(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141151
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】スライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20230928BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20230928BHJP
【FI】
B60N2/07
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047317
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】葛原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】樋口 忠佑
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BB02
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】 組立作業者がレギュレータブラケットの組み付け作業する際に、当該レギュレータブラケットを可動レールに対して適切な位置に装着可能とする。
【解決手段】 スライド装置10は、レギュレータブラケット13に当接部21を有し、可動レール12に被当接部22を有する。これにより、レギュレータブラケット13が可動レール12に装着される際に、当接部21が被当接部22に摺接可能に接触することにより、レギュレータブラケット13の前後方向の位置決め、及びレギュレータブラケット13の左右方向の位置決めされる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートをスライド可能に支持するスライド装置において、
前記乗物用シートが装着される2本の可動レールであって、互いに平行に配置された2本の固定レールそれぞれにスライド可能に装着された2本の可動レールと、
2本の前記可動レールを変位させるための駆動力を発生する電動モータが固定されたレギュレータブラケットであって、それら可動レール間を橋渡すように各可動レールに固定されたレギュレータブラケットと、
2本の前記可動レールそれぞれに設けられ、前記電動モータから駆動力を受けて当該可動レールを対応する固定レールに対してスライドさせるための駆動ユニットと、
前記レギュレータブラケットに設けられ、2本の前記可動レールのうち少なくとも一方の可動レールに設けられた被当接部と接触可能な当接部であって、当該レギュレータブラケットが当該可動レールに装着される際に、当該被当接部に摺接可能に接触することにより、当該可動レールの長手方向の位置決め、及び当該長手方向と直交する水平方向の位置決めをする当接部と
を備えるスライド装置。
【請求項2】
前記被当接部は、
前記当接部の先端が、鉛直方向に対して傾いた方向から接触した状態から当該当接部が予め決められた状態を越えて揺動変位することを規制する第1機能、及び
前記当接部が予め決められた状態まで揺動変位したときに、当該当接部の垂下移動を案内する第2機能
を発揮可能に構成されている請求項1に記載のスライド装置。
【請求項3】
前記第1機能及び前記第2機能を発揮するための構成として、前記被当接部は、
前記長手方向と略直交する第1壁面、
前記第1壁面から離間し、かつ、当該第1壁面に対して平行な第2壁面であって、上端が前記第1壁面の上端より低い第2壁面、及び
前記第2壁面の上部に設けられ、前記第1壁面に近づくほど上端位置が低くなるテーパ部
を有する請求項2に記載のスライド装置。
【請求項4】
前記電動モータで発生した駆動力を前記駆動ユニットに伝達する駆動力伝達部であって、当該駆動ユニット及び前記レギュレータブラケットのうちいずれか一方に設けられた略鉛直方向に延びる駆動シャフト、及び他方に設けられ、当該駆動シャフトが嵌り込むソケット部を有する駆動力伝達部と、
前記可動レールに設けられ、前記駆動シャフトと平行に延びる案内溝を有する案内塔と、
前記レギュレータブラケットに設けられ、前記案内溝内を摺動可能な摺動部とを備え、
前記案内溝の上部には、上端に向かうほど溝幅が大きくなるテーパ部が設けられている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスライド装置。
【請求項5】
前記駆動力伝達部のうち前記レギュレータブラケットに装着されている部位は、弾性変形可能な弾性材を介して当該レギュレータブラケットに装着されている請求項4に記載のスライド装置。
【請求項6】
前記当接部は、前記長手方向と直交する水平方向から前記可動レールを挟む位置に配置された2つのフォークブレードを有するフォーク状に構成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物用シートをスライド可能に支持するスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スライド装置は、例えば、特許文献1に記載のごとく、2本の固定レール、各固定レールにスライド可能に装着された可動レール、及び当該可動レールをスライドさせる駆動力を発生する電動モータ等を備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動モータがレギュレータブラケットに固定されるスライド装置では、組立作業者は、レギュレータブラケットの組み付け作業時に、当該レギュレータブラケットを可動レールに対して適切な位置に装着する必要がある。
