(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014102
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】フォン・ビルブラント因子(VWF)標的薬剤およびそれを用いる方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/115 20100101AFI20230119BHJP
【FI】
C12N15/115 Z ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022176918
(22)【出願日】2022-11-04
(62)【分割の表示】P 2019515294の分割
【原出願日】2017-09-18
(31)【優先権主張番号】62/395,642
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507189666
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】517158348
【氏名又は名称】オハイオ ステイト イノヴェイション ファウンデイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ニムジー シャヒド エム
(72)【発明者】
【氏名】ピトック ジョージ エイ
(72)【発明者】
【氏名】レイザー ジュリアナ
(72)【発明者】
【氏名】サレンジャー ブルース
(57)【要約】
【課題】血栓症を予防および治療する組成物および方法の提供。
【解決手段】本明細書で提供されるものは、フォン・ビルブラント因子(VWF)の活性を阻害することができるアプタマーである。これらアプタマーを含む医薬組成物もまた提供される。当該アプタマーを投与することによって対象動物で血餅形成を予防する方法が提供され、VWF標的薬剤を投与することによって血餅を治療する方法もまた提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アプタマーであって、当該アプタマーが、
配列番号:1および配列番号:2、または配列番号:3-102のいずれか1つと少なくとも70%配列同一性を有するポリヌクレオチド、または
5’から3’に向けて、3ヌクレオチドを含む第一のステム形成領域、ヌクレオチド配列AACを含む第一のループ領域、3ヌクレオチドを含む第二のステム形成領域、ヌクレオチド配列CCを含む第二のループ領域、2-8ヌクレオチドから成る第三のステム形成領域、1-12ヌクレオチドから成る第三のループ領域またはスペーサー配列、2-8ヌクレオチドから成り第三のステム形成領域とともにステムを形成することができる第四のステム形成領域、ヌクレオチドCを含む第四のループ領域、3ヌクレオチドを含み第二のステム形成領域とともにステムを形成することができる第五のステム形成領域、ヌクレオチド配列CAGAを含む第五のループ領域、および3ヌクレオチドを含み第一のステム形成領域とともにステムを形成することができる第六のステム形成領域を含むポリヌクレオチドと少なくとも70%配列同一性を有するポリヌクレオチドを含み、
ここで、当該ポリヌクレオチドが非改変形を含むか、または少なくとも1つのヌクレオチド塩基改変を含む改変形を含み、
当該アプタマーが長さにおいて53ヌクレオチドを超えない、前記アプタマー。
【請求項2】
5’から3’に向けて配列番号:1、1-18ヌクレオチドから成る変動可能ヌクレオチド配列またはスペーサー配列、および配列番号:2を含むポリヌクレオチドと少なくとも70%配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1に記載のアプタマー。
【請求項3】
配列番号:3-6のいずれか1つと少なくとも90%配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1~2のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項4】
ヒトVWFタンパク質に対する当該アプタマーの解離定数(KD)が100ナノモル(nM)未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項5】
ポリヌクレオチドの5’末端または3’末端にテールヌクレオチド配列をさらに含み、当該テールヌクレオチド配列が当該ポリヌクレオチドの連続する3つ以上のヌクレオチドと塩基対を形成することができず、当該テールヌクレオチド配列が2-12ヌクレオチドから成る、請求項1~4のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項6】
テールヌクレオチド配列がポリヌクレオチドの3’末端に存在し、さらにヌクレオチド配列(U/T)(U/T)(U/T)(U/T)(U/T)から成る、請求項5に記載のアプタマー。
【請求項7】
長さにおいて39ヌクレオチドを超えない、請求項1~6のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項8】
ポリヌクレオチドがRNAポリヌクレオチドを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項9】
ポリヌクレオチドが、2’フルオロ改変、2’O-メチル改変、5’改変、および3’改変から成る群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド塩基改変を含む改変形を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項10】
配列番号:7、配列番号:8、または配列番号:9を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項11】
ポリヌクレオチドが5’リンカーおよび/または3’リンカーを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項12】
ポリヌクレオチドが安定性作用物質をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項13】
安定性作用物質が、ポリエチレングリコール(PEG)、コレステロール、アルブミン、およびエラスチン様ポリペプチドから成る群から選択される、請求項12に記載のアプタマー。
【請求項14】
安定性作用物質がポリヌクレオチドの5’末端に連結される、請求項12~13のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項15】
ポリヌクレオチドおよび安定性作用物質が共有結合によって連結される、請求項12~14のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項16】
ポリヌクレオチドおよび安定性作用物質がタグ系によって連結される、請求項12~15のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項17】
タグ系が、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、およびビオチン/ニュートラアビジンから成る群から選択される、請求項12~16のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項18】
請求項1~17に記載のアプタマーのいずれか1つを含むダイマー、トリマーまたはテトラマー。
【請求項19】
配列番号:103-180のいずれか1つと少なくとも70%配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む、解毒剤。
【請求項20】
請求項1~18に記載のアプタマーのいずれか1つの少なくとも8ヌクレオチドに対して逆相補性であり、かつ前記少なくとも8ヌクレオチドとハイブリダイズすることができる配列を有するポリヌクレオチドを含む解毒剤。
【請求項21】
医薬担体と、請求項1~18に記載の組成物または請求項19~20に記載の解毒剤のいずれか1つとを含む医薬組成物。
【請求項22】
医薬担体が、20mMのHepes(pH7.4);150mMのNaCl;1mMのCaCl2;1mMのMgCl2;5mMのKClまたは緩衝食塩水を含む、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
対象動物で血餅形成を予防する方法であって、請求項1~18、21または22に記載の組成物のいずれか1つを、当該対象動物で血餅形成を予防するために治療的に有効な量で当該対象動物に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項24】
対象動物が心房細動を罹患するか、または深部静脈血栓症、卒中、心臓発作、または肺塞栓症を有するリスクがある、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
対象動物で血餅を治療する方法であって、VWFを標的とする薬剤を当該対象動物で血餅を減少させるために治療的に有効な量で当該対象動物に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項26】
VWF標的薬剤がアプタマーを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
VWF標的薬剤が請求項1~18、20または21に記載の組成物のいずれか1つを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
対象動物が深部静脈血栓症、卒中、心臓発作、または肺塞栓症を罹患する、請求項25~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
解毒剤を当該アプタマーまたは当該VWF標的薬剤を中和するために治療的に有効な量で当該対象動物に投与する工程をさらに含む、請求項23~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
解毒剤が請求項19-20に記載の解毒剤のいずれか1つを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
対象動物で血餅形成を予防するための医薬の製造における、請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項32】
対象動物で血餅を治療するための医薬の製造におけるVWF標的薬剤の使用。
【請求項33】
当該対象動物が哺乳動物である、請求項23~32のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項34】
哺乳動物が人間である、請求項33に記載の方法または使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互引用)本特許出願は、米国仮特許出願62/395,642(2016年9月16日出願)(参照によってその全体が本明細書に含まれる)の優先権を主張する。
(連邦政府支援研究に関する記載)本発明は、米国国立衛生研究所研究費番号1U54HL112307および5K12NS080223-3,220901により政府の支援を受けて達成された。当該政府は本発明において一定の権利を有する。
(配列表)本出願はEFS-Webにより電子出願され、.text形式の電子提出配列表を含む。当該.textファイルは、2017年9月18日作成の“2017-09-18 5667-00413_ST25_Seq_Listing.txt”と題する配列表を含み、当該ファイルのサイズは35,071バイトである。本.txtファイルに含まれる配列表は本明細書の部分であり、参照によってその全体が本明細書に含まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は全般的に血栓症を予防および治療する組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、フォン・ビルブラント因子(VWF)を標的とする薬剤、並びに血餅形成の予防(抗血栓活性)および形成血餅の治療および/または軽減(血栓溶解活性)におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
血栓症は、多くの心脈管系および脳脈管系疾患の主要な根幹的問題であり、主な術後合併症でもある。抗血栓薬は、脳脈管系および心脈管系疾患関連合併症を軽減する目標に向けて過去25年間にわたって開発されてきた。しかしながら、患者で血栓症を減少させるが、これらの薬剤は、迅速かつ予測可能な可逆性を欠くために出血リスクに関して難問をもたらす。
