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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141172
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】自動植毛装置
(51)【国際特許分類】
   A41G 3/00 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
A41G3/00 N
A41G3/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047355
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【弁理士】
【氏名又は名称】三品 明生
(74)【代理人】
【識別番号】100217364
【弁理士】
【氏名又は名称】田端 豊
(72)【発明者】
【氏名】井上 健太
(72)【発明者】
【氏名】日月 快
(72)【発明者】
【氏名】小田 晶美
(57)【要約】
【課題】ストッカの取出口から突出する不要な毛髪材を回収することが可能な自動植毛装置を提供する。
【解決手段】自動植毛装置100は、毛髪材が配置されるストッカと、ストッカの取出口から毛髪材を捕捉して引き出す引出鉤針と、引出鉤針により補足された毛髪材以外の毛髪材でかつ取出口から引出鉤針側に一部が突出した毛髪材、又は、引出鉤針により補足された毛髪材でかつ植毛対象物に植毛されずに取出口から引出鉤針側に一部が突出した毛髪材である突出毛髪材100dを挟持して回収する歯部111a及び111bと、歯部111a及び111bの間に突出毛髪材100dをガイドする形状を有するガイド部材113a及び113bを含む。
【選択図】図23A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の毛髪材が配置されるストッカであって、前記複数の毛髪材のうちの一部が取り出される取出口が形成されたストッカと、
前記取出口から前記複数の毛髪材のうちの一部の毛髪材を捕捉して引き出す引出鉤針と、
前記引出鉤針により補足された毛髪材以外の毛髪材でかつ前記取出口から前記引出鉤針側に一部が突出した毛髪材と、前記引出鉤針により補足された毛髪材でかつ植毛対象物に植毛されずに前記取出口から前記引出鉤針側に一部が突出した状態で残存した毛髪材と、の少なくとも一方の毛髪材である突出毛髪材を挟持して回収する2つの歯部を有する、毛髪材回収部と、を備え、
前記毛髪材回収部は、前記2つの歯部の間に前記突出毛髪材をガイドする形状を有するガイド部を含む、自動植毛装置。
【請求項2】
前記2つの歯部は、前記引出鉤針が前記複数の毛髪材のうちの一部の毛髪材を引き出す方向に対して交差する方向で、かつ、前記突出毛髪材に向かって進行中又は進行した後に、前記突出毛髪材を挟持し、
前記ガイド部は、前記引き出す方向に見て、前記進行方向に向かって間隔が次第に大きくなる形状を有する一対の部分を含み、
前記一対の部分の隙間は、前記2つの歯部の隙間に接続している、請求項1に記載の自動植毛装置。
【請求項3】
前記ガイド部の前記一対の部分は、前記引き出す方向に見て、互いに対向する一対の傾斜部を有する、請求項2に記載の自動植毛装置。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記2つの歯部のうちの少なくとも前記突出毛髪材を挟持する位置に配置された弾性部材を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の自動植毛装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記2つの歯部の各々の外周を覆う2つの筒状部分を有する、請求項4に記載の自動植毛装置。
【請求項6】
前記2つの筒状部分は、前記2つの歯部が前記突出毛髪材を挟持する位置において、前記2つの歯部から離間している、請求項5に記載の自動植毛装置。
【請求項7】
前記2つの歯部の少なくとも1つの歯部は、当該歯部が延びる方向に直交する断面であって、矩形状の断面を有し、
前記2つの筒状部分のうちの少なくとも前記矩形状の断面を有する歯部の外周を覆う筒状部分は、当該歯部が延びる方向に直交する断面であって、円形状の断面を有する、請求項6に記載の自動植毛装置。
【請求項8】
前記毛髪材回収部は、
前記2つの歯部のうちの一方が形成された第1ベース部材と、
前記2つの歯部のうちの他方が形成された第2ベース部材であって、前記第1ベース部材と前記2つの歯部が並ぶ方向と直交する方向に重ねて配置された第2ベース部材と、
前記2つの歯部が近付くように、前記第1ベース部材と前記第2ベース部材とを相対移動させるベース部材機構部と、をさらに含む、請求項4~7のいずれか1項に記載の自動植毛装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動植毛装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植毛対象物に毛髪材を結び付けて植毛する自動植毛装置が知られている。このような自動植毛装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の自動植毛装置は、複数の毛髪材からなる毛髪材束が収容されるとともに底部に取出口を有するストッカと、第1鉤針と、第2鉤針とを備える。第2鉤針は、ストッカの取出口から毛髪材を引き出す。そして、第1鉤針は、引き出された毛髪材を捕捉し、その後、毛髪材を植毛ネットに結び付けて植毛する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6533350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の自動植毛装置では、取出口から第2鉤針により引き出された毛髪材との摩擦によって、当該毛髪材以外のストッカ内の毛髪材の一部が取出口から外部に突出してしまう場合がある。また、第2鉤針により引き出された毛髪材に対する第1鉤針による捕捉が失敗する場合がある。補足が失敗された毛髪材は、植毛されずに取出口から一部が外部に突出した状態となる。これらのような取出口から一部が突出した毛髪材は、他の毛髪材、又は自動植毛装置内の機器と干渉し、植毛の不良の原因となる。
【0006】