【0005】
本開示は、当該点に鑑みたスライド装置の一例である。なお、レギュレータブラケットとは、2本の可動レール間を橋渡すように各可動レールに固定されたブラケットである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
乗物用シートをスライド可能に支持するスライド装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0007】
すなわち、当該構成要件は、乗物用シートが装着される2本の可動レール(12)であって、互いに平行に配置された2本の固定レールそれぞれにスライド可能に装着された2本の可動レール(12)と、2本の可動レール(12)を変位させるための駆動力を発生する電動モータ(14A)が固定されたレギュレータブラケット(13)であって、それら可動レール(12)間を橋渡すように各可動レール(12)に固定されたレギュレータブラケット(13)と、2本の可動レール(12)それぞれに設けられ、電動モータ(14A)から駆動力を受けて当該可動レール(12)を対応する固定レールに対してスライドさせるための駆動ユニット(15)と、レギュレータブラケット(13)に設けられ、2本の可動レール(12)のうち少なくとも一方の可動レール(12)に設けられた被当接部(22)と接触可能な当接部(21)であって、当該レギュレータブラケット(13)が当該可動レール(12)に装着される際に、当該被当接部(22)に摺接可能に接触することにより、当該可動レール(12)の長手方向の位置決め、及び当該長手方向と直交する水平方向の位置決めをする当接部(21)とである。
【0008】
これにより、組立作業者は、レギュレータブラケット(13)の当接部(21)を可動レール(12)に設けられた被当接部(22)に接触又は摺接させることにより、当該レギュレータブラケット(13)が可動レール(12)に対して位置決めされた状態で当該レギュレータブラケット(13)を可動レール(12)に組み付けることが可能となる。
【0009】
なお、当該スライド装置は、例えば、以下の構成であってもよい。
【0010】
すなわち、被当接部(22)は、当接部(21)の先端が、鉛直方向に対して傾いた方向から接触した状態から当該当接部(21)が予め決められた状態を越えて揺動変位することを規制する第1機能、及び当接部(21)が予め決められた状態まで揺動変位したときに、当該当接部(21)の垂下移動を案内する第2機能を発揮可能に構成されていることが望ましい。
【0011】
当該構成においては、被当接部(22)は、長手方向と略直交する第1壁面(22A)、第1壁面(22A)から離間し、かつ、当該第1壁面(22A)に対して平行な第2壁面(22B)であって、上端が第1壁面(22A)の上端より低い第2壁面(22B)、及び第1壁面(22A)の上部に設けられ、第1壁面(22A)に近づくほど上端位置が低くなるテーパ部(22C)を有することが望ましい。
【0012】
また、駆動ユニット(15)及びレギュレータブラケット(13)のうちいずれか一方に設けられた略鉛直方向に延びる駆動シャフト(15A)、及び他方に設けられ、当該駆動シャフト(15A)が嵌り込むソケット部(14C)を有し、電動モータ(14A)で発生した駆動力を当該駆動ユニット(15)に伝達する駆動力伝達部(16)と、可動レール(12)に設けられ、駆動シャフト(15A)と平行に延びる案内溝(23A、24A)を有する案内塔(23、24)と、レギュレータブラケット(13)に設けられ、案内溝(23A、24A)内を摺動可能な摺動部(14D、14E)とを備え、案内溝(23A、24A)の上部には、上端に向かうほど溝幅が大きくなるテーパ部(23B、24B)が設けられていることが望ましい。これにより、駆動シャフト(15A)がソケット部(14C)に、容易、かつ、確実に嵌り込み可能となる。
【0013】
さらに、駆動力伝達部(16)のうちレギュレータブラケット(13)に装着されている部位(14B)は、弾性変形可能な弾性材(25)を介して当該レギュレータブラケット(13)に装着されていることが望ましい。
【0014】
これにより、レギュレータブラケット(13)が可動レール(12)に固定されたときに、駆動シャフト(15A)とソケット部(14C)との嵌合箇所に大きな応力が発生してしまうことが抑制され得る。
【0015】
なお、当接部(21)は、長手方向と直交する水平方向から可動レール(12)を挟む位置に配置された2つのフォークブレード(21A、21B)を有するフォーク状に構成されていることが望ましい。
【0016】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る乗物用シート装置を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るスライド装置を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る駆動力伝達部を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係るスライド装置を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る位置決め構造部を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る位置決め構造部を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る位置決め構造部を示す図である。
