(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141034
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】伝動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
F16H1/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047155
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005038
【氏名又は名称】セイコーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】保田 彬
(72)【発明者】
【氏名】小沢 明夫
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA36
3J027FA37
3J027FA50
3J027GB03
3J027GC02
3J027GC24
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE01
3J027GE14
3J027GE25
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れ、かつ構造を簡略化できる伝動装置を提供する。
【解決手段】伝動装置1は、伝達された動力によって軸線の回りに回転する入力軸2と、入力軸2の回転を複数段階で減速する複数の減速機構3,4と、出力軸5と、を備える。複数の減速機構3,4は、第1減速機構3と、第1減速機構3に対して回転力の伝達経路の後段側にある第2減速機構4とを含む。第2減速機構4は、第1減速機構3に比べて耐用時間が長い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝達された動力によって軸線の回りに回転する入力軸と、前記入力軸の回転を複数段階で減速する複数の減速機構と、前記減速機構によって回転する出力軸と、を備え、
複数の前記減速機構は、第1減速機構と、前記第1減速機構に対して回転力の伝達経路の後段側にある第2減速機構とを含み、
前記第2減速機構は、前記第1減速機構に比べて耐用時間が長い、伝動装置。
【請求項2】
前記第2減速機構の構成要素のうち回転動作する部材が、前記第1減速機構のうち前記部材に相当する部材に比べて疲労強度が高いことによって、前記第2減速機構が前記第1減速機構に比べて耐用時間が長くされている、請求項1記載の伝動装置。
【請求項3】
前記第1減速機構は、
複数の第1外歯を有し、前記軸線に対して偏心した第1偏心軸線を中心として配置された第1外歯車と、
複数の前記第1外歯に噛み合い可能な複数の第1内歯を有し、前記第1内歯の数が前記第1外歯の数と異なる第1内歯車と、を備え、
前記第2減速機構は、
複数の第2外歯を有し、前記軸線に対して偏心した第2偏心軸線を中心として配置された第2外歯車と、
複数の前記第2外歯に噛み合い可能な複数の第2内歯を有し、前記第2内歯の数が前記第2外歯の数と異なる第2内歯車と、を備え、
前記第1減速機構は、前記第1外歯車を偏心揺動させる第1偏心部材と、前記第1外歯車に取り付けられた複数の第1案内部材と、をさらに備え、
前記第2減速機構は、前記第2外歯車を偏心揺動させる第2偏心部材と、前記第2外歯車に取り付けられた複数の第2案内部材と、をさらに備え、
前記第2案内部材の数が前記第1案内部材の数に比べて多いことによって、前記第2減速機構が前記第1減速機構に比べて耐用時間が長くされている、請求項1または2記載の伝動装置。
【請求項4】
前記第2外歯の数が前記第1外歯の数に比べて多いことによって、前記第2減速機構が前記第1減速機構に比べて耐用時間が長くされている、請求項3に記載の伝動装置。
【請求項5】
前記第2減速機構の減速比が前記第1減速機構の減速比より大きいことによって、前記第2減速機構が前記第1減速機構に比べて耐用時間が長くされている、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の伝動装置。
【請求項6】
前記第1減速機構は、前記第2減速機構に比べてトルク効率が高い、請求項1~5のうちいずれか1項に記載の伝動装置。
【請求項7】
前記第1内歯と前記第2内歯のうち前記第1内歯のみが転がり軸受であることによって、前記第1減速機構が前記第2減速機構に比べてトルク効率が高くされている、請求項3または4記載の伝動装置。
【請求項8】
前記第1減速機構は、前記第1外歯車を偏心揺動させる第1偏心部材と、前記第1外歯車に取り付けられた複数の前記第1案内部材と、をさらに備え、
前記第2減速機構は、前記第2外歯車を偏心揺動させる第2偏心部材と、前記第2外歯車に取り付けられた複数の前記第2案内部材と、をさらに備え、
前記第1案内部材と前記第2案内部材のうち前記第1案内部材のみが転がり軸受であることによって、前記第1減速機構が前記第2減速機構に比べてトルク効率が高くされている、請求項3に記載の伝動装置。
【請求項9】
前記第1減速機構は、前記第1外歯車を偏心揺動させる第1偏心部材と、前記第1偏心部材と前記第1外歯車との間に介在する第1回転部材とをさらに備え、
前記第2減速機構は、前記第2外歯車を偏心揺動させる第2偏心部材と、前記第2偏心部材と前記第2外歯車との間に介在する第2回転部材とをさらに備え、
前記第1回転部材と前記第2回転部材のうち前記第1回転部材のみが転がり軸受であることによって、前記第1減速機構が前記第2減速機構に比べてトルク効率が高くされている、請求項3に記載の伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
伝達された動力を伝達する伝動装置として、モータの出力軸の回転速度を減速して出力する減速機が知られている。減速機は、例えば、多段に構成された複数のギヤシステム(減速機構)を備える(例えば、特許文献1を参照)。この減速機では、複数のギヤシステムの部品を共通化することでコストダウンを図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の減速機では、回転数に反比例してトルクが高くなる。高トルクを原因とする破損を回避するために減速機構の機械的強度を高めようとすると、減速機構の部品構成が簡略でなくなり、コスト、スペースなど点で不利となる場合がある。
【0005】
