(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141070
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】学習装置、情報処理装置、基板処理装置、基板処理システム、学習方法および処理条件決定方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H01L21/306 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047203
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼山 真裕
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043DD13
5F043DD24
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE10
(57)【要約】
【課題】基板を処理するために時間の経過に伴って変化する条件を機械学習させる。
【解決手段】 学習装置200は、被膜が形成された基板に処理液を供給することにより基板を処理する基板処理装置が時間の経過に伴って変動する変動条件を含む処理条件で駆動した後に基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を取得する実験データ取得部261と、変動条件を次元数が低減するように変換する第1圧縮部263と、第1圧縮部263により変動条件が変換された変換結果と処理条件に対応する処理量とを含む学習用データを機械学習して基板処理装置により処理される前の基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を推測する学習モデルを生成する予測器生成部265と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被膜が形成された基板に処理液を供給することにより基板を処理する基板処理装置が時間の経過に伴って変動する変動条件を含む処理条件で駆動した後に基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を取得する実験データ取得部と、
前記変動条件を次元数が低減するように変換する圧縮器と、
前記圧縮器により前記変動条件が変換された変換結果と前記処理条件に対応する前記処理量とを含む学習用データを機械学習して前記基板処理装置により処理される前の基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を推測する学習モデルを生成するモデル生成部と、を備えた学習装置。
【請求項2】
複数の変動条件を生成する変動条件生成部と、
前記変動条件生成部により生成された複数の変動条件をオートエンコーダに学習させて前記圧縮器を生成する圧縮器生成部と、をさらに備えた、請求項1に記載の学習装置。
【請求項3】
前記処理条件は、時間の経過に伴って変動しない固定条件をさらに含み、
前記学習用データは、前記固定条件を含む、請求項1または2に記載の学習装置。
【請求項4】
前記圧縮器により仮の変動条件が変換された変換結果を前記学習モデルに与えて前記学習モデルにより推測される処理量が許容条件を満たす場合に前記仮の変動条件を含む処理条件で前記基板処理装置を駆動させて、前記基板処理装置により処理された基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を取得する実績取得部と、
前記圧縮器により前記仮の変動条件が変換された変換結果と前記実績取得部により取得された処理量とを含む追加学習用データを用いて前記学習モデルを学習させる追加学習部と、をさらに備えた、請求項1~3のいずれかに記載の学習装置。
【請求項5】
前記圧縮器により仮の変動条件が変換された変換結果を前記学習モデルに与えて前記学習モデルにより推測される処理量が許容条件を満たす場合に前記変換結果と前記学習モデルにより推測された前記処理量とを含む蒸留用データを用いて新たな学習モデルを生成する蒸留部を、さらに備えた請求項1~4のいずれかに記載の学習装置。
【請求項6】
前記基板処理装置は、基板に前記処理液を供給するノズルと、
前記ノズルと基板との相対位置を変化させる移動部と、を備え、
前記変動条件は、前記移動部により変化する前記ノズルと基板との相対位置である、請求項1~5のいずれかに記載の学習装置。
【請求項7】
基板処理装置を管理する情報処理装置であって、
前記基板処理装置は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含む処理条件で、被膜が形成された基板に処理液を供給することにより、基板を処理し、
前記変動条件を次元数が低減するように変換する第2圧縮器と、
前記基板処理装置により処理される前の基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を推測する学習モデルを用いて、前記基板処理装置を駆動するための処理条件を決定する処理条件決定部と、を備え、
前記学習モデルは、前記基板処理装置が基板を処理した処理条件に含まれる変動条件を前記第2圧縮器と同じ第1圧縮器により変換された変換結果と前記基板処理装置により処理された基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量とを含む学習用データを機械学習した推論モデルであり、
前記処理条件決定部は、前記第2圧縮器により仮の変動条件が変換された変換結果を前記学習モデルに与えて前記学習モデルにより推測される処理量が許容条件を満たす場合に前記仮の変動条件を含む処理条件を、前記基板処理装置を駆動するための処理条件に決定する、情報処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の情報処理装置を備えた基板処理装置。
【請求項9】
基板を処理する基板処理装置を管理する基板処理システムであって、
学習装置と情報処理装置とを備え、
前記基板処理装置は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含む処理条件で、被膜が形成された基板に処理液を供給することにより、基板を処理し、
前記学習装置は、前記基板処理装置が前記処理条件で駆動した後に基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を取得する実験データ取得部と、
前記変動条件を次元数が低減するように変換する第1圧縮器と、
前記第1圧縮器により前記変動条件が変換された変換結果と前記処理条件に対応する前記処理量とを含む学習用データを機械学習して前記基板処理装置により処理される前の基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を推測する学習モデルを生成するモデル生成部と、を備え、
前記情報処理装置は、前記第1圧縮器と同じ第2圧縮器と、
前記学習装置により生成された前記学習モデルを用いて、前記基板処理装置を駆動するための処理条件を決定する処理条件決定部と、を備え、
前記処理条件決定部は、前記第2圧縮器により仮の変動条件が変換された変換結果を前記学習モデルに与えて前記学習モデルにより推測される処理量が許容条件を満たす場合に前記仮の変動条件を含む処理条件を、前記基板処理装置を駆動するための処理条件に決定する、基板処理システム。
【請求項10】
被膜が形成された基板に処理液を供給することにより基板を処理する基板処理装置が時間の経過に伴って変動する変動条件を含む処理条件で駆動した後に、基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を取得する処理と、
前記変動条件を次元数が低減するように変換する圧縮処理と、
前記圧縮処理において前記変動条件が変換された変換結果と前記処理条件に対応する前記処理量とを含む学習用データを機械学習して前記基板処理装置により処理される前の基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を推測する学習モデルを生成する処理と、をコンピューターに実行させる学習方法。
【請求項11】
基板処理装置を管理するコンピューターで実行される処理条件決定方法であって、
前記基板処理装置は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含む処理条件で、被膜が形成された基板に処理液を供給することにより基板を処理し、
前記変動条件を次元数が低減するように変換する処理と、
前記基板処理装置により処理される前の基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を推測する学習モデルを用いて、前記基板処理装置を駆動するための処理条件を決定する処理と、を含み、
