(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141117
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】経糸糊付装置
(51)【国際特許分類】
D06B 1/14 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
D06B1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047258
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】向出 充希
【テーマコード(参考)】
3B154
【Fターム(参考)】
3B154AB12
3B154BA05
3B154BB32
3B154BB47
3B154BB76
3B154BC01
3B154BC06
3B154BC22
3B154BC47
3B154DA24
3B154DA30
(57)【要約】
【課題】
経糸シートが巻き掛けられる第1のロール、経糸シートの経路を挟むように第1のロールに外接する第2のロール、及び第1のロールと第2のロールとの外接位置に糊液を供給する糊液供給装置を備え、糊液供給装置は、第1のロールの軸線方向に沿って延在するパイプ部を主体とする糊液供給パイプを有し、パイプ部が周壁を貫通する供給孔であって前記軸線方向に間隔をおいて複数形成される供給孔を有する経糸糊付装置において、経糸シート全体により確実に糊付けを行うことができる構成を提供する。
【解決手段】
経糸糊付装置における糊液供給装置の糊液供給パイプは、パイプ部における周壁の内周面に対する供給孔の開口部における最下点の位置が、内周面の最下点の位置よりも上方に位置するように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸シートが巻き掛けられる第1のロール、前記経糸シートの経路を挟むように前記第1のロールに外接する第2のロール、及び前記第1のロールと前記第2のロールとの外接位置に糊液を供給する糊液供給装置を備え、前記糊液供給装置は、前記第1のロールの軸線方向に沿って延在するパイプ部を主体とする糊液供給パイプを有し、前記パイプ部が周壁を貫通する供給孔であって前記軸線方向に間隔をおいて複数形成される供給孔を有する経糸糊付装置において、
前記糊液供給パイプは、前記周壁の内周面に対する前記供給孔の開口部における最下点の位置が、前記内周面の最下点の位置よりも上方に位置するように構成されている
ことを特徴とする経糸糊付装置。
【請求項2】
前記糊液供給パイプは、パイプ部から糊液を排出するための排出構造を有し、
前記排出構造は、前記内周面において前記最下点を含む位置に開口すると共に前記周壁を貫通する排出孔、及び前記排出孔が外部に対し開放された状態と閉塞された状態とを切り替える切替部を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の経糸糊付装置。
【請求項3】
前記排出構造は、前記軸線方向における、前記第1のロールの存在範囲外で糊液を排出するように構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の経糸糊付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経糸シートが巻き掛けられる第1のロール、経糸シートの経路を挟むように第1のロールに外接する第2のロール、及び第1のロールと第2のロールとの外接位置に糊液を供給する糊液供給装置を備え、糊液供給装置は、第1のロールの軸線方向に沿って延在するパイプ部を主体とする糊液供給パイプを有し、パイプ部が周壁を貫通する供給孔であって前記軸線方向に間隔をおいて複数形成される供給孔を有する経糸糊付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
経糸シートに糊付けを行うための経糸糊付装置として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。その特許文献1に開示された経糸糊付装置は、経糸シートが巻き掛けられる駆動ロール(第1のロール)と、経糸シートの経路を挟むように第1のロールに外接する第1支持ロール(第2のロール)と、第1のロール及び第2のロールの外接位置に上方から糊液を供給する糊液供給装置とを備えている。そして、その経糸糊付装置では、糊液供給装置から前記外接位置に糊液が供給され、第1のロール及び第2のロールの間を経糸シートが通過することで、経糸シートから余分な糊液が搾り出されつつ経糸シートに対する糊付けが行われるようになっている。