そこで、本願発明者は、取出口から一部が突出した不要な毛髪材(以下、「突出毛髪材」という)を、2つの歯部により挟持して回収することを検討したが、取出口から突出する不要な毛髪材の形状及び配置位置が一様ではないため、突出毛髪材を2つの歯部により挟持することが難しく、突出毛髪材を回収することが困難である。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ストッカの取出口から突出する不要な毛髪材を回収することが可能な自動植毛装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、以下に開示する自動植毛装置は、複数の毛髪材が配置されるストッカであって、前記複数の毛髪材のうちの一部が取り出される取出口が形成されたストッカと、前記取出口から前記複数の毛髪材のうちの一部の毛髪材を捕捉して引き出す引出鉤針と、前記引出鉤針により補足された毛髪材以外の毛髪材でかつ前記取出口から前記引出鉤針側に一部が突出した毛髪材と、前記引出鉤針により補足された毛髪材でかつ植毛対象物に植毛されずに前記取出口から前記引出鉤針側に一部が突出した状態で残存した毛髪材と、の少なくとも一方の毛髪材である突出毛髪材を挟持して回収する2つの歯部を有する、毛髪材回収部と、を備え、前記毛髪材回収部は、前記2つの歯部の間に前記突出毛髪材をガイドする形状を有するガイド部を含む。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成によれば、突出毛髪材をガイド部により2つの歯部の間にガイドすることができるので、2つの歯部により突出毛髪材を容易に挟持させることができる。この結果、ストッカの取出口から突出する不要な突出毛髪材を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、自動植毛装置120の構造を奥行方向に見た模式図である。
図2図2は、自動植毛装置120の構造を後方から見た模式図である。
図3図3は、自動植毛装置120の第1動作から第4動作を示す図であって、自動植毛装置120の構造を奥行方向に見た模式図である。
図4図4は、図3の一部を拡大した拡大図である。
図5図5は、自動植毛装置120の第1動作から第4動作を示す図であって、自動植毛装置120の構造を後方から見た模式図である。
図6図6は、自動植毛装置120の第5動作を示す図である。
図7図7は、自動植毛装置120の第6動作及び第7動作を示す図である。
図8図8は、図7の一部を拡大した拡大図である。
図9図9は、自動植毛装置120の第8動作及び第9動作を示す図である。
図10図10は、図9の一部を拡大した拡大図である。
図11図11は、自動植毛装置120の第10動作を示す図である。
図12図12は、図11の一部を拡大した拡大図である。
図13図13は、自動植毛装置120の第11動作を示す図である。
図14図14は、自動植毛装置120の第12動作及び第13動作を示す図である。
図15図15は、図14の一部を拡大した拡大図である。
図16図16は、自動植毛装置120の第14動作を示す図である。
図17図17は、図16の一部を拡大した拡大図である。
図18図18は、自動植毛装置120の第15動作を示す図である。
図19図19は、図18の一部を拡大した拡大図である。
図20図20は、自動植毛装置120の第16動作から第18動作を示す図である。
図21A図21Aは、引出鉤針30側から見た結び目100cを示す図である。
図21B図21Bは、植毛鉤針20側から見た結び目100cを示す図である。
図22A図22Aは、第1実施形態による自動植毛装置120の毛髪材回収部150の構成を示す図である。
図22B図22Bは、突出毛髪材100dが捕捉される状態を示す模式図である。
図23A図23Aは、毛髪材100aを引き出す方向に捕捉機構部110の構成を見た断面図である。
図23B図23Bは、後方に向かって捕捉機構部110の構成を見た断面図である。
図24A図24Aは、歯部111a及び111bにより毛髪材100aが挟持された状態を引き出す方向に見た図である。
図24B図24Bは、歯部111a及び111bにより毛髪材100aが挟持された状態を後方に向かって見た図である。
図25図25は、ガイド部材113a及び113bにより歯部111a及び111bの間に突出毛髪材100dがガイドされる状態を示す模式図である。
図26図26は、制御装置95による捕捉機構部110及び吸引部140の制御処理を示すフロー図である。
図27図27は、第2実施形態による自動植毛装置300の構成を説明するための図である。
図28図28は、第1及び第2実施形態の第1変形例による捕捉機構部410の構成を示す図である。
図29図29は、第1及び第2実施形態の第2変形例による捕捉機構部510の構成を示す図である。
図30図30は、第1及び第2実施形態の第3変形例による捕捉機構部610の構成を示す図である。
図31図31は、第1及び第2実施形態の第4変形例による捕捉機構部710の構成を示す図である。
図32図32は、第1及び第2実施形態の第5変形例による自動植毛装置800の構成を示す図である。
図33図33は、第1及び第2実施形態の第6変形例による捕捉機構部910の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。また、以下の説明において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、実施形態および変形例に記載された各構成は、適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。また、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。
【0012】
<<自動植毛装置の構成例及び動作例>>
最初に、本発明の実施形態に係る自動植毛装置の基本的な構成及び動作について図面を参照して説明する。なお、ここでは、本発明の要部を説明する前提として、自動植毛装置の基本的な構成及び動作のそれぞれの一例を説明するに過ぎない。本発明の要部の構成及び動作と矛盾を生じない限りにおいて、ここで説明する自動植毛装置の構成及び動作とは異なる構成及び動作を採用することは当然に可能である。
【0013】
図1は、自動植毛装置の構造及び初期位置を示した側面図である。図2は、図1の状態の自動植毛装置を後方から前方に向かってみた場合の正面図である。図1に示すように、自動植毛装置120は、エキセン10、植毛鉤針20、引出鉤針30、ストッカ40、糸位置出しバー50、糸落としバー60、糸引込バー70、反転ローラー80、図11に図示した磁石90、図示のされていない駆動機構、制御装置などを備え、当該制御装置による前記駆動機構の制御に伴いエキセン10と植毛鉤針20と引出鉤針30と糸落としバー60並びに糸引込バー70のそれぞれが図2から図11までに示した第1動作から第18動作までを行い、毛髪材100aをストッカ40から1本ずつ捕捉して植毛ネット200の横糸202に結び付けて植毛する。なお、図1ないし図21に示す側面図及び正面図では、図中の左右方向が水平方向、上下方向が鉛直方向である。
【0014】
毛髪材100aとは、人工毛(ファイバー、合成繊維)のほか、人毛(ヒトから採取した毛)、動物毛(ヒト以外の動物から採取した毛)、またはこれらの混合物などであり、自動植毛装置120によって植毛可能な毛または毛様の一切の材料が含まれる。植毛ネット200は、複数本の縦糸201と複数本の横糸202とからなる網目状に形成されており、縦糸201及び横糸202のそれぞれは、複数本の原糸を撚りあわせた一本の糸であってもよいし、一本の原糸であってもよい。
