(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141124
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】多軸慣性力センサ
(51)【国際特許分類】
G01C 19/00 20130101AFI20230928BHJP
G01P 15/18 20130101ALI20230928BHJP
【FI】
G01C19/00 Z
G01P15/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047271
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船橋 博文
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一平
(72)【発明者】
【氏名】明石 照久
(72)【発明者】
【氏名】原田 翔太
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105BB17
(57)【要約】
【課題】検出精度が改善された多軸慣性力センサを提供する。
【解決手段】多軸慣性力センサは、第1ブロックと第2ブロックと第3ブロックと第4ブロックを備えており、各ブロックは、各ブロックが載置される載置面に接触する接触面と、接触面に対して傾斜しており、対応するジャイロセンサが配置される傾斜面と、接触面に対して直交しており、対応する加速度センサが配置される直交面を有している。第1ブロック及び第2ブロックは、載置面に平行な第1方向に並んで配置されており、第3ブロック及び第4ブロックは、載置面に平行であるとともに第1方向に直交する第2方向に並んで配置されている。各加速度センサは、載置面に対して水平及び垂直方向の2軸の加速度を検出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ジャイロセンサ及び第1加速度センサが配置されている第1ブロックと、
第2ジャイロセンサ及び第2加速度センサが配置されている第2ブロックと、
第3ジャイロセンサ及び第3加速度センサが配置されている第3ブロックと、
第4ジャイロセンサ及び第4加速度センサが配置されている第4ブロックと、
を備えており、
各ブロックは、
各ブロックが載置される載置面に接触する接触面と、
前記接触面に対して傾斜しており、対応するジャイロセンサが配置される傾斜面と、
前記接触面に対して直交しており、対応する加速度センサが配置される直交面と、を有しており、
第1ブロック及び第2ブロックは、載置面に平行な第1方向に並んで配置されており、
第3ブロック及び第4ブロックは、載置面に平行であるとともに第1方向に直交する第2方向に並んで配置されており、
各加速度センサは、載置面に対して水平及び垂直方向の2軸の加速度を検出する、多軸慣性力センサ。
【請求項2】
第1ブロック及び第2ブロックの第2方向と、
第3ブロック及び第4ブロックの第1方向に、加速度センサが配置される直交面が設けられている請求項1に記載の多軸慣性力センサ。
【請求項3】
第1ブロック及び第2ブロックの第1方向と、
第3ブロック及び第4ブロックの第2方向に、加速度センサが配置される直交面が設けられている請求項1に記載の多軸慣性力センサ。
【請求項4】
第1ジャイロセンサ及び第1加速度センサが配置されている第1ブロックと、
第2ジャイロセンサ及び第2加速度センサが配置されている第2ブロックと、
第3ジャイロセンサ及び第3加速度センサが配置されている第3ブロックと、
を備えており、
各ブロックは、
各ブロックが載置される載置面に接触する接触面と、
前記接触面に対して傾斜しており、対応するジャイロセンサが配置される傾斜面と、
前記接触面に対して直交しており、対応する加速度センサが配置される直交面と、を有しており、
第1ブロック及び第2ブロックは、載置面の第1方向に並んで配置されており、
第3ブロックは、傾斜面が載置面内の第1方向に直交する第2方向に向くように配置されており、
