ本体14Aのテーパ面16Aが、テーパ部25のより大径の部分に接触するようになる。ストッパ本体14Aは、テーパシャフト24によって径方向に押されて、径方向外側へ移動する。他の2つのストッパ本体14B,14Cも同様に、テーパシャフト24のテーパ面26の軸方向の移動に伴って、径方向外側へ移動する。
【0037】
各ストッパ本体14A~14Cが保持部材11に対して径方向外側に相対移動することで、各押圧面15A~15Cが被測定物100の内周面101に接触する。各押圧面15A~15Cが内周面101に押し付けられることで、押圧面15A~15Cと内周面101との間に摩擦力が発生する。この摩擦力により、ストッパ部10は、被測定物100に対し固定される。内径測定部40はストッパ部10に対し周方向に独立して回転可能、かつ軸方向の相対移動は不可となる構造のため、軸方向における内径測定装置1の位置決めが達成される。
【0038】
3つのストッパ本体14A~14Cが周方向に等間隔に配置されており、かつ、3つのストッパ本体14A~14Cが1つのテーパシャフト24によって径方向外側へスライド移動して均等に内周面101に押されるため、内径測定装置1の中心と被測定物100の中心とを正確に合わせることができる。
【0039】
ストッパ部10が内周面101に接触して、軸方向における内径測定装置1の位置が決められた状態で、オペレータが測定部操作ハンドル73(
図5)を回転操作することにより、内径測定部40はストッパ部10とは独立して周方向に回転移動する。レーザ変位計41A,41Bから射出されるレーザ光が、周方向の全周に亘って内周面101を走査する。これにより、同一の軸方向位置にて、全周にわたり高精度で内径の測定がなされる。
【0040】
一つの軸方向位置で被測定物100の内径が測定された後、オペレータがストッパ操作ハンドル23を逆方向に回転操作する。テーパシャフト24が軸方向に後方へ移動し、ストッパ本体14A~14Cが径方向内側へ移動して、押圧面15A~15Cが内周面101から離隔する。これにより、ストッパ部10による内径測定装置1の軸方向の位置の固定が解除される。この状態でオペレータが、測定部操作ハンドル73を軸方向に移動させることで、内径測定装置1の全体を軸方向に移動させて、別の軸方向位置での内径の測定をしたり、内径測定装置1を被測定物100の外部へ取り出したりすることが可能である。
【0041】
図1~4を再び参照して、内径測定部40は、ガイド部50をさらに有している。軸方向において、ガイド部50とストッパ部10との間に、距離測定器、すなわちレーザ変位計41A,41Bと直角ミラー42A,42Bとが配置されている。
【0042】
図8は、ガイド部50の構成を示す内径測定装置1の断面図である。
図8に示されるように、ガイド部50は、3つの押圧部材51A,51B,51Cと、保持部53とを有している。押圧部材51Aは、径方向の最外周に摺動面52Aを有している。押圧部材51Bは、径方向の最外周に摺動面52Bを有している。押圧部材51Cは、径方向の最外周に摺動面52Cを有している。
【0043】
保持部53には、径方向に延びる収容穴54A,54B,54Cが3箇所に形成されている。収容穴54A,54B,54Cは、周方向に等間隔に配置されている。押圧部材51A,51B,51Cの根元部分は、各々、収容穴54A,54B,54C内に配置されている。収容穴54A内にはまた、付勢部材55Aが収容されている。収容穴54B内にはまた、付勢部材55Bが収容されている。収容穴54C内にはまた、付勢部材55Cが収容されている。付勢部材55A~55Cは、たとえばコイルばねである。
【0044】
付勢部材55Aは、押圧部材51Aを径方向の外側へ付勢する。押圧部材51Aが付勢部材55Aの付勢力によって内周面101に向けて付勢されることで、摺動面52Aが内周面101に接触する。押圧部材51B,51Cの摺動面52B,52Cもまた、付勢部材55B,55Cによってそれぞれ付勢されることで、内周面101に接触する。
【0045】
距離測定器の前方でストッパ部10が径方向における距離測定器の位置ずれを抑制し、距離測定器の後方でガイド部50が径方向における距離測定器の位置ずれを抑制している。これにより、距離測定器がより正確に位置決めされて、被測定物100の内径をより精度よく測定することが可能になっている。
【0046】