【0015】
最初に、自動植毛装置120の構成及び自動植毛装置120が動作を行う際の初期位置について説明する。図1に示すように、予め切り揃えられた複数本の毛髪材100aからなる毛髪材束100bが、エキセン10よりも上方に配置されたストッカ40内に配置される。ストッカ40における取出口42の下方には引出鉤針30が配置されており、植毛鉤針20と引出鉤針30の間にエキセン10が配置されている。以下、水平面内の方向であって、エキセン10からみて引出鉤針30がある方向を後方、その反対方向を前方といい、これらを合わせて前後方向という。また、水平面内において前後方向と垂直な方向を奥行方向といい、後方を見たときに左側となる方向を奥側(図1における紙面裏側)、右側となる方向を手前側(図1における紙面表側)という。
【0016】
植毛ネット200は、エキセン10のネット掛部11に対して上方から覆い被さるようにセットされ、引出鉤針30の下方のある反転ローラー80にも接触して位置が規制されている。植毛鉤針20は、その先端が後方を向いており、当該先端がエキセン10の回転軸と同程度の高さに位置している。引出鉤針30は、その先端が上方を向いており、当該先端がエキセン10の中心軸よりも下方に位置している。糸位置出しバー50は、ストッカ40の底部41における前後方向の中央部に設けられた取出口42よりも下方かつ前方に位置している。糸落としバー60及び糸引込バー70は、糸位置出しバー50の下方かつエキセン10の上方であって、糸位置出しバー50よりも前方に位置している。
【0017】
ストッカ40は、平面視が矩形である平板状の底部41と、底部41の前後方向の二辺のそれぞれに沿って設けられている一対の対向した側板43を有している。底部41と側板43は垂直であり、前後方向の断面がコの字型になっている。毛髪材100aは、例えば完成するウィッグの毛の長さの約2倍の長さに切り揃えられ、奥行方向に交差する(例えば、毛髪材束100bを構成する毛髪材100aの大半が概ね奥行方向と直交する)ようにストッカ40の底部41上に配置される。なお、毛髪材100aの長さを、ストッカ40における底部41の前後方向の長さより長くして、一部がストッカ40から外側に突出するようにしてもよい。ただし、毛髪材100aのストッカ40から突出した部分が底部41より下方に垂れ下がらない程度であれば、引出鉤針30がストッカ40から毛髪材100aを捕捉して下方に引き出す際に、毛髪材100aのストッカ40から突出した部分が底部41の前後方向の端部で擦れて傷むことを防止することができるし、稼働する他の機構への巻き込みなども防止することができるため、好ましい。
【0018】
ストッカ40は、図2に示すように1つだけ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。また、図2では、1つのストッカ40から複数の引出鉤針30が毛髪材100aを引き出す場合を例示しているが、複数のストッカのそれぞれから当該ストッカに対応する1つの引出鉤針30が毛髪材100aを引き出すように構成してもよい。また、ストッカ40には、例えば異なる色の毛髪材100a、色が同じであって太さの異なる毛髪材100a、同じ色や同じ太さであっても硬さ(弾力)の異なる毛髪材100aなど、種類の異なる毛髪材100aが混合されて供給され、完成するウィッグにおける毛髪材100aの色や太さ或いは髪質が予め調整される。なお、ストッカ40に対して、単一の種類の毛髪材100aを供給してもよい。
【0019】
エキセン10は、植毛ネット200の植毛領域を確保する部材であり、奥行方向に延びる中心線を有する円柱状のネット掛部11と、ネット掛部11の側周面から内部に窪むように設けられて当該側周面に重なる開口を有する逃げ部12と、ネット掛部11の両端部に設けられて奥行方向に延びる中心線を有する軸部13とを備える。軸部13の中心線は、ネット掛部11の中心線とは一致しておらず、ネット掛部11の半径方向の外側に偏位しており、ネット掛部11の側周面上であって逃げ部12が設けられている部分(さらには当該部分の周方向の中央部分)に位置する。
【0020】
軸部13は、装置本体に設けられた図示されていない軸受部により、中心線が回転軸となるように回転可能に支持され、軸部13が自転することで、軸部13に連結されたネット掛部11が軸部13の中心線を軸として公転する。初期位置では、逃げ部12の開口は、図1に示すように前方を向いている。なお、軸部13の中心線は、逃げ部12の開口の周方向の中心に位置する一本の横糸202-1と重なっていてもよい。
【0021】
逃げ部12の開口幅(周方向の長さ)は、例えば、植毛ネット200がネット掛部11の外面に巻き掛けられて一本の横糸202-1が逃げ部12の開口の周方向の中心に位置した場合において、当該中心に位置する一本の横糸202-1の周方向に隣接する2本の横糸202-2及び202-3のうちの一本の横糸202-2が逃げ部12の開口の下方側の端部付近に位置し、別の一本の横糸202-3が逃げ部12の開口の上方側の端部付近に位置するように、植毛ネット200の網目を構成する横糸202の間隔に基づき決定してもよい。なお、図1では、逃げ部12の開口幅が横糸202-2と横糸202-3の幅よりも狭い場合を図示しているが、逃げ部12の開口幅が横糸202-2と横糸202-3の幅以上であってもよい。
【0022】
植毛鉤針20は、植毛ネット200に毛髪材100aを植毛する部材であり、先端のフック21と、フック21の針口を開閉するラッチ22とを備える。ラッチ22は、一端が植毛鉤針20に図示のされていない軸で回転可能に連結され、当該軸を中心として回転することにより、ラッチ22の他端がフック21に接して針口が閉じた状態と、ラッチ22の他端がフック21から離れて針口が開いた状態とが切り替えられる。初期位置では、図1に示すように、植毛鉤針20がエキセン10の前方に離れた位置であって、逃げ部12の開口と対向する位置にあり、ラッチ22は針口が開いた状態になっている。
【0023】
植毛鉤針20は、制御装置で制御される駆動機構によって駆動され、毛髪材100aを植毛ネット200に結び付けて植毛する。また、植毛鉤針20は、図2に示した複数本の引出鉤針30と1対1で対応するように、複数本が奥行方向に整列している。複数本の植毛鉤針20の一群は、制御装置で制御される駆動機構で一緒に動作して毛髪材100aを植毛ネット200に植毛する。なお、植毛鉤針20及び引出鉤針30のそれぞれは、1本であっても良い。
【0024】
引出鉤針30は、ストッカ40から毛髪材100aを捕捉する部材であり、先端に1本の毛髪材100aを捕捉可能なフック31が設けられる。初期位置では、図1に示すように、引出鉤針30がエキセン10の下方かつ反転ローラー80の上方に位置し、フック31の針口32が手前側に向いている。また、引出鉤針30は、図2に示すように、複数設けられているとともに奥行方向に整列している。複数本の引出鉤針30の一群は、制御装置で制御される駆動機構により一緒に動作して毛髪材100aを捕捉する。なお、フック31は、2本または3本以上の複数本の毛髪材100aを捕捉可能であってもよいし、毛髪材100aを補足可能であればどのような大きさ、形状であってもよい。
