(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141035
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】アルミニウム合金ブレージングシート
(51)【国際特許分類】
B23K 35/22 20060101AFI20230928BHJP
B23K 35/28 20060101ALI20230928BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B23K35/22 310E
B23K35/28 310B
C22C21/00 D
C22C21/00 E
C22C21/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047156
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山吉 知樹
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 英敏
(72)【発明者】
【氏名】山田 詔悟
(72)【発明者】
【氏名】本間 伸洋
(72)【発明者】
【氏名】福田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】内多 陽介
(57)【要約】
【課題】フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付において、優れたろう付性を有するアルミニウム合金ブレージングシートを提供する。
【解決手段】皮材1/内部ろう材1/心材の順に積層されており、不活性ガス雰囲気中でろう付に用いられ、内部ろう材1は、6.00~13.00質量%のSiと、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下のMgと、0.010~0.50質量%のBiと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、皮材1は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、Mg含有量が0.050質量%以下、Bi含有量が0.050質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度が0.50質量%を超えかつ内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度が0.050質量%を超えることを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる心材と、皮材1/内部ろう材1/心材の順に、該心材の少なくとも一方の面にクラッドされている内部ろう材1及び皮材1を有し、フラックスを用いることなく、不活性ガス雰囲気中でろう付に用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであり、
前記内部ろう材1は、6.00~13.00質量%のSiと、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下のMgと、0.010~0.50質量%のBiと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記皮材1は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、Mg含有量が0.050質量%以下、Bi含有量が0.050質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記内部ろう材1及び前記皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度が0.50質量%を超え、かつ、前記内部ろう材1及び前記皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度が0.050質量%を超えること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項2】
更に、皮材1/内部ろう材1/心材/犠牲陽極材Aの順に、前記心材の他方の面にクラッドされている犠牲陽極材Aを有し、
前記犠牲陽極材Aは、5.00質量%以下のSi、1.50質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなること、
を特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項3】
更に、皮材1/内部ろう材1/心材/外面ろう材の順に、前記心材の他方の面にクラッドされている外面ろう材を有し、
前記外面ろう材は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、更に、1.00質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、4.50質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.50質量%以下のBi、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなること、
を特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項4】
更に、皮材1/内部ろう材1/心材/犠牲陽極材A/外面ろう材の順に、前記犠牲陽極材Aの前記心材とは反対側の面にクラッドされている外面ろう材を有し、
前記外面ろう材は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、更に、1.00質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、4.50質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.50質量%以下のBi、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなること、
を特徴とする請求項2に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項5】
更に、皮材1/内部ろう材1/心材/犠牲陽極材A/内部ろう材2/皮材2の順に、前記犠牲陽極材Aの前記心材とは反対側の面にクラッドされている内部ろう材2及び皮材2を有し、
前記内部ろう材2は、6.00~13.00質量%のSiと、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下のMgと、0.010~0.50質量%のBiとを含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記皮材2は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、Mg含有量が0.050質量%以下、Bi含有量が0.050質量%以下であり、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなること、
を特徴とする請求項2に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項6】
更に、皮材1/内部ろう材1/心材/内部ろう材2/皮材2の順に、前記心材の他方の面にクラッドされている内部ろう材2及び皮材2を有し、
前記内部ろう材2は、6.00~13.00質量%のSiと、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下のMgと、0.010~0.50質量%のBiとを含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記皮材2は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、Mg含有量が0.050質量%以下、Bi含有量が0.050質量%以下であり、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなること、
を特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項7】
純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる心材と、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材の順に、該心材の少なくとも一方の面にクラッドされている犠牲陽極材B1、内部ろう材1及び皮材1を有し、フラックスを用いることなく、不活性ガス雰囲気中でろう付けに用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであり、
前記内部ろう材1は、6.00~13.00質量%のSiと、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下のMgと、0.010~0.50質量%以下のBiと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記皮材1は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、Mg含有量が0.050質量%以下、Bi含有量が0.050質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記犠牲陽極材B1は、5.00質量%以下のSi、1.50質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなり、
前記内部ろう材1及び前記皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度が0.50質量%を超え、かつ、前記内部ろう材1及び前記皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度が0.050質量%を超えること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項8】
更に、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材/犠牲陽極材B2の順に、前記心材の他方の面にクラッドされている犠牲陽極材B2を有し、
前記犠牲陽極材B2は、5.00質量%以下のSi、1.50質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金であること、
を特徴とする請求項7に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項9】
更に、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材/外面ろう材の順に、前記心材の他方の面にクラッドされている外面ろう材を有し、
前記外面ろう材は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、更に、1.00質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、4.50質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.50質量%以下のBi、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金であること、
を特徴とする請求項7に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項10】
更に、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材/犠牲陽極材B2/外面ろう材の順に、前記犠牲陽極材2の前記心材とは反対側の面にクラッドされている外面ろう材を有し、
前記外面ろう材は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、更に、1.00質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、4.50質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.50質量%以下のBi、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金であること、
を特徴とする請求項8に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項11】
