(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141121
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230928BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 652M
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047267
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】河野 洋志
(57)【要約】
【課題】ゲート絶縁膜の破壊を抑制可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、第1電極と、前記第1電極に接続され、炭化シリコンを含み、第1導電形の第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられ、第2導電形の第2半導体層と、前記第2半導体層上の一部に設けられ、第1導電形の第3半導体層と、前記第2半導体層及び前記第3半導体層に接続された第2電極と、前記第1半導体層の上部内、前記第2半導体層の内部、及び、前記第3半導体層の内部に設けられた第3電極と、前記第1半導体層、前記第2半導体層及び前記第3半導体層と前記第3電極の間に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜と前記第1半導体層及び前記第2半導体層との間に設けられ、前記絶縁膜に接し、不純物濃度が前記第1半導体層の不純物濃度、及び、前記第2半導体層の不純物濃度よりも低い第4半導体層と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極に接続され、炭化シリコンを含み、第1導電形の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に設けられ、炭化シリコンを含み、第2導電形の第2半導体層と、
前記第2半導体層上の一部に設けられ、炭化シリコンを含み、第1導電形の第3半導体層と、
前記第2半導体層及び前記第3半導体層に接続された第2電極と、
前記第1半導体層の上部内、前記第2半導体層の内部、及び、前記第3半導体層の内部に設けられた第3電極と、
前記第1半導体層と前記第3電極の間、前記第2半導体層と前記第3電極の間、及び、前記第3半導体層と前記第3電極の間に設けられ、酸化シリコンを含む絶縁膜と、
前記絶縁膜と前記第1半導体層の間、及び、前記絶縁膜と前記第2半導体層との間に設けられ、前記絶縁膜に接し、炭化シリコンを含み、不純物濃度が前記第1半導体層の不純物濃度、及び、前記第2半導体層の不純物濃度よりも低い第4半導体層と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記第1電極と前記第3電極との間に設けられ、前記第1半導体層及び前記第4半導体層に接し、第2導電形であり、不純物濃度が前記第2半導体層の不純物濃度よりも高い第5半導体層をさらに備えた請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第3電極が延びる方向に沿って配列され、前記第5半導体層及び前記第2半導体層に接した複数の第2導電形の接続層をさらに備えた請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2半導体層は、
前記第1半導体層に接した下層と、
前記第3半導体層に接し、不純物濃度が前記下層の不純物濃度よりも低い上層と、
を有する請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1半導体層は、
前記第1電極に接した第1層と、
前記第1層上に設けられ、不純物濃度が前記第1層の不純物濃度よりも低い第2層と、
前記第2層上に設けられ、前記第2半導体層及び前記第4半導体層に接し、不純物濃度が前記第2層の不純物濃度よりも高い第3層と、
を有する請求項1~4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第4半導体層は第1導電形である請求項1~5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第4半導体層は第2導電形である請求項1~5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第4半導体層は、
前記第1半導体層に接し、第1導電形である下部と、
前記第2半導体層に接し、第2導電形である上部と、
を有する請求項1~5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第4半導体層は、
前記第1半導体層に接し、第2導電形である下部と、
前記第2半導体層に接し、第1導電形である上部と、
