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特開2023-141033船舶の位置情報管理システム、サーバおよび船舶の位置情報管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141033
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】船舶の位置情報管理システム、サーバおよび船舶の位置情報管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20230928BHJP
   B63B 79/40 20200101ALI20230928BHJP
【FI】
G06Q50/02
B63B79/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047152
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149009
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 稔久
(72)【発明者】
【氏名】井上 宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友彰
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】GPS位置情報の改竄を抑制することが可能な船舶の位置情報管理システムを提供すること
【解決手段】船舶の位置情報管理システムは、サーバと、船舶と、を備える。船舶は、サーバと通信を行う通信装置と、推進機とを有する。通信装置は、船舶の位置情報を検出する位置検出部を含む。推進機は、エンジンと、通信装置に接続され、エンジンを制御するコントローラと、を含む。コントローラは、エンジンに関するデータを通信装置に出力する。通信装置は、入力されたエンジンに関するデータと、船舶の位置情報とを、サーバに送信する。サーバは、エンジンに関するデータと、船舶の位置情報とを受信し、エンジンに関するデータに基づいて、船舶の位置情報が正しいか否かを判断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバと、
前記サーバと通信を行う通信装置と、推進機とを有する船舶と、を備え、
前記通信装置は、前記船舶の位置情報を検出する位置検出部を含み、
前記推進機は、エンジンと、前記通信装置に接続され、前記エンジンを制御するコントローラと、を含み、
前記コントローラは、前記エンジンに関するデータを前記通信装置に出力し、
前記通信装置は、入力された前記エンジンに関するデータと、前記船舶の位置情報とを、前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記エンジンに関するデータと、前記船舶の位置情報とを受信し、前記エンジンに関するデータに基づいて、前記船舶の位置情報が正しいか否かを判断する、
船舶の位置情報管理システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記エンジンに関するデータを暗号化して前記通信装置に出力し、
前記通信装置は、前記船舶の位置情報と、暗号化した前記エンジンに関するデータと、を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記エンジンに関するデータを複合化できた場合に、前記船舶の位置情報を正しいと判断する、
請求項1に記載の船舶の位置情報管理システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記エンジンに固有の情報に関連する暗号化キーを用いて前記エンジンに関するデータを暗号化し、暗号化した前記エンジンに関するデータと、前記エンジンに固有の情報を前記通信装置に出力し、
前記通信装置は、前記船舶の位置情報と、暗号化した前記エンジンに関するデータと、前記エンジンに固有の情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記船舶の位置情報と、暗号化した前記エンジンに関するデータと、前記エンジンに固有の情報とを受信し、前記エンジンに固有の情報に関連する前記暗号化キーを用いて、前記エンジンに関するデータを複合化する、
請求項1に記載の船舶の位置情報管理システム。
【請求項4】
前記エンジンに固有の情報は、前記エンジンに割り当てられるシリアル番号である、
請求項3に記載の船舶の位置情報管理システム。
【請求項5】
前記エンジンに関するデータは、前記エンジンの運転時間を含み、
前記サーバは、前記運転時間の増加が前記船舶の位置の移動に対応しているか否かに基づいて、前記船舶の位置情報が正しいか否かを判断する、
請求項1に記載の船舶の位置情報管理システム。
【請求項6】
前記推進機は、
前記エンジンの回転数を検出する回転数検出センサを更に含み、
前記エンジンに関するデータは、前記エンジンの回転数を含み、
前記サーバは、前記回転数の変化が前記船舶の位置の移動に対応しているか否かに基づいて、前記船舶の位置情報が正しいか否かを判断する、
請求項1に記載の船舶の位置情報管理システム。
【請求項7】
前記推進機は、
スロットルの開度を検出する開度センサを更に含み、
前記エンジンに関するデータは、前記スロットルの開度を含み、
前記サーバは、前記スロットルの開度の変化が前記船舶の位置の移動に対応しているか否かに基づいて、前記船舶の位置情報が正しいか否かを判断する、