更に、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材/犠牲陽極材B2/内部ろう材2/皮材2の順に、前記犠牲陽極材2の前記心材とは反対側の面にクラッドされている内部ろう材2及び皮材2を有し、
前記内部ろう材2は、6.00~13.00質量%のSiと、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下のMgと、0.010~0.50質量%のBiとを含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記皮材2は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、Mg含有量が0.050質量%以下、Bi含有量が0.050質量%以下であり、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなること、
を特徴とする請求項8に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項12】
更に、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材/内部ろう材2/皮材2の順に、前記心材の他方の面にクラッドされている内部ろう材2及び皮材2を有し、
前記内部ろう材2は、6.00~13.00質量%のSiと、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下のMgと、0.010~0.50質量%のBiとを含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記皮材2は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、Mg含有量が0.050質量%以下、Bi含有量が0.050質量%以下であり、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなること、
を特徴とする請求項7に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項13】
前記心材が、1.50質量%以下のSi、1.50質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、3.00質量%以下のZn、0.50質量%以下のBi、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項14】
前記内部ろう材1又は前記内部ろう材2が、更に、1.00質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、6.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項15】
前記皮材1又は前記皮材2が、更に、1.00質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、6.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項16】
前記皮材1又は前記皮材2の厚さが5.0μm以上であることを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項17】
前記内部ろう材1又は前記内部ろう材2の厚さが15.0μm以上であることを特徴とする請求項1~16のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックスを用いることなく、不活性ガス雰囲気中でろう付に用いられるアルミニウム合金ブレージングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム製の熱交換器および機械部品には、多数の接合部を同時に接合可能なろう付技術が広く用いられている。アルミニウムは、非常に酸化し易い特性を有するため、すぐに緻密な酸化皮膜によって覆われる。このため、優れた耐食性を有する反面、接合の難度は高い。したがって、アルミニウムのろう付では、表面酸化皮膜の成長抑制およびその破壊が重要であり、フラックスを用いず真空中で加熱する方法と窒素ガス中でフラックスを用いる方法の大きく二つが実用化されている。
【0003】
フラックスを用いず真空中で加熱する方法では、Al-Si-Mg系合金からなるろう材が用いられ、真空中で昇温することでAlやMgによる酸化皮膜成長を防止し、ろう溶融時にはMgが蒸発することで材料表面の酸化皮膜が破壊されることでろう付が可能となる。しかしながら、高価な真空加熱設備が必要であるという欠点がある。また、蒸発したMgが炉内に付着するため、付着したMgを除去するメンテナンス費も高いという問題がある。
【0004】
一方、窒素ガス中でフラックスを用いる方法では、Al-Si系合金からなるろう材とAl-K-F系からなるフラックスが用いられる。真空中と比べて酸素濃度の高い窒素ガス雰囲気下であっても、溶融したフラックスはろう材表面の酸化皮膜成長を防止しながら、強力に酸化皮膜を破壊し、ろう付が可能となる。この方法は、高価な真空加熱設備が不要である反面、フラックスの費用およびフラックスを塗布する工程の費用が嵩む問題がある。また、フラックスは、熱交換器に塗布する際やろう付中の蒸散により作業環境に飛散すると、安全衛生および環境問題の懸念がある。
【0005】
そこで、不活性ガス雰囲気中でフラックスを使用しないで接合するニーズが高まっている。
【0006】
こうしたニーズに応えるため、例えば、特許文献1では、ろう材中にMgとBiを含有させ無機酸で処理することで、密着部のろう付が可能になると提案している。ろう材にMgを含有する材料は、材料製造中の熱処理工程でMgOが形成するためろう付ができないが、無機酸による処理によってこのMgOを除去することで、ろう付が可能となるとしている。
【0007】
また、特許文献2では、ろう材中のMgを規制し、心材中に含有させたMgをろう付中に拡散させることで、ろう付が可能になると提案している。ろう材にMgが存在しないため、材料製造中およびろう付昇温中のMgOの形成を防止できる点は有利である。
【0008】
一方、特許文献3では、ろう材と心材の間にMg濃度の高い中間層をクラッドすることで、ろう材にMgを添加することなく、ろう材へのMgの供給量を高めることができ、酸化皮膜をある程度効率的に破壊することが可能となると提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8-354934
【特許文献2】特開2014-037576
【特許文献3】WO2016/056306
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、引用文献1では、ろう付昇温中にもMgOは成長するため、材料表面は厚い酸化皮膜に覆われてしまう。そのため、大きなクリアランスを有する実用的な継手では十分なフィレットを形成することができないという問題がある。
【0011】
また、引用文献2では、成形性などの制約で心材に添加できるMg量には限界があることから、心材のMgを酸化皮膜へ拡散させるために高温長時間のろう付加熱が必要である。そのため、実用的なろう付雰囲気の場合、高温長時間ろう付により、アルミニウム自体の酸化が促進され、酸化皮膜が厚く成長してしまうため、ろう付性が著しく低下してしまうという問題がある。
【0012】
また、引用文献3では、酸化皮膜の破壊が不均一に進行する課題は解決できておらず、実用レベルには至っていない。
【0013】
したがって、本発明の目的は、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付において、優れたろう付性を有するアルミニウム合金ブレージングシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、Mg及びBiを所定量含有するろう材(内部ろう材1)の外側に、Mg及びBiの含有量が所定量以下の皮材層(皮材1)を設け、且つ、内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度及び平均Bi濃度を所定の範囲とされたアルミニウム合金ブレージングシートは、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付において、優れたろう付性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明(1)は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる心材と、皮材1/内部ろう材1/心材の順に、該心材の少なくとも一方の面にクラッドされている内部ろう材1及び皮材1を有し、フラックスを用いることなく、不活性ガス雰囲気中でろう付に用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであり、
前記内部ろう材1は、6.00~13.00質量%のSiと、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下のMgと、0.010~0.50質量%のBiと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記皮材1は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、Mg含有量が0.050質量%以下、Bi含有量が0.050質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記内部ろう材1及び前記皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度が0.50質量%を超え、かつ、前記内部ろう材1及び前記皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度が0.050質量%を超えること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0016】
また、本発明(2)は、更に、皮材1/内部ろう材1/心材/犠牲陽極材Aの順に、前記心材の他方の面にクラッドされている犠牲陽極材Aを有し、
前記犠牲陽極材Aは、5.00質量%以下のSi、1.50質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなること、
を特徴とする(1)のアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0017】
また、本発明(3)は、更に、皮材1/内部ろう材1/心材/外面ろう材の順に、前記心材の他方の面にクラッドされている外面ろう材を有し、
前記外面ろう材は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、更に、1.00質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、4.50質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.50質量%以下のBi、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなること、
を特徴とする(1)のアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0018】
また、本発明(4)は、更に、皮材1/内部ろう材1/心材/犠牲陽極材A/外面ろう材の順に、前記犠牲陽極材Aの前記心材とは反対側の面にクラッドされている外面ろう材を有し、
前記外面ろう材1は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、更に、1.00質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、4.50質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.50質量%以下のBi、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなること、
を特徴とする(2)のアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0019】
また、本発明(5)は、更に、皮材1/内部ろう材1/心材/犠牲陽極材A/内部ろう材2/皮材2の順に、前記犠牲陽極材Aの前記心材とは反対側の面にクラッドされている内部ろう材2及び皮材2を有し、
前記内部ろう材2は、6.00~13.00質量%のSiと、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下のMgと、0.010~0.50質量%のBiとを含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記皮材2は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、Mg含有量が0.050質量%以下、Bi含有量が0.050質量%以下であり、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなること、
