(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141012
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】絶縁体、固定子および電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/34 20060101AFI20230928BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H02K3/34 C
H02K1/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047124
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 将広
(72)【発明者】
【氏名】真野 鐘治
(72)【発明者】
【氏名】堀 敬
【テーマコード(参考)】
5H601
5H604
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601DD01
5H601DD11
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB32
5H601GD02
5H601GD07
5H601GD17
5H601JJ06
5H604AA08
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC13
5H604DB01
5H604PB03
(57)【要約】
【課題】絶縁部材を、隣接するティースに装着された絶縁体それぞれの凹部内に容易に配置することができる技術を提供する。
【解決手段】ティース211に装着される絶縁体300は、第1鍔部400、第2鍔部500、胴部600を有している。第1鍔部400の外周面400Aには、貫通孔610の開口部610aより周方向一方側および周方向他方側に第1凹部450および第2凹部460が形成されている。第1凹部450は、径方向外側、周方向一方側および軸方向他方側が開口している。第2凹部460は、径方向外側、周方向他方側および軸方向他方側が開口している。第1鍔部400は、側面403に、周方向一方側に突出する突部403Aが形成されているとともに、側面404に、周方向他方側に突出する突部404Aが形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に離間して設けられ、軸方向および径方向に延在する複数のティースそれぞれに装着される絶縁体であって、
前記軸方向および前記周方向に延在する第1鍔部と、前記第1鍔部より径方向内側に配置され、前記軸方向および前記周方向に延在する第2鍔部と、前記第1鍔部と前記第2鍔部との間に設けられ、前記径方向に延在する胴部と、を有し、
前記第1鍔部は、径方向外側に第1外周面、前記径方向内側に第1内周面、周方向一方側に第1側面、周方向他方側に第2側面、軸方向一方側に第1端面、軸方向他方側に第2端面を有し、
前記第2鍔部は、径方向外側に第2外周面、前記径方向内側に第2内周面、周方向一方側に第3側面、周方向他方側に第4側面、軸方向一方側に第3端面、軸方向他方側に第4端面を有し、
前記胴部は、前記第1鍔部の前記第1外周面および前記第2鍔部の前記第2内周面に開口している貫通孔を有し、
前記第1鍔部は、前記第1外周面の、前記貫通孔より前記周方向一方側および前記周方向他方側に、前記径方向内側に窪んでいる第1凹部および第2凹部が形成されており、
前記第1凹部は、前記軸方向および前記周方向に延在しているととともに、前記径方向外側、前記周方向一方側および前記軸方向他方側が開口し、
前記第2凹部は、前記軸方向および前記周方向に延在しているととともに、前記径方向外側、前記周方向他方側および前記軸方向他方側が開口していることを特徴とする絶縁体。
【請求項2】
請求項1に記載の絶縁体であって、
前記第1鍔部は、前記第1側面の、前記貫通孔より前記軸方向他方側の個所に、前記周方向一方側に突出する第1突部が形成されているとともに、前記第2側面の、前記貫通孔より前記軸方向他方側の個所に、前記周方向他方側に突出する第2突部が形成されていることを特徴とする絶縁体。
【請求項3】
請求項2に記載の絶縁体であって、
前記第1突部は、前記軸方向一方側に、前記第1側面に連設し、前記径方向および前記周方向に延在する端面が形成され、
前記第2突部は、前記軸方向一方側に、前記第2側面に連設し、前記径方向および前記周方向に延在する端面が形成されていることを特徴とする絶縁体。
【請求項4】
請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の絶縁体であって、
前記第1凹部は、前記軸方向および前記周方向に延在する第1底面と、前記第1底面の、前記軸方向一方側の端部に連設し、前記周方向および前記径方向に延在する第1壁面と、前記第1底面の、前記周方向他方側の端部に連設し、前記軸方向および前記径方向に延在する第2壁面とによって形成され、
前記第2凹部は、前記軸方向および前記周方向に延在する第2底面と、前記第2底面の、前記軸方向一方側の端部に連設し、前記周方向および前記径方向に延在する第3壁面と、前記第2底面の、前記周方向一方側の端部に連設し、前記軸方向および前記径方向に延在する第4壁面とによって形成されていることを特徴とする絶縁体。
【請求項5】
請求項4に記載の絶縁体であって、
前記第1鍔部は、前記第1外周面の、前記貫通孔より前記周方向一方側で前記軸方向一方側の領域に、前記径方向外側に突出する第3突部が形成されているとともに、前記第1外周面の、前記貫通孔より前記周方向他方側で前記軸方向一方側の領域に、前記径方向外側に突出する第4突部が形成されており、
前記第1凹部の前記第1壁面および前記第2壁面の少なくとも一部が、前記第3突部の外壁面によって形成され、
前記第2凹部の前記第3壁面および前記第4壁面の少なくとも一部が、前記第4突部の外壁面によって形成されていることを特徴とする絶縁体。
【請求項6】
請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の絶縁体であって、
前記第2鍔部は、前記第3端面から前記軸方向一方側に突出する第5突部を有し、
前記第5突部は、前記径方向内側に突出する第6突部を有し、
さらに、前記第2鍔部は、前記貫通孔と前記第6突部との間に、前記第2鍔部の前記第2内周面より前記径方向内側に突出しているととともに、径方向および周方向に延在する第7突部を有していることを特徴とする絶縁体。
【請求項7】
固定子コアと、複数の絶縁体と、固定子巻線と、複数の絶縁部材と、を備え、
前記固定子コアは、軸方向および周方向に延在するヨークと、前記ヨークの径方向内側に周方向に離間して設けられ、前記軸方向および径方向に延在する複数のティースと、を有し、
前記各絶縁体は、前記各ティースに装着され、
前記固定子巻線は、前記各絶縁体に巻き付けられ、
前記各絶縁部材は、周方向に隣接する2つの絶縁体と前記固定子コアの前記ヨークとの間に、当該2つの絶縁体に跨って配置される固定子であって、
前記絶縁体として、請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の絶縁体が用いられ、
前記絶縁部材は、周方向一方側に、軸方向および周方向に延在する第1端部を有しているとともに、周方向他方側に、軸方向および周方向に延在する第2端部を有し、
前記絶縁部材の前記第1端部は、前記2つの絶縁体のうちの周方向一方側に配置されている絶縁体の前記第1鍔部に形成されている前記第2凹部内に配置され、前記絶縁部材の前記第2端部は、前記2つの絶縁体のうちの周方向他方側に配置されている絶縁体の前記第1鍔部に形成されている前記第1凹部内に配置されることを特徴とする固定子。
【請求項8】
請求項7に記載の固定子であって、
前記絶縁部材は、前記第1端部と前記第2端部の間に、前記軸方向および前記径方向に延在する中央部を有し、
前記絶縁部材の前記中央部は、前記周方向一方側に配置されている絶縁体の前記第1鍔部の前記第2側面と、前記周方向他方側に配置されている絶縁体の前記第1鍔部の前記第1側面との間に配置されていることを特徴とする固定子。