付勢部材55A~55Cの付勢力を、摺動面52A~52Cの内周面101に対する摺動を阻害しないが各押圧部材51A~51Cを均等に内周面101に押し付けられる程度に適切に設定することで、ガイド部50による支持と、内径測定部40の軸方向および周方向への自由な移動とを、両立することができる。
【0047】
図9は、電動モータ83および測定部操作ハンドル73の断面図である。上記の説明では、
図5を参照して、ストッパ操作ロッド20の第二端にストッパ操作ハンドル23が取り付けられており、オペレータが手動でストッパ操作ハンドル23を回転操作することによりストッパ部10による内径測定装置1の固定と固定の解除とがなされた。ストッパ操作ハンドル23に替えて、
図9に示されるように、電動モータ83がストッパ操作ロッド20の第二端に取り付けられてもよい。
【0048】
電動モータ83の駆動力でストッパ操作ロッド20を回転させることにより、上記の説明と同様に、テーパシャフト24を軸方向に移動させ、ストッパ部10のストッパ本体14A~14Cを径方向に移動させることができる。これにより、ストッパ部10による内径測定装置1の固定、および固定の解除を、電動モータ83を駆動させるためのスイッチ操作などの、より簡単な操作で実現することができる。
【0049】
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本開示の実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0050】
内径測定装置1は、
図1~4に示されるように、ストッパ部10と、内径測定部40とを備えている。ストッパ部10は、被測定物100の内周面101に接触して、軸方向における内径測定装置1の位置を決める。内径測定部40は、被測定物100の内径を測定する。内径測定部40は、ストッパ部10に対して軸方向に相対移動不能に構成されている。かつ、内径測定部40は、ストッパ部10とは独立して周方向に回転可能に構成されている。
【0051】
ストッパ部10が内径測定装置1全体の軸方向の移動を強固に抑制でき、かつ、内径測定部40がストッパ部10とは独立して周方向に容易に回転できる構造が実現されている。これにより、内径測定装置1は、正確に同一の軸方向位置にて、全周に亘り、連続的に被測定物100の内径を測定することができる。
【0052】
図3,4に示されるように、内径測定部40は、非接触式の距離測定器を有していてもよい。非接触式の距離測定器を用いて内径を測定することで、被測定物100の内径の変化にも容易に追従でき、被測定物100の内径を精度よく測定することができる。
【0053】
図3,4に示されるように、内径測定部40は、レーザ光を射出するレーザ変位計41A,41Bと、レーザ光を直角に反射して内周面101に到達させる直角ミラー42A,42Bとを有していてもよい。レーザ変位計41A,41Bと直角ミラー42A,42Bとによって非接触式の距離測定器を構成して、被測定物100の内径を精度よく測定することができる。
【0054】
距離測定器は、レーザ光を用いて距離を測定するものに限られず、たとえば超音波式など、別の仕様の非接触式の距離測定器であってもよい。また、距離測定器は、非接触式に限られず、接触式であってもよい。
【0055】
図1~4に示されるように、内径測定部40は、ガイド部50を有していてもよい。ガイド部50は、軸方向において、ストッパ部10との間に距離測定器を挟んで配置されていてもよい。ストッパ部10とガイド部50とによって距離測定器を挟むように、軸方向においてストッパ部10、距離測定器、およびガイド部50をこの順に並べて配置する。これにより、径方向における距離測定器の位置ずれを抑制することができるので、被測定物100の内径の測定精度を向上することができる。
【0056】
図8に示されるように、ガイド部50は、押圧部材51A~51Cと、付勢部材55A~55Cを有していてもよい。付勢部材55A~55Cが押圧部材51A~51Cを、それぞれ内周面101に向けて付勢する。これにより押圧部材51A~51Cは、内周面101に接触する。このようにすることで、ガイド部50は、径方向における距離測定器の位置ずれを確実に抑制することができる。
【0057】
図1~4に示されるように、内径測定装置1は、エンコーダ46をさらに備えていてもよい。エンコーダ46によって、内周面101に対する内径測定部40の周方向の回転角度を正確に検出できるように構成されているので、内径測定装置1は、全周に亘って連続的に被測定物100の内径を測定することができる。