【0003】
また、特許文献2には、ロール等の配置において特許文献1の経糸糊付装置と同じように構成された糊液供給装置が開示されており、その特許文献2には、前記外接位置に上方から糊液を供給する糊液供給装置について、その具体的な構成が開示されている。その特許文献2の経糸糊付装置における糊液供給装置は、サイジングロール(第1のロール)の軸線方向(経糸糊付装置の幅方向)に沿って延在する糊液供給パイプを備えている。また、その糊液供給パイプは、両端部において糊液の供給源と接続されている。さらに、糊液供給パイプは、その周壁を貫通するように形成された供給孔であって前記軸線方向に間隔をおいて複数形成された供給孔を有している。そして、その経糸糊付装置においては、供給源から糊液供給パイプ内に糊液が供給されてその糊液が糊液供給パイプ内を流れることで、各供給孔から糊液が流れ出て前記外接位置に供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-2029号公報
【特許文献2】中国特許出願公開第111254609号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2の経糸糊付装置において、糊液供給パイプの各供給孔は、糊液供給パイプにおける周壁の最下点を含む位置に開口するように形成されている。すなわち、その糊液供給パイプにおいては、各供給孔は、その周壁に対する貫通方向が供給孔から糊液が流れ落ちる方向と一致するかたちで形成されている。したがって、その糊液供給パイプに供給された糊液は、各供給孔の位置に達した時点で流れ落ちるようになっている。
【0006】
その上で、糊液供給パイプと供給源とは、前記したように糊液供給パイプの両端部において接続されている。そのため、供給源から供給された糊液は、その供給位置に対し近い側の供給孔から順にその一部が流れ落ちつつ遠い側の供給孔へ向けて流れることとなる。その結果、供給孔の位置が前記供給位置から遠いほど、その位置に達する糊液の量が少なくなり、その供給孔から流れ落ちる糊液の量、すなわち、前記外接位置への糊液の供給量が少なくなってしまう。そして、そのように前記供給位置から遠い側において前記外接位置に対する糊液の供給量が少ない状態となると、その遠い側の位置における前記外接位置上の糊液の貯留量が不足した状態となってしまい、その箇所を通過する経糸シートの一部分への糊付けが不十分となる問題が生じる虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、各供給孔からの糊液の流出量が略均一となるような糊液供給パイプの構成とすることで、経糸シート全体により確実に糊付けを行うことができる経糸糊付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明は、前述のような経糸糊付装置を前提とし、その経糸糊付装置における糊液供給装置の糊液供給パイプが、パイプ部における周壁の内周面に対する供給孔の開口部における最下点の位置が、内周面の最下点の位置よりも上方に位置するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明において、糊液供給パイプは、パイプ部から糊液を排出するための排出構造を有し、その排出構造が、パイプ部の内周面において最下点を含む位置に開口すると共に周壁を貫通する排出孔、及び排出孔が外部に対し開放された状態と閉塞された状態とを切り替える切替部を含むように構成されるようにしても良い。さらに、その排出構造は、前記軸線方向における、第1のロールの存在範囲外で糊液を排出するように構成されるようにしても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明による経糸糊付装置では、糊液供給装置における糊液供給パイプは、そのパイプ部の周壁の内周面に対する供給孔の開口部における最下点の位置が、内周面の最下点の位置よりも上方に位置しているようなかたちで構成されている。