【請求項9】
請求項7または8に記載の固定子であって、
前記固定子コアは、前記複数のティースを有する第1コア部材と、前記ヨークを有する第2コア部材により構成されていることを特徴とする固定子。
【請求項10】
固定子と、前記固定子に対して相対的に回転可能な回転子を備える電動機であって、
前記固定子として請求項7~9のうちのいずれか一項に記載の固定子が用いられていることを特徴とする電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子コアのティースに装着される絶縁体、固定子コアのティースに装着された絶縁体を備える固定子および電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機駆動電動機、車両駆動電動機、車載機器駆動電動機等として、固定子と回転子を備える種々の電動機が用いられている。特に、固定子を構成する固定子コアのティースに固定子巻線が集中巻き方式で巻き付けられている電動機(「集中巻き電動機」と呼ばれている)が用いられている。集中巻き電動機では、固定子巻線は、絶縁体(電気絶縁体)を介してティースに巻き付けられる。
また、このような集中巻き電動機において、固定子巻線の巻数を増加させる(すなわち、スロット内の固定子巻線の占積率を高める)ために、分割構造の固定子コアを備える電動機が提案されている。分割構造の固定子コアは、固定子コアを分割した複数の分割コアにより構成される。
【0003】
分割構造の固定子コアを用いた電動機は、例えば、特許文献1、2に開示されている。
特許文献1、2に開示されている電動機は、固定子コアと、複数の絶縁体と、固定子巻線と、複数の絶縁部材と、により構成されている。
固定子コアは、複数のティースを有する第1コア部材と、ヨークを有する第2コア部材により構成されている。
第1コア部材のティースには、絶縁体が装着される。絶縁体には、固定子巻線が巻き付けられる。絶縁体によって、固定子巻線とティースが絶縁される。
絶縁体は、第1鍔部と、第2鍔部と、胴部と、を有している。第1鍔部と第2鍔部は、軸方向および周方向に延在している。第2鍔部は、第1鍔部より径方向内側に配置されている。胴部は、第1鍔部と第2鍔部の間に設けられ、径方向に延在している。胴部には、第1鍔部の外周面と第2鍔部の内周面に開口し、ティースが挿入される貫通孔が形成されている。
第1鍔部の外周面には、貫通孔より周方向一方側(周方向第1側)および周方向他方側(周方向第2側)に第1凹部および第2凹部が形成されている。第1凹部は、径方向外側および周方向一方側が開口している。すなわち、第1凹部は、軸方向および周方向に延在する底面と、底面の軸方向一方側(軸方向第1側)、軸方向他方側(軸方向第2側)および周方向他方側(周方向第2側)それぞれに接続されている壁面とによって形成されている。第2凹部は、径方向外側および周方向他方側が開口している。すなわち、第2凹部は、軸方向および周方向に延在する底面と、底面の軸方向一方側、軸方向他方側および周方向一方側それぞれに接続されている壁面とによって形成されている。
第1コア部材の各ティースに絶縁体が装着された状態で、第1コア部材と第2コア部材を組み付けることにより、固定子コアが構成される。
絶縁部材は、周方向一方側および周方向他方側に、軸方向および周方向に延在する第1端部および第2端部を有している。
絶縁部材は、周方向に隣接する2つの絶縁体と固定子コアのヨークとの間に、当該隣接する2つの絶縁体に跨って配置される。すなわち、絶縁部材は、周方向に隣接する2つの絶縁体と固定子コアのヨークとの間の隙間に挿入される。そして、第1端部が、周方向一方側に配置されている絶縁体の第2凹部内に配置され、第2端部が、周方向他方側に配置されている絶縁体の第1凹部内に配置される。絶縁部材によって、固定子巻線と固定子コアのヨークが絶縁される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-153056号公報
【特許文献2】特開2018-153057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に開示されている絶縁体では、第1鍔部に形成されている第1凹部と第2凹部は、軸方向一方側および軸方向他方側が開口していない。すなわち、第1凹部と第2凹部は、軸方向一方側および軸方向他方側に壁面を有している。このため、絶縁部材を、周方向に隣接する2つの絶縁体と固定子コアのヨークとの間の隙間に挿入する際に、第1端部を、周方向一方側に配置されている絶縁体の第2凹部内に配置するとともに、第2端部を、周方向他方側に配置されている絶縁体の第1凹部内に配置するために、絶縁部材を傾ける必要がある。具体的には、絶縁部材の第1端部を、周方向一方側に配置されている絶縁体の第1鍔部の外周面の延在方向に対して傾け、絶縁部材の第2端部を、周方向他方側に配置されている絶縁体の第1鍔部の外周面の延在方向に対して傾ける必要がある。
絶縁部材を、傾けた状態で、絶縁体と固定子コアのヨークとの間の隙間に挿入する作業は、面倒であり、時間を要する。また、絶縁部材が、固定子コアと接触して損傷するおそれがある。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、絶縁部材を、隣接するティースに装着された絶縁体それぞれの凹部内に容易に配置することができる絶縁体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明は、絶縁体に関する。
本発明の絶縁体は、周方向に離間して設けられ、径方向および軸方向に延在する複数のティースそれぞれに装着される。
本発明の絶縁体は、第1鍔部と、第2鍔部と、胴部と、を有している。
第1鍔部は、軸方向および周方向に延在している。第1鍔部は、径方向外側に外周面、径方向内側に内周面、周方向一方側に第1側面、周方向他方側に第2側面、軸方向一方側に第1端面、軸方向他方側に第2端面を有している。
第2鍔部は、第1鍔部より径方向内側に配置され、軸方向および周方向に延在している。第2鍔部は、径方向外側に第2外周面、径方向内側に第2内周面、周方向一方側に第3側面、周方向他方側に第4側面、軸方向一方側に第3端面、軸方向他方側に第4端面を有している。
胴部は、第1鍔部と第2鍔部との間に設けられている貫通孔を有している。貫通孔は、径方向に延在し、第1鍔部の外周面および第2鍔部の内周面に開口部を有している。貫通孔は、ティースが挿入可能に形成されている。
また、第1鍔部は、第1外周面の、貫通孔より周方向一方側の領域に、径方向内側に窪んでいる第1凹部が形成されている。また、第1鍔部は、第1外周面の、貫通孔より周方向他方側の領域に、径方向内側に窪んでいる第2凹部が形成されている。第1凹部は、軸方向および周方向に延在しているととともに、径方向外側、周方向一方側および軸方向他方側が開口している。第2凹部は、軸方向および周方向に延在しているととともに、径方向外側、周方向他方側および軸方向他方側が開口している。
本発明の絶縁体では、絶縁体の第1鍔部に形成されている第1凹部および第2凹部は、軸方向他方側が開口している。これにより、絶縁部材を、周方向に隣接する2つの絶縁体と固定子コアのヨークとの間の隙間に挿入する際に、特許文献1、2に開示されている絶縁体を用いる場合のように傾ける必要がない。
第1発明の絶縁体を用いることにより、絶縁部材を、隣接するティースに装着された絶縁体それぞれの凹部内に容易に配置することができる。
第1発明の異なる形態では、第1側面の、貫通孔より軸方向他方側の個所に、周方向一方側に突出する第1突部が形成されている。また、第2側面の、貫通孔より軸方向他方側の個所に、周方向他方側に突出する第2突部が形成されている。
本形態の絶縁体を用いることにより、絶縁部材の第1端部が、周方向一方側に配置されている絶縁体の第2凹部内に配置され、絶縁部材の第2端部が、周方向他方側に配置されている絶縁体の第1凹部内に配置されている状態において、絶縁部材が軸方向他方側に移動するのを防止することができる。
