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特開2023-141167金属化フィルムおよびこれを用いたフィルムコンデンサ
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  • 特開-金属化フィルムおよびこれを用いたフィルムコンデンサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141167
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】金属化フィルムおよびこれを用いたフィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/32 20060101AFI20230928BHJP
   H01G 4/14 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01G4/32 511K
H01G4/32 511L
H01G4/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047343
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】中尾 吉宏
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AA07
5E082AB03
5E082AB04
5E082BC09
5E082EE07
5E082EE37
5E082FG06
5E082FG34
5E082FG58
5E082GG04
5E082LL05
(57)【要約】
【課題】 耐電圧性を低下させずに自己回復性を向上させた金属化フィルムおよびフィルムコンデンサを提供する。
【解決手段】 第1面とその反対側の第2面とを有する膜厚1~4μmの誘電体フィルムと、前記第1面に位置する金属膜とを含む金属化フィルムであって、前記第1面の算術平均高さSaが(1nm≦)Sa≦10nmであり、前記第2面の表面テクスチャー比Strが0.01≦Str≦0.25であることを特徴とする金属化フィルム、およびこの金属化フィルムが積層または巻回されてなる本体部と、該本体部に設けられた外部電極部と、を備えるフィルムコンデンサである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面とその反対側の第2面とを有する膜厚1~4μmの誘電体フィルムと、前記第1面に位置する金属膜とを含む金属化フィルムであって、
前記第1面の算術平均高さSaが1nm≦Sa≦10nmであり、
前記第2面の表面テクスチャー比Strが0.01≦Str≦0.25である、金属化フィルム。
【請求項2】
前記金属膜は、10nm以上30nm以下の膜厚を有する、請求項1記載の金属化フィルム。
【請求項3】
前記誘電体フィルムは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、およびシクロオレフィンポリマーから選ばれた1種から成る、請求項1または2記載の金属化フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の金属化フィルムが積層または巻回されてなる本体部と、
該本体部に設けられた外部電極部と、を備えるフィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属化フィルムおよびこれを用いたフィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムコンデンサの耐電圧性と自己回復性の向上を図るものとして、たとえば、金属化フィルムとして二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムの表面に金属膜を蒸着して成るものを用いたフィルムコンデンサが提案されている。このOPPフィルムは、両面に突起を有し、両面が異なる平均粗さになるように制御し、耐電圧性の観点から一方の表面をより平滑に、自己回復性の観点から他方の表面をより粗くする方法が提案されている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6120180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1に記載される従来技術では、OPPフィルムの両面の突起の高さ、個数を制御して表面の平均粗さを異ならせるだけでは、耐電圧性と自己回復性の両方を十分に良好な状態にはできないという問題がある。