アプタマーは一本鎖核酸であり、それらの標的との特異的な結合を可能にするそれらの配列を土台とする特異的な二次および三次構造を採る。アプタマーはタンパク質標的と結合しそれらを阻害する。アプタマーは一般的にはSELEXと呼ばれるin vitro選別プロセスによって創出される(SELEX:指数関数的濃縮によるリガンドの系統的発展、Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)。例えば以下を参照されたい:Ellington AD, Szostak JW.1990.In vitro selection of RNA molecules that bind specific ligands, Nature 346:818-22;Tuerk C, Gold L.1990.Systematic evolution of ligands by exponential enrichment: RNA ligands to bacteriophage T4 DNA polymerase, Science 249:505-10。アプタマーは実質的に任意のタンパク質として系統的に単離することができ、広範囲の分子改変を実施して目的とする使用のためにそれらの薬理的動態を最適化させることができる。ペガプタニブナトリウム(黄斑変性の治療のために開発)は使用が承認された最初のアプタマーで、他の化合物は開発中である。例えば以下を参照されたい:Wang P, Yang Y, Hong H, Zhang Y, Cai W, Fang D.2011.Aptamers as therapeutics in cardiovascular diseases.Curr Med Chem 18:4169-74。アプタマーは、普遍的または合理的に設計された解毒剤を用いてアプタマー活性を迅速に無効にし得ることを条件として、有望かつより安全な抗血栓薬クラスを提供する。例えば以下を参照されたい:Rusconi CP, Scardino E, Layzer J, Pitoc GA, Ortel TL, et al.2002, RNA aptamers as reversible antagonists of coagulation factor IXa, Nature 419:90-4;WO/2008/066621 A3;およびWO/2008/121354。
【0004】
フォン・ビルブラント因子(VWF)はアプタマー系抗血栓薬の有望な標的である。VWFはマルチマー性血漿タンパク質であり、糖タンパク質IbIXと結合して血小板粘着をもたらし(血小板凝集における最初の非重複工程)、血栓を生じる。基本サブユニットは260kDaであり、内皮および血小板で生成される。VWFは正常な止血栓形成に要求され、第VIII因子の担体タンパク質である。VWFを標的とするアプタマーは血餅の形成を阻害することが示された。例えばWO/2008/066621 A3を参照されたい。
しかしながら、当業界では、ヌクレアーゼによる分解に対して安定性が増強された、化学合成を容易にするためにより小さなサイズの、in vivoの循環時間が延長された新規なVWF標的アプタマーが希求されている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書で提供されるものは、VWFを標的とするアプタマー組成物およびそのようなアプタマー組成物を標的とする解毒組成物とともにVWF標的薬剤を用いて血餅を予防および治療する方法である。
ある特徴では、複数のアプタマーが提供される。アプタマーはポリヌクレオチドを含むことができ、前記ポリヌクレオチドは、配列番号:1および配列番号:2、または配列番号:3-102のいずれか1つと少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%配列同一性を有する。下記の表1および2を参照されたい。
【0006】
また別には、アプタマーは、5’から3’に向けて以下を含むポリヌクレオチドと少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%配列同一性を有するポリヌクレオチドを含むことができる:2、3、4、または5ヌクレオチドを含むかそれから成る第一のステム形成領域、ヌクレオチド配列AACを含むかそれから成る第一のループ領域、3、4または5ヌクレオチドを含むかそれから成る第二のステム形成領域、ヌクレオチド配列CCを含むかそれから成る第二のループ領域、2-8ヌクレオチドから成る第三のステム形成領域、1-12ヌクレオチドから成る第三のループ領域および/またはスペーサー配列、2-8ヌクレオチドから成り第三のステム形成領域とともにステムを形成することができる第四のステム形成領域、ヌクレオチドCを含むかそれから成る第四のループ領域、3、4または5ヌクレオチドを含むかそれから成り第二のステム形成領域とともにステムを形成することができる第五のステム形成領域、ヌクレオチド配列CAGAを含むかそれから成る第五のループ領域、および2、3、4または5ヌクレオチドを含むかそれから成り第一のステム形成領域とともにステムを形成することができる第六のステム形成領域。
【0007】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載するアプタマーは、長さが58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17または16ヌクレオチドを超え得ない。いくつかの実施態様では、ポリヌクレオチドは非改変ヌクレオチドを含む。他の実施態様では、ポリヌクレオチドは、少なくとも1つのヌクレオチド塩基改変を有する改変形を含む。ヌクレオチド塩基改変には、ヌクレオチドの2’O-メチルまたは2’フルオロ改変が含まれる。
【0008】
いくつかの実施態様では、vWFに対するアプタマーの解離結合定数(Kd)は、500nM未満、100nM未満、50nM未満、10nM未満、5nM未満、3nM未満、または2nM未満である。
別の特徴では、本明細書に記載するアプタマーを含むダイマー、トリマーおよびテトラマーもまた開示される。
別の特徴では、本明細書に記載するアプタマーに対する解毒剤が提供される。解毒剤は、配列番号:103-180(表3のヌクレオチド配列)のいずれか1つと少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%配列同一性を有するポリヌクレオチドを含むことができる。また別には、解毒剤は、本明細書記載のアプタマーのいずれか1つの少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25以上のヌクレオチドに対して逆相補性であり、かつ前記ヌクレオチドとハイブリダイズすることができる配列を有するポリヌクレオチドを含むことができる。
【0009】
さらに別の特徴では、本明細書に記載するアプタマーまたは解毒剤のいずれかを含む医薬組成物が提供される。医薬組成物は、医薬担体、賦形剤または希釈剤(すなわち作用性物質)を含むことができ、それらに暴露される細胞または哺乳動物に対して用いられる投薬および濃度で非毒性である。
別の特徴では、対象動物で血餅形成を予防する方法が提供される。前記方法は、当該対象動物に本明細書記載のアプタマー組成物のいずれか1つを、当該対象動物で血餅形成を予防するために治療的に有効な量で投与する工程を含むことができる。
さらに別の特徴では、対象動物で血餅を治療する方法もまた提供される。前記方法は、当該対象動物にVWFを標的とする薬剤を、当該対象動物で血餅を減少させるために治療的に有効な量で投与する工程を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、VWF9.14切端形T10(配列番号:10)、T25(配列番号:6)、T49(配列番号:5)、T59(配列番号:4)、およびT79(配列番号:3)の要旨を示す。これらのアプタマーの予想二次構造に加えて、これらのアプタマーの長さ(nt)、Kd(nM)、およびBmax(%)(in vitroニトロセルロースフィルター結合アッセイによって決定)がこれらの二次構造の下に示されている。VWFとのその結合能力を減少させることなく、アプタマーを60から30ヌクレオチドに切端し得ることが見いだされた。注記:赤色で強調されたヌクレオチドは、その後の革新的な各工程でもたらされる主要な欠失を示す。黄色で強調されたヌクレオチドは塩基置換を示す。VWFアプタマー9.14T79は3’末端に5つのウラシルヌクレオチドを有するT59である。
【
図2】
図2は、VWF9.14T59(配列番号:4)およびVWF9.14T79(配列番号:3)アプタマーの予想二次構造を示す。T79アプタマーは3’ウラシルテールに加えてT59アプタマーを含み、解毒剤結合を促進する。T59およびT79構造物のドットは、計画的解毒剤VWF9.14T59-AO11(AO11、配列番号:113)およびVWF9.14T79-AO2(AO55、配列番号:157)が結合する場所をそれぞれ示す。
【
図3】
図3は、最適化VWFアプタマー、T79 VRT7(配列番号:7)の予想二次構造を示す。2’-O-メチル改変塩基は赤色で強調され、2’-フルオロ改変塩基は緑色で強調される。これらのアプタマーの長さ(nt)、Kd(nM)、およびBmax(%)(in vitroニトロセルロースフィルター結合アッセイによって決定)がこれらの二次構造の下に示されている。
【
図4】
図4は、FeCl
3損傷前にベヒクル(アプタマー無し/陰性コントロール)を注射したネズミ動脈血栓症モデル実験における頸動脈血流トレーシングを示す。フロープローブの測定によれば、FeCl
3パッチの除去に続いて約4から5分で血管は閉塞した。
【
図5】
図5は、FeCl
3損傷前にVWF9.14T79-VRT7アプタマーが0.375mg/kg(上段トレーシング)または0.0375mg/kg(下段トレーシング)の用量で注射された、2つのネズミ動脈血栓症モデル実験における頸動脈血流トレーシングを示す。フロープローブの測定によれば、FeCl
3パッチの除去の後、血管は60分を超えて開存を維持した。
【
図6】
図6は、FeCl
3損傷前にPEG-VWF9.14T79-VRT7アプタマーが0.375mg/kgの用量で注射されたネズミ動脈血栓症モデル実験における頸動脈血流トレーシングを示す。フロープローブの測定によれば、2つの7.5%FeCl
3パッチの除去後、血管は60分を超えて開存を維持した。
【
図7】
図7は、FeCl
3損傷前にVWF9.14T79-VRT7アプタマーが多様な用量(0.009375mg/kgから0.375mg/kg)で注射されたネズミ動脈血栓症モデル実験におけるパーセント頸動脈血流の要旨を示す。陰性コントロールが参照のために示されている。フロープローブの測定によれば、0.0375mg/kgの低い投与量が、FeCl
3パッチの除去後60分間、(パッチ貼付前の血流と比較して)75%を超える血流を維持するために十分であった。
【
図8】
図8は分散図であり、ネズミ伏在静脈出血モデルで食塩水またはPEG-VWF9.14T79-VRT7(配列番号:7)アプタマー(用量0.375mg/kg)の注射に続く10倍モル比のVWF9.14T79-AO2(AO55、配列番号:157)解毒剤の注射前(PRE)および注射後(POST)または解毒剤無し(Neg)の凝塊破壊数を示す。
【
図9A】
図9Aは、ネズミ伏在静脈出血モデルで食塩水(コントロール)またはVWF9.14T79-VRT7アプタマー(用量0.375mg/kg、配列番号:7)の注射に続く10倍モル比のVWF9.14T79-AO2(DTRI-025、配列番号:157)解毒剤または解毒剤無し(食塩水)の注射前および注射後の凝塊破壊の分散図を示す。
【
図9B】
図9Bは、ネズミ伏在静脈出血モデルで食塩水(コントロール)またはVWF9.14T79-VRT7アプタマー(用量0.375mg/kg、配列番号:7)の注射に続く10倍モル比のVWF9.14T79-AO2(DTRI-025、配列番号:157)解毒剤または解毒剤無し(食塩水)の注射前および後の凝塊破壊の棒グラフを示す。
【
図10】
図10は、動脈血栓症および伏在静脈出血の組合せモデルの単一実験における頸動脈血流トレーシングおよび時間経過の例を示す。図の左側は、血栓症チャレンジ後の頸動脈の血管開存性を評価するこの試験の最初の半分を捕捉する。右側は、血管切開、出血、並びに解毒剤投与前および投与後の凝塊形成を捕捉する。
【
図11】
図11は、動脈血栓症および伏在静脈出血の組合せモデルで、PEG-VWF9.14T79-VRT7アプタマー(配列番号:7)、コレステロール-VWF9.14T79-VRT7アプタマー、またはエラスチン様ポリペプチド(ELP)-VWF9.14T79-VRT7アプタマーの注射に続く伏在静脈出血血栓症の後のVWF9.14T9-AO2(AO55、配列番号:157)解毒剤の注射前(PRE)及び注射後(POST)の凝塊破壊数を示す。
【
図12】
図12は、解毒剤VWF9.14T59-AO3、-AO10、および-AO11を用いた場合並びに用いない場合のVWF9.14T59(配列番号:4)についての血小板機能アッセイ(PFA)の結果を示す。配列番号はそれぞれAO3(配列番号:105)、AO10(配列番号:112)、およびAO11(配列番号:113)である。解毒剤VWF9.14T79-AO1(AO43;配列番号:145)およびVWF9.14T79-AO2(AO55;配列番号:157)を用いた場合並びに用いない場合のアプタマーVWF9.14T79(配列番号:3)についてのPFAの結果もまた示される。解毒剤VWF9.14T82-AO1(AO46;配列番号:148)およびVWF9.14T82-AO2(AO58;配列番号:160)を用いた場合並びに用いない場合のアプタマーVWF9.14T82(配列番号:78)についての結果が示される。解毒剤VWF9.14T84-AO1(AO48;配列番号:150)およびVWF9.14T84-AO2(AO60;配列番号:162)を用いた場合並びに用いない場合のアプタマーVWF9.14T84(配列番号:80)についての結果が示される。
【
図13】
図13は、解毒剤(それぞれAO61(配列番号:163)、AO62(配列番号:164)、AO63(配列番号:165)、AO64(配列番号:166)、AO65(配列番号:167)、AO66(配列番号:168)、およびAO67(配列番号:169))を用いた場合並びに用いない場合のVWF9.14T86(配列番号:82)、VWF9.14T87(配列番号:83)、VWF9.14T89(配列番号:85)、VWF9.14T90(配列番号:86)、VWF9.14T93(配列番号:89)、VWF9.14T94(配列番号:90)、およびVWF9.14T95(配列番号:91)についてのPFAの結果を示す。
【
図14】
図14は、予想される二次構造、および種々のモル比の解毒剤DTRI-038(配列番号:180)を用いた場合および用いない場合のVWF9.14T79vrt7(DTRI-031;(配列番号:7))についてのPFAデータが示される。
【
図15】