本発明の一態様は、耐久性に優れ、かつ構造を簡略化できる伝動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様に係る伝動装置は、伝達された動力によって軸線の回りに回転する入力軸と、前記入力軸の回転を複数段階で減速する複数の減速機構と、前記減速機構によって回転する出力軸と、を備え、複数の前記減速機構は、第1減速機構と、前記第1減速機構に対して回転力の伝達経路の後段側にある第2減速機構とを含み、前記第2減速機構は、前記第1減速機構に比べて耐用時間が長い。
【0007】
本発明の一態様に係る伝動装置によれば、第2減速機構では、減速に伴ってトルクが大きくなるため部品にかかる力が大きくなりやすいが、耐用時間が長いため、部品の損耗を抑制することができる。第1減速機構ではトルクが小さいため、機械的強度を抑える設計が可能である。したがって、第1減速機構の構造を簡略化でき、コストおよび省スペース化の点で有利となる。このように、本発明の一態様に係る伝動装置では、2つの減速機構の部品を共通化する場合に比べ、耐久性を高め、かつ構造の簡略化を図ることができる。
【0008】
本発明の一態様に係る伝動装置によれば、第2減速機構の耐用時間が長いため、最大負荷トルクを高めることができる。本発明の一態様に係る伝動装置によれば、第2減速機構の耐用時間が長いため、装置の製品寿命を長くし、長期間にわたる使用が可能である。
【0009】
(2)前記伝動装置では、前記第2減速機構の構成要素のうち回転動作する部材が、前記第1減速機構のうち前記部材に相当する部材に比べて疲労強度が高いことによって、前記第2減速機構が前記第1減速機構に比べて耐用時間が長くされていてもよい。
【0010】
この構成によれば、第2減速機構の耐久性をさらに高めることができる。
【0011】
(3)前記第1減速機構は、複数の第1外歯を有し、前記軸線に対して偏心した第1偏心軸線を中心として配置された第1外歯車と、複数の前記第1外歯に噛み合い可能な複数の第1内歯を有し、前記第1内歯の数が前記第1外歯の数と異なる第1内歯車と、を備え、前記第2減速機構は、複数の第2外歯を有し、前記軸線に対して偏心した第2偏心軸線を中心として配置された第2外歯車と、複数の前記第2外歯に噛み合い可能な複数の第2内歯を有し、前記第2内歯の数が前記第2外歯の数と異なる第2内歯車と、を備え、前記第1減速機構は、前記第1外歯車を偏心揺動させる第1偏心部材と、前記第1外歯車に取り付けられた複数の第1案内部材と、をさらに備え、前記第2減速機構は、前記第2外歯車を偏心揺動させる第2偏心部材と、前記第2外歯車に取り付けられた複数の第2案内部材と、をさらに備え、前記第2案内部材の数が前記第1案内部材の数に比べて多いことによって、前記第2減速機構が前記第1減速機構に比べて耐用時間が長くされていてもよい。
【0012】
この構成によれば、第2案内部材にかかる力を抑制できるため、第2減速機構の耐久性を高めることができる。
【0013】
(4)前記伝動装置では、前記第2外歯の数が前記第1外歯の数に比べて多いことによって、前記第2減速機構が前記第1減速機構に比べて耐用時間が長くされていてもよい。
【0014】
この構成によれば、第2外歯にかかる力を抑制できるため、第2減速機構の耐久性を高めることができる。
【0015】
(5)前記伝動装置では、前記第2減速機構の減速比が前記第1減速機構の減速比より大きいことによって、前記第2減速機構が前記第1減速機構に比べて耐用時間が長くされていてもよい。
【0016】
この構成によれば、第2外歯および第2内歯にかかる力を抑制できるため、第2減速機構の耐久性を高めることができる。
【0017】
(6)前記第1減速機構は、前記第2減速機構に比べてトルク効率が高いことが好ましい。
【0018】
この構成によれば、回転数が高い第1減速機構のトルク効率が高くなるため、全体としてトルク効率を高めることができる。
【0019】
(7)前記伝動装置では、記第1内歯と前記第2内歯のうち前記第1内歯のみが転がり軸受であることによって、前記第1減速機構が前記第2減速機構に比べてトルク効率が高くされていてもよい。
【0020】
この構成によれば、回転数が高い第1減速機構のトルク効率が高くなるため、全体としてトルク効率を高めることができる。
【0021】
(8)前記第1減速機構は、前記第1外歯車を偏心揺動させる第1偏心部材と、前記第1外歯車に取り付けられた複数の前記第1案内部材と、をさらに備え、前記第2減速機構は、前記第2外歯車を偏心揺動させる第2偏心部材と、前記第2外歯車に取り付けられた複数の前記第2案内部材と、をさらに備え、前記第1案内部材と前記第2案内部材のうち前記第1案内部材のみが転がり軸受であることによって、前記第1減速機構が前記第2減速機構に比べてトルク効率が高くされていてもよい。
【0022】
この構成によれば、回転数が高い第1減速機構のトルク効率が高くなるため、全体としてトルク効率を高めることができる。
【0023】
(9)前記第1減速機構は、前記第1外歯車を偏心揺動させる第1偏心部材と、前記第1偏心部材と前記第1外歯車との間に介在する第1回転部材とをさらに備え、前記第2減速機構は、前記第2外歯車を偏心揺動させる第2偏心部材と、前記第2偏心部材と前記第2外歯車との間に介在する第2回転部材とをさらに備え、前記第1回転部材と前記第2回転部材のうち前記第1回転部材のみが転がり軸受であることによって、前記第1減速機構が前記第2減速機構に比べてトルク効率が高くされていてもよい。
【0024】
この構成によれば、回転数が高い第1減速機構のトルク効率が高くなるため、全体としてトルク効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、耐久性に優れ、かつ構造を簡略化できる伝動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態に係る減速機(伝動装置)の斜視図である。
【
図2】
図1に示すA-A線に沿った減速機の縦断面図である。
【
図7】第1外歯車および第1案内部材の斜視図である。
【
図8】第1減速機構および第2偏心部材の斜視図である。
【
図9】第1変換部材の一方側から見た斜視図である。
【
図10】第1変換部材の他方側から見た斜視図である。
【
図13】第2外歯車および第2変換部材の斜視図である。
【
図16】第2変換部材の一方側から見た斜視図である。
【
図17】第2変換部材の他方側から見た斜視図である。
【
図18】実施形態に係る減速機の内部構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一態様に係る伝動装置の実施形態について図面を参照して説明する。
