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特開2023-141155最適航路演算装置および最適航路演算方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141155
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】最適航路演算装置および最適航路演算方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 79/40 20200101AFI20230928BHJP
   G01C 21/20 20060101ALI20230928BHJP
   G08G 3/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B63B79/40
G01C21/20
G08G3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047324
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 直子
(72)【発明者】
【氏名】村井 貴昭
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA14
2F129DD02
2F129DD18
2F129DD21
2F129DD37
2F129DD62
2F129DD64
2F129EE02
2F129EE52
5H181AA25
(57)【要約】
【課題】航行不能領域が存在する領域を含む航路全体の最適航路演算を、演算量を抑制しつつ自動的に行うことができる最適航路演算装置および最適航路演算方法を提供する。
【解決手段】最適航路演算装置は、入力器と、記憶器と、演算器と、を備え、記憶器は、最適航路を演算する航路演算領域のデータと、航路演算領域の一部の領域に予め設定される狭水路領域のデータと、を記憶し、航路演算領域および狭水路領域は、船舶が航行可能な第1領域と船舶が航行不能な第2領域とを含み、演算器は、狭水路領域を第1領域とみなして、出発地から到着地までの最適航路を演算することにより第1航路を生成し、第1航路に狭水路領域が含まれる場合、第1航路のうちの狭水路領域に含まれる部分の航路について狭水路領域内の第2領域を考慮して狭水路領域内の第1領域を通過するように最適航路を演算することにより、第2航路を生成し、第1航路と第2航路とを接続する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の出発地および到着地を含む入力データを入力する入力器と、
前記船舶の性能データを記憶する記憶器と、
前記入力データと、前記船舶の性能データと、前記船舶が航行する航路領域の気象データと、に基づいて、前記船舶の最適航路を演算する演算器と、を備え、
前記記憶器は、前記最適航路を演算する航路演算領域のデータと、前記航路演算領域の一部の領域に予め設定される狭水路領域のデータと、を記憶し、
前記航路演算領域および前記狭水路領域は、前記船舶が航行可能な第1領域と前記船舶が航行不能な第2領域とを含み、
前記演算器は、
前記航路演算領域のうちの前記狭水路領域を前記第1領域とみなして、前記出発地から前記到着地までの最適航路を演算することにより第1航路を生成し、
前記第1航路に前記狭水路領域が含まれるかどうかを判定し、
前記第1航路に前記狭水路領域が含まれる場合、前記第1航路のうちの前記狭水路領域に含まれる部分の航路について前記狭水路領域内の前記第2領域を考慮して前記狭水路領域内の前記第1領域を通過するように最適航路を演算することにより、第2航路を生成し、
前記狭水路領域以外の前記航路演算領域における前記第1航路と、前記狭水路領域における前記第2航路と、を接続することにより、前記出発地から前記到着地までの前記最適航路を生成する、最適航路演算装置。
【請求項2】
前記航路演算領域には、第1間隔ごとに前記第1航路を生成するための複数の第1探索点が設定され、
前記狭水路領域には、前記第1間隔より狭い第2間隔ごとに前記第2航路を生成するための複数の第2探索点が設定される、請求項1に記載の最適航路演算装置。
【請求項3】
前記航路演算領域には、第1間隔ごとに前記第1航路を生成するための複数の第1探索点が設定され、
前記演算器は、
前記第2航路を生成する場合、前記第1航路と前記狭水路領域を区画する境界線との2つの交点を求め、前記2つの交点のそれぞれについて、前記第1航路上の前記狭水路領域より外側で各交点に最も近い第1探索点を特定し、特定した2つの前記第1探索点間について前記最適航路を演算することにより前記第2航路を生成する、請求項1または2に記載の最適航路演算装置。
【請求項4】
前記狭水路領域は、島嶼または半島を含む領域に設定される、請求項1から3の何れかに記載の最適航路演算装置。
【請求項5】
船舶が航行可能な第1領域と前記船舶が航行不能な第2領域とを含み、前記船舶の最適航路を演算する航路演算領域の一部の領域に、前記第1領域および前記第2領域を含む狭水路領域を予め設定し、