を特徴とする(2)のアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0020】
また、本発明(6)は、更に、皮材1/内部ろう材1/心材/内部ろう材2/皮材2の順に、前記心材の他方の面にクラッドされている内部ろう材2及び皮材2を有し、
前記内部ろう材2は、6.00~13.00質量%のSiと、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下のMgと、0.010~0.50質量%のBiとを含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記皮材2は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、Mg含有量が0.050質量%以下、Bi含有量が0.050質量%以下であり、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなること、
を特徴とする(1)のアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0021】
また、本発明(7)は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる心材と、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材の順に、該心材の少なくとも一方の面にクラッドされている犠牲陽極材B1、内部ろう材1及び皮材1を有し、フラックスを用いることなく、不活性ガス雰囲気中でろう付けに用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであり、
前記内部ろう材1は、6.00~13.00質量%のSiと、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下のMgと、0.010~0.50質量%以下のBiと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記皮材1は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、Mg含有量が0.050質量%以下、Bi含有量が0.050質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記犠牲陽極材B1は、5.00質量%以下のSi、1.50質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなり、
前記内部ろう材1及び前記皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度が0.50質量%を超え、かつ、前記内部ろう材1及び前記皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度が0.050質量%を超えること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0022】
また、本発明(8)は、更に、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材/犠牲陽極材B2の順に、前記心材の他方の面にクラッドされている犠牲陽極材B2を有し、
前記犠牲陽極材B2は、5.00質量%以下のSi、1.50質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金であること、
を特徴とする(7)のアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0023】
また、本発明(9)は、更に、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材/外面ろう材の順に、前記心材の他方の面にクラッドされている外面ろう材を有し、
前記外面ろう材は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、更に、1.00質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、4.50質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.50質量%以下のBi、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金であること、
を特徴とする(7)のアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0024】
また、本発明(10)は、更に、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材/犠牲陽極材B2/外面ろう材の順に、前記犠牲陽極材2の前記心材とは反対側の面にクラッドされている外面ろう材を有し、
前記外面ろう材は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、更に、1.00質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、4.50質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.50質量%以下のBi、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金であること、
を特徴とする(8)のアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0025】
また、本発明(11)は、更に、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材/犠牲陽極材B2/内部ろう材2/皮材2の順に、前記犠牲陽極材2の前記心材とは反対側の面にクラッドされている内部ろう材2及び皮材2を有し、
前記内部ろう材2は、6.00~13.00質量%のSiと、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下のMgと、0.010~0.50質量%のBiとを含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記皮材2は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、Mg含有量が0.050質量%以下、Bi含有量が0.050質量%以下であり、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなること、
を特徴とする(8)のアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0026】
また、本発明(12)は、更に、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材/内部ろう材2/皮材2の順に、前記心材の他方の面にクラッドされている内部ろう材2及び皮材2を有し、
前記内部ろう材2は、6.00~13.00質量%のSiと、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下のMgと、0.010~0.50質量%のBiとを含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記皮材2は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、Mg含有量が0.050質量%以下、Bi含有量が0.050質量%以下であり、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなること、
を特徴とする(7)のアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0027】
また、本発明(13)は、前記心材が、1.50質量%以下のSi、1.50質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、3.00質量%以下のZn、0.50質量%以下のBi、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなることを特徴とする(1)~(12)のいずれかのアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0028】
また、本発明(14)は、前記内部ろう材1又は前記内部ろう材2が、更に、1.00質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、6.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)~(13)のいずれかのアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0029】
また、本発明(15)は、前記皮材1又は前記皮材2が、更に、1.00質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、6.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)~(14)のいずれかのアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0030】
また、本発明(16)は、前記皮材1又は前記皮材2の厚さが5.0μm以上であることを特徴とする(1)~(15)のいずれかのアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【0031】
また、本発明(17)は、前記内部ろう材1又は前記内部ろう材2の厚さが15.0μm以上であることを特徴とする(1)~(16)のいずれかのアルミニウム合金ブレージングシートを提供するものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付において、優れたろう付性を有するアルミニウム合金ブレージングシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】口開き重ね合わせ試験の試験体を示す図である。
【
図2】フィレット形状のX線CTにより得られるX線CT像の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる心材と、皮材1/内部ろう材1/心材の順に、該心材の少なくとも一方の面にクラッドされている内部ろう材1及び皮材1を有し、フラックスを用いることなく、不活性ガス雰囲気中でろう付に用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであり、
前記内部ろう材1は、6.00~13.00質量%のSiと、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下のMgと、0.010~0.50質量%のBiと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記皮材1は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、Mg含有量が0.050質量%以下、Bi含有量が0.050質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記内部ろう材1及び前記皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度が0.50質量%を超え、かつ、前記内部ろう材1及び前記皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度が0.050質量%を超えること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートである。
【0035】
また、本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる心材と、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材の順に、該心材の少なくとも一方の面にクラッドされている犠牲陽極材B1、内部ろう材1及び皮材1を有し、フラックスを用いることなく、不活性ガス雰囲気中でろう付けに用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであり、