【0028】
図2に示すように、本実施形態の減速機(伝動装置)1は、入力軸2と、第1減速機構3と、第2減速機構4と、出力軸5と、ケーシング6と、伝達部材7と、を主に備えている。
【0029】
入力軸2および出力軸5は、それぞれの中心軸線が共通した共通軸上に位置するように配置されている。本実施形態では、この共通軸を回転軸線(軸線)O1という。回転軸線O1を通り、かつ回転軸線O1に直交する方向は径方向である。回転軸線O1を周回する方向は周方向である。回転軸線O1に沿う方向は上下方向である。上下方向のうち、入力軸2から出力軸5に向かう方向は上方である。上方の反対方向は下方である。回転軸線O1と平行な方向から見ることを平面視という。
【0030】
[ケーシング]
図1に示すように、ケーシング6は、第1枠体11と、第2枠体12と、第3枠体13と、を備えている。
第1枠体11、第2枠体12および第3枠体13は、それぞれ矩形枠状に形成されている。第1枠体11、第2枠体12および第3枠体13は、この順に、駆動源(例えばステッピングモータ等)の基体10の上に積み重ねられている。第1枠体11、第2枠体12および第3枠体13の中心軸は、回転軸線O1と平行である。第1枠体11、第2枠体12および第3枠体13は、全体として矩形筒状となる。ケーシング6は、第1減速機構3および第2減速機構4を収容する。
なお、基体10および枠体11~13の平面視形状は矩形状に限らず、円形状、多角形状などでもよい。
【0031】
図2に示すように、第1枠体11には、中央孔部11aが形成されている。中央孔部11aは、平面視において円形状とされている。中央孔部11aは、第1枠体11を上下方向に貫通する。中央孔部11aは、回転軸線O1と同軸とされている。第1枠体11の4つの角部(四隅)には、それぞれ、第1枠体11を上下方向に貫通する連結孔11b(
図1参照)が形成されている。
【0032】
中央孔部11aの内周面の上部には、拡径部11cが形成されている。拡径部11cは、他の部分(中央孔部11aの内周面の下部)より内径が大きい。拡径部11cは、平面視において円形状とされている。拡径部11cは、回転軸線O1と同軸とされている(
図5参照)。
【0033】
中央孔部11aの内周面には、拡径部11cと他の部分との内径差によって段差面11dが形成されている。段差面11dは、回転軸線O1と垂直な面である。段差面11dには、下方に向けて複数の支持孔11eが形成されている。複数の支持孔11eは、回転軸線O1を中心として円形状に並ぶ。複数の支持孔11eは、周方向に等間隔をあけて形成されている(
図5参照)。
【0034】
第2枠体12には、中央孔部12aが形成されている。中央孔部12aは、平面視において円形状とされている。中央孔部12aは、第2枠体12を上下方向に貫通する。中央孔部12aは、回転軸線O1と同軸とされている。第2枠体12の4つの角部(四隅)には、それぞれ、第2枠体12を上下方向に貫通する連結孔12b(
図1参照)が形成されている。
【0035】
中央孔部12aの内周面の上部には、拡径部12cが形成されている。拡径部12cは、他の部分(中央孔部12aの内周面の下部)より内径が大きい。拡径部12cは、平面視において円形状とされている。拡径部12cは、回転軸線O1と同軸とされている。
【0036】
中央孔部12aの内周面には、拡径部12cと他の部分との内径差によって段差面12dが形成されている。段差面12dは、回転軸線O1と垂直な面である。第2枠体12には、複数の支持孔12eが形成されている。複数の支持孔12eは、段差面12dから第2枠体12の下面にかけて第2枠体12を上下方向に貫通する。複数の支持孔12eは、回転軸線O1を中心として円形状に並ぶ。複数の支持孔12eは、周方向に等間隔をあけて形成されている。
【0037】
第3枠体13には、中央孔部13aが形成されている。中央孔部13aは、平面視において円形状とされている。中央孔部13aは、第3枠体13を上下方向に貫通する。中央孔部13aは、回転軸線O1と同軸とされている。
図1に示すように、第3枠体13の4つの角部(四隅)の上部には、それぞれ切欠き13cが形成されている。切欠き13cの底面13dには、連結孔13bが形成されている。連結孔13bは、底面13dから第3枠体13の下面にかけて第3枠体13を上下方向に貫通する。
【0038】
図2に示すように、第3枠体13の下面には、上方に向けて複数の支持孔13eが形成されている。複数の支持孔13eは、回転軸線O1を中心として円形状に並ぶ。複数の支持孔13eは、周方向に等間隔をあけて形成されている。
【0039】
第3枠体13には、複数の固定孔13fが形成されている。固定孔13fは、第3枠体13の内周面から外周面にかけて第3枠体13を径方向に貫通する。固定孔13fは、第3枠体13の4つの辺部の中央にそれぞれ形成されている。
【0040】
図1に示すように、第1枠体11と、第2枠体12と、第3枠体13とは、固定具22によって連結されている。固定具22は、第3枠体13の底面13dから連結孔13b、連結孔12bおよび連結孔11bに挿入され、ネジ止めなどにより第1枠体11に固定されている。第1枠体11は、固定具21によって、駆動源(例えばステッピングモータ等)の基体10に固定されている。
【0041】
[入力軸]
図2に示すように、入力軸2は、上下方向に沿って配置されている。入力軸2は、外部から伝達された動力(トルク)によって回転軸線O1回りに回転可能である。入力軸2は、下から上に向けて第1枠体11および第2枠体12に挿入されている。
【0042】
[第1減速機構]
図2および
図3に示すように、第1減速機構3は、第1偏心部材31と、第1回転部材32と、第1外歯車33と、第1内歯車34と、複数の第1案内部材35と、第1変換部材36と、下部回転部材37とを備える。
【0043】
図6に示すように、第1偏心部材31は、基台部41と、偏心カム42とを備える。
基台部41は、回転軸線O1を中心軸とする円柱状に形成されている。
偏心カム42は、基台部41の上面から上方に向けて突出する。偏心カム42は、回転軸線O1から径方向に偏心した偏心軸線O2を中心軸とする円柱状に形成されている。偏心カム42の外径は、基台部41の外径より小さい。偏心軸線O2は「第1偏心軸線」の例である。
第1偏心部材31には、基台部41の下面から偏心カム42の上面にかけて第1偏心部材31を貫通する挿通孔31aが形成されている。挿通孔31aは、回転軸線O1を中心として平面視円形状に形成されている。挿通孔31aには入力軸2が挿通されている(
図2参照)。
【0044】