図15は、79 vrt7/DTRI-031(配列番号:7)およびT59 vrt19(配列番号:4および表2)アプタマーの予想二次構造、並びにDTRI-006-DTRI-013アプタマーの配列(表2並びに配列番号:4、98、99、100および101をそれぞれ参照されたい)を示す。DTRI-008(配列番号:4)は強い影響を示さず、DTRI-006(配列番号:4)と類似した。DTRI-009(配列番号:98)はDTRI-006に匹敵するK
Dを示したが、Bmaxは低かった。DTRI-013(配列番号:101)はDTRI-006に匹敵するK
Dを示したが、Bmaxは低かった。
【
図16】
図16は、DTRI-019(配列番号:8)アプタマーについての予想二次構造およびニトロセルロースフィルター結合アッセイデータを示す。
【
図17】
図17は、T79VRT7/DTRI-031(配列番号:7)アプタマーについてのニトロセルロースフィルター結合アッセイデータを示す。
【
図18】
図18は、以下により処理されたマウスの閉塞後の多様な時点における初期頸動脈流に対するパーセンテージを示すグラフである:コントロール、rTPA(組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター)、抗VWFアプタマー(VWF9.14T79VRT7およびコレステロール-VWF9.14T79-VRT7の両方)、または灌流無し。グラフに示すように、抗VWFアプタマー(VWF9.14T79VRT7(配列番号:7))はrTPAと比較して優れた血栓溶解活性を有した。
【
図19】
図19はネズミ頭蓋内出血モデルで血管損傷に続く1回拍出量を示すグラフである。マウスは、ベヒクル、rTPA、抗VWFアプタマー(VWF9.14T79-VRT7(配列番号:7))または抗VWFアプタマー(VWF9.14T79-VRT7)およびVWF解毒剤(VWF9.14T79-T79-AO2(AO55(配列番号:157)とも称される)で処理された。
【
図20A-E】
図20は、アプタマー9.14T79vrt7(配列番号:7)は高せん断力下で血小板粘着を阻害すること、全血で血小板凝集を阻害すること、および血栓症をin vivoで予防することを示す。アプタマーは用量依存態様でヒト血小板粘着を予防した。
図20A:緩衝液コントロールは100%血小板粘着を示した。アプタマー活性はコントロールに対するパーセンテージとして測定された。
図20B:このアッセイでは56nmol/Lで約50%の血小板粘着が示され、一方、
図20Cでは900nmol/Lで完全な阻害が示された(各グループでn=3)。
図20D:アプタマーは用量依存態様で血小板粘着を阻害し、56-900nmol/Lの用量で有意な阻害があった(p<0.05)(各グループでn=3)。
図20E:用量応答曲線の線形回帰分析は、当該アプタマーのlogIC
50は1.86(72.5nmol/L)であると決定した。
【
図21】
図21は、T79vrt7(配列番号:7)は血小板凝集を完全に阻害することを提示するPFA-100の結果を示すグラフである。100-400nmol/Lの用量は当該アッセイの上限を超え、25nMはコントロールと比較して有意な血小板凝集を示した。(n=4/グループ)(p<0.01)。
【
図22】
図22は、用量範囲0.009375mg/kg-3mg/kgの9.14T79vrt7(配列番号:7)で処理されたネズミの頸動脈血栓症を示すグラフである。図は、0.0185 mg/kgの低い用量で、陰性コントロール(n=3/グループ)と比較して頸動脈の開存性が存在したことを示している。明確にするために0.0375mg/kgを超える用量は提示されなかったが、いずれも血管開存性を示す。
【
図23A-D】
図23は、アプタマー9.14T79vrt7/DTRI-031(配列番号:7)は、rTPAと比較してネズミの頸動脈閉塞で優れた血栓溶解を提示することを示す。
図23A.0.5mg/kgの用量でアプタマー処理されたマウス(n=8)はrTPA処理マウス(10mg/kg用量、n=8)(p<0.05)および食塩水コントロール(n=8)(p<0.01)の両方と比較して優れた血栓溶解を示す。マウス頸動脈の組織病理学は、アプタマー処理動物(
図23B)は、rTPA動物(
図23C)および食塩水コントロール(
図23D)と比較して閉塞血栓が存在しない開存血管を有することを示した(n=8/グループ)。
【
図24A-B】
図24は、アプタマー9.14T79vrt7/DTRI-031(配列番号:7)は、イヌ全血の全血栓形成分析系で血小板粘着および凝集を予防すること、イヌで頸動脈閉塞を再疎通させること、および脳出血または塞栓形成を示さないことを示す。
図24A:陰性食塩水コントロールと比較した、12.5nmol/L、18.75nmol/L、25nmol/Lおよび100nmol/L用量の9.14T79vrt7とともにインキュベートしたイヌ全血(n=5/グループ)(p<0.05)。
図24B:毎分の最初の10秒間のコラーゲン細管を超えて流れる全血の静止画像。コントロールグループで観察されるもやもやした区画は凝集した血小板である。9.14T79vrt7の用量は100nmol/Lであった。
【
図24C.D.E.H.K】(
図24C-G):閉塞から45分後の9.14T79vrt7の投与は、rTPA(
図24F)および食塩水コントロール(
図24G)と比較して、3匹の被検イヌ(
図24C-E)の各々で再疎通をもたらした(n=5/グループ)。
図24H:rTPA(
図24I)またはコントロール(
図24J)と比較して、9.14T79vrt7は頭蓋内出血も血栓塞栓症も引き起こさなかった(n=3/グループ)。頸動脈の組織学は、rTPA(
図24L)およびコントロール(
図24M)と比較して、9.14T79vrt7処理イヌ(
図24K)の閉塞部分の再疎通を立証した(n=3/グループ)。
【
図24F.G.I.J.L.M】(
図24C-G):閉塞から45分後の9.14T79vrt7の投与は、rTPA(
図24F)および食塩水コントロール(
図24G)と比較して、3匹の被検イヌ(
図24C-E)の各々で再疎通をもたらした(n=5/グループ)。
図24H:rTPA(
図24I)またはコントロール(
図24J)と比較して、9.14T79vrt7は頭蓋内出血も血栓塞栓症も引き起こさなかった(n=3/グループ)。頸動脈の組織学は、rTPA(
図24L)およびコントロール(
図24M)と比較して、9.14T79vrt7処理イヌ(
図24K)の閉塞部分の再疎通を立証した(n=3/グループ)。
【
図25】
図25は、解毒剤オリゴヌクレオチドは9.14T79vrt7/DTRI-031(配列番号:7)をex vivoおよびネズミ大腿静脈モデルで無効にすることを示す。グラフは、何らの処置も施されていないマウスの正常な止血に対する%として表されている。非処理コントロールグループ(データは示されていない)は食塩水処理グループと同様であった(n=7/グループ)。0.375mg/kgで投与された9.14T79(n=11)は、コントロール及び食塩水処理グループと比較して凝塊破壊を示さなかった(p<0.0001)。アプタマー投与から5分後の解毒剤の添加およびそれから2分後の凝塊破壊の測定は、アプタマーを投与されなかった動物(n=7)に類似する完全な出血への逆転を示した。AO単独投与は、陰性コントロールと比較して血栓の増加を生じなかった(データは示されていない)(
*=統計的有意)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は部分的には本発明者らの発見を基礎にし、前記発見は、血餅の予防(抗血栓活性)および治療(血栓溶解活性)の両方で有用な新規で最適化された可逆性VWF標的アプタマーに関する。以前のVWF標的アプタマーと比較して、本開示のVWF標的アプタマーはヌクレアーゼ分解に対して増強された安定性を有し、サイズが小さくて化学合成を容易にし、in vivoで延長された循環時間を示す。
本明細書で開示されるものは、アプタマーおよび解毒剤の組成物とともに、VWF標的薬剤(例えば新規に発見されたVWF標的アプタマー)を用いて対象動物で血餅を予防および治療する方法である。これらの組成物および方法はいくつかの適用で有用であり得る。前記適用には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):血栓の予防若しくは治療(in vitro、in vivo、ex vivo)、または卒中、脳血管の血栓、深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓症(PE)、心房細動、冠状動脈血栓、心臓内血栓、術後血栓、癌誘発血栓症、癌関連トロンビン発現、感染、および播種性血管内凝固症候群(DIC)に随伴する血栓の予防若しくは治療。
【0012】
複数のアプタマーが本明細書で提供される。本明細書で用いられるように、“アプタマー”という用語は、標的分子に高い親和性で特異的に結合する一本鎖オリゴヌクレオチドを指す。アプタマーは、組合せ(combinatorial)オリゴヌクレオチドライブラリーを標的分子(例えばVWF)との高い親和性結合についてスクリーニングすることによって、標的分子に対して創出することができる。例えば以下を参照されたい:Ellington and Szostak, Nature 1990; 346: 8 18-22 (1990), Tuerk and Gold, Science 249:505-l0, 1990。本明細書で開示するアプタマーは、当業界で周知の方法を用いて合成できる。例えば、開示のアプタマーは、多様な市場の販売業者(以下を含む:Integrated DNA Technologies, Inc.(IDT), Sigma-Aldrich, Life Technologies, or Bio-Synthesis, Inc.)によって利用される標準的なオリゴヌクレオチド合成技術を用いて合成され得る。
【0013】
アプタマーは、配列番号:1および配列番号:2または配列番号:3-102のいずれか1つと少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%配列同一性を有するポリヌクレオチドを含むことができる。アプタマーは、配列番号:3-6(表1のヌクレオチド配列T25、T49、T59、またはT79)のいずれか1つと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%配列同一性を有するポリヌクレオチドを含むことができる。いくつかの実施態様では、アプタマーは、配列番号:7(表2のT79vrt7)、配列番号:8(表2のヌクレオチド配列DTRI-019)、または配列番号:9(表2のヌクレオチド配列DTRI-021)を含む。
“ポリヌクレオチド”、“ヌクレオチド配列”、“ポリヌクレオチド配列”、“核酸”、および“核酸配列”という用語は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド(前記用語は互換的に用いることができる)、またはその任意のフラグメントを指す。これらの語句はゲノム起原、天然起原または合成起原のDNA若しくはRNAを指すことができる。
【0014】
ヌクレオチド配列に関しては、“配列同一性”、“パーセント同一性”および“%同一性”という用語は、標準化アルゴリズムを用いてアラインメントされた少なくとも2つの配列間の塩基適合のパーセンテージを指す。そのようなアルゴリズムは、比較される配列に標準化された再現可能な方法でギャップを挿入して、2つの配列間でアラインメントを最適化することができ、したがって2つの配列のより有意義な比較を達成する。ヌクレオチド配列の配列同一性は当業界で知られているように決定することができる。例えば米国特許7,396,664号を参照されたい。一般的に用いられ自由に利用できる配列比較アルゴリズム一式が米国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information(NCB))のBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)によって提供される。それらはいくつかの供給源(NCBI(Bethesda, Md.)を含む)からそのウェブサイトで入手できる。BLASTソフトウェア一式には“blastn”を含む多様な配列分析プログラムが含まれ、blastnを用いて、既知のヌクレオチド配列が多様なデータベースに由来する他のポリヌクレオチドとアラインメントされる。さらにまた“BLAST2配列”と称されるツールが利用可能であり、2つのヌクレオチド配列のペアワイズ直接比較のために用いられる。“BLAST2配列”はNCBIウェブサイトにアクセスして対話形式で利用することができる。
【0015】
ヌクレオチド配列に関しては、配列同一性は、規定の全ヌクレオチド配列(例えば本明細書で同定された特定の配列によって規定される)の全長にわたって測定される。さらにまた、本明細書で測定される配列同一性は、ヌクレオチド配列に対する何らかの更なる改変に関係なく、当該ヌクレオチド配列のヌクレオチド塩基の同一性を基準にする。例えば、本明細書に記載の表のヌクレオチド配列は当該ヌクレオチド配列に対する改変、例えば2’フルオロ、2’O-メチル、および逆向きデオキシチミジン(inverted deoxythymidine)(idT)改変を含むことができる。これらの改変は配列同一性決定では考慮されない。したがって、塩基が例えば2’フルオロアデニン(または2'O-メチルなど)であるならば、前記塩基は、別の配列との配列同一性決定の目的のためにはアデニンであると理解される。同様に、本明細書に記載の表のヌクレオチド配列の3’idT改変もまた配列同一性決定で考慮されない。
【0016】