請求項1に記載の船舶の位置情報管理システム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記エンジンに固有の情報を前記通信装置に出力し、
前記通信装置は、入力された前記エンジンに関するデータと、前記船舶の位置情報と、前記エンジンに固有の情報に、前記通信装置に固有の情報を加えて、前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記エンジンに固有の情報と前記通信装置に固有の情報を互いに関連付けて記憶しており、
前記サーバは、受信した前記エンジンに固有の情報と前記通信装置に固有の情報の組み合わせが、記憶した前記エンジンに固有の情報と前記通信装置に固有の情報の組み合わせと一致していない場合に、前記船舶の位置情報が正しくないと判断する、
請求項1に記載の船舶の位置情報管理システム。
【請求項9】
船舶の位置情報と前記船舶のエンジンに関するデータを前記船舶から受信し、
前記エンジンに関するデータに基づいて前記船舶の位置情報が正しいか否かを判断する、
サーバ。
【請求項10】
船舶のエンジンを制御するコントローラが前記船舶の通信装置に前記エンジンに関するデータを出力することと、
前記船舶の位置情報を検出することと、
検出した前記船舶の位置情報と、前記エンジンに関するデータとを、前記通信装置からサーバに送信することと、
前記船舶の位置情報と前記エンジンに関するデータを前記サーバが受信することと、
前記エンジンに関するデータに基づいて、前記船舶の位置情報が正しいか否かを前記サーバが判断することと、を含む、
船舶の位置情報管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の位置情報管理システム、サーバおよび船舶の位置情報管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
漁業市場では魚が取れた場所を明確にすることにより、例えばブランド化を図り売値を上げることができる。魚が取れた位置を明確にするため、船舶にGPS(Global Positioning System)受信機を装着することが考えられるが、GPS位置情報を改竄されるおそれがある。
【0003】
GPS位置情報の真偽を判断する技術として、クライアント側で得たGPS位置情報をサーバに送信し、サーバ側で得た衛星位置および軌道情報と照合を行って、GPS位置情報の真偽を判断する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-225614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、GPS受信機を他の船舶に載せて偽装を図った場合には、GPS位置情報の真偽を判断できないため、GPS位置情報の改竄が防げない。
【0006】
本発明の目的は、GPS位置情報の改竄を抑制することが可能な船舶の位置情報管理システム、サーバおよび船舶の位置情報管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る船舶の位置情報管理システムは、サーバと、船舶と、を備える。船舶は、サーバと通信を行う通信装置と、推進機とを有する。通信装置は、船舶の位置情報を検出する位置検出部を含む。推進機は、エンジンと、通信装置に接続され、エンジンを制御するコントローラと、を含む。コントローラは、エンジンに関するデータを通信装置に出力する。通信装置は、入力されたエンジンに関するデータと、船舶の位置情報とを、サーバに送信する。サーバは、エンジンに関するデータと、船舶の位置情報とを受信し、エンジンに関するデータに基づいて、船舶の位置情報が正しいか否かを判断する。
【0008】
他の態様に係るサーバは、船舶の位置情報と船舶のエンジンに関するデータを船舶から受信し、エンジンに関するデータに基づいて船舶の位置情報が正しいか否かを判断する。
【0009】
他の態様に係る船舶の位置情報管理方法は、船舶のエンジンを制御するコントローラが船舶の通信装置にエンジンに関するデータを出力することと、船舶の位置情報を検出することと、検出した船舶の位置情報と、エンジンに関するデータとを、通信装置からサーバに送信することと、船舶の位置情報とエンジンに関するデータをサーバが受信することと、エンジンに関するデータに基づいて、船舶の位置情報が正しいか否かをサーバが判断することと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
船舶の位置情報だけではなくエンジンに関するデータもサーバに送信し、エンジンに関するデータを用いることによって船舶の位置情報の真偽を判断できるため、GPS位置情報の改竄を抑制することができる。例えば、位置検出部を含む通信装置自体を他の船舶に載せただけでは、サーバはエンジンに関するデータを取得できないため、GPS情報が不正であると判断できる。また、通信装置に偽のデータを出力してサーバに送信したとしても、例えばエンジンの挙動と船舶の位置の挙動を照らし合わせることで、GPS情報の真偽を判断できる。このように、船舶の位置情報の真偽を判断でき、GPS位置情報の改竄を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る船舶推進機情報の送受信システムを示す模式図。
図2】船舶推進装置の側面図。
図3】船舶推進装置の前後進切換部の構成を示す側面図。
図4】エンジンの内部の構成を示す図。
図5】カムシャフトの駆動機構の構成を示す図。
図6】エンジンの制御系の構成を示す模式図。
図7】実施形態に係る船舶推進機情報の送受信方法を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