前記学習モデルは、前記変換する処理と同じ処理で、前記基板処理装置が基板を処理した処理条件に含まれる変動条件が変換された変換結果と前記基板処理装置により処理された基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量とを含む学習用データを機械学習した推論モデルであり、
前記処理条件を決定する処理は、前記変換する処理により仮の変動条件が変換された変換結果を前記学習モデルに与えて前記学習モデルにより推測される処理量が許容条件を満たす場合に前記仮の変動条件を含む処理条件を、前記基板処理装置を駆動するための処理条件に決定する処理を含む、処理条件決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習装置、情報処理装置、基板処理装置、基板処理システム、学習方法および処理条件決定方法に関し、基板処理装置による処理条件に従った処理をシミュレートする学習モデルを生成する学習装置、その学習モデルを用いて処理条件を決定する情報処理装置、その情報処理装置を備えた基板処理装置、学習装置で実行される学習方法および情報処理装置で実行される処理条件決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいて、洗浄プロセスがある。洗浄プロセスでは、基板に薬液を塗布するエッチング処理によって、基板に形成されている被膜の膜厚調整が行なわれる。この膜厚調整においては、基板の面が均一となるようにエッチング処理すること、あるいは、基板の面をエッチング処理によって平坦にすることが重要である。エッチング液をノズルから基板の一部に吐出する場合、ノズルを基板に対して径方向に移動させる必要がある。しかし、エッチング処理は、被膜が処理される処理量がノズルを移動させる動作の違いによって変化する複雑なプロセスである。また、エッチング処理により被膜が処理される処理量は、基板を処理した後に判明する。このため、ノズルを移動させる動作を設定する作業は、技術者による試行錯誤が必要である。ノズルの最適な動作を決定するまでに、多大なコスト及び時間を要する。
【0003】
特開2021-108367号公報には、「入力」を処理量(エッチング量)とし、「出力」をスキャン速度情報とする学習用データで機械学習させた学習済モデルを用いて、目標とする処理量からスキャン速度情報を決定する装置が記載されている。この技術によれば、目標とする処理量から1つのスキャン速度情報が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、ノズルを移動させる動作をより複雑にすることが望まれる。ノズルを移動させる動作は、時間の経過に伴って変化する位置を示す時系列データである。ノズルを移動させる動作を複雑にすると、サンプリング間隔が多くなるので、時系列データの次元数が多くなる。一般に、学習用データの次元数が多くなると、機械学習に必要なデータ数が指数関数的に増加してしまう。このため、学習用データの次元数が多くなることにより、機械学習によって得られる学習モデルを最適化するのが困難となる。また、エッチング処理は、複雑なプロセスなので、目標とする処理量に適したノズルの動作は1つとは限らず、複数存在する場合がある。
【0006】
本発明の目的の1つは、基板を処理するために時間の経過に伴って変化する条件を機械学習させるのに適した学習装置および基板処理システム提供することである。
【0007】
また、本発明の他の目的は、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して複数の処理条件を提示することが可能な情報処理装置、基板処理装置、基板処理システムおよび処理条件決定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
被膜が形成された基板に処理液を供給することにより基板を処理する基板処理装置が時間の経過に伴って変動する変動条件を含む処理条件で駆動した後に基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を取得する実験データ取得部と、変動条件を次元数が低減するように変換する圧縮器と、圧縮器により変動条件が変換された変換結果と処理条件に対応する処理量とを含む学習用データを機械学習して基板処理装置により処理される前の基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を推測する学習モデルを生成するモデル生成部と、を備える。
【0009】
この局面に従えば、学習用データが、時間の経過に伴って変動する変動条件の次元数が低減するように変換された変換結果と処理量とを含む。このため、学習用データの次元数を少なくすることができる。その結果、基板を処理するために時間の経過に伴って変化する条件を機械学習させるのに適した学習装置を提供することができる。
【0010】
好ましくは、複数の変動条件を生成する変動条件生成部と、変動条件生成部により生成された複数の変動条件をオートエンコーダに学習させて圧縮器を生成する圧縮器生成部と、をさらに備える。
【0011】
この局面に従えば、圧縮器が、変動条件をオートエンコーダに学習させることにより生成される。このため、圧縮器の生成が容易になる。
【0012】
好ましくは、処理条件は、時間の経過に伴って変動しない固定条件をさらに含み、学習用データは、固定条件を含む。
【0013】
この局面に従えば、固定条件が異なる処理に対応でき、固定条件が異なる複数の学習モデルを生成する必要がない。
【0014】
好ましくは、圧縮器により仮の変動条件が変換された変換結果を学習モデルに与えて学習モデルにより推測される処理量が許容条件を満たす場合に仮の変動条件を含む処理条件で基板処理装置を駆動させて、基板処理装置により処理された基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を取得する実績取得部と、圧縮器により仮の変動条件が変換された変換結果と実績取得部により取得された処理量とを含む追加学習用データを用いて学習モデルを学習させる追加学習部と、をさらに備える。
【0015】
この局面に従えば、学習モデルが追加学習されるので、学習モデルの性能を向上させることができる。
【0016】
好ましくは、圧縮器により仮の変動条件が変換された変換結果を学習モデルに与えて学習モデルにより推測される処理量が許容条件を満たす場合に変換結果と学習モデルにより推測された処理量とを含む蒸留用データを用いて新たな学習モデルを生成する蒸留部を、さらに備える。
【0017】
この局面に従えば、新たな学習モデルを学習させるためのデータを準備するのが容易になる。
【0018】
好ましくは、基板処理装置は、基板に処理液を供給するノズルと、ノズルと基板との相対位置を変化させる移動部と、を備え、変動条件は、移動部により変化するノズルと基板との相対位置である。
【0019】
この局面に従えば、ノズルと基板との相対位置を変化させて、ノズルから基板の処理液を供給することにより処理される被膜の処理量を推測する学習モデルが生成される。このため、エッチング処理における処理量を推測する学習モデルを生成することができる。
【0020】
この発明の他の局面によれば、情報処理装置は、基板処理装置を管理する情報処理装置であって、基板処理装置は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含む処理条件で、被膜が形成された基板に処理液を供給することにより、基板を処理し、変動条件を次元数が低減するように変換する第2圧縮器と、基板処理装置により処理される前の基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を推測する学習モデルを用いて、基板処理装置を駆動するための処理条件を決定する処理条件決定部と、を備え、学習モデルは、基板処理装置が基板を処理した処理条件に含まれる変動条件を第2圧縮器と同じ第1圧縮器により変換された変換結果と基板処理装置により処理された基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量とを含む学習用データを機械学習した推論モデルであり、処理条件決定部は、第2圧縮器により仮の変動条件が変換された変換結果を学習モデルに与えて学習モデルにより推測される処理量が許容条件を満たす場合に仮の変動条件を含む処理条件を、基板処理装置を駆動するための処理条件に決定する。
【0021】
この局面に従えば、時間の経過に伴って変動する仮の変動条件を変換した変換結果を学習モデルに与えて学習モデルにより推測される処理量が許容条件を満たす場合に、仮の変動条件を含む処理条件が基板処理装置を駆動するための処理条件に決定される。このため、許容条件を満たす処理量に対して複数の仮の変動条件を決定することができる。その結果、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して複数の処理条件を提示することが可能な情報処理装置を提供することができる。
【0022】
好ましくは、基板処理装置は、上記の情報処理装置を備える。
【0023】
この局面に従えば、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して複数の処理条件を提示することが可能な基板処理装置を提供することができる。
