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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141039
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】伝動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
F16H1/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047160
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005038
【氏名又は名称】セイコーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】仲野 隆司
(72)【発明者】
【氏名】小沢 明夫
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA03
3J027FA18
3J027FA36
3J027FA38
3J027GB03
3J027GC02
3J027GC22
3J027GC23
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE01
3J027GE11
(57)【要約】
【課題】動作性能の低下を抑制できる伝動装置を提供する。
【解決手段】伝動装置1は、伝達された動力によって回転軸線O1回りに回転する入力軸2と、入力軸2の回転を減速する1または複数の減速機構3と、減速機構3によって回転する出力軸5を含む出力軸ユニット140と、減速機構3を収容するケーシング6と、を備える。出力軸ユニット140は、ケーシング6に対して回転軸線O1に沿って移動可能である。出力軸ユニット140は、回転軸線O1に沿う位置に応じた荷重を減速機構3に加える。出力軸ユニット140は、回転軸線O1に沿う任意の位置でケーシング6に対して位置決め可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝達された動力によって軸線の回りに回転する入力軸と、
前記入力軸の回転を減速する1または複数の減速機構と、
前記減速機構によって回転する出力軸を含むユニットと、
前記減速機構を収容するケーシングと、を備え、
前記出力軸を含むユニットは、前記ケーシングに対して前記軸線に沿って移動可能とされ、前記軸線に沿う方向の位置に応じた荷重を前記減速機構に加え、
かつ、前記軸線に沿う方向の任意の位置で前記ケーシングに対して位置決め可能である、伝動装置。
【請求項2】
前記出力軸を含むユニットを前記ケーシングに対して位置決めする位置決め具をさらに備え、
前記位置決め具は、前記出力軸を含むユニットを、前記軸線に交差する方向から押圧することによって前記ケーシングに対して位置決めする、請求項1記載の伝動装置。
【請求項3】
前記出力軸を含むユニットと前記ケーシングとの間に、前記軸線方向に挟持されるスペーサをさらに備える、請求項1または2に記載の伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動力を伝達する伝動装置として、モータの出力軸の回転速度を減速して出力する減速機が知られている。減速機は、例えば、内歯歯車と、外歯歯車と、外歯歯車を揺動させる偏心体と、を備える(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-90477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の減速機では、部品寸法のバラつき、組み立ての精度の低さなどにより機械的ガタが生じ、トルク効率などの動作性能に影響が及ぶ場合があった。そのため、動作性能の低下を抑制することが求められていた。
【0005】