前記内部ろう材1は、6.00~13.00質量%のSiと、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下のMgと、0.010~0.50質量%以下のBiと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記皮材1は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、Mg含有量が0.050質量%以下、Bi含有量が0.050質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記犠牲陽極材B1は、5.00質量%以下のSi、1.50質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなり、
前記内部ろう材1及び前記皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度が0.50質量%を超え、かつ、前記内部ろう材1及び前記皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度が0.050質量%を超えること、
を特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートである。
【0036】
本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシート及び本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、アルミニウム合金製の熱交換器の製造において、熱交換器の構成部材の形状に形成され、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でろう付加熱されることにより、ろう付されるブレージングシート、すなわち、アルミニウム合金製熱交換器の製造用のアルミニウム合金ブレージングシートであり、フラックスを使用せず且つ不活性ガス雰囲気中でのろう付によるアルミニウム合金製熱交換器の製造に用いられるアルミニウム合金ブレージングシートである。
【0037】
本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、少なくとも心材の一方の面に、皮材1/内部ろう材1/心材の順に積層されてクラッドされている内部ろう材1及び皮材1を有する。つまり、本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、心材の一方の面側に、最外層となる皮材1と、皮材1の1つ内側に内部ろう材1と、を少なくとも有する。また、本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、心材の他方の面、すなわち、内部ろう材1及び皮材1がクラッドされている側とは反対側の面には、何もクラッドされていなくてもよいし、1以上のクラッド用材料がクラッドされていてもよい。本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシートの形態例としては、皮材1/内部ろう材1/心材の順に積層されてクラッドされている3層材、皮材1/内部ろう材1/心材/犠牲陽極材Aの順に積層されてクラッドされている4層材、皮材1/内部ろう材1/心材/外面ろう材の順に積層されてクラッドされている4層材、皮材1/内部ろう材1/心材/犠牲陽極材A/外面ろう材の順に積層されてクラッドされている5層材、皮材1/内部ろう材1/心材/内部ろう材2/皮材2の順に積層されてクラッドされている5層材、皮材1/内部ろう材1/心材/犠牲陽極材A/内部ろう材2/皮材2の順に積層されてクラッドされている6層材が挙げられる。なお、本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシートが、内部ろう材1及び皮材1に加え内部ろう材2及び皮材2を有する場合、内部ろう材1及び内部ろう材2は、同一の化学組成であっても、異なる化学組成であってもよく、また、皮材1及び皮材2は、同一の化学組成であっても、異なる化学組成であってもよい。
【0038】
本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、少なくとも心材の一方の面に、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材の順に積層されてクラッドされている犠牲陽極材B1、内部ろう材1及び皮材1を有する。つまり、本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、心材の一方の面側に、最外層となる皮材1と、皮材1の1つ内側に内部ろう材1と、内部ろう材1の1つ内側に犠牲陽極材B1を少なくとも有する。また、本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、心材の他方の面、すなわち、犠牲陽極材B1、内部ろう材1及び皮材1がクラッドされている側とは反対側の面には、何もクラッドされていなくてもよいし、1以上のクラッド用材料がクラッドされていてもよい。本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートの形態例としては、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材の順に積層されてクラッドされている4層材、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材/犠牲陽極材B2の順に積層されてクラッドされている5層材、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材/外面ろう材の順に積層されてクラッドされている5層材、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材/犠牲陽極材B2/外面ろう材の順に積層されてクラッドされている6層材、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材/内部ろう材2/皮材2の順に積層されてクラッドされている6層材、皮材1/内部ろう材1/犠牲陽極材B1/心材/犠牲陽極材B2/内部ろう材2/皮材2の順に積層されてクラッドされている7層材が挙げられる。なお、本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートが、犠牲陽極材B1に加え犠牲陽極材B2を有する場合、犠牲陽極材B1及び犠牲陽極材B2は、同一の化学組成であっても、異なる化学組成であってもよい。また、本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートが、内部ろう材1及び皮材1に加え内部ろう材2及び皮材2を有する場合、内部ろう材1及び内部ろう材2は、同一の化学組成であっても、異なる化学組成であってもよく、また、皮材1及び皮材2は、同一の化学組成であっても、異なる化学組成であってもよい。
【0039】
本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る心材と、本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る心材は、同様である。また、本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る皮材1及び皮材2と、本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る皮材1及び皮材2は、同様である。本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る内部ろう材1と、本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る内部ろう材1は、同様である。本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る犠牲陽極材Aと、本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る犠牲陽極材B1及び犠牲陽極材B2は、同様である。本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る外面ろう材と、本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る外面ろう材は、同様である。本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る内部ろう材2と、本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る内部ろう材2は、同様である。
【0040】
本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシート及び本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る心材は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。
【0041】
心材が純アルミニウムからなる場合、純アルミニウムのAl純度は、特に制限されないが、99.0質量%以上が好ましくは、99.5質量%以上が特に好ましい。純アルミニウム材としては、A1100、A1050、A1080等が挙げられる。
【0042】
心材がアルミニウム合金からなる場合、心材を形成するアルミニウム合金の組成は、アルミニウム合金製の熱交換器の製造用のアルミニウム合金ブレージングシートの心材として用いることができるものであれば、特に制限されない。心材としては、1.50質量%以下のSi、1.50質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる心材が好ましい。
【0043】
アルミニウム合金の心材において、Siは強度向上に寄与する。心材がSiを含有する場合、心材中のSi含有量は、1.50質量%以下、好ましくは0.10~1.00質量%である。心材中のSi含有量が上記範囲にあることにより、心材の強度が高くなる。一方、心材中のSi含有量が上記範囲を超えると、融点が低くなり過ぎてしまい、ろう付時に局部溶融が生じ、心材に変形を生ぜしめ耐食性が低くなる。
【0044】
Feは強度向上に寄与する。心材がFeを含有する場合、心材中のFe含有量は、1.50質量%以下、好ましくは0.10~0.70質量%である。心材中のFe含有量が上記範囲にあることにより、心材の強度が高くなる。一方、心材中のFe含有量が、上記範囲を超えると、耐食性が低くなるとともに巨大析出物が発生し易くなる。
【0045】
Cuは強度向上と電位調整に寄与する。心材がCuを含有する場合、心材中のCu含有量は、2.00質量%以下、好ましくは0.10~1.00質量%である。心材中のCu含有量が上記範囲にあることにより、心材の強度が高くなる。一方、心材中のCu含有量が上記範囲を超えると、粒界腐食が発生し易くなり、融点が低くなり過ぎる。
【0046】
Mnは強度向上と電位調整に寄与する。心材がMnを含有する場合、心材中のMn含有量は、2.00質量%以下、好ましくは0.30~1.80質量%である。心材中のMn含有量が上記範囲にあることにより、心材の強度が高くなり、電位調整効果が得られる。心材中のMn含有量が上記範囲を超えると、材料圧延時に割れが生じ易くなる。
【0047】
Znは電位調整に寄与する。心材がZnを含有する場合、心材中のZn含有量は、3.00質量%以下、好ましくは0.50~3.00質量%である。心材中のZn含有量が上記範囲にあることにより、電位調整効果が得られる。一方、心材中のZn含有量が上記範囲を超えると、自然電極電位が低くなり過ぎてしまい耐食性が低下する。
【0048】
Crは固溶強化により強度を向上させ、また、Al-Cr系の微細化合物を析出させ、ろう付後の結晶粒粗大化に作用する。心材中のCr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。心材中のCr含有量が上記範囲にあることにより、心材の強度が高くなる。一方、心材中のCr含有量が上記範囲を超えると鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。
【0049】
Tiは固溶強化により強度を向上させ、また、層状に分布して心材中に電位の高い層と低い層を形成することで、腐食形態が孔食から層状になり耐食性を向上させる効果を発揮する。心材中のTi含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。心材中のTi含有量が上記範囲にあることにより、心材の強度が高くなり、耐食性が高くなる。一方、心材中のTi含有量が上記範囲を超えると鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。