【0013】
(構成)
(船舶の位置情報管理システム1の概要)
図1は、実施形態に係る船舶の位置情報管理システム1を示す図である。船舶の位置情報管理システム1は、船舶2と、クラウドサーバ3(サーバの一例)と、を有する。船舶2は、船舶2の位置情報と、船舶推進装置11(推進機の一例)のエンジンに関する情報をクラウドサーバ3に送信し、クラウドサーバ3は受信したエンジンに関するデータに基づいて、船舶2の位置情報が正しいか否かを判断する。船舶2は、船体10と、船舶推進装置11と、DCM(Data Communication Module)12(通信装置の一例)と、を含む。船舶推進装置11のエンジンに関するデータはDCM12に出力される。DCM12は、クラウドサーバ3と無線通信を行う。
【0014】
(船舶推進装置11)
船舶推進装置11は、船体10の船尾に取り付けられる。船舶推進装置11は、船舶2を推進させる推進力を発生させる。本実施形態において、船舶推進装置11は、船外機である。図2は、船舶推進装置11を示す側面図である。
【0015】
船舶推進装置11は、上部ケーシング21、下部ケーシング22、エキゾーストガイド部23、エンジン24を有する。上部ケーシング21、下部ケーシング22、エンジン24はエキゾーストガイド部23に固定されている。
【0016】
エンジン24は、上部ケーシング21内に配置される。エンジン24は、クランク軸32を有する。下部ケーシング22内には、駆動軸31が配置される。駆動軸31は、下部ケーシング22内において上下方向に沿って配置される。駆動軸31は、エンジン24のクランク軸32に連結されている。下部ケーシング22の下部には、プロペラ33が配置される。プロペラ33は、エンジン24の下方に配置されている。プロペラ33にはプロペラシャフト34が連結されている。プロペラシャフト34は、前後方向に沿って配置されている。プロペラシャフト34は、前後進切換部35を介して駆動軸31の下部に連結される。
【0017】
図3(a)および図3(b)は、図2の前後進切換部35近傍の拡大図である。前後進切換部35は、ピニオンギア36と前進用ギア37と後進用ギア38とドッグクラッチ39とを有する。ピニオンギア36は、クランク軸32に連結されている。ピニオンギア36は、前進用ギア37及び後進用ギア38と噛み合っている。前進用ギア37と後進用ギア38とは、プロペラシャフト34に対して相対回転可能に設けられている。ドッグクラッチ39は、プロペラシャフト34に対して相対回転不能に取り付けられている。また、ドッグクラッチ39は、プロペラシャフト34の軸線方向に沿って、前進位置と後進位置と中立位置とに移動可能に設けられている。ドッグクラッチ39は、後述するシフトアクチュエータ77によって、前進位置と後進位置と中立位置とに移動する。ドッグクラッチ39は、図3(a)に示す前進位置において、前進用ギア37とプロペラシャフト34とを相対回転不能に固定する。この場合、駆動軸31の回転は、前進用ギア37を介してプロペラシャフト34に伝達される。すなわち、前後進切換部35は、プロペラ33が前進方向に回転するように駆動軸31の回転をプロペラ33に伝達する前進状態となる。これにより、船体を前進させる方向にプロペラ33が回転する。また、ドッグクラッチ39は、図3(b)に示す後進位置において、後進用ギア38とプロペラシャフト34とを相対回転不能に固定する。この場合、駆動軸31の回転が後進用ギア38を介してプロペラシャフト34に伝達される。すなわち、前後進切換部35は、プロペラ33が後進方向に回転するように駆動軸31の回転をプロペラ33に伝達する後進状態となる。これにより、船体を後進させる方向にプロペラ33が回転する。ドッグクラッチ39が前進位置と後進位置との間の中立位置に位置する場合には、前進用ギア37と後進用ギア38とは、それぞれプロペラシャフト34に対して相対回転可能となる。すなわち、駆動軸31からの回転は、プロペラシャフト34には伝達されず、プロペラシャフト34は空転可能となる。
【0018】
船舶推進装置11では、エンジン24により発生される駆動力が、駆動軸31およびプロペラシャフト34を介してプロペラ33に伝達される。それにより、プロペラ33が前進方向又は後進方向に回転する。その結果、船舶推進装置11が取り付けられた船舶2を前進または後進させる推進力が発生する。
【0019】
また、図2に示すように、船舶推進装置11の内部には、排気通路40が形成されている。排気通路40は、エンジン24から下方に延びている。排気通路40はエンジン24の排気ポートに接続されており、図3に示すように、プロペラ33のプロペラボス33aの内部空間に連通している。エンジン24からの排気は、排気通路40を通り、プロペラボス33aの内部空間を通って、水中へ排出される。
【0020】
図4は、エンジン24の内部の構成を示す模式的上面図である。本実施形態におけるエンジン24は、クランクケース42と複数のシリンダ41とを有するが、シリンダ41の数や配置はどのようなものであってもよい。以下、図4に基づいて、エンジン24の1つのシリンダ41の構成について説明するが、エンジン24の複数のシリンダ41は全て、図4に示すシリンダ41と同様の構成を有する。シリンダ41は、シリンダヘッド43とシリンダブロック44とを有する。シリンダヘッド43は、シリンダブロック44に取り付けられている。シリンダブロック44の内部には、シリンダ室45が形成されている。シリンダ室45内には、ピストン46が、シリンダ室45の軸線方向に移動可能に配置されている。ピストン46には、コンロッド47の一端が連結されている。コンロッド47の他端は、クランク軸32に連結されている。