前記船舶の出発地および到着地を含む入力データの入力を受け付け、
前記入力データと、前記船舶の性能データと、前記船舶が航行する航路領域の気象データと、に基づいて、前記航路演算領域のうちの前記狭水路領域を前記第1領域とみなして、前記出発地から前記到着地までの最適航路を演算することにより第1航路を生成し、
前記第1航路に前記狭水路領域が含まれるかどうかを判定し、
前記第1航路に前記狭水路領域が含まれる場合、前記第1航路のうちの前記狭水路領域に含まれる部分の航路について前記狭水路領域内の前記第2領域を考慮して前記狭水路領域内の前記第1領域を通過するように最適航路を演算することにより、第2航路を生成し、
前記狭水路領域以外の前記航路演算領域における前記第1航路と、前記狭水路領域における前記第2航路と、を接続することにより、前記出発地から前記到着地までの前記最適航路を生成する、最適航路演算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶の最適航路演算装置および最適航路演算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料価格高騰に伴う運航コストの削減、温室効果ガス(GHG)排出削減問題、さらには安全運航、輸送品質の維持向上などのニーズの高まりから、船舶における最適航路演算は船舶の運航管理における有効手段として重要視されている。
【0003】
従来の最適航路演算は、燃費削減効果の高い北太平洋等の一大洋に対して、計画される出港時刻および入港時刻の拘束条件のもと、一定の船速または一定の主機回転数にて運航するという仮定で航路、すなわち、緯度および経度のみを最適化演算している。
【0004】
しかし、全球に対応した最適航路演算を実施するためには、多数の諸島または浅瀬が存在する海域や、運河または海峡を挟んだ海域を通過する場合を考慮する必要がある。
【0005】
例えば、下記特許文献1のように、ノードとも呼ばれる最適航路探索のための格子点に重み付けをする構成が提案されている。また、例えば、下記特許文献2のように、航路途中に必須通過地点を設定し、当該必須通過地点を必ず通るように最適航路の演算を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4247497号公報
【特許文献2】特許第4934756号公報
【特許文献3】特許第6913536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1,2のような態様において、狭い海域等に必ず格子点または必須通過地点を設定するためには、格子点間の距離を短くする必要があるが、狭い海域と広い海域との両方を通る航路においては、広い海域における格子点間の距離も狭い海域に合わせて短く設定する必要が生じ、演算量が多くなり、演算効率が悪化する。
【0008】
これに対し、上記特許文献3では、多数の島嶼または浅瀬が存在する海域や、運河または海峡を挟んだ海域を、固定航路領域に設定し、残りの領域を固定航路領域によって区切られる複数の領域に分割し、分割されたそれぞれの領域について最適航路を演算することにより、演算量を抑制しつつ自動的に最適航路演算を行うことが提案されている。
【0009】
ただし、上記特許文献3における最適演算では、固定航路領域に設定される海域を必ず通ることが前提となっているため、固定航路領域を含む航路と固定航路領域を含まない航路との比較を行うことができない。したがって、航行可能なすべての航路を平等に評価したとは言い切れず、さらに最適な航路を探索するための演算方法には改善の余地がある。
【0010】
そこで、本開示は、島嶼または半島等の航行不能領域が存在する領域を含む航路全体の最適航路演算を、演算量を抑制しつつ自動的に行うことができる最適航路演算装置および最適航路演算方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様に係る最適航路演算装置は、船舶の出発地および到着地を含む入力データを入力する入力器と、前記船舶の性能データを記憶する記憶器と、前記入力データと、前記船舶の性能データと、前記船舶が航行する航路領域の気象データと、に基づいて、前記船舶の最適航路を演算する演算器と、を備え、前記記憶器は、前記最適航路を演算する航路演算領域のデータと、前記航路演算領域の一部の領域に予め設定される狭水路領域のデータと、を記憶し、前記航路演算領域および前記狭水路領域は、前記船舶が航行可能な第1領域と前記船舶が航行不能な第2領域とを含み、前記演算器は、前記航路演算領域のうちの前記狭水路領域を前記第1領域とみなして、前記出発地から前記到着地までの最適航路を演算することにより第1航路を生成し、前記第1航路に前記狭水路領域が含まれるかどうかを判定し、前記第1航路に前記狭水路領域が含まれる場合、前記第1航路のうちの前記狭水路領域に含まれる部分の航路について前記狭水路領域内の前記第2領域を考慮して前記狭水路領域内の前記第1領域を通過するように最適航路を演算することにより、第2航路を生成し、前記狭水路領域以外の前記航路演算領域における前記第1航路と、前記狭水路領域における前記第2航路と、を接続することにより、前記出発地から前記到着地までの前記最適航路を生成する。
