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特開2023-141056支持層の確認装置、確認システム、確認方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141056
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】支持層の確認装置、確認システム、確認方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   E21B 47/04 20120101AFI20230928BHJP
   E21B 45/00 20060101ALI20230928BHJP
   E21B 11/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
E21B47/04
E21B45/00
E21B11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047186
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】小川 敦
(72)【発明者】
【氏名】森 利弘
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】中里 太亮
(72)【発明者】
【氏名】目時 龍之介
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AB16
2D129AB25
2D129BA01
2D129BA28
2D129BB01
2D129BB05
2D129CB07
2D129CB13
2D129CB15
(57)【要約】
【課題】アースドリル工法による場所打ちコンクリート杭の施工の信頼性を向上する。
【解決手段】支持層の確認装置(20)は、アースドリル工法による施工時にバケット(7)による掘削深度が支持層に到達したかを確認するものである。確認装置には、施工時の掘削データから所定の掘削深度毎に掘削に要するエネルギー指標値を算出する算出部(23)と、前回施工時の掘削データから求められたエネルギー指標値とN値の対応関係を記憶する記憶部(24)と、対応関係に基づいて今回施工時のエネルギー指標値をN値と比較可能な態様で出力する出力部(25)と、が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アースドリル工法による施工時にバケットによる掘削深度が支持層に到達したかを確認するための支持層の確認装置であって、
施工時の掘削データから所定の掘削深度毎に掘削に要するエネルギー指標値を算出する算出部と、
前回施工時の掘削データから求められたエネルギー指標値とN値の対応関係を記憶する記憶部と、
前記対応関係に基づいて今回施工時のエネルギー指標値をN値と比較可能な態様で出力する出力部と、を備えていることを特徴とする支持層の確認装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記対応関係からN値の基準尺度に対応したエネルギー指標値の基準尺度を求めて、今回施工時のエネルギー指標値をエネルギー指標値の基準尺度で示していることを特徴とする請求項1に記載の支持層の確認装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記対応関係からN値に応じた推定エネルギー指標値を求めて、今回施工時のエネルギー指標値を推定エネルギー指標値と比較可能に出力することを特徴とする請求項2に記載の支持層の確認装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記対応関係から今回施工時のエネルギー指標値に応じた疑似N値を求めて、疑似N値をN値の基準尺度で示していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の支持層の確認装置。
【請求項5】
前記出力部は、疑似N値を標準貫入試験結果のN値と比較可能に出力することを特徴とする請求項4に記載の支持層の確認装置。
【請求項6】
エネルギー指標値が所定の掘削深度毎に掘削に要する回転エネルギーであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の支持層の確認装置。
【請求項7】
前記バケットが所定深度だけ掘削して掘削土を地上に排出する工程を1サイクルとしたときに、
前記算出部は、前記バケットで生じる回転トルク値をT(x)、計測間隔で前記バケットが回転した回転角をθ(x)、1サイクルのデータ数をm、1サイクルの掘削長をLとしたときに、掘削時の回転エネルギーETRを次式(1)から算出することを特徴とする請求項6に記載の支持層の確認装置。
【数1】
【請求項8】
施工時に所定のサンプリング間隔で掘削データを取得する取得部と、
施工時の掘削データから有効なデータを取り出すスクリーニング部と、を備え、
前記算出部は、有効なデータから1サイクル毎に掘削に要する回転エネルギーを算出しており、
前記スクリーニング部は、1サイクルの掘削開始点から掘削終了点までに得られるデータのうち、掘削開始点から所定深さを掘削する間に得られたデータと、掘削終了点まで所定深さを掘削する間に得られたデータを除いて有効なデータを取り出していることを特徴とする請求項7に記載の支持層の確認装置。
【請求項9】
iサイクル目に前記バケットによって1mを掘削するのに要する回転エネルギーをETR(i)、iサイクル目の深度に対応する標準貫入試験結果のN値をN(i)としたときに、前記対応関係を示す変換係数αは次式(2)から求められることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の支持層の確認装置。
【数2】
【請求項10】
N値と回転エネルギーを用いて、深度の範囲、土質又はN値の範囲毎に変換係数が求められることを特徴とする請求項9に記載の支持層の確認装置。
【請求項11】
エネルギー指標値が所定の掘削深度毎に掘削に要する積算回転トルクであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の支持層の確認装置。