【0050】
Zrは固溶強化により強度を向上させ、また、Al-Zr系の微細化合物を析出させ、ろう付後の結晶粒粗大化に作用する。心材中のZr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。心材中のZr含有量が上記範囲にあることにより、心材の強度が高くなり、ろう付後の結晶粒粗大化の効果が得られる。一方、心材中のZr含有量が上記範囲を超えると鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。
【0051】
心材は、Mgを含有することができる。アルミニウム合金の心材において、Mgは、ろう付加熱中に内部ろう材1または皮材1へ拡散し、材料表面の酸化皮膜の破壊を促進し、ろう付性向上に寄与する。心材がMgを含有する場合、心材中のMg含有量は、3.00質量%以下、好ましくは0.30~1.80質量%である。心材中のMg含有量が上記範囲にあることにより、ろう付性向上の効果が得られ易くなる。一方、心材中のMg含有量が上記範囲を超えると、材料圧延時に割れが生じやすくなる。
【0052】
心材は、Biを含有することができる。心材を形成するアルミニウム合金において、Biは、ろう付加熱中に内部ろう材1または皮材1が溶融し心材の一部を溶融せしめた場合に、内部ろう材1または皮材1のBi濃度の低下を抑制するように作用し、Mgによる酸化皮膜の破壊を促進する作用を発揮する。心材がBiを含有する場合、心材中のBi含有量は、0.50質量%以下、好ましくは、0.10~0.40質量%である。心材中のBi含有量が、上記範囲にあることにより、Mgによる酸化皮膜の破壊を促進する作用が得られる。一方、上記範囲を超えると、材料製造時に割れが発生し易くなり、ブレージングシートの製造が困難となる。
【0053】
心材は、不可避的不純物として、0.050質量%以下のAg、B、Be、Ca、Cd、Co、Ga、Ge、Hg、In、Li、Mo、Na、Ni、P、Pb、Sb、Sn、Sr、V、Yを含んでいてもよい。
【0054】
本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシート及び本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る内部ろう材1及び内部ろう材2は、6.00~13.00質量%のSiと、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下のMgと、0.010~0.50質量%のBiと、を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。
【0055】
内部ろう材1及び内部ろう材2は、Siを含有する。アルミニウム合金のろう材において、Siはろう付接合性に寄与する。内部ろう材1及び内部ろう材2中のSi含有量は、6.00~13.00質量%である。内部ろう材1及び内部ろう材2中のSi含有量が、上記範囲にあることにより、十分なろう付接合性が得られる。内部ろう材1及び内部ろう材2中のSi含有量が、上記範囲未満だと接合性が劣り、また、上記範囲を超えると、材料製造時に割れが発生し易くなり、ブレージングシートの製造が困難となる。
【0056】
内部ろう材1及び内部ろう材2は、Mgを含有する。内部ろう材1及び内部ろう材2中のMg含有量は、0.50質量%を超えてかつ4.50質量%以下、好ましくは0.60~4.00質量%である。内部ろう材1及び内部ろう材2中のMg含有量が、上記範囲にあることにより、十分なろう付接合性が得られる。内部ろう材1及び内部ろう材2中のMg含有量が、上記範囲以下だと酸化皮膜の破壊効果が乏しくなり、また、上記範囲を超えると、材料製造時に割れが発生し易くなり、ブレージングシートの製造が困難となる。
【0057】
内部ろう材1及び内部ろう材2は、Biを含有する。内部ろう材1及び内部ろう材2中のBi含有量は、0.010~0.50質量%、好ましくは0.020~0.45質量%である。内部ろう材1及び内部ろう材2中のBi含有量が、上記範囲にあることにより、十分なろう付接合性が得られる。内部ろう材1及び内部ろう材2中のBi含有量が、上記範囲未満だとMgによる酸化皮膜の破壊効果を促進する作用が乏しくなり、また、上記範囲を超えると、材料製造時に割れが発生しやすくなり、ブレージングシートの製造が困難となる。
【0058】
内部ろう材1及び内部ろう材2は、Na、Sr及びSbのうちのいずれか1種または2種以上を含有することができる。ろう材を形成するアルミニウム合金において、Na、Sr、Sbは、ろう材中のSi粒子を微細化させ、ろうの流動性を高める効果を発揮する。内部ろう材1及び内部ろう材2がNaを含有する場合、Na含有量は、0.050質量%以下、好ましくは0.005~0.040質量%である。内部ろう材1及び内部ろう材2がSrを含有する場合、Sr含有量は、0.050質量%以下、好ましくは0.005~0.040質量%である。内部ろう材1及び内部ろう材2がSbを含有する場合、Sb含有量は、0.050質量%以下、好ましくは0.005~0.040質量%である。内部ろう材1及び内部ろう材2中のNa、Sr、Sbの含有量が上記範囲にあることにより、Si粒子の微細化効果が得られる。一方、内部ろう材1及び内部ろう材2中のNa、Sr、Sbの含有量が上記範囲を超えると、効果が飽和して経済的ではない。
【0059】
内部ろう材1及び内部ろう材2は、Zn及びCuのうちのいずれか1種又は2種を含有することができる。内部ろう材1及び内部ろう材2を形成するアルミニウム合金において、ZnとCuは、ろう材1及び内部ろう材2の融点を低下し、一般的なろう付温度である600℃よりも低い温度でのろう付を可能とする。
【0060】
内部ろう材1及び内部ろう材2がZnを含有する場合、Zn含有量は、ろう材の融点を低下させる効果が得られ易くなる点で、6.00質量%以下が好ましく、1.00~5.50質量%が特に好ましく、3.00~5.00質量%が更に好ましい。一方、内部ろう材1及び内部ろう材2中のZn含有量が上記範囲を超えると、材料製造中に割れが生じ、ブレージングシートの製造が困難となる。また、内部ろう材1及び内部ろう材2がZnを含有する場合、ろう材の電位を卑にして、心材に対して優先的に腐食することで心材を防食する効果が得られ易くなる点で、内部ろう材1及び内部ろう材2中のZn含有量が3.00質量%以下であることが好ましい。
【0061】
内部ろう材1及び内部ろう材2がCuを含有する場合、Cu含有量は、2.00質量%以下、好ましくは0.50~2.00質量%、特に好ましくは1.00~2.00質量%である。内部ろう材1及び内部ろう材2中のCu含有量が上記範囲にあることにより、ろう材の融点を低下させる効果が高まる。一方、内部ろう材1及び内部ろう材2中のCu含有量が上記範囲を超えると、材料製造中に割れが生じ、ブレージングシートの製造が困難となる。
【0062】
内部ろう材1及び内部ろう材2は、Feを含有することができる。ろう材を形成するアルミニウム合金において、FeはAl-Fe系の比較的粗な化合物を析出させ、ろう付後の残存ろう材の結晶粒微細化に作用する。内部ろう材1及び内部ろう材2がFeを含有する場合、Fe含有量は、1.00質量%以下、好ましくは0.10~0.50質量%である。内部ろう材1及び内部ろう材2中のFe含有量が上記範囲になることにより、結晶粒微細化の効果が得られ易くなる。一方、内部ろう材1及び内部ろう材2のFe含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成されやすくなり塑性加工性が低くなる。
【0063】
内部ろう材1及び内部ろう材2はMn、Cr、Ti及びZrのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することができる。ろう材を形成するアルミニウム合金において、Mn、Cr、Ti、Zrは、それぞれ、Al-Mn系、Al-Cr系、Al-Ti系、Al-Zr系の微細化合物を析出させ、ろう付後の残存ろう材の結晶粒粗大化に作用する。
【0064】
内部ろう材1及び内部ろう材2がMnを含有する場合、Mn含有量は、2.00質量%以下、好ましくは0.10~0.60質量%である。内部ろう材1及び内部ろう材2中のMn含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒粗大化の効果が得られ易くなる。一方、内部ろう材1及び内部ろう材2中のMn含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり塑性加工性が低くなる。
【0065】
内部ろう材1及び内部ろう材2がCrを含有する場合、Cr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。内部ろう材1及び内部ろう材2中のCr含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒粗大化の効果が得られ易くなる。一方、内部ろう材1及び内部ろう材2中のCr含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり塑性加工性が低くなる。
【0066】
内部ろう材1及び内部ろう材2がTiを含有する場合、Ti含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。内部ろう材1及び内部ろう材2中のTi含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒粗大化の効果が得られ易くなる。一方、内部ろう材1及び内部ろう材2中のTi含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり塑性加工性が低くなる。
【0067】
内部ろう材1及び内部ろう材2がZrを含有する場合、Zr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。内部ろう材1及び内部ろう材2中のZr含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒粗大化の効果が得られ易くなる。一方、内部ろう材1及び内部ろう材2中のZr含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成されやすくなり塑性加工性が低くなる。
【0068】
上記作用を利用して、ろう付後の結晶粒径を調整するが、上記範囲であれば、本発明の効果を十分得ることができる。
【0069】
内部ろう材1及び内部ろう材2は、不可避的不純物として、0.050質量%以下のAg、B、Be、Ca、Cd、Co、Ga、Ge、Hg、In、Li、Mo、Ni、P、Pb、Sn、V、Yを含んでいてもよい。
【0070】
本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシート及び本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る皮材1及び皮材2は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、Mg含有量が0.050質量%以下、Bi含有量が0.050質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。
【0071】
皮材1及び皮材2は、Siを含有する。皮材1及び皮材2中のSiは、ろう付温度において皮材1及び皮材2がそれぞれ内部ろう材1及び内部ろう材2と溶け合った際、内部ろう材1及び内部ろう材2のSi含有量の低下を減じて、ろう付接合性に寄与する。皮材1及び皮材2中のSi含有量は、6.00~13.00質量%である。皮材1及び皮材2中のSiの含有量が上記範囲にあることにより、十分なろう付接合性が得られる。一方、皮材1及び皮材2中のSiの含有量が、上記範囲未満だと、内部ろう材1及び内部ろう材2のSi含有量を低下させてろう付性を低下させる。また、上記範囲を超えると、材料製造時に割れが発生し易くなり、ブレージングシートの製造が困難となる。
【0072】
皮材1及び皮材2はMgを含有しないこと又はできる限り含有量が小さいことが良い。皮材1及び皮材2を形成するアルミニウム合金において、Mgは、ろう付加熱中に酸化皮膜の成長を助長し、ろう付性を低下させる。したがって、皮材1及び皮材2中のMg含有量は、不可避的不純物レベルである0.050質量%以下に規制される。皮材1及び皮材2中のMg含有量が上記範囲にあることにより、ろう付性は低下しない。一方、皮材1及び皮材2中のMg含有量が上記範囲を超えると、ろう付加熱中のろう溶融前において、まだ破壊する必要のない材料表面の酸化皮膜を破壊してしまい、ろう溶融までの間に厚い酸化皮膜を成長させてしまう。さらに、この厚い酸化皮膜はMgを含有するため、同じMgによる酸化皮膜の還元及び破壊が生じ難く、ろう付性を低下させる。