第1発明の異なる形態では、第1突部は、軸方向一方側に、第1側面に連設し、径方向および周方向に延在する端面が形成されている。また、第2突部は、軸方向一方側に、第2側面に連設し、径方向および周方向に延在する端面を有している。
本形態の絶縁体を用いることにより、絶縁部材が軸方向他方側に移動するのをより確実に防止することができる。
第1発明の異なる形態では、第1凹部は、底面と、第1壁面と、第2壁面と、により形成されている。底面は、軸方向および周方向に延在している。第1壁面は、第1底面の、軸方向一方側の端部に連設し、周方向および径方向に延在している。第2壁面は、第1底面の、周方向他方側の端部に連設し、軸方向および径方向に延在している。
また、第2凹部は、第2底面と、第3壁面と、第4壁面と、により形成されている。第2底面は、軸方向および周方向に延在している。第3壁面は、第2底面の、軸方向一方側の端部に連設し、周方向および径方向に延在している。第4壁面は、第2底面の、周方向一方側の端部に連設し、軸方向および径方向に延在している。
本形態の絶縁体を用いることにより、第1凹部および第2凹部を簡単に形成することができる。
第1発明の異なる形態では、第1鍔部は、第1外周面の、貫通孔より周方向一方側で、軸方向一方側の領域に、径方向外側に突出する第3突部が形成されている。また、第1鍔部は、第1外周面の、貫通孔より周方向他方側で、軸方向一方側の領域に、径方向外側に突出する第4突部が形成されている。
そして、第1凹部の第1壁面および第2壁面の少なくとも一部が、第1突部の外壁面によって形成されている。また、第2凹部の第3壁面および第4壁面の少なくとも一部が、第2突部の外壁面によって形成されている。
本形態の絶縁体を用いることにより、第1凹部および第2凹部をより簡単に形成することができる。
第1発明の異なる形態では、第2鍔部は、第3端面から軸方向一方側に突出する第5突部を有している。また、第5突部は、径方向内側に突出する第6突部を有している。
さらに、第2鍔部は、貫通孔と第6突部との間に第7突部を有している。第7突部は、第2鍔部の第2内周面より径方向内側に突出しているととともに、径方向および周方向に延在している。
第5突部に巻き付けられた固定子巻線は、第6突部によって、軸方向一方側への移動が規制される。また、第7突部によって、第6突部に巻き付けられた固定子巻線と、絶縁部材の貫通孔に挿入されたティースとの間の絶縁耐力を高めることができる。
本形態の絶縁体を用いることにより、絶縁耐力を高めることができる。
第2発明は、固定子に関する。
本発明の固定子は、固定子コアと、複数の絶縁体と、固定子巻線と、複数の絶縁部材と、を備えている。
固定子コアは、軸方向および周方向に延在するヨークと、ヨークの径方向内側に周方向に離間して設けられ、軸方向および径方向に延在する複数のティースと、を有している。
複数の絶縁体は、各ティースに装着される。
固定子巻線は、複数の絶縁体それぞれに巻き付けられている。
各絶縁部材は、周方向に隣接する2つの絶縁体と固定子コアのヨークとの間に、当該2つの絶縁体に跨って配置される。
本発明では、絶縁体として、前述した絶縁体のいずれかが用いられる。
また、絶縁部材は、周方向一方側に、軸方向および周方向に延在する第1端部を有しているとともに、周方向他方側に、軸方向および周方向に延在する第2端部を有している。
そして、絶縁部材の第1端部は、隣接する2つの絶縁体のうちの、周方向一方側に配置されている絶縁体の第1鍔部に形成されている第2凹部内に配置される。また、絶縁部材の第2端部は、隣接する2つの絶縁体のうちの、周方向他方側に配置されている絶縁体の第1鍔部に形成されている第1凹部内に配置される。
第2発明は、前述した絶縁体と同様の効果を有する。
第2発明の異なる形態では、絶縁部材は、第1端部と第2端部の間に、軸方向および径方向に延在する中央部を有している。
そして、絶縁部材の中央部は、隣接する2つの絶縁体のうちの周方向一方側に配置されている絶縁体の第1鍔部の第2側面と、周方向他方側に配置されている絶縁体の第1鍔部の第1側面との間に配置される。
本形態では、中央部を有する絶縁部材が軸方向他方側に移動するのを防止することができる。
第2発明の異なる形態では、固定子コアは、複数のティースを有する第1コア部材と、ヨークを有する第2コア部材により構成されている。
本形態では、第1コア部材と第2コア部材を組み付ける前に固定子巻線を絶縁体に巻き付けることができる。これにより、固定子巻線の巻数を増加させて、固定子巻線の占積率を高めることができる。
第3発明は、電動機に関する。
本発明の電動機は、固定子と、固定子に対して相対的に回転可能な回転子を備えている。そして、固定子として前述した固定子のいずれかが用いられている。
本発明は、前述した絶縁体のいずれかあるいは前述した固定子のいずれかと同様の効果を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の、絶縁体、固定子および電動機を用いることにより、絶縁部材を、隣接するティースに装着された絶縁体それぞれの凹部内に容易に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の固定子の一実施形態の斜視図である。
【
図3】
図1から固定子コアのヨークを省略した図である。
【
図4】一実施形態の固定子を構成する固定子コアを示す図である。
【
図5】本発明の絶縁体の一実施形態の斜視図である。
【
図6】本発明の絶縁体の一実施形態を異なる方向から見た斜視図である。
【
図10】
図7をX-X線方向から見た断面図である。
【
図11】絶縁体をティースに装着する動作を説明する図である。
【
図13】隣接するティースに一実施形態の絶縁体が装着された状態を示す図である。
【
図14】一例の絶縁部材を配置する動作を説明する図である。
【
図15】一例の絶縁部材を配置した状態を示す図である。
【
図16】異なる絶縁部材を配置する動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
本明細書では、「軸方向」という記載は、回転子が固定子に対して相対的に回転可能に配置されている状態において、回転子の回転中心線Pの延在方向(図に示されているA方向)を示す。また、図に示されている矢印A1方向(例えば、
図5~
図8の上方向)を、「軸方向一方側」あるいは「軸方向第1側」という。また、図に示されている矢印A2方向(例えば、
図5~
図8の下方向)を「軸方向他方側」あるいは「軸方向第2側」という。
「周方向」という記載は、回転子が固定子に対して相対的に回転可能に配置されている状態において、軸方向一方側あるいは軸方向他方側から見て、回転中心線Pを中心とする円周方向(図に示されているB方向)を示す。また、軸方向一方側から見て(例えば、
図2参照)、反時計方向(図に示されている矢印B1方向)を「周方向一方側」あるいは「周方向第1側」という。また、軸方向一方側から見て(例えば、
図2参照)、時計方向(図に示されている矢印B2方向)を「周方向他方側」あるいは「周方向第2側」という。
「径方向」という記載は、回転子が固定子に対して相対的に回転可能に配置されている状態において、軸方向一方側あるいは軸方向他方側から見て、回転中心線Pを通る線の延在方向(図に示されているC方向)を示す。また、図に示されている矢印C1方向(回転中心線Pに向かう方向)を、「径方向内側」あるいは「径方向第1側」という。また、図に示されている矢印C2方向(回転中心線P1から離れる方向)を「径方向外側」あるいは「径方向第2側」という。
なお、絶縁体に対しては、「軸方向」、「周方向」および「径方向」という記載は、絶縁体が、固定子コアのティースに装着されている状態における「軸方向」、「周方向」および「径方向」を示す。
また、絶縁部材に対しては、「軸方向」、「周方向」および「径方向」という記載は、絶縁部材が、周方向に隣接する2つの絶縁体と固定子コアのヨークとの間の隙間に挿入されている状態における「軸方向」、「周方向」および「径方向」を示す。
勿論、「一方側」あるいは「第1側」、「他方側」あるいは「第2側」を、逆の方向に規定することもできる。
【0010】
本発明の電動機の一実施形態を構成する固定子100を、
