(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141041
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】排ガス処理触媒およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/28 20060101AFI20230928BHJP
B01J 37/03 20060101ALI20230928BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20230928BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20230928BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B01J23/28 A
B01J37/03 A ZAB
B01J35/04 301N
B01J37/08
B01D53/86 222
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047163
(22)【出願日】2022-03-23
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PHOTOSHOP
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】田中 智明
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 さと子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聡
(72)【発明者】
【氏名】足立 健太郎
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC04
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4G169AA08
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4G169FB06
4G169FB09
4G169FB30
4G169FB67
4G169FC03
4G169FC04
(57)【要約】
【課題】SOX存在下でも窒素酸化物の除去効率の高い排ガス処理触媒を提供すること。
【解決手段】バナジウムおよびモリブデンを含む複合酸化物がチタン酸化物を含む担体の表面に固着していて、XPSにおいて、CaとSの表面原子濃度の比(Ca/S)が0.6~2となる、排ガス処理触媒であることを特徴とする排ガス処理触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バナジウムおよびモリブデンを含む複合酸化物がチタン酸化物を含む担体の表面に固着し、XPSにおいて、CaとSの表面原子濃度の比(Ca/S)が0.6~2となる、排ガス処理触媒。
【請求項2】
3価、4価および5価のバナジウムと6価のモリブデンとを含むバナジウムおよびモリブデンの混合原子価化合物からなる前記複合酸化物である、前記請求項1に記載の排ガス処理触媒。
【請求項3】
前記触媒は、Ca化合物および/またはCaを含有する化合物またはそれらの混合物とアクリレート系ラテックスとを含む、前記請求項1または2のいずれかに記載の排ガス処理触媒。
【請求項4】
1)水、硫酸、バナジウム原料、モリブデン原料および錯化剤を混練して母液を調製する工程、
2)チタン酸化物粉末と前記母液とを混練して混練物を調製し、該混練物に沈殿剤を混練して、バナジウムおよびモリブデンの共沈物が前記チタン酸化物粉末の表面に固着した、さらにCaを含む成形用混練体を得る工程、
3)前記成形用混練体を成形して成形体を得る工程、
4)前記成形体を焼成して、バナジウムおよびモリブデンの複合酸化物が前記チタン酸化物粉末の表面に固着した排ガス処理触媒を得る工程、
を含む排ガス処理触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SOX存在下でも窒素酸化物の除去効率の高い排ガス処理触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排ガス中の窒素酸化物(NOX)をアンモニアなどの還元剤で選択還元して除去する排ガス処理触媒として、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含む酸化チタン担体に酸化タングステン、酸化バナジウムなどの活性成分を担持した、ハニカム形状の触媒成形物が工業的に使用されており(特許文献1~3)、Vの価数とNOXの変換率との関係性ついての研究も行われている(非特許文献1~5)。
近年では、ボイラー、ごみ焼却炉等の排ガス中の窒素酸化物を除去する触媒としても使用され、ダイオキシンの発生を抑制するという観点から、約200℃以下での運転が望まれており、SOX存在下でも活性の高い排ガス処理触媒の需要が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-079683号公報
【特許文献2】特開2015-182067号公報
【特許文献3】特開2013-091045号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Geert Silversmit et al., Determination of the V2p XPS binding energies for different vanadium oxidation states(V5+toV6+), J. Electron Spectroscopy and Related Phenomena, 2004, 135(2-3), 167-175.
【非特許文献2】Geert Silversmit et al., An XPS study on the surface reduction of V2O5(001) induced by Ar+ion bombardment, Surface Science, 2006, 600(17), 3512-3517.
【非特許文献3】Xuteng Zhao et al., A relationship between the V4+ /V5+ratio and the surface dispersion, surface acidity, and redox performance of V2O5-WO3/TiO2 SCR catalysts, RSC Advances, 2018, 8, 31081-31093.