【0012】
本開示の他の態様に係る最適航路演算方法は、船舶が航行可能な第1領域と前記船舶が航行不能な第2領域とを含み、前記船舶の最適航路を演算する航路演算領域の一部の領域に、前記第1領域および前記第2領域を含む狭水路領域を予め設定し、前記船舶の出発地および到着地を含む入力データの入力を受け付け、前記入力データと、前記船舶の性能データと、前記船舶が航行する航路領域の気象データと、に基づいて、前記航路演算領域のうちの前記狭水路領域を前記第1領域とみなして、前記出発地から前記到着地までの最適航路を演算することにより第1航路を生成し、前記第1航路に前記狭水路領域が含まれるかどうかを判定し、前記第1航路に前記狭水路領域が含まれる場合、前記第1航路のうちの前記狭水路領域に含まれる部分の航路について前記狭水路領域内の前記第2領域を考慮して前記狭水路領域内の前記第1領域を通過するように最適航路を演算することにより、第2航路を生成し、前記狭水路領域以外の前記航路演算領域における前記第1航路と、前記狭水路領域における前記第2航路を接続することにより、前記出発地から前記到着地までの前記最適航路を生成する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、島嶼または半島等の航行不能領域が存在する領域を含む航路全体の最適航路演算を、演算量を抑制しつつ自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示の一実施の形態に係る最適航路演算装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施の形態における航路演算領域を示す図である。
図3図3は、本実施の形態における最適航路演算処理の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、図2に示す航路演算領域に含まれる狭水路領域を第1領域とみなした場合のイメージ図である。
図5図5は、DP法による最適航路演算を説明するための図である。
図6図6は、本実施の形態において第2航路を生成するための狭水路領域近傍のイメージ図である。
【0015】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本開示の一実施の形態に係る最適航路演算装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示す最適航路演算装置1は、入力器2、記憶器3、演算器4、および出力器5を備えている。これらの構成は、バス6により相互にデータ伝達を行う。最適航路演算装置1は、陸上の施設におけるコンピュータによって構成されてもよいし、船舶に設置されたコンピュータまたは制御装置として構成されてもよい。また、最適航路演算装置1を構成する一部の機能を船舶に設置されたコンピュータが発揮し、他の機能を陸上に設置されたコンピュータが発揮し、船陸間通信等の通信手段によって相互にデータの相互通信が行われるように構成されてもよい。
【0017】
入力器2は、船舶の出発地、到着地、出発時刻および到着時刻等を含む入力データをユーザが入力可能な入力装置として構成される。入力データとして、到着時刻の代わりに、船舶の主機関、すなわち、プロペラ軸の平均回転数または平均出力が含まれてもよい。記憶器3は、入力器2から入力された入力データを記憶する。また、記憶器3には、船舶の性能データと、最適航路演算プログラムと、後述する航路演算領域および狭水路領域のデータと、が予め記憶されている。また、最適航路演算装置1は、少なくとも船舶が航行する航路領域の気象データを取得し、記憶器3に記憶する。なお、記憶器3は、複数の記憶器から構成されてもよい。例えば、記憶器3は、気象データを記憶するデータサーバ等の第1記憶器と、入力データおよび船舶の性能データ等を記憶する第2記憶器とを含んでもよい。
【0018】
船舶の性能データは、各船舶が個別に備える性能に関するデータである。気象データは、例えば外部機関等から提供される。気象データは、例えば現在から1週間先の、航路領域等における気象または海象に関するデータである。なお、気象データは、ネットワークを通じて外部から逐次送信され、記憶器3に自動的に蓄積されるように構成されてもよい。
【0019】
演算器4は、例えばマイクロコントローラ、パーソナルコンピュータ等のコンピュータを備えている。例えば、演算器4は、CPU、RAM等のメインメモリ等を備えている。演算器4は、記憶器3に記憶された各種の情報に基づいて船舶の最適航路を演算する最適航路演算処理を実行する。このために、演算器4は、最適航路演算プログラムを実行することにより、情報入力受付部41、第1航路生成部42、判定部43、第2航路生成部44および最適航路生成部45等の機能を発揮する。
【0020】