【請求項12】
前記バケットが所定深度だけ掘削して掘削土を地上に排出する工程を1サイクルとしたときに、
前記算出部は、前記バケットで生じる回転トルク値をT(x)、計測間隔をΔt、1サイクルのデータ数をm、1サイクルの掘削長をLとしたときに、掘削時の積算回転トルクSTRを次式(3)から算出することを特徴とする請求項11に記載の支持層の確認装置。
【数3】
【請求項13】
施工時に所定のサンプリング間隔で掘削データを取得する取得部と、
施工時の掘削データから有効なデータを取り出すスクリーニング部と、を備え、
前記算出部は、有効なデータから1サイクル毎に掘削に要する積算回転トルクを算出しており、
前記スクリーニング部は、1サイクルの掘削開始点から掘削終了点までに得られるデータのうち、掘削開始点から所定深さを掘削する間に得られたデータと、掘削終了点まで所定深さを掘削する間に得られたデータを除いて有効なデータを取り出していることを特徴とする請求項12に記載の支持層の確認装置。
【請求項14】
iサイクル目に前記バケットによって1mを掘削するのに要する積算回転トルクをSTR(i)、iサイクル目の深度に対応する標準貫入試験結果のN値をN(i)としたときに、前記対応関係を示す変換係数αc2は次式(4)から求められることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の支持層の確認装置。
【数4】
【請求項15】
N値と積算回転トルクを用いて、深度の範囲、土質又はN値の範囲毎に変換係数が求められることを特徴とする請求項14に記載の支持層の確認装置。
【請求項16】
今回施工時のエネルギー指標値の出力結果から掘削深度の支持層への到達を判定する判定部を備えていることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の支持層の確認装置。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の支持層の確認装置と、
アースドリル機に取り付けられて掘削データを検出するセンサと、を備え、
前記センサが前記確認装置に掘削データを出力することを特徴とする支持層の確認システム。
【請求項18】
アースドリル工法による施工時にバケットによる掘削深度が支持層に到達したかを確認するための支持層の確認方法であって、
前回施工時の掘削データから求められたエネルギー指標値とN値の対応関係を設定するステップと、
今回施工時の掘削データから所定の掘削深度毎に掘削に要するエネルギー指標値を算出するステップと、
前記対応関係に基づいて今回施工時のエネルギー指標値をN値と比較可能な態様で出力するステップと、を有していることを特徴とする支持層の確認方法。
【請求項19】
アースドリル工法による施工時にバケットによる掘削深度が支持層に到達したかを確認するためのプログラムであって、
前回施工時の掘削データから求められたエネルギー指標値とN値の対応関係を設定するステップと、
今回施工時の掘削データから所定の掘削深度毎に掘削に要するエネルギー指標値を算出するステップと、
前記対応関係に基づいて今回施工時のエネルギー指標値をN値と比較可能な態様で出力するステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持層の確認装置、確認システム、確認方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
場所打ちコンクリート杭の構築時にはアースドリル工法等を用いて支持層まで掘削され、この施工過程における支持層確認では掘削時に採取した掘削土とボーリング調査結果(土質柱状図、土質サンプル)を比較することが基本になっている。掘削土は乱れているため、支持層とその上層の土質の変化が小さい地盤では、掘削土の観察によって支持層を確認することが難しい。施工機の振動やケリーバの動き等から支持層を確認する方法もあるが客観的な確認ができない。また、掘削データから掘削深度と回転トルク値の関連性を示す特性曲線から支持層を確認する方法も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-085149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の確認方法では、特性曲線から回転トルク値が急峻に大きくなったときに掘削深度が支持層に到達したと判定される。しかしながら、障害物等の地盤の抵抗以外の要因でも回転トルク値が上昇して支持層を精度よく確認することができない。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、アースドリル工法による場所打ちコンクリート杭の施工の信頼性を向上できる支持層の確認装置、確認システム、確認方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の支持層の確認装置は、アースドリル工法による施工時にバケットによる掘削深度が支持層に到達したかを確認するための支持層の確認装置であって、施工時の掘削データから所定の掘削深度毎に掘削に要するエネルギー指標値を算出する算出部と、前回施工時の掘削データから求められたエネルギー指標値とN値の対応関係を記憶する記憶部と、前記対応関係に基づいて今回施工時のエネルギー指標値をN値と比較可能な態様で出力する出力部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の支持層の確認装置は、今回施工時の掘削データから求められたエネルギー指標値がN値と比較可能な態様で出力されるため、掘削深度が支持層に到達したか否かを精度よく確認することができる。アースドリル工法による場所打ちコンクリート杭の施工の信頼性を高めることができる。また、掘削深度の変化に対するエネルギー指標値の変化から地盤の層序も把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の支持層の確認システムの模式図である。
図2】本実施形態の支持層の確認装置の機能ブロック図である。
図3】本実施形態の施工時間とバケットの深度の関係を示す図である。