【非特許文献4】Jiaoyan Zhou et al., Manipulating Behaviors from Heavy Tungsten Doping on interband Electronic Transition and Orbital Structure Variation of Vanadium Dioxide Films, ACS Appl. Mater. Interfaces, 2018, 10(36), 30548-30557,
【非特許文献5】Jihene Arfaoui et al., A new V2O5 -MoO3 -TiO2 -SO42- nanostructured aerogel catalyst for diesel DeNO x technology, New Journal of Chemistry, Royal Society of Chemistry, 2020, 44 (37), pp.16119-16134
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、SOX存在下でも窒素酸化物の除去効率の高い排ガス処理触媒およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の[1]~[4]である。
[1]バナジウムおよびモリブデンを含む複合酸化物がチタン酸化物を含む担体の表面に固着し、XPSにおいて、CaとSの表面原子濃度の比(Ca/S)が0.6~2となる、排ガス処理触媒。
[2]3価、4価および5価のバナジウムと6価のモリブデンとを含むバナジウムおよびモリブデンの混合原子価化合物からなる前記複合酸化物である、上記[1]に記載の排ガス処理触媒。
[3]前記触媒は、Ca化合物および/またはCaを含有する化合物または混合物とアクリレート系ラテックスとを含む、上記[1]または[2]のいずれかに記載の排ガス処理触媒。
[4]1)水、硫酸、バナジウム原料、モリブデン原料および錯化剤を混練して母液を調製する工程、
2)チタン酸化物粉末と前記母液とを混練して混練物を調製し、該混練物に沈殿剤を混練して、バナジウムおよびモリブデンの共沈物が前記チタン酸化物粉末の表面に固着した、さらにCaを含む成形用混練体を得る工程、
3)前記成形用混練体を成形して成形体を得る工程、
4)前記成形体を焼成して、バナジウムおよびモリブデンの複合酸化物が前記チタン酸化物粉末の表面に固着した排ガス処理触媒を得る工程、
を含む排ガス処理触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の排ガス処理触媒は、SOX存在下でも高い窒素酸化物除去効率を維持する排ガス処理触媒である。また、NOXの選択還元活性が高いので、高温域のみならず、約200℃以下の低温域であっても効率よくNOXを除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1で得られた排ガス処理触媒のXPSスペクトル(Ca,S)である。
【
図2】実施例1で得られた排ガス処理触媒のSEM-EDSマッピング画像である。
【
図3】比較例1で得られた排ガス処理触媒のXPSスペクトル(Ca,S)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0010】
<本発明の排ガス処理触媒>
本発明の排ガス処理触媒は、バナジウムおよびモリブデンを含む複合酸化物がチタン酸化物を含む担体の表面に固着していて、XPSにおいて、CaとSの表面原子濃度の比(Ca/S)が0.6~2となる、排ガス処理触媒である。
【0011】
バナジウムおよびモリブデンの複合酸化物は、3価、4価および5価のバナジウムと6価のモリブデンとを含む混合原子価化合物からなることが好ましい。この本発明の排ガス処理触媒の表面を、下記の実施例に記載するX線光電子分光測定(XPS)によって分析することで、これらの価数のバナジウムおよびモリブデンを含んでいる複合酸化物であることを確認できる。
【0012】
ここでいうバナジウムおよびモリブデンの複合酸化物は、チタン酸化物を含む担体の表面と固着している。これは、バナジウム、モリブデンおよびチタンが同一の結晶構造中に混在している複合酸化物とは異なるものであり、あくまでバナジウムおよびモリブデンの複合酸化物が酸素を介してチタン酸化物を含む担体の表面に固着している。これにより、複合酸化物の相とチタン酸化物の相が明確に区別される。
【0013】
Ca化合物を加えることで、前記複合酸化物の酸素を介してチタン酸化物を含む担体の表面に固着しているバナジウムおよびモリブデンの複合酸化物の状態が安定化される。
【0014】
これら金属酸化物とCa、Sとの関係性をSEM-EDSマッピングにて確認した。
【0015】
前記複合酸化物は、触媒基準でバナジウムがV2O5換算で好ましくは3.0~10.0質量%、より好ましくは3.0~8.0質量%含有し、モリブデンがMoO3換算で好ましくは3.0~20.0質量%、より好ましくは3.0~8.0質量%含有している。
【0016】