【0025】
糸位置出しバー50は、引出鉤針30によってストッカ40から引き出される毛髪材100aを所定位置に誘導する部材である。図1及び図2に示すように、糸位置出しバー50は、全体的には奥行方向に延びる中心線を有する円柱状であり、外周面から中心線の側に窪む複数の糸ガイド51が外周面を一周するように設けられている。なお、糸位置出しバー50は、奥行方向の両端部が装置本体に対して固定されて設けられてもよいが、回転可能な状態で装置本体に支持されるようにすると、糸位置出しバー50が引出鉤針30でストッカ40から引き出される毛髪材100aで回転され、毛髪材100aが糸ガイド51で擦れて傷むことを防止することができる。糸ガイド51の個数は、引出鉤針30の個数と同数である。
【0026】
糸落としバー60は、制御装置で制御される駆動機構で上下方向に振動するものであり、糸引込バー70によって引き込まれる毛髪材100aを払い落とす。糸引込バー70は、制御装置で制御される駆動機構によって前後方向に移動するものであり、植毛ネット200に植毛された毛髪材100aを引っかけて前方に引き込む。磁石90は、植毛鉤針20で毛髪材100aを植毛ネット200に植毛する過程で閉じられたラッチ22を磁力で吸引して開けるものである。なお、磁石90は、永久磁石または電磁石のどちらでも適用可能であるが、電磁石であれば、電磁石を制御装置で制御し閉じられたラッチ22を開くときだけ磁力を発生すればよく、植毛鉤針20と磁石90の相対的な位置関係を変更する必要がないから植毛鉤針20と磁石90を共通の駆動機構で駆動する構成として、駆動機構を簡略化することができる。反転ローラー80は、装置本体に対して回転可能に取り付けられている。
【0027】
次に、図2ないし図21を用いて自動植毛装置の動作について説明する。はじめに、図2に示すように、糸引込バー70が後方に向かって進み、図3におけるストッカ40の取出口42及び引出鉤針30を右側に超えた位置で停止する(第1動作)。
【0028】
次に、引出鉤針30が上昇し、フック31を含む先端部が取出口42からストッカ40内部に入り込み、さらに毛髪材束100bに挿入された後に下降して停止する(第2動作)。このとき、引出鉤針30は、先端部が取出口42に挿入された後、僅かに手前側(フック31の針口32が開口した側)に移動する。これにより、引出鉤針30のフック31に毛髪材100aが引っ掛けられるため、毛髪材100aがストッカ40の取出口42から2つ折りにされた状態で引き出される。このとき、図3に示すように、毛髪材100aの両端はストッカ40内に残っており、図5に示すように、2つ折りで引き出された複数本の毛髪材100aが1本ずつ糸位置出しバー50の複数の糸ガイド51のそれぞれに収容される。これにより、引き出された毛髪材100aのそれぞれが所定の位置に規制されるため、後の動作において植毛鉤針20が毛髪材100aを適切に捕捉することが可能になる。
【0029】
次に、図4に示すように、植毛鉤針20が後方に向かって進む(第3動作)。このとき、フック21が横糸202-1の下を通り、フック21の針口が逃げ部12内に収容されて破線で示す位置に到達する。次に、植毛鉤針20が破線で示した位置から実線で示した位置に後退し、フック21が横糸202-1を引っ掛ける(第4動作)。
【0030】
次に、図6に示すように、エキセン10の軸部13が、逃げ部12の開口が上方を向くように90度だけ回転し、ネット掛部11が軸部13の中心線を中心として破線で示した位置から実線で示した位置へと下方に旋回して停止する(第5動作)。これにより、エキセン10が植毛鉤針20及び横糸202-1の下側に移動する。このエキセン10の破線で示した位置から実線で示した位置への移動により、植毛鉤針20が、エキセン10の上方を通りストッカ40と引出鉤針30との間で2つ折りになった毛髪材100aへと到達することが可能になる。なお、エキセン10が軸部13を備えず、ネット掛部11の中心線を軸として回転する構成であってもよい。この場合、植毛鉤針20が、横糸202-1を引っ掛けた状態のまま、ネット掛部11の回転に追随して上方かつ後方に向かって平行移動するように構成すれば、上記と同様に植毛鉤針20がエキセン10の上方に位置することになる。
【0031】
次に、図7及び図8に示すように、植毛鉤針20が後方に向かって進むのに伴い、フック21がストッカ40と引出鉤針30との間で2つ折りになった毛髪材100aに近づく(第6動作)。このとき、横糸202-1は、開いたラッチ22の上側を通過することになり、最終的にラッチ22の全部を通過する。次に、フック21の針口が上を向いた状態から横向き(奥側を向いた状態)になるように植毛鉤針20が回転する(第7動作)。これにより、フック21の針口が、引出鉤針30によって引き出された毛髪材100aを向いた状態になる。
【0032】
次に、図9に示すように、植毛鉤針20が、フック21の針口を横向きのまま更に後方へ進み、引出鉤針30によって引き出された2つ折りの毛髪材100aのうち前方の部分(以下、毛髪材100aの「前方部分」という。)にフック21の針口が向き合うところで停止する(第8動作)。次に、引出鉤針30が手前側に移動する(第9動作)。これにより、毛髪材100aの前方部分が植毛鉤針20に近づき、フック21の針口に導入される。
【0033】
次に、図10に示すように、植毛鉤針20が、フック21の針口が横を向いた状態から上向きになるように回転するとともに、図11及び図12に示すように、前方に向かって進むことで、横糸202-1にラッチ22が接触してフック21の針口が閉じられ、さらに植毛鉤針20が実線で示した位置から破線で示した位置へと進むと、ラッチ22が磁石90の磁力で吸引され植毛鉤針20の針口が開かれる(第10動作)。このとき、植毛鉤針20が植毛ネット200から離れることで、毛髪材100aの前方部分がストッカ40から少しだけ引き出される。また、毛髪材100aは、取出口42の前方側から糸位置出しバー50を経由し横糸202-1と横糸202-2との間を通りフック21で折り返され、フック21から横糸202-1と横糸202-2との間を通り、横糸202-1と横糸202-3との間を通り引出鉤針30に至るように展開される。
【0034】
次に、図13に示すように、植毛鉤針20は、図11の破線で示した位置から後方に進むとともに上昇し、植毛鉤針20が毛髪材100aを横糸202-1に結ぶために回転する(第11動作)。これにより、毛髪材100aのフック21と横糸202-1との間の2本の部分が互いに絡むように撚り合わせられてループ部45が設けられる。なお、この第11動作において、植毛鉤針の上昇は省略可能であるが、この上昇を行うことにより、後述する第12動作の際に、フック21が毛髪材100aの糸位置出しバー50と横糸202-1との間の部分を確実に通るようになる。
【0035】