図4】本実施形態の施工時間とバケットの深度の関係を示す拡大図である。
図5】本実施形態の回転エネルギーと深度の関係を示す図である。
図6】本実施形態の疑似N値と深度の関係を示す図である。
図7】本実施形態の杭伏図である。
図8】本実施形態の支持層の確認方法を示すフロー図である。
図9】変形例の積算回転トルクと深度の関係を示す図である。
図10】変形例の疑似N値と深度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態の支持層の確認システムについて説明する。図1は、本実施形態の支持層の確認システムの模式図である。図2は、本実施形態の支持層の確認装置の機能ブロック図である。図3は、本実施形態の施工時間とバケットの深度の関係を示す図である。図4は、本実施形態の施工時間とバケットの深度の関係を示す拡大図である。図5は、本実施形態の回転エネルギーと深度の関係を示す図である。図6は、本実施形態の疑似N値と深度の関係を示す図である。
【0010】
図1に示すように、支持層の確認システムはアースドリル機1に搭載されている。アースドリル機1は、ケリーバ6の下端部に取り付けたバケット7を回転させて地盤を掘削し、バケット7に取り込んだ掘削土を引き上げて地上に排出する作業機械である。アースドリル機1の下部にはクローラ式の走行体2が設けられており、前後の車輪に掛け渡されたクローラによって不整地での施工機の移動を可能にしている。走行体2の上部には旋回体3が水平方向に旋回可能に設けられており、旋回体3の前部右側には各種操作レバー等が設けられた運転席4が形成されている。
【0011】
旋回体3の前部左側にはブーム5が起伏可能に設けられており、ブーム5の先端のトップシーブから垂れ下がった主巻ロープの先端にケリーバ6が接続されている。主巻ロープの基端は運転席4の後方の主巻ウィンチ(不図示)に巻き付けられており、主巻ウィンチの駆動によってケリーバ6が昇降される。ブーム5の基端側にはフロントフレーム8を介してケリードライブ9が支持されており、ケリードライブ9にケリーバ6が挿し込まれている。ケリードライブ9によってケリーバ6が回転されることで、ケリーバ6の下端のバケット7によって地盤が掘削される。
【0012】
アースドリル機1には、バケット7の深度を検出するエンコーダ11と、ケリーバ6のスラスト力を検出する第1の油圧センサ12と、ケリーバ6の回転トルク値を検出する第2の油圧センサ13と、ケリーバ6の回転角を検出する角度センサ14と、が設けられている。エンコーダ11は、例えば主巻ウィンチに取り付けられ、第1、第2の油圧センサ12、13及び角度センサ14は、例えばケリードライブ9に取り付けられている。角度センサ14は、例えば歯車状のセンサディスクと近接スイッチによって、近接スイッチから出力された歯部分と歯以外の部分の距離の違いにより生じる電圧変化によってバケット7の回転角が検出される。
【0013】
一般に、アースドリル工法では、ボーリング調査時に採取した土質サンプルと掘削時に採取した掘削土を目比べることで掘削深度が支持層に到達したかが判断される。しかしながら、土質の違いを目視によって判断するのには限界がある。このため、本実施形態のアースドリル機1の運転席4に支持層の確認装置20が設置され、確認装置20によって各センサ11-14から出力された掘削データが分析される。そして、掘削時の回転エネルギーとボーリング調査時のN値を比較可能な態様でモニタ17に表示させて、掘削深度が支持層に到達したことを精度よく確認可能にしている。なお、N値とは、標準貫入試験によって求められる地盤の強度等を求める試験結果(数値)である。
【0014】
なお、本実施形態では運転席4に支持層の確認装置20が設置されているが、確認装置20が事務所等の別の場所に設置されていてもよい。例えば、アースドリル機1の各センサ11-14から事務所のデータロガー(不図示)に掘削データが送られて、データロガーに格納された掘削データが確認装置20によって分析されてもよい。また、アースドリル機1の各センサ11-14から運転席4のポータブル計測機(不図示)に掘削データが出力されて、ポータブル計測機から取り出されたメモリカードの掘削データが確認装置20によって事務所で分析されてもよい。
【0015】
図2に示すように、支持層の確認装置20には、取得部21と、スクリーニング部22と、算出部23と、記憶部24と、出力部25と、が設けられている。取得部21は、施工時に所定のサンプリング間隔で掘削データを取得している。この場合、各センサ11-14からは0.02秒間隔で掘削データが出力されており、この多数の掘削データが取得部21によって0.2秒間隔でサンプリングされている。取得部21によって掘削データが間引きされることで後続の算出処理の負担が軽減されている。なお、所定のサンプリング間隔は適宜変更することが可能である。
【0016】
例えば、図3に示すように、縦軸を深度とし横軸を施工時間とした座標系に0.2秒間隔で掘削データをプロットすると複数の山形状と複数の谷形状が形成される。プロットの山頂部分はバケット7によって地上に掘削土が排出されている期間に取得された掘削データを示しており、プロットの谷底部分はバケット7によって地盤が掘削されている期間に取得された掘削データを示している。このように、バケット7が所定深度だけ掘削した掘削土を地上に排出する工程を1サイクルとしたときに、1サイクルの間に取得された掘削データによって山形状と谷形状が繰り返されている。
【0017】
スクリーニング部22は、施工時の掘削データから有効なデータを取り出している。この場合、1サイクル前の最大深度よりも深くなった地点を掘削開始点とし、現サイクルの掘削によって最大深度になった地点を掘削終了点として、掘削開始点から掘削終了点までに得られたデータがスクリーニング対象になる。1サイクルの掘削開始点から掘削終了点までに得られるデータのうち、掘削開始点から所定深さを掘削する間に得られたデータと、掘削終了点まで所定深さを掘削する間に得られたデータを除いて有効なデータが取り出されている。
【0018】