本発明の排ガス処理触媒は、バナジウムとモリブデンを好適な活性種の酸化物状態でチタン上に固着化したものである。また、本発明の排ガス処理触媒は、後述する実施例に示すXPSによる測定において、CaとSの表面原子濃度の比(Ca/S)が0.6~2となる。
【0017】
従来、比表面積が大きい排ガス処理触媒は、NOX選択還元活性が良好であることが知られている。これに対し、本発明の排ガス処理触媒は、比表面積が小さくても、良好なNOX選択還元活性を示す。具体的には、100m2/g未満であっても、50m2/g以上95m2/g以下の範囲であっても、良好なNOX選択還元活性を示す。
【0018】
本発明の排ガス処理触媒は、バナジウムおよびモリブデンの複合酸化物以外の成分を含んでいてもよい。例えば、バナジウムおよびモリブデン以外の成分として、タングステン、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、銀、金、パラジウム、イットリウム、セリウム、ネオジム、インジウム、イリジウム、およびアンチモンなどの金属成分を含んでいてもよい。これらは助触媒として触媒性能に影響を与え、その含有量(金属酸化物換算)は3質量%以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の排ガス処理触媒は、硫黄を含んでいる。硫黄の含有量(SO4換算)は、0.1質量%以上5質量%以下の範囲にあることが好ましく、0.5質量%以上4質量%以下の範囲にあることがより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下の範囲にあることが特に好ましい。本発明の排ガス処理触媒に含まれる硫黄は、バナジウムのバンド構造に影響を与え、NOX選択還元活性にポジティブな影響を与える。
【0020】
本発明の排ガス処理触媒はCa化合物および/またはCaを含有する化合物またはそれらの混合物を含んでいる。Ca化合物および/またはCaを含有する化合物または混合物の含有量は1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
ここでCa化合物として、例えば炭酸カルシウムや硝酸カルシウムが挙げられる。
また、Caを含有する化合物として、例えばCaを含む補強材や可塑剤(ガラス繊維やシランカップリング剤)が挙げられる。
【0021】
これらの成分以外にも成型するにあたり、添加剤を加えてもよい。添加剤としては、補強材や可塑剤が挙げられる。
添加剤として、シランカップリング剤、ガラス繊維、シリカ、アルミナ等の無機成分を含んでいてもよい。これらの成分は、排ガス処理触媒の成形性を高め、その強度を維持する働きがある。
さらに添加剤としてラテックスを加えることが好ましく、アクリレート系ラテックスを加えることがより好ましい。該添加剤とシランカップリング剤、ガラス繊維を加えることで、バナジウムとモリブデンの好適な酸化物状態で、チタン上に高分散状態で固着できる。このことによって、触媒性能を高めることに寄与する。
添加剤として補強材や可塑剤を用いる場合、本発明の排ガス処理触媒の全量に対する補強材および可塑剤の合計の含有率は5~30質量%であることが好ましい。また、5~15質量%がより好ましい。
添加剤としてラテックス、好ましくはアクリレート系ラテックス(例えば濃度が45%のもの)を用いる場合、本発明の排ガス処理触媒を製造する際の原料の全量に対するラテックス(好ましくはアクリレートラテックス)の含有率は0.02~5.0質量%であることが好ましい。また、0.05~1.0質量%がより好ましい。
【0022】
本発明の排ガス処理触媒は、Ca化合物および/またはCaを含有する化合物またはそれらの混合物とアクリレート系ラテックスとを含むことが好ましい。
【0023】
本発明の排ガス処理触媒の形状は、ペレット、またはハニカム等の従来公知の形状を取ってよく、ハニカムであることが好ましい。
貫通孔の長手方向(貫通方向)に対して直角方向の断面の形状が正方形のハニカムを例に挙げて説明すると、ハニカムの外径(その断面の一片の長さ)が、30mm以上300mm以下の範囲にあることが好ましく、50mm以上200mm以下の範囲にあることがより好ましい。
ハニカムの長さ(貫通孔の長手方向(貫通方向)の長さ)は、100mm以上3000mm以下の範囲にあることが好ましく、300mm以上1500mm以下の範囲にあることがより好ましい。
ハニカムの貫通孔(以下、セルピッチということがある)は、断面の等面積円相当径が1mm以上15mm以下の範囲にあることが好ましく、2mm以上10mm以下の範囲にあることがより好ましい。
ハニカムの隔壁厚は、0.1mm以上2mm以下の範囲にあることが好ましく、0.1mm以上1.5mm以下の範囲にあることがより好ましい。
ハニカムの開口率は、60%以上85%以下の範囲にあることが好ましく、70%以上85%以下の範囲にあることがより好ましい。なお、開口率とはハニカム触媒の反応排ガス流速方向の断面積から、触媒面積が占めている面積を差し引いた(触媒が存在しない)面積の比率と定義するものとする。
ハニカムの形状がこの範囲にあると、ハニカム構造体の強度を維持しつつ、単位体積当たりのNOX選択還元活性が高くなりやすい。
【0024】