本発明の一態様は、動作性能の低下を抑制できる伝動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様に係る伝動装置は、伝達された動力によって軸線の回りに回転する入力軸と、前記入力軸の回転を減速する1または複数の減速機構と、前記減速機構によって回転する出力軸を含むユニットと、前記減速機構を収容するケーシングと、を備え、前記出力軸を含むユニットは、前記ケーシングに対して前記軸線に沿って移動可能とされ、前記軸線に沿う方向の位置に応じた荷重を前記減速機構に加え、かつ、前記軸線に沿う方向の任意の位置で前記ケーシングに対して位置決め可能である。
【0007】
本発明の一態様に係る伝動装置によれば、部品寸法のバラつき、組み立ての精度の低さなどにより機械的ガタが生じた場合に、出力軸を含むユニットの位置調整によって、減速機構にかかる荷重を調整することができる。よって、トルク効率などの動作性能の低下を抑制できる。
例えば、出力軸を含むユニットの位置調整によって、減速機構に加えられる荷重を大きくすることができる。そのため、減速機構における部品の傾き、動作空間の偏り、位置ずれ等を抑制し、機械的ガタを生じにくくすることができる。よって、トルク効率等の動作性能を高めることができる。
【0008】
本発明の一態様に係る伝動装置によれば、出力軸を含むユニットの位置調整によって、減速機構にかかる荷重を調整することができるため、トルク効率と起動トルクとを調節できる。そのため、使用用途に応じた動作性能を確保できる。例えば、低出力の駆動源(モータ等)を用いる必要がある場合には、出力軸を含むユニットの位置を高めにすることによって、起動トルクを低くすることができる。トルク効率を重視する場合には、出力軸を含むユニットの位置を低めにすればよい。
【0009】
(2)前記伝動装置では、前記出力軸を含むユニットを前記ケーシングに対して位置決めする位置決め具をさらに備え、
前記位置決め具は、前記出力軸を含むユニットを、前記軸線に交差する方向から押圧することによって前記ケーシングに対して位置決めすることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、軸線方向から出力軸を固定する場合と異なり、出力軸を含むユニットの軸線方向の位置調整が容易となる。
【0011】
(3)前記伝動装置では、前記出力軸を含むユニットと前記ケーシングとの間に、前記軸線方向に挟持されるスペーサをさらに備えていてもよい。
【0012】
この構成によれば、出力軸の軸線方向の位置を正確に定めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、動作性能の低下を抑制できる伝動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る減速機(伝動装置)の斜視図である。
図2図1に示すA-A線に沿った減速機の縦断面図である。
図3】実施形態に係る減速機の分解斜視図である。
図4】減速機構の斜視図である。
図5】減速機構の平面図である。
図6】偏心部材の斜視図である。
図7】外歯車および案内部材の斜視図である。
図8】減速機構の斜視図である。
図9】変換部材の一方側から見た斜視図である。
図10】変換部材の他方側から見た斜視図である。
図11】伝達部材の斜視図である。
図12】出力軸ユニットを取り外した状態の減速機の斜視図である。
図13】減速機の一部断面図である。
図14】減速機の変形例の一部断面図である。
図15】スペーサの厚さと、トルク効率および起動トルクとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一態様に係る伝動装置の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図2に示すように、本実施形態の減速機(伝動装置)1は、入力軸2と、減速機構3と、ケーシング6と、出力軸ユニット140と、を主に備えている。
【0017】
入力軸2および出力軸5は、それぞれの中心軸線が共通した共通軸上に位置するように配置されている。本実施形態では、この共通軸を回転軸線(軸線)O1という。回転軸線O1を通り、かつ回転軸線O1に直交する方向は径方向である。回転軸線O1を周回する方向は周方向である。回転軸線O1に沿う方向は上下方向である。上下方向のうち、入力軸2から出力軸5に向かう方向は上方である。上方の反対方向は下方である。回転軸線O1と平行な方向から見ることを平面視という。