また別に、アプタマーは、5’から3’に向けて以下を含むポリヌクレオチドと少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%配列同一性を有するポリヌクレオチドを含むことができる:2、3、4、または5ヌクレオチドを含むかそれから成る第一のステム形成領域、ヌクレオチド配列AACを含むかそれから成る第一のループ領域、3、4または5ヌクレオチドを含むかそれから成る第二のステム形成領域、ヌクレオチド配列CCを含むかそれから成る第二のループ領域、2-8ヌクレオチドから成る第三のステム形成領域、1-12ヌクレオチドから成る第三のループ領域またはスペーサー配列、2-8ヌクレオチドから成り第三のステム形成領域とともにステムを形成することができる第四のステム形成領域、ヌクレオチドCを含むかそれから成る第四のループ領域、3、4または5ヌクレオチドを含むかそれから成り第二のステム形成領域とともにステムを形成することができる第五のステム形成領域、ヌクレオチド配列CAGAを含むかそれから成る第五のループ領域、および2、3、4または5ヌクレオチドを含むかそれから成り第一のステム形成領域とともにステムを形成することができる第六のステム形成領域。そのようなアプタマーの非限定的な例は、
図1-3および15-16にT25、T49、T59、T59vrt19、T79、T79vrt7、またはDTRI-019として示される。
【0017】
本明細書で用いられるように、“スペーサー配列”は、アプタマーの結合活性を妨害しない任意の化学的スペーサーであり得る。例えば、スペーサー配列には、ヘキサエチレングリコールスペーサー(例えばDTRI-009参照)、C3スペーサー、スペーサー9、または、当業者に公知の、アプタマーの適切な折り畳みおよび二次構造を促進及び維持する任意の他の適切な安定的リンカーが含まれ得るが、ただしこれらに限定されない。
例えば
図1-3および15-16に提示された普遍的な構造に基づいて、当業者は、アプタマーの全体的構造およびおそらくは機能を維持しながらいくつかの改変を当該配列で実施しできることを容易に認識しよう。例えば、当業者は、第一のステム形成領域ACGおよび第六のステム形成領域CGUをUGCおよびGCAまたはCCGおよびCGG(DTRI-013、配列番号:101)にそれぞれ簡単に切り替え、アプタマーのステム構造をなお維持しよう。付け加えれば、ステム領域内の塩基を変化させるが全体的なピリミジンおよびプリン塩基組成を保存して、ステム領域を同様な融解温度でハイブリダイズさせるステム形成領域の改変を実施できよう。当業者はまた、アプタマーに対して実施される普遍的なアプタマーのステムループ構造を破壊する変更は、おそらくその標的と効率的に結合できないアプタマーを生じるであろうということを理解していよう。
いくつかの実施態様では、アプタマーは、5’から3’に向けて配列番号:1(CGAAC(U/T)GCCC(U/T)C)、1-18(またはその間の任意の範囲)ヌクレオチドから成る可変ヌクレオチド配列またはスペーサー配列、および配列番号:2(GACGCACAGACG)を含むポリヌクレオチドと少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%配列同一性を有するポリヌクレオチドを含むことができる。
【0018】
本明細書で用いられるように、“可変ヌクレオチド配列”は、所定の長さについて可能な任意のヌクレオチドであり得る。例えば、5ヌクレオチドから成る“可変ヌクレオチド配列”には、5ヌクレオチドを有する45(または1,025)の任意の可能なヌクレオチド配列が含まれ得る。
いくつかの実施態様では、アプタマーは、長さが58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17または16ヌクレオチドを超えないことができる。
【0019】
いくつかの実施態様では、アプタマーは、ヒトVWFタンパク質に対して、150、125、100、90、80、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2.5、2、1、0.5または0.1ナノモル(nM)未満の解離定数(KD)を有することができる。アプタマーのKDは、実施例で本発明者らが用いた方法論によって測定することができる。例えば、ヒトVWFタンパク質を用いる二重フィルターニトロセルロースフィルター結合アッセイを実施することができる。
アプタマーは、非改変形であるか、または少なくとも1つのヌクレオチド塩基改変を含む改変形である、ポリヌクレオチド(RNA、DNA、またはペプチド核酸(PNA))を含むことができる。例えば、ヌクレアーゼ分解からポリヌクレオチドを保護する、および/またはポリヌクレオチドの安定性を増強するためのポリヌクレオチドのヌクレオチド塩基改変は当業界で周知である。本発明にしたがって用いることができる一般的なヌクレオチド塩基改変には、デオキシリボヌクレオチド、2’-O-メチル塩基、2’-フルオロ塩基、2’アミノ塩基、逆向きデオキシチミジン塩基、5’改変および3’改変が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0020】
いくつかの実施態様では、アプタマーは、2’フルオロ改変、2’O-メチル改変、5’改変および3’改変から成る群から選択される、少なくとも1つのヌクレオチド塩基改変を含む改変形を含むポリヌクレオチドを含むことができる。
典型的な5’改変は、逆向きデオキシチミジン塩基、リンカー配列(例えばC6)の付加、コレステロールの付加、別の部分(例えばPEG)との複合物化を可能にする反応性リンカー配列の付加を含むことができるが、ただしこれらに限定されない。典型的な3’改変は、逆向きデオキシチミジン塩基および逆向き非塩基性残基を含むことができるが、ただしこれらに限定されない。
【0021】
いくつかの実施態様では、アプタマーは、さらに当該ポリヌクレオチドの5’末端または3’末端にテールヌクレオチド配列を含むことができ、前記テールヌクレオチド配列は、当該ポリヌクレオチドの連続する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15以上のヌクレオチドと塩基対を形成することはできない。テールヌクレオチド配列は、2-20ヌクレオチドまたはその間の任意の範囲から成ることができる。例示的なテールヌクレオチド配列として、本発明者らは、アプタマーの3’末端に解毒剤結合のための潜在的な人工核生成部位として5-ヌクレオチドウラシル(オリゴUテール)を添加した。したがって、いくつかの実施態様では、テールヌクレオチド配列はヌクレオチド配列(U/T)(U/T)(U/T)(U/T)(U/T)を含むことができる。しかしながら、他のヌクレオチド配列をテールヌクレオチド配列として供し得ることもまた意図され、それらヌクレオチド配列は、アプタマーのポリヌクレオチドの連続する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15以上のヌクレオチドと塩基対を形成することはできない。加えて、テールヌクレオチド配列はまた、アプタマーの活性に顕著な影響を与えることなく、アプタマーの5’末端にもまた首尾よく付加された。
【0022】
追加の5’および/または3’改変として、アプタマーは、5’リンカーおよび/または3’リンカーを含むポリヌクレオチドを含むことができる。ポリヌクレオチドのための一般的な5’および/または3’リンカーは当業界で公知であり、ペプチド、アミノ酸、核酸とともに同種機能性リンカーまたは異種機能性リンカーが含まれ得る。アプタマーとの共有結合の形成を促進することができる特に有用な複合物化試薬は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルおよび/またはマレイミドまたはクリックケミストリーの使用を含むことができる。ポリヌクレオチドのための典型的な5’および/または3’リンカーにはアミノC3、C4、C5、C6またはC12-リンカーが含まれ得るが、ただしこれらに限定されない。
アプタマーはさらに安定剤を含むことができる。本明細書で用いられるように、“安定剤”は、ポリヌクレオチドの安定性を増強するか、および/またはそのin vivo循環時間を延長し得る任意の物質を指す。典型的な安定剤は当業界で公知であり、ポリエチレングリコール(PEG)、コレステロール、アルブミン、またはエラスチン様ポリペプチドが含まれ得るが、ただしこれらに限定されない。
【0023】
アプタマーおよび安定剤は共有結合または非共有結合で“連結”できる。加えて、アプタマーおよび安定剤は、本明細書に記載する5’および/または3’リンカーを用いて連結できる。アプタマーおよび安定剤はアプタマーの5’末端および/または3’末端で連結できる。アプタマーおよび安定剤を非共有結合で連結するために、アプタマーおよび安定剤をタグ系によって連結できる。“タグ系”には高い親和性で互いに結合できる任意のグループの薬剤が含まれ得る。いくつかのタグ系が当業界で周知であり、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、ビオチン/ニュートラアビジン、またはジゴキシゲニン(DIG)系が含まれるが、ただしこれらに限定されない。いくつかの実施態様では、タグ系はビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジンを含む。そのような実施態様では、アプタマーはビオチンを含むために5’または3’末端で改変され、一方、安定剤はストレプトアビジンまたはアビジンを含むために改変され得る。また別には、アプタマーはストレプトアビジンまたはアビジンを含むために5’または3’末端で改変され、一方、安定剤はビオチンを含むために改変され得る。
【0024】
本明細書に記載のアプタマーのいずれか1つを含むダイマー、トリマー、テトラマーもまた提供される。“ダイマー”は、例えばポリヌクレオチドのin vivo安定性の増強および/または循環時間の延長のために2つのアプタマー分子を一緒に連結することを指す。“トリマー”は、例えばポリヌクレオチドのin vivo安定性の増強および/または循環時間の延長のために3つのアプタマー分子を一緒に連結することを指す。“テトラマー”は、例えばポリヌクレオチドのin vivo安定性の増強および/または循環時間の延長のために4つのアプタマー分子を一緒に連結することを指す。アプタマー分子は共有結合、非共有結合、または両方を組み合わせて一緒に連結することができる。アプタマー分子はそれらの5’または3’末端で連結することができる。アプタマーを非共有結合で連結するために、アプタマーはタグ系または足場系により連結することができる。
【0025】
解毒剤もまた本明細書で提供され、配列番号:103-180(表3のヌクレオチド配列)のいずれか1つと少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%配列同一性を有するポリヌクレオチドが含まれる。また別に、解毒剤には、本明細書記載のアプタマーのいずれか1つの少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25以上のヌクレオチドに対して逆相補性であり、かつ前記ヌクレオチドとハイブリダイズすることができる配列を有するポリヌクレオチドが含まれ得る。
【0026】
本明細書記載のアプタマーまたは解毒剤のいずれかを含む医薬組成物が提供される。医薬組成物は、医薬担体、賦形剤、または希釈剤(すなわち作用性物質)を含むことができ、それらに暴露される細胞または哺乳動物に対して用いられる投薬および濃度で非毒性である。医薬製剤はしばしばpH緩衝水溶液に存在する。医薬担体の例には以下が含まれる:緩衝液、例えばリン酸、クエン酸および他の有機酸;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジン;単糖類、二糖類、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;および/または非イオン性界面活性剤、例えばTWEENTMの商標名の界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICSTM界面活性剤。いくつかの実施態様では、医薬担体は、約20mM Hepes(pH7.4)、150mM NaCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、5mM KClを含む緩衝液を含むことができる。
【0027】
対象動物で血餅形成を予防する方法が提供される。前記方法は、本明細書記載のアプタマー組成物のいずれか1つを、当該対象動物で血餅形成を予防するために治療的に有効な量で当該対象動物に投与する工程を含むことができる。“血餅形成を予防する”は、血餅の可能性を軽減すること、血餅サイズを減少させること、または血餅形成の更なる進行を遅らせることを含むことができる。
本明細書で用いられるように、“対象動物”という用語は、ヒトおよび非ヒト動物の両方を指す。本開示の“非ヒト動物”という用語は、全ての脊椎動物、例えば哺乳動物および非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、乳牛、マウス、ニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。いくつかの実施態様では、対象動物は人間の患者である。
【0028】
血餅予防の必要がある対象動物は、例えば卒中、脳血管の血栓、深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓症(PE)、心房細動、冠状動脈血栓、心臓内血栓、術後血栓、癌誘発血栓症、癌関連トロンビン発現、感染、播種性血管内凝固症候群(DIC)および動脈血栓症(脳動脈、冠状動脈および頭頸部の末梢動脈、内臓動脈、腕および脚の動脈を含む)に随伴する(ただしこれらに限定されない)血餅の予防を必要とすることがある。いくつかの実施態様では、血餅の予防を必要とする対象動物は、心房細動を罹患するか、または深部静脈血栓症、卒中、心臓発作、または肺塞栓症を有するリスクがあることがある。