【
図8】第1実施形態に係る位置決め構造部を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る位置決め構造部を示す図である。
【
図10】第1実施形態に係る位置決め構造部を示す図である。
【
図11】第1実施形態に係る被当接部を示す図である。
【
図12】第1実施形態に係る案内塔を示す図である。
【
図13】第1実施形態に係る案内塔を示す図である。
【
図14】第1実施形態に係る案内塔を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0019】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シート装置という。)に本開示に係る乗物用シート装置が適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。
【0020】
したがって、当該乗物用シート装置は、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シート装置が車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0021】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された乗物用シート装置は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0022】
(第1実施形態)
<1.乗物用シート装置の概要>
乗物用シート装置1は、
図1に示されるように、二点鎖線で示された乗物用シート3、及び実線(一部二点鎖線を含む。)で示されたスライド装置10等を備える。乗物用シート3は、乗員が着座するシートである。
【0023】
スライド装置10は、乗物用シート3をスライド可能に支持するための装置である。当該スライド装置10は、乗物用シート3をシート前後方向にスライド可能とする。因みに、本実施形態では、シート前後方向と乗物の前後方向とが一致している。
【0024】
<2.スライド装置の構成>
<2.1 スライド装置の概要(
図1参照)>
スライド装置10は、2本の固定レール11、固定レール11と同数の可動レール12、1つのレギュレータブラケット13、1つのモータユニット14(
図2参照)、可動レール12と同数の駆動ユニット15等を少なくとも備える。
【0025】
各固定レール11は、互いに平行に配置された状態で乗物に固定される軌道である。2つの可動レール12それぞれは、各固定レール11それぞれにスライド可能に装着されている。そして、それら可動レール12の上部に乗物用シート3が装着される。
【0026】
モータユニット14は、少なくとも1つ(本実施形態では、複数)の電動モータ14Aを有し、2本の可動レール12を変位させるための駆動力を発生する。そして、モータユニット14は、レギュレータブラケット13に固定されている。
【0027】
レギュレータブラケット13は、2本の可動レール12間を橋渡すように各可動レール12に固定されたパネル状のブラケットである。なお、本実施形態に係るレギュレータブラケット13は、各可動レール12の上端に配置された状態でボルト等の締結具(図示せず。)により各可動レール12に固定されている。
【0028】
各駆動ユニット15は、2本の可動レール12それぞれに設けられている(
図2参照)。各駆動ユニット15は、モータユニット14から駆動力を受けて対応する可動レール12を固定レールに対してスライドさせる。
【0029】
なお、各電動モータ14Aから出力された駆動力は、
図2の一点鎖線で示されるように、対応する可動レール12側に伝達された後、その伝達の向きが90度転向されて駆動ユニット15に入力される。
【0030】
具体的には、各電動モータ14Aから出力された駆動力は、可動レール12の長手方向(以下、前後方向という。)と直交する水平方向(以下、左右方向という。)に伝達された後、その伝達の向きが鉛直方向下向きに転向されて駆動ユニット15に入力される。
【0031】
このため、
図3に示されるように、レギュレータブラケット13の可動レール12側それぞれには、転向機構14Bが設けられている。各転向機構14Bは、各電動モータ14Aから出力された駆動力の伝達の向きを90度転向させる機構である。
【0032】
そして、転向機構14Bには、駆動シャフト15Aが嵌り込むソケット部14Cが設けられている。駆動シャフト15Aは、駆動ユニット15に設けられ、駆動力が入力される軸部である。
【0033】
ソケット部14Cは、駆動シャフト15Aと嵌合し、電動モータ14Aの駆動力を駆動シャフト15Aに伝達する。つまり、転向機構14Bと駆動シャフト15Aとは、電動モータ14Aで発生した駆動力を駆動ユニット15に伝達する駆動力伝達部16(
図2参照)として機能する。
【0034】
<2.2 レギュレータブラケットの組付時の位置決め構造>
<2.2.1 位置決め構造の必要性について>
ソケット部14Cは、駆動シャフト15Aが嵌り込む穴を有する。そして、当該穴に駆動シャフト15Aが嵌り込むことにより駆動力が伝達されるので、当該穴の断面形状と駆動シャフト15Aの断面形状とは、略合同である。
【0035】