【0018】
[ケーシング]
図1に示すように、ケーシング6は、第1枠体11と、第2枠体12と、を備えている。
第1枠体11および第2枠体12は、それぞれ矩形枠状に形成されている。第1枠体11および第2枠体12は、この順に、駆動源(例えばステッピングモータ等)の基体10の上に積み重ねられている。第1枠体11および第2枠体12の中心軸は、回転軸線O1と平行である。第1枠体11および第2枠体12は、全体として矩形筒状となる。ケーシング6は、減速機構3を収容する。
なお、基体10および枠体11,12の平面視形状は矩形状に限らず、円形状、多角形状などでもよい。
【0019】
図2に示すように、第1枠体11には、中央孔部11aが形成されている。中央孔部11aは、平面視において円形状とされている。中央孔部11aは、第1枠体11を上下方向に貫通する。中央孔部11aは、回転軸線O1と同軸とされている。第1枠体11の4つの角部(四隅)には、それぞれ、第1枠体11を上下方向に貫通する連結孔11b(図1参照)が形成されている。
【0020】
中央孔部11aの内周面の上部には、拡径部11cが形成されている。拡径部11cは、他の部分(中央孔部11aの内周面の下部)より内径が大きい。拡径部11cは、平面視において円形状とされている。拡径部11cは、回転軸線O1と同軸とされている(図5参照)。
【0021】
中央孔部11aの内周面には、拡径部11cと他の部分との内径差によって段差面11dが形成されている。段差面11dは、回転軸線O1と垂直な面である。段差面11dには、下方に向けて複数の支持孔11eが形成されている。複数の支持孔11eは、回転軸線O1を中心として円形状に並ぶ。複数の支持孔11eは、周方向に等間隔をあけて形成されている(図5参照)。
【0022】
第2枠体12には、中央孔部12aが形成されている。中央孔部12aは、平面視において円形状とされている。中央孔部12aは、第2枠体12を上下方向に貫通する。中央孔部12aは、回転軸線O1と同軸とされている。第2枠体12の4つの角部(四隅)には、それぞれ、第2枠体12を上下方向に貫通する連結孔12b(図1参照)が形成されている。
【0023】
図1に示すように、第2枠体12の4つの角部(四隅)の上部には、それぞれ切欠き12cが形成されている。切欠き12cの底面12dには、連結孔12bが形成されている。連結孔12bは、底面12dから第2枠体12の下面にかけて第2枠体12を上下方向に貫通する。
【0024】
図2に示すように、第2枠体12の下面には、上方に向けて複数の支持孔12eが形成されている。複数の支持孔12eは、回転軸線O1を中心として円形状に並ぶ。複数の支持孔12eは、周方向に等間隔をあけて形成されている。
【0025】
第2枠体12には、複数の固定孔12fが形成されている。固定孔12fは、第2枠体12の内周面から外周面にかけて第2枠体12を径方向に貫通する。固定孔12fは、第2枠体12の4つの辺部の中央にそれぞれ形成されている。
【0026】
図1に示すように、第1枠体11と、第2枠体12とは、固定具22によって連結されている。固定具22は、第2枠体12の底面12dから連結孔12b,11bに挿入され、ネジ止めなどにより第1枠体11に固定されている。第1枠体11は、図示しない固定具によって、駆動源(例えばステッピングモータ等)の基体10に固定されている。
【0027】
[入力軸]
図2に示すように、入力軸2は、上下方向に沿って配置されている。入力軸2は、外部から伝達された動力(トルク)によって回転軸線O1回りに回転可能である。入力軸2は、下から第1枠体11および第2枠体12に挿入されている。
【0028】
[減速機構]
図2および図3に示すように、減速機構3は、偏心部材31と、回転部材32と、外歯車33と、内歯車34と、複数の案内部材35と、下部回転部材37とを備える。
【0029】
図6に示すように、偏心部材31は、基台部41と、偏心カム42とを備える。
基台部41は、回転軸線O1を中心軸とする円柱状に形成されている。