図2に示すように、基台部41には、複数の固定孔41aが形成されている。固定孔41aは、外周面から内周面にかけて基台部41を貫通する。複数の固定孔41aは、周方向に間隔をあけて形成されている(
図6参照)。固定孔41aには、それぞれ固定具43が挿入されている。固定具43の先端は入力軸2の外周面に達している。固定具43は、ネジ止めなどにより基台部41と入力軸2とを固定する。これにより、第1偏心部材31は、入力軸2の回転に伴って回転軸線O1の回りに回転する。
【0045】
下部回転部材37は、内輪45と、外輪46と、複数の転動体47とを備える。内輪45は、基台部41に外嵌めされる。外輪46は、第1枠体11の中央孔部11aに内嵌めされる。転動体47は、内輪45と外輪46との間に転動可能に保持される。転動体47は、例えば、ボールである。下部回転部材37は、例えば、玉軸受である。なお、本実施形態の減速機は、下部回転部材37を用いない構成も可能である。
第1偏心部材31は、下部回転部材37を介して第1枠体11に対して位置決めされる。第1偏心部材31は、下部回転部材37によって、回転軸線O1の回りに回転可能となる。
【0046】
第1回転部材32は、内輪48と、外輪49と、複数の転動体50とを備える。内輪48は、偏心カム42に外嵌めされる。外輪49は、第1外歯車33の中央孔部33aに内嵌めされる。転動体50は、内輪48と外輪49との間に転動可能に保持される。転動体50は、例えば、ボールである。第1回転部材32は、例えば、玉軸受である。第1回転部材32は、偏心カム42と第1外歯車33との間に介在する。
【0047】
第1外歯車33は、円板状に形成され、偏心軸線O2を中心として配置される。第1外歯車33の中央には、中央孔部33aが形成されている。中央孔部33aは、第1外歯車33を上下方向に貫通する。中央孔部33aは、平面視において円形状とされている。第1外歯車33は、第1回転部材32に外嵌めされる。第1外歯車33は、第1回転部材32を介して偏心カム42に対して位置決めされる。第1外歯車33は、第1回転部材32によって、偏心軸線O2の回りに回転可能となる(
図5参照)。
【0048】
図4および
図5に示すように、第1外歯車33の外周縁には、複数の第1外歯51が形成されている。複数の第1外歯51は、偏心軸線O2を周回する周方向に等間隔をあけて形成されている。本実施形態では、第1外歯51の数は7つである。第1外歯51は、トロコイド曲線に沿った歯形、いわゆるトロコイド歯形とされていてもよい。これにより、第1外歯51は、第1外歯車33の回転時に、第1内歯車34の第1内歯52と常時接触させることができる。
【0049】
図2および
図7に示すように、第1外歯車33には、複数の支持孔33bが形成されている。支持孔33bは、第1外歯車33の上面から下方に向けて凹むように形成されている。複数の支持孔33bは、第1外歯車33の周方向に等間隔をあけて形成されている。
【0050】
図4および
図5に示すように、第1内歯車34は、複数の第1内歯52を備える。複数の第1内歯52は、回転軸線O1を周回する周方向に間隔をあけて形成されている。第1内歯52は、第1外歯車33の第1外歯51と噛み合い可能である。第1内歯52は、回転軸線O1を周回する周方向に等間隔をあけて並ぶ。第1内歯52の数は、第1外歯車33の第1外歯51の数と異なる。第1内歯52の数は、第1外歯車33の第1外歯51の数より多い。本実施形態では、第1内歯52の数は8つである。
【0051】
図2に示すように、第1内歯52は、支持軸54と、複数(本実施形態では2つ)の回転体55とを備える。支持軸54は、回転体55に挿通し、回転体55を支持する。支持軸54は上下方向に沿う。支持軸54の下部は、第1枠体11の支持孔11eに挿入されている。支持軸54の上部は、第2枠体12の支持孔12eに挿入されている。
【0052】
回転体55は、例えば、転がり軸受(玉軸受)である。回転体55は、内輪56と、外輪57と、複数の転動体58とを備える。内輪56は、支持軸54に外嵌めされる。転動体58は、内輪56と外輪57との間に転動可能に保持される。転動体58は、例えば、ボールである。外輪57の外周面は、第1外歯車33の第1外歯51の外周面と接触できる。
なお、回転体55は、転がり軸受(玉軸受)に限らず、ころ軸受、滑り軸受でもよい。
【0053】
図7に示すように、第1案内部材35は、支持軸61と、回転体62とを備える。支持軸61は、回転体62に挿通し、回転体62を支持する。支持軸61は上下方向に沿う。支持軸61の下部は、第1外歯車33の支持孔33bに挿入されている。これにより、第1案内部材35は第1外歯車33に取り付けられる。
【0054】
回転体62は、支持軸61の上部に設けられる。回転体62は、例えば、転がり軸受である。回転体62は、内輪63と、外輪64と、複数の転動体65とを備える。内輪63は、支持軸61に外嵌めされる。転動体65は、内輪63と外輪64との間に転動可能に保持される。転動体65は、例えば、ボールである。第1案内部材35は、例えば、カムフォロアである。外輪64は、支持軸61の回りに回転可能となる。本実施形態では、第1案内部材35の数は、8つである。
なお、回転体62は、転がり軸受に限らず、滑り軸受でもよい。
【0055】
図2および
図8に示すように、第1変換部材36は、第1外歯車33の上に設けられる。
図9および
図10に示すように、第1変換部材36は、回転軸線O1を中心軸とする円板状に形成されている。第1変換部材36の中央には、中央孔部36aが形成されている。中央孔部36aは、第1変換部材36を上下方向に貫通する。
【0056】
図10に示すように、第1変換部材36の下面には、複数の収容凹部36bが形成されている。収容凹部36bは、平面視において円形状とされている。収容凹部36bは、第1変換部材36の下面から上方に向けて凹むように形成されている。複数の収容凹部36bは、第1変換部材36の周方向に等間隔をあけて形成されている。収容凹部36bの数は、第1案内部材35の数と同数である。本実施形態では、収容凹部36bの数は8つである。収容凹部36bは、第1案内部材35の回転体62を収容できる(
図2参照)。
【0057】
収容凹部36bの内径は、回転体62の外径より大きい。収容凹部36bの内径は、第1案内部材35の偏心揺動を許容しつつ、第1外歯車33の回転に伴って第1変換部材36が回転軸線O1の回りに回転できるように定められる。そのため、第1変換部材36は、偏心揺動を含む第1外歯車33の運動を回転軸線O1回りの回転運動に変換することができる。
【0058】