治療的に有効な量または本明細書で用いられる有効量は、血餅の予防または治療のために対象動物に投与されるとき、(上記に記載した)治療を達成するために十分な組成物の量を意味する。治療的に有効な量は、処方若しくは組成、疾患およびその重篤度、並びに治療される対象動物の年齢、体重、健康状態および応答性にしたがって変動するであろう。
【0029】
対象動物で血餅を予防する方法の開示に加えて、本発明者らは、VWF標的薬剤を血栓溶解的に用い、既に形成された血餅を減少させまたは“破壊”できることを示す。実施例で、本発明者らは、開示のVWF標的アプタマーの1つ、T79vrt7/DTRI-031は、ネズミ頸動脈閉塞モデルで組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(rTPA)より優れていることを示す。驚くべきことに、これらの結果は、VWF標的薬剤はまた形成された血餅の治療に用いられるだけでなく(血栓溶解活性)、血餅形成の予防(抗血栓活性)にも同様に用いることができることを示す。
この新しいVWF標的薬剤の使用に基づいて、対象動物で血餅を治療する方法もまた提供される。前記方法は、対象動物で血餅を減少させるために治療的に有効な量で、VWF標的薬剤を当該対象動物に投与する工程を含むことができる。“血餅を治療する”または“血餅を減少させる”ということは、凝塊部位で血流を増加させるために血餅のサイズおよび/または形を減少させることを指す。
血餅の治療を必要とする対象動物は、例えば、卒中、脳血管の血栓、深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓症(PE)、心房細動、冠状動脈血栓、心臓内血栓、術後血栓、癌誘発血栓症、癌関連トロンビン発現、感染、播種性血管内凝固症候群(DIC)、および動脈血栓症(脳動脈、冠状動脈および頭頸部の末梢動脈、内臓動脈、腕および脚の動脈を含む)(ただしこれらに限定されない)に随伴する血餅の治療を必要とし得る。いくつかの実施態様では、血餅の治療を必要とする対象動物は、深部静脈血栓症、卒中、心臓発作、または肺塞栓症を罹患する。
【0030】
本明細書で用いられるように、“VWF標的薬剤”はフォン・ビルブラント因子(VWF)タンパク質の生物学的活性の1つ以上を部分的にまたは完全に遮断、阻害または中和することができる任意の薬剤(ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは小分子を含むが、ただしこれらに限定されない)である。いくつかの実施態様では、VWF標的薬剤は、VWFタンパク質のA1ドメインと結合して、gp1bアルファタンパク質によるVWFタンパク質の結合を遮断することができる薬剤を含むことができる。VWF標的薬剤は直接的または間接的態様で機能することができる。例えば、VWF標的薬剤はVWFタンパク質と直に結合し、したがって部分的にまたは完全にVWFタンパク質の1つ以上の生物学的活性をin vitroまたはin vivoで遮断、阻害または中和することができる。VWF標的薬剤はまた、(1)VWFと結合できる別の(例えば活性化、誘発、遮断または阻害)分子と相互作用することによって、または(2)細胞内でVWFタンパク質の発現(すなわち転写または翻訳)を調節するか若しくは影響を与えることによって間接的に機能することができる。
VWFタンパク質は、任意の哺乳動物(人間または家畜化動物(例えばイヌ、ネコ、ウマ、乳牛、ブタ、マウスまたはラット)を含むが、ただしこれらに限定されない)で見出されるVWFタンパク質のいずれかであり得る。
【0031】
VWF標的薬剤は、ポリペプチド(ペプチドまたは抗体を含むがただしこれらに限定されない)であり得る。本明細書で用いられるように、“抗体”という用語は、当業界で用いられる最も広い意味で用いられ、抗体を土台とするポリペプチド親和性物質を指す。例えば抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体、または抗体フラグメント(例えばFab、Fab'、F(ab')2、Fvフラグメント)、ジアボディ、線状抗体、ナノボディ、または抗体フラグメントから形成されるマルチ特異性抗体を含むことができる。抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体または完全にヒト抗体であり得る。抗体は、免疫グロブリンの公知の5主要クラス(IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMを含む)の任意の1つであり得る。いくつかの実施態様では、VWF標的薬剤は、VWFタンパク質と結合し、それによってVWFタンパク質の生物学的活性の1つ以上を部分的または完全に遮断、阻害、または中和することができる抗VWF抗体であり得る。適切な抗VWF抗体にはカプラシズマブ、ALX-0681、またはALX-0081が含まれる(ただしこれらに限定されない)。
【0032】
VWF標的薬剤として有用なペプチドは、当業界で周知の技術(例えばファージディスプレー)を用いて同定することができる。
いくつかの実施態様では、VWF標的薬剤は、VWFタンパク質と結合し、それによってVWFタンパク質の生物学的活性の1つ以上を部分的または完全に遮断、阻害、または中和することができるアプタマーであり得る。適切なアプタマーには、WO/2008/066621 A3(Sullenger et al.)に記載されたものおよびその中に記載されたアプタマーが含まれる(ただしそれらに限定されない)。
VWF標的薬剤はまた小分子であり得る。小分子は、約2500ダルトン、2000ダルトン、1000ダルトン、または500ダルトンより小さい分子量を有する化学分子であり得る。
【0033】
本明細書記載の血餅を予防または治療する方法はさらに、解毒剤をアプタマーまたはVWF標的薬剤を中和するために治療的に有効な量で当該対象動物に投与する工程を含むことができる。アプタマーまたはVWF標的薬剤を“中和する”ということは、アプタマーまたはVWF標的薬剤の抗血栓活性または血栓溶解活性を低下させることを指す。
本発明にしたがって用いることができる解毒剤には、配列特異的解毒剤、例えば本明細書に記載の解毒剤およびWO/2008/066621 A3に記載されたものが含まれ得る。解毒剤にはまた配列非特異的解毒剤(すなわち陽イオンポリマー)、例えばWO/2008/121354に記載のものが含まれ得る。
【0034】
本明細書に記載の組成物(すなわちアプタマー、解毒剤、および医薬組成物)は、当業者に公知の任意の手段によって投与され得る。これには、経口、局所、鼻内、腹腔内、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、髄腔内、経皮、鼻咽頭、病巣内、腫瘍内、皮内、または経筋肉吸収が含まれるが、ただしこれらに限定されない。したがって、組成物は、摂取可能、注射可能、局所、または座薬処方物として処方することができる。対象動物への組成物の投与は用量依存態様で有益な効果を示すことができる。したがって、広い限界内で、大量の組成物の投与は、少量の投与よりも有益な生物学的効果の増大を達成すると予想される。さらにまた、毒性が認められるレベル未満の投薬量で有効性がまた予想される。
【0035】
任意の与えられた事例で投与される所定の投薬量は、当業者に周知のように、投与される組成物、治療または阻害されるべき疾患、対象動物の状態、並びに組成物の活性および対象動物の応答を改変し得るその他の関連する医学的要件にしたがって調整されることは理解されるであろう。例えば、個別の対象動物のための特定の用量は、年齢、体重、一般的健康状態、食事、投与のタイミングおよび態様、排出速度、併用される医薬、および治療が適用される個別の疾患の重篤度に左右される。ある患者に対する投薬量は、通常的な考察を用いて、例えば本明細書に記載の組成物および既知薬剤の弁別的活性の慣行的比較することによって、例えば適切な通常的薬理学的プロトコルの手段により決定できる。
【0036】
対象動物に対する最大投薬量は、望ましくないまたは容認し得ない副作用を生じない最高の投薬量である。個々の治療レジメンに関する変数は大きく、かなりの用量範囲が予想される。投与ルートもまた投薬要件に影響するであろう。組成物の投薬は、無治療と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上、血餅を予防または治療するであろう。
【0037】
本明細書に記載の組成物は、1回または2回以上対象動物に投与して、効果的に血餅を予防または治療することができる。適切な投薬量の範囲は数百マイクログラムの有効成分の規模で、約0.01から10mg/kg/日の範囲、好ましくは約0.1から1mg/kg/日の範囲である。投与に必要な有効成分の正確な量は主治医の判断に依存し、各対象動物に固有であり得る。本明細書に記載の組成物の治療的に有効な量は、とりわけ投与スケジュール、投与される薬剤のユニット用量、組成物が他の治療薬と併用されるか否か、レシピエントの状況及び健康状態、および個別の組成物の治療活性に左右されることは当業者には明白であろう。
【0038】
本開示は、本明細書に示す成分または方法の具体的詳細に限定されない。本明細書に開示する組成物および方法は、下記の開示を考慮し当業者には明白な多様な仕方で作製、実施、使用、達成および/または形成することができる。本明細書で用いる語句および用語は単に記述することを目的とし、特許請求の範囲を限定するものと解されるべきではない。本明細および特許請求の範囲で用いられる通常的指標、例えば第一、第二および第三は多様な構造または方法の工程を指し、何らかの具体的な構造若しくは工程、またはそのような構造若しくは工程に対する何らかの個別の順序若しくは配置を指示すると解釈されることを意図しない。本明細書に記載する全ての方法は、本明細書で特段の指示がなければ、或いは文脈に明瞭な矛盾がなければ任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供される、任意のおよび全ての例または例示的表現(例えば“such as”)は、単に本開示を容易にすることを意図し、特段の請求がなければ、本開示の範囲の何らかの制限を示唆するものではない。いずれの明細書の表現および図面に示す構造も、特許請求されていない任意の成分が本開示の主題の実施のために本質的であることを示すものと解釈されるべきではない。“含む(including)”、“含む(comprising)”若しくは“有する(having)”という用語またはその変化形の本明細書における使用は、それ以降に表示される成分およびそれらの等価物とともに追加の成分を包含することを意図する。ある種の成分を“含む(including)”、“含む(comprising)”若しくは“有する(having)”と列挙する実施態様はまた、それらある種の成分から“本質的に成る”またはそれらある種の成分から“成る”と考えられる。
【0039】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書で特段の指示がなければ、単に当該範囲に含まれるそれぞれ別々の値を個々に指すための省略方法として供することを意図し、それぞれ別々の値はあたかも個々に列挙されたかのごとくに当該説明中に取り込まれる。例えば、濃度範囲が1%から50%と記載されている場合、例えば2%から40%、10%から30%、または1%から3%などの値を本明細書にはっきりと列挙することが意図される。それらは具体的に意図されているものの例であり、列挙された最低値と最高値の間の、および最低値と最高値を含む全ての可能な数値の組合せが本開示にはっきりと記載されているとみなされるべきである。個別の列挙量または量の範囲を表すための“約”という語の使用は、当該列挙量に非常に近い値が当該量に含まれることを示すことが意図され、例えば、それらの値は、製造ばらつき、測定実施における装置及び人為的誤差などに起因し得るかまたは当然起因するであろう。量を指す全てのパーセンテージは、特段の指示がなければ重量による。
【0040】
本明細書に引用する任意の非特許文書または特許文書を含むいずれの引用も従来技術を構成するということの容認ではない。特に、特段の記載がなければ、本明細書のいずれの文書の引用も、それら文書のいずれかが米国または任意の他の国における当業界の通常的な一般的知識の部分を形成することを容認するものではないことは理解されるであろう。引用文献のいずれの考察もそれらの著者らが主張するものの正確さおよび適切さを表明し、本出願人は、本明細書に引用する文書のいずれの正確さおよび適切さにも反駁する権利を保留する。本明細書に引用する全ての参考文献は、特段に指示しないかぎり、参照によってその全体が本明細書に含まれる。引用文献で見出される任意の定義および/または記載との間に何らかの相違が存在する場合には、本開示が優先するであろう。
文脈による特段の規定または指定がないかぎり、“a”、“an”、および“the”という用語は“1つ以上”を意味する。例えば“a protein”または“an RNA”は、“1つ以上のタンパク質”または“1つ以上のRNA”をそれぞれ意味すると解釈されるべきである。
以下の実施例は単なる例証であることが意図され、本発明の範囲または添付の特許請求の範囲の制限を意味しない。
【実施例0041】
実施例1-VWFアプタマーの最適化
材料と方法
RNAアプタマーの調製および折り畳み
RNAアプタマーは通常のオリゴヌクレオチド合成方法を用いて自社内で合成した。血小板機能分析(PFA)及びin vivoモデルの前に、RNA系アプタマーを適切な生理学的緩衝液、例えば血小板結合緩衝液(20mM Hepes(pH7.4)、150mM NaCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、5mM KCl)中で“折り畳む”ことができる。アプタマー溶液を95℃で3分間加熱し直ちに氷上に置き、続いて5から10分間室温にさせた。
【0042】
アプタマー結合アッセイ