【0005】
したがって、従来から耐電圧性および自己回復性の両方が向上された金属化フィルムおよびフィルムコンデンサが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の金属化フィルムは、第1面とその反対側の第2面とを有する膜厚1~4μmの誘電体フィルムと、前記第1面に位置する金属膜とを含む金属化フィルムであって、前記第1面の算術平均高さSaが1nm≦Sa≦10nmであり、前記第2面の表面テクスチャー比Strが0.01≦Str≦0.25であることを特徴とする金属化フィルムである。
【0007】
さらに本開示のフィルムコンデンサは、上記金属化フィルムが積層または巻回されてなる本体部と、該本体部に設けられた外部電極部と、を備えるフィルムコンデンサである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、耐電圧性を低下させずに自己回復性を向上させた金属化フィルムおよびフィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る金属フィルムを模式的に示す断面図である。
図2】本開示において用いられる塗工装置の例であり、塗工ヘッドの部分を含む概念的断面図である。
図3】本開示における一実施態様の誘電体フィルムに形成されたリビング(畝)の斜視図である。
図4】本開示の一実施形態に係るフィルムコンデンサを示す、一部が切り欠かれた斜視図である。
図5】本開示の一実施形態に係るフィルムコンデンサを示す展開斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示のフィルムコンデンサの基礎となる構成のフィルムコンデンサは、ポリプロピレン樹脂等から成る誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る金属化フィルムを、巻回または所定方向に複数枚積層することによって形成される。
【0011】
本開示の金属化フィルムについて、図面を参照しつつ説明するが、これに限定されない。
【0012】
図1は、本開示の一実施形態に係る金属フィルムを模式的に示す断面図である。本実施形態の金属化フィルム10は、誘電体フィルム1および金属膜2を有する。誘電体フィルム1は、第1面1aおよび第1面1aとは反対側の第2面1bを有している。
【0013】
誘電体フィルム1は、絶縁性の樹脂から成る。誘電体フィルム1に用いられる樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルイミド(PEI)、及びシクロオレフィンポリマー等から選ばれた1種を用いてもよい。
【0014】
誘電体フィルム1の膜厚は、1μm以上4μm以下である。膜厚が1μm未満であれば、耐電圧性を低下させずに自己回復性を向上させることが困難であり、膜厚が4μmを超えると、フィルムコンデンサの静電容量を高くするために本体部が大型になるという問題がある。誘電体フィルム1の第1面1aは、塗工面かつ蒸着面であり、金属膜が蒸着して電極面となる。蒸着面は平滑であることが重要である。第1面1aの算術平均高さSaが1nm≦Sa≦10nmである。第1面1aの算術平均高さSaが1nm未満であると、シワが発生し耐電圧性が低下する。逆に第1面1aの算術平均高さSaが10nmを超えると、電極間距離の局所低下が起こり、耐電圧性が低下する。よって、誘電体フィルム1の第1面1aの算術平均高さSaは1nm以上10nm以下が好ましい。
【0015】
また、誘電体フィルム1の第2面1bは、非蒸着面である。第2面1bの表面テクスチャー比Strは0.01≦Str≦0.25である。第2面1bの表面テクスチャー比Strが0.01未満であると、シワが発生し耐電圧性が低下する。逆に第2面1bの表面テクスチャー比Strが0.25を超えると、金属化フィルムを積層した際の層間空隙が不足し自己回復性が低下する。よって第2面1bの表面テクスチャー比Strは、0.01≦Str≦0.25が好ましい。
【0016】