それにより、供給源からパイプ部内に供給された糊液は、前記軸線方向において各供給孔の位置に到達してもすぐに流れ出ること無く、そのパイプ部内において一定量(パイプ部内での糊液の液面高さが供給孔の開口部における最下点の位置に達するまで)貯留された状態となる。そして、その貯留された糊液は、パイプ部内においてその液面高さが供給孔の開口部における最下点の位置を超えた時点で、初めて各供給孔から流れ落ちることとなる。したがって、供給孔から糊液が流れ落ちるタイミングが各供給孔で略同じタイミングとなり、その流出量も各供給孔で略同じ量となる。それにより、前記外接位置上における糊液の貯留量も前記軸線方向において略均一となるため、経糸シート全体に十分に糊付けを行うことができる。
【0011】
さらに、その本発明において、糊液供給パイプを、パイプ部の内周面における最下点を含む位置に開口する排出孔と、その排出孔の開放状態及び閉塞状態を切り替えるための切替部とを含む排出構造を有するように構成すれば、経糸糊付装置の停止時においてパイプ部内の糊液を外部に排出することが容易に行えるようになる。詳しくは、前述のようにパイプ部内に糊液が貯留される本発明においては、経糸糊付装置の停止時(特に、その停止が長時間に及ぶような場合)にパイプ部内において糊液が固化するのを防止するため、そのパイプ部内の糊液を外部に排出するのが望ましい。その上で、その糊液を排出するための構成を、前記のような排出孔及び切替部を含む排出構造とすることで、そのパイプ部内からの糊液の排出をより容易に行うことが可能となる。また、その排出構造を、前記軸線方向における、第1のロールの存在範囲外で糊液を排出するように構成すれば、パイプ部から排出した糊液の回収がより行いやすいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る一実施形態における経糸糊付装置の側面図である。
【
図2】本発明に係る一実施形態における経糸糊付装置の正面図である。
【
図3】本発明に係る一実施形態における糊液供給パイプのA-A断面図である。
【
図4】本発明に係る一実施形態における糊液供給パイプのB-B断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、
図1~
図4に基づき、本発明が適用された経糸糊付装置の一実施形態(実施例)について説明する。
【0014】
経糸糊付装置1は、糊液Sを貯留する糊付け槽3と、経糸シートTが巻き掛けられると共に糊液Sに浸されるサイジングロール11と、サイジングロール11に外接する第1のスクイズロール13及び第2のスクイズロール15とを備えている。また、経糸糊付装置1は、サイジングロール11と第1のスクイズロール13との外接位置に上方から糊液Sを供給する糊液供給装置20も備えている。なお、本実施例では、サイジングロール11が本発明で言う第1のロールに相当し、第1のスクイズロール13が第2のロールに相当する。
【0015】
サイジングロール11は、経糸シートTが巻き掛けられるロールであり、その両端に取り付けられた支軸12、12により、経糸糊付装置1におけるフレーム(図示略)に対し回転可能に支持されている。そして、サイジングロール11は、その下部が糊付け槽3内に貯留された糊液Sに浸された状態となるように設けられている。
【0016】
なお、経糸糊付装置1は、サイジングロール11を回転駆動する駆動機構(図示略)を備えている。それにより、サイジングロール11は、経糸シートTの進行に合わせて積極的に回転駆動される。そして、経糸シートTは、サイジングロール11に巻き掛けられるかたちで案内されており、そのように案内される過程で糊液Sに浸されて糊液Sが含浸された状態となる。
【0017】
第2のスクイズロール15は、その経糸シートTに含浸された糊液Sを搾るためのものであって、サイジングロール11に対する前側に位置する配置で設けられている。また、第2のスクイズロール15は、その軸線方向をサイジングロール11の軸線方向(経糸糊付装置1の幅方向)と一致させた向きで、その両端に取り付けられた支軸16、16によって前記フレームに対し回転可能に支持されている。なお、第2のスクイズロール15は、押圧機構(図示略)を介して前記フレームに対し支持されており、サイジングロール11に対し押圧された状態で外接するように設けられている。したがって、第2のスクイズロール15は、前記のようにサイジングロール11が回転駆動されるのに伴い、従動回転するようになっている。