次に、図14に示すように、植毛鉤針20が、上向きのまま手前側に移動した後に後方に進み、引出鉤針30によって引き出された2つ折りの毛髪材100aのうち後方の部分(以下、毛髪材100aの「後方部分」という。)に対してフック21の針口が奥行方向に並ぶところで停止し、フック21の針口が上を向いた状態から横向き(奥側を向いた状態)になるように回転する(第12動作)。このとき、図15に示すように、植毛鉤針20のフック21は毛髪材100aの糸位置出しバー50と横糸202-1との間の部分を通り、ループ部45は植毛鉤針20のラッチ22の上側を通過する。また、植毛鉤針20の回転により、毛髪材100aの後半部分にフック21の針口が向いた状態になる。なお、植毛鉤針20の回転数は、1回転、2回転または3回転以上など、1回転以上であればどのような回転数でもよい。また、回転方向は、右回りであっても左回りであってもよい。
【0036】
次に、引出鉤針30が手前側に移動する(第13動作)。これにより、毛髪材100aの後方部分が植毛鉤針20に近づき、フック21の針口に導入される。なお、植毛鉤針20が奥側に移動してもよいし、引出鉤針30と植毛鉤針20の両方が互いに近づくように動いてもよい。
【0037】
次に、図16及び図17に示すように、植毛鉤針20が、フック21の針口が横を向いた状態から上向きになるように回転するとともに、前方に向かって進むことで、ループ部45にラッチ22が接触してフック21の針口が閉じられる(第14動作)。これにより、横糸202-1に対する毛髪材100aの結びつけ、つまり植毛が完了する。なお、植毛鉤針20のフック21が後退してループ部45を通過する際に、引出鉤針30が上下に小刻みに動くなどしてフック31から毛髪材100aを外してもよい。これにより、毛髪材100aが摩擦によって縮れてしまうピーリングを防止することができる。
【0038】
次に、図18及び図19に示すように、糸引込バー70が前方に進むことで毛髪材100aの前方部分を前方に引き込み、初期位置で停止する(第15動作)。
【0039】
さらに、図20に示すように、第16動作から第18動作を行う。まず、植毛鉤針20が初期位置に戻って停止する間にラッチ22が磁石90の磁力で吸引され植毛鉤針20の針口が開かれる(第16動作)。エキセン10が、軸部13の中心線を軸として図6に実線で示した位置から図6に示した破線で示した位置の側に戻るように旋回する(第17動作)。これにより、逃げ部12の開口が左側に向けられた初期位置に戻る。糸落としバー60が、下方に移動した後、上方に移動して初期位置で停止する(第18動作)。これにより、横糸202-1に対する植毛の完了した毛髪材100aが下方に整髪される。なお、第16動作から第18動作のいずれから先に行っても良く、第16動作から第18動作を同時に行っても良い。
【0040】
以上の動作により、自動植毛装置120における横糸202-1に対する毛髪材100aを植毛する動作の1サイクルが終了し、図21に示す結び目が作成される。なお、図21は、第11動作において、植毛鉤針20が3回転し、植毛糸100が3回撚り合わせられて植毛ネット200に結び付けられた状態を図示している。
【0041】
なお、上述の動作例では、植毛鉤針20のフック21が、第8動作及び第9動作において毛髪材100aの前方部分をとり、第12動作及び第13動作において毛髪材100aの後方部分をとっているが、それぞれの動作において前方部分及び後方部分のどちらを取っても、第12動作において植毛鉤針20を1回転以上させれば、毛髪材100aを横糸に結び付けることが可能である。また、第12動作において植毛鉤針20を半回転しかしない場合であっても、第12動作及び第13動作において、この半回転によって下側となった方を植毛鉤針20のフック21でとれば、毛髪材100aを横糸に結び付けることが可能である。
【0042】
<<突出毛髪材を回収するための構成及び動作>>
以下、突出毛髪材100dを回収するための構成及び動作について説明する。
【0043】
<第1実施形態>
図22Aは、第1実施形態による自動植毛装置120の毛髪材回収部150の構成を示す図である。図22Bは、突出毛髪材100dが捕捉される状態を示す模式図である。図22Aに示すように、第1実施形態による自動植毛装置120は、毛髪材回収部150を備える。毛髪材回収部150は、捕捉機構部110と、収容部130と、吸引部140とを含む。
【0044】
(捕捉機構部の構成)
図18図20及び図22Aに示すように、捕捉機構部110は、引出鉤針30により補足された毛髪材100a以外の毛髪材でかつ取出口42から引出鉤針30側に一部(部分100da)が突出した毛髪材である突出毛髪材100dを挟持して回収する。この場合の突出毛髪材100dは、取出口42から引出鉤針30側に部分100daが突出することにより、引出鉤針30によっては捕捉できない位置に移動し、植毛に用いられない不要な毛髪材である。また、図22Bに示すように、捕捉機構部110は、引出鉤針30により補足された毛髪材でかつ植毛ネット200に植毛されずに取出口42から引出鉤針30側に突出部分100dbが突出した状態で残存した毛髪材である突出毛髪材100dを挟持して回収する。この場合の突出毛髪材100dは、植毛鉤針20による捕捉が失敗され、引出鉤針30に捕捉された状態で、取出口42の下方に残存した毛髪材である。この突出毛髪材100dは、引出鉤針30に捕捉された状態で、取出口42の下方に残存するため、他の毛髪材100aや機器と干渉する可能性がある不要な毛髪材である。また、捕捉機構部110は、取出口42よりも下方に配置されている。
【0045】
図23Aは、毛髪材100aを引き出す方向に捕捉機構部110の構成を見た断面図である。図23Bは、後方に向かって捕捉機構部110の構成を見た断面図である。図24Aは、歯部111a及び111bにより毛髪材100aが挟持された状態を引き出す方向に見た図である。図24Bは、歯部111a及び111bにより毛髪材100aが挟持された状態を後方に向かって見た図である。図23Aに示すように、捕捉機構部110は、複数の歯部111a及び111bと、第1ベース部材112a及び第2ベース部材112bと、複数のガイド部材113a及び113bとを含む。自動植毛装置120では、複数の取出口42の各々に対して、歯部111a及び111bが1つずつ設けられている。複数の歯部111aは、第1ベース部材112aから前方に向かって延びている。また、複数の歯部111bは、第2ベース部材112bから前方に向かって延びている。例えば、複数の歯部111aは、平行に延びている。また、複数の歯部111bは、平行に延びている。
【0046】