【0024】
好ましくは、基板処理システムは、基板を処理する基板処理装置を管理する基板処理システムであって、学習装置と情報処理装置とを備え、基板処理装置は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含む処理条件で、被膜が形成された基板に処理液を供給することにより、基板を処理し、学習装置は、基板処理装置が処理条件で駆動した後に基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を取得する実験データ取得部と、変動条件を次元数が低減するように変換する第1圧縮器と、第1圧縮器により変動条件が変換された変換結果と処理条件に対応する処理量とを含む学習用データを機械学習して基板処理装置により処理される前の基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を推測する学習モデルを生成するモデル生成部と、を備え、情報処理装置は、第1圧縮器と同じ第2圧縮器と、学習装置により生成された学習モデルを用いて、基板処理装置を駆動するための処理条件を決定する処理条件決定部と、を備え、処理条件決定部は、第2圧縮器により仮の変動条件が変換された変換結果を学習モデルに与えて学習モデルにより推測される処理量が許容条件を満たす場合に仮の変動条件を含む処理条件を、基板処理装置を駆動するための処理条件に決定する。
【0025】
この局面に従えば、基板を処理するために時間の経過に伴って変化する条件を機械学習させるのに適し、かつ、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して複数の処理条件を提示することが可能な基板処理システムを提供することができる。
【0026】
この発明のさらに他の局面によれば、学習方法は、被膜が形成された基板に処理液を供給することにより基板を処理する基板処理装置が時間の経過に伴って変動する変動条件を含む処理条件で駆動した後に、基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を取得する処理と、変動条件を次元数が低減するように変換する圧縮処理と、圧縮処理において変動条件が変換された変換結果と処理条件に対応する処理量とを含む学習用データを機械学習して基板処理装置により処理される前の基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を推測する学習モデルを生成する処理と、をコンピューターに実行させる。
【0027】
この局面に従えば、基板を処理するために時間の経過に伴って変化する条件を機械学習させるのに適した学習方法を提供することができる。
【0028】
この発明のさらに他の局面によれば、処理条件決定方法は、基板処理装置を管理するコンピューターで実行される処理条件決定方法であって、基板処理装置は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含む処理条件で、被膜が形成された基板に処理液を供給することにより基板を処理し、変動条件を次元数が低減するように変換する処理と、基板処理装置により処理される前の基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を推測する学習モデルを用いて、基板処理装置を駆動するための処理条件を決定する処理と、を含み、学習モデルは、変換する処理と同じ処理で、基板処理装置が基板を処理した処理条件に含まれる変動条件が変換された変換結果と基板処理装置により処理された基板に形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量とを含む学習用データを機械学習した推論モデルであり、処理条件を決定する処理は、変換する処理により仮の変動条件が変換された変換結果を学習モデルに与えて学習モデルにより推測される処理量が許容条件を満たす場合に仮の変動条件を含む処理条件を、基板処理装置を駆動するための処理条件に決定する処理を含む。
【0029】
この局面に従えば、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して複数の処理条件を提示することが可能な処理条件決定方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0030】
基板を処理するために時間の経過に伴って変化する条件を機械学習させるのに適した学習装置および基板処理システム提供することができる。
【0031】
また、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して複数の処理条件を提示することが可能な情報処理装置、基板処理装置、基板処理システムおよび処理条件決定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る基板処理システムの構成を説明するための図である。
【
図4】本発明の本実施の形態の1つにおける基板処理システムの機能的な構成の一例を示す図である。
【
図5】ノズルの動作パターンの一例を示す第1の図である。
【
図6】ノズルの動作パターンの一例を示す第2の図である。
【
図9】オートエンコーダ生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】予測器生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】処理条件決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】追加学習処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施の形態に係る基板処理システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、基板とは、半導体基板(半導体ウェハ)、液晶表示装置もしくは有機EL(Electro Luminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。
【0034】
1.基板処理システムの全体構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る基板処理システムの構成を説明するための図である。
図1の基板処理システム1は、情報処理装置100、学習装置200および基板処理装置300を含む。学習装置200は、例えばサーバであり、情報処理装置100は、例えばパーソナルコンピューターである。
【0035】
学習装置200および情報処理装置100は、基板処理装置300を管理するために用いられる。なお、学習装置200および情報処理装置100が管理する基板処理装置300は、1台に限定されるものではなく、基板処理装置300の複数を管理してもよい。
【0036】
本実施の形態に係る基板処理システム1において、情報処理装置100、学習装置200および基板処理装置300は、互いに有線または無線の通信線または通信回線網により接続される。情報処理装置100、学習装置200および基板処理装置300は、それぞれがネットワークに接続され、互いにデータの送受信が可能である。ネットワークは、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)が用いられる。また、ネットワークは、インターネットであってもよい。また、情報処理装置100と基板処理装置300とは、専用の通信回線網で接続されてもよい。ネットワークの接続形態は、有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。
【0037】
なお、学習装置200は、基板処理装置300および情報処理装置100と、必ずしも通信線または通信回線網で接続される必要はない。この場合、基板処理装置300で生成されたデータが記録媒体を介して学習装置200に渡されてもよい。また、学習装置200で生成されたデータが記録媒体を介して情報処理装置100に渡されてもよい。
【0038】
基板処理装置300には、図示しない表示装置、音声出力装置および操作部が設けられる。基板処理装置300は、基板処理装置300の予め定められた処理条件(処理レシピ)に従って運転される。
【0039】
2.基板処理装置の概要
基板処理装置300は、制御装置10と、複数の基板処理ユニットWUを備える。制御装置10は、複数の基板処理ユニットWUを制御する。複数の基板処理ユニットWUは、被膜が形成された基板Wに処理液を供給することにより基板を処理する。処理液はエッチング液を含み、基板処理ユニットWUはエッチング処理を実行する。エッチング液は、薬液である。エッチング液は、例えば、フッ硝酸(フッ酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合液)、フッ酸、バファードフッ酸(BHF)、フッ化アンモニウム、HFEG(フッ酸とエチレングリコールとの混合液)、又は、燐酸(H3PO4)である。