【0021】
シリンダヘッド43は、吸気ポート51と排気ポート52と燃焼室53とを有する。吸気ポート51と排気ポート52とは、それぞれ燃焼室53に連通している。吸気ポート51は、吸気弁54によって開閉される。排気ポート52は、排気弁55によって開閉される。吸気ポート51には、吸気管56が接続されている。吸気管56には、燃料噴射装置57が取り付けられている。燃料噴射装置57は、燃焼室53に供給する燃料を噴射する。また、吸気管56には、スロットル弁58が配置されている。スロットル弁58の開度が変更されることにより、燃焼室53へ送られる混合気の量が調整される。排気ポート52には、排気管60が接続されている。また、シリンダヘッド43には、点火装置59が取り付けられている。点火装置59は、燃焼室53内に挿入されており、燃料に点火する。
【0022】
吸気弁54は、図示しないコイルスプリングなどの付勢部材により、吸気ポート51を閉じる方向に付勢されている。吸気弁54は、吸気用カムシャフト61が回転駆動されることによって、開閉される。排気弁55は、図示しないコイルスプリングなどの付勢部材により、排気ポート52を閉じる方向に付勢されている。排気弁55は、排気用カムシャフト62が回転駆動されることによって、開閉される。
【0023】
図5は、吸気用カムシャフト61と排気用カムシャフト62とを回転駆動する駆動機構を示す上面図である。この駆動機構は、例えばエンジン24の上面に配置されている。図5に示すように、吸気用カムプーリ63が吸気用カムシャフト61の端部に固定されている。排気用カムプーリ64が、排気用カムシャフト62の端部に固定されている。また、クランクプーリ65がクランク軸32に固定されている。そして、吸気用カムプーリ63と、排気用カムプーリ64と、クランクプーリ65と、複数の中間プーリ66a,66b,66cの間にカムベルト67が掛け渡されている。クランク軸32の駆動力が、カムベルト67を介して、吸気用カムシャフト61と排気用カムシャフト62とに伝達される。なお、クランク軸32の端部には、フライホイール68が固定されている。
【0024】
(エンジン24の制御系)
図6は、エンジン24の制御系の構成を示す模式図である。エンジン24は、ECU(Engine Control Unit)71(コントローラの一例)によって制御される。ECU71には、操作装置72と、エンジン24に関する情報を検出する各種のセンサ81-87と、が接続される。
【0025】
(操作装置72)
操作装置72は、スロットル操作装置73と、シフト操作装置74と、エンジン24の始動停止操作装置75とを有する。スロットル操作装置73は、例えば、スロットルレバーなどのスロットル操作部材73aを有する。スロットル操作装置73は、スロットル操作部材73aの操作に応じて、エンジン24の出力を制御するための操作信号をECU71に入力する。シフト操作装置74は、例えば、シフトレバーなどのシフト操作部材74aを有する。シフト操作装置74は、シフト操作部材74aの操作に応じて、船舶2の前進と後進とを切り換えるための操作信号をECU71に入力する。具体的には、シフト操作部材74aは、前進位置と後進位置と中立位置とのいずれかのシフト位置に操作可能であり、各位置に対応した操作信号がECU71に入力される。エンジン24の始動停止操作装置75は、例えば、キースイッチであり、エンジン24を始動または停止するための操作信号をECU71に入力する。
【0026】
(センサ81-87)
ECU71に接続されるセンサ81-87は、具体的には、クランク角センサ81(回転数検出センサの一例)、カム角センサ82、スロットル開度センサ83、吸気圧センサ84、排気圧センサ85、燃料流量センサ86およびシフト位置センサ87である。
【0027】
クランク角センサ81は、クランク軸32の回転角を検出する。クランク角センサ81は、磁気センサであり、図5に示すようにクランク軸32の複数の突起部32aの通過を検出する。なお、図5では、複数の突起部32aのうちの一部にのみ符号32aを付している。クランク軸32の表面には、複数の突起部32aが規則的に配列されている。ただし、クランク軸32の表面は、欠落部32bを含む。欠落部32bは、突起部32aが形成されておらず、隣り合う突起部32aの間隔が他の突起部32aの間隔と異なる部分である。
【0028】
ここで、クランク角センサ81に対向する位置を突起部62aが通過したときは磁界が強くなるので、検出信号には周期的な起伏が形成される。一方、クランク角センサ81に対向する位置を欠落部62bが通過したときには、検出信号に起伏は形成されず、同じ信号強度が持続する。このため、クランク角センサ81の検出信号には、周期的な起伏が形成されるクランク起伏領域と、起伏が形成されず同じ信号強度(平坦な信号)が持続するクランク平坦領域が交互に表れる。これらの領域が検出されることにより、クランク軸32の回転数と回転角とが検知される。
【0029】
カム角センサ82は、排気用カムシャフト62の回転角を検出する。カム角センサ82は、磁気センサであり、排気用カムシャフト62に形成された複数の突起部62aの通過を検出する。なお、図5では、複数の突起部62aのうちの一部にのみ符号62aを付している。排気用カムシャフト62の表面には、複数の突起部62aが規則的に配列されている。ただし、排気用カムシャフト62の表面は、欠落部62bを含む。欠落部62bは、突起部62aが形成されておらず、隣り合う突起部62aの間隔が他の突起部62aの間隔と異なる部分である。エンジン24が始動すると、クランク軸32と、吸気用カムシャフト61と、排気用カムシャフト62とが駆動される。これにより、クランク角センサ81は、クランク軸32の突起部32aの通過を検出する。また、カム角センサ82は、排気用カムシャフト62の突起部62aの通過を検知する。クランク角センサ81とカム角センサ82とは、検出信号をECU71に送る。