図1~
図12を参照して説明する。
図1~
図3は、一実施形態の固定子100を示している。
図4は、一実施形態の固定子100を構成する固定子コア200を示している。
図5~
図10は、一実施形態の絶縁体300を示している。
図11は、一実施形態の絶縁体300を一実施形態の固定子コア200のティース211(ティース基部212)に装着する動作を説明する図である。
図12は、一実施形態の絶縁部材800を示す図である。
【0011】
図1~
図3に示されているように、一実施形態の固定子100は、固定子コア200、複数の絶縁体300、固定子巻線700、複数の絶縁部材800により構成されている。
なお、
図1、
図3では、絶縁体300の構成の理解を容易にするために、固定子巻線700の図示が省略されている。
【0012】
固定子コア200は、筒状に形成され、軸方向一方側(軸方向第1側)にコア端面200Aを有し、軸方向他方側(軸方向第2側)にコア端面200Bを有している。
固定子コア200は、分割構造の固定子コアとして構成されている。本実施形態では、固定子コア200は、
図4に示されているように、第1コア部材210と第2コア部材220により構成されている。
【0013】
第1コア部材210(「インナーコア」と呼ばれる)は、複数の電磁鋼板を、カシメ用突起216を用いて積層した積層体により構成される。
第1コア部材210は、周方向に離間して配置され、軸方向および径方向に延在する複数のティース211を有している。ティース211は、軸方向および径方向に延在するティース基部212と、ティース基部212の径方向内側に設けられ、軸方向および周方向に延在するティース先端部213を有している。ティース先端部213の径方向内側には、ティース先端面214が形成されている。
ティース211のティース先端部213は、連結部215によって連結されている。
【0014】
第2コア部材220(「アウターコア」と呼ばれる)は、複数の電磁鋼板を、カシメ用突起226を用いて積層した積層体により構成される。
第2コア部材220は、軸方向および周方向に延在するヨーク221を有している。ヨーク221は、ヨーク外周面222とヨーク内周面223を有している。
ヨーク内周面223は、径方向外側に窪んでいる凹部形成面224aを有している。凹部形成面224aにより、第1コア部材220のティース211(詳しくは、ティース基部212)の径方向外側端部が嵌合可能な凹部224が形成される。
なお、ヨーク内周面223は、周方向に隣接する2つの凹部224(凹部形成面224a)の間に形成されているヨーク内周面部分223aと223bを有している。ヨーク内周面部分223a(223b)は、ヨーク221の厚さが、ヨーク内周面部分223a(223b)と凹部形成面224aとの接続部から、周方向に隣接する2つの凹部224の周方向中央に向って薄くなるように傾斜している。
【0015】
固定子コア200は、第1コア部材210と第2コア部材220を組み付けることによって形成される。具体的には、第1コア部材210のティース211(ティース基部212)の径方向外側端部が、第2コア部材220の凹部224内に圧入(あるいは、焼き嵌めまたは冷し嵌め)される。これにより、軸方向および周方向に延在するヨーク221と、ヨーク221の径方向内側に周方向に離間して設けられ、軸方向および径方向に延在する複数のティース211を有する固定子コア200が形成される。
なお、ティース先端部213の径方向内側に形成されているティース先端面214によって、回転子(図示は省略されている)が挿入される回転子挿入空間が形成される。
固定子100と、回転子挿入空間内に回転可能に配置される回転子とによって、本発明の電動機の一実施形態が構成される。
【0016】
固定子コア200の複数のティース211それぞれには、絶縁体が装着される。一実施形態の絶縁体300を、
図5~
図10を参照して説明する。
図5は、絶縁体300を、第1鍔部400側から見た斜視図であり、
図6は、絶縁体300を、第2鍔部500側から見た斜視図である。
図7は、
図5を矢印VII方向から見た図であり、
図8は、
図5を矢印VIII方向から見た図であり、
図9は、
図5を矢印IX方向から見た図である。
図10は、
図7をX-X線方向から見た断面図である。
【0017】
絶縁体300は、絶縁特性を有する樹脂、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、液晶ポリマー(LCP)樹脂、ナイロン等により形成される。
絶縁体300は、「電気絶縁体」、「絶縁ボビン」、「樹脂ボビン」あるいは「コイルボビン」等と呼ばれることもある。
絶縁体300は、第1鍔部400、第2鍔部500、胴部600を有している。
【0018】
第1鍔部400は、軸方向(A方向)および周方向(B方向)に延在している。また、第1鍔部400は、径方向外側(矢印C2側)に外周面400A、径方向内側(矢印C1側)に内周面400B、軸方向一方側(矢印A1側)に端面401、軸方向他方側(矢印A2側)に端面402、周方向一方側(矢印B1側)に側面403、周方向他方側(矢印B2側)に側面404を有している。外周面400Aは、軸方向および周方向に延在している。
本実施形態では、外周面400Aが、本発明の「第1外周面」に対応し、内周面400Bが、本発明の「第1内周面」に対応する。また、端面401が、本発明の「第1端面」に対応し、端面402が、本発明の「第2端面」に対応する。また、側面403が、本発明の「第1側面」に対応し、側面404が、本発明の「第2側面」に対応する。
【0019】
第2鍔部500は、第1鍔部400より径方向内側(矢印C1側)に配置され、軸方向(A方向)および周方向(B方向)に延在している。また、第2鍔部500は、径方向外側(矢印C2側)に外周面500A、径方向内側(矢印C1側)に内周面500B、軸方向一方側(矢印A1側)に端面501、軸方向他方側(矢印A2側)に端面502、周方向一方側(矢印B1側)に側面503、周方向他方側(矢印B2側)に側面504を有している。内周面500Bは、軸方向および周方向に延在している。
本実施形態では、外周面500Aが、本発明の「第2外周面」に対応し、内周面500Bが、本発明の「第2内周面」に対応する。また、端面501が、本発明の「第3端面」に対応し、端面502が、本発明の「第4端面」に対応する。また、側面503が、本発明の「第3側面」に対応し、側面504が、本発明の「第4側面」に対応する。
【0020】
胴部600は、第1鍔部400と第2鍔部500の間に設けられ、径方向に延在している。また、胴部600は、中心に、第1鍔部400の外周面400Aと第2鍔部500の内周面500Bに開口している貫通孔610が形成されている。貫通孔610は、第1鍔部400の外周面400Aに開口部610aを有し、第2鍔部500の内周面500Bに開口部610bを有している。
貫通孔610は、内壁面611~614により形成されている。本実施形態では、
図11に示されているように、ティース基部212が、第2鍔部500側(開口部610b側)から貫通孔610内に挿入される。この時、ティース基部212の外壁面212a~212dが、それぞれ貫通孔610の内壁面611~614に対向するように挿入される。本実施形態では、貫通孔610を形成する内壁面611~614は、第2鍔部500の内周面500B側(開口部610b側)に、それぞれ傾斜面611a~614aを有している。これにより、ティース211(ティース基部212)を絶縁体300の貫通孔610内に容易に挿入することができる。
なお、ティース211(ティース基部212)は、径方向外側端部が第1鍔部400の外周面400Aから飛び出るように、貫通孔610内に挿入される。
【0021】
また、
図5、
図7に示されているように、第1鍔部400は、外周面400Aから径方向外側に突出する突部410、420および430を有している。
本実施形態では、突部420が、本発明の「第3突部」に対応する。また、突部430が、本発明の「第4突部」に対応する。
【0022】
突部410は、貫通孔610の開口部610aより軸方向他方側(矢印A2側)の領域に形成されている。