親和性定数(Kd値)は二重フィルターニトロセルロースフィルター結合アッセイ(Rusconi et al, Thromb.Haemost.84:841-848, 2000)を用いて決定した。全ての結合試験は結合緩衝液(20mM HEPES(pH7.4)、150mM NaCl、2mM CaCl2および0.01%BSA)を用い37℃で実施した。ヒト精製VWF(第VIII因子を含まない)を以下の業者から購入し(Haematologic Technologies Inc.;Essex Junction, VT)、二重フィルターニトロセルロースフィルター結合アッセイに用いてアプタマーのKdを決定した。簡単に記せば、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)および[γ32P]ATP(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)を用いて、RNAを5’末端で末端標識した(Fitzwater and Polisky, Methods Enzymol.267:275-301, 1996)。末端標識RNAを結合緩衝液Fで希釈し、65℃で5分間熱変性させ、その後37℃で平衡化した。直接結合は、微量の32P-RNAを種々の濃度のVWFタンパク質と結合緩衝液F中で37℃、5分間インキュベートすることによって実施した。ニトロセルロース膜に結合した核酸-タンパク質複合体分画をホスファイメージャー(Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA)を用いて定量した。放射能標識核酸の非特異的結合を差し引いて、特異的結合のみを残した(Wong and Lohman, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5428-5432, 1993)。
【0043】
FeCl3-誘発動脈血栓
マウスで動脈血栓を誘発するFeCl3化学損傷モデルを述べる。挿管の前に、密閉チャンバーで4から5%のイソフルランを5-7分間吸入させて麻酔を導入した。ガス導入後に、27g1/2”針を用いてアバチン/トリブロモエタノール(1.25%、12.5mg/mL)を効果に応じて100-250mg/kgの間の用量で1回IP注射した。体重に応じて総体積は0.15から0.50ccの範囲であった(典型的には20-25gのマウス)。挿管の実施前に、動物を導入チャンバーにさらに1-2分間戻した。マウスを専用の挿管スタンドに移し、針のない20から22ゲージのカテーテルを用いて挿管した。挿管を確認したら、腹側の頸部の毛を剃って温めた手術台にマウスを移した。背側横臥の状態で直ちにマウスをHarvard Apparatusのげっ歯類用換気装置に連結し、70%窒素:30%酸素混合物を用い、1分間に約90-110呼吸および1回換気量約0.2mLで維持した。イソフルランは約1-3%で維持した。体温はPhysitemp TCAT-2DFで約37℃に維持した。
【0044】
術面の麻酔を確認した後、皮膚の正中頸部切開を実施し、筋膜を剥離切開して右総頸動脈を露出させた。右総頸動脈の露出および単離後、左頸静脈を剥離切開によって露出させ、3本の7-0絹結紮糸を配置した。微小外科ハサミを用いて小さな切開を作り、ただ1本の7-0絹結紮糸で止血を維持し、PE-10ポリエチレンカテーテルまたは同等物を静脈に配置し、残りの2本の7-0絹結紮糸を用いて固定した。0.9%食塩水によりカテーテルの開存性を確認したら、Harvard Apparatus PHD2000(または同等物)輸液ポンプを0.5-3μL/分の速度で用いて持続的速度の0.9%食塩水輸液を開始し、試験終了まで維持した。頸動脈を取り囲むように0.5-PSBトランジットタイムフロープローブ(Transonic Systems Inc.)を配置して血流を測定した。試験の間、血流および温度の測定値をLabChartソフトウェア(ADInstruments)を用いて捕捉した。正常な血流(1.0から3.0mL/分)が少なくとも5分間維持されたら、抗血栓試験薬またはコントロールを頸静脈カテーテルから100から200μLの体積で食塩水系ベヒクルを用い1分間にわたって投与した。アプタマー薬の用量は0.005から1.0mg/kgの範囲であった。
【0045】
薬剤または解毒剤投与の約5分後に、1つまたは2つのろ紙小片(1mmx2mm)を2.5%から10%FeCl3で飽和させた。続いて、これらの“パッチ”をフロープローブに近い露出頸動脈の腹側+/-背側面に置いた。それらパッチを所定の位置に3分間置いた。パッチを除去した後、動脈の対応領域を0.9%食塩水で軽く洗浄した。頸動脈血の移動時間を試験終了点まで持続的に測定した。当該工程の終了点は、安定な血栓形成から60分を超えない時点(すなわち頸動脈移動時間1分当たり約0.0mL)またはFeCl3パッチの適用から60分を超えない時点と定義した。前記終了点に達したら、イソフルランを2-4%に増加させた。続いて血栓形成部位近位の当該動脈に輪にした2本の7-0絹結紮糸を配置した。フロープローブを除去し、絹結紮糸の間で約5から8mm遠位点で動脈を切り離した。動脈切片を組織病理学検査のために取り出した。続いて、動物を過剰用量の麻酔ガスとその後の二次的な物理的方法によって安楽死させた。
【0046】
伏在静脈出血モデル
止血評価のためのマウス伏在静脈出血モデルについて述べる。密閉チャンバーで4から5%のイソフルランを2-3分間吸入させて麻酔を導入した。27g1/2”針を用いてアバチン/トリブロモエタノール(1.25%、12.5mg/mL)を効果に応じて100-250mg/kgの間の用量で1回IP注射した。体重に応じて総体積は0.15から0.50ccの範囲であった(典型的には20-25gのマウス)。挿管の実施前に、動物を導入チャンバーにさらに1-2分間戻した。マウスを専用の挿管スタンドに移し、無針の20から22ゲージのカテーテルを用いて挿管した。挿管を確認したら、頸部腹側および両骨盤肢の内側面の毛を剃って温めた手術台にマウスを移した。背側横臥の状態で直ちにマウスをHarvard Apparatusのげっ歯類用換気装置に連結し、70%窒素:30%酸素混合物を用い、1分間に約90-110呼吸および1回換気量約0.2mLで維持した。イソフルランは約1-3%で維持した。体温はPhysitemp TCAT-2DFおよび直腸プローブで約37℃に維持した。
【0047】
術面の麻酔を確認した後、皮膚の正中頸部切開を実施した。左頸静脈の外科的暴露は剥離切開によって達成した。頸静脈を単離させたら、PE-10ポリエチレンカテーテルまたは同等物を静脈に配置し、輪にした2本の7-0絹結紮糸を用いて固定した。0.9%食塩水によりカテーテルの開存性を確認したら、Harvard Apparatus PHD2000(または同等物)輸液ポンプを0.5-3μL/分の間の速度で用いて持続的速度の0.9%食塩水輸液を開始し、試験終了まで維持した。カテーテルの設置が完了した後で、左右の骨盤肢内側面の皮膚を切開して伏在血管束(伏在動静脈、内側伏在静脈)の全長を露出させた。前記血管束を1-2滴の0.9%食塩水で維持して乾燥を防いだ。
【0048】
試験薬またはコントロールを頸静脈カテーテルから100から200μLの体積で食塩水系ベヒクルを用い1分間にわたってIV投与した。アプタマー薬の用量は0.005から1.0mg/kgの範囲であった。試験薬の投与から約5から120分後に、露出させた伏在静脈を23-26g針で切開し、続いて血管の遠位部分で縦方向に約1から2mmの切開を微小解剖ハサミを用いて作成した。止血が生じるまで、先細りのミニ綿棒で溢血を穏やかに拭い去った。続いて血管の遠位部分の凝塊を23-26g針を用いて除去し、出血を再開させた。止血が再び生じるまで、血液を再度拭い去った。最初の損傷から合計して15から30分の間、各止血の発生後に凝塊破壊を繰り返した。損傷、凝塊破壊、止血、および温度測定を、試験の間ずっとLabChartソフトウェア(ADInstruments)を用いて捕捉した。続いて、100から200μLの体積で対応する解毒剤分子を、試験薬の後で頸静脈カテーテルからIV投与した。RNA系オリゴヌクレオチド解毒剤は0.005から100mg/kgの範囲であった。解毒剤投与から約5分後に、血管遠位部分の凝塊を再度23-26g針で除去して出血を再開させた。止血が再開するまで、血液を拭い去った。15から30分の合計時間の間、各止血の発生後に凝塊破壊を繰り返した。終点に到達したら、約0.5mLの血液を心臓穿刺によって収集するか、または尾大静脈から引き出した。続いて、動物を過剰用量の麻酔ガスとその後の二次的な物理的方法によって安楽死させた。
【0049】
PFA 100プロトコル
血小板機能アナライザー、PFA-100(Dade Behring, Deerfield, IL)は、抗凝固全血で血小板機能の定量的測定を提供する(Ortel et al, Thromb.Haemost.84:93-97, 2000)。簡単に記せば、アプタマーを適切な緩衝液(すなわち、150mM NaCl、20mM HEPES(pH7.4)、5mM KCl、1mM MgCl2および1mM CaCl2;または150mM NaCl、20mM HEPES(pH7.4)、2mM CaCl2;またはPBS)で希釈して熱変性させた。アプタマーを新鮮な全血に表示の最終濃度で添加し、RTで3-5分間インキュベートし、続いてコラーゲン/ADP試験カートリッジを用いてPFA-100で分析を実施した。PFA-100の最大閉鎖時間は300秒であった。アプタマーの解毒活性は、全血をアプタマーと混合し、続いて解毒剤を投与し、PFAで測定することによって測定した。
【0050】
結果
VWF9.14変種
VWF9.14アプタマーを最適化するために、我々は、いくつかのVWF9.14アプタマー切端変種およびいくつかのVWF9.14アプタマー改変変種を作製した。例えば
図1-3を参照されたい。VWF9.14アプタマー切端変種は下記の表1に示される。
【0051】
表1:切端アプタマー
A=2'OHアデニン;C=2’フルオロシトシン;G=グアニン;U=2’フルオロウラシル
idT=3’末端の逆向きデオキシチミジン(下記の配列の長さおよび配列番号はidTを含まない);NB=結合無し;ND=決定せず
【0052】
【0053】
作製したVWF9.14アプタマー改変変種は下記の表2に示される。
表2:VWF9.14アプタマー切端形の改変型
表の凡例:全ての配列が5’から3’方向である。長さは逆向きデオキシチミジンを含まない。fU=2’フルオロウラシル;fA=2’フルオロアデニン;fC=2’フルオロシトシン;
mA=2’O-メチルアデニン;mC=2’O-メチルシトシン;mG=2’O-メチルグアニン;
mU=2’O-メチルウラシル;fG=2'フルオログアニン;rG=2’リボグアニン;
rA=2’リボアデニン;idT=3’末端の逆向きデオキシチミジン;(C6L)=ヘキシルアミノリンカー;(6GLY)=ヘキサエチレングリコールリンカー(9-O-ジメトキシトリチル-トリエチレングルコール,1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイトを用いて取り込まれる);コレステロール=5'末端で取り込まれたコレステロールトリエチレングリコールアミダイト;NB=結合無し;ND=決定されず
【0054】
【0055】
VWF9.14アプタマー切端変種およびVWF9.14アプタマー改変変種の作製に加えて、我々はこれらの変種を標的とするいくつかの解毒剤配列を作製した。それらは下記表3に示される。
【0056】
表3:解毒剤配列
全ての配列は5'から3'方向で示される;長さには逆向きデオキシチミジンは含まれない;
mG=2’O-メチルG;mA=2’O-メチルA;mC=2’O-メチルC;mU=2’O-メチルU;
idT=逆向きデオキシチミジン
【0057】
【0058】
結合試験
VWFタンパク質に対するVWF9.14アプタマー変種の結合親和性を決定するために、我々はいくつかの変種を用いて結合アッセイを実施した。結合データは上記の表1-2に要約されている。
図1および16-17もまた参照されたい。
【0059】
VWF9.14アプタマー変種のPFA分析
図12および13に示すように、我々は、VWF9.14T59について血小板機能アッセイ(PFA)を、解毒剤VWF9.14T59-AO3、-AO10、および-AO11(それぞれAO3、AO10、およびAO11)とともに或いは前記解毒剤無しに実施した。さらにまた、解毒剤VWF9.14T79-AO1(AO43)およびVWF9.14T79-AO2(AO55)とともに或いは前記解毒剤無しに実施したアプタマーVWF9.14T79についてのPFAの結果も示される。解毒剤VWF9.14T82-AO1(AO46)およびVWF9.14T82-AO2(AO58)とともに或いは前記解毒剤無しに実施したアプタマーVWF9.14T82についての結果が示される。解毒剤VWF9.14T84-AO1(AO48)およびVWF9.14T84-AO2(AO60)とともに或いは前記解毒剤無しに実施したアプタマーVWF9.14T84についての結果が示される。これらの結果は、いくつかのVWF9.14アプタマーの抗血栓活性は計画的な解毒剤を用いて復帰させることができることを示す。
【0060】
VWF9.14アプタマー変種のin vivo試験
VWF9.14アプタマー変種のいくつかをネズミ動脈血栓症モデルおよびネズミ伏在静脈出血モデルで試験した。
図4-11を参照されたい。ネズミ動脈血栓症モデルでは、左頸静脈にカニューレを挿管し、右頸動脈を露出させ、フロープローブを配置した。5分後に、表示のベヒクルをマウスにi.v.注射し、10%FeCl
3パッチを頸動脈に3分間置いた。続いて頸動脈の血流をプローブを用いて1時間モニターし記録した。ネズミ動脈血栓症モデルでは、FeCl
3損傷前のベヒクルの注射(アプタマー無し/陰性コントロール)は、FeCl
3パッチ除去から約2分後に血管の閉塞をもたらした(
図4参照)。他方、このモデルでFeCl