各加速度センサは、載置面に対して水平及び垂直方向の2軸の加速度を検出する、多軸慣性力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、多軸慣性力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、3個のジャイロセンサを用いた多軸慣性力センサが開示されている。特許文献1では、1個の支持部材に対して3個のジャイロセンサを固定し、その支持部材を対象機器に実装している。そのため、特許文献1では、支持部材は、各ジャイロセンサを固定するための3個の支持面が設けられた形状を有している。具体的は、支持部材は、第1平面部と、第1平面部の端部に設けられているとともに第1平面部に直交する第2平面部と、第1平面部の端部に設けられているとともに第1平面部及び第2平面部に直交する第3平面部と、を備えた形状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の多軸慣性力センサでは、例えば、支持部材の第1平面部に対する第2平面部の角度、第1平面部に対する第3平面部等が設計値からずれると、各平面部に対してジャイロセンサを正確に固定されていても対象機器の角速度を正確に検出することができない。また、支持部材に対してジャイロセンサが正確に固定されていない(支持部材に対するジャイロセンサの角度が設計値からずれている)場合も、対象機器の角速度を正確に検出することができない。そのため、特許文献1の技術では、支持部材の形状、あるいは、支持部材に対するジャイロセンサの固定を高度に制御することが必要である。より簡易な構造で対象機器の角速度を正確に検出する技術が必要とされている。本明細書は、検出精度が改善された多軸慣性力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する多軸慣性力センサは、第1ジャイロセンサ及び第1加速度センサが配置されている第1ブロックと、第2ジャイロセンサ及び第2加速度センサが配置されている第2ブロックと、第3ジャイロセンサ及び第3加速度センサが配置されている第3ブロックと、第4ジャイロセンサ及び第4加速度センサが配置されている第4ブロックを備えている。各ブロックは、各ブロックが載置される載置面に接触する接触面と、接触面に対して傾斜しており、対応するジャイロセンサが配置される傾斜面と、接触面に対して直交しており、対応する加速度センサが配置される直交面を有している。この多軸慣性力センサでは、第1ブロック及び第2ブロックは、双方の傾斜面同士が内向き又は外向きになるように、載置面に平行な第1方向に並んで配置されており、第3ブロック及び第4ブロックは、双方の傾斜面同士が内向き又は外向きになるように、載置面に平行であるとともに第1方向に直交する第2方向に並んで配置されており、各加速度センサは、載置面に対して水平及び垂直方向の2軸の加速度を検出する。
【0006】
上記多軸慣性力センサは、3軸の角速度及び3軸の加速度を検知することができる6軸センサである。また、上記多軸慣性力センサは、各ブロックに2軸の加速度を検出する加速度センサが配置されているので、ブロックが載置面に対して傾いて固定(不正確に固定)された場合であっても、傾き誤差を検知し、角速度及び加速度を補正することができる。その結果、多軸慣性力センサの検出精度を向上させることができる。さらに、上記多軸慣性力センサは、4個のジャイロセンサを備えているので、1個のジャイロセンサに故障が生じても、正常な3個のジャイロセンサで3軸検知を行うことができる。
【0007】
上記多軸慣性力センサでは、第1ブロック及び第2ブロックの第2方向と、第3ブロック及び第4ブロックの第1方向に、加速度センサが配置される直交面が設けられていてよい。第1方向でブロックに配置された加速度センサは、載置面に直交する方向と、第2方向の加速度を検知する。一方、第2方向でブロックに配置された加速度センサは、載置面に直交する方向(垂直方向)と、第1方向の加速度を検知する。その結果、垂直方向、第1方向(載置面に平行な方向)、第2方向(載置面に平行であり、第1方向に直交する方向)の3方向の加速度を確実に検知することができる。
【0008】
上記多軸慣性力センサでは、第1ブロック及び第2ブロックの第1方向と、第3ブロック及び第4ブロックの第2方向に、加速度センサが配置される直交面が設けられていてもよい。この場合も、垂直方向、第1方向(載置面に平行な方向)、第2方向(載置面に平行であり、第1方向に直交する方向)の3方向の加速度を確実に検知することができる。
【0009】
本明細書で開示する多軸慣性力センサの他の一形態は、第1ジャイロセンサ及び第1加速度センサが配置されている第1ブロックと、第2ジャイロセンサ及び第2加速度センサが配置されている第2ブロックと、第3ジャイロセンサ及び第3加速度センサが配置されている第3ブロックを備えている。各ブロックは、各ブロックが載置される載置面に接触する接触面と、接触面に対して傾斜しており、対応するジャイロセンサが配置される傾斜面と、接触面に対して直交しており、対応する加速度センサが配置される直交面を有している。この多軸慣性力センサでは、第1ブロック及び第2ブロックは、双方の傾斜面同士が内向き又は外向きになるように、載置面の第1方向に並んで配置されており、第3ブロックは、傾斜面が載置面内の第1方向に直交する第2方向に向くように配置されており、各加速度センサは、載置面に対して水平及び垂直方向の2軸の加速度を検出する。