図9に示すように、第1変換部材36の上面には、1または複数の嵌合凸部36cが形成されている。嵌合凸部36cは、平面視において矩形状とされている。嵌合凸部36cは、第1変換部材36の上面から上方に突出して形成されている。複数の嵌合凸部36cは、第1変換部材36の周方向に間隔をあけて形成されている。本実施形態では、嵌合凸部36cの数は2つである。2つの嵌合凸部36cは、第1変換部材36の中心軸に対して回転対称となる位置にある。嵌合凸部36cは、第2偏心部材71の嵌合凹部83aおよび切欠き81aに嵌合することによって、第1変換部材36と第2偏心部材71との相対的な回転を規制する。
【0059】
[第2減速機構]
図2および
図3に示すように、第2減速機構4は、第2偏心部材71と、第2回転部材72と、第2外歯車73と、第2内歯車74と、複数の第2案内部材75と、第2変換部材76と、内回転部材78と、補助回転部材79とを備える。
第2減速機構4は、第1減速機構3に対して、入力軸2から出力軸5に至る伝達経路(回転力の伝達経路)の後段側(下流側)にある。第1減速機構3と第2減速機構4は、入力軸2の回転を複数段階(2段階)で減速する。
【0060】
図11に示すように、第2偏心部材71は、基筒部81と、偏心カム82と、フランジ部83とを備える。
基筒部81は、回転軸線O1を中心軸とする円筒状に形成されている。基筒部81は、第1変換部材36の中央孔部36aに挿入され、中央孔部36aに嵌合する(
図2参照)。基筒部81には、2つの切欠き81aが形成されている。2つの切欠き81aは、基筒部81の中心軸に対して回転対称となる位置にある。
【0061】
フランジ部83は、環状に形成されている。フランジ部83は、基筒部81の上端部から径方向の外側に向けて延びる。フランジ部83の外径は第1変換部材36の中央孔部36a(
図2参照)の内径より大きい。フランジ部83には、2つの嵌合凹部83aが形成されている。2つの嵌合凹部83aは、フランジ部83の中心軸に対して回転対称となる位置にある。
【0062】
図8に示すように、嵌合凹部83aおよび切欠き81aには、第1変換部材36の嵌合凸部36cが嵌合する。嵌合凹部83aおよび切欠き81aに嵌合凸部36cが嵌合することによって、第1変換部材36に対する第2偏心部材71の相対的な回転が規制される。そのため、第2偏心部材71は、第1変換部材36の回転に伴って回転する。
【0063】
図11に示すように、偏心カム82は、フランジ部83の上面から上方に向けて突出する。偏心カム82は、回転軸線O1から径方向に偏心した偏心軸線O3を中心軸とする円柱状に形成されている。偏心カム82の外径は、フランジ部83の外径より小さい。偏心軸線O3は「第2偏心軸線」の例である。
第2偏心部材71には、上下方向に貫通する挿通孔71aが形成されている。挿通孔71aは、回転軸線O1を中心として平面視円形状に形成されている。
【0064】
図2に示すように、内回転部材78は、第2偏心部材71の挿通孔71aの内部に設けられている。内回転部材78は、主筒85と、複数の転動体86とを備える。主筒85は、回転軸線O1を中心とする円筒状に形成されている。主筒85には、入力軸2が挿通されている。転動体86は、主筒85に転動可能に保持される。転動体86は、例えば、針状または円筒状のコロである。転動体86は、入力軸2の外周面と、第2偏心部材71の内周面とに接触できる。内回転部材78は、例えば、コロ軸受である。
【0065】
第2偏心部材71は、内回転部材78を介して入力軸2に対して位置決めされる。第2偏心部材71は、内回転部材78によって、回転軸線O1の回りに回転可能となる。
【0066】
第2回転部材72は、内輪88と、外輪89と、複数の転動体90とを備える。内輪88は、偏心カム82に外嵌めされる。外輪89は、第2外歯車73の筒部68(
図13参照)に内嵌めされる。転動体90は、内輪88と外輪89との間に転動可能に保持される。転動体90は、例えば、ボールである。第2回転部材72は、例えば、玉軸受である。第2回転部材72は、偏心カム82と第2外歯車73との間に介在する。
【0067】
図12および
図13に示すように、第2外歯車73は、基体66と、複数の第2外歯91とを備える。
図13に示すように、基体66は、主板部67と、筒部68とを備える。主板部67は、円板状に形成され、偏心軸線O3を中心として配置される。主板部67の中央には、中央孔部67aが形成されている。中央孔部67aは、主板部67を上下方向に貫通する。中央孔部67aは、平面視において円形状とされている。
筒部68は、第2回転部材72に外嵌めされる。第2外歯車73は、第2回転部材72を介して偏心カム82に対して位置決めされる。第2外歯車73は、第2回転部材72によって、偏心軸線O3の回りに回転可能となる。
【0068】
図13および
図14に示すように、基体66の外周面には、複数の第2外歯91が形成されている。複数の第2外歯91は、偏心軸線O3を周回する周方向に等間隔をあけて形成されている。本実施形態では、第2外歯91の数は15である。第2外歯91は、トロコイド曲線に沿った歯形、いわゆるトロコイド歯形とされていてもよい。これにより、第2外歯91は、第2外歯車73の回転時に、第2内歯車74の第2内歯92と常時接触させることができる。
【0069】
図12および
図13に示すように、主板部67には、複数の支持孔67bが形成されている。支持孔67bは、主板部67の上面から下方に向けて凹むように形成されている。複数の支持孔67bは、主板部67の周方向に等間隔をあけて形成されている。
【0070】
図12および
図14に示すように、第2内歯車74は、複数の第2内歯92を備える。複数の第2内歯92は、回転軸線O1を周回する周方向に間隔をあけて形成されている。第2内歯92は、第2外歯車73の第2外歯91と噛み合い可能である。第2内歯92は、回転軸線O1を周回する周方向に等間隔をあけて並ぶ。第2内歯92の数は、第2外歯車73の第2外歯91の数と異なる。第2内歯92の数は、第2外歯車73の第2外歯91の数より多い。本実施形態では、第2内歯92の数は16である。
【0071】
図2に示すように、第2内歯92は、支持軸94と、回転体95とを備える。支持軸94は、回転体95に挿通し、回転体95を支持する。支持軸94は上下方向に沿う。支持軸94の下部は、第2枠体12の支持孔12eに挿入されている。支持軸94の上部は、第3枠体13の支持孔13eに挿入されている。回転体95は、例えば、円柱状のローラ(滑り軸受)である。回転体95の外周面は、第2外歯車73の第2外歯91の外周面と接触できる。
なお、回転体95は、滑り軸受に限らず、転がり軸受であってもよい。