【0030】
クランク角センサ81と同様に、カム角センサ82の検出信号は、突起部62aの通過により周期的に起伏した信号が連続するカム起伏領域と、欠落部32bの通過により平坦な信号が持続するカム平坦領域が交互に表れる。これらの領域が検出されることにより、排気用カムシャフト62の回転数と回転角とが検知される。
【0031】
スロットル開度センサ83(開度センサの一例)は、スロットル弁58の開度を検出する。吸気圧センサ84は、吸気管56内の圧力を検出する。排気圧センサ85は、排気管60内の圧力を検出する。燃料流量センサ86は、エンジン24に供給される燃料の流量を検出する。シフト位置センサ87は、前後進切換部35が前進状態と後進状態と中立状態とのいずれのシフト状態であるのかを検出する。シフト位置センサ87は、例えば上述したドッグクラッチ39の位置を検出することにより、前後進切換部35のシフト状態を検出する。これらのセンサは、それぞれ検出信号をECU71に入力する。
【0032】
(ECU71)
ECU71は、記録部91と、CPU(Central Processing Unit)92と、外部出力部93と、を含む。記録部91は、電子データの書き込み及び読出しが可能な記録装置である。記録部91は、RAM或いはROMなどのメモリ、及び、HDD(Hard Disk Drive)或いはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含む。記録部91は、予め定められた運転状態に対応した制御プログラムを記憶している。
【0033】
記録部91は、センサ81-87からの検出信号を記録する。記録部91は、エンジン24のエンジンシリアル番号D1、エンジン24のエンジンシリアル番号D1に関連付いた暗号化キーを記録する。エンジンのシリアル番号およびエンジンのシリアル番号に関連付いた暗号化キーは、エンジンの生産時にECU71に書き込まれる。なお、暗号化キーが関連付けられる情報としては、エンジンのシリアル番号に限らなくてもよく、エンジンに固有の情報であれば、特に限定されるものではない。
【0034】
記録部91は、エンジンに関するデータD2を記録する。エンジンに関するデータD2は、エンジンの運転時間、燃料流量、エンジンの回転数およびスロットルの開度を含む。
【0035】
プロセッサであるCPU92は、各種のセンサ81-87及び操作装置72から入力された信号に基づいて、現在の運転状態を判別し、制御プログラムにしたがって点火装置59と、燃料噴射装置57と、スロットル弁58との動作を制御する。また、ECU71は、シフト操作装置74からの操作信号に基づいて、シフトアクチュエータ77を制御する。シフトアクチュエータ77は、例えば、モータなどの駆動手段を有している。シフトアクチュエータ77は、ECU71によって制御されることにより、上述したドッグクラッチ39を、前進位置、後進位置、または中立位置のいずれかに移動させる。
【0036】
CPU92は、所定間隔ごとに入力されるエンジンの積算運転時間を記録部91に記憶する。エンジンの運転時間は、エンジンが製造されてからの積算運転時間である。
【0037】
CPU92は、クランク角センサ81からの検出信号をエンジンの回転数として記録部91に記録する。
【0038】
CPU92は、スロットル開度センサ83からの検出信号をスロットルの開度として記録部91に記録する。
【0039】
ECU71は、エンジンに関するデータD2を、エンジンシリアル番号D1に関連付けられた暗号化キーで暗号化する。ECU71は、エンジンシリアル番号D1および暗号化したエンジンに関するデータD2を、外部出力部93を介してDCM12に出力する。
【0040】
外部出力部93は、DCM12との間で電子データの通信を行うためのインターフェースである。外部出力部93は、上記エンジンシリアル番号D1および暗号化したエンジンに関するデータD2をDCM12に送信する。ECU71の外部出力部93はDCM12と有線または無線によって電気的に接続されている。
【0041】
(DCM12)
DCM12は、船舶2に配置されており、ECU71に接続されている。図1に示すように、DCM12は、GPSモジュール101(位置検出部の一例)と、記録部102と、CPU(Central Processing Unit)103と、セルラーモジュール104と、を含む。
【0042】
GPSモジュール101は、GPS衛星200からのGPS信号を受信し、船舶2の位置情報D3をCPU103に出力する。記録部102は、RAM或いはROMなどのメモリ、及び、HDD(Hard Disk Drive)或いはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含む。記録部102は、予め定められた運転状態に対応した制御プログラムを記憶している。記録部102は、DCMシリアル番号D4を記録している。DCMシリアル番号は、DCM12を製造した際の製造番号である。なお、DCM12のシリアル番号に限らなくてもよく、DCM12に固有の情報であればよい。
【0043】
プロセッサであるCPU103は、記録部102に記憶されている制御プログラムに従って動作する。CPU103は、ECU71から入力されるエンジンシリアル番号D1、暗号化したエンジンに関するデータD2を記録部102に記録する。
【0044】