例えば、図4に示すように、1サイクルの掘削開始点P1から掘削終了点P2までの掘削長をDとする。掘削開始点P1からD/4の深さまでのデータは、1サイクル前の掘削工程において直上の地盤が掘削されたことによる応力解放の影響が含まれるため有効なデータから除外される。3D/4の深さから掘削終了点P2までのデータは、敷均作業等の調整作業の影響が含まれるため有効なデータから除外される。1サイクルの有効掘削長はD/2である。このように、地山の掘削に無関係なデータを除いて、有効なデータが取り出されることで後述する算出処理の精度が向上される。
【0019】
算出部23は、施工時の掘削データの有効なデータから所定の掘削深度毎に掘削に要する回転エネルギーを算出している。この場合、バケット7で生じる回転トルク値をT(x)[kN・m]、計測間隔(本実施形態では0.2秒)でバケット7が回転した回転角をθ(x)[rad]、1サイクルのデータ数をm、1サイクルの掘削長をL[m]としたときに、掘削時の回転エネルギーETRが次式(1)から算出される。これは1サイクルの合計回転エネルギーを1サイクルの掘削長で割った、1mあたりの掘削時に要する回転エネルギーETRを示している。なお、本実施形態ではスクリーニングが実施されるため、1サイクルの掘削長Lとして上記の有効掘削長D/2が入力される。
【数1】
【0020】
記憶部24は、前回施工時の掘削データから求められた回転エネルギーとN値の対応関係を示す変換係数を記憶している。この場合、iサイクル目にバケット7によって1mを掘削するのに要する回転エネルギーをETR(i)、iサイクル目の深度に対応するボーリング調査時の標準貫入試験結果のN値をN(i)としたときに、対応関係を示す変換係数αが次式(2)から求められる。なお、基準杭施工時には前回施工時の掘削データとして過去案件の掘削データを用いて変換係数αが求められる。また、対応関係は、変換係数αに代えて、回転エネルギーとN値の関係がグラフやルックアップテーブル等によって表されてもよい。
【数2】
【0021】
変換係数αは、深度の範囲、土質、N値の範囲毎に求められてもよい。例えば、深度が15[m]未満と15[m]以上で別々の変換係数αが求められてもよいし、土質が粘性土と砂質土で別々の変換係数αが求められてもよいし、N値が30未満と30以上で別々の変換係数αが求められてもよい。また、別々の変換係数の平均値が変換係数αとして求められてもよい。本実施形態ではN値が30以上になるサイクルのN値と回転エネルギーから変換係数αが求められている。すなわち、上記した式(2)ではN値が30以上のiサイクル目の回転エネルギーとN値が用いられる。これにより、変換係数αの変換精度が向上される。
【0022】
出力部25は、変換係数αに基づいて今回施工時の回転エネルギーをN値と比較可能な態様でモニタ17に出力する。この場合、変換係数αからN値の基準尺度に応じた回転エネルギーの基準尺度が求められて、今回施工時の回転エネルギーが回転エネルギーの基準尺度で示されている。次式(3)のx(N値)に対してN値の基準尺度の各目盛が入力されることで、回転エネルギーEN=Xとして回転エネルギーの基準尺度の各目盛が求められる。N値の基準尺度を回転エネルギーの基準尺度に変換することで今回施工時の回転エネルギーとN値が比較可能になっている。
【数3】
【0023】
例えば、図5に示すように、回転エネルギーの基準尺度の目盛400[kN・m・rad/m]がN値の基準尺度の目盛45付近に対応し、回転エネルギーの基準尺度の目盛600[kN・m・rad/m]がN値の基準尺度の目盛65付近に対応している。今回施工時の1サイクル毎に1つの回転エネルギーが算出されて、回転エネルギーの基準尺度上に回転エネルギーがプロットされている。掘削深度19m以上の各プロットの回転エネルギーが500(N値が50)を超えているので、掘削深度が支持層に到達したことを確認することができる。
【0024】
また、変換係数αからボーリング調査時の標準貫入試験結果のN値に応じた推定回転エネルギーが求められて、今回施工時の回転エネルギーが推定回転エネルギーと比較可能にモニタ17に出力される。この場合、上記式(3)のx(N値)に対して所定の深度毎にN値が入力されることで、N値に応じた推定回転エネルギーが求められる。図5に示すように、深度の変化に対する推定回転エネルギーの変化の傾向を参考にして、今回施工時の回転エネルギーの変化に異常な傾向が無いかが確認される。このとき、今回施工時の回転エネルギーが推定回転エネルギーを大幅に下回らないことで支持層が確認される。
【0025】
出力部25は、変換係数αから今回施工時の回転エネルギーに応じた疑似N値を求めて、疑似N値がN値の基準尺度で示されてもよい。次式(4)のETRに今回施工時の回転エネルギーが入力されることで今回施工時の回転エネルギーに応じた疑似N値が求められる。例えば、図6に示すように、今回施工時の1サイクル毎に疑似N値が算出され、N値の基準尺度上に疑似N値がプロットされている。掘削深度19m以上の各プロットの疑似N値が50を超えているので、掘削深度が支持層に到達したことを確認することができる。
【数4】
【0026】
また、疑似N値は標準貫入試験結果のN値と比較可能にモニタ17に出力される。図6に示すように、ボーリング調査時の深度の変化に対する標準貫入試験結果のN値の変化の傾向を参考にして、今回施工時の疑似N値の変化に異常な傾向が無いかが確認される。このとき、今回施工時の疑似N値がボーリング調査時のN値を大幅に下回らないことで支持層が確認される。なお、出力部25は、回転エネルギーの大きさから支持層を確認する出力結果(図5参照)、疑似N値の大きさから支持層を確認する出力結果(図6参照)の少なくとも一方の出力結果をモニタ17に出力可能に形成されていればよい。
【0027】
確認装置20には、今回施工時の回転エネルギーの出力結果から掘削深度の支持層への到達を判定する判定部(不図示)が設けられていてもよい。図5の場合であれば、閾値(例えば、500[kN・m・rad/m])を超える回転エネルギーが数サイクル(例えば、5サイクル)続いた場合に掘削深度が支持層に到達したと判定されてもよい。また、所定区間(例えば、5サイクル分の深度範囲や想定した支持層の深度範囲)の回転エネルギーの平均値が閾値を超えた場合に掘削深度が支持層に到達したと判定されてもよい。図6の場合であれば、閾値(例えば、50)を超える疑似N値が数サイクル(例えば、5サイクル)続いた場合に掘削深度が支持層に到達したと判定されてもよい。また、所定区間(例えば、5サイクル分の深度範囲や想定した支持層の深度範囲)の疑似N値の平均値が閾値を超えた場合に掘削深度が支持層に到達したと判定されてもよい。これにより、掘削深度が支持層に到達したか否かを自動的に判定することができる。