【0018】
そして、前記のようにサイジングロール11に巻き掛けられた経糸シートTは、前記のように外接するサイジングロール11と第2のスクイズロール15との間を通過した後、外部へ向けて引き出される。また、そのようにサイジングロール11と第2のスクイズロール15との間を通過する際に、前記のように糊液Sが含浸された経糸シートTから余分な糊液Sが搾られる。
【0019】
第1のスクイズロール13は、サイジングロール11に対する後側に位置する配置で設けられている。そして、その第1のスクイズロール13も、その軸線方向を前記幅方向と一致させた向きで、その両端に取り付けられた支軸14、14によって前記フレームに対し回転可能に支持されている。また、第1のスクイズロール13も、第2のスクイズロール15と同様に、前記押圧機構を介して前記フレームに対し回転可能に支持され、サイジングロール11に対し押圧された状態で外接している。したがって、第1のスクイズロール13も、サイジングロール11が回転駆動されるのに伴い、従動回転するようになっている。なお、そのようにサイジングロール11に対し第1のスクイズロール13が外接することで、サイジングロール11と第1のスクイズロール13との間(外接位置の上側)に楔状の間隙である楔状領域が形成された状態となる。
【0020】
その上で、その楔状領域の上方には、楔状領域に向けて糊液Sを供給するための糊液供給装置20が設けられている。その糊液供給装置20は、サイジングロール11の軸線方向に沿って延在すると共に前記軸線方向に間隔をおいて複数形成された供給孔32を有する糊液供給パイプ30と、供給孔32毎に設けられて糊液供給パイプ30に対し取り付けられるノズルユニット40とを備えるように構成されている。
【0021】
具体的には、糊液供給パイプ30は、管体とその管体の両端を閉塞する閉塞部材(図示略)とから成るパイプ部31を主体として構成されており、そのパイプ部31の長さ寸法がサイジングロール11における前記幅方向の寸法よりも大きい寸法であるように形成されている。そして、糊液供給パイプ30は、そのパイプ部31の軸線方向が前記幅方向と平行を成す(サイジングロール11の軸線方向に沿って延在する)ような向きで、楔状領域の上方に設けられている。但し、糊液供給パイプ30は、経糸糊付装置1の前後方向に関しては、前記幅方向に見て、前記外接位置よりも若干第1のスクイズロール13側に位置するように設けられている。また、糊液供給パイプ30は、前記幅方向に関しては、そのパイプ部31の中央をサイジングロール11の中央に略一致させるように設けられている。したがって、糊液供給パイプ30は、前記幅方向に関し、サイジングロール11の存在範囲に亘って存在している。
【0022】
なお、経糸糊付装置1において、その糊液供給パイプ30の取り付けは、図示しないブラケット等を介して行われている。また、糊液供給パイプ30において、パイプ部31の一方の端部には供給管7が接続されており(図示略)、その供給管7を介して供給源5から糊液Sが供給されるようになっている。
【0023】
また、糊液供給パイプ30は、パイプ部31の周壁を貫通して外周面31aに開口する供給孔32を有している。なお、その供給孔32は、前記幅方向に間隔を置いて複数形成されている。さらに、糊液供給パイプ30は、各供給孔32の位置で、パイプ部31の外周面31aにおける供給孔32の周囲から半径方向に突出するように形成された筒状の取付部33を有している。したがって、糊液供給パイプ30は、そのパイプ部31内の空間と各取付部33内の空間とが各供給孔32を介して連通された構成となっている。
【0024】
そして、その糊液供給パイプ30における供給孔32毎の取付部33に対し、ノズルユニット40が取り付けられている。その各ノズルユニット40は、取付部33に取り付けられる部分であるエルボ41と、エルボ41に取り付けられるノズル42とで構成されている。そして、そのような経糸糊付装置1において、糊液供給パイプ30のパイプ部31に供給源5から糊液Sが供給されることで、その糊液Sが各ノズルユニット40におけるノズル42の先端から噴出されて楔状領域に供給されることとなる。それにより、その楔状領域において、糊液Sが溜められた糊液溜まり18が形成される。
【0025】