【0010】
上記多軸慣性力センサも、3軸の角速度及び3軸の加速度を検知することができる6軸センサである。また、上記多軸慣性力センサも、各ブロックに2軸の加速度を検出する加速度センサが配置されているので、ブロックが載置面に対して傾いて固定(不正確に固定)された場合であっても、傾き誤差を検知し、角速度及び加速度を補正することができる。その結果、多軸慣性力センサの検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施例の多軸慣性力センサの斜視図を示す。
【
図2】第1実施例の多軸慣性力センサの平面図を示す。
【
図4】多軸慣性力センサの角速度測定原理を説明するための図を示す。
【
図5】加速度センサの特徴を説明するための図を示す。
【
図6】多軸慣性力センサの内部構成のブロック図を示す。
【
図7】第2実施例の多軸慣性力センサの平面図を示す。
【
図8】第2実施例の多軸慣性力センサの側面図を示す。
【
図9】第3実施例の多軸慣性力センサの平面図を示す。
【
図10】第3実施例の多軸慣性力センサの側面図を示す。
【
図11】第4実施例の多軸慣性力センサの斜視図を示す。
【
図12】第4実施例の多軸慣性力センサの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施例)
図1及び
図2を参照し、多軸慣性力センサ100について説明する。多軸慣性力センサ100は、第1ブロックセンサ10aと、第2ブロックセンサ10bと、第3ブロックセンサ10cと、第4ブロックセンサ10dを備えている。第1ブロックセンサ10aは、第1ブロック4aと、第1ジャイロセンサ6aと、第1加速度センサ8aを備えている。第2ブロックセンサ10bは、第2ブロック4bと、第2ジャイロセンサ6bと、第2加速度センサ8bを備えている。第3ブロックセンサ10cは、第3ブロック4cと、第3ジャイロセンサ6cと、第3加速度センサ8cを備えている。第4ブロックセンサ10dは、第4ブロック4dと、第4ジャイロセンサ6dと、第4加速度センサ8dを備えている。なお、
図1には、第1加速度センサ8a及び第3加速度センサ8cは現れていない。ブロックセンサ10a~10dは、固定部2の表面(載置面)に固定されている。ブロックセンサ10a~10dは、何れも、実質的に同じ構造を有している。
【0013】
多軸慣性力センサ100のさらなる特徴を説明するに先立って、
図3を参照し、ブロックセンサ10(10a~10d)の構造を説明する。なお、以下の説明において、ブロックセンサ10a~10dに共通の特徴を説明する場合、ブロックセンサ10a~10d及びブロックセンサ10a~10dを構成する部品に付した参照番号のうち、アルファベットの添字を省略することがある。
【0014】
ブロック4は、LCP(Liquid Crystal Polymer)樹脂製であり、固定部2の表面に接触する接触面20と、接触面20に対して傾斜している傾斜面22と、接触面20に対して直交している直交面24,26,28を有している。傾斜面22には、ジャイロセンサ6が配置されている。接触面20及び傾斜面22は四角形であり、接触面20と傾斜面22が成す角度θ1は、およそ45度である。直交面24,26は、接触面20の一辺と、傾斜面22の四辺のうちの接触面20からの距離が変化している一辺を含んでおり、略三角形(直角二等辺三角形)である。直交面28は、接触面20の一辺と、傾斜面22の四辺のうちの接触面20からの距離が最も遠い一辺を含んでおり、略四角形である。ジャイロセンサ6が配置されている面(傾斜面22)をブロック4の正面と捉えると、直交面24,26はブロック4の側面、直交面28はブロック4の背面と捉えることができる。
図3に示すブロックセンサ10では、直交面26に加速度センサ8が配置されている。
【0015】