【0028】
確認装置20の各部の処理は、プロセッサを用いてソフトウェアによって実現されてもよいし、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。プロセッサを用いる場合には、プロセッサがメモリに記憶されているプログラムを読み出して実行することで各種処理が実施される。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)が使用される。また、メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体によって構成されている。
【0029】
図7及び図8を参照して、支持層の確認方法について説明する。図7は、本実施形態の杭伏図である。図8は、本実施形態の支持層の確認方法を示すフロー図である。なお、ここでは、図1及び図2の符号を適宜使用して説明する。また、ボーリング調査結果のN値と今回施工時の回転エネルギーに応じた疑似N値が比較される一例について説明する。
【0030】
図7に示すように、敷地内には複数の杭が施工されるが、いずれかの杭を基準杭に設定しなければならない。ボーリング調査位置Bの近くの杭が基準杭19aに設定されることが好ましい。1本目である基準杭19aの施工前には掘削データが検出されていないため、基準杭19aの施工時には過去案件の掘削データを利用して支持層への到達確認が実施される。2本目以降の他の杭19b-19dの施工時には、基準杭19aの施工時に検出された掘削データを利用して支持層への到達確認が実施される。なお、支持層への到達確認には、ボーリング調査で得られた土質区分も参考にされる。
【0031】
図8に示すように、施工対象が基準杭19aの場合には(ステップS01でYes)、過去案件の掘削データから求めた変換係数αが設定される(ステップS02)。施工対象が基準杭19a以外の他の杭19b-19dの場合には(ステップS01でNo)、基準杭施工時の掘削データから求めた変換係数αが設定される(ステップS03)。これらの場合、上記式(2)を用いて、掘削データから算出された回転エネルギーと、ボーリングデータに含まれるN値とから変換係数αが求められている。前回施工時の掘削データから求められた回転エネルギーとN値の対応関係が設定されている。
【0032】
各センサ11-14から確認装置20に掘削データが出力され始め、アースドリル機1によって地盤の掘削が開始される(ステップS04)。取得部21によって所定のサンプリング間隔で掘削データが取得され(ステップS05)、スクリーニング部22によって掘削データから有効なデータが取り出される(ステップS06)。算出部23によって有効なデータから所定の掘削深度毎(1サイクル毎)に掘削に要する回転エネルギーが算出される(ステップS07)。この場合、上記式(1)を用いて、掘削データに含まれる回転トルク値、回転角、1サイクルのデータ数、1サイクルの掘削長から所定の掘削深度毎に回転エネルギーが算出される。
【0033】
次に、出力部25によって所定の掘削深度毎(1サイクル毎)に回転エネルギーから疑似N値が求められる(ステップS08)。この場合、上記式(4)を用いて、回転エネルギーと変換係数αから疑似N値が求められる。さらに、出力部25によって縦軸を深度とし横軸をN値とした座標系に疑似N値とボーリングデータのN値がモニタ17に出力される(ステップS09)。モニタ17に表示された疑似N値の大きさ、疑似N値の変化とボーリングデータのN値の変化の傾向等を参考にして(図6参照)、作業者等によって掘削深度が支持層に到達したかが確認される。
【0034】
掘削深度が支持層に到達していないと判断された場合には、再び地盤が掘削されて確認処理が実施される。掘削深度が支持層に到達していると判断された場合には、掘削穴の拡底部の掘削等が実施される。なお、出力部25によって縦軸を深度とし横軸を回転エネルギーとした座標系に回転エネルギーとN値に応じた推定回転エネルギーがモニタ17に表示されてもよい(図5参照)。また、確認装置20に判定部が設けられている場合には、作業者等によって掘削深度の支持層への到達が判断される代わりに、判定部によって今回施工時の回転エネルギーの出力結果から掘削深度の支持層への到達が自動的に判定されてもよい。
【0035】
以上のように、本実施形態の支持層の確認装置によれば、今回施工時の掘削データから求められた回転エネルギーがN値と比較可能な態様で出力されるため、掘削深度が支持層に到達したか否かを精度よく確認することができる。アースドリル工法による場所打ちコンクリート杭の施工の信頼性を高めることができる。また、掘削深度の変化に対する回転エネルギーの変化から地盤の層序も把握することができる。例えば、掘削している地盤が、粘性土あるいはシルトから砂質土あるいは砂礫に変わった場合、回転エネルギーが大きく増加し、逆の場合、減少する傾向がある。また、砂質土から砂礫に変わった場合、回転エネルギーが大きく増加し、逆の場合、減少する傾向がある。このような傾向について基準杭で確認し層序と回転エネルギーの変動の対応関係を元に層序の把握を行う。なお、回転エネルギーが指標として用いられているため、障害物等によるバケット7の回転停止等の影響を出力結果から排除することができる。
【0036】
なお、本実施形態の支持層の確認装置には、エネルギー指標値として回転エネルギーが用いられているが、エネルギー指標値は所定の掘削深度毎に掘削に要するエネルギーを示す指標値であればよい。例えば、支持層の確認装置には、エネルギー指標値として積算回転トルクが用いられていてもよい。以下、エネルギー指標値として積算回転トルクを用いた変形例の確認装置について説明する。なお、変形例では上記実施形態と同様な内容については説明を省略して相違点について主に説明する。
【0037】
