(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141159
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ結露防止装置
(51)【国際特許分類】
G02C 11/08 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G02C11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047331
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】森川 清司
(57)【要約】
【課題】眼鏡とは別構成でありながら、眼鏡レンズの結露を防止することができる眼鏡レンズ結露防止装置を提供することを課題とする。
【解決手段】眼鏡レンズ結露防止装置(12)は、空気を送出する送風部(121)と、前記送風部の上流側、内部、もしくは下流側に設けられ、前記送風部により送られる空気を加熱する加熱部(122)と、前記送風部により送出される加熱された空気を、眼鏡レンズ裏面方向に誘導する風向制御部(123)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を送出する送風部と、
前記送風部の上流側、内部、もしくは下流側に設けられ、前記送風部により送られる空気を加熱する加熱部と、
前記送風部により送出される加熱された空気を、眼鏡レンズ裏面方向に誘導する風向制御部と、
を備えることを特徴とする眼鏡レンズ結露防止装置。
【請求項2】
少なくとも前記送風部と前記加熱部と前記風向制御部を備えたユニットが、眼鏡本体に対して着脱可能に固定できる取り付け部
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズ結露防止装置。
【請求項3】
前記取り付け部は、前記眼鏡のレンズに対して上下方向に位置調整可能であること
を特徴とする請求項2に記載の眼鏡レンズ結露防止装置。
【請求項4】
前記送風部により送出される風量、もしくは、前記加熱部により加熱される空気温度、または、その両方を制御する駆動制御部
を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の眼鏡レンズ結露防止装置。
【請求項5】
前記駆動制御部は、
利用者の呼吸に応じて、前記送風部により送出される風量を制御すること
を特徴とする請求項4に記載の眼鏡レンズ結露防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズ結露防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズの曇りを防止する眼鏡が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、眼鏡レンズの主面に直接密着された透明導電膜に電力を供給することにより、眼鏡レンズを加熱してレンズ曇りを防止する眼鏡が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等の従来技術では、透明導電膜などが眼鏡と一体的に構成されており、利用者が使用している眼鏡などの任意の眼鏡に適用することが難しいという問題がある。
【0006】
また、寒冷時やマスク装着時などは、眼鏡レンズが曇りやすくなる一方で、温暖な時などでは眼鏡レンズが結露する可能性が低くなるので着脱可能という観点からも、眼鏡とは別構成であるべきとの要請もある。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、眼鏡とは別構成でありながら、眼鏡レンズの結露を防止することができる眼鏡レンズ結露防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の眼鏡レンズ結露防止装置は、空気を送出する送風部と、前記送風部の上流側、内部、もしくは下流側に設けられ、前記送風部により送られる空気を加熱する加熱部と、前記送風部により送出される加熱された空気を、眼鏡レンズ裏面方向に誘導する風向制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、眼鏡とは別構成でありながら、眼鏡レンズの結露を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、眼鏡レンズ結露防止装置12が装着された眼鏡1の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、利用者の上側から見た図であり、本実施形態にかかる眼鏡レンズ結露防止装置12の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、熱傷の原因となる温度と時間の関係を示すグラフ図である。
【