本発明の排ガス処理触媒は、NOXを含有する排ガス、特にボイラー、またはごみ焼却炉の排ガスなど、NOXやSOXを含有し、重金属やダストを含有する排ガスに、アンモニアなどの還元剤を添加して接触還元するNOX除去法に好適に使用される。また、排ガス処理触媒の使用条件は、通常の排ガス処理条件が採用され、具体的には、反応温度は150℃以上400℃以下で使用できる。特に、本発明の排ガス処理触媒は、170℃以上270℃以下の温度域で高い活性を示し、特に、170℃以上200℃以下の温度域において、良好なNOX選択還元活性を示す。
【0025】
<本発明の排ガス処理触媒の製造方法>
本発明の排ガス処理触媒の製造方法を以下に説明する。
本発明の排ガス処理触媒は、例えば、以下の工程を備える製造方法を用いて調製することができる。
1)水、硫酸、バナジウム原料、モリブデン原料および錯化剤を混練して母液を調製する工程。
2)チタン酸化物粉末と前記母液とを混練して混練物を調製し、該混練物に沈殿剤を混練して、バナジウムおよびモリブデンの共沈物が前記チタン酸化物粉末の表面に固着した、さらにCaを含む成形用混練体を得る工程。
3)前記成形用混練体を成形して成形体を得る工程。
4)前記成形体を焼成して、バナジウムおよびモリブデンの複合酸化物が前記チタン酸化物粉末の表面に固着した排ガス処理触媒を得る工程。
【0026】
以下、各工程について詳述する。
<母液を調製する工程>
母液を調製する工程では、水に、バナジウム原料、モリブデン原料、錯化剤および硫酸を溶解して母液を調製する。ここで、バナジウムおよびモリブデンは、複合酸化物を作るための原料となる。錯化剤は、バナジウムまたはモリブデンイオンに配位して、錯体を形成する。これらの原料を水に溶解することで、前記母液を調製することができる。
【0027】
バナジウムおよびモリブデンの原料は、可溶性の塩を用いることが好ましい。
例えば、バナジウム原料としては、バナジン酸塩、硫酸バナジウム、または塩化バナジウム等を用いることが好ましく、特にメタバナジン酸アンモニウムを用いることが好ましい。また、バナジウム酸化物を酸で溶解してもよい。
モリブデン原料としては、モリブデン酸塩、硫酸モリブデン、または塩化モリブデン等を用いることが好ましく、特にモリブデン酸アンモニウムを用いることが好ましい。また、モリブデン酸化物を酸で溶解してもよい。
また、これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、バナジウムおよびモリブデンの原料の添加量は、最終的に得られる排ガス処理触媒の組成に合わせて適宜調整される。
【0028】
錯化剤は、アミンおよびヒドロキシ基を有する化合物が好ましく、アルカノールアミンであることがより好ましく、エタノールアミンが特に好ましい。これらの錯化剤は、母液中でバナジウムイオンまたはモリブデンイオンに配位して錯体を形成し、安定化させる働きを有する。したがって、錯化剤は、バナジウムおよびモリブデン原料を水に溶解した後で添加することが好ましい。
【0029】
このとき、錯化剤の添加量は、バナジウムおよびモリブデンの1モルに対して、0.1モル以上6モル以下の範囲にあることが好ましく、0.5モル以上3モル以下の範囲にあることがより好ましい。このように、錯体を形成するために必要な量の錯化剤を加えることで、バナジウムおよびモリブデンイオンは安定化する。
【0030】
硫酸の添加量は、チタンの1モルに対して、0.001モル以上0.1モル以下の範囲にあることが好ましく、0.01モル以上0.05モル以下の範囲にあることがより好ましい。
【0031】
この母液を調製する工程では、他の可溶性成分を添加してもよい。例えば、前述の助触媒成分となる成分を含有した原料を溶解してもよい。
【0032】
<成形用混練体を得る工程>
本工程では、前述の母液を調製する工程で調製した母液とチタン酸化物を含む粉末とを混練して、チタン酸化物を含む担体を調製する。チタン酸化物を含む粉末は、予め酸により表面改質を行っておくことが好ましい。ここで用いる酸としては、無機酸、有機酸いずれでもよく、例えばクエン酸、酢酸、硝酸、リン酸、硫酸などが挙げられる。
【0033】
チタン酸化物を含む粉末はチタン酸化物のみでも良いし、チタン酸化物のほかにSiやMoなどを含んでも良い。
【0034】
混練物には、Ca化合物および/またはCaを含有する化合物またはそれらの混練物を含有させる。混練物におけるCa化合物および/またはCaを含有する化合物または混練物の含有量は1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
ここでCa化合物として、例えば炭酸カルシウムや床ンカルシウムが挙げられる。
また、Caを含有する化合物として、例えばCaを含む補強材や可塑剤(ガラス繊維やシランカップリング剤)が挙げられる。
【0035】
混練物にはラテックスを含有させることが好ましい。ラテックスはアクリレート系ラテックスであることが好ましい。バナジウムとモリブデンを好適な酸化物状態で、チタン上に高分散状態で固着でき、その結果、触媒性能を高めることができるからである。
混練物におけるラテックスの含有率は0.02~5.0質量%であることが好ましい。また、0.05~1.0質量%がより好ましい。