CPU103は、GPSモジュール101から受信した位置情報D3を記録部102に記録する。なお、DCM12が、暗号化されたエンジンに関するデータD2を取得する間隔と、位置情報D3を取得する間隔は、同じであっても異なっていてもよい。また、暗号化されたエンジンに関するデータD2と位置情報D3の所得した時刻が所定範囲内の場合、CPU103は、暗号化されたエンジンに関するデータD2と位置情報D3を関連付けて記録部102に記録してもよい。
【0045】
CPU103は、所定時間ごとに、記録部102に記録されたエンジンシリアル番号D1および暗号化したエンジンに関するデータD2、位置情報D3、DCMシリアル番号D4を、セルラーモジュール104を介してクラウドサーバ3に送信する。例えば、ECU71からDCM12へ数分毎にデータが出力されて記録部102に記録され、数分若しくは数時間ごとにDCM12からクラウドサーバ3にデータが送信される。GPSモジュール101からの位置情報D3も数分ごとに記録部102に記録されてもよい。
【0046】
セルラーモジュール104は、モバイル通信網を介してクラウドサーバ3と通信可能である。モバイル通信網は、例えば3G,4G或いは5Gなどのモバイル通信システムのネットワークである。
【0047】
(クラウドサーバ3)
クラウドサーバ3は、エンジンシリアル番号D1、暗号化したエンジンに関するデータD2、位置情報D3およびDCMシリアル番号D4をDCM12から受信する。クラウドサーバ3は、エンジンのシリアル番号と、そのシリアル番号に関連付けられた暗号化キーとの組を、複数の船舶2に対して複数組記憶する。クラウドサーバ3は、受信したエンジンシリアル番号D1に関連付けられた暗号化キーを用いて、暗号化されたエンジンに関するデータD2を複合化する。
【0048】
クラウドサーバ3は、DCM12から受信したエンジンに関するデータD2に基づいて、船舶の位置情報D3が正しいか否かを判断する。
【0049】
具体的には、クラウドサーバ3は、エンジンシリアル番号D1に関連付けられた暗号化キーでエンジンに関するデータD2を複合化できた場合に、船舶の位置情報D3を正しいと判断する。エンジンに関するデータD2を複合化できたことによって、DCM12が正しいECU71に接続されていることがわかるため、DCM12に設けられているGPSモジュール101による位置情報D3も正しいと判断することができる。
【0050】
エンジンに関するデータD2にエンジンの運転時間が含まれている場合、クラウドサーバ3は、運転時間の増加が船舶の位置の移動に対応しているか否かに基づいて、船舶2の位置情報D3が正しいか否かを判断することができる。例えば、所定のタイミングにおける位置情報D3とエンジンの運転時間と、該タイミングよりの後の位置情報D3とエンジンの運転時間と、を比較し、エンジンの運転時間の増加量に対して船舶2の位置の変化が少ないと判断できる場合に、クラウドサーバ3は、位置情報D3が正しくないと判断する。
【0051】
エンジンに関するデータD2にエンジンの回転数が含まれている場合、クラウドサーバ3は、回転数の変化が船舶2の位置の移動に対応しているか否かに基づいて、位置情報D3が正しいか否か判断する。例えば、所定の期間におけるエンジンの回転数の推移、平均値または積算値に対して、該期間における船舶の位置の変化が少ないと判断できる場合に、クラウドサーバ3は、位置情報D3が正しくないと判断する。
【0052】
エンジンに関するデータD2にエンジンのスロットルの開度が含まれている場合、クラウドサーバ3は、スロットルの開度の変化が船舶の位置の移動に対応しているか否かに基づいて、船舶の位置情報D3が正しいか否かを判断する。例えば、所定の期間におけるスロットルの開度の推移、平均値または積算値に対して、該期間における船舶の位置の変化が少ないと判断できる場合に、クラウドサーバ3は、位置情報D3が正しくないと判断する。
【0053】
エンジンに関するデータD2に燃料流量が含まれている場合、クラウドサーバ3は、燃料の使用量の変化が船舶の位置の移動に対応しているか否かに基づいて、船舶の位置情報D3が正しいか否かを判断する。例えば、所定の期間における燃料の使用量の推移、平均値または積算値に対して、該期間における船舶の位置の変化が少ないと判断できる場合に、クラウドサーバ3は、位置情報D3が正しくないと判断する。
【0054】
クラウドサーバ3は、受信したエンジンシリアル番号D1とDCMシリアル番号D4の組み合わせが、記憶したエンジンシリアル番号とDCMシリアル番号の組み合わせの情報と一致しない場合、位置情報D3が正しくないと判断する。クラウドサーバ3は、複数の船舶2に対して、船舶2ごとに設置されているエンジン24とDCM12のシリアル番号の組み合わせを記憶している。クラウドサーバ3は、受信したエンジンシリアル番号D1とDCMシリアル番号D4の組み合わせが、記憶している組み合わせと異なる場合、例えば他の船舶2にDCM12を搭載して位置情報を改竄するような不正を行っていると判断することができる。
【0055】
(船舶の位置情報管理方法)
次に、本実施形態の船舶の位置情報管理方法について説明する。図7は、本実施形態の船舶の位置情報管理方法を示すフロー図である。
【0056】
ステップS1では、ECU71のCPU92は、エンジン24のシリアル番号に関連付けられた暗号化キーを用いて、エンジンに関するデータD2を暗号化する。暗号化キーは、記録部91に予め記録されている。
【0057】
ステップS2では、ECU71からエンジンシリアル番号D1と、暗号化されたエンジンに関するデータD2が、DCM12に出力される。
【0058】
ステップS3では、エンジンシリアル番号D1と、暗号化されたエンジンに関するデータD2とがDCM12に入力され、DCM12は、これらを記録部102に記録する。
【0059】