3損傷前に用量0.375 mg/kgのT79vrt7/DTRI-031またはPEG-VWF9.14T79-VRT7/DTRI-031アプタマーを注射することによって、FeCl
3パッチ除去から60分間、血管は開存されたままであった(
図5および7参照)。これらの結果は、当該アプタマーが強力な抗血栓活性を有することを示す。
【0061】
VWF9.14T79-VRT7アプタマーはまた用量0.0375 mg/kgでFeCl
3損傷前に当該モデルに注射され、FeCl
3パッチ除去後60分を超えて血管は開存されたままであった(
図5参照)。この結果は、VWF9.14T79-VRT7アプタマーの用量を低下させてもなお強力な抗血栓活性を示し得ることを示す。用量範囲試験は
図7に示される。
ネズミ伏在静脈出血モデルでは、表示の用量でアプタマーを注射する前に、マウスの左頸静脈にカニューレを挿管し、右内側伏在静脈を露出させる。アプタマーを注射して5分後に、伏在静脈を切開して15分間出血を見守った。続いて解毒剤を注射してアプタマーの作用を無効にし、さらに20分間出血を見守った。PEG-VWF9.14T79-VRT7アプタマーの活性は、VWF9.14T79-AO2(AO55)解毒剤の注射によって首尾よく無効にできた(
図8参照)。例えば、
図8に示すように、VWF9.14T9-AO2(AO55)解毒剤の注射後に凝塊破壊が増加し、アプタマーの活性を無効にできることが示された。
【0062】
さらにまた、ネズミ動脈血栓症および伏在静脈出血のデルの組合せで、我々は、PEG-VWF9.14T79-VRT7アプタマー、コレステロール-VWF9.14T79-VRT7アプタマー、エラスチン様ポリペプチド(ELP)-VWF9.14T79-VRT7アプタマーおよびVWF9.14T79-AO2(AO55)解毒剤を試験した。このモデルでは、左頸静脈にカニューレを挿管し右頸動脈を露出させて、トランソニックフロープローブを動物に配置した。プローブを配置して5分後に、アプタマーを表示の用量で注射した。さらに5分してから、2つの7.5%FeCl
3パッチを右頸動脈に3分間置いた後パッチを除去した。除去から30分後に、伏在静脈を露出させて切開し、15分間出血をモニターした。解毒剤を注射し、さらに15分間凝塊形成を観察した(
図10-11参照)。このモデルでは、最初に各アプタマーの強力な抗血栓活性が提示された後で、なおVWF9.14T79-AO2(AO55)解毒剤が当該アプタマーの活性を首尾よく無効にできた。
【0063】
実施例2-VWFアプタマーの血栓溶解活性
血栓溶解活性について、T79VRT7アプタマーはまたネズミ頸動脈閉塞モデルおよびネズミ頭蓋内出血モデルで試験された。
図18-19を参照されたい。
【0064】
ネズミ頸動脈閉塞血栓溶解モデル
我々は、C57BL/6Jマウス成獣(Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME)(18-24g)に挿管し、左頸静脈を露出させたネズミ頸動脈閉塞モデルを利用した。次に、我々は、右総頸動脈を露出させ当該動脈を取り囲むようにトランソニックフロープローブ(Transonic Systems Incorporated, Ithaca, NY)を配置した。血流を5分間測定して安定な基準線を得た。続いて、10%塩化第二鉄浸漬ワットマン紙を当該血管に適用することによって血栓症を誘発した。続いて閉塞までの時間を記録した。閉塞から20分後に、食塩水(陰性コントロール)、0.5mg/kgの用量の抗VWFアプタマー(VWF9.14T79VRT7)、10mg/kg用量の組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(rTPA)を静脈内に注射した。ドップラーフロープローブ(Doppler flow probe)を用いて再灌流についてモニターし、灌流が再確立される時間を決定した。60分後に再疎通が生じなければ実験を終了した。続いて、動物をサクリファイスし、脳および総頸動脈を分析のために採集した。
図18に示すように、ネズミ頸動脈閉塞モデルでは、初期頸動脈流のパーセンテージは、rTPA、コントロールまたは灌流無しに対してVWF T79VRT7アプタマーで時間の経過にしたがって強大に増加した。したがって、VWF T79VRT7アプタマーはrTPAと比較して優れた血栓溶解活性を有した。
【0065】
ネズミ頭蓋内出血モデル
我々はC57BL/6Jマウス成獣(18-24g)を麻酔し、左頸静脈および右総頸動脈を露出させた。続いて、食塩水(陰性コントロール)、0.5mg/kg用量の抗VWFアプタマー(VWF9.14T79-VRT7)、10mg/kg用量のrTPA、または抗VWFアプタマー(0.5mg/kg)および2.5mg/kg用量の適合する解毒剤オリゴヌクレオチド(VWF9.14T79-AO2(AO55とも呼ばれる))をアプタマーの5分後に注射した。頭蓋内出血を誘発するために、シリコーン被覆6-0ナイロンフィラメントを頸動脈に挿入し、内頸動脈(ICA)終点を穿刺するまでフィラメントを前進させてくも膜下出血(SAH)を惹起させた。梗塞および出血の体積を評価するために、頭蓋内出血誘発から90分後に9.4 Tesla MRI(Bruker Biospin, Billerica, MA)で磁気共鳴画像法(MRI)を実施した。
図19は、ベヒクル、rTPA、抗VWFアプタマー(VWF9.14T79-VRT7)、または抗VWFアプタマー(VWF9.14T79-VRT7)、およびVWF解毒剤(VWF9.14T79-AO2(AO55とも呼ばれる))で処置したマウスのネズミ頭蓋内出血モデルにおける血管創傷に続く1回拍出量を提示するグラフを示す。
【0066】
実施例3-VWFアプタマーによる更なるin vivo試験
虚血性卒中は欧米社会における死亡および障害の主たる原因である1。組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(rTPA)を用いる、承認された血栓溶解性卒中治療はいくつかの重大な要件によって制限される。第一は、rTPA活性を無効にできないことから部分的に生じる出血転換の顕著なリスクである。第二に、rTPAの短い治療ウインドウは90%を超える卒中患者を治療不適格にする2,3。最後に、rTPAは約30%の再疎通を達成するだけであり、再閉塞が一次血栓溶解後に通常的に発生し、早期神経学的改善の低下をもたらす。
フォン・ビルブラント因子(VWF)は、血小板血栓形成の重要な事象に関与する糖タンパク質である。VWFは、糖タンパク質Ibアルファ-IX-V複合体と血小板表面で相互作用し、血小板の血管壁への粘着を誘発する4。これに続いて、糖タンパク質IIb/IIIa(gpIIb/IIIa)は活性化され、フィブリノゲンと結合して血栓形成をもたらす。フォン・ビルブラント病(VWD)はフォン・ビルブラント因子の定性的および定量的減少の両方であり得る。I型VWD(VWF病の主要形)は、歯科的工程後または月経時に軽度の出血を示し、偶発的出血を示さない5。さらにまた、I型VWD患者は、脳血管系および心血管系事象からは防御される6。VWFはしたがって動脈血栓症で有望な標的で、従来の治療を超えることができる。
【0067】
アプタマーは、他のクラスの治療薬を超える潜在的利点を有する一本鎖オリゴヌクレオチドである。アプタマーはそれらの標的と高い親和性および特異性で結合する7。それらは化学的に改変してその生物利用性をカスタマイズすることができ、大規模で化学的に合成することができ、我々の出願の最大の適切性は迅速に無効にできることである8-11。
本実施例で、発明者らは、アプタマー9.14T79vrt7は高せん断ストレス下で血小板粘着を用量依存態様で阻害し、血小板凝集を防ぐことを示す。前記アプタマーはネズミ頸動脈損傷モデルで血栓形成を防ぐ。前記アプタマーはまた、rTPAと比較してネズミおよびイヌの両動脈閉塞モデルで優れた血栓溶解活性を示し、これは、頭蓋内出血を誘発することなくまたは脳へ閉塞凝塊を流出させることなく達成された。最後に、9.14T79vrt7に対抗するように設計した解毒剤オリゴヌクレオチドは、ヒト血液およびネズミ出血モデルの両方で当該アプタマーの抗血小板活性を2分以内に無効にした。
本実施例の試験は、虚血性卒中および他の急性血栓性事象の治療に、9.14T79vrt7アプタマーは新規で潜在的に安全なアプローチであることを示唆する。
【0068】
材料と方法
アプタマー切端形、改変形および解毒剤オリゴヌクレオチド(AO)の合成
アプタマー切端形は社内で転写または合成した。簡単に記せば、T7 RNAポリメラーゼを用い、RNAアプタマー切端形(T10、T21およびT22)を転写した。アプタマー切端形、改変形および解毒剤は、MerMade 6/12オリゴヌクレオチド合成装置(BioAutomation, Irving, TX)を用いて合成した。RNA二次構造を予測するソフトウェア(M.ZukerによるMfold)を用いて二次構造を予測した。
【0069】
RNAアプタマーの調製および折り畳み
血小板機能分析(PFA)およびin vivoモデルの前に、RNA系アプタマーを適切な生理学的緩衝液中で“折り畳む”ことができる13。アプタマー溶液を95℃に3分間加熱し、直ちに氷上に3分間置き、続いて約5から10分間で室温にした。
【0070】
ヒト全血試験
書面のインフォームドコンセントを入手後に、ヒト血液を健康な志願者から静脈穿刺により収集した。採血は、ダラム退役軍人管理局メディカルセンター(Durham Veterans Administration Medical Center)およびデューク大学メディカルセンター(Duke University Medical Center)の両方の所内審査委員会によって承認されたプロトコルにしたがって実施した。
【0071】
血小板粘着分析
VenafluxTM微小流体力学系(Cellix, Dublin, Ireland)はコラーゲン表面の血小板粘着を測定する。ヒト血液は、ヒルジンチューブに健康な志願者から静脈穿刺によって収集された。アプタマーまたは血小板結合緩衝液のみで処理した全血の300μLを含むアリコットを、コラーゲン被覆微小チャネルに60ダインで3分間流した。続いて、食塩水で3分間チャネルを洗浄し、RBCおよび非結合血小板を洗い流した。Venaflux画像化ソフトウェアおよびイメージプロプラス(Image Pro Plus)を用いて結合血小板を画像化し、被覆された表面面積を計算した。アプタマーを95℃で3分間インキュベートし、氷上に3分間置き、続いて室温で10分間インキュベートした。冷却後、アプタマーを使用まで氷上で維持した。処理血液中で結合血小板によって覆われた全表面積を、陰性コントロール血液の全被覆に対するパーセンテージとして表した。統計的有意は分散分析によって決定した。アプタマーのIC50は調整(fitted)線形回帰曲線を用いて計算した。
【0072】
全血栓形成分析系(T-TAS)
T-TAS(Zacrox, Fujimori Kogyo Co.Ltd., Tokyo, Japan)を用いてヒトおよびイヌ全血の両方で血栓形成を査定した15。PLチップ中のヒルジンチューブに血液を収集した(PLチューブは1型コラーゲンで被覆した25のキャピラリーチャネルを含む)。チップを横切る血流を14μL/分の流速で維持した。血小板凝集は、流速を維持するために必要な圧の合計の関数(kPa)として測定した。カメラも使用しコラーゲン被覆チャネルを横切る血小板活性を観察した。
【0073】
ネズミin vivo試験
手術を実施したまたは頸動脈流および画像データを分析した研究者らには当該処置グループは知らされなかった。全てのin vivo実験は、デューク大学学内動物管理使用委員会(Duke University Institutional Animal Care and Use Committee)およびオハイオ州立大学学内動物管理使用委員会(Ohio State University Institutional Animal Care and Use Committee)に承認された。さらにまた、前記委員会は、実験動物の管理及び使用についてのNIHガイドラインに忠実である。
【0074】
頸動脈閉塞および血栓症
ネズミ頸動脈閉塞試験は、業者(Jackson Laboratory)から入手したオスまたはメスのC57BL/6マウス(8週齢)で実施された。血栓症/閉塞はFeCl3に浸漬したワットマンろ紙を用いて達成された。頸動脈閉塞から20分して、処置を開始させた。8週齢のオスまたはメスC57BL/6マウスは業者(Jackson Laboratory)から入手した。動物をケタミン(55mg/kg)およびキシラジン(15mg/kg)で麻酔した。正中腹部切開により動物に挿管し(Harvard Apparatus mouse ventilator, Holliston, MA)、総頸動脈を単離した。ドップラーフロープローブ(Transonic Systems Inc., Ithaca, NY)を用いて頸動脈流の基準線を入手した。10%塩化第二鉄浸漬ワットマンろ紙を血管に3分間置いた。頸動脈閉塞から20分して、処置を開始した。伏在静脈内輸液により(Harvard Apparatus PHD 2000 Infusion Pump, Holliston, MA)、動物をコントロール(血小板結合緩衝液)、VWFアプタマー、TPA、アプタマー/解毒剤、TPA/VWFアプタマー、または灌流無しで処理した。頸動脈流をさらに90分間モニターし再灌流を査定した。心拍数、EKG(ADInstruments PowerLab 4/35 EKGモニタリング系、Sydney, Australia)、および血圧(Kent Scientific CODA非侵襲BP測定系、Torrington, CT)を行程を通してモニターした。当該頸動脈で組織学的分析を実施した。
【0075】
大腿静脈出血