【0040】
基板処理ユニットWUは、スピンチャックSCと、スピンモータSMと、ノズル311と、ノズル移動機構301と、を備える。スピンチャックSCは、基板Wを水平に保持する。スピンモータSMは、第1回転軸AX1を有する。第1回転軸AX1は、上下方向に延びる。スピンチャックSCは、スピンモータSMの第1回転軸AX1の上端部に取り付けられる。スピンモータSMが回転すると、スピンチャックSCが第1回転軸AX1を中心として回転する。スピンモータSMは、ステッピングモータである。スピンチャックSCに保持された基板Wは、第1回転軸AX1を中心として回転する。このため、基板Wの回転速度は、ステッピングモータの回転速度と同じである。なお、スピンモータの回転速度を示す回転速度信号を生成するエンコーダを設ける場合、エンコーダにより生成される回転速度信号から基板Wの回転速度が取得されてもよい。この場合、スピンモータは、ステッピングモータ以外のモータを用いることができる。
【0041】
ノズル311は、基板Wにエッチング液を供給する。ノズル311は、図示しないエッチング液供給部からエッチング液が供給され、回転中の基板Wに向けてエッチング液を吐出する。
【0042】
ノズル移動機構301は、略水平方向にノズル311を移動させる。具体的には、ノズル移動機構301は、第2回転軸AX2を有するノズルモータ303と、ノズルアーム305と、を有する。ノズルモータ303は、第2回転軸AX2が略鉛直方向に沿うように配置される。ノズルアーム305は、直線状に延びる長手形状を有する。ノズルアーム305の一端は、ノズルアーム305の長手方向が第2回転軸AX2とは異なる方向となるように、第2回転軸AX2の上端に取り付けられる。ノズルアーム305の他端に、ノズル311がその吐出口が下方を向くように取り付けられる。
【0043】
ノズルモータ303が動作すると、ノズルアーム305は第2回転軸AX2を中心として水平面内で回転する。これにより、ノズルアーム305の他端に取り付けられたノズル311は、第2回転軸AX2を中心として水平方向に移動する(旋回する)。ノズル311は、水平方向に移動しながら基板Wに向けてエッチング液を吐出する。ノズルモータ303は、例えば、ステッピングモータである。
【0044】
制御装置10は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリを含み、CPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより、基板処理装置300の全体を制御する。制御装置10は、スピンモータSMおよびノズルモータ303を制御する。
【0045】
学習装置200は、基板処理装置300から実験データが入力され、実験データを用いて学習モデルを機械学習し、学習済の学習モデルを、情報処理装置100に出力する。
【0046】
情報処理装置100は、学習済の学習モデルを用いて、基板処理装置300がこれから処理する予定の基板に対して、基板を処理するための処理条件を決定する。情報処理装置100は、決定された処理条件を基板処理装置300に出力する。
【0047】
図2は、情報処理装置の構成の一例を示す図である。
図2を参照して、情報処理装置100は、CPU101、RAM(ランダムアクセスメモリ)102、ROM(リードオンリメモリ)103、記憶装置104、操作部105、表示装置106および入出力I/F(インターフェイス)107により構成される。CPU101、RAM102、ROM103、記憶装置104、操作部105、表示装置106および入出力I/F107はバス108に接続される。
【0048】
RAM102は、CPU101の作業領域として用いられる。ROM103にはシステムプログラムが記憶される。記憶装置104は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含み、プログラムを記憶する。プログラムは、ROM103または他の外部記憶装置に記憶されてもよい。
【0049】
記憶装置104には、CD-ROM109が着脱可能である。CPU101が実行するプログラムを記憶する記録媒体としては、CD-ROM109に限られず、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、ICカード、光カード、マスクROM、EPROM(Erasable Programmable ROM)などの半導体メモリ等の媒体でもよい。さらに、CPU101がネットワークに接続されたコンピューターからプログラムをダウンロードして記憶装置104に記憶する、または、ネットワークに接続されたコンピューターがプログラムを記憶装置104に書込みするようにして、記憶装置104に記憶されたプログラムをRAM102にロードしてCPU101で実行するようにしてもよい。ここでいうプログラムは、CPU101により直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0050】
操作部105は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスである。使用者は、操作部105を操作することにより、情報処理装置100に所定の指示を与えることができる。表示装置106は、液晶表示装置等の表示デバイスであり、使用者による指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入出力I/F107は、ネットワークに接続される。
【0051】
図3は、学習装置の構成の一例を示す図である。
図3を参照して、学習装置200は、CPU201、RAM202、ROM203、記憶装置204、操作部205、表示装置206および入出力I/F207により構成される。CPU201、RAM202、ROM203、記憶装置204、操作部205、表示装置206および入出力I/F207はバス208に接続される。
【0052】
RAM202は、CPU201の作業領域として用いられる。ROM203にはシステムプログラムが記憶される。記憶装置204は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含み、プログラムを記憶する。プログラムは、ROM203または他の外部記憶装置に記憶されてもよい。記憶装置204には、CD-ROM209が着脱可能である。
【0053】
操作部205は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスである。入出力I/F207は、ネットワークに接続される。
【0054】
3.基板処理システムの機能構成
図4は、本発明の本実施の形態の1つにおける基板処理システムの機能的な構成の一例を示す図である。
図4を参照して、基板処理装置300が備える制御装置10は、基板処理ユニットWUを制御して、処理条件に従って基板Wを処理する。処理条件は、予め定められた処理時間の間に基板Wを処理する条件である。処理時間は、基板に対する処理に対して定められる時間である。本実施の形態において、処理時間は、基板Wにノズル311がエッチング液を吐出している間の時間である。
【0055】
処理条件は、本実施の形態においては、エッチング液の温度、エッチング液の濃度、エッチング液の流量、基板Wの回転数、ノズル311と基板Wとの相対位置を含む。処理条件は、時間の経過に伴って変動する変動条件を含む。本実施の形態において、変動条件は、ノズル311と基板Wとの相対位置である。相対位置は、ノズルモータ303の回転角度で示される。処理条件は、時間の経過に伴って変動しない固定条件を含む。本実施の形態において、固定条件は、エッチング液の温度、エッチング液の濃度、エッチング液の流量、基板Wの回転数である。
【0056】
学習装置200は、学習用データを学習モデルに学習させて、処理条件からエッチングプロファイルを推測する推論モデルを生成する。以下、学習装置200が生成する推論モデルを予測器という。
【0057】
学習装置200は、変動条件生成部251と、圧縮器生成部253と、圧縮器送信部255と、実験データ取得部261と、第1圧縮部263と、予測器生成部265と、予測器送信部267と、を含む。学習装置200が備える機能は、学習装置200が備えるCPU201がRAM202に格納された学習プログラムを実行することにより、CPU201により実現される。
【0058】
変動条件生成部251は、変動条件を生成する。例えば、変動条件生成部251は、演算により複数の変動条件を生成する。本実施の形態において、基板Wは、第1回転軸AX1を中心に回転し、ノズル311は、第2回転軸AX2を中心に回転する。このため、ノズル311と基板Wとの相対位置の変化は、ノズル311の位置の変化で示される。ノズル311の位置の変化は、ノズルモータ303の回転角度により定まる。また、ノズルモータ303の回転する角度の範囲は、所定範囲に制限される。さらに、処理時間は、予め定めた期間である。このため、ノズル311の位置の変化を複数の動作パターンに分類することができる。例えば、ノズル311の移動速度、速度を変更する位置を示す変速位置、ノズル311の移動方向、ノズル311が速度を反転する回数の少なくとも1つを固定した複数の動作パターンが定まる。変動条件生成部251は、複数の動作パターンごとに関数を定め、その関数を用いて変動条件を生成する。