を有する請求項1~5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第3半導体層は前記絶縁膜及び前記低濃度層に接しており、前記低濃度層は前記第2電極から離隔している請求項1~9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記低濃度層は前記絶縁膜と前記第3半導体層の間にも設けられており、前記第3半導体層は前記絶縁膜から離隔している請求項1~9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンに替えて炭化シリコンを用いた電力用半導体装置が開発されている。炭化シリコンを用いた半導体装置は、シリコンを用いた半導体装置と比べて強い電界に耐えられるため、耐圧とオン抵抗とのバランスを改善できる。しかしながら、炭化シリコン中の電界が強くなることにより、ゲート絶縁膜に印加される電界も増加し、ゲート絶縁膜の信頼性が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、ゲート絶縁膜の破壊を抑制可能な半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1電極と、前記第1電極に接続され、炭化シリコンを含み、第1導電形の第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられ、炭化シリコンを含み、第2導電形の第2半導体層と、前記第2半導体層上の一部に設けられ、炭化シリコンを含み、第1導電形の第3半導体層と、前記第2半導体層及び前記第3半導体層に接続された第2電極と、前記第1半導体層の上部内、前記第2半導体層の内部、及び、前記第3半導体層の内部に設けられた第3電極と、前記第1半導体層と前記第3電極の間、前記第2半導体層と前記第3電極の間、及び、前記第3半導体層と前記第3電極の間に設けられ、酸化シリコンを含む絶縁膜と、前記絶縁膜と前記第1半導体層の間、及び、前記絶縁膜と前記第2半導体層との間に設けられ、前記絶縁膜に接し、炭化シリコンを含み、不純物濃度が前記第1半導体層の不純物濃度、及び、前記第2半導体層の不純物濃度よりも低い第4半導体層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図2】
図2(a)及び(b)は、第1の実施形態に係る半導体装置の動作を示す断面図である。
【
図3】
図3(a)~(d)は、第1の実施形態に係る半導体装置の第1の製造方法を示す図である。
【
図4】
図4(a)~(d)は、第1の実施形態に係る半導体装置の第2の製造方法を示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第3の実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図7】
図7(a)は
図6に示すB-B’線による断面図であり、
図7(b)は
図6に示すC-C’線による断面図である。
【
図8】
図8(a)~(d)は、第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図である。
【
図9】
図9は、第4の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第5の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図11】
図11は、第6の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図12】
図12は、第7の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
なお、図は模式的なものであり、適宜簡略化されている。後述する他の図についても同様である。また、図間において、各構成要素の寸法比は厳密に一致しているとは限らない。
【0008】
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置1は、トレンチゲート型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)である。半導体装置1においては、ドレイン電極10(第1電極)と、半導体部分20と、ソース電極30(第2電極)と、ゲート電極40(第3電極)と、ゲート絶縁膜50(絶縁膜)が設けられている。
【0009】
以下、本明細書においては、説明の便宜上、XYZ直交座標系を採用する。ドレイン電極10とソース電極30とを結ぶ方向を「Z方向」とし、ゲート電極40が延びる方向を「Y方向」とし、Z方向及びY方向に直交する方向を「X方向」とする。また、Z方向のうち、ドレイン電極10からソース電極30に向かう方向を「上」ともいい、その反対方向を「下」ともいうが、この表現も便宜的なものであり、重力の方向とは無関係である。
【0010】