【0036】
混練物には、さらに別に、本発明の排ガス処理触媒が含んでもよい補強材や可塑剤等の添加剤を含有させてもよい。具体的には、ガラス繊維、シリカ、アルミナ等の無機成分を含有させることが好ましい。無機成分を含有させると、排ガス処理触媒の成形性を高まり、強度が高まる傾向がある。
添加剤として補強材や可塑剤を用いる場合、混錬物に対する補強材および可塑剤の合計の含有率は5~30質量%であることが好ましい。また、5~15質量%がより好ましい。
【0037】
混練方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ニーダー、ハイスピードミキサー、またはボールミル等を用いることができる。これらの方法は、母液とチタン酸化物を含む粉末の量によって適宜選択される。粘土状になって装置に負荷がかかる場合は、ニーダー、ハイスピードミキサーを用いることが好ましい。
【0038】
その後、前記チタン酸化物を含む担体と沈殿剤とを混練して、バナジウムおよびモリブデンの共沈物が前記チタン酸化物を含む担体の表面に固着した成形用混練体を調製する。ここでは、前記混練物中に含まれる母液成分が中和され、バナジウムおよびモリブデンの共沈物が生成する。この共沈物がチタン酸化物を含む担体の表面に固着し成型用混練体を得る。
【0039】
沈殿剤は、従来公知のものを用いることができる。例えば、炭酸ソーダ、ソーダ灰、およびアンモニア水等の沈殿剤を使用することができる。沈殿剤の添加量は、前記混練物に含まれる母液のpHが6以上9以下の範囲となるように適宜調整される。前記チタン酸化物を含む担体が粘土状でpHの測定が困難である場合は、事前に母液を中和するために必要な沈殿剤の量を実験で確認し、その添加量を調整すればよい。前記チタン酸化物を含む担体が粘土状でない場合は、水分調整や、バインダー添加等を行い、成形に適した成形用混練体に調整する。
【0040】
<成形体を得る工程>
成形体を得る工程では、前記成形用混練体を成形して成形体を調製する。ペレット、またはハニカムといった従来公知の形状に成形することができる。排ガス処理触媒という用途においては、ハニカムに成形することが好ましい。
成形方法については、従来公知の方法を使用することができ、例えば、押出成形機を用いてペレットやハニカムに成形することができる。成形体は、ひび割れ等が起きないように従来公知の方法で乾燥するとよい。
前述の本発明の排ガス処理触媒が含んでもよい補強材や可塑剤等の添加剤を成形体用混練体と共に成形することで、成形体内に添加剤を含有させてもよい。
【0041】
<排ガス処理触媒を得る工程>
排ガス処理触媒を得る工程では、前記成形体を焼成して、バナジウムおよびモリブデンの複合酸化物がチタン酸化物を含む担体の表面と固着した排ガス処理触媒を調製する。焼成方法については、従来公知の方法を使用することができる。例えば、電気炉、およびガス炉等の加熱炉を用いて大気中で焼成する方法を使用することができる。焼成温度は、300℃以上500℃以下が好ましい。焼成時間は、焼成温度にもよるが、概ね1時間以上48時間以下の範囲であればよい。
【実施例0042】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は実施例などの内容に何ら限定されるものではない。
【0043】
[測定方法]
本願で採用した各測定方法について以下に記す。
【0044】
[1]組成
実施例および比較例にて得られた排ガス処理触媒を粉末状にして、評価用試料を調整した。これを酸で溶解した溶解液を準備し、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(装置名:ICPS-8100)により、各種成分の組成を算出した。
【0045】
[2]バナジウムの価数およびカルシウム、硫黄の表面原子濃度の算出
実施例および比較例にて得られた排ガス処理触媒の反応面となる表面(ペレットであれば外表面、ハニカムであれば隔壁の外表面)を測定できるように破片状にして、評価用試料を調製した。これを試料台にセットして、以下の条件でX線光電子分光測定(XPS)を行った。この測定から得られるスペクトルを分析し、バナジウムの価数の判断及びカルシウムと硫黄の表面原子濃度を算出した(以下にピーク範囲を示す)。
V5+:517.20eV±0.2eV
V4+:515.84eV±0.2eV
V3+:515.29eV±0.2eV
Ca 2p: 348eV±2eV
S 2p: 170eV±2eV
<測定条件>
XPS測定はThermoFisherのESCALAB220IXLを用い、AlをX線源として使用し、ピーク位置はC1SのC-Cの結合を284.8eVとして基準補正した。評価用試料を装置にセットし高真空に達した事を確認したのち、加速電圧10kV、エミッション電流10mA、スキャン回数30回の条件で測定した。
<算出条件>
スキャン積算後にVに関して装置内臓の解析ソフトAVANTAGEを使用しピークの分離を行い、V3+、V4+、V5+のピークの有無を確認した。
また、同じくCaとSのピークについても上記各ピーク範囲で検出されたピーク面積から表面原子濃度を算出した。
【0046】
[3]強度