なお、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、または、それらの組み合わせを含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本明細書において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、ユニット、または手段はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアまたはプロセッサの構成に使用される。
【0021】
情報入力受付部41は、船舶の出発地、到着地、出発時刻および到着時刻、あるいは、到着時刻に代えて、船舶の主機関の平均回転数または平均出力を含む情報の入力を受け付ける。第1航路生成部42および第2航路生成部44は、船舶の性能データと、船舶が航行する航路領域の気象データと、航路演算領域および狭水路領域のデータと、に基づいて、船舶の最適航路を演算し、第1航路C1および第2航路C2を生成する。判定部43は、第1航路生成部42が生成した第1航路C1に対して後述する判定を行う。最適航路生成部45は、第1航路C1および第2航路C2から最適航路を生成する。
【0022】
出力器5は、演算器4における演算結果を出力する。例えば、出力器5は、最適航路演算装置1に接続された表示装置に、海図等の船舶が航行可能な航行可能領域を示す地図を表示し、当該地図上に演算器4によって演算された最適航路を表示する。また、出力器5は、最適航路を含むデータを他のコンピュータに送信する通信インターフェイスとして構成されてもよい。
【0023】
[最適航路演算処理]
以下、最適航路演算処理の具体例を説明する。図2は、本実施の形態における航路演算領域を示す図である。
【0024】
本実施の形態において、記憶器3には、最適航路を演算する航路演算領域ACのデータと、航路演算領域ACの一部の領域に予め設定される狭水路領域ADのデータと、を含む領域データが記憶される。航路演算領域ACは、船舶が航行可能な第1領域A1と船舶が航行不能な第2領域A2とを含む。例えば、航路演算領域ACのデータは、第1領域A1と第2領域A2との境界線Bを示す地図データである。例えば、第1領域A1は、船舶が航行可能な水深の最低値を境界線Bとする領域に設定される。
【0025】
狭水路領域ADも、船舶が航行可能な第1領域A1と、船舶が航行不能な第2領域A2と、を含んでいる。狭水路領域ADは、島嶼または半島を含む領域に設定される。特に、狭水路領域ADは、島嶼または半島等が比較的近接している場所に設定され得る。この場合、狭水路領域ADにおける第1領域A1は、海峡、運河、内海等を含み、狭水路領域ADにおける第2領域A2は、島嶼、半島または浅瀬等を含む。
【0026】
さらに、記憶器3には、出発地Sから到着地Gまでの基準航路fsが記憶される。基準航路fsは、例えば、事前に設定された基準航路fsが記憶器3に記憶されていてもよいし、最適航路演算を開始する際に、入力器2から基準航路fsを設定入力することにより、基準航路fsが記憶器3に記憶されてもよい。例えば、基準航路fsは、国際水路機関等から発行される航路情報であってもよい。これに代えて、過去の同様の航路における最適航路演算結果として得られる航路を記憶器3に蓄積し、蓄積されたデータの平均的な航路、または、蓄積された複数の航路のうち所定条件を満足する一の航路を基準航路fsとしてもよい。例えば基準航路fsは、安全性と燃費とをパラメータとする評価関数が最小である航路に設定されてもよい。また、例えば船舶の船長または管理者であるユーザが設定した航路を基準航路fsとしてもよい。この際、最適航路演算のたびに入力器2に航路の設定入力が行われることにより、設定された航路が記憶器3に記憶されてもよい。所定領域ごとの最短航路である大圏航路を繋ぎ合わせた航路を基準航路fsとしてもよい。
【0027】
図3は、本実施の形態における最適航路演算処理の流れを示すフローチャートである。図3に示すように、情報入力受付部41は、出発地S、到着地G、出発時刻T、到着時刻T、基準航路fsを含む情報入力を受け付ける(ステップS1)。なお、船舶を出発時刻Tから予め定められた回転数、出力または船速で航行させる場合等において、到着時刻Tの情報入力を不要としてもよい。なお、予め定められた回転数、出力または船速で航行させることは、出発地Sから到着地Gまで一定の回転数、出力または船速で航行させる場合、あるいは、出発地Sから到着地Gまでを複数の区間に分けて、区間ごとに設定された回転数、出力または船速で航行させる場合等を含む。
【0028】
第1航路生成部42は、航路演算領域ACのうちの狭水路領域ADを第1領域A1とみなして、出発地Sから到着地Gまでの最適航路を演算することにより第1航路C1を生成する(ステップS2)。図4は、図2に示す航路演算領域に含まれる狭水路領域を第1領域とみなした場合のイメージ図である。図4に示すように、第1航路C1を生成する際の最適航路の演算では、狭水路領域ADの全域を船舶が航行可能な第1領域A1であるとみなす。すなわち、狭水路領域ADの全域が、船舶が航行可能な海であるとみなして第1航路C1が演算される。
【0029】