突部410は、径方向外側に外壁面411、軸方向一方側に外壁面412、軸方向他方側に外壁面413を有している。外壁面413は、端面402側から貫通孔610側に向かって、外周面400Aからの距離が長くなる傾斜面に形成されている。
前述したように、第1鍔部400の外周面400Aから飛び出ているティース211(ティース基部212)の径方向外側端部は、第2コア部材220の凹部224内に圧入される。突部410の外壁面413は、ティース211の径方向外側端部を凹部224内にガイドするガイド面として作用する。
【0023】
突部420は、貫通孔610の開口部610aより軸方向一方側(矢印A1側)で、周方向一方側(矢印B1側)の領域に形成されている。
突部420は、径方向外側に外壁面421、軸方向他方側に外壁面422、周方向一方側に外壁面423、周方向他方側に外壁面424を有している。なお、突部420の軸方向一方側の外壁面は、第1鍔部400の端面401により形成されている。
外壁面423は、外壁面部分423a~423hを有している。外壁面部分423bと423cにより、周方向一方側に突出する突部420Aが形成される。外壁面部分423e~423gにより、突部420Aより軸方向他方側の箇所に、周方向一方側に突出する突部420Bが形成される。外壁面部分423aと423bにより、突部420Aより軸方向一方側箇所に、周方向他方側に窪んでいる凹部420Cが形成される。
【0024】
突部430は、貫通孔610の開口部610aより軸方向一方側(矢印A1側)で、周方向他方側(矢印B2側)の領域に形成されている。
突部430は、径方向外側に外壁面431、軸方向他方側に外壁面432、周方向一方側に外壁面433、周方向他方側に外壁面434を有している。なお、突部430の軸方向一方側の外壁面は、第1鍔部400の端面401により形成されている。
外壁面434は、外壁面部分434a~434eを有している。外壁面部分434b~434dにより、周方向他方側に突出する突部430Aが形成される。
また、突部430の外壁面434の外壁面部分434aには、周方向他方側に突出する突部430Bが形成されている。突部430Bには、周方向他方側の端部から軸方向他方側に突出する突部430Cが形成されている。
突部430の外壁面部分434aと434b、突部430B、突部430Cにより、突部430より周方向他方側の箇所に、周方向一方側に窪んでいる凹部420Dが形成される。
【0025】
また、第1鍔部400は、外周面400Aから径方向内側(矢印C1側)に窪んでいる凹部450と凹部460を有している。
【0026】
凹部450は、貫通孔610の開口部610aより周方向一方側(矢印B1側)に設けられている。
凹部450は、底面450aと、軸方向一方側の壁面と、周方向他方側の壁面と、により形成されている。すなわち、凹部450は、径方向外側(矢印C2側)、周方向一方側(矢印B1側)および軸方向他方側(矢印A2側)が開口している。
凹部450の底面450aは、軸方向(A方向)および周方向(B方向)に延在している。
凹部450の軸方向一方側の壁面は、底面450aの、軸方向一方側の端部に連設し、径方向および周方向に延在している。本実施形態では、凹部450の、軸方向一方側の壁面は、突部420の外壁面432の外壁面部分423gにより形成されている。
凹部450の、周方向他方側の壁面は、底面450aの、周方向他方側の端部に連設し、軸方向および径方向に延在している。本実施形態では、凹部450の、周方向他方側の壁面は、壁面450bと、突部420の外壁面423の外壁面部分423hにより形成されている。
本実施形態では、底面450aは平坦面(「略平坦面」を含む)に形成されている。また、凹部450の、軸方向一方側の壁面および周方向他方側の壁面は、底面450aと直角(「略直角」を含む)な方向に延在するように形成されている。勿論、底面450aの形状や、底面450aに対する、軸方向一方側の壁面および周方向他方側の壁面の傾斜角度はこれに限定されない。
【0027】
凹部460は、貫通孔610の開口部610aより周方向他方側(矢印B2側)に設けられている。
凹部460は、底面460aと、軸方向一方側の壁面と、周方向一方側の壁面と、により形成されている。すなわち、凹部460は、径方向外側(矢印C2側)、周方向他方側(矢印B2側)および軸方向他方側(矢印A2側)が開口している。
凹部460の底面460aは、軸方向(A方向)および周方向(B方向)に延在している。
凹部460の、軸方向一方側の壁面は、底面460aの、軸方向一方側の端部に連設し、径方向および周方向に延在している。本実施形態では、凹部460の、軸方向一方側の壁面は、突部430の外壁面434の外壁面部分434dにより形成されている。
凹部460の、周方向一方側の壁面は、底面460aの、周方向一方側の端部に連設し、軸方向および径方向に延在している。本実施形態では、凹部460の、周方向一方側の壁面は、壁面460bと、突部430の外壁面434の外壁面部分434eにより形成されている。
本実施形態では、底面460aは平坦面(「略平坦面」を含む)に形成されている。また、凹部460の、軸方向一方側の壁面および周方向一方側の壁面は、底面460aと直角(「略直角」を含む)な方向に延在するように形成されている。勿論、底面460aの形状や、底面460aに対する、軸方向一方側の壁面および周方向一方側の壁面の傾斜角度はこれに限定されない。
【0028】
本実施形態では、凹部450が、本発明の「第1凹部」に対応する。底面450aが、本発明の「第1底面」に対応する。突部420の外壁面423の外壁面部分423gにより、本発明の「第1壁面」が形成される。壁面450bと突部420の外壁面423の外壁面部分423hにより、本発明の「第2壁面」が形成される。
また、凹部460が、本発明の「第2凹部」に対応する。底面460aが、本発明の「第2底面」に対応する。突部430の外壁面434の外壁面部分434dにより、本発明の「第3壁面」が形成される。壁面460bと突部430の外壁面434の外壁面部分434eにより、本発明の「第4壁面」が形成される。
【0029】
また、第1鍔部400は、側面403から突出している突部403Aおよび側面404から突出している突部404Aを有している。
突部403Aは、側面403の、貫通孔610の開口部610aより軸方向他方側の箇所に形成され、側面403から周方向一方側(矢印B1側)に突出している。突部403Aは、軸方向一方側に、側面403に連接し、径方向(C方向)および周方向(B方向)に延在する端面403aが形成されている。
突部404Aは、側面404の、貫通孔610の開口部610aより軸方向他方側の箇所に形成され、側面404から周方向他方側(矢印B2側)に突出している。突部404Aは、軸方向一方側に、側面404に連接し、径方向(C方向)および周方向(B方向)に延在する端面404aを有している。
突部403Aおよび404Aは、後述する絶縁部材800の第1端部および第2端部の軸方向他方側への移動を規制する移動規制部として作用する。また、端面403aおよび404aは、後述する絶縁部材800の第1端部分810および第2端部分840の軸方向他方側への移動を規制する移動規制面として作用する。
本実施形態では、突部403Aが、本発明の「第1突部」に対応し、端面403aが、本発明の「第1突部の軸方向一方側に形成されている端面」に対応する。また、突部404Aが、本発明の「第2突部」に対応し、端面403aが、本発明の「第2突部の軸方向一方側に形成されている端面」に対応する。
【0030】
第1鍔部400は、端面401に、軸方向一方側、径方向外側および径方向内側が開口している凹部401aが形成されている。
また、突部420と430の間に、径方向に延在する穴440が形成されている。
【0031】
また、
図6、
図8に示されているように、第2鍔部500は、内周面500Bから径方向内側に突出する突部510を有している。突部510は、内周面500Bの、貫通孔610の開口部610bより軸方向一方側(矢印A1側)に形成されている。