実施例1~3および比較例1~2で得られた触媒から75mm×75mmの大きさの立方体形状を切り出した後、ハニカム貫通孔の貫通方向に垂直な方向に圧縮し、触媒が完全に破壊した時の圧力を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
[4]比表面積
実施例および比較例にて得られた排ガス処理触媒を粉砕し、評価用試料を調製した。この評価用試料(0.2g)を測定セルに入れ、窒素ガス気流中、300℃で60分間の脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させた。次に、上記混合ガスを流しながら試料の温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、試料の比表面積を測定した。
【0048】
[5]SEM-EDS測定
実施例にて得られた脱硝触媒の表面を、以下の条件でSEM-EDS(エネルギー分散型X線分光解析)測定した。
<測定条件>
SEM測定はJEOLのJSM6010LAを用い、WをX線源として使用した。実施例にて得られた脱硝触媒を破片状に加工し、脱硝反応面となる表面(ペレットであれば外表面、ハニカムであれば隔壁の外表面)を測定した。加速電圧を20kV-15kVに調製し、SSを4nmに調整する。その後、150万倍まで拡大し、分析位置をプローブトラッキングし、測定位置をトレースできるようにEDS-ライン分析を行った後、ZAF法による組成変換を行った。
<算出方法>
得られたデータからTi、V、Mo、Ca、Sの面分析結果を抽出しPhotoshopで重ね書きを行ってそれぞれの位置関係を解析した。
【0049】
[6]脱硝性能(選択的還元触媒(SCR)活性)
実施例および比較例にて得られた排ガス処理触媒を以下の触媒形状に切り出して、評価用試料を調製した。これを流通式反応器に充填し、脱硝率を評価した。具体的には、以下の条件で測定された触媒接触前後のNOX濃度から以下の式を用いて算出した値を、脱硝率とした。また、脱硝率は下記ガス組成1のガスを3時間流通させた直後の脱硝率を「初期脱硝率」とし、その後、下記ガス組成2のガスを100時間流通させた直後の脱硝率を「加速劣化試験後脱硝率」とした。なお、表1においては「初期脱硝率」を「脱硝性能(150℃K値)」と記し、「加速劣化試験後脱硝率」を「耐SOX性能」と記した。
なお、触媒接触前後のガス中の窒素酸化物NOXの濃度は、化学発光式の窒素酸化物分析計(株式会社アナテック・ヤナコ製、ECL-88AO)にて測定した。
脱硝率(%)=[接触前ガス中のNOX(ppm)-接触後ガス中のNOX(ppm)]/接触前ガス中NOX(ppm)×100
<試験条件>
・触媒形状:4×4目、長さ286mm
・反応温度:150℃
・反応時間:100時間
・SV:18528.39h-1
・ガス組成1:NOX=200ppm、NH3=200ppm、O2=5%、H2O=10%、N2=バランス
・ガス組成2:NOX=200ppm、NH3=200ppm、O2=5%、H2O=10%、SO2=80ppm、N2=バランス
【0050】
[実施例1]
<排ガス処理触媒用二酸化チタン含有粉末の調製(a)>
硫酸法による二酸化チタンの製造工程より得られる硫酸チタン溶液を熱加水分解して、TiO2濃度換算30質量%のメタチタン酸スラリーを得た。このメタチタン酸スラリーを所定量取り出し、還流器付撹拌槽に仕込み、これに15質量%アンモニア水を加えてpHを9.5に調整した後、シリカゾルS-20L(日揮触媒化成(株)製)を所定量投入し、95℃で1時間に亘り十分な撹拌を行いつつ加熱熟成した。その後、冷却して該スラリーを取り出し、濾過、脱水、洗浄し、該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを400℃で5時間焼成し、粉砕することで、SiO2/TiO2重量比=10%/90%の酸化チタン含有粉末の調製(a)を得た。
【0051】
<母液1の調製工程>
水を6000g、錯化剤としてモノエタノールアミンを1359g、メタバナジン酸アンモニウム(新興化学社製:V2O5酸化物濃度78質量%)を2544g準備した。これらを混練した後、80~90℃に昇温し2時間撹拌を続けた。これを40~60℃に冷却し、モリブデン酸アンモニウム(太陽鉱工社製:MoO3酸化物濃度81.5質量%)2233gを添加した後、5分間撹拌を続けた。その後、硫酸(濃度:25質量%)3654gを添加して、バナジウムおよびモリブデンを含む母液1を得た。
【0052】
<成形用混練体1を得る工程>
二酸化チタン含有粉末aを(TiO2=90質量%、SiO2=10質量%、比表面積(SA)=150m2/g、酸化物濃度95質量%))18920gとアンモニア水(濃度:15質量%)を8276g添加し、ニーダーで10分間混練した。その後、炭酸カルシウムを1150g添加し、構造規制材として硝子繊維3000gを添加して10分間混練した。その後45%濃度のアクリレート系ラテックスであるNipol LX874(日本ゼオン社製)を水で25倍希釈し4216gを添加して、前述した母液1を徐添加し30分間混練した。その後、残留アミンの中和剤としてカルボキシメチルセルロース(ニチリン化学社製;アンモニウムCMC)を703g添加し10分間混練した。加温により水分を飛ばしながら30分間混練した。無水クエン酸(扶桑化学社製)2272gを添加し、ニーダーで20分間混練した後、水調を行い、成形用混練体1を得た。