表面テクスチャー比「Str」は、3次元表面を説明するためだけに用いられる3次元空間パラメータである。Strパラメータの値は0~1の間の範囲であり、単位はない。0又は0に近いStr値は、非常に異方性の表面を表し、非常に規則的なパターンを反映しており、逆に1又は1に近いStr値は、等方性の表面を表し、非常にランダムなパターンを反映している。方向の測定値に関係なく同一の特性を表す場合には、表面は等方性である。ランダムな表面テクスチャー又はパターンに関しては、いずれのテクスチャー又はパターンも目立たない。これとは逆に、異方性の表面は、規則的な表面パターンとして説明することができるパターン又は配向表面を有する。本実施形態においては、例えば塗工機を使用したフィルムの製法により、第2面1bに規則的なリビング(畝)を形成し、規則的な表面パターンを形成することができる。
【0017】
誘電体フィルム1は、例えば、以下のようにして作製することができる。
まず、上記絶縁性の樹脂を溶媒に溶解して樹脂溶液を準備する。溶媒としては、例えば、メタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサン、またはこれらから選択された2種以上の混合物を用いることができる。
【0018】
また、例えばPET製の表面が平滑な基材を準備する。従来は、基材の一方主面(第3面ともいう)にアルミナ粒子等を用いたブラスト処理を施し、第3面を粗化して、塗工して剥がしたフィルムの表面を第3面と同様な粗化面を得るが、本実施形態においては、従来技術とは異なる、例えば第1面1aの算術平均高さSaと同程度に平滑な基材に、樹脂溶液をリビング(畝)が形成され得る条件で塗工する方法で形成することができる。
【0019】
本実施形態においては、塗工機として、たとえば、密閉塗工方式であり、塗工安定性に優れ、高精度塗工を実現可能にするダイコータを用いる。
【0020】
図2は、本開示において用いられる塗工装置の例であり、塗工ヘッドの部分を含む概念的断面図である。本開示においては、好ましくは、テンション・ウェブ・ダイコーターを用い、製膜時に塗工ヘッド7の下流側と誘電体フィルム1の基材とのギャップを開けることで、リビング(畝)形成させる。図2に示すように、上に位置するロールR1を右側にシフトさせている。これにより塗工ヘッド7の下流側と基材との間のギャップを開くことになる。このような方法で規則的なリビングを形成することができるがこれに限定されない。塗工ヘッド7の下流側と基材とのギャップや塗工速度を制御することにより、規則的な畝状の凹凸パターンが形成できるので、表面テクスチャー比Strを0.01≦Str≦0.25に制御することができる。これにより、非蒸着面に畝状の凹凸が形成され、金属化フィルムを積層した際の層間空隙ができるので、耐電圧特性を著しく低下させることなく、自己回復性を確保することができる。
【0021】
図3は、本開示における一実施態様の誘電体フィルムに形成されたリビング(畝)の斜視図である。矢印方向に畝が形成されている。図1および図3において、畝の山1baと畝の谷1bbとが観察できる。
【0022】
基材の第3面に成形された樹脂溶液を乾燥して溶媒を揮発させることによって、基材の第3面上に誘電体フィルム1を形成して、基材から剥離するので、第1面1aは、基材の表面状態に近い表面となる。したがって、第1面1aの算術平均高さSaが1nm≦Sa≦10nmであるが、基材の表面を調整して、第1面1aの算術平均高さSaを制御することができる。
【0023】
また、第1面1aの表面テクスチャー比Strも基材表面の表面テクスチャー比Strに近い値となる。
【0024】
従来は、基材に表面粗化を行った場合、局所的に誘電体フィルムが薄くなる部分が生じ、誘電体フィルムの耐電圧特性が低下するという問題があった。また、基材の表面粗化を行うという工程が必要であった上に、非基材面を平滑にするために、固形分濃度を下げ、スラリーの粘度を下げる必要もあったため、コストが高くなるという問題もあった。本発明においては、表面粗化を行わない平滑な基材を使用して反対側の非基材面をある程度粗にでき、かつ、局所的に誘電体フィルムが薄くなる部分が生じにくいという利点もある。
【0025】
誘電体フィルム1は、基材から剥離し、樹脂または金属から成る巻芯に巻回して回収する。回収された誘電体フィルム1の第1面1aに金属膜2を蒸着することによって、金属化フィルム10を製造することができる。
【0026】
金属膜2は、金属材料から成り、誘電体フィルム1の第1面1aに掲載されている。金属膜2に用いられる金属材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウムを主成分とする合金等が挙げられる。金属膜の膜厚は、例えば、10nm以上30nm以下であってもよい。