偏心カム42は、基台部41の上面から上方に向けて突出する。偏心カム42は、回転軸線O1から径方向に偏心した偏心軸線O2を中心軸とする円柱状に形成されている。偏心カム42の外径は、基台部41の外径より小さい。
偏心部材31には、基台部41の下面から偏心カム42の上面にかけて偏心部材31を貫通する挿通孔31aが形成されている。挿通孔31aは、回転軸線O1を中心として平面視円形状に形成されている。挿通孔31aには入力軸2が挿通されている(図2参照)。
【0030】
図2に示すように、基台部41には、複数の固定孔41aが形成されている。固定孔41aは、外周面から内周面にかけて基台部41を貫通する。複数の固定孔41aは、周方向に間隔をあけて形成されている(図6参照)。固定孔41aには、それぞれ固定具43が挿入されている。固定具43の先端は入力軸2の外周面に達している。固定具43は、ネジ止めなどにより基台部41と入力軸2とを固定する。これにより、偏心部材31は、入力軸2の回転に伴って回転軸線O1の回りに回転する。
【0031】
下部回転部材37は、内輪45と、外輪46と、複数の転動体47とを備える。内輪45は、基台部41に外嵌めされる。外輪46は、第1枠体11の中央孔部11aに内嵌めされる。転動体47は、内輪45と外輪46との間に転動可能に保持される。転動体47は、例えば、ボールである。下部回転部材37は、例えば、玉軸受である。なお、本実施形態の減速機は、下部回転部材37を用いない構成も可能である。
偏心部材31は、下部回転部材37を介して第1枠体11に対して位置決めされる。偏心部材31は、下部回転部材37によって、回転軸線O1の回りに回転可能となる。
【0032】
回転部材32は、内輪48と、外輪49と、複数の転動体50とを備える。内輪48は、偏心カム42に外嵌めされる。外輪49は、外歯車33の中央孔部33aに内嵌めされる。転動体50は、内輪48と外輪49との間に転動可能に保持される。転動体50は、例えば、ボールである。回転部材32は、例えば、玉軸受である。回転部材32は、偏心カム42と外歯車33との間に介在する。
【0033】
外歯車33は、円板状に形成され、偏心軸線O2を中心として配置される。外歯車33の中央には、中央孔部33aが形成されている。中央孔部33aは、外歯車33を上下方向に貫通する。中央孔部33aは、平面視において円形状とされている。外歯車33は、回転部材32に外嵌めされる。外歯車33は、回転部材32を介して偏心カム42に対して位置決めされる。外歯車33は、回転部材32によって、偏心軸線O2の回りに回転可能となる(図5参照)。
【0034】
図4および図5に示すように、外歯車33の外周縁には、複数の外歯51が形成されている。複数の外歯51は、偏心軸線O2を周回する周方向に等間隔をあけて形成されている。本実施形態では、外歯51の数は7つである。外歯51は、トロコイド曲線に沿った歯形、いわゆるトロコイド歯形とされていてもよい。これにより、外歯51は、外歯車33の回転時に、内歯車34の内歯52と常時接触させることができる。
【0035】
図2および図7に示すように、外歯車33には、複数の支持孔33bが形成されている。支持孔33bは、外歯車33の上面から下方に向けて凹むように形成されている。複数の支持孔33bは、外歯車33の周方向に等間隔をあけて形成されている。
【0036】
図4および図5に示すように、内歯車34は、複数の内歯52を備える。複数の内歯52は、回転軸線O1を周回する周方向に間隔をあけて形成されている。内歯52は、外歯車33の外歯51と噛み合い可能である。内歯52は、回転軸線O1を周回する周方向に等間隔をあけて並ぶ。内歯52の数は、外歯車33の外歯51の数と異なる。内歯52の数は、外歯車33の外歯51の数より多い。本実施形態では、内歯52の数は8つである。
【0037】
図2に示すように、内歯52は、支持軸54と、1つ以上(本実施形態では2つ)の回転体55とを備える。支持軸54は、回転体55に挿通し、回転体55を支持する。支持軸54は上下方向に沿う。支持軸54の下部は、第1枠体11の支持孔11eに挿入されている。支持軸54の上部は、第2枠体12の支持孔12eに挿入されている。
【0038】