【0059】
図5は、ノズルの動作パターンの一例を示す図である。
図5を参照して、ノズル311が速度を反転する回数を異ならせ、他の変数を同じとした場合の3つの変動条件が示される。上段に、正側から負側への反転が3回の変動条件が示され、中段に正側から負側への反転が4回の変動条件が示され、下段に正側から負側への反転が5回の変動条件が示される。
【0060】
図6は、ノズルの動作パターンの一例を示す図である。
図6を参照して、ノズル311が加減速する加速度を異ならせ、他の変数を同じとした場合の3つの変動条件が示される。上段に、定速度の変動条件が示され、中段に加速度が徐々に小さくなる変動条件が示され、下段に加速度が徐々に大きくなる変動条件が示される。
【0061】
図4に戻って、圧縮器生成部253は、変動条件生成部251により生成された複数の変動条件を機械学習することにより圧縮器を生成する。圧縮器送信部255は、圧縮器生成部253により生成された圧縮器を情報処理装置100に送信する。
【0062】
圧縮器生成部253は、ニューラルネットワークを用いて機械学習する。本実施の形態においては、圧縮器生成部253は、オートエンコーダにより構成されている。圧縮器生成部253は、変動条件生成部251において生成された変動条件をオートエンコーダに機械学習させる。具体的には、圧縮器生成部253は、変動条件生成部251により生成された変動条件を生成用入力データとしてオートエンコーダに入力し、オートエンコーダの出力が生成用入力データと等しくなるようにパラメータを決定する。オートエンコーダは、入力層、中間層および出力層で構成される。入力層から中間層までの部分が圧縮器に相当し、中間層から出力層までの部分が復号器に相当する。圧縮器生成部253は、学習済のオートエンコーダのうち入力層から中間層の部分に設定されたパラメータを組み込んだニューラルネットワークを圧縮器として生成する。圧縮器は、学習済のオートエンコーダのうち入力層から中間層の部分に設定されたパラメータを組み込んだ推論プログラムである。
【0063】
圧縮器生成部253は、変動条件を正規化し、正規化した変動条件をオートエンコーダに機械学習させてもよい。変動条件は、ノズル311の基板Wに対する相対位置を示し、例えば、-150mm~150mmの範囲とする例を説明する。変動条件を正規化することで0~1の範囲にスケーリングされる。変動条件を正規化することで、パラメータの取り得る範囲が統一され、オートエンコーダによる機械学習が容易になる。
【0064】
圧縮器生成部253は、機械学習のために予め準備された複数の変動条件を、機械学習に用いる第1変動条件と、圧縮器の評価に用いる第2変動条件とに分類し、第1変動条件をオートエンコーダに機械学習させ、第2変動条件でオートエンコーダの性能を評価する。
【0065】
実験データ取得部261は、基板処理装置300から実験データを取得する。実験データは、基板処理装置300が実際に基板Wを処理する場合に用いられる処理条件と、基板Wに形成された被膜の処理前後の膜厚特性とを含む。膜厚特性は、基板Wに形成される被膜の基板Wの径方向に異なる複数の位置それぞれにおける膜厚で示される。
【0066】
図7は、膜厚特性の一例を示す図である。
図7を参照して、横軸に基板の半径方向の位置を示し、縦軸に膜厚を示す。横軸の原点が基板の中心を示す。基板処理装置300により処理される前の基板Wに形成された被膜の膜厚が実線で示される。基板処理装置300により処理条件に従ってエッチング液を塗布する処理が実行されることにより、基板Wに形成される被膜の膜厚が調整される。基板処理装置300により処理された後の基板Wに形成された被膜の膜厚が点線で示される。
【0067】
基板処理装置300により処理される前の基板Wに形成された被膜の膜厚と基板処理装置300により処理された後の基板Wに形成された被膜の膜厚との差が処理量(エッチング量)である。処理量は、基板処理装置300によりエッチング液を塗布する処理により減少した膜の厚さを示す。処理量の径方向の分布を、エッチングプロファイルという。エッチングプロファイルは、基板Wの径方向における複数の位置それぞれにおける処理量を含む。
【0068】
また、基板処理装置300により形成される膜厚は、基板Wの全面において均一であることが望まれる。このため、基板処理装置300により実行される処理に対して、目標となる目標膜厚が定められる。目標膜厚は、一点鎖線で示される。乖離特性は、基板処理装置300により処理された後の基板Wに形成された被膜の膜厚と目標膜厚との差分である。乖離特性は、基板Wの径方向における複数の位置それぞれにおける差分を含む。
【0069】
図4に戻って、第1圧縮部263は、実験データ取得部261から入力された実験データの処理条件に含まれる変動条件を、圧縮器生成部253により生成された圧縮器を用いて低次元のデータセットに変換する。ここでは、圧縮器生成部253により生成される圧縮器は、ニューラルネットワークである。第1圧縮部263は、圧縮器であるニューラルネットワークに変動条件を入力し、圧縮器による変換結果を予測器生成部265に出力する。
【0070】
予測器生成部265は、第1圧縮部263から変動条件を変換した変換結果が入力され、実験データ取得部261から実験データが入力される。予測器生成部265は、ニューラルネットワークに教師あり学習させることにより予測器を生成する。
【0071】
具体的には、学習用データは、入力データと正解データとを含む。入力データは、第1圧縮部263により変動条件が変換された変換結果と、実験データに含まれる処理条件の変動条件以外の固定条件と、を含む。正解データは、エッチングプロファイルを含む。エッチングプロファイルは、実験データに含まれる処理前の被膜の膜厚特性と、実験データに含まれる処理後の被膜の膜厚特性との差である。予測器生成部265は、入力データをニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークの出力が正解データと等しくなるようにニューラルネットワークのパラメータを決定する。予測器生成部265は、学習済のニューラルネットワークに設定されたパラメータを組み込んだニューラルネットワークを予測器として生成する。予測器は、学習済のニューラルネットワークに設定されたパラメータを組み込んだ推論プログラムである。予測器生成部265は、予測器を情報処理装置100に送信する。
【0072】
図8は、予測器を説明する図である。
図8を参照して、予測器は、入力層、中間層および出力層を含み、各層に〇で示される複数のノードが含まれる。なお、図では、中間層を1つ示しているが、中間層の数はこれより多くてもよい。また、入力層に5つのノード、中間層に4つ、出力層に3つのノードが示されるが、ノードの数は、これに限定されるものではない。上位のノードの出力は下位のノードの入力に接続される。パラメータは、上位のノードの出力に対して重み付けする係数を含む。また、中間層の数は、1以上であり、その数は限定されない。
【0073】
予測器に、変動条件を低次元のデータセットに変換した変換結果と固定条件とを入力すると、エッチングプロファイルが出力される。エッチングプロファイルは、基板Wの径方向の複数の位置P[n](nは1以上の整数)それぞれにおける処理前後の膜厚の差E[n]で示される。なお、図では、予測器の出力ノードの数を3つ示しているが、実際には、出力ノードの数はn個である。
【0074】
図4に戻って、情報処理装置100は、処理条件決定部151と、圧縮器受信部153と、予測器受信部155と、第2圧縮部157と、予測部159と、評価部161と、処理条件送信部163と、を含む。情報処理装置100が備える機能は、情報処理装置100が備えるCPU101がRAM102に格納された処理条件決定プログラムを実行することにより、CPU101により実現される。
【0075】
圧縮器受信部153は、学習装置200から送信される圧縮器を受信し、受信された圧縮器を第2圧縮部157に出力する。予測器受信部155は、学習装置200から送信される予測器を受信し、受信された予測器を予測部159に出力する。
【0076】
処理条件決定部151は、基板処理装置300により処理の対象となる基板Wに対する処理条件を決定する。処理条件決定部151は、処理条件に含まれる変動条件を第2圧縮部157に出力し、処理条件に含まれる固定条件を予測部159に出力する。処理条件決定部151は、実験計画法、ペアワイズ法またはベイズ推定を用いて、予め準備された複数の変動条件のうちから1つを選択し、選択された変動条件と固定条件とを含む処理条件を予測部159に推測させるための処理条件として決定する。予め準備された複数の変動条件は、学習装置200が圧縮器を生成するために生成した複数の変動条件を用いるのが好ましい。
【0077】
第2圧縮部157は、処理条件決定部151から入力される変動条件を、圧縮器を用いて圧縮する。具体的には、第2圧縮部157は、変動条件を圧縮器に入力し、圧縮器の出力を変換結果として予測部159に出力する。
【0078】