ジャイロセンサ6は、はんだ30によって、ブロックセンサ10の正面(傾斜面22)に固定されている。また、傾斜面22には、複数の電子部品(チップ抵抗、チップコンデンサ等)32、及びFPC(Flexible Printed Circuits)36が嵌め込まれたソケット34もはんだ(図示省略)によって固定されている。加速度センサ8は、はんだ(図示省略)によって、直交面26に固定されている。ジャイロセンサ6、電子部品32及び加速度センサ8は、はんだを介して配線40に接続されており、FPC36を介してブロックセンサ10の外部に設けられている回路演算出力部(図示省略)に接続されている。配線40は、傾斜面22及び直交面26の表面にMID(Molded Interconnect Device)技術を用いた表面改質によって形成された金属製の薄膜であり、ブロック4の表面(傾斜面22及び直交面26の表面)に直接形成されている。
【0016】
ジャイロセンサ6は1軸の角速度を検知し、加速度センサ8は2軸の加速度を検知する。ジャイロセンサ6及び加速度センサ8は、QFN(Quad Flat Non lead package)構造である。ジャイロセンサ6及び加速度センサ8の電源とGNDは、上述した回路演算出力部より供給される。また、ジャイロセンサ6及び加速度センサ8の検知信号は、回路演算出力部に出力される。ジャイロセンサ6及び加速度センサ8の機能(検出信号の処理)の詳細については後述する。
【0017】
なお、ブロック4の材料として、LCP樹脂に代え、例えば金属を用いることもできる。ブロック4の材料として金属を用いる場合は、配線パターンを形成したプリント基板上にジャイロセンサ6、加速度センサ8、電子部品32及びソケット34を実装し、そのプリント基板をブロック4に搭載する。
【0018】
図1及び
図2に戻り、多軸慣性力センサ100の特徴について説明を続ける。固定部2の表面(載置面)は、X-Y平面に平行である。そして、第1ブロックセンサ10aと第2ブロックセンサ10bは、X軸方向に並んで対向して配置されている。X軸方向は、第1方向の一例である。具体的には、第1ブロック4aと第2ブロック4bの傾斜面22(
図3を参照)同士が、内向きになるようにX軸方向に並んで対向して配置されている。また、第3ブロックセンサ10cと第4ブロックセンサ10dは、Y軸方向に並んで対向して配置されている。Y軸方向は、第2方向の一例である。すなわち、第3ブロック4cと第4ブロック4dの傾斜面22同士が、内向きになるようにY軸方向に並んで対向して配置されている。
【0019】
ブロックセンサ10a~10dでは、ジャイロセンサ6a~6dが、ブロック4a~4dの側面(直交面26:
図3も参照)に設けられている。具体的には、第1ブロックセンサ10aでは、第1ジャイロセンサ6aは、第1ブロック4aのY軸方向の側面(直交面26)に設けられている。第2ブロックセンサ10bにおいても、第2ジャイロセンサ6bは、第2ブロック4bのY軸方向の側面に設けられている。一方、第3ブロックセンサ10cでは、第3ジャイロセンサ6cは、第3ブロック4cのX軸方向の側面に設けられている。第4ブロックセンサ10dにおいても、第4ジャイロセンサ6dは、第4ブロック4dのX軸方向の側面に設けられている。多軸慣性力センサ100は、X軸、Y軸及びZ軸の3軸の角速度を検知することができる。以下、多軸慣性力センサ100が3軸角速度を検知する測定原理について説明する。
【0020】
図4は、(a)X軸方向に並ぶ2個のブロックセンサ(ブロックセンサ10a,10b)と、(b)Y軸方向に並ぶ2個のブロックセンサ(ブロックセンサ10c,10d)を模式的に示している。固定部2と第1ジャイロセンサ6aが成す角度θ1、固定部2と第2ジャイロセンサ6bが成す角度θ2、固定部2と第3ジャイロセンサ6cが成す角度θ3、固定部2と第4ジャイロセンサ6dが成す角度θ4で示している。
【0021】
例えば、多軸慣性力センサ100にX軸周りの角速度「ωx」が印加された場合、第1ジャイロセンサ6aには「-ωx」が印加され、第2ジャイロセンサ6bには「ωx」が印加される(a)。また、この場合、第3ジャイロセンサ6c及び第4ジャイロセンサ6dには、「ωx」が印加されない。第3ブロック4c及び第4ブロック4dがY軸方向に並んで配置されているので、他軸であるX軸周りの角速度に対して不感だからである。
【0022】
また、多軸慣性力センサ100にY軸周りの角速度「ωy」が印加された場合、第3ジャイロセンサ6cには「-ωy」が印加され、第4ジャイロセンサ6dには「ωy」が印加される(b)。また、この場合、第1ジャイロセンサ6a及び第2ジャイロセンサ6bには、「ωy」が印加されない。第1ブロック4a及び第2ブロック4bがX軸方向に並んで配置されているので、他軸であるY軸周りの角速度に対して不感だからである。
【0023】