突部510は、径方向外側に外壁面511、軸方向他方側に外壁面512、周方向一方側に外壁面513、周方向他方側に外壁面514を有している。なお、突部510の軸方向一方側の外壁面は、第2鍔部500の端面501により形成されている。
【0032】
また、第2鍔部500は、端面501に、軸方向一方側(矢印A1側)に突出する突部520が形成されている。さらに、突部520には、径方向内側(矢印C1側)に突出する突部530が形成されている。本実施形態では、突部530は、突部520の、軸方向一方側の箇所に形成されている。突部530は、突部520に巻き付けられた固定子巻線700の、軸方向一方側への移動を規制する。
【0033】
また、第2鍔部500は、突部530と貫通孔610の開口部610bとの間に、径方向内側(矢印C1側)に突出する突部540を有している。本実施形態では、突部540は、突部510の、軸方向一方側(矢印A1側)の箇所に、周方向(B方向)および径方向(C方向)に延在するように形成されている。また、本実施形態では、突部540は、第2鍔部500の端面501と面一に形成されている。突部540によって、突部520に巻き付けられた固定子巻線700と、絶縁体300の貫通孔610に挿入されているティース211との間の絶縁耐力が高められる。
なお、突部540の配置位置は、突部530と貫通孔610の開口部610bとの間であればよく、適宜変更可能である。
本実施形態では、突部520が、本発明の「第5突部」に対応する。また、突部530が、本発明の「第6突部」に対応する。また、突部540が、本発明の「第7突部」に対応する。
【0034】
固定子巻線700は、ティース211に装着される絶縁体300に巻き付けられる。すなわち、固定子巻線700は、集中巻き方式でティース211に巻き付けられている。
固定子巻線700を絶縁体300に巻き付ける方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、絶縁体300に固定子巻線700を巻き付けた状態で、絶縁体300をティース211に装着する方法を用いることができる。あるいは、ティース211に絶縁体300を装着した状態で、絶縁体300に固定子巻線700を巻き付ける方法を用いることができる。
【0035】
次に、第1コア部材210と第2コア部材220を組み付ける動作を説明する。
先ず、第1コア部材210のティース211(ティース基部212)に絶縁体300を装着する。
本実施形態では、
図11に示されているように、ティース211の径方向外側端部を、絶縁体300の貫通孔610内に、第2鍔部500側(開口部610b側)から挿入する。この時、ティース211は、貫通孔610を形成する内壁面611~614の傾斜面611a~614aによって、貫通孔610内にガイドされる。ティース211は、径方向外側端部が、第1鍔部400の外周面400Aから飛び出るように挿入される。
【0036】
そして、ティース211に絶縁体300が装着されているとともに、絶縁体300に固定子巻線700が巻き付けられた状態で、第1コア部材210と第2コア部材220を組み付ける。
本実施形態では、第1鍔部400の外周面400Aから飛び出ている、ティース211の径方向外側端部を、第2コア部材220のヨーク221に形成されている凹部224に圧入する。
この時、ティース211の径方向外側端部は、貫通孔610の開口部610aより軸方向他方側に形成されている突部410の外壁面413によって、凹部224内にガイドされながら、凹部224内を軸方向に移動する。これにより、第1コア部材210あるいは絶縁体300と第2コア部材220が強い力で接触するのを防止することができる。そして、接触を防止することにより、第1コア部材210や第2コア部材220が変形し、あるいは、絶縁体300にクラックが発生するのを防止することができる。
【0037】
また、圧入治具を用いて、ティース211の径方向外側端部を第2コア部材220の凹部224に圧入することができる。すなわち、圧入治具により、第1鍔部400の外周面400Aから飛び出ているティース211の外壁面212aに、ティース211の径方向外側端部を凹部224内に挿入する方向に移動させる力を加える。
この時、圧入治具により加えられる力によってティース211の径方向外側端部が周方向および径方向に膨らむと、圧入作業が困難となる。このため、適切な大きさの圧入治具を用いて、ティース211の径方向外側端部の適切な箇所に力を加える必要がある。本実施形態では、第1鍔部400の外周面400Aに、貫通孔610の開口部610aより軸方向一方側に突部420および430が設けられている。そして、突部420の、周方向他方側の外壁面424と突部430の、周方向一方側の外壁面433とによって、圧入治具の移動経路が形成されている。これにより、ティース211の径方向外側端部の変形を防止しながら、ティース211の径方向外側端部を第2コア部材220の凹部224内に圧入することができる。
【0038】
絶縁部材800は、ティース211に装着されている絶縁体300に巻き付けられている固定子巻線700と、固定子コア200のヨーク221とを絶縁する。
本実施形態では、絶縁部材800は、周方向に隣接する2つの絶縁体300と固定子コア200のヨーク221との間に、当該2つの絶縁体300に跨って配置される。
絶縁部材800は、絶縁特性を有する樹脂により形成される絶縁フィルムにより構成される。絶縁特性を有する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンナフタレート樹脂が用いられる。
なお、絶縁部材は、絶縁体300に巻き付けられている固定子巻線700とヨーク221とを絶縁することができればよい。すなわち、絶縁部材の全部が、絶縁体300とヨーク221との間に配置されている必要はなく、絶縁部材の少なくとも一部が、絶縁体300とヨーク221との間に配置されていればよい。
【0039】
絶縁部材800の一実施例を、
図12を参照して説明する。
絶縁部材800は、縁部800a~800dを有する四角形状の絶縁フィルムを折り曲げて形成される。縁部800aと800bは、周方向両側に形成され、軸方向(A方向)に延在している。縁部800cと800dは、軸方向両側に配置され、周方向(B方向)に延在している。
絶縁フィルムは、軸方向に延在する折り曲げ線801~803によって、軸方向および周方向に延在する第1端部分810、第1中央部分820、第2中央部分830および第2端部分840に区分される。
第1中央部分820と第2中央部分830は、折り曲げ線802に沿って折り曲げられる。折り曲げられた第1中央部分820と第2中央部分830によって、中央部が形成される。
また、第1端部分810と第2端部分840は、折り曲げ線801と803に沿って折り曲げられる。この時、第1端部分810と第2端部分840は、互いに離れる方向に折り曲げられる。
これにより、軸方向および径方向に延在する中央部と、中央部の径方向内側端部から、互いに離れる方向に折り曲げられている、軸方向および周方向に延在する第1端部と第2端部と、を有する絶縁部材800が形成される。なお、絶縁部材800の中央部は、断面がV字形状を有している。
図12に示されている絶縁部材800は、軸方向一方側(矢印A1側)から見た形状と、軸方向他方側(矢印A2側)からみた形状が同じである。すなわち、第1端部分810が周方向一方側に配置され、第2端部分840が周方向他方側に配置される使用形態と、第2端部分840が周方向一方側に配置され、第1端部分810が周方向他方側に配置される使用形態が可能である。
【0040】
本実施形態では、絶縁部材800が、本発明の「絶縁部材」に対応する。また、第1中央部分820と第2中央部分830によって、本発明の「軸方向および径方向に延在する中央部」が形成される。また、第1端部分810(または第2端部分840)が、本発明の「周方向一方側に、軸方向および周方向に延在する第1端部」あるいは「中央部の周方向一方端に接続されている、軸方向および周方向に延在する第1端部」に対応する。また、第2端部分840(または第1端部分810)が、本発明の「周方向他方側に、軸方向および周方向に延在する第2端部」あるいは「中央部の周方向他方端に接続されている、軸方向および周方向に延在する第2端部」に対応する。