予測部159は、予測器を用いて圧縮器による変動条件の変換結果と固定条件とからエッチングプロファイルを推測する。具体的には、予測部159は、第2圧縮部157から入力される変換結果と処理条件決定部151から入力される固定条件とを予測器に入力し、予測器が出力するエッチングプロファイルを評価部161に出力する。
【0079】
評価部161は、予測部159から入力されるエッチングプロファイルを評価し、評価結果を処理条件決定部151に出力する。詳細には、評価部161は、基板処理装置300が処理対象とする予定の基板Wの処理前の膜厚特性を取得する。評価部161は、予測部159から入力されるエッチングプロファイルと、基板Wの処理前の膜厚特性とからエッチング処理後に予測される膜厚特性を算出し、目標とする膜厚特性と比較する。比較の結果が評価基準を満たしていれば、処理条件決定部151により決定された処理条件を処理条件送信部163に出力する。例えば、評価部161は、乖離特性を算出し、乖離特性が評価基準を満たしているか否かが判断される。乖離特性は、エッチング処理後の基板Wの膜厚特性と目標の膜厚特性との差分である。評価基準は、任意に定めることができる。例えば、評価基準は、乖離特性において差分の最大値が閾値以下であるとしてもよいし、差分の平均が閾値以下であるとしてもよい。
【0080】
処理条件送信部163は、処理条件決定部151により決定された処理条件を、基板処理装置300に送信する。基板処理装置300は、処理条件に従って基板Wを処理する。
【0081】
評価部161は、評価結果が評価基準を満たしていない場合は、評価結果を処理条件決定部151に出力する。評価結果は、エッチング処理後に予測される膜厚特性またはエッチング処理後に予測される膜厚特性と目標の膜厚特性との差分を含む。
【0082】
処理条件決定部151は、評価部161から評価結果が入力されることに応じて、予測部159に推測させるための新たな処理条件を決定する。処理条件決定部151は、実験計画法、ペアワイズ法またはベイズ推定を用いて、予め準備された複数の変動条件のうちから1つを選択し、選択された変動条件と固定条件とを含む処理条件を予測部159に推測させるための新たな処理条件として決定する。
【0083】
処理条件決定部151は、ベイズ推定を用いて処理条件を探索してもよい。評価部161により複数の評価結果が出力される場合、処理条件と評価結果との組が複数となる。複数の組それぞれにおけるエッチングプロファイルの傾向から被膜の膜厚が均一となる処理条件またはエッチング処理後に予測される膜厚特性と目標の膜厚特性との差分が最小化する処理条件を探索する。
【0084】
具体的には、処理条件決定部151は、目的関数を最小化するように処理条件を探索する。目的関数は、被膜の膜厚の均一性を示す関数または被膜の膜厚特性と目標膜厚特性との一致性を示す関数である。例えば、目的関数は、エッチング処理後に予測される膜厚特性と目標の膜厚特性との差分をパラメータで示した関数である。ここでのパラメータは、対応する変動条件を第2圧縮部157により変換された変換結果である。対応する変動条件は、予測器がエッチングプロファイルを推測するために用いた変換結果が変換される前の変動条件である。処理条件決定部151は、複数の変動条件のうちから探索により決定されたパラメータである変換結果に対応する変動条件を選択し、選択された変動条件と固定条件とを含む新たな処理条件を決定する。
【0085】
なお、処理条件決定部151は、予め準備された変動条件のうちから1つを選択するのに代えて、探索により求められたパラメータを、復号器で複号した変動条件を選択してもよい。復号器は、学習装置200の圧縮器生成部253により構成されるオートエンコーダの一部である。
【0086】
図9は、オートエンコーダ生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。オートエンコーダ生成処理は、学習装置200が備えるCPU201がRAM202に格納されたオートエンコーダ生成プログラムを実行することにより、CPU201により実行される処理である。オートエンコーダ生成プログラムは、学習プログラムの一部である。
【0087】
図9を参照して、学習装置200が備えるCPU201は、変動条件が生成され、処理はステップS02に進む。ノズル311の位置の変化を示す複数の動作パターンが予め定められており、複数の動作パターンのうちから1つが選択される。そして、選択された動作パターンに対応する関数が選択され、パラメータを順に変動させることにより変動条件が生成される。
【0088】
ステップS02においては、CPU201は、オートエンコーダを学習させ、処理をステップS03に進める。ステップS01において生成された変動条件が入力と出力とに設定され、ニューラルネットワークのパラメータが調整される。変動条件は、所定のサンプリング間隔でサンプリングされる。本実施の形態においては、処理時間を20秒としており、サンプリング間隔を0.01秒としている。したがって、変動条件は、位置を示す2000個の位置データが時系列に配列されるデータである。
【0089】
ステップS03においては、調整が完了したか否かが判断される。圧縮器の評価に用いる変動条件が予め準備されており、評価用の変動条件でオートエンコーダの性能が評価される。評価結果が予め定められた評価基準を満たす場合に調整完了と判断される。評価結果が評価基準を満たさなければ(ステップS03でNO)、処理はステップS01に戻るが、評価結果が評価基準を満たすならば(ステップS03でYES)、処理はステップS04に進む。
【0090】
処理がステップS01に戻る場合、ステップS01において、新たな動作パターンが生成される。ステップS01~ステップS03のループにおいて、CPU201は、複数の変動条件を用いてオートエンコーダを機械学習させる。これにより、オートエンコーダのパラメータが適正な値に調整される。
【0091】
ステップS04においては、オートエンコーダが記憶装置104に記憶され、処理はステップS05に進む。オートエンコーダは、機械学習により調整されたパラメータが設定されたニューラルネットワークである。
【0092】
ステップS05においては、圧縮器が送信され、処理は終了する。CPU201は、入出力I/F107を制御し、オートエンコーダのうち入力層から中間層の部分を、圧縮器として情報処理装置100に送信する。
【0093】
図10は、予測器生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。予測器生成処理は、学習装置200が備えるCPU201がRAM202に格納された予測器生成プログラムを実行することにより、CPU201により実行される処理である。予測器生成プログラムは、学習プログラムの一部である。
【0094】
図10を参照して、学習装置200が備えるCPU201は、実験データを取得する。CPU201は、入出力I/F107を制御して、基板処理装置300から実験データを取得する(ステップS11)。実験データは、CD-ROM209等の記録媒体に記録された実験データを記憶装置104で読み取ることにより取得されてもよい。ここで取得される実験データは、複数である。実験データは、処理条件と、基板Wに形成された被膜の処理前後の膜厚特性とを含む。膜厚特性は、基板Wに形成される被膜の基板Wの径方向における異なる複数の位置それぞれの膜厚で示される。
【0095】
次のステップS12においては、処理対象とするべき実験データが選択され、処理はステップS13に進む。ステップS13においては、実験データに含まれる変動条件が圧縮され、処理はステップS14に進む。学習装置200により生成された圧縮器に、変動条件が入力され、圧縮器の出力が変換結果として取得される。
【0096】
ステップS14においては、変換結果と、実験データに含まれる固定条件と、エッチングプロファイルと、が学習用データに設定される。エッチングプロファイルは、実験データに含まれる処理前の被膜の膜厚特性と、実験データに含まれる処理後の被膜の膜厚特性との差分である。学習用データは、入力データと正解データとを含む。ステップS13において算出された圧縮器による変換結果と、実験データに含まれる固定条件とが入力データに設定される。エッチングプロファイルが正解データに設定される。
【0097】
次のステップS15においては、CPU201は、予測器を機械学習させ、処理をステップS16に進める。入力データをニューラルネットワークである予測器に入力し、予測器の出力が正解データと等しくなるようにパラメータを決定する。これにより、予測器のパラメータが調整される。予測器は、学習用データを用いた機械学習により決定されたパラメータを有するニューラルネットワークである。
【0098】
ステップS16においては、調整が完了したか否かが判断される。予測器の評価に用いる学習用データが予め準備されており、評価用の学習用データで予測器の性能が評価される。評価結果が予め定められた評価基準を満たす場合に調整完了と判断される。評価結果が評価基準を満たさなければ(ステップS16でNO)、処理はステップS12に戻るが、評価結果が評価基準を満たすならば(ステップS16でYES)、処理はステップS17に進む。