図23Aに示すように、歯部111a及び111bには、それぞれ、ガイド部材113a及び113bが配置されている。ガイド部材113a及び113bは、歯部111a及び111bの間に突出毛髪材100dをガイドする形状を有する。具体的には、ガイド部材113a及び113bには、それぞれ、傾斜面114a及び114bが設けられている。傾斜面114a及び114bは、それぞれ、歯部111a及び111bの先端部分に配置されている。傾斜面114aと傾斜面114bとは、互いに対向するように奥行方向に対して傾斜している。これにより、平面視において、ガイド部材113aとガイド部材113bとは、捕捉機構部110の進行方向に向かってD1からD2に次第に大きくなる形状を有する。そして、傾斜面114aと傾斜面114bとの間の空間は、歯部111aと歯部111bとの間の空間(突出毛髪材100dを挟持する部分)に接続している。これにより、歯部111a及び111bが突出毛髪材100dに向かって進行する際に、進行方向に向かって間隔が次第に大きくなる形状を有するガイド部材113a及び113bの隙間に突出毛髪材100dをガイドすることができる。そして、ガイド部材113a及び113bの隙間が歯部111a及び111bの隙間に接続しているので、ガイド部材113a及び113bの隙間から突出毛髪材100dを歯部111a及び111bの隙間にガイドすることができる。なお、「傾斜面」とは、傾斜する角度が一定な面(平坦面)に限られず、傾斜面が弧状(R状)に形成されていてもよい。
【0047】
また、ガイド部材113a及び113bは、それぞれ、弾性部材から構成されている。例えば、弾性部材として、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を使用できるが、合成ゴム又は天然ゴム等を用いてもよい。
【0048】
図23Bに示すように、ガイド部材113aは、歯部111aの外周を覆う筒状に形成されている。ガイド部材113bは、歯部111bの外周を覆う筒状に形成されている。これにより、歯部111a及び111bの各々にガイド部材113a及び113b(筒状部分)を容易に取り付けることができる。そして、歯部111a及び111bの各々の外周が弾性部材により覆われるので、任意の方向から突出毛髪材100dが歯部111a及び111bのいずれかに近付いても弾性部材に突出毛髪材100dを接触させることができる。
【0049】
また、ガイド部材113aは、歯部111aが延びる方向に直交する方向の断面が円形状を有する。また、ガイド部材113bは、歯部111bが延びる方向に直交する方向の断面が円形状を有する。また、歯部111a及び111bは、自身が延びる方向に直交する断面が矩形状に形成されている。これにより、図23Bに示すように、歯部111aの外側面の一部とガイド部材113aの内側面の一部とは離間しており、歯部111aの外側面の一部とガイド部材113aの内側面の一部との間に空間CL1が形成される。また、歯部111bの外側面の一部とガイド部材113bの内側面の一部とは離間しており、歯部111bの外側面とガイド部材113bの内側面との間に空間CL2が形成される。この結果、図24Bに示すように、歯部111a及び111bが突出毛髪材100dを挟持する際に、ガイド部材113aが空間CL1側に撓み、ガイド部材113bが空間CL2側に撓む。これにより、歯部111a及び111bが突出毛髪材100dを挟持する接触面積を大きくすることができる。また、歯部111a及び111bが複数の突出毛髪材100dを挟持する場合でも、ガイド部材113a及び113bが弾性変形することにより複数の突出毛髪材100dの各々を挟持することができる。
【0050】
図25は、ガイド部材113a及び113bにより歯部111a及び111bの間に突出毛髪材100dがガイドされる状態を示す模式図である。図25に示すように、歯部111a及び111bが突出毛髪材100dに向かって進むと、ガイド部材113a及び113bの傾斜面114a及び114bに沿って、突出毛髪材100dが歯部111a及び111bの間に移動する。突出毛髪材100dが歯部111a及び111bの間に配置された状態で、歯部111a及び111bの間隔を小さくすることで、突出毛髪材100dが歯部111a及び111bにより挟持される。これにより、突出毛髪材100dをガイド部材113a及び113bにより歯部111a及び111bの間にガイドすることができるので、歯部111a及び111bにより突出毛髪材100dを容易に回収することができる。
【0051】
(第1ベース部材及び第2ベース部材の構成)
図23Bに示すように、第2ベース部材112bは、歯部111a及び111bが並ぶ方向と直交する方向(例えば、上下方向)に、第1ベース部材112aと重ねて配置されている。そして、第1ベース部材112a及び第2ベース部材112bは、それぞれ、往復運動機構115a及び115bにより手前方向(図23AのA1方向)又は奥行方向(図23AのA2方向)に移動される。これにより、第1ベース部材112aと第2ベース部材112bとは、A1方向又はA2方向に相対移動する。例えば、図24Aに示すように、第1ベース部材112aがA1方向に移動するとともに、第2ベース部材112bがA2方向に移動することにより、歯部111aと歯部111bとの隙間が小さくなる。これにより、歯部111aと歯部111bとにより、突出毛髪材100dが挟持された状態となる。また、第1ベース部材112aがA2方向に移動するとともに、第2ベース部材112bがA1方向に移動することにより、歯部111aと歯部111bとの隙間が大きくなり、図22Aに示すように、挟持されていた突出毛髪材100dが、収容部130に落下する。
【0052】
図23Aに示すように、往復運動機構115a及び115bは、ベース部材116aに固定されている。ベース部材116aは、エアシリンダなどの往復運動機構116bによって駆動されることで、前方または後方に移動する。これにより、捕捉機構部110は、図1及び図20に示す初期位置と、図18又は図22Bに示す取出口42の下方の位置(以下、「捕捉位置」という)との間で往復する。なお、往復運動機構116bは、エアシリンダではなく、ラックアンドピニオンを含んでいてもよい。
【0053】
(収容部の構成)
図22Aに示すように、収容部130は、蓋を有さない箱状、又はトレイ状(盆状)に形成されており、複数の突出毛髪材100dを一時的に収容する。収容部130は、捕捉機構部110により回収された複数の突出毛髪材100dを収容する。また、収容部130は、捕捉機構部110の歯部111a及び111bの初期位置の下方に配置されており、歯部111a及び111bから解放された突出毛髪材100dが落下することにより、当該突出毛髪材100dが収容部130内に収容される。また、収容部130の底面131には、複数の吸引口132が設けられており、当該複数の吸引口132は、歯部111a及び111bの初期位置の下方に配置されている。
【0054】
(吸引部の構成)
図22Aに示すように、吸引部140は、収容部130内の突出毛髪材100dを吸引して収容部130から外部に排出する。吸引部140は、接続部材141と、エジェクタ142と、切断部材143とを含む。接続部材141は、例えば、管状に形成されており、内部で突出毛髪材100dを通過させる。接続部材141は、複数の吸引口132のそれぞれに接続された複数の開口141aを有する。接続部材141は、突出毛髪材100dが排出される排出口140aと吸引口132とを接続している。
【0055】