多軸慣性力センサ100にZ軸周りの角速度「ωz」が印加された場合、全てのジャイロセンサ6a~6dに「ωz」が印加される。すなわち、Z軸周りの角速度「ωz」については、全てのジャイロセンサ6a~6dが検知可能である。なお、ジャイロセンサ6a~6dは、表面に直交する方向(S1,S2,S3,S4方向)周りの角速度を検出するジャイロセンサ(Z軸ジャイロセンサ)である。すなわち、第1ジャイロセンサ6aの主軸(検知軸)はS1方向であり、第2ジャイロセンサ6bの主軸はS2方向であり、第3ジャイロセンサ6cの主軸はS3方向であり、第4ジャイロセンサ6dの主軸はS4方向である。
【0024】
多軸慣性力センサ100に角速度「ωx」,「ωy」及び「ωz」が印加された場合、各ジャイロセンサ6a~6dの主軸に角速度が印加されることが必要である。そのため、例えば、各ジャイロセンサ6a~6dの出力信号を各々S1,S2,S3,S4とすると、各出力信号は、下記式(1)で表すことができる。また、下記式(1)を行列式で表すと、下記式(2)となる。多軸慣性力センサ100は、下記式(1)または(2)に基づいて、3軸角速度を検出することができる。
【0025】
【0026】
多軸慣性力センサ100の他の特徴について説明する。上述したように、ブロック4の側面には加速度センサ8が配置されている。加速度センサ8は、固定部面に対して水平方向及び垂直方向に感度軸を有する2軸加速度センサである。そのため、
図1及び
図2に示す多軸慣性力センサ100では、第1加速度センサ8a及び第2加速度センサ8bによってX軸及びZ軸の加速度を検知することができ、第3加速度センサ8c及び第4加速度センサ8dによってY軸及びZ軸の加速度を検知することができる。すなわち、多軸慣性力センサ100は、3軸の角速度及び3軸の加速度を検知可能な6軸センサである。
【0027】
図5は、ブロックセンサ10の1つを模式的に示している。上述したように、加速度センサ8は、固定部面に対して水平方向及び垂直方向に感度軸を有する。そのため、
図5の破線で示すように固定部2に対してブロックセンサ10が傾いて固定された場合、加速度センサ8で重力方向(Z軸方向)の測定を行うことにより、ブロックセンサ10の傾き(実装誤差)を検出することができる。検出された傾き誤差を用いて角速度及び加速度の検出値を補正することにより、高精度な6軸検知(3軸の角速度及び3軸の加速度)を行うことができる。また、4個のブロックセンサ10(10a~10d)のうちの1個が故障しても、正常な3個のブロックセンサ10を用いて6軸検知を行うことができる。
【0028】
次に、
図6を参照し、多軸慣性力センサ100の内部構成について説明する。多軸慣性力センサ100は、センシング部50と、回路演算出力部52と、温度センサ部54を備えている。センシング部50は、ブロックセンサ10等の実装構造である。回路演算出力部52は、センシング部50から入力されたセンサ出力を演算し、センサ信号を外部に出力する。温度センサ部54は、多軸慣性力センサ100の温度をモニタする。回路演算出力部52は、(1)センサ出力の取り込み、(2)6軸化演算処理アルゴリズム、(3)軸間直交度補正アルゴリズム、(4)感度補正アルゴリズム、(5)温度特性補正アルゴリズム、(6)6軸出力処理アルゴリズム、といった6機能を有する。
【0029】
6軸化演算処理アルゴリズムは、上述した式(1)または(2)を用いて、3軸角速度を検出する。軸間直交度補正アルゴリズムは、固定部に対するブロックセンサの実装誤差を補正し、軸間直交性を所定値以下に補正する機能を有する。感度補正アルゴリズムは、軸間直交度補正アルゴリズムによって補正されたことによりセンサの感度が低下することを補正する機能を有する。温度特性補正アルゴリズムは、温度センサ部54における測定結果に基づき、感度を温度に応じて補正する機能を有する。6軸出力処理アルゴリズムは、各アルゴリズムで処理されて得らえた3軸角速度と3軸加速度を、センサ信号として外部出力する機能を有する。また、回路演算出力部52は、多軸慣性力センサ100の外部のDC電源56の出力を、センシング部50及び温度センサ部54に供給する。さらに、回路演算出力部52は、SPI通信によって、センシング部50から角速度,加速度測定結果を受け取り、温度センサ部54から温度測定結果を受け取る。
【0030】
(第2実施例)
図7及び
図8を参照し、多軸慣性力センサ200について説明する。多軸慣性力センサ200は、多軸慣性力センサ100の変形例であり、固定部2に対するブロックセンサ10a~10dの配置形態が多軸慣性力センサ100と異なる。以下の説明では、多軸慣性力センサ200について、多軸慣性力センサ100と実質的に同じ構造については、多軸慣性力センサ100に付した参照番号を付すことによって説明を省略することがある。