【0072】
図13に示すように、第2案内部材75は、支持軸101と、回転体102とを備える。支持軸101は、回転体102に挿通し、回転体102を支持する。支持軸101は上下方向に沿う。支持軸101の下部は、第2外歯車73の支持孔67bに挿入されている。これにより、第2案内部材75第2外歯車73に取り付けられる。
【0073】
回転体102は、支持軸101の上部に設けられる。回転体102は、例えば、円柱状のローラ(滑り軸受)である。本実施形態では、第2案内部材75の数は、10である。
なお、回転体102は、滑り軸受に限らず、転がり軸受であってもよい。
【0074】
第2変換部材76と、伝達部材7(
図2参照)と、出力軸5と、出力軸軸受14(
図2参照)と、連結リング15と、オイルシール16と、固定リング17と、を、出力軸ユニット140という。出力軸ユニット140は「出力軸を含むユニット」の例である。
【0075】
図2および
図15に示すように、第2変換部材76は、第2外歯車73の上に設けられる。
図16および
図17に示すように、第2変換部材76は、円板状に形成されている。第2変換部材76の中央には、中央孔部76aが形成されている。中央孔部76aは、第2変換部材76を上下方向に貫通する。
【0076】
図17に示すように、第2変換部材76の下面には、複数の収容凹部76bが形成されている。収容凹部76bは、平面視において円形状とされている。収容凹部76bは、第2変換部材76の下面から上方に向けて凹むように形成されている。複数の収容凹部76bは、第2変換部材76の周方向に等間隔をあけて形成されている。収容凹部76bの数は、第2案内部材75の数と同数である。本実施形態では、収容凹部76bの数は8つである。収容凹部76bは、第2案内部材75の回転体102を収容できる(
図2参照)。
【0077】
収容凹部76bの内径は、回転体102の外径より大きい。収容凹部76bの内径は、第2案内部材75の偏心揺動を許容しつつ、第2外歯車73の回転に伴って第2変換部材76が回転軸線O1の回りに回転できるように定められる。そのため、第2変換部材76は、偏心揺動を含む第2外歯車73の運動を回転軸線O1回りの回転運動に変換することができる。
【0078】
図16に示すように、第2変換部材76の上面には、1または複数の嵌合凸部76cが形成されている。嵌合凸部76cは、平面視において矩形状とされている。嵌合凸部76cは、第2変換部材76の上面から上方に突出して形成されている。複数の嵌合凸部76cは、第2変換部材76の周方向に間隔をあけて形成されている。本実施形態では、嵌合凸部76cの数は2つである。
【0079】
図2に示すように、補助回転部材79は、入力軸2の先端部の外周面と、筒部112の下部の内周面との間に設けられている。補助回転部材79は、転がり軸受である。
【0080】
[伝達部材]
図2および
図19に示すように、伝達部材7は、天板部111と、筒部112と、フランジ部113とを備える。
天板部111は、回転軸線O1を中心として平面視円形状に形成されている。天板部111の中央には、固定孔111aが形成されている。固定孔111aは、天板部111を上下方向に貫通する。固定孔111aには、固定具114が挿入されている。固定具114は、出力軸5の挿入孔5aに挿入される。固定具114は、ネジ止めなどにより天板部111を出力軸5に固定する。
【0081】
天板部111の上面には、径方向に沿う溝状の切欠き111bが形成されている。切欠き111bには、規制ピン115の下部が挿入されている。規制ピン115の上部は、出力軸5の挿入孔5bに挿入される。規制ピン115は、伝達部材7と出力軸5との相対的な回転を規制する。
【0082】
筒部112は、天板部111の周縁から垂下する円筒状に形成されている。筒部112の下部には、2つの切欠き112aが形成されている。2つの切欠き112aは、筒部112の中心軸に対して回転対称となる位置にある。
【0083】
フランジ部113は、筒部112の外周面から径方向の外側に向けて延びる。フランジ部113の外径は第2変換部材76の中央孔部76aの内径より大きい。フランジ部113には、2つの嵌合凹部113aが形成されている。2つの嵌合凹部113aは、フランジ部113の中心軸に対して回転対称となる位置にある。
【0084】
図18に示すように、嵌合凹部113aおよび切欠き112aには、第2変換部材76の嵌合凸部76cが嵌合する。嵌合凹部113aおよび切欠き112aに嵌合凸部76cが嵌合することによって、第2変換部材76に対する伝達部材7の相対的な回転が規制される。そのため、伝達部材7は、第2変換部材76の回転に伴って回転する。
【0085】
[出力軸]
図2に示すように、出力軸5は、主部121と、筒部122とを備える。主部121は、円柱状に形成されている。筒部122は、円筒状に形成されている。筒部122は、主部121の下端部の周縁から垂下する。出力軸5は、上下方向に沿って配置され、回転軸線O1回りに回転可能である。主部121の下面の中央には、固定具114が挿入される挿入孔5aが形成されている。主部121の下面の中央を外れた位置には、規制ピン115が挿入される挿入孔5bが形成されている。出力軸5は、固定具114および規制ピン115によって伝達部材7と一体的に組み合わされる。出力軸5は、伝達部材7の回転に伴って回転軸線O1の回りに回転する。
【0086】
[その他の構成]
出力軸5の筒部122の下部の外周面には、出力軸軸受14が設けられている。出力軸軸受14の外周面には連結リング15が設けられている。連結リング15は、主筒部151と、フランジ部152と、内方延出部153とを備える。主筒部151は、回転軸線O1を中心軸とする円筒状とされている。フランジ部152は、主筒部151の上端から径方向の外側に突出する。内方延出部153は、主筒部151の下端から径方向の内側に突出する。
【0087】
第3枠体13の固定孔13fに挿入された固定具131の先端は、連結リング15の主筒部151の外周面に達している。筒部122の上部の外周面には、環状のオイルシール16が設けられている。オイルシール16の外周側には、固定リング17が設けられている。固定リング17は、固定具132によって連結リング15のフランジ部152に固定されている。
【0088】
[第1減速機構と第2減速機構との比較]
第2減速機構4は、第1減速機構3に比べて耐用時間が長くされる。
第1減速機構3の耐用時間と第2減速機構4の耐用時間とを比較するには、例えば、第2減速機構4の構成要素のうち回転動作する部材と、第1減速機構3のうち前記部材に相当する部材とを対象とすることができる。