エジェクタ142は、大気圧(収容部130内の気圧)よりも高い気圧に気体を圧縮し、圧縮した気体を、接続部材141の供給口141bから排出口140aに向かって放出させることにより、複数の吸引口132から排出口140aに向けて空気が流れる。これにより、複数の吸引口132において吸引が行われ、収容部130内の突出毛髪材100dが接続部材141内に入る。なお、エジェクタ142によって放出される気体は、空気を用いることができるが、その他の気体(窒素等)を用いてもよい。第1実施形態では、エジェクタ142を設けることにより、ブロワーなどの回転電機を設ける場合に比べて、毛髪材回収部150の構成を簡素化しながら、突出毛髪材100dを吸引することができる。例えば、工場内に空気圧縮装置(エアコンプレッサー)が配置されている場合、当該空気圧縮装置(汎用の空気圧縮装置)を用いることができる。
【0056】
切断部材143は、接続部材141内に配置されている。そして、切断部材143は、接続部材141内で移動する突出毛髪材100dを切断する刃を含む。複数の刃が回転又は平行移動することにより、突出毛髪材100dが切断される。
【0057】
毛髪材回収部150は、排出口140aから排出された突出毛髪材100dを収容する排出材収容部160を含む。自動植毛装置120を利用するユーザは、排出材収容部160内の突出毛髪材100dを回収し、回収した突出毛髪材100dを植毛用に再利用するか、又は、廃棄する。なお、排出材収容部160は、任意の方法で毛髪材回収部150に対して取り外し可能に構成されてもよい。
【0058】
(捕捉機構部及び吸引部の動作)
次に、捕捉機構部110及び吸引部140の動作について説明する。図26は、制御装置95による捕捉機構部110及び吸引部140の制御処理を示すフロー図である。
【0059】
図26に示すように、ステップS1において、捕捉機構部110の歯部111a及び111bを、初期位置から取出口42の下方の位置(捕捉位置)に移動(前進)させる。例えば、図6に示すように、引出鉤針30により毛髪材100aが取出口42から取り出された後(第2動作の後)に、歯部111a及び111bを、捕捉位置に移動させる。なお、歯部111a及び111bの間が開いた状態(図25参照)で、歯部111a及び111bは、初期位置から捕捉位置に移動する。この際に、ガイド部材113a及び113bにより、歯部111a及び111bの間に突出毛髪材100dが配置される。
【0060】
ステップS2において、歯部111a及び111bの間を閉じて、突出毛髪材100dを挟持する。例えば、図18又は図22Bに示すように、植毛中の毛髪材100aの全体がストッカ40から取り出された後(例えば、第14動作以降)に、歯部111a及び111bの間を閉じて、突出毛髪材100dを挟持する。
【0061】
ステップS3において、歯部111a及び111bが突出毛髪材100dを挟持した状態で、歯部111a及び111bが捕捉位置から初期位置に移動する。例えば、図20に示すように、歯部111a及び111bが突出毛髪材100dを挟持した状態で、歯部111a及び111bが収容部130の上方の位置に移動する。
【0062】
ステップS4において、吸引部140による吸引が開始される。すなわち、ステップS3まで、吸引部140による吸引は停止されている。なお、この例に限られず、ステップS4は、ステップS2の実行中の期間から開始してもよいし、ステップS3の実行中の期間から開始してもよい。
【0063】
ステップS5において、図22Aに示すように、歯部111a及び111bが開き、挟持されていた突出毛髪材100dが収容部130に落下する。落下した突出毛髪材100dは、収容部130の吸引口132から接続部材141内に吸引される。そして、突出毛髪材100dは、切断部材143に切断された後、排出口140aから排出材収容部160に排出される。
【0064】
ステップS6において、吸引部140による吸引が停止され、ステップS1に戻る。これにより、突出毛髪材100dが生じた場合でも、突出毛髪材100dが回収され及び収容部130から排出される。
【0065】
<第2実施形態>
図27を参照して、第2実施形態による自動植毛装置300の構成について説明する。図27は、第2実施形態による自動植毛装置300の構成を説明するための図である。
【0066】
図27に示すように、自動植毛装置300は、吸引部340と、排出材収容部360とを備える。吸引部340は、接続部材341と、ブロワー342と、フィルタ材343とを含む。接続部材341は、吸引口132と排出口140aとを接続する通路である。ブロワー342は、羽車が回転することにより吸引口132から突出毛髪材100dを吸引する。フィルタ材343は、吸引口132とブロワー342との間に配置され突出毛髪材100dを捕捉する。フィルタ材343は、不織布により形成されているか、又は網状を有し、通気させる一方、突出毛髪材100d等の固体を捕捉するように構成されている。排出材収容部360は、フィルタ材343により捕捉された突出毛髪材100dを収容する。第2実施形態の構成によれば、エジェクタを設ける場合と異なり、自動植毛装置300が配置された工場等に気体を放出する装置(例えば、空気圧縮装置)が配置されていなくても、突出毛髪材100dをブロワー342により吸引することができる。なお、その他の構成及び効果は、第1実施形態の構成及び効果と同様である。
【0067】
[変形例]
以上、上述した実施形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。よって、本開示は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0068】
(1)上記第1及び第2実施形態では、筒状のガイド部材を歯部に取り付ける例を示したが本開示はこれに限られない。例えば、図28に示す第1変形例による捕捉機構部410のように、歯部111a及び111bの各々の先端部に、帽子状(キャップ状)のガイド部材413a及び413bが設けられていてもよい。ガイド部材413a及び413bには、互いに間隔が歯部111a及び111bの間に向かって次第に小さくなる部分414a及び41bがそれぞれ設けられている。
【0069】
(2)上記第1及び第2実施形態では、ガイド部と歯部とを別個の部材により構成する例を示したが本開示はこれに限られない。例えば、図29に示す第2変形例による捕捉機構部510のように、歯部511a及び511bの先端部のそれぞれに、傾斜面514a及び514bが形成されていてもよい。この場合、傾斜面514a及び514bがガイド部として機能する。
【0070】
(3)上記第1及び第2実施形態では、ガイド部材の先端側の面を傾斜面に形成する例を示したが本開示はこれに限られない。例えば、図30に示す第3変形例による捕捉機構部610のように、ガイド部材613aの側面を傾斜面614aに形成してもよい。
【0071】
(4)上記第1及び第2実施形態では、全てのガイド部材に傾斜面を形成する例を示したが本開示はこれに限られない。例えば、図31に示す第4変形例による捕捉機構部710のように、ガイド部材のうちの一部のガイド部材713aには、傾斜面が設けられていなくてもよい。