このため、第1航路生成部42は、航路演算領域ACのうちの狭水路領域AD以外の領域において第1領域A1上に第1航路C1を生成し得る。また、第1航路生成部42は、航路演算領域ACのうちの狭水路領域AD全域において第1航路C1を生成し得る。第1航路生成部42は、以下のような公知の方法に基づいて具体的な最適航路の演算を行う。図4において、第1航路生成部42は、航路演算領域ACに含まれる複数の狭水路領域ADのすべての領域を船舶が航行可能な第1領域A1としたときの航路演算領域ACの全域を第1航路演算領域AC1に設定し、当該第1航路演算領域AC1に対して最適航路を演算する。
【0030】
[最適航路演算の例]
ここで、最適航路演算について例示する。第1航路生成部42は、例えば、気象データに基づく波高、船体動揺等の航行の安全性に関するパラメータと、船舶の性能データに基づく燃費との評価関数を最小化するような航路を最適航路として演算する。
【0031】
なお、最適航路の演算自体は一般的な最適航路演算が適用可能である。例えば、以下のようなダイナミックプログラミング法(以下、DP法と略記する)を採用することができる。図5は、DP法による最適航路演算を説明するための図である。
【0032】
DP法において、まず、第1航路生成部42は、出発地Sと到着地Gとの間の最短距離を結ぶ最短距離航路である大圏航路Rを演算する。そして、第1航路生成部42は、当該大圏航路RをN等分し、各等分点において直交する大圏である仮想線分Mを設定する。さらに、第1航路生成部42は、各仮想線分M上に等間隔で格子点Lを配置する。出発地Sからk本目の仮想線分M上のi番目の格子点をL(k,i)とする。第1航路生成部42は、各仮想線分M上の何れかの格子点Lを1つずつ選択し、出発地Sと到着地Gとの間で順に繋いだものを最適航路Rとして演算する。すなわち、最適航路Rは、出発地S、格子点L(1,i),格子点L(2,i),…,L(k,i),…,到着地Gを順に繋いだものとなる。
【0033】
船舶は、k本目の仮想線分M上の格子点L(k,i)を時刻tに出発し、k+1本目の仮想線分M上の格子点L(k+1,ik+1)に時刻tk+1に到着するものとする。このときの格子点L(k,i)から格子点L(k+1,ik+1)までの評価値J(L(k,i),L(k+1,ik+1),t,n)を燃料消費量F(L(k,i),L(k+1,ik+1),t,n)と運航限界に対するペナルティP(L(k,i),L(k+1,ik+1),t,n)の和で表す。すなわち、評価値Jは、J=F+Pで表される。ここで、nは格子点L(k,i)から格子点L(k+1,ik+1)まで航行する間の船舶のプロペラ回転数を示す。また、運航限界に対するペナルティPは、例えばその格子点間で遭遇する波高や、例えば、ロール角、ピッチ角等の船体の動揺等を示す。
【0034】
格子点L(k+1,ik+1)への到着時刻tk+1は、tk+1=t+T(L(k,i),L(k+1,ik+1),t,n)と表せる。ここで、T(L(k,i),L(k+1,ik+1),t,n)は、格子点L(k,i)から格子点L(k+1,ik+1)までの航行時間を示す。
【0035】
第1航路生成部42は、時刻tに格子点L(k,i)から到着地Gに向けて航行した場合の到着地Gまでの最小評価値Jmin(L(k.i),t)を、格子点L(k,i)から格子点L(k+1,ik+1)までの評価値と時刻tk+1に格子点L(k+1,ik+1)から到着地Gに向けて航行した場合の到着地Gまでの最小評価値との和を、iK+1とnとをパラメータとして最小化することで求める。
【0036】
すなわち、第1航路生成部42は、以下の演算を行う。
Jmin(L(k.ik)、tk)=Min(ik+1,nk){J(L(k,ik),L(k+1,ik+1),tk,nk)+Jmin(L(k+1,ik+1),tk+T(L(k,ik),L(k+1,ik+1),tk,nk))}
(k=N-2,…,1,0) … (1)
ここで、Min(ik+1,n){J}は,J内をik+1,nをパラメータとして最小化することを意味する。k=0のときの格子点L(0,i)は出発地Sに等しい。
【0037】
また、第1航路生成部42は、N-1本目の仮想線分M上の格子点L(N-1,iN-1)から到着地Gまで航行する間の最小評価値Jmin(L(N-1,iN-1),tN-1)を以下の式を用いて演算する。
Jmin(L(N-1,iN-1),tN-1)=Min(nN-1){J(L(N-1,iN-1),G,tN-1,nN-1)} … (2)
【0038】
第1航路生成部42は、上記(1)および(2)式をDP法における関数再帰方程式として用いて、N-1本目の仮想線分Mから出発地Sへ仮想線分Mを1本ずつ遡りながら各格子点Lから到着地Gまでの最小評価値を算出し、最終的に出発地Sから到着地Gまでの最小評価値を求める。第1航路生成部42は、最小評価値を得ることができる格子点Lの集合を最適航路Rとして出力する。
【0039】
また、第1航路生成部42は、上記のようなDP法を用いた最適航路演算に代えて、変分法、ダイクストラ法、A法、等時間曲線法等によって最適航路演算を行ってもよい。また、上記例では、運航限界をペナルティPとして評価値に加えた最適化計算の例を示したが、運航限界以下となる航路を選択することを拘束条件として最適航路演算が行われてもよい。
【0040】