【0089】
第2減速機構4の構成要素のうち回転動作する部材としては、例えば、第2偏心部材71、第2回転部材72、第2外歯車73、第2案内部材75、第2変換部材76、および第2内歯92が挙げられる。
【0090】
第1減速機構3のうち第2偏心部材71に相当する部材は、第1偏心部材31である。第1減速機構3のうち第2回転部材72に相当する部材は、第1回転部材32である。第1減速機構3のうち第2外歯車73に相当する部材は、第1外歯車33である。第1減速機構3のうち第2案内部材75に相当する部材は、第1案内部材35である。第1減速機構3のうち第2変換部材76に相当する部材は、第1変換部材36である。第1減速機構3のうち第2内歯92に相当する部材は、第1内歯52である。第1偏心部材31、第1回転部材32、第1外歯車33、第1案内部材35、第1変換部材36、および第1内歯52は、回転動作する部材である。
【0091】
耐用時間としては、例えば、予め定められた入力トルクで、予め定められた回転数の回転動作をさせたときに、出力トルクが開始時に比べて10%以上低下するまでの時間を挙げることができる。耐用時間は、予め定められた入力トルクで、予め定められた回転数の回転動作をさせたときに、当該部材が破損するまでの時間であってもよい。
【0092】
第2減速機構4の耐用時間を、第1減速機構3の耐用時間に比べて長くするには、第2減速機構4の回転動作する部材の疲労強度を、これに相当する第1減速機構3の部材の疲労強度より高くすることが好ましい。疲労強度試験としては、ASTM E466 Standard Practice for Conducting Force Controlled Constant Amplitude Axial Fatigue Tests of Metallic Materialsなどがある。
この構成によれば、第2減速機構4の疲労強度を高くできるため、第2減速機構4の耐久性をさらに高めることができる。
【0093】
第2減速機構4の耐用時間を、第1減速機構3の耐用時間に比べて長くするには、第2案内部材75の数が第1案内部材35の数より多いことが好ましい。本実施形態では、第1案内部材35の数は8であり、第2案内部材75の数は10である。そのため、この条件は満たされている。第2案内部材75の数が第1案内部材35の数より多いと、第2案内部材75にかかる力を抑制できるため、第2減速機構4の耐久性を高めることができる。
【0094】
第2減速機構4の耐用時間を、第1減速機構3の耐用時間に比べて長くするには、第2外歯車73の第2外歯91が、第1外歯車33の第1外歯51に比べて多いことが好ましい。本実施形態では、第1外歯車33の第1外歯51の数は7つである。第2外歯車73の第2外歯91の数は15である。そのため、この条件は満たされている。第2外歯車73の第2外歯91が、第1外歯車33の第1外歯51に比べて多いと、第2外歯91にかかる力を抑制できるため、第2減速機構4の耐久性を高めることができる。
【0095】
第2減速機構4の耐用時間を、第1減速機構3の耐用時間に比べて長くするには、第2減速機構4の減速比が第1減速機構3の減速比より大きいことが好ましい。本実施形態では、第1減速機構3の減速比は1/7である。第2減速機構4の減速比は1/15である。そのため、この条件は満たされている。第2減速機構4の減速比が第1減速機構3の減速比より大きいと、第2外歯91および第2内歯92にかかる力を抑制できるため、第2減速機構4の耐久性を高めることができる。
【0096】
第1減速機構3は、第2減速機構4に比べてトルク効率が高いことが好ましい。回転数が高い第1減速機構3のトルク効率が高くなると、全体としてトルク効率を高めることができる。
【0097】
第1減速機構3のトルク効率を、第2減速機構4のトルク効率に比べて高くするには、第1減速機構3の第1内歯52と、第2減速機構4の第2内歯92のうち、第1内歯52のみが転がり軸受であることが好ましい。転がり軸受の摩擦係数は、他の軸受(例えば、滑り軸受)の摩擦係数より小さいため、第1内歯52のみが転がり軸受であると、第1減速機構3のトルク効率は比較的高くなる。
【0098】
本実施形態では、第1内歯52は転がり軸受である。第2内歯92は滑り軸受である。そのため、この条件は満たされている。第2内歯92には、滑り軸受のほか、ボール、ピン、回転軸つきのピン(3段ピンなど)、スリーブなどを採用してもよい。
回転数が高い第1減速機構3のトルク効率が高くなると、全体としてトルク効率を高めることができる。
【0099】
第2内歯92に転がり軸受を適用する場合でも、第2内歯92の摩擦係数が第1内歯52の摩擦係数より大きい場合は、第1減速機構3のトルク効率を、第2減速機構4のトルク効率に比べて高くできる可能性がある。例えば、第1内歯52が玉軸受であり、第2内歯92がコロ軸受である場合には、この条件が満たされる可能性がある。
【0100】
第1減速機構3のトルク効率を、第2減速機構4のトルク効率に比べて高くするには、第1減速機構3の第1案内部材35と、第2減速機構4の第2案内部材75のうち、第1案内部材35のみが転がり軸受であることが好ましい。
本実施形態では、第1案内部材35は転がり軸受である。第2案内部材75は滑り軸受である。そのため、この条件は満たされている。第2案内部材75には、滑り軸受のほか、ボール、ピン、回転軸つきのピン(3段ピンなど)、スリーブなどを採用してもよい。
回転数が高い第1減速機構3のトルク効率が高くなると、全体としてトルク効率を高めることができる。
【0101】
第2案内部材75に転がり軸受を適用する場合でも、第2案内部材75の摩擦係数が第1案内部材35の摩擦係数より大きい場合は、第1減速機構3のトルク効率を、第2減速機構4のトルク効率に比べて高くできる可能性がある。例えば、第1案内部材35が玉軸受であり、第2案内部材75がコロ軸受である場合には、この条件が満たされる可能性がある。
【0102】
第1減速機構3のトルク効率を、第2減速機構4のトルク効率に比べて高くするには、第1減速機構3の第1回転部材32と、第2減速機構4の第2回転部材72のうち、第1回転部材32のみが転がり軸受であってもよい。
本実施形態では、第1回転部材32および第2回転部材72はいずれも転がり軸受であるが、第2回転部材72を滑り軸受とすることによって、この条件を満たすことができる。滑り軸受としては、例えば、
図2に示す第2内歯92の構造を採用することができる。第2回転部材72には、滑り軸受のほか、ボール、ピン、回転軸つきのピン(3段ピンなど)、スリーブなどを採用してもよい。