【0073】
皮材1及び皮材2はBiを含有していてもよい。皮材1中のBi含有量は、後述する内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度を満たすように設定する。皮材1中のBi含有量は、例えば不可避的不純物レベルである0.050質量%以下に規制される。また、皮材2中のBi含有量は、後述する内部ろう材2及び皮材2の厚さ方向の平均Bi濃度を満たすように設定することが好ましい。
【0074】
皮材1及び皮材2は、Na、Sr及びSbのうちのいずれか1種または2種以上を含有することができる。皮材1及び皮材2を形成するアルミニウム合金において、Na、Sr、Sbは、皮材1及び皮材2中のSi粒子を微細化させ、ろうの流動性を高める効果を発揮する。皮材1及び皮材2がNaを含有する場合、Na含有量は、0.050質量%以下、好ましくは0.005~0.040質量%である。皮材1及び皮材2がSrを含有する場合、Sr含有量は、0.050質量%以下、好ましくは0.005~0.040質量%である。皮材1及び皮材2がSbを含有する場合、Sb含有量は、0.050質量%以下、好ましくは0.005~0.040質量%である。皮材1及び皮材2中のNa、Sr、Sbの含有量が上記範囲にあることにより、Si粒子の微細化効果が得られる。一方、皮材1及び皮材2中のNa、Sr、Sbの含有量が上記範囲を超えると、効果が飽和して経済的ではない。
【0075】
皮材1及び皮材2は、Zn及びCuのうちのいずれか1種又は2種を含有することができる。皮材1及び皮材2を形成するアルミニウム合金において、ZnとCuは、皮材1及び皮材2の融点を低下し、一般的なろう付温度である600℃よりも低い温度でそれぞれ内部ろう材1及び内部ろう材2と溶け合うことを可能とする。
【0076】
皮材1及び皮材2がZnを含有する場合、Zn含有量は、皮材1及び皮材2の融点を低下させる効果が得られ易くなる点で、6.00質量%以下が好ましく、1.00~5.50質量%が特に好ましく、3.00~5.00質量%が更に好ましい。一方、皮材1及び皮材2中のZn含有量が上記範囲を超えると、材料製造中に割れが生じ、ブレージングシートの製造が困難となる。また、皮材1及び皮材2がZnを含有する場合、皮材1及び皮材2の電位を卑にして、心材に対して優先的に腐食することで心材を防食する効果が得られ易くなる点で、皮材1及び皮材2中のZn含有量が3.00質量%以下であることが好ましい。
【0077】
皮材1及び皮材2がCuを含有する場合、Cu含有量は、2.00質量%以下、好ましくは0.50~2.00質量%、特に好ましくは1.00~2.00質量%である。皮材1及び皮材2中のCu含有量が上記範囲にあることにより、皮材1及び皮材2の融点を低下させる効果が高まる。一方、皮材1及び皮材2中のCu含有量が上記範囲を超えると、材料製造中に割れが生じ、ブレージングシートの製造が困難となる。
【0078】
皮材1及び皮材2はFeを含有することができる。皮材1及び皮材2を形成するアルミニウム合金において、FeはAl-Fe系の比較的粗な化合物を析出させ、ろう付中にろう材と溶け合い、ろう付後の残存ろう材の結晶粒微細化に作用する。皮材1及び皮材2がFeを含有する場合、Fe含有量は、1.00質量%以下、好ましくは0.10~0.50質量%である。皮材1及び皮材2中のFe含有量が上記範囲になることにより、結晶粒微細化の効果が得られ易くなる。一方、皮材1及び皮材2のFe含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり塑性加工性が低くなる。
【0079】
皮材1及び皮材2はMn、Cr、Ti及びZrのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することができる。皮材1及び皮材2を形成するアルミニウム合金において、Mn、Cr、Ti、Zrは、それぞれ、Al-Mn系、Al-Cr系、Al-Ti系、Al-Zr系の微細化合物を析出させ、ろう付後の残存ろう材の結晶粒粗大化に作用する。
【0080】
皮材1及び皮材2がMnを含有する場合、Mn含有量は、2.00質量%以下、好ましくは0.10~0.60質量%である。皮材1及び皮材2中のMn含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒粗大化の効果が得られ易くなる。一方、皮材1及び皮材2中のMn含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり塑性加工性が低くなる。
【0081】
皮材1及び皮材2がCrを含有する場合、Cr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。皮材1及び皮材2中のCr含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒粗大化の効果が得られ易くなる。一方、皮材1及び皮材2中のCr含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり塑性加工性が低くなる。
【0082】
皮材1及び皮材2がTiを含有する場合、Ti含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。皮材1及び皮材2中のTi含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒粗大化の効果が得られ易くなる。一方、皮材1及び皮材2中のTi含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり塑性加工性が低くなる。
【0083】
皮材1及び皮材2がZrを含有する場合、Zr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。皮材1及び皮材2中のZr含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒粗大化の効果が得られ易くなる。一方、皮材1及び皮材2中のZr含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり塑性加工性が低くなる。
【0084】
上記作用を利用して、ろう付後の結晶粒径を調整するが、上記範囲であれば、本発明の効果を十分得ることができる。
【0085】
皮材1及び皮材2は、不可避的不純物として、0.050質量%以下のAg、B、Be、Ca、Cd、Co、Ga、Ge、Hg、In、Li、Mo、Ni、P、Pb、Sn、V、Yを含んでいてもよい。
【0086】
そして、本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシート及び本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートにおいては、内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度が0.50質量%を超え、かつ、内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度が0.050質量%を超える。
【0087】
ろう材層に添加されるMgは、酸化物生成自由エネルギーがアルミニウムより小さいため、ろう付加熱中にアルミニウムを主成分とする表面酸化皮膜を還元及び破壊することができる。しかしながら、ろう材と心材で構成される2層のアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材にMgが添加された材料は、材料製造中の熱処理工程でMgOが形成するため、ろう付ができず、前処理などによってこのMgOを除去する必要がある。加えて、ろう付加熱中のろう溶融前にも、ろう材中のMgがまだ破壊する必要のない材料表面の酸化皮膜を破壊してしまい、ろう溶融までの間に厚く強固な酸化皮膜を成長させてしまう。さらに、この酸化皮膜はMgを含有するため、同じMgによる酸化皮膜の還元及び破壊が生じ難く、十分なろう付性が得られない。
【0088】
また、ろう材と心材で構成される2層のアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材にMgが添加された材料は、ろう材にMgが存在しないため、材料製造中およびろう付昇温中のMgOの形成を防止できる点は有利である。しかしながら、成形性などの制約で心材に添加できるMg量には限界があることから、心材のMgを酸化皮膜へ拡散させるために高温長時間のろう付加熱が必要ある。実用的なろう付雰囲気の場合、高温長時間ろう付により、アルミニウム自体の酸化が促進され、酸化皮膜が厚く成長してしまうため、ろう付性が著しく低下してしまう。
【0089】
また、ろう材と心材の間にMg濃度の高い中間層をクラッドすることで、ろう材にMgを添加することなく、中間層からMgを供給量することができ、酸化皮膜をある程度効率的に破壊することが可能となる。この材料は、比較的短時間のろう付加熱でも、ろう付性が高い。しかしながら、実用的なろう付雰囲気の場合、アルミニウム自体が酸化して厚く強固な酸化皮膜が成長するため、材料に適したろう付条件でないと、実用的なろう付性が得られない。
【0090】
加えて、Mgによる酸化皮膜の破壊は温度と時間の影響を受けて比較的ゆっくり進行する。このため、Mgを含有する実用製品では、ろう付中に製品中に温度差が生じる場合、Mgによる酸化皮膜の破壊が早く進行する部分と遅く進行する部分が生じるため、フィレット形成が不均一となる。そうすると、先にフィレットが形成した継ぎ手には毛細管力で溶融ろうが流入する一方、フィレットが未形成の継ぎ手では溶融ろうが流出してしまい、その後酸化皮膜が破壊されたとしてもフィレットを形成することできない。したがって、多数の接合部を有する実用製品では致命的な未接合が生じる。したがって、Mgを含有する実用製品で十分なろう付性を得るためには、Mgによる酸化皮膜の破壊を、均一かつ瞬間的に起こさせて、ろう付せしめることが重要になる。
【0091】
酸化皮膜を均一かつ瞬間的に破壊するには、ろう材層にMgを添加した上で、ろう材層の心材とは反対面に、Mgを含有しない又はMg含有量が非常に少ない皮材層をクラッドすることが有効である。すなわち、ろう付加熱のろう溶融前には最表面に位置する皮材層はMgを含有していないため材料表面の酸化皮膜は薄いままであるが、ろう材層が溶融するとろう材層が含有するMgが一気に皮材層の表面へと到達することができ、酸化皮膜を破壊する。しかしながら、上記のように皮材層を設けた材料においても、ろう材層のMg濃度は数%オーダーと低いため、酸化皮膜を還元及び破壊する作用が緩慢で、実用製品では十分なろう付性が得られない。一方で、ろう材に大量のMgを添加すると、材料製造時に割れが発生しやすくなり、ブレージングシートの製造が困難となる。
【0092】
そこで、本発明者らが鋭意研究を重ねたところ、ろう材層に添加するMg含有量を高めることなく、ろう溶融時に材料表面に作用させるMg濃度を高める方法として、Biを利用する方法が有効であることを見出した。
【0093】
BiはMgと結合し、Mg3Bi2からなる金属間化合物を形成するが、Mg3Bi2化合物中のMg濃度は85質量%と極めて高い。このため、Mg3Bi2を酸化皮膜に作用させることで、酸化皮膜の破壊作用を急激化することが可能となり、ろう付性が実用レベルに達する。しかしながら、Mg3Bi2は、Mg及びBi濃度が低いとろう付加熱中に分解してしまうため、前記のろう付性向上効果が十分に得られない。そして、ろう材層中のMg濃度だけでなく、ろう材層と皮材層が溶融して混じり合うことで、Mg及びBi濃度は低下するため、Mg3Bi2が酸化皮膜に作用する前に溶融ろう中で分解してしまう。そこで、本発明者らは、良好なろう付性が得られるMg及びBi濃度を鋭意検討した結果、ろう材層と皮材層に添加されるMg及びBi濃度を厚さ方向について平均した値を制御することで、所望のろう付性が得られることを見出した。
【0094】
すなわち、内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度を、0.50質量%を超える濃度とし、かつ、内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度を、0.050質量%を超える濃度とすることである。
【0095】
内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度は、0.50質量%を超え、より好ましくは0.65質量%以上であり、更に好ましくは0.80質量%以上である。内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度が上記範囲にあることにより、Mg3Bi2の安定性が増し、溶融ろう中での分解を遅延させる効果が十分に得られる。なお、内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度は、ろう付性の観点からは、高い方が好ましく、上限濃度が定められるものではなく、別途記載する内部ろう材1のMg含有量の上限により定められる。