【0099】
処理がステップS12に戻る場合、ステップS12において、ステップS11において取得された実験データのうちから処理対象に選択されていない実験データが選択される。ステップS12~ステップS16のループにおいて、CPU201は、複数の学習用データを用いて予測器を機械学習させる。これにより、ニューラルネットワークである予測器のパラメータが適正な値に調整される。ステップS18においては、予測器が送信され、処理は終了する。CPU201は、入出力I/F107を制御し、予測器を情報処理装置100に送信する。
【0100】
図11は、処理条件決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。処理条件決定処理は、情報処理装置100が備えるCPU101がRAM102に格納された処理条件決定プログラムを実行することにより、CPU101により実行される処理である。
【0101】
図11を参照して、情報処理装置100が備えるCPU101は、予め準備された複数の変動条件のうちから1つを選択し(ステップS21)、処理をステップS22に進める。複数の変動条件は、学習装置200が圧縮器を生成するために生成した複数の変動条件である。実験計画法、ペアワイズ法またはベイズ推定等を用いて、予め準備された複数の変動条件のうちから1つが選択される。
【0102】
ステップS22においては、変動条件が圧縮され、処理はステップS23に進む。学習装置200で生成された圧縮器を用いて変動条件が圧縮される。ここでは、圧縮器に変動条件を入力し、その出力が変換結果として取得される。
【0103】
ステップS23においては、予測器を用いて、変換結果と固定条件とからエッチングプロファイルが推測され、処理はステップS24に進む。予測器に、変換結果と固定条件とを入力し、予測器が出力するエッチングプロファイルが取得される。ステップS24においては、処理後の膜厚特性が目標膜厚特性と比較される。基板処理装置300が処理の対象とする基板Wの処理前の膜厚特性と、ステップS23において推測されたエッチングプロファイルとから基板Wを処理した後の膜厚特性が算出される。そして、処理後の膜厚特性が目標膜厚特性と比較される。ここでは、基板Wを処理した後の膜厚特性と目標膜厚特性との差分が算出される。
【0104】
ステップS25においては、比較結果が評価基準を満たすか否かが判断される。比較結果が評価基準を満たすならば(ステップS25でYES)、処理はステップS26に進むが、そうでなければ処理はステップS21に戻る。例えば、差分の最大値が閾値以下である場合に評価基準を満たすと判断する。また、差分の平均が閾値以下である場合に評価基準を満たすと判断する。
【0105】
ステップS26においては、基板処理装置300を駆動するための処理条件の候補に、ステップS21において直前に選択された変動条件を含む処理条件が設定され、処理はステップS27に進む。ステップS27においては、探索の終了指示が受け付けられたか否かが判断される。情報処理装置100を操作するユーザーにより終了指示が受け付けられたならば処理はステップS28に進むが、そうでなければ処理はステップS21に戻る。なお、ユーザーにより入力される終了指示に変えて、予め定められた数の処理条件が候補に設定されたか否かが判断されてもよい。
【0106】
ステップS28においては、候補に設定された1以上の処理条件のうちから1つが決定され、処理はステップS29に進む。候補に設定された1以上の処理条件のうちから情報処理装置100を操作するユーザーにより1つが選択されてもよい。したがって、ユーザーの選択の範囲が広がる。また、複数の処理条件に含まれる変動条件のうちからノズル動作が最も簡略な変動条件が自動的に選択されてもよい。ノズル動作が最も簡略な変動条件は、例えば、変速点の数が最少の変動条件とすることができる。これにより、基板Wを処理する複雑なノズル動作に対する処理結果に対して複数の変動条件を提示することができる。複数の変動条件のうちからノズルの制御が容易な変動条件を選択すれば、基板処理装置300の制御が容易になる。
【0107】
ステップS29においては、ステップS28において決定された変動条件を含む処理条件が基板処理装置300に送信され、処理は終了する。CPU101は、入出力I/F107を制御して、処理条件を基板処理装置300に送信する。基板処理装置300は、情報処理装置100から処理条件を受信する場合、その処理条件に従って基板Wを処理する。
【0108】
4.具体例
本実施の形態においては、変動条件は、ノズル動作の処理時間が20秒、サンプリング間隔0.01秒でサンプリングした時系列データである。変動条件は、2000個の値で構成される。このため、変動条件は、複雑なノズル動作を表現することが可能である。特に、ノズルの移動速度を変更する変速点の数を比較的多くしたノズル動作を変動条件で正確に表現することができる。
【0109】
本実施の形態における圧縮器生成部253は、変動条件を2次元のデータセットに変換するようにオートエンコーダを機械学習させる。このため、圧縮器生成部253により生成される圧縮器は、2000個の値で構成される変動条件を、2次元のデータセットに変換する。複雑なノズル動作を示す2000個の値からなる変動条件を、2次元のデータセットに変換する場合であっても、予測器により予測されるエッチングプロファイルとして所望の結果が得られることを発明者は実験によって発見した。
【0110】
このため、予測器に入力するデータの数を少なくできるので、予測器の構成を簡略化することができ、ニューラルネットワークを容易に学習させることができる。また、ニューラルネットワークのパラメータを適切な値に調整することができ、予測器の精度を向上させることができる。
【0111】
また、次元数が2000の変動条件を、2次元のデータセットに変換するので、複数の変動条件のうちに、変換結果が等しくなる複数の変動条件が存在する場合がある。この場合、変換結果が同じ複数の変動条件それぞれから予測器により予測されるエッチングプロファイルは同じとなる。本実施の形態においては、処理条件決定部151が処理条件を探索する際に、エッチングプロファイルが異なるものに対応する処理条件が探索されるので、複数の異なるエッチングプロファイルに対応する処理条件が選択される。このため、処理条件決定部151は、複数の処理条件のうちから目標となるエッチングプロファイルが予測される処理条件を効率的に探索することができる。
【0112】
なお、サンプリング間隔を0.01秒とする例を説明したが、サンプリング間隔はこれに限定されない。これより長いサンプリング間隔としてもよいし、これより短いサンプリング間隔としてもよい。例えば、サンプリング間隔は0.1秒としてもよいし、0.005秒としてもよい。要するに、変動条件の次元数に係わらず、変動条件を圧縮器で変換した変換結果の次元数が2次元であればよい。
【0113】
5.他の実施の形態
(1)上述した実施の形態においては、学習装置200は、学習用データに基づいて、予測器を生成する。学習装置200は、予測器を追加学習するようにしてもよい。学習装置200は、予測器が生成された後に、基板処理装置300により処理された基板Wの処理前後それぞれにおける被膜の膜厚特性および処理条件を取得する。そして、学習装置200は、処理前後それぞれにおける被膜の膜厚特性および処理条件から学習用データを生成し、予測器を機械学習させることにより、予測器を追加学習する。追加学習によって、予測器を構成するニューラルネットワークの構成は変更されないが、パラメータが調整される。
【0114】
基板処理装置300が実際に基板Wを処理した結果、得られる情報を用いて、予測器を機械学習させるので、予測器の精度を向上させることができる。また、予測器を生成するために用いられる学習用データの数をできるだけ少なくできる。
【0115】
図12は、追加学習処理の流れの一例を示すフローチャートである。追加学習処理は、学習装置200が備えるCPU201がRAM202に格納された追加学習プログラムを実行することにより、CPU201により実行される処理である。追加学習プログラムは、学習プログラムの一部である。
【0116】
図12を参照して、学習装置200が備えるCPU201は、生産時データを取得し(ステップS31)、処理をステップS32に進める。生産時データは、予測器が生成された後に、基板処理装置300が基板Wを処理する際の処理条件、処理前後それぞれの被膜の膜厚特性を含む。CPU201は、入出力I/F107を制御して、基板処理装置300から生産時データを取得する。生産時データは、CD-ROM209等の記録媒体に記録された実験データを記憶装置104で読み取ることにより取得されてもよい。
【0117】
ステップS32においては、変動条件が圧縮され、処理はステップS33に進む。学習装置200により生成された圧縮器に、変動条件が入力され、圧縮器の出力が変換結果として取得される。ステップS33においては、変換結果と、生産時データの処理条件に含まれる固定条件と、エッチングプロファイルと、が学習用データに設定される。エッチングプロファイルは、生産時データに含まれる処理前の被膜の膜厚特性と、生産時データに含まれる処理後の被膜の膜厚特性との差分である。圧縮器による変換結果と処理条件に含まれる固定条件とが入力データに設定される。エッチングプロファイルが正解データに設定される。