その上で、経糸シートTは、第1のスクイズロール13に巻き掛けられるかたちで案内され、前記のように外接するサイジングロール11と第1のスクイズロール13との間を通過した後、前記のようにサイジングロール11に巻き掛けられる。そして、そのように両ロール間に形成された糊液溜まり18を経糸シートTが通過することで、その経糸シートTに対し糊液Sが含浸された状態となる。そして、そのように糊液Sが含浸された経糸シートTがサイジングロール11と第1のスクイズロール13との間を通過する際に、経糸シートTから余分な糊液Sが搾られる。
【0026】
なお、経糸糊付装置1は、糊液Sが糊付け槽3に供給されるのに伴って糊付け槽3から溢流する糊液Sを受ける回収箱50を備えている。その回収箱50は、糊付け槽3の下方に設けられ、上方が開放された筐体状に形成されている。さらに、その回収箱50は、その前壁51及び後壁52の間隔が前記前後方向における糊付け槽3の寸法よりも大きく、且つ、その左右の横壁53、54間の間隔が前記幅方向における糊付け槽3の寸法よりも大きいものとなっている。そして、前記した楔状領域における糊液溜まり18に糊液Sが供給されるのに伴ってサイジングロール11及び第1のスクイズロール13の両側へ溢流する糊液Sも、回収箱50によって受けられるようになっている。なお、経糸糊付装置においては、その回収箱50で受けられた糊液Sは、回収槽60へと流されて回収される。
【0027】
以上のような経糸糊付装置1において、本発明では、糊液供給パイプは、周壁の内周面に対する供給孔の開口部における最下点の位置が、内周面の最下点の位置よりも上方に位置するように構成される。その上で、本実施例では、その糊液供給パイプ30において、各供給孔32は、パイプ部31の前側(第1のスクイズロール13に対するサイジングロール11側)に開口するように形成されている。
【0028】
その供給孔32について、より詳しくは、各供給孔32は、パイプ部31における前記前側において、その中心線が水平方向と略平行を成すと共に、上下方向に関し、その中心(中心線の位置)がパイプ部31の略中央に位置するように形成されている。また、その孔径(内径)は、パイプ部31の内径よりも小さい径となっている。
【0029】
したがって、その糊液供給パイプ30においては、各供給孔32は、パイプ部31の周壁における内周面31bの下端の位置よりも上方に位置するように形成されたものとなっている。すなわち、その糊液供給パイプ30においては、
図3に示すように、パイプ部31の内周面31bに対する各供給孔32の開口部は、その最下点の位置(第1位置P1)が内周面31bの最下点の位置(第2位置P2)よりも上方に位置するように、内周面31bに開口している。
【0030】
そして、そのように構成された本実施例の経糸糊付装置1によれば、糊液供給パイプ30のパイプ部31に供給源5から供給された糊液Sは、パイプ部31内において、先ずは糊液Sの液面高さが第1位置P1に達するまで貯留された状態とされる。そして、その貯留された糊液Sの液面高さが第1位置P1を超えた時点で、糊液Sが各供給孔32から取付部33内を流れてノズルユニット40先端のノズル42から流れ出る。なお、前述のようにパイプ部31はその軸線方向が前記幅方向(水平方向)と平行を成すように設けられていることから、糊液Sの供給に伴うパイプ部31内での前記液面高さの変化は、前記幅方向に亘り略一様である。したがって、供給孔32から糊液Sが流れ落ちるタイミングが各供給孔32で略同じタイミングとなり、その流出量も各供給孔32で略同じ量となる。それにより、前記した外接位置上における糊液Sの貯留量も前記軸線方向において略均一となるため、経糸シートT全体に十分に糊付けを行うことができる。
【0031】
また、本実施例の経糸糊付装置1において、糊液供給パイプ30は、
図4に示すように、パイプ部31から糊液Sを排出するための排出構造35を有するように構成されている。そして、その排出構造35は、パイプ部31の周壁を貫通する排出孔36と、排出孔36の周囲から半径方向に突出するように形成された排出部37と、排出孔36が外部に対し開放された状態と閉塞された状態とを切り替える切替部38とで構成されている。
【0032】