変形例の算出部23は、施工時の掘削データの有効なデータから所定の掘削深度毎に掘削に要する積算回転トルクを算出している。この場合、バケット7で生じる回転トルク値をT(x)[kN・m]、計測間隔(本実施形態では0.2秒)をΔt[s]、1サイクルのデータ数をm、1サイクルの掘削長をL[m]としたときに、掘削時の積算回転トルクSTRが次式(5)から算出される。これは1サイクルの回転トルク値の積算値を1サイクルの掘削長で割った、1mあたりの掘削時に要する積算回転トルクSTRを示している。
【数5】
【0038】
記憶部24は、前回施工時の掘削データから求められた積算回転トルクとN値の対応関係を示す変換係数を記憶している。この場合、iサイクル目にバケット7によって1mを掘削するのに要する積算回転トルクをSTR(i)、iサイクル目の深度に対応するボーリング調査時の標準貫入試験結果のN値をN(i)としたときに、対応関係を示す変換係数αc2が次式(6)から求められる。なお、基準杭施工時には前回施工時の掘削データとして過去案件の掘削データを用いて変換係数αc2が求められる。また、対応関係は、変換係数αc2に代えて、積算回転トルクとN値の関係がグラフやルックアップテーブル等によって表されてもよい。
【数6】
【0039】
変換係数αc2は、深度の範囲、土質又はN値の範囲毎に求められてもよい。例えば、深度が15[m]未満と15[m]以上で別々の変換係数αc2が求められてもよいし、土質が粘性土と砂質土で別々の変換係数αc2が求められてもよいし、N値が30未満と30以上で別々の変換係数αc2が求められてもよい。また、別々の変換係数の平均値が変換係数αとして求められてもよい。変形例ではN値が30以上になるサイクルのN値と積算回転トルクから変換係数αc2が求められている。すなわち、上記した式(6)ではN値が30以上のiサイクル目の積算回転トルクとN値が用いられる。これにより、変換係数αc2の変換精度が向上される。
【0040】
出力部25は、変換係数αc2に基づいて今回施工時の積算回転トルクをN値と比較可能な態様でモニタ17に出力する。この場合、変換係数αc2からN値の基準尺度に応じた積算回転トルクの基準尺度が求められて、今回施工時の積算回転トルクが積算回転トルクの基準尺度で示されている。次式(7)のx(N値)に対してN値の基準尺度の各目盛が入力されることで、積算回転トルクSN=Xとして積算回転トルクの基準尺度の各目盛が求められる。N値の基準尺度を積算回転トルクの基準尺度に変換することで今回施工時の積算回転トルクとN値が比較可能になっている。
【数7】
【0041】
例えば、図9に示すように、積算回転トルクの基準尺度の目盛3000[kN・m・s/m]がN値の基準尺度の目盛30に対応し、積算回転トルクの基準尺度の目盛5000[kN・m・s/m]がN値の基準尺度の目盛50に対応している。今回施工時の1サイクル毎に1つの積算回転トルクが算出されて、積算回転トルクの基準尺度上に積算回転トルクがプロットされている。掘削深度19m以上の各プロットの積算回転トルクが5000(N値が50)を超えているので、掘削深度が支持層に到達したことを確認することができる。
【0042】
また、変換係数αc2からボーリング調査時の標準貫入試験結果のN値に応じた推定積算回転トルクが求められて、今回施工時の積算回転トルクが推定積算回転トルクと比較可能にモニタ17に出力される。この場合、上記式(7)のx(N値)に対して所定の深度毎にN値が入力されることで、N値に応じた推定積算回転トルクが求められる。図9に示すように、深度の変化に対する推定積算回転トルクの変化の傾向を参考にして、今回施工時の積算回転トルクの変化に異常な傾向が無いかが確認される。このとき、今回施工時の積算回転トルクが推定積算回転トルクを大幅に下回らないことで支持層が確認される。
【0043】
出力部25は、変換係数αc2から今回施工時の積算回転トルクに応じた疑似N値を求めて、疑似N値がN値の基準尺度で示されてもよい。次式(8)のSTRに今回施工時の積算回転トルクが入力されることで今回施工時の積算回転トルクに応じた疑似N値が求められる。例えば、図10に示すように、今回施工時の1サイクル毎に疑似N値が算出され、N値の基準尺度上に疑似N値がプロットされている。掘削深度19m以上の各プロットの疑似N値が50を超えているので、掘削深度が支持層に到達したことを確認することができる。
【数8】
【0044】
また、疑似N値は標準貫入試験結果のN値と比較可能にモニタ17に出力される。図10に示すように、ボーリング調査時の深度の変化に対する標準貫入試験結果のN値の変化の傾向を参考にして、今回施工時の疑似N値の変化に異常な傾向が無いかが確認される。このとき、今回施工時の疑似N値がボーリング調査時のN値を大幅に下回らないことで支持層が確認される。なお、出力部25は、積算回転トルクの大きさから支持層を確認する出力結果(図9参照)、疑似N値の大きさから支持層を確認する出力結果(図10参照)の少なくとも一方の出力結果をモニタ17に出力可能に形成されていればよい。
【0045】
確認装置20には、今回施工時の積算回転トルクの出力結果から掘削深度の支持層への到達を判定する判定部(不図示)が設けられていてもよい。図9の場合であれば、閾値(例えば、5000[kN・m・s/m])を超える積算回転トルクが数サイクル(例えば、5サイクル)続いた場合に掘削深度が支持層に到達したと判定されてもよい。また、所定区間(例えば、5サイクル分の深度範囲や想定した支持層の深度範囲)の積算回転トルクの平均値が閾値を超えた場合に掘削深度が支持層に到達したと判定されてもよい。図10の場合であれば、閾値(例えば、50)を超える疑似N値が数サイクル(例えば、5サイクル)続いた場合に掘削深度が支持層に到達したと判定されてもよい。また、所定区間(例えば、5サイクル分の深度範囲や想定した支持層の深度範囲)の疑似N値の平均値が閾値を超えた場合に掘削深度が支持層に到達したと判定されてもよい。これにより、掘削深度が支持層に到達したか否かを自動的に判定することができる。
【0046】
以上のように、変形例の支持層の確認装置でも、積算回転トルクとN値と比較可能な態様で出力されるため、掘削深度が支持層に到達したか否かを精度よく確認して、アースドリル工法による場所打ちコンクリート杭の施工の信頼性を高めることができる。
【0047】