【0118】
次のステップS34においては、CPU201は、予測器を追加学習し、処理をステップS35に進める。入力データをニューラルネットワークである予測器に入力し、予測器の出力が正解データと等しくなるようにパラメータを決定する。これにより、予測器のパラメータがさらに調整される。
【0119】
ステップS35においては、調整が完了したか否かが判断される。評価用の学習用データで予測器の性能が評価される。評価結果が予め定められた追加学習用評価基準を満たす場合に調整完了と判断される。追加学習用評価基準は、予測器が生成される場合に用いられた評価基準よりも高い基準である。評価結果が追加学習用評価基準を満たさなければ(ステップS35でNO)、処理はステップS31に戻るが、評価結果が追加学習用評価基準を満たすならば(ステップS35でYES)、処理は終了する。
【0120】
(2)学習装置200は、情報処理装置100により決定された処理条件およびその処理条件から予測器により推測されるエッチングプロファイルを含む蒸留用データを用いて、新たな学習モデルを機械学習させた蒸留モデルを生成してもよい。これにより、新たな学習モデルを学習させるためのデータを準備するのが容易になる。
【0121】
(3)学習装置200は、オートエンコーダを機械学習することにより圧縮器を生成するようにしたが、本発明は、これに限定されない。圧縮器は、ノズル311と基板Wとの相対位置の時間的な変化を、他の方法で次元を低減させてもよい。
【0122】
(4)本実施の形態において、予測器を生成するために用いる学習用データにおいて、入力データが変動条件を変換した変換結果と固定条件と、を含む。本発明は、これに限定されない。入力データは変動条件を変換した変換結果のみを含み、固定条件を含まなくてもよい。
【0123】
(5)本実施の形態において、変動条件の一例としてノズル311と基板Wとの相対位置を示したが、本発明は、これに限定されない。エッチング液の温度、エッチング液の濃度、エッチング液の流量および基板Wの回転数の少なくとも1つが、時間の経過に伴って変動する場合は、それらを変動条件としてもよい。また、変動条件は、1種類に限らず、複数を含み合わせてもよい。
【0124】
(6)情報処理装置100および学習装置200を、基板処理装置300と別体とする場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。基板処理装置300に情報処理装置100が組み込まれていてもよい。さらに、基板処理装置300に、情報処理装置100および学習装置200が組み込まれていてもよい。また、情報処理装置100と学習装置200とは別体の装置としたが、それらは一体の装置として構成されてもよい。
【0125】
6.実施の形態における効果
本実施の形態における学習装置200は、基板処理装置300が変動条件を含む処理条件で駆動した後に基板Wに形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を取得し、圧縮器により変動条件が変換された変換結果を入力データとして含み、かつ、処理条件に対応するエッチングプロファイルを正解データとして含む学習用データをニューラルネットワークに機械学習させて、エッチングプロファイルを推測する学習モデルである予測器を生成する。学習用データとして、時間の経過に伴って変動する変動条件の次元数が低減するように変換された変換結果を入力データとして含むので、学習用データの次元数を少なくすることができる。このため、基板Wを処理するために時間の経過に伴って変化する条件を機械学習させるのに適した学習装置を生成することができる。
【0126】
また、学習装置200は、基板処理装置300が駆動することが可能な範囲内の複数の変動条件を生成し、生成された複数の変動条件をオートエンコーダに機械学習させて圧縮器を生成する。このため、圧縮器が、変動条件をオートエンコーダに学習させることにより生成されるので、圧縮器の生成が容易になる。
【0127】
また、処理条件は、変動条件と、時間の経過に伴って変動しない固定条件と、を含む。このため、固定条件が異なる処理に対応でき、固定条件が異なる複数の学習モデルを生成する必要がない。
【0128】
また、学習装置200は、予測器を生成した後に、基板処理装置300が処理条件に従って処理した基板Wに形成された被膜の処理前後の膜厚の差を示す処理量を取得し、圧縮器により仮の変動条件が変換された変換結果と取得された処理量とを含む追加学習用データを用いて学習モデルを学習させる。このため、学習モデルが追加学習されるので、学習モデルの性能を向上させることができる。
【0129】
また、学習装置200は、圧縮器により仮の変動条件が変換された変換結果を学習モデルに与えて学習モデルにより推測される処理量が許容条件を満たす場合に変換結果と学習モデルにより推測された処理量とを含む蒸留用データを用いて新たな学習モデルを生成させる。このため、新たな学習モデルを学習させるためのデータを準備するのが容易になる。
【0130】
また、基板処理装置300は、基板Wに処理液を供給するノズル311と、ノズルと基板Wとの相対位置を変化させるノズル移動機構301と、を備え、変動条件は、ノズル移動機構301により変化するノズル311と基板Wとの相対位置である。ノズル311と基板Wとの相対位置を変化させて、ノズル311から基板Wの処理液を供給することにより処理される被膜の処理量を推測する学習モデルが生成される。このため、エッチング処理における処理量を推測する学習モデルを生成することができる。
【0131】
また、情報処理装置100は、学習装置200により生成された圧縮器により仮の変動条件が変換された変換結果を学習装置200により生成された学習モデルに与えて学習モデルにより推測されるエッチングプロファイルが許容条件を満たす場合に仮の変動条件を含む処理条件を、基板処理装置300を駆動するための処理条件に決定する。このため、処理条件からエッチングプロファイルが推測されるので、複雑に動作するノズルの動作がエッチング処理の処理結果に与える影響を、実験等をして求める必要がない。また、許容条件を満たす処理量に対して複数の仮の変動条件を決定するので、許容条件を満たす複数のエッチングプロファイルにそれぞれ対応する複数の変動条件を決定することができる。したがって、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して複数の変動条件を提示することができる。複数の変動条件のうちからノズルを動作させる制御が容易な処理条件を選択すれば、基板処理装置300の制御が容易になる。
【0132】
また、情報処理装置100は、許容条件を満たす処理量に対して複数の処理条件を決定するので、許容条件を満たす複数のエッチングプロファイルにそれぞれ対応する複数の処理条件を決定することができる。そして、固定条件は、エッチング液の温度を含む。したがって、基板を処理する複雑なプロセスの処理結果に対して複数のエッチング液の温度を提示することができる。また、複数のエッチング液の温度のうちから、エッチング処理への適用が容易なエッチング液の温度を選択できる。そして、適用が容易なエッチング液の温度を選択できるので、エッチング処理に用いるエッチング液の温調が容易になる。
【0133】
7.請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
基板Wが基板の一例であり、エッチング液が処理液の一例であり、基板処理装置300が基板処理装置の一例であり、実験データ取得部261が実験データ取得部の一例であり、第1圧縮部263が第1圧縮器の一例であり、予測器が学習モデルの一例であり、予測器生成部265がモデル生成部の一例である。また、情報処理装置100が情報処理装置の一例であり、変動条件生成部251が変動条件生成部の一例であり、圧縮器生成部253が圧縮器生成部の一例であり、第2圧縮部157が第2圧縮器の一例であり、ノズル311が基板に処理液を供給するノズルの一例であり、ノズル移動機構301が移動部の一例であり、予測部159,評価部161および処理条件決定部151が処理条件決定部の一例である。
【符号の説明】
【0134】
1…基板処理システム、100…情報処理装置、200…学習装置、300…基板処理装置、301…ノズル移動機構、10…制御装置、303…ノズルモータ、305…ノズルアーム、311…ノズル、101,201…CPU、102,202…RAM、103,203…ROM、104,204…記憶装置、105,205…操作部、106,206…表示装置、107,207…入出力I/F、108,208…バス、109,209…CD-ROM、151…処理条件決定部、153…圧縮器受信部、155…予測器受信部、157…第2圧縮部、159…予測部、161…評価部、163…処理条件送信部、251…変動条件生成部、253…圧縮器生成部、255…圧縮器送信部、261…実験データ取得部、263…第1圧縮部、265…予測器生成部、267…予測器送信部、W…基板、WU…基板処理ユニット。