回転体55は、例えば、転がり軸受(玉軸受)である。回転体55は、内輪56と、外輪57と、複数の転動体58とを備える。内輪56は、支持軸54に外嵌めされる。転動体58は、内輪56と外輪57との間に転動可能に保持される。転動体58は、例えば、ボールである。外輪57の外周面は、外歯車33の外歯51の外周面と接触できる。
なお、回転体55は、転がり軸受(玉軸受)に限らず、ころ軸受、滑り軸受でもよい。
【0039】
図7に示すように、案内部材35は、支持軸61と、回転体62とを備える。支持軸61は、回転体62に挿通し、回転体62を支持する。支持軸61は上下方向に沿う。支持軸61の下部は、外歯車33の支持孔33bに挿入されている。これにより、案内部材35は外歯車33に取り付けられる。
【0040】
回転体62は、支持軸61の上部に設けられる。回転体62は、例えば、転がり軸受である。回転体62は、内輪63と、外輪64と、複数の転動体65とを備える。内輪63は、支持軸61に外嵌めされる。転動体65は、内輪63と外輪64との間に転動可能に保持される。転動体65は、例えば、ボールである。案内部材35は、例えば、カムフォロアである。外輪64は、支持軸61の回りに回転可能となる。本実施形態では、案内部材35の数は、8つである。
なお、回転体62は、転がり軸受に限らず、滑り軸受でもよい。
【0041】
[出力軸ユニット]
図12に示すように、出力軸ユニット140は、変換部材36と、伝達部材7(図2参照)と、出力軸5と、出力軸軸受14(図2参照)と、連結リング15と、オイルシール16と、固定リング17と、を含む。出力軸ユニット140は、「出力軸を含むユニット」の例である。
【0042】
(変換部材)
図2および図8に示すように、変換部材36は、外歯車33の上に設けられる。
図9および図10に示すように、変換部材36は、回転軸線O1を中心軸とする円板状に形成されている。変換部材36の中央には、中央孔部36aが形成されている。中央孔部36aは、変換部材36を上下方向に貫通する。
【0043】
図10に示すように、変換部材36の下面には、複数の収容凹部36bが形成されている。収容凹部36bは、平面視において円形状とされている。収容凹部36bは、変換部材36の下面から上方に向けて凹むように形成されている。複数の収容凹部36bは、変換部材36の周方向に等間隔をあけて形成されている。収容凹部36bの数は、案内部材35の数と同数である。本実施形態では、収容凹部36bの数は8つである。収容凹部36bは、案内部材35の回転体62を収容できる(図2参照)。
【0044】
収容凹部36bの内径は、回転体62の外径より大きい。収容凹部36bの内径は、案内部材35の偏心揺動を許容しつつ、外歯車33の回転に伴って変換部材36が回転軸線O1の回りに回転できるように定められる。そのため、変換部材36は、偏心揺動を含む外歯車33の運動を回転軸線O1回りの回転運動に変換することができる。
【0045】
図9に示すように、変換部材36の上面には、1または複数の嵌合凸部36cが形成されている。嵌合凸部36cは、平面視において矩形状とされている。嵌合凸部36cは、変換部材36の上面から上方に突出して形成されている。複数の嵌合凸部36cは、変換部材36の周方向に間隔をあけて形成されている。本実施形態では、嵌合凸部36cの数は2つである。2つの嵌合凸部36cは、変換部材36の中心軸に対して回転対称となる位置にある。嵌合凸部36cは、伝達部材7の嵌合凹部113aに嵌合することによって、変換部材36と伝達部材7との相対的な回転を規制する。
【0046】
(伝達部材)
図2および図11に示すように、伝達部材7は、天板部111と、筒部112と、フランジ部113とを備える。
天板部111は、回転軸線O1を中心として平面視円形状に形成されている。天板部111の中央には、固定孔111aが形成されている。固定孔111aは、天板部111を上下方向に貫通する。
図2に示すように、固定孔111aには、固定具114が挿入されている。固定具114は、出力軸5の挿入孔5aに挿入される。固定具114は、ネジ止めなどにより天板部111を出力軸5に固定する。
【0047】