その排出構造35について、具体的には、その排出孔36は、パイプ部31の下側に開口すると共に中心線が上下方向と平行を成すようなかたちで形成されている。より詳しくは、その排出孔36は、上下方向に見て、その中心がパイプ部31の内周面31bにおける最下点の位置(第2位置P2)と略一致するように形成されている。すなわち、排出孔36は、パイプ部31の内周面31bにおける最下点の位置(第2位置P2)を含む位置に開口するように形成されている。また、排出孔36は、前記幅方向に関しては、回収箱50における一方の横壁53とサイジングロール11との間に位置するようにパイプ部31に形成されている。
【0033】
その上で、糊液供給パイプ30には、そのパイプ部31の外周面31aにおける排出孔36の周囲から半径方向に(下方へ向けて)突出するようなかたちで、円筒状の排出部37が形成されている。さらに、その排出部37の先端には、切替部38が取り付けられている。なお、その切替部38は、本実施例では所謂ボールバルブである。そして、その切替部(ボールバルブ)38は、流入口において排出部37に連通すると共に、流出口38aが排出部37に対して鉛直下方に位置するようなかたちで設けられている。したがって、その切替部38における流出口38aも、前記幅方向に関し、回収箱50における一方の横壁53とサイジングロール11との間に位置している。すなわち、その流出口38aは、前記幅方向に関し、サイジングロール11の存在範囲外に位置している。
【0034】
そして、糊液供給パイプ30は、そのような排出構造35を有していることで、切替部38の開閉操作により、排出孔36が外部に対し開放された状態と閉塞された状態とを(排出のON/OFF)を切り替えることが可能となっている。それにより、経糸糊付装置1の停止時において、パイプ部31内の糊液Sを容易に排出することができる。
【0035】
詳しくは、前述のように糊液供給パイプ30がそのパイプ部31の内部に糊液Sを貯留するように構成されている場合には、経糸糊付装置1の停止時(特に、その停止が長時間に及ぶような場合)に、その糊液Sが固化するのを防止するため、パイプ部31内の糊液Sを排出するのが望ましい。その上で、糊液供給パイプ30を、前記のような排出孔36及び切替部38を含む排出構造35を有するような構成としたことで、その切替部38での前記開閉操作のみでパイプ部31内の糊液Sを排出することが可能となる。それにより、経糸糊付装置1の停止時において、パイプ部31内の糊液Sを容易に排出することができる。さらに、その排出構造は、前記幅方向におけるサイジングロール11の存在範囲外の位置において糊液Sを排出することが可能であるように構成されているため、パイプ部31から排出した糊液Sの回収がより行いやすいものとなっている。
【0036】
以上では、本発明が適用された経糸糊付装置の一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)について説明した。しかし、本発明は、前記実施例において説明した構成に限定されるものではなく、以下のような別の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0037】
(1)糊液供給パイプについて、本発明は、パイプ部の内周面に対する供給孔の開口部における最下点の位置がパイプ部の内周面の最下点の位置よりも上方に位置するように各供給孔が形成される、という必要条件を特徴としている。その上で、前記実施例では、糊液供給パイプ30は、そのパイプ部31の周壁を貫通する各供給孔32が、パイプ部31における前記前側において、その中心線が水平方向と略平行を成すと共に、上下方向に関しその中心(中心線の位置)がパイプ部31の略中央に位置するように形成されている。また、その各供給孔32の孔径は、パイプ部31の内径よりも小さくなっている。それにより、前記実施例の糊液供給パイプ30は、前記必要条件を満たすものとなっている。但し、本発明の経糸糊付装置における糊液供給パイプ30は、前記必要条件を満たすものであれば、その供給孔が前記実施例のように形成されるものには限られない。
【0038】
例えば、その糊液供給パイプにおいて、各供給孔は、上下方向に関しその中心がパイプ部の中心からズレた位置に形成されていても良い。また、各供給孔は、その中心線が水平方向に対して角度を成すように形成されていても良い。さらに、各供給孔は、パイプ部の後側に開口するように形成されていても良い。
【0039】
また、本発明において、糊液供給パイプのパイプ部は、その断面形状が前記実施例のような円形を成すかたちに形成されたものには限られない。例えば、パイプ部は、その断面形状が楕円形や多角形を成すように形成されたものであっても良い。