ドレイン電極10及びソース電極30は、XY平面に沿って拡がる板状である。半導体部分20はドレイン電極10上に配置されている。ソース電極30は半導体部分20上に配置されている。ゲート電極40は半導体部分20の内部に配置されている。ゲート電極40は、X方向に沿って複数配列されている。各ゲート電極40はY方向に延びている。各ゲート電極40は半導体部分20上に設けられたゲートパッド(図示せず)に接続されており、ゲートパッドから各ゲート電極40に電圧が印加される。ゲート絶縁膜50はゲート電極40と半導体部分20との間に配置されており、ゲート電極40を半導体部分20から絶縁している。
【0011】
半導体部分20は、炭化シリコン(SiC)を含み、例えば、炭化シリコンの単結晶からなる。半導体部分20には、ドナー又はアクセプタとなる不純物が局所的に導入されており、各部分の導電形がn形又はp形とされている。ドナーとなる不純物は例えば窒素(N)であり、アクセプタとなる不純物は例えばアルミニウム(Al)又はボロン(B)である。ゲート絶縁膜50は酸化シリコン(SiO)を含む。
【0012】
半導体部分20においては、ドレイン層21(第1層)、ドリフト層22(第2層)、ベース層23(第2半導体層)、ソース層24(第3半導体層)、低濃度層25(第4半導体層)、埋込p形層26(第5半導体層)が設けられている。例えば、ドレイン層21の導電形はn++形である。ドリフト層22の導電形はn-形である。ベース層23の導電形はp形である。ソース層24の導電形はn+形である。低濃度層25の導電形はn-形である。埋込p形層26の導電形はp++形である。
【0013】
なお、導電形を表す文字「n」及び「p」に付した上付きの記号は不純物濃度の相対的な高低を表す。n形については、不純物濃度が高い順に、「n++形」、「n+形」、「n形」、「n-形」である。p形についても同様である。また、本明細書において「不純物濃度」とは、半導体の導通に寄与する実効的な不純物濃度をいい、ある領域にドナーとなる不純物とアクセプタとなる不純物の双方が含まれている場合は、相殺分を除いた濃度をいう。
【0014】
n++形のドレイン層21は、ドレイン電極10上に配置されており、ドレイン電極10に接し、ドレイン電極10に接続されている。なお、本明細書において「接続」とは、電気的な接続をいう。n-形のドリフト層22はドレイン層21上に配置され、ドレイン層21に接し、ドレイン層21に接続されている。ドリフト層22の不純物濃度はドレイン層21の不純物濃度よりも低い。ドレイン層21及びドリフト層22により、第1半導体層を構成しているが、第1半導体層はドリフト層22のみで構成されることも可能である。
【0015】
p形のベース層23はドリフト層22上に配置され、ドリフト層22に接している。ベース層23においては、p+形の下層23aとp形の上層23bが設けられている。下層23aはドリフト層22に接している。上層23bは下層23a上に配置されている。下層23aの不純物濃度は、上層23bの不純物濃度よりも高い。
【0016】
n+形のソース層24は、ベース層23上の一部に配置されている。ソース層24はベース層23の上層23bに接している。ソース層24は複数設けられており、X方向に沿って配列されている。各ソース層24はY方向に延びている。
【0017】
ソース電極30は、ベース層23上及びソース層24上に配置され、ベース層23の上層23b及びソース層24に接続されている。ゲート電極40は、ドリフト層22の上部内、ベース層23の内部、及び、ソース層24の内部に配置されている。換言すれば、ゲート電極40は、ソース層24及びベース層23をZ方向に貫通し、その下端はドリフト層22の上部内に位置している。
【0018】
ゲート絶縁膜50はゲート電極40を覆っており、ゲート電極40に接している。ゲート絶縁膜50は、ドリフト層22とゲート電極40との間、ベース層23とゲート電極40との間、及び、ソース層24とゲート電極40との間に配置されている。半導体部分20の上面の一部はゲート絶縁膜50によって覆われている。半導体部分20の上面のうち、ゲート絶縁膜50によって覆われていない領域は、ゲート絶縁膜50によって覆われている領域と比較して、Z方向における高さが僅かに低い。
【0019】
n-形の低濃度層25は、ゲート絶縁膜50とドリフト層22との間、ゲート絶縁膜50とベース層23との間、及び、ゲート絶縁膜50とソース層24との間に配置されている。低濃度層25は、ゲート絶縁膜50、ドリフト層22、ベース層23、ソース層24及びソース電極30に接している。低濃度層25の不純物濃度はドリフト層22の不純物濃度よりも低い。また、低濃度層25の不純物濃度はベース層23の上層23bの不純物濃度よりも低い。
【0020】
p++形の埋込p形層26は、ドレイン電極10とゲート電極40との間に配置されており、ドリフト層22内であって低濃度層25の直下に配置されている。埋込p形層26はドリフト層22及び低濃度層25に接している。埋込p形層26は低濃度層25を介してゲート絶縁膜50から離隔している。これにより、埋込p形層26の不純物濃度を高くしても、ゲート絶縁膜50に欠陥を導入する虞がないため、埋込p形層26の不純物濃度を高くすることができる。埋込p形層26の不純物濃度はベース層23の上層23bの不純物濃度よりも高い。埋込p形層26は、図示しない部分でベース層23に接続されている。埋込p形層26をベース層23に接続する態様については、第3の実施形態において説明する。