【0053】
<排ガス処理触媒1を得る工程>
ハニカム押し出し用ダイスを備えたスクリュー付真空押出機を用い、前述の工程で得られた成形用混練体1をハニカムに成形した。このハニカムを十分時間をかけて乾燥した後、60℃の熱風で通風しながら2日間乾燥後、ハニカム貫通孔の中心軸方向(長手方向)の両端を切り揃え電気炉で、大気雰囲気下、450℃、5時間焼成してセルピッチ2.8mm、壁厚0.5mm、の排ガス処理触媒1を得た。この排ガス処理触媒について、前述の測定を行った。結果を表1に示す。
【0054】
図1として、実施例1で得られた排ガス処理触媒のXPSスペクトル(Ca)、(S)を示す。
【0055】
また、
図2として、実施例1で得られた排ガス処理触媒の走査型電子顕微鏡(SEM)EDS画像を示す。
図2(a)は3000倍のSEM画像である。
図2(b)はCaの分布を示しており、
図2(c)はMoの分布を示しており、
図2(d)はSの分布を示しており、各図において黒に近いほど、各成分の濃度が高いことを意味している。また、
図2(e)はSの分布とCaの分布を重ねたもの、
図2(f)はSの分布とMoの分布とを重ねたものである。
この画像から、CaとSの分布と触媒成分の分布の関係性があるように見える。
【0056】
[実施例2]
<母液2の調製工程>
水を6000g、錯化剤としてモノエタノールアミンを1359g、メタバナジン酸アンモニウム(新興化学社製:V2O5酸化物濃度78質量%)を2544g準備した。これらを混練した後、80~90℃に昇温し2時間撹拌を続けた。これを40~60℃に冷却し、モリブデン酸アンモニウム(太陽鉱工社製:MoO3酸化物濃度81.5質量%)2233gを添加した後、5分間撹拌を続けた。その後、硫酸(濃度:25質量%)3654gを添加して、バナジウムおよびモリブデンを含む母液2を得た。
【0057】
<成形用混練体2を得る工程>
二酸化チタン(Tronox社製:G5:TiO2酸化物濃度82質量%)20766gと無水クエン酸(扶桑化学社製)2272gと水2000gをニーダーで10分間混練した。その後前述した母液2を添加し30分間混練した。その後残留アミンの中和剤としてカルボキシメチルセルロース(ニチリン化学社製;アンモニウムCMC)を703g添加し10分間混練した。得られた混練物に沈殿剤としてアンモニア水(濃度:15質量%)を8276g添加し、加温により水分を飛ばしながら30分間混練した。その後、構造規制材として硝子繊維3000gを添加して10分間混練した後、45%濃度のアクリレート系ラテックスであるNipol LX874(日本ゼオン社製)を水で25倍希釈し4216gを添加して20分間混練した後、炭酸カルシウムを1150g添加し成形用混練体2を得た。
【0058】
<排ガス処理触媒2を得る工程>
ハニカム押し出し用ダイスを備えたスクリュー付真空押出機を用い、前述の工程で得られた成形用混練体2をハニカムに成形した。このハニカムを十分時間をかけて乾燥した後、60℃の熱風で通風しながら2日間乾燥後、ハニカム貫通孔の中心軸方向(長手方向)の両端を切り揃え電気炉で、大気雰囲気下、450℃、5時間焼成してセルピッチ2.8mm、壁厚0.5mm、の排ガス処理触媒2を得た。この排ガス処理触媒について、前述の測定を行った。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例3]
<排ガス処理触媒用二酸化チタン含有粉末の調製(b)>
硫酸法による二酸化チタンの製造工程より得られる硫酸チタン溶液を熱加水分解して、TiO2濃度換算30%のメチタン酸スラリーを得た。このメタチタン酸スラリーを所定量取り出し、還流器付撹拌槽に仕込み、これに15重量%アンモニア水を加えてpHを9.5に調整した後、S-20L(日揮触媒化成(株)製)を所定量投入し、95℃で1時間に亘り十分な撹拌を行いつつ加熱熟成した。その後、冷却して該スラリーを取り出し、濾過、脱水、洗浄し、該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを600℃で5時間焼成し、粉砕することで、SiO2/TiO2質量比=10%/90%の酸化チタン含有粉末の調製(b)を得た。
【0060】
<母液3の調製工程>
水を6000g、錯化剤としてモノエタノールアミンを1359g、メタバナジン酸アンモニウム(新興化学社製:V2O5酸化物濃度78質量%)を2544g準備した。これらを混練した後、80~90℃に昇温し2時間撹拌を続けた。これを40~60℃に冷却し、モリブデン酸アンモニウム(太陽鉱工社製:MoO3酸化物濃度81.5質量%)2233gを添加した後、5分間撹拌を続けた。その後、硫酸(濃度:25質量%)3654gを添加して、バナジウムおよびモリブデンを含む母液3を得た。
【0061】
<成形用混練体3を得る工程>