【0040】
(2)糊液供給装置について、前記実施例の糊液供給装置20は、糊液供給パイプ30におけるパイプ部31が供給孔32毎に半径方向に突出する取付部33を有すると共に、各取付部32に対しノズルユニット40が取り付けられ、そのノズルユニット40を介して糊液Sを供給するように構成されている。しかし、本発明において、糊液供給装置は、そのようなノズルユニットを備えず、糊液供給パイプ(パイプ部)から直接的に糊液Sを供給するように構成されていても良い。また、そのようにノズルユニットを備えない場合には、糊液供給装置(糊液供給パイプ)は、そのパイプ部に前記実施例の取付部33のような半径方向に筒状に突出する部分を有していないものとしても良い。そして、その場合には、糊液は、パイプ部に形成された供給孔から直接的に供給されることとなる。
【0041】
(3)排出構造について、前記実施例では、糊液供給パイプ30がパイプ部31内の糊液Sを排出するための排出構造35を有し、その排出構造35が、排出孔36、排出部37、及び切替部38から成るように構成されている。また、その排出構造35は、排出孔36が前記幅方向における回収箱50の一方の横壁53とサイジングロール11との間に位置するように形成され、その排出孔36の鉛直下方に糊液Sを排出するように構成されている。しかし、糊液供給パイプが排出構造を有するように構成される場合であっても、その排出構造は、前記実施例のように構成されたものには限られない。
【0042】
例えば、排出構造は、前記幅方向における回収箱50の他方の側壁54とサイジングロール11との間で糊液Sを排出するように構成されても良い。また、排出構造は、前記幅方向におけるサイジングロール11の存在範囲外の位置において糊液Sを排出するように構成されるのにも限られず、前記幅方向におけるサイジングロール11の存在範囲内の位置において糊液Sを排出するように構成されても良い。さらに、排出構造は、糊液供給パイプにおいて、前記幅方向に関し複数設けられていても良い。
【0043】
また、排出構造において、排出孔が外部に対し開放された状態と閉塞された状態とを切り替える切替部は、前記実施例のようなボールバルブに限られず、排出部に着脱可能に取り付けられる蓋部材で構成されるものとしても良い。さらに、排出構造は、前記実施例のようなパイプ部31の周壁を貫通する排出孔36を含むように構成されるものにも限られない。例えば、パイプ部における管体の両端に設けられる閉塞部材を管体から取り外し可能なように、糊液供給パイプを構成するものとしても良い。なお、本発明の経糸糊付装置においては、パイプ部内の糊液を排出するための構造を糊液供給パイプが備えることは必須では無く、その排出を行わないように糊液供給パイプが構成されていても良い。
【0044】
(4)前提となる経糸糊付装置について、前記実施例の経糸糊付装置1は、サイジングロール11が糊付け槽3内の糊液Sに浸され、第1、第2の2つのスクイズロール13、15が経糸シートTの経路を挟むようにサイジングロール11に外接するかたちで設けられるように構成されたものとなっている。しかし、本発明が適用される経糸糊付装置は、そのように構成されたものに限られない。
【0045】
例えば、経糸糊付装置は、サイジングロールに加え、第2のスクイズロールも糊付け槽の糊液Sに浸されるように構成されていても良い。但し、その場合の糊付け槽は、前記前後方向においてサイジングロール及び第2のスクイズロールを包含するような大きさのものとされる。また、経糸糊付装置は、第2のスクイズロールのみが糊付け槽の糊液Sに浸されるように構成されていても良い。
【0046】
また、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 経糸糊付装置
3 糊付け槽
5 供給源
7 供給管
11 サイジングロール
12 支軸
13 第1のスクイズロール
14 支軸
15 第2のスクイズロール
16 支軸
18 糊液溜まり
20 糊液供給装置
30 糊液供給パイプ
31 パイプ部
31a 外周面
31b 内周面
32 供給孔
33 取付部
35 排出構造
36 排出孔
37 排出部
38 切替部
38a 流出口
40 ノズルユニット
41 エルボ
42 ノズル
50 回収箱
51 前壁
52 後壁
53 横壁
54 横壁
P1 第1位置
P2 第2位置
S 糊液
T 経糸シート