【0021】
以下、各層の不純物濃度の一例を挙げる。n++形のドレイン層21の不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3である。n-形のドリフト層22の不純物濃度は、例えば、1×1015cm-3以上3×1016cm-3以下である。p形のベース層23の不純物濃度は、例えば、5×1016cm-3以上1×1019cm-3以下である。ベース層23の上層23bにおける低濃度層25と隣接する部分の不純物濃度は、例えば、1×1017cm-3である。n+形のソース層24の不純物濃度は、例えば、5×1016cm-3以上5×1017cm-3以下である。
【0022】
n-形の低濃度層25の不純物濃度は、例えば、1×1014cm-3以上1×1015cm-3以下である。p++形の埋込p形層26の不純物濃度は、例えば、5×1018cm-3以上2×1019cm-3以下である。上述の如く、低濃度層25の不純物濃度はドリフト層22の不純物濃度よりも低く、p形のベース層23の上層23bの不純物濃度よりも低い。また、埋込p形層26の不純物濃度はp形のベース層23の上層23bの不純物濃度よりも高い。
【0023】
ドリフト層22の厚さは、例えば、4μm以上50μm以下である。これにより、半導体装置1の耐圧は、例えば、650V以上6.5kV以下となる。なお、要求される耐圧が高いほど、ドリフト層22の不純物濃度を低くし、ドリフト層22の厚さを厚くする必要がある。また、低濃度層25の厚さは、例えば、10nm以上100nm以下である。
【0024】
次に、本実施形態に係る半導体装置1の動作について説明する。
図2(a)及び(b)は、本実施形態に係る半導体装置の動作を示す断面図である。
図2(a)及び(b)は
図1の領域Aを示す。
図2(a)はオフ状態を示し、
図2(b)はオン状態を示す。
【0025】
ドレイン電極10とソース電極30の間には、ドレイン電極10を正極としソース電極30を負極とした電圧が印加される。この状態で、
図2(a)に示すように、ゲート電極40に閾値電圧よりも低い電圧が印加されると、n
-形のドリフト層22とp形のベース層23の界面、及び、n
-形のドリフト層22とp
++形の埋込p形層26の界面を起点として空乏層が拡がる。また、厚さが薄く不純物濃度が低いn
-形の低濃度層25も空乏化し、電流を流さなくなる。これにより、半導体装置1がオフ状態となる。
【0026】
このとき、埋込p形層26の不純物濃度は高いため、ドリフト層22内には埋込p形層26との界面を起点として空乏層が大きく伸びる。これにより、埋込p形層26の近傍において空乏層が厚くなり、その分、電界強度が低下する。特に、電界が集中しやすい点101の近傍において、等電位線102の間隔が広くなり、電界強度が低下する。この結果、ゲート絶縁膜50に印加される電界強度も低くなり、ゲート絶縁膜50の信頼性が向上する。
【0027】
一方、
図2(b)に示すように、ゲート電極40に閾値電圧よりも高い電圧が印加されると、n
-形の低濃度層25に電子103が蓄積されて蓄積モードとなり、ドレイン電極10、ドレイン層21、ドリフト層22、低濃度層25、ソース層24、ソース電極30の経路で電流が流れる。この結果、半導体装置1がオン状態になる。
【0028】
次に、本実施形態に係る半導体装置1の製造方法について説明する。
先ず、第1の製造方法について説明する。
図3(a)~(d)は、本実施形態に係る半導体装置の第1の製造方法を示す図である。
【0029】
先ず、
図1に示すように、n
++形の炭化シリコンウェーハを準備する。この炭化シリコンウェーハがドレイン層21となる。
【0030】
次に、
図3(a)に示すように、ドレイン層21の上面を起点として、n
-形の炭化シリコンからなるエピタキシャル層61をエピタキシャル成長させる。次に、エピタキシャル層61の上層部分の一部にアクセプタとなる不純物をイオン注入して、埋込p形層26を形成する。埋込p形層26はY方向に延びる帯状に形成する。
【0031】
次に、
図3(b)に示すように、エピタキシャル層61上にエピタキシャル層62を形成する。エピタキシャル層62の導電形は、下層側から順に、n
-形、p
+形、p形とする。このとき、エピタキシャル層61における埋込p形層26を除く部分とエピタキシャル層62におけるn
-形の部分がドリフト層22となり、エピタキシャル層62におけるp
+形の部分がベース層23の下層23aとなり、エピタキシャル層62におけるp形の部分がベース層23の上層23bとなる。なお、エピタキシャル層62は、全体をn
-形として形成した後、イオン注入により、p
+形の部分とp形の部分を形成してもよい。
【0032】
次に、
図3(c)に示すように、エピタキシャル層62の上層部分の一部にn
+形のソース層24を形成する。次に、エピタキシャル層62における埋込p形層26の直上域に、トレンチ63を形成する。トレンチ63はソース層24を貫通して埋込p形層26まで到達させる。