図4】
図4は、上下方向において、眼鏡レンズ10と同じ位置(略同一水平面)に、眼鏡レンズ結露防止装置12を位置づけた場合の空気の流れを示す図である。
【
図5】
図5は、眼鏡レンズ10に対して、眼鏡レンズ結露防止装置12を上方向に位置調整した場合の空気の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、眼鏡レンズ結露防止装置の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、眼鏡レンズ結露防止装置12が装着された眼鏡1の概略構成を示す斜視図である。なお、本明細書において、前、後、左、右、上、及び、下とは、眼鏡レンズ結露防止装置12が装着された眼鏡1をかけた利用者から見た場合の各方向を指すものとする。
【0012】
図1には、一般的な任意の眼鏡1に対して、眼鏡レンズ結露防止装置12が装着されている。まず、眼鏡レンズ結露防止装置12を除いた眼鏡1の構成として、
図1に示すように、眼鏡本体2は、フレーム11と、フレーム11に取り付けられた眼鏡レンズ10とを備えている。フレーム11は、利用者の耳に掛けられるテンプル101と、ヒンジを介してテンプル101に接続されるリム102と、左右のリム102の間を接続するブリッジ103と、鼻パッド104とから構成されている。なお、眼鏡本体2は、この構成に限られず、ハーフリムやアンダーリムのフレームをもつ眼鏡やサングラスなど任意の眼鏡に適用することができる。
【0013】
図1に示すように、本実施形態にかかる眼鏡レンズ結露防止装置12は、任意の眼鏡本体2に対して、取り付け部128を介して着脱可能に固定される。図示の例では、テンプル101に対して、クリップ等の構造の取り付け部128を介して、眼鏡レンズ結露防止装置12が取り付けられている。
【0014】
ここで、取り付け部128は、少なくとも送風部121と加熱部122と風向制御部123を備えたユニットが、眼鏡本体2に対して着脱可能に固定できるクリップ様の部材である。なお、後述するように、取り付け部128は、眼鏡レンズ10に対して上下方向にスライド可能に位置調整できる構成であってもよい。これにより、送風が眼に直接的もしくは間接的に当たらないように取り付け部128を上下方向にずらした位置関係で固定できる。
【0015】
図2は、利用者の上側から見た図であり、本実施形態にかかる眼鏡レンズ結露防止装置12の一例を示す断面図である。
図2に示すように、眼鏡レンズ結露防止装置12は、送風部121と、加熱部122と、風向制御部123と、を少なくとも備える。図示のごとく、本実施形態において、眼鏡レンズ結露防止装置12は、更に、駆動制御部124と、電源部125と、取り付け部128と、を備える。
【0016】
このうち、送風部121は、空気を送出する。より具体的には、送風部121は、一例として、図示の如く、ファンとモータを備えてもよい。例えば、送風部121は、後述する駆動制御部124から出力された電圧や制御信号等に基づいて、ファンを回転させる。これにより、送風部121は、後方から外部の空気を取り込み、前方へ空気を排出する。
【0017】
また、加熱部122は、送風部121の上流側、内部、もしくは下流側に設けられ、送風部121により送られる空気を加熱する。すなわち、
図2の例では、加熱部122は、空気の流れにおいて、送風部121の下流側に設置されているが、これに限らず、送風部121の上流側、または、送風部121の内部(例えば、ファンが加熱可能に構成されるなど)に設置されてもよい。図示の例では、送風部121と加熱部122は、ドライヤーの構造に類似したものである。
【0018】
また、風向制御部123は、送風部121により送出され加熱部122により加熱された空気を、眼鏡レンズ10裏面方向に誘導する。
図2に示すように、送風部121の上流側とともに下流側は、開口されており、風向制御部123は、下流側の開口部に設置されている。例えば、
図2に示すように、風向制御部123は、開口部を開閉可能に回転できるようにヒンジで接続された蓋様の構造である。これにより、
図2の矢印で表す空気の流れのように、利用者は、送風部121から送出される空気を、前方よりも内側(鼻側)に風向きを曲げる調整を行うことができ、眼鏡レンズ10裏面方向に空気を誘導することができる。これに限らず、風向制御部123は、ファンの開口部で用いられるような公知の風向変更手段で構成することができる。
【0019】
駆動制御部124は、送風部121により送出される風量、もしくは、加熱部122により加熱される空気温度、または、その両方を制御する。例えば、駆動制御部124は、マイクロコンピュータ等であって、送風部121および/または加熱部122に対して、適切な電圧制御や電流制御や制御信号の送信等を行ってもよい。
【0020】