天板部111の上面には、径方向に沿う溝状の切欠き111bが形成されている。切欠き111bには、規制ピン115の下部が挿入されている。規制ピン115の上部は、出力軸5の挿入孔5bに挿入される。規制ピン115は、伝達部材7と出力軸5との相対的な回転を規制する。
【0048】
図11に示すように、筒部112は、天板部111の周縁から垂下する円筒状に形成されている。筒部112の下部には、2つの切欠き112aが形成されている。2つの切欠き112aは、筒部112の中心軸に対して回転対称となる位置にある。
【0049】
フランジ部113は、筒部112の外周面から径方向の外側に向けて延びる。フランジ部113の外径は変換部材36の中央孔部36aの内径より大きい。フランジ部113には、2つの嵌合凹部113aが形成されている。2つの嵌合凹部113aは、フランジ部113の中心軸に対して回転対称となる位置にある。
【0050】
図8に示すように、嵌合凹部113aには、変換部材36の嵌合凸部36cが嵌合する。嵌合凹部113aに嵌合凸部36cが嵌合することによって、変換部材36に対する伝達部材7の相対的な回転が規制される。そのため、伝達部材7は、変換部材36の回転に伴って回転する。
【0051】
図2に示すように、筒部112の下部の内周面と、入力軸2の外周面との間には、補助回転部材39が設けられている。補助回転部材39は、転がり軸受である。
【0052】
(出力軸)
図2に示すように、出力軸5は、主部121と、筒部122とを備える。主部121は、円柱状に形成されている。筒部122は、円筒状に形成されている。筒部122は、主部121の下端部の周縁から垂下する。出力軸5は、上下方向に沿って配置され、回転軸線O1回りに回転可能である。主部121の下面の中央には、固定具114が挿入される挿入孔5aが形成されている。主部121の下面の中央を外れた位置には、規制ピン115が挿入される挿入孔5bが形成されている。出力軸5は、固定具114および規制ピン115によって伝達部材7と一体的に組み合わされる。出力軸5は、伝達部材7の回転に伴って回転軸線O1の回りに回転する。
【0053】
(その他の構成)
出力軸5の筒部122の下部の外周面には、出力軸軸受14が設けられている。出力軸軸受14の外周面には連結リング15が設けられている。連結リング15は、主筒部151と、フランジ部152と、内方延出部153とを備える。主筒部151は、回転軸線O1を中心軸とする円筒状とされている。フランジ部152は、主筒部151の上端から径方向の外側に突出する。内方延出部153は、主筒部151の下端から径方向の内側に突出する。
【0054】
筒部122の上部の外周面には、環状のオイルシール16が設けられている。オイルシール16の外周側には、固定リング17が設けられている。固定リング17は、固定具132によって連結リング15のフランジ部152に固定されている。
【0055】
第2枠体12の固定孔12fには、それぞれ固定具131が挿入される。固定具131は「位置決め具」の例である。固定具131は、例えば、外周面に雄ネジが形成されている。固定具131は、固定孔12fの内周面に形成された雌ネジに螺着する。固定具131は、固定孔12f内で進退可能である。
【0056】
固定孔12fに挿入された固定具131の先端は、連結リング15の主筒部151の外周面に達している。固定具131は、側方(詳しくは、径方向の内方)に連結リング15の外周面を押圧する。固定具131は、連結リング15を径方向の内方に押圧することによって、出力軸ユニット140をケーシング6に固定する。これによって、出力軸ユニット140はケーシング6に対して位置決めされる。そのため、出力軸5は、ケーシング6に対して位置決めされる。
固定具131の押圧方向は、回転軸線O1に対して交差する方向(好ましくは、回転軸線O1に対して垂直な方向)が好適である。
【0057】
出力軸ユニット140は、一体的に動作することができる。出力軸ユニット140は、ケーシング6に対して上下方向(軸線方向)に移動できる。すなわち、出力軸ユニット140は、回転軸線O1に沿って移動可能である。
出力軸ユニット140は、ケーシング6に対して着脱自在とされている。図12は、出力軸ユニット140は、ケーシング6から取り外した状態を示す。図1および図2は、出力軸ユニット140をケーシング6に装着した状態を示す。