【0033】
次に、
図3(d)に示すように、全面に薄いn
-形層64を形成する。n
-形層64の厚さは10nm~100nmとする。n
-形層64におけるトレンチ63の内面上に形成された部分が、低濃度層25となる。
【0034】
次に、
図1に示すように、トレンチ63内にゲート絶縁膜50及びゲート電極40を形成する。イオン注入した不純物を活性化するための熱処理は適宜行う。次に、ドレイン層21の下面上にドレイン電極10を形成し、エピタキシャル層62上及びゲート絶縁膜50上にソース電極30を形成する。次に、炭化シリコンウェーハをダイシングして個片化する。このようにして、半導体装置1が製造される。
【0035】
次に、第2の製造方法について説明する。
図4(a)~(d)は、本実施形態に係る半導体装置の第2の製造方法を示す図である。
図4(a)~(d)においては、便宜上、Z方向における同じ位置を破線で示している。
第2の製造方法における第1の製造方法と同様な部分は、説明を省略する。
【0036】
図4(a)に示すように、ドレイン層21上にエピタキシャル層66をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル層66には、ドリフト層22、ベース層23の下層23a及び上層23b、ソース層24を形成する。
次に、
図4(b)に示すように、エピタキシャル層66にトレンチ63を形成する。トレンチ63は、ソース層24及びベース層23を貫通させ、ドリフト層22の上層部分まで到達させる。
【0037】
次に、
図4(c)に示すように、トレンチ63の底面に対してアクセプタとなる不純物をイオン注入することにより、埋込p形層26を形成する。
次に、
図4(d)に示すように、全面に薄いn
-形層64を形成する。以後の工程は第1の製造方法と同一である。
【0038】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、ゲート絶縁膜50に接する低濃度層25を設けている。ゲート絶縁膜50を不純物濃度が低い低濃度層25に接触させることにより、ゲート絶縁膜50に欠陥が導入されることを抑制し、ゲート絶縁膜50の信頼性を向上できる。なお、仮に、酸化シリコンを含むゲート絶縁膜を不純物濃度が高い高濃度層に接触させると、ゲート絶縁膜の信頼性寿命が低下する。本実施形態においては、ゲート絶縁膜50を低濃度層25に接触させることによりこの課題を解決し、ゲート絶縁膜50の信頼性を向上させている。
【0039】
また、本実施形態においては、埋込p形層26を低濃度層25を介してゲート絶縁膜50から離隔させている。このため、埋込p形層26の不純物濃度を高くでき、半導体装置1がオフ状態となったときに、埋込p形層26の周囲に空乏層を厚く形成できる。この結果、ゲート絶縁膜50に印加される電界が弱くなり、ゲート絶縁膜50の損傷を抑制できる。言い換えると、ゲート絶縁膜50の信頼性を向上できる。
【0040】
なお、ゲート絶縁膜50の底部、特に角部に印加される電界を抑制するためには、埋込p型層26の不純物濃度を高くすることが好ましい。しかしながら、仮に低濃度層25が設けられておらず、埋込p型層26がゲート絶縁膜50に接触していると、上述の如く、埋込p型層26の不純物濃度を高くするとゲート絶縁膜50の信頼性寿命が低下する。このため、埋込p型層26の不純物濃度を高くできないという問題がある。本実施形態においては、ゲート絶縁膜50と埋込p型層26との間に低濃度層25を介在させることにより、上述の問題を回避して、ゲート絶縁膜50の信頼性寿命を確保しつつ、埋込p型層26の不純物濃度を高くすることができる。これにより、ゲート絶縁膜50底部、特に角部に印加される電界を抑制し、ゲート絶縁膜50の破壊を抑制できる。
【0041】
<第2の実施形態>
図5は、本実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図5に示すように、本実施形態に係る半導体装置2においては、第1の実施形態に係る半導体装置1の構成に加えて、半導体部分20にディープn形層27(第3層)が設けられている。
【0042】
ディープn形層27の導電形はn+形であり、その不純物濃度はドリフト層22の不純物濃度よりも高い。ディープn形層27の不純物濃度は、例えば、5×1016cm-3以上5×1017cm-3以下である。ディープn形層27はドリフト層22とベース層23との間に配置されており、XY平面に沿って拡がっている。ディープn形層27は、ドリフト層22、ベース層23の下層23a、低濃度層25に接している。ディープn形層27は埋込p形層26に接していてもよく、離れていてもよい。
【0043】
本実施形態に係る半導体装置2においては、オン状態にあるときに、蓄積モードにある低濃度層25を通過した電子電流105が、ディープn形層27を介してX方向に拡散する。これにより、ドリフト層22に流れる電流が均一化され、オン抵抗が低減する。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0044】