二酸化チタン含有粉末bを(TiO2=90質量%,SiO2=10質量%,SA=90m2/g,酸化物濃度95%))17925gとアンモニア水(濃度:15質量%)を8276g添加し、ニーダーで10分間混練した。その後、炭酸カルシウムを1150g添加し、構造規制材として硝子繊維3000gを添加して10分間混練した。その後45%濃度のアクリレート系ラテックスであるNipol LX874(日本ゼオン社製)を水で25倍希釈し4216gを添加して、前述した母液3を徐添加し30分間混練した。その後、残留アミンの中和剤としてカルボキシメチルセルロース(ニチリン化学社製;アンモニウムCMC)を703g添加し10分間混練した。加温により水分を飛ばしながら30分間混練した。無水クエン酸(扶桑化学社製)2272gを添加し、ニーダーで20分間混練した後、水調を行い、成形用混練体3を得た。
【0062】
<排ガス処理触媒3を得る工程>
ハニカム押し出し用ダイスを備えたスクリュー付真空押出機を用い、前述の工程で得られた成形用混練体3をハニカムに成形した。このハニカムを十分時間をかけて乾燥した後、60℃の熱風で通風しながら2日間乾燥後、ハニカム貫通孔の中心軸方向(長手方向)の両端を切り揃え電気炉で、大気雰囲気下、450℃、5時間焼成してセルピッチ2.8mm、壁厚0.5mm、の排ガス処理触媒3を得た。この排ガス処理触媒について、前述の測定を行った。結果を表1に示す。
【0063】
[比較例1]
<排ガス処理触媒用二酸化チタン含有粉末の調製(c)>
硫酸法による二酸化チタンの製造工程より得られる硫酸チタン溶液を熱加水分解して、TiO2濃度換算30%のメチタン酸スラリーを得た。このメタチタン酸スラリーを所定量取り出し、還流器付撹拌槽に仕込み、これに15重量%アンモニア水を加えてpHを9.5に調整した後、S-20L(日揮触媒化成(株)製)を所定量投入し、パラタングステン酸アンモニウムを所定量投入し、95℃で1時間に亘り十分な撹拌を行いつつ加熱熟成した。その後、冷却して該スラリ-を取り出し、濾過、脱水、洗浄し、該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを600℃で5時間焼成し、粉砕することで、WO3/SiO2/TiO2重量比=2%/1%/97%の酸化チタン含有粉末の調製(c)を得た。
【0064】
<母液4の作製工程>
水を3000g、錯化剤としてモノエタノールアミンを330g、メタバナジン酸アンモニウムを691.3g準備した。これらを混練した後、80~90℃に昇温し2時間撹拌を続けた。これを40~60℃に冷却し、母液4を調製した。
【0065】
<成形用混練体4を得る工程>
二酸化チタン含有粉末cを(TiO2=97質量%/WO3=2質量%/SiO2=1質量%)18790gと、メタバナジン酸アンモニウム811.1gと、モリブデン酸アンモニウム809.82gと、アンモニア水(濃度:15質量%)とをニーダーで30分間混練した。その後、前述の工程で調製した母液4を添加し、30分間混練した。更に、その後、構造規制材として硝子繊維1710gを添加して10分間混練した。更に、成型助剤となる有機バインダーを300g添加して20分間混練し、成形用混練体4を得た。
【0066】
図3として、比較例1で得られた排ガス処理触媒のXPSスペクトル(Ca)、(S)を示す。
【0067】
<排ガス処理触媒4を得る工程>
ハニカム押し出し用ダイスを備えたスクリュー付真空押出機を用い、前述の工程で得られた成形用混練体4をハニカムに成形した。このハニカムを十分時間をかけて乾燥した後、60℃の熱風で通風しながら2日間乾燥後、ハニカム貫通孔の中心軸方向(長手方向)の両端を切り揃え電気炉で、大気雰囲気下、450℃、5時間焼成してセルピッチ2.8mm、壁厚0.5mm、の排ガス処理触媒4を得た。この排ガス処理触媒について、前述の測定を行った。結果を表1に示す。
【0068】
[比較例2]
<母液5の作製工程>
水を3000g、錯化剤としてモノエタノールアミンを330g、メタバナジン酸アンモニウムを691.3g準備した。これらを混練した後、80~90℃に昇温し2時間撹拌を続けた。これを40~60℃に冷却し、母液5を調製した。
【0069】
<成形用混練体5を得る工程>
二酸化チタン(石原産業社製:MC90: TiO2酸化物濃度95質量%)182900gと、メタバナジン酸アンモニウム1411.99gと、モリブデン酸アンモニウム1889.6gと、アンモニア水(濃度:15質量%)とをニーダーで30分間混練した。その後、前述の工程で調製した母液5を添加し、30分間混練した。更に、その後、構造規制材として硝子繊維1710gを添加して10分間混練した。更に、成型助剤となる有機バインダーを300g添加して20分間混練し、成形用混練体5を得た。
【0070】
<排ガス処理触媒5を得る工程>
ハニカム押し出し用ダイスを備えたスクリュー付真空押出機を用い、前述の工程で得られた成形用混練体5をハニカムに成形した。このハニカムを十分時間をかけて乾燥した後、60℃の熱風で通風しながら2日間乾燥後、ハニカム貫通孔の中心軸方向(長手方向)の両端を切り揃え電気炉で、大気雰囲気下、450℃、5時間焼成してセルピッチ2.8mm、壁厚0.5mm、の排ガス処理触媒5を得た。この排ガス処理触媒について、前述の測定を行った。結果を表1に示す。
【0071】