このように、第1航路生成部42は、航路演算領域ACには、第1間隔ごとに第1航路C1を生成するための複数の第1探索点P1として上記格子点L(k,i)を設定し、上記最適航路演算の結果として抽出された複数の第1探索点P1を繋ぐことにより第1航路C1を生成する。例えば、図4に示すように、出発地Sと到着地Gとの間の航路演算領域AC上に波高の高い荒天領域AEが存在する場合、第1航路C1は、当該荒天領域AEを迂回するような航路となる。なお、第1探索点P1は、狭水路領域AD上にも設定される。すなわち、第1航路C1の生成において狭水路領域ADを通過する最適航路の探索には、第1探索点P1が用いられる。
【0041】
判定部43は、生成された第1航路C1に狭水路領域ADが含まれるかどうかを判定する(ステップS3)。例えば、判定部43は、第1航路C1に含まれる第1探索点P1の中に、位置座標が狭水路領域AD内である第1探索点P1があるかどうかを判定する。
【0042】
第1航路C1に狭水路領域ADが含まれる場合(ステップS3でYes)、第2航路生成部44は、第1航路C1のうちの狭水路領域ADに含まれる部分の航路C1Aについて狭水路領域AD内の第1領域A1を通過するように最適航路を演算することにより、第2航路C2を生成する(ステップS4)。
【0043】
すなわち、第2航路生成部44は、全域を航行可能領域とみなしていた狭水路領域ADにおいて、船舶が航行可能な第1領域A1と船舶が航行不能な第2領域A2とを区別して最適航路演算を行い、第1領域A1を通り、第2領域A2を通らないような第2航路C2を生成する。
【0044】
図4の例では、出発地Sに近い航路演算領域ACの一部領域に設定された狭水路領域AD上を第1航路C1が通過している。図4の例において、第2航路生成部44は、第1航路C1が通過する当該狭水路領域ADを第2航路演算領域AC2に設定し、当該第2航路演算領域AC2に対して最適航路を演算する。
【0045】
図6は、本実施の形態において第2航路を生成するための狭水路領域近傍のイメージ図である。図6には、第1航路C1が通過する1つの狭水路領域ADが模式的に示されている。また、図6において、狭水路領域AD近傍の第1航路C1上の第1探索点P1を、出発地S側から順に、P1,P1k+1,…,P1k+6としている。このうち、3つの第1探索点P1k+2,P1k+3,P1k+4が狭水路領域ADに含まれている。
【0046】
第1航路C1の生成においては、上述のように、狭水路領域ADの全域を、船舶が航行可能な第1領域A1とみなしていたため、第1航路C1における狭水路領域ADの通過部分は、実際には第1領域A1を通過するとは限らない。図4の例においては、第1探索点P1k+2,P1k+3が第2領域A2内に位置しており、第1航路C1は、狭水路領域AD内において船舶が航行できない第2領域A2を含んでいる。そのため、第2航路生成部44は、第1航路C1が通過する狭水路領域ADにおいて、元の第1領域A1および第2領域A2のデータを用いて最適航路を演算する。
【0047】
第2航路生成部44は、第1航路C1を生成するのと同様の上記方法に基づいて具体的な最適航路の演算を行う。ただし、第2航路C2を生成する対象の狭水路領域ADである第2航路演算領域AC2には、第1航路C1を生成するための最適航路演算における第1探索点P1間の第1間隔D1より狭い第2間隔D2ごとに第2航路C2を生成するための複数の第2探索点P2が設定される。上述したように、狭水路領域ADは、島嶼、半島または浅瀬等を含む海峡、運河、内海等に設定され得る。したがって、狭水路領域ADでは、島嶼、半島または浅瀬等の第2領域A2が入り組んでいる場合があるため、生成される第2航路C2が第2領域A2に接触しないで迂回できるように、第2探索点P2の間隔、すなわち、ノードのピッチが短く設定される。
【0048】
第2航路生成部44は、第1航路C1と狭水路領域ADを区画する境界線BAとの2つの交点Q1,Q2を求める。第2航路生成部44は、2つの交点Q1,Q2のそれぞれについて、第1航路C1上の狭水路領域ADより外側で各交点Q1,Q2に最も近い第1探索点を変針点として特定する。図4の例では、第1探索点P1k+1およびP1k+5が変針点として特定される。第2航路生成部44は、特定した2つの変針点P1k+1,P1k+5間について最適航路を演算する。図4の例において、第2航路生成部44は、6つの第2探索点P2,P2,…,P2を順に繋ぐ第2航路C2を生成する。
【0049】
最適航路生成部45は、狭水路領域AD以外の航路演算領域ACにおける第1航路C1と、狭水路領域ADにおける第2航路C2と、を接続することにより、出発地Sから到着地Gまでの最適航路を生成する(ステップS5)。図4の例では、最適航路生成部45は、出発地Sから第1探索点P1k+1までの第1航路C1における第1探索点P1k+1と、第2航路C2の第2探索点P2とを接続し、第2航路C2の第2探索点P2と、第1探索点P1k+5から到着地Gまでの第1航路C1における第1探索点P1k+5とを接続することにより、最適航路を生成する。したがって、この場合の最適航路は、S,…,P1,P1k+1,P2,…,P2,P1k+5,P1k+6,…,Gの各点を順に繋いだ航路となる。