【0058】
図5に示されるように、内径測定装置1は、測定部操作ハンドル73をさらに備えていてもよい。測定部操作ハンドル73は、被測定物100の外部に配置されている。測定部操作ハンドル73を回転操作することにより、内径測定部40が周方向に回転移動する。このように内径測定部40を回転させることで、内径測定装置1は、全周に亘って連続的に被測定物100の内径を測定することができる。
【0059】
内径測定部40を回転させる回転駆動部は、測定部操作ハンドル73に限られず、測定部操作ロッド70の第二端に電動モータが取り付けられてもよい。
【0060】
図6,7に示されるように、ストッパ部10は、テーパ面26を有するテーパシャフト24と、テーパ面26に接触するストッパ本体14Aとを有し、テーパ面26の軸方向の移動に伴ってストッパ本体14Aが径方向に移動してもよい。ストッパ本体14Aを径方向外側へ移動させて、ストッパ本体14Aの押圧面15Aを内周面101に接触させることで、ストッパ部10による軸方向における内径測定装置1の位置決めを実現できる。ストッパ本体14Aを径方向内側へ移動させて押圧面15Aを内周面101から離すことで、ストッパ部10による内径測定装置1の固定を解除して、内径測定装置1を軸方向に移動可能にすることができる。
【0061】
図5に示されるように、内径測定装置1は、ストッパ操作ハンドル23をさらに備えていてもよい。ストッパ操作ハンドル23は、被測定物100の外部に配置されている。
図4,6~7に示されるように、ストッパ操作ハンドル23を回転操作することにより、テーパシャフト24が軸方向に移動する。被測定物100の外部からのストッパ操作ハンドル23の操作によって、テーパシャフト24を軸方向に移動させ、ストッパ本体14Aと接触する部分のテーパシャフト24の径を変化させる。これにより、ストッパ本体14Aを径方向にスライド移動させて、内径測定装置1の軸方向位置を固定し、または固定を解除することができる。
【0062】
図6,7に示されるように、ストッパ操作ロッド20は、雌ねじ面22を有している。テーパシャフト24は、雄ねじ面28を有している。互いに噛み合う雌ねじ面22と雄ねじ面28とは、動力変換機構を構成している。ストッパ操作ハンドル23を回転操作させて、ストッパ操作ロッド20をストッパ操作ハンドル23と一体回転させることができ、このとき雌ねじ面22が軸方向の位置を変えずに回転する。雌ねじ面22と噛み合っている雄ねじ面28が、軸方向に移動する。雄ねじ面28を有しているテーパシャフト24が、軸方向に移動する。このように、ストッパ操作ハンドル23の回転をテーパシャフト24の軸方向の移動に変換する動力変換機構を利用することで、ストッパ部10による内径測定装置1の軸方向の固定と固定の解除との操作を容易に行うことができる。
【0063】
被測定物100に合わせてストッパ操作ロッド20の軸方向の長さを適切に選定することで、被測定物100の軸方向の長さが大きい場合にも、ストッパ操作ハンドル23を回転操作することによる内径測定装置1の軸方向の固定および固定の解除に、容易に対応可能となる。
【0064】
以上のように実施形態について説明を行ったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 内径測定装置、10 ストッパ部、11 保持部材、11A 軸方向収容穴、11B 径方向収容穴、12A,12B,12C 保持ボルト、13A,13B,13C 長孔、14A,14B,14C ストッパ本体、15A,15B,15C 押圧面、16A,26 テーパ面、20 ストッパ操作ロッド、21 嵌合穴、22 雌ねじ面、23 ストッパ操作ハンドル、24 テーパシャフト、25 テーパ部、27 軸部、28 雄ねじ面、31,32,33 軸受、40 内径測定部、41A,41B レーザ変位計、42A,42B 直角ミラー、43 ミラー保持部、44A,44B レーザ伝送路、45A,45B 変位計保持部、46 エンコーダ、50 ガイド部、51A,51B,51C 押圧部材、52A,52B,52C 摺動面、53 保持部、54A,54B,54C 収容穴、55A,55B,55C 付勢部材、61,62 板部材、63 柱部材、70 測定部操作ロッド、73 測定部操作ハンドル、83 電動モータ、100 被測定物、101 内周面。