【0096】
内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度は、0.050質量%を超え、より好ましくは0.065質量%以上であり、更に好ましくは0.080質量%以上である。内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度が上記範囲にあることにより、Mg3Bi2の安定性が増し、溶融ろう中での分解を遅延させる効果が十分に得られる。なお、内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度は、ろう付性の観点からは、高い方が好ましく、上限濃度が定められるものではなく、別途記載する内部ろう材1のBi含有量の上限により定められる。
【0097】
なお、本発明において、内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度及び内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度は、内部ろう材1のMg含有量をA1質量%、内部ろう材1のBi含有量をB1質量%、皮材1のMg含有量をC1質量%、皮材1のBi含有量をD1質量%、内部ろう材1の厚さをT1(mm)、皮材1の厚さをt1(mm)としたとき、以下により求められる。
内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度(%)=(A1×T1+C1×t1)/(T1+t1)
内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度(%)=(B1×T1+D1×t1)/(T1+t1)
【0098】
内部ろう材1の厚さは、好ましくは15.0μm以上である。内部ろう材1が厚いほど、Mg3Bi2化合物の絶対量が多くなり、酸化皮膜の破壊が促進される。そして、内部ろう材1の厚さが15.0μm以上であることにより、内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度及び内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度を、所定の濃度に調節し易くなる。なお、内部ろう材1の厚さの上限は定められるものではないが、実用製品で求められる内部ろう材1の厚さの範囲は、15.0~400μm程度である。
【0099】
皮材1の厚さは、好ましくは5.0μm以上である。皮材1の厚さが厚いほど、内部ろう材1中のMgが皮材1表面まで拡散し難くなるため、ろう付性は向上する。皮材1の厚さが5.0μm以上であることにより、内部ろう材1中のMgが皮材1表面まで拡散し難くなり、Mgの酸化防止作用が得易くなる。なお、皮材1の厚さの上限は定められるものではないが、内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Mg濃度及び内部ろう材1及び皮材1の厚さ方向の平均Bi濃度を調節し易い点で、皮材1の厚さは120μm以下が好ましい。したがって、皮材1の厚さの実用的な範囲は、5.0~120μm程度である。
【0100】
また、本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシート又は本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートが、内部ろう材2及び皮材2を有する場合、内部ろう材2及び皮材2の厚さ方向の平均Mg濃度を、0.50質量%を超える濃度とし、かつ、内部ろう材2及び皮材2の厚さ方向の平均Bi濃度を、0.050質量%を超える濃度とすることが好ましい。
【0101】
本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る犠牲陽極材A、本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る犠牲陽極材B1及び本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る犠牲陽極材B2は、5.00質量%以下のSi、1.50質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。なお、以下、犠牲陽極材A、犠牲陽極材B1及び犠牲陽極材B2を総称して、単に「犠牲陽極材」と記載する。
【0102】
アルミニウム合金の犠牲陽極材において、Siは強度向上に寄与する。犠牲陽極材がSiを含有する場合、犠牲陽極材中のSi含有量は、5.00質量%以下、好ましくは0.10~1.50質量%、特に好ましくは0.10~1.00質量%である。犠牲陽極材中のSi含有量が上記範囲にあることにより、犠牲陽極材の強度が高くなる。また、犠牲陽極材中のSi含有量は、1.50~5.00質量%、特に好ましくは2.50~4.50質量%であり、含有量が1.50~5.00質量%の範囲ではろう付加熱中に半溶融状態となり、微量の液相ろうを供給して、犠牲陽極材面がろう付面となった場合にろう付性を高める。一方、犠牲陽極材中のSi含有量が上記範囲を超えると、融点が低くなり過ぎてしまい、ろう付時に局部溶融が生じ、犠牲陽極材に変形を生じる。
【0103】
Feは強度向上に寄与する。犠牲陽極材がFeを含有する場合、犠牲陽極材中のFe含有量は、1.50質量%以下、好ましくは0.10~0.70質量%である。犠牲陽極材中のFe含有量が上記範囲にあることにより、犠牲陽極材の強度が高くなる。一方、犠牲陽極材中のFe含有量が、上記範囲を超えると、耐食性が低くなるとともに巨大析出物が発生し易くなる。
【0104】
Cuは強度向上と電位調整に寄与する。犠牲陽極材がCuを含有する場合、犠牲陽極材中のCu含有量は、2.00質量%以下、好ましくは0.10~1.00質量%である。犠牲陽極材中のCu含有量が上記範囲にあることにより、犠牲陽極材の強度が高くなる。一方、犠牲陽極材中のCu含有量が上記範囲を超えると、粒界腐食が発生し易くなり、融点が低くなり過ぎる。
【0105】
Mnは強度向上と電位調整に寄与する。犠牲陽極材がMnを含有する場合、犠牲陽極材中のMn含有量は、2.00質量%以下、好ましくは0.30~1.80質量%である。犠牲陽極材中のMn含有量が上記範囲にあることにより、犠牲陽極材の強度が高くなり、電位調整効果が得られる。犠牲陽極材中のMn含有量が上記範囲を超えると、材料圧延時に割れが生じ易くなる。
【0106】
Mgは強度向上に寄与する。犠牲陽極材がMgを含有する場合、犠牲陽極材中のMg含有量は、3.00質量%以下、好ましくは0.30~1.80質量%である。犠牲陽極材中のMg含有量が上記範囲にあることにより、強度向上の効果が得られ易くなる。一方、犠牲陽極材中のMg含有量が上記範囲を超えると、材料圧延時に割れが生じ易くなる。
【0107】
Znは電位調整に寄与する。犠牲陽極材がZnを含有する場合、犠牲陽極材中のZn含有量は、6.00質量%以下、好ましくは3.00質量%以下である。犠牲陽極材中のZn含有量が上記範囲にあることにより、犠牲防食効果が高くなる。一方、犠牲陽極材中のZn含有量が上記範囲を超えると、犠牲陽極材の電位が過度に低下し、腐食の進行が早まる恐れがある。
【0108】
Crは固溶強化により強度を向上させ、また、Al-Cr系の微細化合物を析出させ、ろう付後の結晶粒粗大化に作用する。犠牲陽極材中のCr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。犠牲陽極材中のCr含有量が上記範囲にあることにより、犠牲陽極材の強度が高くなる。一方、犠牲陽極材中のCr含有量が上記範囲を超えると鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。
【0109】
Tiは固溶強化により強度を向上させ、また、層状に分布して犠牲陽極材中に電位の高い層と低い層を形成することで、腐食形態が孔食から層状になり耐食性を向上させる効果を発揮する。犠牲陽極材中のTi含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。犠牲陽極材中のTi含有量が上記範囲にあることにより、犠牲陽極材の強度が高くなり、耐食性が高くなる。一方、犠牲陽極材中のTi含有量が上記範囲を超えると鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。
【0110】
Zrは固溶強化により強度を向上させ、また、Al-Zr系の微細化合物を析出させ、ろう付後の結晶粒粗大化に作用する。犠牲陽極材中のZr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。犠牲陽極材中のZr含有量が上記範囲にあることにより、犠牲陽極材の強度が高くなり、ろう付後の結晶粒粗大化の効果が得られる。一方、犠牲陽極材中のZr含有量が上記範囲を超えると鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。
【0111】
犠牲陽極材は、不可避的不純物として、0.050質量%以下のAg、B、Be、Bi、Ca、Cd、Co、Ga、Ge、Hg、In、Li、Mo、Na、Ni、P、Pb、Sb、Sn、Sr、V、Yを含んでいてもよい。
【0112】
本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る外面ろう材及び本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る外面ろう材は、6.00~13.00質量%のSiを含有し、更に、1.00質量%以下のFe、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、4.50質量%以下のMg、6.00質量%以下のZn、0.50質量%以下のBi、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、及び0.30質量%以下のZrのうちいずれか1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。
【0113】
外面ろう材は、Siを含有する。アルミニウム合金の外面ろう材において、Siはろう付接合性に寄与する。外面ろう材中のSi含有量は、6.00~13.00質量%である。外面ろう材中のSi含有量が、上記範囲にあることにより、十分なろう付接合性が得られる。外面ろう材中のSi含有量が、上記範囲未満だと接合性が劣り、また、上記範囲を超えると、材料製造時に割れが発生し易くなり、ブレージングシートの製造が困難となる。
【0114】
外面ろう材がFeを含有する場合、外面ろう材中のFe含有量は、1.00質量%以下、好ましくは0.10~0.50質量%である。外面ろう材中のFe含有量が上記範囲になることにより、結晶粒微細化の効果が得られ易くなる。一方、外面ろう材のFe含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成されやすくなり塑性加工性が低くなる。
【0115】
外面ろう材がCuを含有する場合、外面ろう材中のCu含有量は、2.00質量%以下、好ましくは0.50~2.00質量%である。外面ろう材中のCu含有量が上記範囲にあることにより、ろう材の融点を低下させる効果が高まる。一方、外面ろう材中のCu含有量が上記範囲を超えると、材料製造中に割れが生じ、ブレージングシートの製造が困難となる。
【0116】
外面ろう材がMnを含有する場合、外面ろう材中のMn含有量は、2.00質量%以下、好ましくは0.10~0.60質量%である。外面ろう材中のMn含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒粗大化の効果が得られ易くなる。一方、外面ろう材中のMn含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成されやすくなり塑性加工性が低くなる。
【0117】
外面ろう材がMgを含有する場合、外面ろう材中のMg含有量は、4.50質量%以下、好ましくは0.60~4.00質量%である。外面ろう材中のMg含有量が、上記範囲にあることにより、十分なろう付接合性が得られる。外面ろう材中のMg含有量が、上記範囲以下だと酸化皮膜の破壊効果が乏しくなり、また、上記範囲を超えると、材料製造時に割れが発生し易くなり、ブレージングシートの製造が困難となる。
【0118】
外面ろう材がZnを含有する場合、外面ろう材中のZn含有量は、ろう材の融点を低下させる効果が得られ易くなる点で、6.00質量%以下が好ましい。一方、外面ろう材中のZn含有量が6.00質量%を超えると、材料製造中に割れが生じ、ブレージングシートの製造が困難となる。また、外面ろう材がZnを含有する場合、ろう材の電位を卑にして、心材に対して優先的に腐食することで心材を防食する効果が得られ易くなる点で、外面ろう材中のZn含有量が3.00質量%以下であることが好ましい。