回転数が高い第1減速機構3のトルク効率が高くなると、全体としてトルク効率を高めることができる。
【0103】
第2回転部材72に転がり軸受を適用する場合でも、第2回転部材72の摩擦係数が第1回転部材32の摩擦係数より大きい場合は、第1減速機構3のトルク効率を、第2減速機構4のトルク効率に比べて高くできる可能性がある。例えば、第1回転部材32が玉軸受であり、第2回転部材72がコロ軸受である場合には、この条件が満たされる可能性がある。
【0104】
図2に示すように、出力軸ユニット140は、上下方向(回転軸線O1に沿う方向)に移動できる。出力軸ユニット140は、固定具131を側方から押し当てることによって、上下方向の任意の位置でケーシング6に対して位置決めすることができる。
【0105】
出力軸ユニット140は、第2案内部材75に上から荷重を加えることができる。荷重は、第2案内部材75を介して第2外歯車73に及ぶ。第2外歯車73は第2偏心部材71に向けて押圧され、第2偏心部材71に押し当てられる。そのため、回転軸線O1に対する第2外歯車73の傾き、および、第2外歯車73の回転軸線O1方向の位置ずれなどを抑制できる。したがって、第2外歯車73の姿勢は安定に維持され、第2外歯車73と第2内歯車74との噛み合いは良好となる。よって、トルク効率を高めることができる。
【0106】
[減速機の動作]
次に、減速機1の動作について説明する。
外部の駆動源(例えばステッピングモータ等)からの動力が入力軸2に伝達されると、入力軸2は、回転軸線O1の回りに回転する。入力軸2の回転力は、第1偏心部材31を介して第1外歯車33に伝えられる。
【0107】
図4および
図5に示すように、第1外歯車33は、第1外歯51が第1内歯52を順次乗り越えるように偏心揺動しつつ、回転軸線O1の回りに回転する。第1外歯51の数(7歯)は、第1内歯52の数(8歯)と異なるため、歯数の角度差分だけ第1外歯車33を減速させることができる。
【0108】
図8に示すように、第1外歯車33の回転とともに、第1変換部材36は回転軸線O1の回りに回転する。
図2に示すように、第1変換部材36の回転力は、第2偏心部材71を介して第2外歯車73に伝えられる。
【0109】
図14に示すように、第2外歯車73は、第2外歯91が第2内歯92を順次乗り越えるように偏心揺動しつつ、回転軸線O1の回りに回転する。第2外歯91の数(15歯)は、第2内歯92の数(16歯)と異なるため、歯数の角度差分だけ第2外歯車73を減速させることができる。
【0110】
図15に示すように、第2外歯車73の回転とともに、第2変換部材76は回転軸線O1の回りに回転する。
図2に示すように、第2変換部材76の回転力は、伝達部材7を介して出力軸5に伝えられる。
【0111】
[本実施形態の減速機が奏する効果]
本実施形態の減速機1によれば、第2減速機構4は、第1減速機構3に比べて耐用時間が長い。
第2減速機構4では、減速に伴ってトルクが大きくなるため部品にかかる力が大きくなりやすいが、耐用時間が長いため、部品の損耗を抑制することができる。第1減速機構3ではトルクが小さいため、機械的強度を抑える設計が可能である。したがって、第1減速機構3の構造を簡略化でき、コストおよび省スペース化の点で有利となる。このように、減速機1では、2つの減速機構3,4の部品を共通化する場合に比べ、耐久性を高め、かつ構造の簡略化を図ることができる。
【0112】
減速機1では、第2減速機構4の耐用時間が長いため、最大負荷トルクを高めることができる。減速機1では、第2減速機構4の耐用時間が長いため、装置の製品寿命を長くし、長期間にわたる使用が可能である。
【0113】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0114】
例えば、上記実施形態では、減速機1は2つの減速機構3,4を備えるが、減速機構の数は3以上でもよい。すなわち、減速機構の数は複数(2以上の任意の数)であってよい。
第2減速機構は、第1減速機構3に対して、入力軸2から出力軸5に至る伝達経路(回転力の伝達経路)の後段側(下流側)にあればよい。減速機構の数が3以上である場合、第2減速機構は、他の減速機構を介して第1減速機構の後段側にあってもよい。すなわち、第1減速機構の後段側に1または複数の中間減速機構があり、その後段側に第2減速機構があってもよい。
【0115】
第1減速機構3および第2減速機構4の減速比は特に限定されない。減速比は、内歯および外歯の歯数によって調整することができる。
上記実施形態では、第1内歯車34の第1内歯52および第2内歯車74の第2内歯92は軸受であるが、第1内歯52および第2内歯92の構造はこれに限定されない。第1内歯52および第2内歯92は、軸受に限らず、トロコイド歯形となる内歯であってもよい。第1内歯52および第2内歯92としては、ボール、ピン、回転軸つきのピン(3段ピンなど)、スリーブなどを採用してもよい。
【0116】
上記実施形態では、第1減速機構3と第2減速機構4とは、次の点で異なる。(1)第1減速機構3の第1内歯52が転がり軸受であるのに対し、第2減速機構4の第2内歯92は滑り軸受である。(2)第1減速機構3の第1案内部材35が転がり軸受であるのに対し、第2減速機構4の第2案内部材75は滑り軸受である。
実施形態の減速機の構成はこれに限定されない。第1内歯と第2内歯とは同じ構成であってもよい。例えば、第1内歯と第2内歯とはいずれも転がり軸受であってよい。第1案内部材と第2案内部材とは同じ構成であってもよい。例えば、第1案内部材と第2案内部材とはいずれも転がり軸受であってよい。第1変換部材36は、第2減速機構4に含まれてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1…減速機(伝動装置)
2…入力軸
3…第1減速機構
4…第2減速機構
5…出力軸
31…第1偏心部材(回転動作する部材)
32…第1回転部材(回転動作する部材)
33…第1外歯車(回転動作する部材)
34…第1内歯車(回転動作する部材)
35…第1案内部材(回転動作する部材)
36…第1変換部材(回転動作する部材)
51…第1外歯
52…第1内歯(回転動作する部材)
71…第2偏心部材(回転動作する部材)
72…第2回転部材(回転動作する部材)
73…第2外歯車(回転動作する部材)
75…第2案内部材(回転動作する部材)
76…第2変換部材(回転動作する部材)
91…第2外歯
92…第2内歯(回転動作する部材)
O1…回転軸線(軸線)
O2…偏心軸線(第1偏心軸線)
O3…偏心軸線(第2偏心軸線)