ここで、駆動制御部124は、気温に応じて、加熱部122による加熱を制御してもよい。例えば、駆動制御部124は、サーモスタット(バイメタル)等が備えられており、上流側から流れてくる空気(外気)の温度すなわち気温に応じて、加熱部122に流す電流を調整することによって、下流に流す空気を目的の温度に加熱されるように制御してもよい。反対に、上流側のみならず下流側にもサーモスタット(バイメタル)等が備えられており、駆動制御部124は、下流に流す空気が過加熱の場合に、加熱部122に流す電流を遮断する等して、送出する空気を適正範囲内に制御してもよい。ここで、
図3は、熱傷の原因となる温度と時間の関係を示すグラフ図である。
【0021】
図3に示すように、例えば、60℃では5秒で熱傷を引き起こすが、47℃では約1時間経過しないと熱傷にはならない。一方、眼鏡レンズが結露するのは約17℃以下のときである。したがって、駆動制御部124は、サーモスタット(バイメタル)等の任意の温度計測手段を用いて温度を計測し、気温が17℃以下のときに加熱部122が加熱するように制御し、送出される空気が60℃以上のときに加熱部122の加熱を停止するように制御することによって、結露を防止しながら熱傷を防ぐことができる。なお、上記の温度の下限値と上限値は一例であり、駆動制御部124は、任意の適正温度範囲で温度制御可能である。
【0022】
また、駆動制御部124は、過加熱のみならず、過電流を防止してもよい。例えば、駆動制御部124は、電流計を備えており、電流が閾値以上の過電流となった場合に、回路を開く、すなわち電流を遮断する制御を行ってもよい。これにより、漏電して利用者が感電することや、眼鏡レンズ結露防止装置12の水濡れ等による機器の故障を予防することができる。
【0023】
また、駆動制御部124は、利用者の呼吸に応じて、送風部121により送出される風量を制御してもよい。すなわち、マスクをしている際、マスクと顔の隙間からマスク上部に息漏れして、眼鏡レンズが曇る原因となることが多い。そこで、駆動制御部124は、利用者が吸気するときよりも呼気の際に、送風部121により送出される風量を増やす制御をして、結露を防止してもよい。駆動制御部124は、公知の手法で、利用者の呼吸タイミングを判断してよい。例えば、駆動制御部124は、吸気と吸気の際の体の上下動を感知して、呼吸タイミングを判定してもよい。あるいは、駆動制御部124は、呼気を測る風圧センサや簡易風量計などで、呼吸タイミングを判定してもよい。反対に、駆動制御部124は、一定のリズムで風量を制御して、利用者に当該リズムに合わせて呼吸させる構成としてもよい。
【0024】
ここで、眼鏡レンズ結露防止装置12(例えば駆動制御部124等)には、図示しない電源スイッチが備えられていてもよい。そして、電源オフが指示された場合、駆動制御部124は、一定時間(例:数秒から数分程度)または所定温度に低下するまで送風部121を駆動させてもよい。眼鏡レンズ結露防止装置12は稼働により加熱するので、電源オフからしばらく送風することで、筐体を冷やして熱傷を防ぐことができる。
【0025】
なお、駆動制御部124は、省電力のためタイマー機能を持ってもよく、例えば一定時間、あるいは、体動が感知できない場合(すなわち非装着時)に、眼鏡レンズ結露防止装置12が駆動すると自動的に、電源オフにする制御を行ってもよい。また、駆動制御部124は、スマートフォン等の外部機器と、図示しない無線通信部を介して接続可能に構成されてもよい。例えば、駆動制御部124は、スマートフォン等からの温度設定やタイマー設定などの指示を受けて、制御を行ってもよい。また、眼鏡の曇りやすさは温度のみならず、湿度も関係していることから、駆動制御部124は、湿度計等を備えており、上流側から流れてくる空気(外気)の湿度に応じて、下流に流す空気を目的の温度、湿度、あるいは風量になるように制御してもよい。
【0026】
また、電源部125は、少なくとも送風部121および加熱部122に電力を供給する。
図2の例では、電源部125は、駆動制御部124を介して送風部121および加熱部122に電力を供給している。電源部125は、電池や電源有線接続やソーラーパネルによる給電ないし充電の何れでもよい。なお、充電の場合は充電回路が追加されるが、駆動制御部124が充電回路を担ってもよい。したがって、電源部125は、非充電式の電池が内蔵されたものでもよいし、充電式の電池が内蔵されたものでもよい。また、有線を介して外部電源から電力の供給を受けるものでもよいし、無線給電方式のものでもよい。
【0027】
ここで、上述のように、取り付け部128は、眼鏡レンズ10に対して上下方向にスライド可能に位置調整できる構成であってもよい。
図4は、上下方向において、眼鏡レンズ10と同じ位置(略同一水平面)に、眼鏡レンズ結露防止装置12を位置づけた場合の空気の流れを示す図である。
【0028】
図4に示すように、眼鏡レンズ10と眼鏡レンズ結露防止装置12の開口部を略同一の水平面で設置した場合、実線矢印で示すように、開口部から利用者の左目のレンズに空気があたったのち、破線矢印で示すように、レンズ面で向きを変えて、右目に風があたってしまい、ドライアイの原因となり得る。ここで、