したがって、レギュレータブラケット13が2つの可動レール12に組み付けられる際には、ソケット部14Cの中心軸線と駆動シャフト15Aの中心軸線とが一致している必要がある。
【0036】
しかし、組立作業者がレギュレータブラケット13を可動レール12に組み付ける際、他の部品が障害となって、ソケット部14Cの中心位置及び駆動シャフト15Aの中心位置を組立作業者が視認できず、当該組立作業の作業性が悪化するおそれがある。
【0037】
特に、本実施形態においては、ソケット部14Cがレギュレータブラケット13の下面側に位置し、かつ、ソケット部14Cの穴が下方向きに開口しているため、当該組立作業性の悪化を招くおそれが高い。
【0038】
<2.2.2 位置決め構造の具体例>
図4に示されるように、スライド装置10は、レギュレータブラケット13の左右方向一方側及び他方側に位置決め構造部20を有する。各位置決め構造部20は、可動レール12に対するレギュレータブラケット13の前後方向の位置決め、及び左右方向の位置決めをするための構造部である。
【0039】
なお、左右方向一方側の位置決め構造部20と左右方向他方側の位置決め構造部20とは、左右方向中央に対して対称な構造である。以下の説明は、例えば、左右方向一方側の位置決め構造部20の説明である。
【0040】
位置決め構造部20は、
図5に示されるように、当接部21、被当接部22、少なくとも1つ(本実施形態では、2つ)の案内塔23、24、及び弾性材25等を備えて構成されている。
【0041】
<当接部>
当接部21(
図5の太い実線部分)は、レギュレータブラケット13に設けられている。当該当接部21は、左右方向から可動レール12を挟む位置に配置された2つのフォークブレード21A、21Bを有して自転車用フロントフォーク状に構成されている(
図6参照)。
【0042】
被当接部22(
図5の太い実線部分)は、可動レール12に設けられた当接部21と接触可能な部位である。そして、当接部21は、レギュレータブラケット13が可動レール12に装着される際に、被当接部22に摺接可能に接触することにより、可動レール12に対するレギュレータブラケット13の前後方向の位置決め、及び左右方向の位置決めをする。
【0043】
<被当接部>
被当接部22は、第1機能及び第2機能を発揮することが可能な構成となっている。第1機能とは、
図7→
図8→
図9の順に示されるように、フォークブレード21A、21Bの先端が、鉛直方向に対して傾いた方向から被当接部22に接触した状態から当該フォークブレード21A、21Bが予め決められた状態を越えて揺動変位することを規制する機能である。
【0044】
第2機能は、フォークブレード21A、21Bが予め決められた状態まで起立する位置まで揺動変位したときに(
図10参照)、当該フォークブレード21A、21Bの垂下移動を案内する機能である。
【0045】
被当接部22は、上記の第1機能及び第2機能を実現するための構成として、
図11に示されるように、第1壁面22A、第2壁面22B及びテーパ部22C等を有する。第1壁面22Aは、前後方向と略直交する壁面である。
【0046】
第2壁面22Bは、第1壁面22Aから離間し、かつ、当該第1壁面22Aに対して平行な壁面であって、上端が第1壁面22Aの上端より低い壁面である。なお、本実施形態に係る第2壁面22Bは、第1壁面22Aに対してシート前後方向後方に位置する。
【0047】
テーパ部22Cは、第2壁面22Bの上部に設けられ、第1壁面22Aに近づくほど上端位置が低くなる傾斜面である。本実施形態では、第1壁面22Aの左右方向一端側及び他端側には、左右方向と略直交する壁面22D、22Eが設けられている。
【0048】
なお、第1壁面22A、第2壁面22B(テーパ部22Cを含む。)、壁面22D、22E及び被当接部22を可動レール12に固定するための挟持部22Fは、樹脂にて一体成形されて一体化されている。
【0049】
<案内塔>
案内塔23、24は、
図12に示されるように、可動レール12に設けられている。各案内塔23、24それぞれには、駆動シャフト15Aと平行に延びる案内溝23A、24Aが設けられている。なお、2つの案内溝23A、24Aは、互いに前後方向にずれている。
【0050】
案内溝23Aの上部には、
図13に示されるように、上端に向かうほど溝幅が大きくなるテーパ部23Bが設けられている。同様に、案内溝24Aの上部には、
図14に示されるように、上端に向かうほど溝幅が大きくなるテーパ部24Bが設けられている。
【0051】
そして、レギュレータブラケット13(本実施形態では、転向機構14B)には、
図12に示されるように、案内溝23A、24A内を摺動可能な摺動部14D、14Eが設けられている。当該摺動部14D、14Eは、フォークブレード21A、21Bが垂下移動する際に、案内溝23A、24A内を摺動変位する。
【0052】
<弾性材(
図6参照)>
弾性材25は、転向機構14Bがレギュレータブラケット13に対して変位可能な状態として当該転向機構14Bをレギュレータブラケット13に連結固定する部材である。つまり、本実施形態では、弾性材25が弾性変位可能な範囲で転向機構14Bがレギュレータブラケット13に対して変位することが許容される。
【0053】
<3.本実施形態に係るスライド装置の特徴>
本実施形態に係るスライド装置10では、レギュレータブラケット13が可動レール12に装着される際に、当接部21が被当接部22に摺接可能に接触することにより、レギュレータブラケット13の前後方向の位置決め、及びレギュレータブラケット13の左右方向の位置決めされる。
【0054】