<第3の実施形態>
本実施形態は、第2の実施形態に係る半導体装置について、より広い領域を説明した例である。
図6は、本実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
図7(a)は
図6に示すB-B’線による断面図であり、
図7(b)は
図6に示すC-C’線による断面図である。
なお、
図6が示す平面は、
図7(a)及び(b)に示すD-D’線による断面に相当する。また、
図7(a)及び(b)においては、便宜上、Z方向における同じ位置を複数本の破線で示している。
【0045】
図6に示すように、本実施形態に係る半導体装置3においては、セル領域Rcと終端領域Rtが設定されている。
図6は半導体装置3の一部平面拡大図を示しているが、半導体装置3の平面全体において、セル領域Rcは半導体装置3の中央部に配置されており、終端領域Rtはセル領域Rcを囲んでいる。セル領域Rcにおいては、トランジスタ領域R1と接続領域R2が設定されている。トランジスタ領域R1及び接続領域R2はそれぞれ複数設けられており、Y方向に沿って交互に配列されており、例えば周期的に配列されている。
【0046】
セル領域Rcの接続領域R2において、接続層28が設けられている。また、接続層28は端領域Rtにも設けられている。接続層28の導電形はp
+形であり、その不純物濃度は、例えば、5×10
18cm
-3以上2×10
19cm
-3以下である。
図7に示すように、接続層28はドリフト層22とベース層23との間に配置されており、ドリフト層22、低濃度層25及びベース層23に接している。上方から見て、接続層28は低濃度層25のY方向両端部を覆っている。セル領域Rcの接続領域R2及び終端領域Rtにおいては、ディープn形層27は設けられていない。
【0047】
一方、セル領域Rcのトランジスタ領域R1においては、ベース層23の下層23a、埋込p形層26及びディープn形層27が設けられており、接続層28は設けられていない。トランジスタ領域R1と接続領域R2が隣接して配置されることにより、接続層28は埋込p形層26及びディープn形層27にも接している。これにより、接続層28は埋込p形層26をベース層23に接続している。
【0048】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
図8(a)~(d)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図である。
図8(a)及び(b)は同じ工程を示し、(c)及び(d)は同じ工程を示す。また、
図8(a)及び(c)はトランジスタ領域R1を示し、(b)及び(d)は接続領域R2を示す。
【0049】
図8(a)及び(b)に示すように、ドレイン層21上に1段目のエピタキシャル層67をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル層67の導電型はn
-形とする。次に、ドナー又はアクセプタとなる不純物をエピタキシャル層67の上層部分にイオン注入する。このとき、
図8(a)に示すように、トランジスタ領域R1においては、エピタキシャル層67の上層部分をn
+形とし、ディープn形層27を形成する。また、
図8(b)に示すように、接続領域R2においては、エピタキシャル層67の上層部分をp
+形とし、接続層28を形成する。接続層28はディープn形層27よりも深く形成する。エピタキシャル層67におけるディープn形層27及び接続層28を除く部分がドリフト層22となる。
【0050】
次に、
図8(c)及び(d)に示すように、エピタキシャル層67上に2段目のエピタキシャル層68をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル層68の導電型はp形とする。但し、エピタキシャル層68の最下層の導電型をp
+形とし、ベース層23の下層23aとする。エピタキシャル層68における下層23a以外の部分は、ベース層23の上層23bとなる。次に、エピタキシャル層67及び68にトレンチ69を形成する。トレンチ69はエピタキシャル層68をZ方向に貫通し、エピタキシャル層67の上層部分に到達させる。以後の製造方法は、第1の実施形態と同様である。
【0051】
本実施形態においては、p+形の接続層28が埋込p形層26をベース層23に接続している。このため、埋込p形層26が接続層28及びベース層23を介してソース電極30に接続される。これにより、埋込p形層26に一定の電位を均一に印加することができ、オフ状態時に空乏層を均一に拡げることができる。このため、オフ状態時の電界分布が均一化し、ゲート絶縁膜50の信頼性をより向上させることができる。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、第2の実施形態と同様である。
【0052】
<第4の実施形態>
図9は、本実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図9に示すように、本実施形態に係る半導体装置4は、第1の実施形態に係る半導体装置1(