【0027】
金属化フィルム10は、誘電体フィルム1の幅方向(図1における紙面に垂直な方向)の一端側に、金属膜が蒸着されず、誘電体フィルム1の第1面1aが露出する部分である金属膜非形成部10aを有していてもよい。金属膜非形成部10aは、誘電体フィルムの長さ方向(図1における左右方向)に連続して延びていてもよい。
【0028】
金属化フィルム10の製造方法では、基材の第3面上に形成された誘電体フィルムを、基材と一緒に巻芯に巻回して回収してもよく、上記のように、基材から剥離し、基材とは別個に巻芯に巻回して回収してもよい。後者の場合、誘電体フィルム1の第2面1bに、基材の他方主面の圧痕が生じることを抑制できる。
【0029】
金属化フィルム10では、誘電体フィルム1の、金属膜2が蒸着されない第2面1bが、表面テクスチャー比Strが0.01≦Str≦0.25を満たす規則正しい微細なリビングを有している。これにより層間空隙の確保ができ、自己回復性の向上が可能となる。また、金属化フィルム10を巻回または積層してフィルムコンデンサを作製する際に、層間空隙の確保ができるため、金属化フィルム10同士の貼り付きを抑制し、金属化フィルム10が破断することを低減することができる。ひいては、金属化フィルム10を備えるフィルムコンデンサの信頼性を向上させることができる。
【0030】
また、金属化フィルム10では、誘電体フィルム1の、金属膜2が蒸着される第1面1aが、1nm≦Sa≦10nmを満たし、第2面1bよりも平滑にされている。すなわち、誘電体フィルム1では、膜厚が過度に低下することがなく電極間距離が確保されるので、高電圧を印加した場合であっても絶縁破壊が起こりにくく、耐電圧が向上できる。
【0031】
次に、本開示のフィルムコンデンサについて、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図4は、本開示の一実施形態に係るフィルムコンデンサを示す、一部が切り欠かれた斜視図であり、図5は、本開示の一実施形態に係るフィルムコンデンサを示す展開斜視図である。
【0033】
本実施形態のフィルムコンデンサ20は、金属化フィルム10を複数枚積層して成る本体部3と、本体部3に設けられた外部電極4とを備えている。フィルムコンデンサ20は、外部電極4と外部装置(図示せず)とを電気的に接続するリード線5を有していてもよい。
【0034】
フィルムコンデンサ20は、本体部3と、外部電極4と、リード線5の一部とを覆う外装部材6を有していてもよい。これにより、本体部3と、外部電極4と、リード線5の糸部とを、外部環境から電気的に絶縁し、外部環境から保護することが可能になる。
【0035】
フィルムコンデンサ20は、例えば図4に示すように、1つの金属化フィルム10の金属膜非形成部10aと、該1つの金属化フィルム10に隣り合う金属化フィルム10の金属膜非形成部10aとが、誘電体フィルム1の幅方向(図4における左右方向)における異なる端部に位置するように構成されていてもよい。
【0036】
フィルムコンデンサ20は、金属化フィルム10を備えることにより、フィルムコンデンサを製造する際の歩留まり、フィルムコンデンサの耐電圧性をさらに向上させることができる。また、フィルムコンデンサ20によれば、隣り合う金属化フィルムが密着することを抑制し、絶縁欠陥部で短絡が生じた際のガス抜け性を確保することができるため、自己回復性をさらに向上させることができる。
【0037】
フィルムコンデンサ20は、例えば図5に示すように巻回型のフィルムコンデンサであってもよい。フィルムコンデンサ20は、巻回型のフィルムコンデンサである場合でも、金属化フィルム10を備えることによって、絶縁欠陥部で短絡が生じた際のガス抜け性を確保することができるため、自己回復性を向上させることができる。
【0038】
(実施例)
以下、実施例によって本開示をさらに説明するが、これに限定されない。
【0039】
(実施例1~6)
有機樹脂としてポリアリレート樹脂を用い、溶媒としてトルエンを用いて樹脂溶液を得た。樹脂溶液のスラリー粘度は312cP(粘度)であった。この樹脂溶液を表1に記載した各種の平滑な基材の表面に、テンション・ウェブ・ダイコーターを用い、塗工ヘッドの下流側と基材とのギャップを開けて塗布し、リビング(畝)を形成した。ギャップの開け具合によりリビング(畝)の幅、高さなどを調整した。その後、60℃で1分乾燥して溶媒を除去し、誘電体フィルム1を得た。得られた誘電体フィルム1を基材から剥離し、巻芯に基材とは別個に巻回して回収した。次に、回収された誘電体フィルム1の第1面1aに、アルミニウムを真空蒸着法により蒸着し、金属化フィルム10を得た。基材の種類、塗工条件を変更することによって、誘電体フィルム1の表面性状が互いに異なる実施例1~6の金属化フィルムを得た。