【0050】
なお、第1航路C1に狭水路領域ADが含まれない場合(ステップS3でNo)、最適航路生成部45は、第1航路C1を最適航路として出力する(ステップS6)。
【0051】
[効果]
上記構成によれば、多数の島嶼または浅瀬が存在する海域を、狭水路領域ADに設定することにより、いったん狭水路領域ADを船舶が航行可能な第1領域A1とみなして当該狭水路領域ADを含む航路演算領域ACにおいて最適航路の演算が行われ、第1航路C1が生成される。このため、狭水路領域ADを通過する航路と、狭水路領域ADを通過しない航路とを平等に評価することができる。さらに、第1航路C1が狭水路領域ADを通過する場合には、当該狭水路領域ADにおいて船舶が航行不能な第2領域A2を考慮した最適航路の演算が行われることにより、狭水路領域ADにおいても適切な最適航路を求めることができる。
【0052】
しかも、第1航路C1が狭水路領域ADを通過する場合には、当該狭水路領域AD内のみ最適航路演算を行い、生成された第2航路C2と、第1航路C1における狭水路領域AD以外の部分とを接続することにより最適航路が生成される。このため、狭水路領域ADを通過する最適航路の演算を、航路演算領域AC全体に対して改めて行うよりも演算量を少なくすることができる。このように、本実施の形態によれば、島嶼または半島等の航行不能領域が存在する領域を含む航路全体の最適航路演算を、演算量を抑制しつつ自動的に行うことができる。
【0053】
さらに、本実施の形態によれば、第2航路C2を生成するための最適化演算の際に用いられる複数の第2探索点P2の間隔が、第1航路C1を生成するための複数の第1探索点P1の間隔よりも狭く設定されるため、狭水路領域ADにおける第2領域A2が入り組んでいる場合でも、当該第2領域A2に接触しないで迂回できる第2航路C2を生成することができる。
【0054】
[他の実施の形態]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0055】
例えば、上記実施の形態において、第2航路C2を生成するための最適航路演算として、第1航路C1を生成するための最適航路演算と同様の最適航路探索処理を行う態様を例示したが、これに限られない。例えば、狭水路領域ADに複数の固定航路が予め設定され、第2航路生成部44は、複数の固定航路の中から一の固定航路を第2航路C2として選択するようにしてもよい。この場合も、最適航路生成部45は、第1航路C1上の2つの変針点である第1探索点P1k+1およびP1k+5と、選択された固定航路とを繋ぐことにより、狭水路領域AD以外の航路演算領域ACにおける第1航路C1と狭水路領域ADにおける第2航路C2とが接続された最適航路を生成する。
【0056】
複数の固定航路の中から一の固定航路を選択する方法は、複数の固定航路のうちの変針点に最も近い固定航路を選択することが例示される。例えば、第2航路生成部44は、各固定航路の中間地点と2つの変針点のそれぞれとの間の二点間距離の和を算出してもよい。さらに、第2航路生成部44は、固定航路ごとに算出された二点間距離の和を比較し、その和が最小となる固定航路を変針点に最も近い固定航路として選択してもよい。
【0057】
また、例えば、第2航路C2を生成するための最適航路演算を、第1航路C1を生成するための最適航路演算とは異なる評価式を用いて行ってもよい。例えば、第1航路C1を生成するための最適航路演算において、燃料消費が低い経路について評価が高くなる評価式を用い、第2航路C2を生成するための最適航路演算において、航行距離が短い経路について評価が高くなる評価式を用いてもよい。
【0058】
また、狭水路領域AD内における第2領域A2は、船舶の種類、船幅、喫水等に応じて異なる領域に設定されてもよい。これにより、船舶の実運航上選択し得ない航路を予め除外することができる。
【0059】
また、上記実施の形態では、第2航路C2を生成するための最適航路演算において用いられる第2探索点P2の間隔が第1航路C1を生成するための最適航路演算において用いられる第1探索点P1の間隔である第1間隔D1より狭い第2間隔D2である例を示したが、第2探索点P2の間隔は第1探索点P1の間隔と同じでもよい。すなわち、第1探索点P1を用いて第2航路C2を生成してもよい。また、狭水路領域ADが設定される場所に応じて第2探索点P2の間隔を変更可能としてもよい。
【0060】
また、上記実施の形態では、出発地Sから到着地Gまでの間に1つの航路演算領域ACが設定される態様を例示したが、出発地Sから到着地Gまでの間に、船舶が必ず通る固定航路が含まれていてもよい。この場合、生成される最適航路には固定航路が必ず含まれる。また、固定航路が出発地Sおよび到着地Gから離れた位置に設定される場合、航路演算領域ACは、複数の領域に分割される。例えば、出発地Sと到着地Gとの間に固定航路が設定される領域が1つある場合、出発地Sから固定航路の始点までの間の第1航路演算領域と固定航路の終点から到着地Gまでの間の第2航路演算領域が設定される。この場合、第1航路生成部42は、分割された航路演算領域ごとに第1航路C1を生成し得る。