図1参照)と比較して、低濃度層の導電形がp
-形である点が異なっている。すなわち、半導体装置4においては、半導体装置1の低濃度層25の替わりに、導電形がp
-形の低濃度層71が設けられている。
【0053】
本実施形態に係る半導体装置4においては、オン状態時には低濃度層71に反転層が形成され、反転モードにより導通する。一方、オフ状態時にはドリフト層22とベース層23の界面を起点として空乏層が拡がる。このとき、n-形の低濃度層が存在しないため、リーク電流をより確実に抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態においても、ゲート絶縁膜50は不純物濃度が低い低濃度層71に接しているため、ゲート絶縁膜50の信頼性が高い。更に、埋込p形層26が低濃度層71を介してゲート絶縁膜50から離隔しているため、ゲート絶縁膜50に及ぼす損傷を抑制しつつ、埋込p形層26の不純物濃度を増加することができる。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0055】
<第5の実施形態>
図10は、本実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図10に示すように、本実施形態に係る半導体装置5は、第2の実施形態に係る半導体装置2(
図5参照)と比較して、低濃度層の導電形が異なっている。また、本実施形態においては、ベース層23は下層と上層からなる2層構造ではなく、p形の単層構造である。
【0056】
すなわち、半導体装置5においては、半導体装置2の低濃度層25の替わりに、低濃度層72が設けられている。低濃度層72には、n-形の下部72aとp-形の上部72bが設けられている。下部72aは、ゲート絶縁膜50、埋込p形層26、ドリフト層22、ディープn形層27及びベース層23に接している。上部72bは下部72a上に配置され、ゲート絶縁膜50、ベース層23及びソース層24に接している。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、第2の実施形態と同様である。
【0057】
<第6の実施形態>
図11は、本実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図11に示すように、本実施形態に係る半導体装置6は、第5の実施形態に係る半導体装置5と比較して、低濃度層の上部と下部の導電形が逆になっている。
【0058】
すなわち、半導体装置6においては、半導体装置5の低濃度層72の替わりに、低濃度層73が設けられている。低濃度層73には、p-形の下部73aとn-形の上部73bが設けられている。下部73aは、ゲート絶縁膜50、埋込p形層26、ドリフト層22及びディープn形層27に接している。なお、下部73aはベース層23に接していてもよい。上部73bは下部73a上に配置され、ゲート絶縁膜50、ベース層23及びソース層24に接している。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、第5の実施形態と同様である。
【0059】
<第7の実施形態>
図12は、本実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図12に示すように、本実施形態に係る半導体装置7は、第1の実施形態に係る半導体装置1と比較して、ゲート絶縁膜50、ソース層24及び低濃度層25の位置関係が異なっている。すなわち、ソース層24は低濃度層25の上に配置されており、ゲート絶縁膜50及び低濃度層25に接している。また、低濃度層25はソース電極30から離隔しており、ソース層24を介してソース電極30に接続されている。これによっても、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0060】
以上説明した実施形態によれば、ゲート絶縁膜の破壊を抑制可能な半導体装置を実現することができる。
【0061】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。また、前述の実施形態は、相互に組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1、2、3、4、5、6、7:半導体装置
10:ドレイン電極
20:半導体部分
21:ドレイン層
22:ドリフト層
23:ベース層
23a:下層
23b:上層
24:ソース層
25:低濃度層
26:埋込p形層
27:ディープn形層
28:接続層
30:ソース電極
40:ゲート電極
50:ゲート絶縁膜
61、62:エピタキシャル層
63:トレンチ
64:n-形層
66、67、68:エピタキシャル層
69:トレンチ
71:低濃度層
72:低濃度層
72a:下部
72b:上部
73:低濃度層
73a:下部
73b:上部
101:点
102:等電位線
103:電子
105:電子電流
R1:トランジスタ領域
R2:接続領域
Rc:セル領域
Rt:終端領域