図5は、眼鏡レンズ10に対して、眼鏡レンズ結露防止装置12を上方向に位置調整した場合の空気の流れを示す図である。
【0029】
図5に示すように、取り付け部128は、テンプル101をクリップ機構等で固定するとともに、眼鏡レンズ結露防止装置12本体を上下方向にスライド可能に構成したので、送風が眼に直接的もしくは間接的に当たらないように取り付け部128を上下方向にずらした位置関係で固定できる。図示の例では、利用者の左こめかみ上部から、右ななめ下方向に、風向きを調整することができる構造となっている。すなわち、眼鏡レンズ結露防止装置12本体を上方向にスライドさせたとき、風向制御部123が本体12の軸方向(テンプル101軸方向)に対して回転することができるように、取り付け部128に本体12自身を回転させる構造を持たせてもよく、風向制御部123に本体12に対して回転させる構造を持たせてもよい。これにより、利用者の左こめかみ上部から、右ななめ下方向に、風向きを調整することができるので、実線矢印で示すように、開口部から利用者の左目のレンズに空気がぶつかったのち、破線矢印で示すように、レンズ面で向きを変えた空気は、右頬の方向に流れていくので、ドライアイを防止することができる。
【0030】
上記の実施形態では、片方のレンズ用の眼鏡レンズ結露防止装置12について説明を行ったが、左右のレンズ用の眼鏡レンズ結露防止装置12として構成してもよいものである。その際、単純に左右に眼鏡レンズ結露防止装置12を設置することに限らず、駆動制御部124や電源部125などの構成を左右で共通のものにするなど任意に構成してもよい。
【0031】
本実施形態によれば、空気を送出する送風部121と、送風部121の上流側、内部、もしくは下流側に設けられ、送風部121により送られる空気を加熱する加熱部122と、送風部121により送出される加熱された空気を、眼鏡レンズ裏面方向に誘導する風向制御部123と、を備える。これにより、眼鏡とは別構成でありながら、眼鏡レンズの結露を防止することができる眼鏡レンズ結露防止装置12を提供することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、少なくとも送風部121と加熱部122と風向制御部123を備えたユニットが、眼鏡本体2に対して着脱可能に固定できる取り付け部128を更に備える。これにより、気温やマスク装着の有無に応じた必要性に応じて、眼鏡レンズ結露防止装置12を円滑に着脱することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、取り付け部128は、眼鏡レンズ10に対して上下方向に位置調整可能であるので、気流を斜め上または斜め下方向に逃がして、ドライアイを防ぐことができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、送風部121により送出される風量、もしくは、加熱部122により加熱される空気温度、または、その両方を制御する駆動制御部124を更に備える。これにより、風量や空気温度を適切に制御することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態によれば、駆動制御部124は、気温に応じて、加熱部122による加熱を制御するので、気温が高い場合は結露の可能性が低いので加熱を抑制して、省エネルギー化を図ることができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、駆動制御部124は、過加熱または過電流を防止するので、熱傷や感電などを予防することができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、駆動制御部124は、利用者の呼吸に応じて、送風部121により送出される風量を制御するので、結露の可能性が高まる呼気中に風量を増大させ、結露の可能性が低い吸気中に風量を制限するなどして、省エネルギー化を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、駆動制御部124は、電源オフが指示された場合、一定時間または所定温度に低下するまで送風部121を駆動させるので、電源オン時の加熱を冷ますことによって熱傷を防ぐことができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、少なくとも送風部121および加熱部122に電力を供給する電源部125を更に備えたので、適切な電流や電圧を与えることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 眼鏡
2 眼鏡本体
10 眼鏡レンズ
11 フレーム
12 眼鏡レンズ結露防止装置
101 テンプル
102 リム
103 ブリッジ
104 鼻パッド
121 送風部
122 加熱部
123 風向制御部
124 駆動制御部
125 電源
128 取り付け部