【0119】
外面ろう材がBiを含有する場合、外面ろう材中のBi含有量は、0.50質量%以下である。外面ろう材中のBi含有量が、上記範囲にあることにより、十分なろう付接合性が得られる。外面ろう材中のBi含有量が、上記範囲未満だとMgによる酸化皮膜の破壊効果を促進する作用が乏しくなり、また、上記範囲を超えると、材料製造時に割れが発生しやすくなり、ブレージングシートの製造が困難となる。
【0120】
外面ろう材がCrを含有する場合、外面ろう材中のCr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。外面ろう材中のCr含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒粗大化の効果が得られ易くなる。一方、外面ろう材中のCr含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成されやすくなり塑性加工性が低くなる。
【0121】
外面ろう材がTiを含有する場合、外面ろう材中のTi含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。外面ろう材中のTi含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒粗大化の効果が得られ易くなる。一方、外面ろう材中のTi含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり塑性加工性が低くなる。
【0122】
外面ろう材がZrを含有する場合、外面ろう材中のZr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。外面ろう材中のZr含有量が上記範囲にあることにより、結晶粒粗大化の効果が得られ易くなる。一方、外面ろう材中のZr含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり塑性加工性が低くなる。
【0123】
上記作用を利用して、ろう付後の結晶粒径を調整するが、上記範囲であれば、本発明の効果を十分得ることができる。
【0124】
外面ろう材は、Na、Sr及びSbのうちのいずれか1種または2種以上を含有することができる。外面ろう材を形成するアルミニウム合金において、Na、Sr、Sbは、ろう材中のSi粒子を微細化させ、ろうの流動性を高める効果を発揮する。外面ろう材がNaを含有する場合、外面ろう材中のNa含有量は、0.050質量%以下、好ましくは0.005~0.040質量%である。外面ろう材がSrを含有する場合、外面ろう材中のSr含有量は、0.050質量%以下、好ましくは0.005~0.040質量%である。外面ろう材がSbを含有する場合、外面ろう材中のSb含有量は、0.050質量%以下、好ましくは0.005~0.040質量%である。外面ろう材中のNa、Sr、Sbの含有量が上記範囲にあることにより、Si粒子の微細化効果が得られる。一方、外面ろう材中のNa、Sr、Sbの含有量が上記範囲を超えると、効果が飽和して経済的ではない。
【0125】
外面ろう材は、不可避的不純物として、0.050質量%以下のAg、B、Be、Ca、Cd、Co、Ga、Ge、Hg、In、Li、Mo、Ni、P、Pb、Sn、V、Yを含んでいてもよい。
【0126】
本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシート及び本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートを製造する方法としては、以下の製造方法が挙げられる。先ず、本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシート及び本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係る心材の組成のアルミニウム合金鋳塊を作製し、心材用のアルミニウム合金鋳塊を所定の厚さにする。また、本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシート及び本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートに係るクラッド用のアルミニウム合金鋳塊(皮材1、皮材2、内部ろう材1、内部ろう材2、犠牲陽極材A、犠牲陽極材B1、犠牲陽極材B2、外面ろう材)の組成を有するアルミニウム合金鋳塊を作製し、熱間圧延等により所定の厚さにする。次いで、必要に応じ、心材用のアルミニウム合金鋳塊を450~630℃で1~100時間均質化処理する。次いで、心材用のアルミニウム合金鋳塊と、所定のクラッド用のアルミニウム合金鋳塊を、所定の積層順に重ね合わせ、400~550℃で熱間圧延を行う。次いで、所定の厚さまで、1回又は複数回のパスの冷間圧延及び必要に応じ250~450℃で1~24時間の中間焼鈍及び/又は最終焼鈍を行うことにより、本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシート又は本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートを得る。
【0127】
本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシート及び本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、熱交換器の部材の所定の形状に加工され、他の熱交換器用の部材と共に熱交換器の一部として組み合わせられ、次いで、フラックスを使用せず且つ不活性ガス雰囲気中で、到達温度580~630℃で1~10分間ろう付加熱されることにより、ろう付が行われ、熱交換器が製造される。
【0128】
本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシート及び本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートは、不活性ガス雰囲気中でのろう付において、優れたろう付性を有する。クラッド板材のろう付性は、一般的に、すき間充填試験(LWS T 8801)によって評価される。しかしながら、このすき間充填試験は1点からフィレットが形成され、成長するため、複数の接合部間におけるろうの流入流出が生じるような実用的なろう付性を評価するには不十分である。そこで、本発明者らは、この問題を解決するため、「口開き重ね合わせ試験」を開発し、各試験材のろう付性を評価した。以下に示す口開き重ね合わせ試験は、
図1に示すように、所定の大きさ、例えば、横15mm、縦25mmに切断した試験材と、所定の大きさ、例えば、横15mm、縦25mmに切断した板厚1.0mmのA3003-Oのベア材を、皮材1及び内部ろう材1がクラッドされている側の面が内側になるように重ね合わせ、ベア材の片側を持ち上げて、直径1.6mmのスペーサを挿入し、スペーサとは反対側のベア材と試験材とを線状に接触させることで、試験材とベア材の間に微小クリアランスを設けた試験体を用意し、この試験体を試験材とベア材の線状の接触部が重力に対して平行になる姿勢でろう付する試験方法である。口開き重ね合わせ試験においけるろう付加熱では、試験材を口開き重ね合わせ試験体に組みつけた後、フラックスを使用しないで、窒素ガス雰囲気中で、炉中ろう付加熱する。ろう付加熱条件は、昇温中の試験体が400℃以上の時における炉内の酸素濃度は50ppm以下、露点-45℃以下に管理し、試験体温度が570℃以上の時における酸素濃度は10ppm以下、露点-60℃以下に管理し、試験体の到達温度を600℃とする。この口開き重ね合わせ試験は、例えば、重力方向の下方に比べ、上方にて酸化皮膜の破壊が遅れた場合、先に、下方側でフィレットが形成されるため、上方側でフィレットを形成するはずだったろう材が、フレットが形成されている下方側へ流出することが生じる。これは実用製品におけるろうの流入流出を簡便に評価できる極めて優れた評価方法である。そのため、この口開き重ね合わせ試験によれば、複数の接合部間におけるろうの流入流出が生じるような実用的なろう付性を、適切に評価することができる。
【0129】
以下に、実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【実施例0130】
(実施例及び比較例)
表1に示す組成を有する心材用鋳塊、内部ろう材用鋳塊、皮材用鋳塊を、それぞれ連続鋳造により造塊し、心材用鋳塊については、得られた鋳塊を縦163mm、横163mm、厚さ27mmのサイズに面削した。皮材用鋳塊、ろう材用鋳塊については、得られた鋳塊を厚さ3mmまで500℃で熱間圧延し、冷間圧延にて所定の厚さにし、縦163mm、横163mmの寸法に切断した。
【0131】
【0132】
準備した心材用鋳塊、内部ろう材用鋳塊、皮材用鋳塊を、表2に示す組み合わせで重ね合わせて熱間圧延及び冷間圧延を行い、厚さ0.6mmとした後、常法によって360℃の最終焼鈍を行い、皮材1/内部ろう材1/心材(比較例1は、内部ろう材1/心材)の順に積層された軟質クラッド板材を得た。得られたクラッド板材を試験材とした。
【0133】
【0134】
次いで、得られたクラッド板材を用いて、以下に示す口開き重ね合わせ試験を行った。その結果を表3に示す。
【0135】
<口開き重ね合わせ試験>
図1に示すように、横15mm、縦25mmに切断した試験材と、横15mm、縦25mmに切断した板厚1.0mmのA3003-Oのベア材を皮材1及び内部ろう材1がクラッドされている側の面が内側になるように重ね合わせ、ベア材の片側を持ち上げて直径1.6mmのスペーサを挿入し、スペーサとは反対側のベア材と試験材とを線状に接触させることで試験材とベア材の間に微小クリアランスを設けた試験体を用意した。
次いで、試験材を口開き重ね合わせ試験体に組みつけた後、試験体を試験材とベア材の線状の接触部が重力に対して平行になる姿勢で、フラックスを使用しないで、窒素ガス雰囲気中で炉中ろう付加熱をした。ろう付加熱条件は、昇温中の試験体が400℃以上の時における炉内の酸素濃度は50ppm以下、露点-45℃以下に管理し、試験体温度が570℃以上の時における酸素濃度は10ppm以下、露点-60℃以下に管理し、試験体の到達温度を600℃とした。
ろう付加熱後、口開き重ね合わせ試験体の微小クリアランスに形成したフィレット形状をX線CTにより撮影した。撮影条件は、管電圧160kV、管電流100μAとし、試験体全体を撮影した。
図2に取得したX線CT像の模式図を示す。フィレットを白色で示し、
図2の左側が重力下側、右側が重力上側である。得られたX線CT像を、ImageJによって画像解析した。X線CT像を白黒二値化し、重力方向をx軸とし、x軸に垂直方向のフィレット長さを数値化した。その解析結果から、次の3つの指標それぞれについて、○×判定を行った。
(指標1)フィレットの存在しない画像の両端部を除外した範囲において、フィレット長さ=0、すなわちフィレットが存在しなかった場合、フィレット切れ有り(×)、そうでない場合はフィレット切れなし(〇)と判定した。
(指標2)フィレットの重力下側端部をx=0とした時、x=12~13mmの最小フィレット長さを中央部(B)、x=22~23mmの最小フィレット長さを重力上側(C)とし、x=0~1mmの最大フィレット長さを重力下側(A)とした時、「((B+C)/2)/A」をフィレット長さの重力影響係数と定義した。この係数が大きいほど重力に逆らって、均一なフィレットを形成したことを意味し、0.35以上の場合(〇)、0.34未満の場合(×)と判定した。
【0136】
【0137】
上記結果より、本発明の第一形態のアルミニウム合金ブレージングシートが、化学組成が本発明の規定範囲にある内部ろう材1及び皮材1を有し、且つ、それらの厚さ方向の平均Mg濃度及び平均Bi濃度が本発明の規定範囲にあることにより、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付において、優れたろう付性を有することがわかる。
また、上記結果より、最外層に化学組成が本発明の規定範囲にある皮材1を、その1つ内側に化学組成が本発明の規定範囲にある内部ろう材1を有し、且つ、それらの厚さ方向の平均Mg濃度及び平均Bi濃度が本発明の規定範囲にあることにより、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付において、優れたろう付性を有することがわかるので、最外層に化学組成が本発明の規定範囲にある皮材1を、その1つ内側に化学組成が本発明の規定範囲にある内部ろう材1を有し、且つ、それらの厚さ方向の平均Mg濃度及び平均Bi濃度が本発明の規定範囲にある本発明の第二形態のアルミニウム合金ブレージングシートも、同様に、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付において、優れたろう付性を有すると推測される。