上記ステップS1~S3と並列して、ステップS4では、DCM12のGPSモジュール101がGPS衛星より位置情報D3を受信する。そして、ステップS5では、DCM12の記録部102に位置情報D3が記録される。
【0060】
ステップS6では、DCM12は、所定時間が経過したか否かを判断する。所定時間が経過するまでの間、ステップS1~S3の制御フローとステップS4~S5の制御フローが各々繰り返される。ステップS1~S3を繰り返すことにより、DCM12の記録部102に、複数の暗号化されたエンジンに関するデータD2が時系列で記録される。また、ステップS4、S5を繰り返すことにより、DCM12の記録部102に複数の位置情報D3が時系列で記録される。暗号化されたエンジンに関するデータD2の取得間隔と、位置情報D3の取得間隔は、同じであっても異なっていてもよい。また、暗号化されたエンジンに関するデータD2と位置情報D3の所得した時刻が所定範囲内の場合、CPU103は、暗号化されたエンジンに関するデータD2と位置情報D3を関連付けて記録部102に記録してもよい。
【0061】
ステップS7では、DCM12は、記録部102に記憶されているDCMシリアル番号D4と、エンジンシリアル番号D1と、暗号化されたエンジンに関するデータD2と、位置情報D3とを、クラウドサーバ3に送信する。
【0062】
ステップS8では、クラウドサーバ3は、エンジンシリアル番号D1と、DCMシリアル番号D4と、暗号化されたエンジンに関するデータD2と、位置情報D3とを受信する。
【0063】
ステップS9では、クラウドサーバ3は、エンジンシリアル番号D1に関連した暗号化キーを用いて、暗号化されたエンジンに関するデータD2を複合化する。
【0064】
ステップS10では、クラウドサーバ3は、エンジンに関するデータD2に基づいて、位置情報D3が正しいか否かを判断し、制御が終了する。なお、上述したように、エンジンに関するデータD2が複合化できるか否かも、位置情報D3が正しいか否かの判断に含めてもよい。
【0065】
なお、位置情報D3が正しくないと判断した場合、クラウドサーバ3は、該当する船舶2を記録し、船舶2を使用したユーザを特定してもよい。また、位置情報D3が正しくないと判断した場合、クラウドサーバ3は、DCM12に警告を行う信号を送信し、船舶2に備え付けられているモニタ等に警告を表示してもよい。
【0066】
(特徴等)
本実施形態に係る船舶の位置情報管理システム1は、次の特徴を有する。
【0067】
船舶2の位置情報D3だけではなくエンジンに関するデータD2もクラウドサーバ3に送信し、エンジンに関するデータD2を用いることによって船舶の位置情報D3の真偽を判断できるため、GPS位置情報の改竄を抑制することができる。例えば、GPSモジュールを含むDCM12自体を他の船舶2に載せただけでは、クラウドサーバ3はエンジンに関するデータD2を取得できないため、位置情報D3が不正であると判断できる。また、DCM12に偽のデータを出力してクラウドサーバ3に送信したとしても、例えばエンジンの挙動と船舶の位置の挙動を照らし合わせることで、位置情報D3の真偽を判断できる。このように、船舶の位置情報D3の真偽を判断でき、GPSによる位置情報D3の改竄を抑制することができる。
【0068】
ECU71は、エンジンに関するデータD2を暗号化してDCM12に出力する。DCM12は、船舶の位置情報D3と、暗号化したエンジンに関するデータD2と、をクラウドサーバ3に送信する。クラウドサーバ3は、エンジンに関するデータD2を複合化できた場合に、船舶の位置情報D3を正しいと判断する。船舶2から送信されたエンジンに関するデータD2を複合化できたことによって、DCM12が正規のECU71に接続されていることがわかるため、DCM12に設けられているGPSモジュール101による位置情報D3も正しいと判断することができる。
【0069】
ECU71は、エンジン24に固有の情報に関連する暗号化キーを用いてエンジンに関するデータD2を暗号化し、暗号化したエンジンに関するデータD2と、エンジンに固有の情報をDCM12に出力する。DCM12は、船舶の位置情報D3と、暗号化したエンジンに関するデータD2と、エンジンに固有の情報をクラウドサーバ3に送信する。クラウドサーバ3は、船舶の位置情報D3と、暗号化したエンジンに関するデータD2と、エンジンに固有の情報とを受信し、エンジンに固有の情報に関連する暗号化キーを用いて、エンジンに関するデータD2を複合化する。このように、エンジンに関するデータD2を複合化できたことによって、DCM12が正しいECU71に接続されていることがわかるため、DCM12に設けられているGPSモジュール101による位置情報D3も正しいと判断することができる。また、エンジンに固有の情報に関する暗号化キーを用いるため、共通の暗号化キーを用いるよりも改竄を抑制することができる。
【0070】
エンジン24に固有の情報は、エンジン24に割り当てられるシリアル番号である。例えば、製造時に設定されるシリアル番号をエンジンに固有の情報として利用することができる。これにより、エンジン24毎に固有の暗号化キーを設定することができる。
【0071】
エンジンに関するデータD2は、エンジンの運転時間を含む。クラウドサーバ3は、運転時間の増加が船舶の位置の移動に対応しているか否かに基づいて、船舶の位置情報D3が正しいか否かを判断する。クラウドサーバ3は、例えば、運転時間の増加量と対して船舶の位置の移動が少ない場合に位置情報D3が正しくないと判断することができる。
【0072】