なお、本実施形態及び変形例では、コンピュータにプログラムがインストールされることで、コンピュータが支持層の確認装置として機能されてもよい。例えば、タブレット端末やスマートフォン等の携帯端末にプログラムがインストールされることで、これら携帯端末が確認装置として機能してもよい。このプログラムは記憶媒体に記憶されていてもよい。記憶媒体は特に限定されないが、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体であってもよい。
【0048】
また、本実施形態及び変形例では、支持層の確認装置とモニタが別体に形成されているが、確認装置とモニタが一体に形成されていてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、上記式(1)に基づいて回転エネルギーが算出されたが、回転エネルギーの算出方法は特に限定されない。
【0050】
また、本実施形態では、上記式(2)に基づいて変換係数が算出されたが、変換係数の算出方法は特に限定されない。
【0051】
また、変形例では、上記式(5)に基づいて積算回転トルクが算出されたが、積算回転トルクの算出方法は特に限定されない。
【0052】
また、変形例では、上記式(6)に基づいて変換係数が算出されたが、変換係数の算出方法は特に限定されない。
【0053】
また、本実施形態では、掘削データにスクリーニング処理が実施されたが、掘削データにスクリーニング処理が実施されなくてもよい。
【0054】
以上の通り、本実施形態の支持層の確認装置(20)は、アースドリル工法による施工時にバケット(7)による掘削深度が支持層に到達したかを確認するための支持層の確認装置であって、施工時の掘削データから所定の掘削深度毎に掘削に要するエネルギー指標値を算出する算出部(23)と、前回施工時の掘削データから求められたエネルギー指標値とN値の対応関係を記憶する記憶部(24)と、前記対応関係に基づいて今回施工時のエネルギー指標値をN値と比較可能な態様で出力する出力部(25)と、を備えている。この構成によれば、今回施工時の掘削データから求められたエネルギー指標値がN値と比較可能な態様で出力されるため、掘削深度が支持層に到達したか否かを精度よく確認することができる。アースドリル工法による場所打ちコンクリート杭の施工の信頼性を高めることができる。また、掘削深度の変化に対するエネルギー指標値の変化から地盤の層序も把握することができる。
【0055】
本実施形態の支持層の確認装置において、出力部は、対応関係からN値の基準尺度に対応したエネルギー指標値の基準尺度を求めて、今回施工時のエネルギー指標値をエネルギー指標値の基準尺度で示している。この構成によれば、N値の基準尺度に応じたエネルギー指標値の基準尺度上で今回施工時のエネルギー指標値から支持層を確認することができる。
【0056】
本実施形態の支持層の確認装置において、出力部は、対応関係からN値に応じた推定エネルギー指標値を求めて、今回施工時のエネルギー指標値を推定エネルギー指標値と比較可能に出力する。この構成によれば、掘削深度の変化に対する推定エネルギー指標値の変化の傾向を参考にして、今回施工時のエネルギー指標値の変化に異常な傾向が無いかが確認される。
【0057】
本実施形態の支持層の確認装置において、出力部は、対応関係から今回施工時のエネルギー指標値に応じた疑似N値を求めて、疑似N値をN値の基準尺度で示している。この構成によれば、N値の基準尺度上で今回施工時の疑似N値から支持層を確認することができる。
【0058】
本実施形態の支持層の確認装置において、出力部は、疑似N値を標準貫入試験結果のN値と比較可能に出力する。この構成によれば、掘削深度の変化に対する標準貫入試験結果のN値の変化の傾向を参考にして、今回施工時の疑似N値の変化に異常な傾向が無いかが確認される。
【0059】
本実施形態の支持層の確認装置において、エネルギー指標値が所定の掘削深度毎に掘削に要する回転エネルギーである。この構成によれば、回転エネルギーがエネルギー指標値として用いられているため、障害物等によるバケットの回転停止等の影響を出力結果から排除することができる。
【0060】
本実施形態の支持層の確認装置において、バケットが所定深度だけ掘削して掘削土を地上に排出する工程を1サイクルとしたときに、算出部は、バケットで生じる回転トルク値をT(x)、計測間隔でバケットが回転した回転角をθ(x)、1サイクルのデータ数をm、1サイクルの掘削長をLとしたときに、掘削時の回転エネルギーETRを上記式(1)から算出している。この構成によれば、1m当たりの掘削時の回転エネルギーを算出することができる。
【0061】
本実施形態の支持層の確認装置は、施工時に所定のサンプリング間隔で掘削データを取得する取得部(21)と、施工時の掘削データから有効なデータを取り出すスクリーニング部(22)と、を備え、算出部は、有効なデータから1サイクル毎に掘削に要する回転エネルギーを算出しており、スクリーニング部は、1サイクルの掘削開始点から掘削終了点までに得られるデータのうち、掘削開始点から所定深さを掘削する間に得られたデータと、掘削終了点まで所定深さを掘削する間に得られたデータを除いて有効なデータを取り出している。この構成によれば、地山の掘削に無関係なデータを除いて、有効なデータから回転エネルギーを精度よく算出することができる。
【0062】
本実施形態の支持層の確認装置において、iサイクル目にバケットによって1mを掘削するのに要する回転エネルギーをETR(i)、iサイクル目の深度に対応する標準貫入試験結果のN値をN(i)としたときに、対応関係を示す変換係数αは上記式(2)から求められる。この構成によれば、N値から推定回転エネルギーに変換する他、回転エネルギーから疑似N値に変換するための変換係数を求めることができる。
【0063】
本実施形態の支持層の確認装置において、N値と回転エネルギーを用いて、深度の範囲、土質又はN値の範囲毎に変換係数が求められる。この構成によれば、変換係数を用いて精度よく変換することができる。
【0064】
本実施形態の支持層の確認装置において、エネルギー指標値が所定の掘削深度毎に掘削に要する積算回転トルクである。この構成によれば、積算回転トルクを用いて掘削深度が支持層に到達したか否かを確認することができる。
【0065】