ネズミ大腿静脈出血モデルを、業者(Jackson Laboratory)から入手したオスまたはメスの8週齢C57BL/6マウスで実施し、解毒剤オリゴヌクレオチドの可逆性16を査定した。両後肢の腹側の毛を除去した。続いて温度およびECGモニター台にマウスを仰向けに置いた。四肢を穏やかに拘束した。左右の後肢の腹側の皮膚を切開し伏在神経血管束の全長を露出させた。前記神経血管束を通常食塩水で覆って乾燥を防いだ。薬剤投与のために、左伏在静脈にカニューレを挿管した。止血を査定するために、右伏在静脈に23G針で穴をあけ、続いて当該血管の遠位部を縦方向に切開することによって、当該血管を切開した。止血が生じるまで血液を穏やかに拭い去った。続いて凝塊を除去して出血を再開させ、再び止血が生じるまで血液を再度拭い去った。各止血発生の後で凝塊破壊を30分間繰り返した。2つのパラメーターを測定した:1)30分間に止血が発生した回数、および2)各止血に要した時間。
【0076】
イヌ頸動脈閉塞および血栓症
イヌ頸動脈閉塞試験をオスおよびメスの成獣ビーグル(7-11kg)で実施した。頸動脈閉塞をFeCl3で誘発し、処置を開始する前に45分間安定化させた。イヌを麻酔して挿管した。右大腿動脈および静脈内にカテーテルを得た。右頸動脈を露出させ、頸動脈流基準線をドップラーフロープローブを用いて得た。50%塩化第二鉄パッチを用いて15分間血栓症を誘発し、凝塊を45分間安定化させた。続いて、イヌにベヒクル、0.9mg/kg TPAまたは0.5mg/kg VWFアプタマーを静脈内輸液した。アプタマーおよびベヒクルはボラスとして投与し、一方、rTPAは、10%ボラスとそれに続く残り薬剤の45分間の輸液による標準的臨床プロトコルによって投与した。頸動脈流を120分間モニターした。血栓症部位から遠位にあるフロープローブで血流移動時間を実験を通してモニターした。頸動脈血管造影は基準開存、血栓閉塞、および再疎通を明瞭に示した。周期的採血によって血小板阻害を査定した(血小板機能アナライザー100)。実験終了時に、各動物の脳および頸動脈を収集し組織学的分析のために包埋した。
【0077】
統計分析
値は平均±SDとして表され、統計分析は、多重t検定、カイ二乗分析および適切な場合には二元配置分散分析を用いて実施された。
【0078】
結果
最適化VWFアプタマー9.14T79はin vitroおよびex vivoでVWFと結合しその活性を阻害する
将来の臨床で扱いやすいVWFアプタマーを作製するために、我々は、2’フルオロ-ピリミジン改変RNAアプタマーVWF9.14に由来する一連のVWFアプタマー誘導体を設計し試験した
12,13。実施例1を参照されたい。この試みは先導VWFアプタマー、T59をもたらした。T59は高い親和性結合および阻害活性を保持し、長さが30ヌクレオチドである。次いで、ヌクレアーゼ耐性を改善しさらに当該組成物を最適化するために、我々は、2’O-メチルおよび/または2’フルオロ部分を系統的にT25およびT59切端形で置換した。ほぼ90の切端形を合成しin vitroで試験した。完全に最適化されたアプタマー9.14T79vrt7は35ヌクレオチドであり、60-mer(K
d=18.4 nmol/L、B
max=51%)と比較して、解離定数(K
d)=11.2nmol/L、B
max=56%でVWFと結合する(上記表1および2並びに
図1-3を参照されたい)。
【0079】
血小板粘着に対する当該アプタマーの阻害作用を評価するために、900nmol/Lから開始して14nmol/Lまで2倍希釈したアプタマーでヒト全血サンプルを処理し、高せん断ストレス下で血小板粘着を測定することによって試験した。アプタマーはコラーゲン表面への血小板粘着を用量依存態様で妨げた(
図20-22)。完全に近い血小板粘着阻害が225から900nmol/Lの用量で(
図20Cおよび20D)、中間の阻害が56から112nmol/Lの用量で達成された(
図20Bおよび20D)。log-用量対応答データ調整は、1.9(72.6nmol/L)のlogIC
50の計算をもたらした(
図20E)。
血小板凝集におけるアプタマーの作用はPFA-100ヒト全血アッセイによりex vivoで測定した。VWFアプタマーは、この系で100nmol/Lを超える用量で血小板凝集を完全に阻害し、ここで血小板血栓形成および閉鎖時間は300秒を超え、これはこのアッセイの上限であった(
図21)。したがってVWFアプタマー9.14T79vrt7は、血小板粘着および凝集の両方をex vivoで妨げる。
【0080】
9.14T79は、ネズミ頸動脈閉塞モデルで組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(rTPA)よりも増強された血栓溶解を示す
次いで、ネズミ頸動脈閉塞モデルを用いてアプタマーの血栓溶解活性を評価した。安定な頸動脈閉塞から20分後に、動物にアプタマー9.14T79、食塩水コントロール、またはrTPAを投与した。この実験で用いたrTPAの用量は10mg/kgである(前記用量は0.9mg/kg(判明している最後の発生の3-4.5時間以内に虚血性卒中を示す人間を治療するために用いられる用量)より11倍高い)。その理由は、これが動脈血栓症のネズミモデルで再疎通に有効であると報告された用量だからである
17。アプタマーは0.5mg/kgで投与され、
図23Aに示されるように、rTPA(p<0.05)および緩衝液コントロール(p<0.01)と比較して有意に高い再疎通を示した(n=8/グループ)。各グループの頸動脈の組織学的分析は、フロープローブによって測定された再疎通の程度とおおざっぱに相関した(
図23B、23Cおよび23D)。緩衝液コントロールグループの影響を受けた頸動脈の横断切片の試験は、全ての被検動物で完全な閉塞を示した(n=8)(
図23D)。rTPA処理マウスの血管切片は、頸動脈のほぼ完全な血栓症および閉塞を示した(n=8)(
図23C)。最後に、VWFアプタマー処理マウスの頸動脈切片の組織検査は、6つのサンプルで完全な開存性を示し、以前に閉塞した血管の2つの切片でただ1つの小さな凝塊の証拠を示した(n=8)(p=0.01)(
図23B)。
【0081】
9.14T79vrt7はイヌ全血で用量依存性血小板阻害を示す
高せん断下での血小板血栓形成を評価し、さらに大きな動物モデルでアプタマー査定を開始するために、我々は全血栓形成分析系(T-TAS)(Fujimori Kogyo Co., Yokohama, Japan)
18でVWFアプタマーを試験した。9.14T79vrt7は、18.75-100nmol/Lの間の用量でイヌ血小板凝集を阻害し、血流圧を維持した(
図24A)(n=5/グループ)(緩衝液と比較したときp<0.05)。100nmol/Lの用量で、血小板粘着および凝集の完全な阻害があった(
図24B)。各図は1分から5分の最初の10秒を示す。緩衝液コントロールの3から5分で認められる白い霞の領域は水平キャピラリーチャネルに粘着した血小板である。アプタマーのパネルはそのような血小板蓄積を示さず、9.14T79vrt7はin vitroのせん断ストレス下でイヌ血小板機能の強力な阻害剤であることを示している。
【0082】
9.14T79vrt7はイヌ頸動脈閉塞モデルで再疎通を示す
イヌ脳血管血栓症モデルを用いて、臨床的に関連する大きな動物でマウスの結果を裏付けた。動脈閉塞を確立させ、さらに治療前に45分間持続させた。動物に、0.5mg/kgの9.14T79vrt7をボラスとして静脈内注射するか、または0.9mg/kgのrTPAを10%注射に続いて残りの90%を45分間かけて輸液するという標準的臨床プロトコルによって投与した。9.14T79vrt7を投与された3匹のイヌの全ての頸動脈が投与の5から15分後に再疎通した(それぞれ
図24F、24G)。対照的に、rTPAまたは食塩水コントロールで処理された動物は処理後に再疎通を示さなかった(n=3/グループ)。
9.14T79vrt7の安全性を究明するために、これらのイヌの脳内の出血および凝固を評価した。9.14T79vrt7は頭蓋内出血を誘発せず、頸動脈再疎通もこれら3匹の動物のいずれにおいても脳の血栓閉塞を発生させなかった(
図24H-J)。9.14T79vrt7およびrTPAの両グループの脳組織学はコントロール食塩水処理グループと同一である。頸動脈の組織学では当該血管の本質的に完全な再疎通が示されたので、アプタマーグループにおける脳血栓閉塞の欠如は安心をもたらした(
図24K)。上段の頸動脈切片は閉塞が発生した血管損傷領域であり、一方、下段の切片は診断のためのカテーテルに隣接する開存部分に由来する。著しく対照的に、rTPAおよび食塩水処理コントロールグループ動物はともに血栓を含み、それら血栓は損傷頸動脈を閉塞し続け、これらのアプローチが血流を再生できないことと一致した(それぞれ
図24Lおよび24M)。
【0083】
解毒剤オリゴヌクレオチドはin vitroおよびin vivoで9.14T79vrt7の抗血小板活性を迅速に無効にできる
必要な場合に9.14T79vrt7活性を無効にするために、我々は解毒剤オリゴヌクレオチド(AO、VWF9.14T79-AO2またはAO55とも呼ばれる)を作製した。最初に試験した解毒剤のいずれも30ヌクレオチドアプタマーT59を無効にできなかった。その理由はおそらく、いったんT59がVWFとしっかりと結合すると、アプタマーの良好な核生成部位に解毒剤が接近できないためであろう。したがって、我々は、5ヌクレオチドウラシル(オリゴUテール)を人工的な核生成部位として当該分子の3’-末端に付加し、このテールとアプタマーの3’末端に相補的な16ヌクレオチド解毒剤を試験した。この解毒剤オリゴヌクレオチド(AO)は、アプタマーの抗血小板活性をin vitroで2分以内に9.14T79vrt7に対して2:1の低い比率で無効にした(
図14)(n=2/グループ)。
抗血小板アプタマーを無効にする解毒剤の能力をネズミ大腿静脈出血モデル
16で評価した。非処理コントロールマウスは12±3破壊を示し、これは食塩水グループの17±3破壊と同様であった(n=7)(p>0.05)。0.375mg/kgの用量で投与された9.14T79vrt7は凝塊破壊をもたらさず、これは、非処理コントロールおよび食塩水処理動物と比較して大いに有意であった(n=11)(p<0.0001)。9.14T79vrt7の投与に続く解毒剤オリゴヌクレオチドの添加は16±9破壊を示し、これは、アプタマーを投与されなかった動物と同様であった(n=7)。このデータは正常血栓症の%として表された(
図25)。解毒剤単独投与は凝塊破壊の増加または低下を生じなかった(データは示されていない)。したがって、解毒剤はVWFのアプタマー媒介阻害に関連するいずれの出血も迅速に無効にできる。
【0084】
考察
従来、圧倒的多数の虚血性卒中患者には急性処置の選択肢が存在しない。rTPAは出血を生じ、時間的制限があり、さらに無効にできない。我々の研究は、解毒剤によって管理されるVWF阻害剤は強力でなお安全な治療選択肢をこれらの患者に提供できることを示す。9.14T79vrt7は完全長のアプタマー
12と比較して改善された結合親和性を示し、モノクローナル抗体
7,19の能力と同等である。アプタマー9.14T79vrt7は、ヒト血小板のコラーゲン表面への粘着を高せん断ストレス下(
図24)の場合と同様に防いだ(
図20-22)。
【0085】
in vivoで、9.14T79vrt7は動脈の開存性を維持し、0.0188mg/kgの低い用量で75%を超える移動時間を維持する(
図22)。陰性コントロールおよび静脈内rTPAの両方と比較して、9.14T79vrt7はネズミ頸動脈閉塞モデルで優れた血栓溶解活性を示した(
図23)。用いたIV rTPAの用量は、マウスで血栓溶解を達成するために必要な用量であるという主な理由のために臨床で用いられる用量の10倍である
17。薬剤投与から60分後に、rTPAグループは、アプタマー処理グループの損傷前流れの75%と比較して25%の移動時間を達成した。この作用は薬剤投与後100分を超えて存続した。アプタマーは5分かけて輸液され、一方、rTPAは、rTPAに随伴する出血リスクのために45分にわたって輸液された。
【0086】
一見したところでは、形成された動脈血栓を破壊する、内皮因子および血小板因子を標的とする薬剤のこの発想は直感的に認識されるものではない。しかしながら増え続ける文献はVWF阻害物質の“分解”活性を支持する。in vitro試験では、強い液体せん断ストレスおよび不規則な血管表面は、VWFは血管管腔に広がる分厚い束および網目をかき分けて、血小板を一緒に結合させ動脈を閉塞させることを示した
20。したがって、抗VWF療法は動脈閉塞に衝撃を有することができよう。この仮説は、イヌの大血管ですらVWFアプタマー9.14T79vrt7は閉塞した血管の再疎通を生じ得るという我々の観察によって支持される(
図24)。
【0087】
臨床で用いられる主要クラスの非経口抗血小板薬剤は、糖タンパク質IIb/IIIa(gpIIb/IIIa)阻害物質(アブシキシマブ(Abciximab)、エプチフィバチド(Eptifibatide)およびチロフィバン(Tirofiban))である。これらの薬剤は、急性冠状動脈症候群(ACS)および経皮的冠状動脈介入(PCI)における成果を顕著に改善した
21。しかしながら、急性虚血性卒中で試験したとき、それらは、病的状態または死亡率を改善することなく頭蓋内出血を顕著に増加させた
22。したがって、我々は、出血の場合にVWFアプタマー活性を容易に無効にできる解毒剤オリゴヌクレオチドを開発した。この解毒剤は、アプタマー対解毒剤の1:2という低いモル比で9.14T7vrt79活性を完全に無効にした(
図14)。アプタマーの永続性を有する逆転性が静脈出血モデルにおいてin vivoで示された(
図9Aおよび9B)
13,16。0.375mg/kgの用量のアプタマーで、凝固は発生しなかったが、10倍モル過剰の解毒剤オリゴヌクレオチドの投与はアプタマーを無効にし、正常な止血を復元した。そのような強力な抗血小板薬剤を適合解毒剤によって完全かつ迅速に無効にする能力は、血栓症および特に急性虚血性卒中の治療のためにより安全で強力な非経口抗血小板薬の開発で意義あるステップである。
参考文献
【0088】