エンジンに関するデータD2は、エンジンの回転数を含む。クラウドサーバ3は、回転数の変化が船舶の位置の移動に対応しているか否かに基づいて、船舶の位置情報D3が正しいか否かを判断する。クラウドサーバ3は、例えば、所定期間における回転数の推移、平均値または積算値に対して船舶の移動が少ない場合に位置情報D3が正しくないと判断することができる。
【0073】
エンジンに関するデータD2は、スロットルの開度を含む。クラウドサーバ3は、スロットルの開度の変化が船舶の位置の移動に対応しているか否かに基づいて、船舶の位置情報D3が正しいか否かを判断する。クラウドサーバ3は、例えば、所定期間におけるスロットルの開度の推移、平均値または積算値に対して船舶の移動が少ない場合に位置情報D3が正しくないと判断することができる。
【0074】
DCM12は、エンジンシリアル番号D1、エンジンに関するデータD2および位置情報D3とともに、DCMシリアル番号D4もクラウドサーバ3に送信する。クラウドサーバ3は、受信したエンジンシリアル番号D1とDCMシリアル番号D4の組み合わせが、記憶したエンジンシリアル番号とDCMシリアル番号の組み合わせの情報と一致しない場合、位置情報D3が正しくないと判断する。これにより、例えば他の船舶2にDCM12を搭載して位置情報を改竄するような不正を行っていると判断することができる。
クラウドサーバ3は、船舶2の位置情報D3と船舶2のエンジンに関するデータD2を船舶2から受信し、エンジンに関するデータD2に基づいて船舶2の位置情報D3が正しいか否かを判断する。これにより、船舶の位置情報D3の真偽を判断でき、GPSによる位置情報の改竄を抑制することができる。
【0075】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0076】
上記実施形態では、エンジンに関するデータD2を暗号化してクラウドサーバ3に送信しているが、暗号化しなくてもよい。この場合であっても、エンジンに関するデータD2に基づいて、船舶の位置情報D3が正しいか否かを判断することができる。
【0077】
上記実施形態では、エンジンに固有の情報の一例であるシリアル番号に関連付けた暗号化キーを用いているが、これに限らなくてもよい。例えば、全ての船舶に対して共通の暗号化キーを用いてもよい。また、エンジンの種類毎に設定された暗号化キーが用いられてもよい。
【0078】
上記実施形態では、クランク角センサ81の検出信号がエンジンの回転数として記録部91に記録されているが、これに限らなくてもよい。クランク軸32と排気用カムシャフト62は連動して回転している。そのため、クランク角センサ81の検出信号に代えてカム角センサ82の検出信号をエンジンの回転数として記録部91に記録してもよい。
【0079】
上記実施形態では、エンジンに関するデータD2は、エンジンの運転時間、燃料流量、エンジンの回転数、およびスロットルの開度を含んでいるが、全てを含んでいなくてもよく、少なくとも1つ含まれていればよい。
【0080】
上記実施形態では、ステップS2において、ECU7は、暗号化したエンジンに関するデータD2とともにエンジンシリアル番号D1をDCM12に出力しているが、これに限らなくてもよい。エンジンシリアル番号D1は、一回DCM12に出力され、DCM12が記録されればよく、暗号化したエンジンに関するデータD2とともに毎回出力されなくてもよい。
【0081】
上記実施形態では、DCM12がDCMシリアル番号D4をクラウドサーバ3に送信しているが、送信しなくてもよい。
【0082】
上記実施形態では、船舶の位置情報管理システム1は、クラウドサーバ3を含んでいるが、クラウドサーバに限らず、物理サーバであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、GPS位置情報の改竄を抑制することが可能な船舶の位置情報管理システム、サーバおよび船舶の位置情報管理方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0084】
1:送受信システム、2:船舶、3:クラウドサーバ、10:船体、11:船舶推進装置、21:上部ケーシング、22:下部ケーシング、23:エキゾーストガイド部、24:エンジン、31:駆動軸、32:クランク軸、32a:突起部、32b:欠落部、33:プロペラ、33a:プロペラボス、34:プロペラシャフト、35:前後進切換部、36:ピニオンギア、37:前進用ギア、38:後進用ギア、39:ドッグクラッチ、40:排気通路、41:シリンダ、42:クランクケース、43:シリンダヘッド、44:シリンダブロック、45:シリンダ室、46:ピストン、47:コンロッド、51:吸気ポート、52:排気ポート、53:燃焼室、54:吸気弁、55:排気弁、56:吸気管、57:燃料噴射装置、58:スロットル弁、59:点火装置、60:排気管、61:吸気用カムシャフト、62:排気用カムシャフト、62a:突起部、62b:欠落部、63:吸気用カムプーリ、64:排気用カムプーリ、65:クランクプーリ、66a:中間プーリ、66b:中間プーリ、66c:中間プーリ、67:カムベルト、68:フライホイール、71:ECU、72:操作装置、73:スロットル操作装置、73a:スロットル操作部材、74:シフト操作装置、74a:シフト操作部材、75:始動停止操作装置、77:シフトアクチュエータ、81:クランク角センサ、81-87:センサ、82:カム角センサ、83:スロットル開度センサ、84:吸気圧センサ、85:排気圧センサ、86:燃料流量センサ、87:シフト位置センサ、91:記録部、92:演算部、93:外部出力部、101:GPSモジュール、102:記録部、103:CPU、104:セルラーモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7