本実施形態の支持層の確認装置において、バケットが所定深度だけ掘削して掘削土を地上に排出する工程を1サイクルとしたときに、算出部は、バケットで生じる回転トルク値をT(x)、計測間隔をΔt、1サイクルのデータ数をm、1サイクルの掘削長をLとしたときに、掘削時の積算回転トルクSTRを上記式(5)から算出する。この構成によれば、1m当たりの掘削時の積算回転トルクを算出することができる。
【0066】
本実施形態の支持層の確認装置において、施工時に所定のサンプリング間隔で掘削データを取得する取得部と、施工時の掘削データから有効なデータを取り出すスクリーニング部と、を備え、算出部は、有効なデータから1サイクル毎に掘削に要する回転エネルギーを算出しており、スクリーニング部は、1サイクルの掘削開始点から掘削終了点までに得られるデータのうち、掘削開始点から所定深さを掘削する間に得られたデータと、掘削終了点まで所定深さを掘削する間に得られたデータを除いて有効なデータを取り出している。この構成によれば、地山の掘削に無関係なデータを除いて、有効なデータから積算回転トルクを精度よく算出することができる。
【0067】
本実施形態の支持層の確認装置において、iサイクル目にバケットによって1mを掘削するのに要する積算回転トルクをSTR(i)、iサイクル目の深度に対応する標準貫入試験結果のN値をN(i)としたときに、対応関係を示す変換係数αc2は上記式(6)から求められる。この構成によれば、N値から推定積算回転トルクに変換する他、積算回転トルクから疑似N値に変換するための変換係数を求めることができる。
【0068】
本実施形態の支持層の確認装置において、N値と積算回転トルクを用いて、深度の範囲、土質又はN値の範囲毎に変換係数が求められる。この構成によれば、変換係数を用いて精度よく変換することができる。
【0069】
本実施形態の支持層の確認装置は、今回施工時のエネルギー指標値の出力結果から掘削深度の支持層への到達を判定する判定部を備えている。この構成によれば、比較結果に基づいて掘削深度が支持層に到達したか否かを自動的に判定することができる。
【0070】
本実施形態の支持層の確認システムは、上記の支持層の確認装置と、アースドリル機に取り付けられて掘削データを検出するセンサ(11-14)と、を備え、センサが確認装置に掘削データを出力する。この構成によれば、アースドリル機のセンサから出力された掘削データに基づいて掘削深度が支持層に到達したか否かを確認することができる。
【0071】
本実施形態の支持層の確認方法は、アースドリル工法による施工時にバケットによる掘削深度が支持層に到達したかを確認するための支持層の確認方法であって、前回施工時の掘削データから求められたエネルギー指標値とN値の対応関係を設定するステップと、今回施工時の掘削データから所定の掘削深度毎に掘削に要するエネルギー指標値を算出するステップと、対応関係に基づいて今回施工時のエネルギー指標値をN値と比較可能な態様で出力するステップと、を有している。この構成によれば、アースドリル工法による場所打ちコンクリート杭の施工の信頼性を高めることができる。
【0072】
本実施形態のプログラムは、アースドリル工法による施工時にバケットによる掘削深度が支持層に到達したかを確認するためのプログラムであって、前回施工時の掘削データから求められたエネルギー指標値とN値の対応関係を設定するステップと、今回施工時の掘削データから所定の掘削深度毎に掘削に要するエネルギー指標値を算出するステップと、対応関係に基づいて今回施工時のエネルギー指標値をN値と比較可能な態様で出力するステップと、をコンピュータに実行させる。この構成によれば、コンピュータにプログラムをインストールすることで、コンピュータを支持層の確認装置として機能させることができる。
【0073】
なお、本実施形態及び変形例を説明したが、他の実施形態として、上記実施形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0074】
また、本発明の技術は上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0075】
1 :アースドリル機
7 :バケット
11:エンコーダ(センサ)
12:第1の油圧センサ(センサ)
13:第2の油圧センサ(センサ)
14:角度センサ(センサ)
17:モニタ
20:確認装置
21:取得部
22:スクリーニング部
23:算出部
24:記憶部
25:出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
例えば、図5に示すように、回転エネルギーの基準尺度の目盛400[kN・m・rad/m]がN値の基準尺度の目盛45付近に対応し、回転エネルギーの基準尺度の目盛600[kN・m・rad/m]がN値の基準尺度の目盛65付近に対応している。今回施工時の1サイクル毎に1つの回転エネルギーが算出されて、回転エネルギーの基準尺度上に回転エネルギーがプロットされている。掘削深度19m以上の各プロットの回転エネルギーが500(N値が50)を超えているので、掘削深度が支持層に到達したことを確認することができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
確認装置20には、今回施工時の回転エネルギーの出力結果から掘削深度の支持層への到達を判定する判定部(不図示)が設けられていてもよい。図5の場合であれば、閾値(例えば、500[kN・m・rad/m])を超える回転エネルギーが数サイクル(例えば、5サイクル)続いた場合に掘削深度が支持層に到達したと判定されてもよい。また、所定区間(例えば、5サイクル分の深度範囲や想定した支持層の深度範囲)の回転エネルギーの平均値が閾値を超えた場合に掘削深度が支持層に到達したと判定されてもよい。図6の場合であれば、閾値(例えば、50)を超える疑似N値が数サイクル(例えば、5サイクル)続いた場合に掘削深度が支持層に到達したと判定されてもよい。また、所定区間(例えば、5サイクル分の深度範囲や想定した支持層の深度範囲)の疑似N値の平均値が閾値を超えた場合に掘削深度が支持層に到達したと判定されてもよい。これにより、掘削深度が支持層に到達したか否かを自動的に判定することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正の内容】
図5