【0058】
図13に示すように、第2枠体12の中央孔部12aの内周面は、連結リング15の主筒部151の外周面と対面する。中央孔部12aの内周面は、回転軸線O1を中心軸とする円筒面である。連結リング15の主筒部151の外周面も、回転軸線O1を中心軸とする円筒面である。そのため、出力軸ユニット140の上下方向の位置によらず、出力軸ユニット140の外周面(主筒部151の外周面)と、中央孔部12aの内周面との距離は一定となる。
【0059】
出力軸ユニット140は、所望の高さ位置で、固定具131によって容易に固定できる。よって、出力軸ユニット140は、回転軸線O1に沿う任意の位置でケーシング6に対して位置決め可能である。
【0060】
図2に示すように、出力軸ユニット140は、減速機構3に上から荷重を加えることができる。詳しくは、変換部材36は、複数の案内部材35に、周方向にわたる荷重を加える(図4および図8参照)。荷重は、案内部材35を介して外歯車33に及ぶ。外歯車33は偏心部材31に向けて押圧され、偏心部材31に押し当てられる。そのため、回転軸線O1に対する外歯車33の傾き、および、外歯車33の回転軸線O1方向の位置ずれなどを抑制できる。したがって、外歯車33の姿勢は安定に維持され、外歯車33と内歯車34との噛み合いは良好となる。よって、トルク効率を高めることができる。
【0061】
出力軸ユニット140が減速機構3に加える荷重は、出力軸ユニット140の上下方向の位置(回転軸線O1に沿う方向の位置)に応じた荷重となる。出力軸ユニット140が高い位置に配置されれば、減速機構3に加えられる荷重は小さくなる。出力軸ユニット140が低い位置に配置されれば、減速機構3に加えられる荷重は大きくなる。出力軸ユニット140が減速機構3に加える荷重は、出力軸ユニット140の上下方向の位置によってはゼロともなり得る。
【0062】
図14は、減速機1の変形例の一部断面図である。図14に示すように、連結リング15のフランジ部152と、第2枠体12の上面との間には、スペーサ154を設けてもよい。スペーサ154は、例えば、主筒部151を囲む円環板状であってよい。スペーサ154は、例えば、回転軸線O1に対して垂直な板状体である。スペーサ154は、フランジ部152と第2枠体12とによって、上下から挟持される。スペーサ154の厚さは、適宜調整することができる。スペーサ154を設けることによって、出力軸ユニット140の上下方向の位置を正確に定めることができる。スペーサ154を設けることによって、出力軸ユニット140の高さ位置が周方向に偏るのを抑えることができる。
【0063】
図15は、スペーサ154の厚さとトルク効率との関係、および、スペーサ154の厚さと起動トルクとの関係を示す図である。図15に示すように、スペーサ154が薄いと、トルク効率は高くなるが、起動トルクも高くなる傾向がある。スペーサ154が厚いと、トルク効率は低くなるが、起動トルクも低くなる傾向がある。
【0064】
この結果より、次のような推測が可能である。スペーサ154が薄いと、出力軸ユニット140は低い位置に配置される。これにより、減速機構3には、出力軸ユニット140によって、上からの荷重が加えられる。詳しくは、案内部材35には、変換部材36によって荷重が加えられる。荷重は外歯車33、偏心部材31などの部品にも及ぶ。そのため、減速機構3において部品同士の接触が起こりやすくなる。また、部品の傾き、動作空間の偏り、位置ずれ等は起こりにくくなる。これにより、トルク効率は高くなる。一方、部品に押圧力が加えられることにより部品同士の摩擦が大きくなるため、起動トルクは高くなる。
【0065】
これに対し、スペーサ154が厚いと、出力軸ユニット140は高い位置に配置される。これにより、減速機構3に加えられる荷重は小さくなるため、部品同士の接触は比較的少なくなる。また、部品の傾き、動作空間の偏り、位置ずれ等は起こりやすくなる。そのため、トルク効率は低くなる。一方、荷重が小さくなることにより、部品同士の摩擦が小さくなるため、起動トルクは低くなる。
【0066】
[減速機の動作]
次に、減速機1の動作について説明する。