【0041】
次に、絶縁部材800を、周方向に隣接する2つの絶縁体300と固定子コア200のヨーク221との間に、当該2つの絶縁体300に跨って配置する動作を、
図13~
図15を参照して説明する。
図13に、周方向に隣接する2つのティース211それぞれに絶縁体300が装着された状態が示されている。なお、以下では、周方向に隣接する2つの絶縁体300のうち周方向一方側(矢印B1側)に配置されている絶縁体300を「第1絶縁体300」といい、周方向他方側(矢印B2側)に配置されている絶縁体300を「第2絶縁体300」という。
【0042】
また、第1コア部材210と第2コア部材220が組み付けられた状態において、絶縁体300とヨーク221との間に、軸方向および周方向に延在する隙間が形成される。
絶縁体300とヨーク221との間に形成される隙間は、周方向一方側に形成される隙間(以下、「第1隙間」という)と、周方向他方側に形成される隙間(以下、「第2隙間」という)を含んでいる。
第1隙間は、第1鍔部400の外周面400Aの、貫通孔610の開口部610aより周方向一方側の部分(凹部450が形成されている部分)とヨーク221の内周面223との間に形成される。
第2隙間は、第1鍔部400の外周面400Aの、貫通孔610の開口部610aより周方向他方側の部分(凹部460が形成されている部分)とヨーク221の内周面223との間に形成される。
また、第1コア部材210と第2コア部材220が組み付けられた状態において、第1絶縁体300(第1鍔部400の側面404)と第2絶縁体300(第1鍔部400の側面403)との間に隙間300a(
図13参照)が形成される。
【0043】
絶縁部材800の、中央部の周方向一方端に接続されている、軸方向および周方向に延在する第1端部は、第1絶縁体300とヨーク221との間に形成されている第2隙間に挿入される。絶縁部材800の、中央部の周方向他方端に接続されている、軸方向および周方向に延在する第2端部は、第2絶縁体300とヨーク211との間に形成されている第1隙間に挿入される。絶縁部材800の中央部は、第1絶縁体300と第2絶縁体300の間に形成されている隙間300aに挿入される。
絶縁部材800(第1端部、第2端部、中央部)によって、周方向に隣接する第1絶縁体300と第2絶縁体300それぞれに巻き付けられている固定子巻線700とヨーク221との間の絶縁耐力が高められる。
また、隙間300aに挿入された、絶縁部材800の中央部は、第1絶縁体300と第2絶縁体300それぞれに巻き付けられている固定子巻線700の間に配置される。周方向に隣接する第1絶縁体300と第2絶縁体300それぞれには、異なる相の固定子巻線700が巻き付けられる。
このため、絶縁部材800の中央部によって、隣接する第1絶縁体300と第2絶縁体300それぞれに巻き付けられている固定子巻線700間の絶縁耐力が高められる。
【0044】
絶縁部材800の第1端部は、第1絶縁体300の第1鍔部400に形成されている凹部460内に配置される。また、絶縁部材800の第2端部は、第2絶縁体300の第1鍔部400に形成されている凹部450内に配置される。
特許文献1、2に開示されている絶縁体の第1鍔部の周方向両側に形成されている凹部は、軸方向一方側および軸方向他方側に壁面を有している。このため、絶縁部材800の第1端部を、第1絶縁体とヨーク221との間に形成されている第2隙間に挿入するとともに、絶縁部材800の第2端部を、第2絶縁体とヨーク221との間に形成されている第1隙間に挿入する際に、絶縁部材800を傾ける必要がある。すなわち、第1端部を、第1絶縁体300の第1鍔部400の外周面400Aの延在方向に対して傾けるとともに、第2端部を、第2絶縁体300の第1鍔部400の外周面400Aの延在方向に対して傾ける必要がある。
【0045】
一方、本実施形態の絶縁体300では、第1鍔部400の外周面400Aに形成されている凹部450および460は、軸方向他方側に開口している。すなわち、凹部450は、軸方向一方側および周方向他方側に壁面を有しているが、軸方向他方側に壁面を有していない。また、凹部460は、軸方向一方側および周方向一方側に壁面を有しているが、軸方向他方側に壁面を有していない。
このため、絶縁部材800の第1端部を、第1絶縁体300とヨーク221との間に形成されている第2隙間に挿入するとともに、絶縁部材800の第2端部を、第2絶縁体300とヨーク221との間に形成されている第1隙間に挿入する際に、絶縁部材800を傾ける必要がない。すなわち、絶縁部材800の第1端部を、第1絶縁体300とヨーク221との間に形成されている第2隙間に、第1絶縁体300の凹部460を形成する底面460aの延在方向に平行(「略平行」を含む)に挿入することができる。また、絶縁部材800の第2端部を、第2絶縁体300とヨーク221との間に形成されている第1隙間に、第2絶縁体300の凹部450を形成する底面450aの延在方向に平行(「略平行」を含む)に挿入することができる。
絶縁部材800の中央部を隙間300Aに挿入する動作は、特許文献1、2に開示されている絶縁体を用いた場合と同様である。
なお、絶縁部材800は、第1端部が第1絶縁体300の凹部460内に配置され、第2端部が第2絶縁体300の凹部450内に配置され、中央部が隙間300a内に挿入された状態において、弾性力によって、軸方向他方側への移動が防止される。
本実施形態の絶縁体300を用いることにより、絶縁部材800を、隣接するティース211に装着された2つの絶縁体それぞれの凹部内(実施形態では、第1絶縁体300の凹部460内および第2絶縁体300の凹部450内)に容易に配置することができる。
【0046】
絶縁部材800は、
図14に示されているように、周方向に隣接する第1絶縁体300および第2絶縁体300とヨーク211との間の隙間および第1絶縁体300と第2絶縁体300との間の隙間300aに、軸方向他方側から挿入される。
図14では、絶縁部材800の縁部800c側から挿入している。この場合、絶縁部材800の第1端部分810が、「中央部の周方向一方端に接続されている第1端部」に対応し、絶縁部材800の第2端部分840が、「中央部の周方向他方端に接続されている第2端部」に対応する。
なお、前述したように、絶縁部材800は、軸方向一方側から見た形状と、軸方向他方側からみた形状が同じである。このため、絶縁部材800の縁部800d側から挿入することもできる。この場合、絶縁部材800の第2端部分840が、「中央部の周方向一方端に接続されている第1端部」に対応し、絶縁部材800の第1端部分810が、「中央部の周方向他方端に接続されている第2端部」に対応する。
【0047】
図15に、絶縁部材800が、周方向に隣接する2つの絶縁体300と固定子コア200のヨーク211との間に、当該2つの絶縁体300に跨って配置された状態が示されている。
図15では、絶縁部材800は、第1端部分810が、第1絶縁体300の凹部460内に配置され、第2端部分840が、第2絶縁体300の凹部450内に配置され、中央部(第1中央部分820、第2中央部分830)が、第1絶縁体300と第2絶縁体300の間の隙間300aに挿入されている。
【0048】
ここで、何らかの外力によって、絶縁部材800が軸方向他方側に移動するおそれがある。絶縁部材800が軸方向他方側に移動すると、絶縁特性が低下するおそれがある。
本実施形態の絶縁体300は、前述したように、第1鍔部400の側面403に、周方向一方側に突出する突部403Aが形成されているとともに、第1鍔部400の側面404に、周方向他方側に突出する突部404Aが形成されている。また、突部403Aおよび404Aの軸方向一方側に、周方向および径方向に延在する端面403aおよび404aが形成されている。
絶縁部材800は、第1隙間と第2隙間を含む隙間内に、縁部800dが、突部403Aおよび突部404Aより軸方向一方側に位置するまで挿入される。この状態において、縁部800dの、第1端部分810と第1中央部分820との接続部に対応する部分が、突部403Aより軸方向一方側に位置する。また、縁部800dの、第2中央部分830と第2端部分840との接続部に対応する部分が、突部404Aより軸方向一方側に位置する。