【0040】
ギャップの開け具合については、実施例1,3,5の場合には同程度に広く、実施例2、4、6の場合には実施例1,3,5より同程度に狭くした。
【0041】
(比較例1~4)
実施例1において、塗工ヘッドの下流側と基材とのギャップを開けずに塗布し、その他は実施例1と同様にして比較例1の金属化フィルムを得た。
【0042】
実施例3において、塗工ヘッドの下流側と基材とのギャップを開けずに塗布し、その他は実施例3と同様にして比較例2の金属化フィルムを得た。
【0043】
実施例5において、塗工ヘッドの下流側と基材とのギャップを開けずに塗布し、その他は実施例5と同様にして比較例3の金属化フィルムを得た。
【0044】
また、実施例2において、基材を二軸延伸ポリプロピレンに変更した以外は実施例2と同様にして比較例4の金属化フィルムを得た。
【0045】
実施例1~6、比較例1~4の膜厚はすべて2.4~2.6μmの範囲内であった。
【0046】
実施例1~6および比較例1~4のそれぞれの金属化フィルムについて、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、視野100μm×100μmの表面を観察し、第1面1aの算術平均高さSaを測定した。また、レーザー顕微鏡を用いて、視野5.7mm×4.3mmの表面を観察し、第2面1bの表面テクスチャー比Strを測定した。
【0047】
また、これらの金属化フィルムについて、巻回により素子作製後、Znメタリコンにより外部電極を形成した。この巻回素子を用いて、125℃の環境下で24時間にわたり210V/μmの電界を印加するバーンイン試験を行い、絶縁抵抗不良を起こした金属化フィルムの割合(IR不良率)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1において、基材、塗工ヘッドの位置は以下の通りである。
(基材) A4100:超平滑ポリエチレンテレフタレート、Sa 1.2nm
TZ204:平滑ポリエチレンテレフタレート、Sa 2.2nm
T19C2:ポリエチレンテレフタレート、Sa 9.6nm
OPP:二軸延伸ポリプロピレン、Sa 12.0nm
(塗工ヘッドの位置)
A:畝ができる程度に塗工ヘッドの下流側と基材とのギャップを広く開けた。
B:塗工ヘッドの下流側と基材とのギャップはAとCの中間。
C:塗工ヘッドの下流側と基材とのギャップを開けなかった
【0050】
実施例1~6については、第1面1aの算術平均高さSaが1nm≦Sa≦10nmであり、第2面1bの表面テクスチャー比Strが0.01≦Str≦0.25であり、IR不良率も0%であることが確認できた。SaとStrが同時にこの範囲内であると絶縁抵抗不良を起こさない、すなわち耐電圧性と自己回復性が良好であり、耐電圧性を低下させずに自己回復性を向上させた金属化フィルムであることを確認できた。
【0051】
比較例1~3は、算術平均高さSaが1nmと10nmの間にあるが、表面テクスチャー比Strが0.25を大きく上回り、IR不良率が10~20%であった。畝がなく、層間空隙の不足による自己回復性の低下が生じたものと思われる。
【0052】
比較例4は、表面テクスチャー比Strが0.01と0.25の間にあるが、算術平均高さSaが10nmを超えており、電極間距離の局所低下が起こり耐電圧性が低下したものと思われる。
【0053】
したがって、第1面1aの算術平均高さSaが1nm≦Sa≦10nmであり、第2面1bの表面テクスチャー比Strが0.01≦Str≦0.25である金属化フィルムが積層または巻回されてなる本体部と、該本体部に設けられた外部電極と、を備えるフィルムコンデンサは、耐電圧性と自己回復性が良好であり、耐電圧性を低下させずに自己回復性を向上させたものであることが確認できた。
【符号の説明】
【0054】
1 誘電体フィルム
1a 第1面
1b 第2面
1ba 畝の山
1bb 畝の谷
2 金属膜
2a 第1面
3 本体部
4 外部電極
5 リード線
6 外装部材
10 金属化フィルム
10a 金属膜非形成部
20 フィルムコンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5