外部の駆動源(例えばステッピングモータ等)からの動力が入力軸2に伝達されると、入力軸2は、回転軸線O1の回りに回転する。入力軸2の回転力は、偏心部材31を介して外歯車33に伝えられる。
【0067】
図4および図5に示すように、外歯車33は、外歯51が内歯52を順次乗り越えるように偏心揺動しつつ、回転軸線O1の回りに回転する。外歯51の数(7歯)は、内歯52の数(8歯)と異なるため、歯数の角度差分だけ外歯車33を減速させることができる。減速機構3の減速比は、例えば1/7である。
【0068】
図8に示すように、外歯車33の回転とともに、変換部材36は回転軸線O1の回りに回転する。図2に示すように、変換部材36の回転力は、伝達部材7を介して出力軸5に伝えられる。
【0069】
[本実施形態の減速機が奏する効果]
本実施形態の減速機1によれば、出力軸ユニット140は、ケーシング6に対して上下方向の任意の位置で位置決め可能である。そのため、部品寸法のバラつき、組み立ての精度の低さなどにより機械的ガタが生じた場合に、出力軸ユニット140の位置調整によって、減速機構3にかかる荷重を調整することができる。よって、トルク効率などの動作性能の低下を抑制できる。
例えば、出力軸ユニット140の上下方向の位置を低く設定することによって、減速機構3に加えられる荷重を大きくすることができる。そのため、減速機構3における部品の傾き、動作空間の偏り、位置ずれ等を抑制し、機械的ガタを生じにくくすることができる。よって、トルク効率等の動作性能を高めることができる。
【0070】
減速機1では、出力軸ユニット140の位置調整によって、減速機構3にかかる荷重を調整することができるため、トルク効率と起動トルクとを調節できる(図15参照)。そのため、使用用途に応じた動作性能を確保できる。例えば、低出力の駆動源(モータ等)を用いる必要がある場合には、出力軸ユニット140の上下方向の位置を高めにすることによって、起動トルクを低くすることができる。トルク効率を重視する場合には、出力軸ユニット140の位置を低めにすればよい。
【0071】
減速機1では、固定具131を側方から押し当てることによって出力軸ユニット140を位置決めする。そのため、上下方向から固定する場合と異なり、出力軸ユニット140の上下方向の位置調整が容易となる。
【0072】
減速機1では、出力軸ユニット140とケーシング6との間にスペーサ154を上下から挟持させることができる(図14参照)。これにより、出力軸ユニット140の上下方向の位置を正確に定めることができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0074】
上記実施形態では、固定具(位置決め具)131を用いて出力軸5を位置決めするが、出力軸を位置決めする構造はこれに限らない。例えば、出力軸を位置決めする構造として、出力軸ユニット140をケーシング6に固定するクランプ機構を採用してもよい。出力軸ユニット140とケーシング6のうち一方に形成した凸部と、他方に形成した凹部とが嵌合することによって、出力軸ユニット140がケーシング6に対して位置決めされてもよい。
【0075】
上記実施形態では、減速機1は1つの減速機構3を備えるが、減速機構の数は2以上でもよい。すなわち、減速機構の数は1または複数(2以上の任意の数)であってよい。
図14に示す例では、出力軸ユニット140とケーシング6との間にスペーサ154が設けられているが、スペーサの位置は特に限定されない。スペーサは、出力軸5の上下方向(軸線方向)の位置を調整できればよい。スペーサは、例えば、第1枠体11と第2枠体12との間に設けてもよい。スペーサは、変換部材36の上に設けてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…減速機(伝動装置)
2…入力軸
3…減速機構
5…出力軸
6…ケーシング
33…外歯車
34…内歯車
51…外歯
52…内歯
131…固定具(位置決め具)
140…出力軸ユニット(出力軸を含むユニット)
154…スペーサ
O1…回転軸線(軸線)
O2…偏心軸線
O3…偏心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15