【0031】
多軸慣性力センサ200は、第1ブロックセンサ10aと、第2ブロックセンサ10bと、第3ブロックセンサ10cと、第4ブロックセンサ10dを備えている。多軸慣性力センサ200では、第1ブロック4aと第2ブロック4bは、傾斜面22同士が外向きになるようにX軸方向に並んで対向して配置されている。また、第3ブロック4cと第4ブロック4dは、傾斜面22同士が外向きになるようにY軸方向に並んで対向して配置されている。多軸慣性力センサ200は、3軸の角速度及び3軸の加速度を検知可能な6軸センサであり、加速度センサ8で重力方向の測定を行うことにより、ブロックセンサ10の傾き(実装誤差)を検出することができる。また、4個のブロックセンサ10(10a~10d)のうちの1個が故障しても、正常な3個のブロックセンサ10を用いて6軸検知を行うことができる。
【0032】
(第3実施例)
図9及び
図10を参照し、多軸慣性力センサ300について説明する。多軸慣性力センサ300は、多軸慣性力センサ100の変形例であり、ブロック4に対する加速度センサ8の配置形態が多軸慣性力センサ100と異なる。以下の説明では、多軸慣性力センサ300について、多軸慣性力センサ100と実質的に同じ構造については、多軸慣性力センサ100に付した参照番号を付すことによって説明を省略することがある。
【0033】
多軸慣性力センサ300は、第1ブロックセンサ310aと、第2ブロックセンサ310bと、第3ブロックセンサ310cと、第4ブロックセンサ310dを備えている。多軸慣性力センサ300では、ジャイロセンサ6a~6dが、ブロック4a~4dの背面(直交面28:
図3も参照)に設けられている。具体的には、第1ブロックセンサ310aでは、第1ジャイロセンサ6aは、第1ブロック4aのX軸方向の背面(直交面28)に設けられている。第2ブロックセンサ310bにおいても、第2ジャイロセンサ6bは、第2ブロック4bのX軸方向の背面に設けられている。第3ブロックセンサ310cでは、第3ジャイロセンサ6cは、第3ブロック4cのY軸方向の背面に設けられている。第4ブロックセンサ310dにおいても、第4ジャイロセンサ6dは、第4ブロック4dのY軸方向の背面に設けられている。多軸慣性力センサ300は、3軸の角速度及び3軸の加速度を検知可能な6軸センサであり、加速度センサ8で重力方向の測定を行うことにより、ブロックセンサ310の傾き(実装誤差)を検出することができる。また、4個のブロックセンサ310(310a~310d)のうちの1個が故障しても、正常な3個のブロックセンサ310を用いて6軸検知を行うことができる。
【0034】
(第4実施例)
図11及び
図12を参照し、多軸慣性力センサ400について説明する。多軸慣性力センサ300は、多軸慣性力センサ100の変形例であり、ブロックセンサ10が3個である点が多軸慣性力センサ100と異なる。以下の説明では、多軸慣性力センサ400について、多軸慣性力センサ100と実質的に同じ構造については、多軸慣性力センサ100に付した参照番号を付すことによって説明を省略することがある。
【0035】
多軸慣性力センサ400は、第1ブロックセンサ10aと、第2ブロックセンサ10bと、第3ブロックセンサ10cを備えている。第1ブロックセンサ10aと第2ブロックセンサ10bは、X軸方向に並んで対向して配置されている。第3ブロックセンサ10cは、Y軸方向に沿って配置されている。より具体的には、第3ジャイロセンサ6cの主軸(検知軸)がY-Z平面に含まれるように、第3ブロックセンサ10cが配置されている。多軸慣性力センサ400では、第1ジャイロセンサ6aと第2ジャイロセンサ6bがX軸とZ軸周りの角速度を検知し、第3ジャイロセンサ6cがY軸とZ軸周りの角速度を検知することができる。すなわち、多軸慣性力センサ400は、3軸の角速度を検知することができる。また、多軸慣性力センサ400は、第1加速度センサ8aと第2加速度センサ8bがX軸とZ軸の加速度を検知し、第3加速度センサ8cがY軸とZ軸の加速度を検知することができる。多軸慣性力センサ400も、3軸の角速度及び3軸の加速度を検知可能な6軸センサであり、加速度センサ8で重力方向の測定を行うことにより、ブロックセンサ10の傾き(実装誤差)を検出することができる。
【0036】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0037】
4:ブロック
6:ジャイロセンサ
8:加速度センサ
20:接触面
22:傾斜面
24,26,28:直交面
100:多軸慣性力センサ