この状態で、絶縁部材800が軸方向他方側に移動すると、第1中央部分820が突部403Aの端面403aに当接し、あるいは、第2中央部分830が、突部404Aの端面404aに当接する。これにより、絶縁部材800の軸方向他方側への移動が規制される。
【0049】
次に、固定子巻線700の端部を固定する方法を、
図13を参照して説明する。
図13に示されているように、周方向に隣接するティース211に絶縁体300が装着されている状態では、第1絶縁体300の突部430Bが、第2絶縁体300の凹部420C内に配置される。これにより、第1絶縁体300の突部430Aおよび430Bと第2絶縁体300の突部420Aの間に作業空間が形成される。
この作業空間があることにより、絶縁体300に巻き付けられた固定子巻線700の端部を、第1絶縁体300の突部430Bに、紐710で縛って固定する作業を容易に行うことができる。なお、この時、第1絶縁体300の突部430Bに形成されている突部430Cによって、紐710が抜けるのが規制される。
【0050】
また、絶縁体300に巻き付けられた固定子巻線700の端部を、絶縁体300の突部520(
図6参照)に巻き付けることがある。突部520に巻き付けられた、固定子巻線700の端部は、突部530によって、軸方向一方側への移動が規制される。
この場合、突部520に巻き付けられた、固定子巻線700の端部と、絶縁体300の貫通孔610内に挿入されたティース211との間が絶縁破壊するおそれがある。
本実施形態の絶縁体300では、前述したように、貫通孔610の開口部610bと突部530の間に、第2鍔部500の内周面500Bより径方向内側(矢印C1側)に突出する突部540が形成されている。本実施形態では、突部540は、周方向および径方向に延在している。
これにより、突部520に巻き付けられた、固定子巻線700の端部と、絶縁体300の貫通孔610内に挿入されたティース211との間の絶縁耐力が高められる。
なお、突部530は省略することもできる。この場合、突部540は、貫通孔610の開口部610bと第2鍔部500の端面501の間に形成される。
【0051】
以上の実施形態では、V字形状に折り曲げられている絶縁部材800を用いたが、絶縁部材の形状はこれに限定されない。
平板形状の絶縁部材900を用いた場合について、
図16を参照して説明する。
絶縁部材900は、縁部900a~900dを有する四角形状の絶縁フィルムにより形成される。縁部900aと900bは、周方向両側に形成され、軸方向(A方向)に延在している。縁部900cと900dは、軸方向両側に配置され、周方向(B方向)に延在している。
絶縁部材900は、周方向両側に、軸方向および周方向に延在する第1端部分910と第2端部分930を有し、中央に中央部分920を有している。
絶縁部材900は、絶縁部材800と同様に、軸方向一方側(矢印A1側)から見た形状と、軸方向他方側(矢印A2側)からみた形状が同じである。すなわち、第1端部分910が周方向一方側に配置され、第2端部分930が周方向他方側に配置される使用形態と、第2端部分930が周方向一方側に配置され、第1端部分910が周方向他方側に配置される使用形態が可能である。
【0052】
絶縁部材900を、周方向に隣接する2つの絶縁体300と固定子コア200のヨーク221との間に、当該2つの絶縁体300に跨って配置する動作は、絶縁部材800の中央部を隙間300aに挿入する動作を除いて、絶縁部材800を配置する動作と同様である。
すなわち、絶縁部材900の第1端部分(910あるいは930)を、第1絶縁体300とヨーク221との間に形成されている第2隙間に挿入するとともに、絶縁部材900の第2端部分(930あるいは910)を、第2絶縁体300とヨーク221との間に形成されている第1隙間に挿入する。この時、特許文献1、2に開示されている絶縁体を用いる場合のように、絶縁部材900を傾ける必要がない。すなわち、絶縁部材900の第1端部分(910あるいは930)を、第1絶縁体300とヨーク221との間に形成されている第2隙間に、第1絶縁体300の凹部460を形成する底面460aの延在方向に平行(「略平行」を含む)に挿入することができる。また、絶縁部材900の第2端部分(930あるいは910)を、第2絶縁体300とヨーク221との間に形成されている第1隙間に、第2絶縁体300の凹部450を形成する底面450aの延在方向に平行(「略平行」を含む)に挿入することができる。
【0053】
本実施形態では、絶縁部材900が、本発明の「絶縁部材」に対応する。また、第1端部分910(または第2端部分930)が、本発明の「周方向一方側に、軸方向および周方向に延在する第1端部」に対応し、第2端部分930(または第1端部分910)が、本発明の「周方向他方側に、軸方向および周方向に延在する第2端部」に対応し、中央部分920が、本発明の「中央に、軸方向および周方向に延在する中央部」に対応する。
【0054】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
第1鍔部の第1側面に形成する第1突部の形状および第1突部の軸方向一方側に形成する端面の形状、第1鍔部の第2側面に形成する第2突部の形状および第2突部の軸方向一方側に形成する端面の形状は、適宜変更可能である。
第1鍔部の第1側面に第1突部を形成するとともに、第1突部の軸方向一方側に端面を形成し、また、第1鍔部の第2側面に第2突部を形成するとともに、第2突部の軸方向一方側に端面を形成したが、第1突部の端面および第2突部の端面は、省略することもできる。さらに、第1突部および第2突部を省略することもできる。
本発明は、絶縁体、固定子、電動機として構成することができる。
固定子コアを構成する分割コア部材の形状や数等は、適宜変更可能である。
絶縁体の形状は、適宜変更可能である。
絶縁部材としては、V字形状、コ字形状、平板形状等の種々の形状の絶縁部材を用いることができる。
各実施形態で説明した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数の構成を組み合わせて用いることもできる。
本発明の電動機は、圧縮機(圧縮機構部)、車両、車載機器等の種々の機器を駆動する駆動電動機として用いることができる。
実施形態に示されている各突部の番号(例えば、第1、第2等)は、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0055】
100 固定子
200 固定子コア
200A、200B 固定子コア端面
210 第1コア部材
211 ティース
212 ティース基部
212a~212d 外壁面
213 ティース先端部
214 ティース先端面
215 連結部
216、226 カシメ用突起
220 第2コア部材
221 ヨーク
222 ヨーク外周面
223 ヨーク内周面
223a、223b ヨーク内周面部分
224 凹部
224a 凹部形成面
300 絶縁体
300a 隙間
400 第1鍔部
400A 外周面
400B 内周面
401、402 端面
401a 凹部
403、404 側面
403A、404A 突部
403a、404a 端面
410、420、420A、420B、430、430A、430B、430C 突部
411~413、421~424、431~434 外壁面
423a~423h、434a~434e 外壁面部分
420C、430D 凹部
440 穴
450、460 凹部
450a、460a 底面
450b、460b 壁面
500 第2鍔部
500A 外周面
500B 内周面
501、502 端面
503、504 側面
510、520、530、540 突部
511~514 外壁面
600 胴部
610 貫通孔
610a、610b 開口部
611、612、613、614 内壁面
611a、612a、613a、614a 傾斜面
700 固定子巻線
710 紐
800、900 絶縁部材
800a~800d、900a~900d 縁部
801、802、803 折り曲げ線
810、840、910、930 端部分
820、830、920 中央部分