【0061】
また、上記実施の形態では、船舶の出航前に予め最適航路演算を行うことを想定して説明したが、上記態様は、船舶の出航前だけでなく、船舶の出航後において実施することも可能である。この場合、船舶の現在位置または未来の位置(航行予定位置)が出発地Sとなり、現在時刻または航行予定位置への到達予定時刻が出発時刻Tとして入力される。
【0062】
[本開示のまとめ]
本開示の一態様に係る最適航路演算装置は、船舶の出発地および到着地を含む入力データを入力する入力器と、前記船舶の性能データを記憶する記憶器と、前記入力データと、前記船舶の性能データと、前記船舶が航行する航路領域の気象データと、に基づいて、前記船舶の最適航路を演算する演算器と、を備え、前記記憶器は、前記最適航路を演算する航路演算領域のデータと、前記航路演算領域の一部の領域に予め設定される狭水路領域のデータと、を記憶し、前記航路演算領域および前記狭水路領域は、前記船舶が航行可能な第1領域と前記船舶が航行不能な第2領域とを含み、前記演算器は、前記航路演算領域のうちの前記狭水路領域を前記第1領域とみなして、前記出発地から前記到着地までの最適航路を演算することにより第1航路を生成し、前記第1航路に前記狭水路領域が含まれるかどうかを判定し、前記第1航路に前記狭水路領域が含まれる場合、前記第1航路のうちの前記狭水路領域に含まれる部分の航路について前記狭水路領域内の前記第2領域を考慮して前記狭水路領域内の前記第1領域を通過するように最適航路を演算することにより、第2航路を生成し、前記狭水路領域以外の前記航路演算領域における前記第1航路と、前記狭水路領域における前記第2航路と、を接続することにより、前記出発地から前記到着地までの前記最適航路を生成する。
【0063】
上記構成によれば、多数の島嶼または浅瀬が存在する海域を、狭水路領域に設定することにより、いったん狭水路領域を船舶が航行可能な第1領域とみなして当該狭水路領域を含む航路演算領域において最適航路の演算が行われ、第1航路が生成される。このため、狭水路領域を通過する航路と、狭水路領域を通過しない航路とを平等に評価することができる。さらに、第1航路が狭水路領域を通過する場合には、当該狭水路領域において船舶が航行不能な第2領域を考慮した最適航路の演算が行われることにより、狭水路領域においても適切な最適航路を求めることができる。
【0064】
しかも、第1航路が狭水路領域を通過する場合には、当該狭水路領域内のみ最適航路演算を行い、生成された第2航路と、第1航路における狭水路領域以外の部分とを接続することにより最適航路が生成される。このため、狭水路領域を通過する最適航路の演算を、航路演算領域全体に対して改めて行うよりも演算量を少なくすることができる。このように、本実施の形態によれば、島嶼または半島等の航行不能領域が存在する領域を含む航路全体の最適航路演算を、演算量を抑制しつつ自動的に行うことができる。
【0065】
前記航路演算領域には、第1間隔ごとに前記第1航路を生成するための複数の第1探索点が設定され、前記狭水路領域には、前記第1間隔より狭い第2間隔ごとに前記第2航路を生成するための複数の第2探索点が設定されてもよい。これにより、狭水路領域における第2領域が入り組んでいる場合でも、当該第2領域に接触しないで迂回できる第2航路を生成することができる。
【0066】
前記航路演算領域には、第1間隔ごとに前記第1航路を生成するための複数の第1探索点が設定され、前記演算器は、前記第2航路を生成する場合、前記第1航路と前記狭水路領域を区画する境界線との2つの交点を求め、前記2つの交点のそれぞれについて、前記第1航路上の前記狭水路領域より外側で各交点に最も近い第1探索点を特定し、特定した2つの前記第1探索点間について前記最適航路を演算することにより前記第2航路を生成してもよい。
【0067】
前記狭水路領域は、島嶼または半島を含む領域に設定されてもよい。
【0068】
本開示の他の態様に係る最適航路演算方法は、船舶が航行可能な第1領域と前記船舶が航行不能な第2領域とを含み、前記船舶の最適航路を演算する航路演算領域の一部の領域に、前記第1領域および前記第2領域を含む狭水路領域を予め設定し、前記船舶の出発地および到着地を含む入力データの入力を受け付け、前記入力データと、前記船舶の性能データと、前記船舶が航行する航路領域の気象データと、に基づいて、前記航路演算領域のうちの前記狭水路領域を前記第1領域とみなして、前記出発地から前記到着地までの最適航路を演算することにより第1航路を生成し、前記第1航路に前記狭水路領域が含まれるかどうかを判定し、前記第1航路に前記狭水路領域が含まれる場合、前記第1航路のうちの前記狭水路領域に含まれる部分の航路について前記狭水路領域内の前記第2領域を考慮して前記狭水路領域内の前記第1領域を通過するように最適航路を演算することにより、第2航路を生成し、前記狭水路領域以外の前記航路演算領域における前記第1航路と、前記狭水路領域における前記第2航路と、を接続することにより、前記出発地から前記到着地までの前記最適航路を生成する。
【符号の説明】
【0069】
1 最適航路演算装置
2 入力器
3 記憶器
4 演算器
図1
図2
図3
図4
図5
図6