つまり、組立作業者は、レギュレータブラケット13の組み付け作業時においては、先ず、
図7に示されるように、各フォークブレード21A、21Bがテーパ部22Cにより案内されるように、斜め上方側からフォークブレード21A、21Bの先端を第1壁面22Aに接触させる。
【0055】
次に、組立作業者は、
図8→
図9の順に示されるように、フォークブレード21A、21Bの先端が第1壁面22Aに摺接しながら垂下移動し、かつ、それらフォークブレード21A、21Bの板面が、
図10に示されるように、第1壁面22Aに接触するまでフォークブレード21A、21Bを起立させる。
【0056】
そして、
図10に示される状態においては、ソケット部14Cの中心軸線と駆動シャフト15Aの中心軸線とが略一致するように、当接部21及び被当接部22が構成されている。このため、組立作業者は、レギュレータブラケット13が
図10に示される状態となった後は、レギュレータブラケット13を垂下移動させる。
【0057】
このとき、各摺動部14D、14Eがテーパ部23B、24Bにより誘導されて案内溝23A、24Aに進入する。これにより、駆動シャフト15Aがソケット部14Cに嵌合可能となる程度にソケット部14Cの中心軸線と駆動シャフト15Aの中心軸線とが一致した状態となる。したがって、当該状態のままでレギュレータブラケット13が更に垂下移動すると、ソケット部14Cと駆動シャフト15Aとの嵌合作業が終了する。
【0058】
以上のように、本実施形態に係るスライド装置10によれば、組立作業者は、レギュレータブラケット13の当接部21を可動レール12に設けられた被当接部22に接触又は摺接させることにより、当該レギュレータブラケット13が可動レール12に対して位置決めされた状態で当該レギュレータブラケット13を可動レール12に組み付けることが可能となる。
【0059】
さらに、本実施形態では、転向機構14Bが弾性変形可能な弾性材25を介してレギュレータブラケット13に装着されている。
【0060】
これにより、レギュレータブラケット13が可動レール12に固定されたときに、転向機構14Bが変位可能であるので、駆動シャフト15Aとソケット部14Cとの嵌合箇所に大きな応力が発生してしまうことが抑制され得る。
【0061】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る駆動力伝達部16では、レギュレータブラケット13にソケット部14Cが設けられ、駆動ユニット15側に駆動シャフト15Aが設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、駆動ユニット15側にソケット部14Cが設けられ、レギュレータブラケット13に駆動シャフト15Aが設けられた構成であってもよい。
【0062】
上述の実施形態では、転向機構14Bが弾性変形可能な弾性材25を介してレギュレータブラケット13に装着されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、転向機構14Bがレギュレータブラケット13に対して変位不可の状態で固定されていてもよい。
【0063】
上述の実施形態に係る当接部21は、2つのフォークブレード21A、21Bを有して自転車用フロントフォーク状に構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、1つのブレードのみにて構成された当接部であってもよい。
【0064】
上述の実施形態に係る被当接部22は、第1壁面22A、第2壁面22B及びテーパ部22C等を有して構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、上記の第1機能及び第2機能を発揮可能な構成であれば、その他の構成であってもよい。
【0065】
上述の実施形態に係る組立作業では、組立作業者は、斜め上方側からフォークブレード21A、21Bの先端を第1壁面22Aに接触させた後、それらフォークブレード21A、21Bの板面が、第1壁面22Aに接触するまでフォークブレード21A、21Bを起立させた。
【0066】
しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、組立作業者は、例えば、フォークブレード21A、21Bを揺動変位させることなく、フォークブレード21A、21Bの板面が第1壁面22Aに接触するまでレギュレータブラケット13を前後方向に水平移動させてもよい。
【0067】
上述の実施形態に係るモータユニット14は2つの電動モータ14Aを有する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、1つの電動モータにて構成されたモータユニット14であってもよい。
【0068】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0069】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1… 乗物用シート装置 3…乗物用シート 10… スライド装置
11… 固定レール 12…可動レール 13… レギュレータブラケット
14… モータユニット 14A…電動モータ 14B… 転向機構
14C… ソケット部 14D…摺動部 15… 駆動ユニット
15A… 駆動シャフト 16…駆動力伝達部
20… 位置決め構造部 21…当接部 21A、21B… フォークブレード
22… 被当接部 22A…第1壁面 22B… 第2壁面
23、24… 案内塔 25…弾性材