【0072】
(5)上記第1及び第2実施形態では、吸引部を、収容部に収容された突出毛髪材を吸引する例を示したが本開示はこれに限られない。例えば、図32に示す第5変形例による自動植毛装置800のように、吸引部840は、歯部111a及び111bの間に配置された突出毛髪材100dを吸引してもよい。この場合、接続部材841は、歯部111a及び111bと共に移動してもよいし、歯部111a及び111bの初期位置に固定されていてもよい。接続部材841が歯部111a及び111bと共に移動する場合、接続部材841は、可撓性部材により構成される。
【0073】
(6)上記第1及び第2実施形態では、ガイド部材を弾性部材により形成する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、ガイド部材をほとんど弾性変形しない材料(例えば、金属材)により形成してもよい。
【0074】
(7)上記第1及び第2実施形態では、ガイド部材の断面を円形状に、歯部の断面を矩形状に形成する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、ガイド部材の断面を、矩形状、楕円状、又は多角形状に形成してもよいし、歯部の断面を円形状、楕円状、又は多角形状に形成してもよい。
【0075】
(8)上記第1及び第2実施形態では、吸引部を設ける例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、収容部にたまった突出毛髪材をユーザが回収してもよい。
【0076】
(9)上記第1及び第2実施形態では、図22Bに示すように、捕捉機構部を、取出口の直下(取出口の近傍の位置)に配置する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、図33に示す第6変形例による捕捉機構部910のように、取出口42と引出鉤針30との間で、かつ、植毛鉤針20よりも下方(引出鉤針30の近傍の位置)に配置されてもよい。
【0077】
また、上述した自動植毛装置は、以下のように説明することができる。
【0078】
第1の構成に係る自動植毛装置は、複数の毛髪材が配置されるストッカであって、複数の毛髪材のうちの一部が取り出される取出口が形成されたストッカと、取出口から複数の毛髪材のうちの一部の毛髪材を捕捉して引き出す引出鉤針と、引出鉤針により補足された毛髪材以外の毛髪材でかつ取出口から引出鉤針側に一部が突出した毛髪材と、引出鉤針により補足された毛髪材でかつ植毛対象物に植毛されずに取出口から引出鉤針側に一部が突出した状態で残存した毛髪材と、の少なくとも一方の毛髪材である突出毛髪材を挟持して回収する2つの歯部を有する、毛髪材回収部と、を備え、毛髪材回収部は、2つの歯部の間に突出毛髪材をガイドする形状を有するガイド部を含む(第1の構成)。
【0079】
上記第1の構成によれば、突出毛髪材をガイド部により2つの歯部の間にガイドすることができるので、2つの歯部により突出毛髪材を容易に挟持させることができる。この結果、突出毛髪材を容易に回収することができる。
【0080】
第1の構成において、2つの歯部は、引出鉤針が複数の毛髪材のうちの一部の毛髪材を引き出す方向に対して交差する方向で、かつ、突出毛髪材に向かって進行中又は進行した後に、突出毛髪材を挟持するように構成されてもよく、ガイド部は、引き出す方向に見て、進行方向に向かって間隔が次第に大きくなる形状を有する一対の部分を含んでもよく、一対の部分の隙間は、2つの歯部の隙間に接続していてもよい(第2の構成)。
【0081】
上記第2の構成によれば、2つの歯部が突出毛髪材に向かって進行する際に、進行方向に向かって間隔が次第に大きくなる形状を有する一対の部分の隙間に突出毛髪材をガイドすることができる。そして、一対の部分の隙間が2つの歯部の隙間に接続しているので、一対の部分の隙間から突出毛髪材を2つの歯部の隙間にガイドすることができる。
【0082】
第2の構成において、ガイド部の一対の部分は、引き出す方向に見て、互いに対向する一対の傾斜部を有してもよい(第3の構成)。
【0083】
上記第3の構成によれば、突出毛髪材が一対の傾斜部のいずれかに当たった場合に、当たった傾斜部に沿って2つの歯部の隙間にガイドすることができる。
【0084】
第1~第3の構成のいずれか1つにおいて、ガイド部は、2つの歯部のうちの少なくとも突出毛髪材を挟持する位置に配置された弾性部材を含んでもよい(第4の構成)。
【0085】
上記第4の構成によれば、突出毛髪材が複数存在する場合でも、弾性部材の形状が複数の突出毛髪材の束に合わせて変形するので、複数の突出毛髪材をより確実に捕捉することができる。
【0086】
第4の構成において、弾性部材は、2つの歯部の各々の外周を覆う2つの筒状部分を有するように構成されてもよい(第5の構成)。
【0087】
上記第5の構成によれば、2つの歯部の各々に筒状部分を容易に取り付けることができる。そして、2つの歯部の各々の外周が弾性部材により覆われるので、任意の方向から突出毛髪材が歯部に近付いても弾性部材に突出毛髪材を接触させることができる。
【0088】
第5の構成において、2つの筒状部分は、2つの歯部が突出毛髪材を挟持する位置において、2つの歯部から離間していてもよい(第6の構成)。
【0089】
上記第6の構成によれば、歯部と筒状部分との隙間をクッションとして機能させることができるので、筒状部分をより大きく弾性変形させることができる。
【0090】
第6の構成において、2つの歯部の少なくとも1つの歯部は、当該歯部が延びる方向に直交する断面であって、矩形状の断面を有してもよく、2つの筒状部分のうちの少なくとも矩形状の断面を有する歯部の外周を覆う筒状部分は、当該歯部が延びる方向に直交する断面であって、円形状の断面を有してもよい(第7の構成)。
【0091】
上記第7の構成によれば、歯部が延びる方向に直交する方向において、歯部と筒状部分との間に容易に隙間(空間)を形成することができる。
【0092】
第4~第7の構成のいずれか1つにおいて、毛髪材回収部は、2つの歯部のうちの一方が形成された第1ベース部材と、2つの歯部のうちの他方が形成された第2ベース部材であって、第1ベース部材と2つの歯部が並ぶ方向と直交する方向に重ねて配置された第2ベース部材と、2つの歯部が近付くように、第1ベース部材と第2ベース部材とを相対移動させるベース部材機構部と、をさらに含んでもよい(第8の構成)。
【0093】
上記第8の構成によれば、ベース部材機構部を相対移動させることで、2つの歯部により突出毛髪材を挟持した状態と、突出毛髪材を解放した状態とを容易に切り替えることができる。
【符号の説明】
【0094】
30…引出鉤針、40…ストッカ、42…取出口、95…制御装置、100a…毛髪材、100d…突出毛髪材、110,410,510,610,710,910…捕捉機構部、111a,111b,511a…歯部、112a…第1ベース部材、112b…第2ベース部材、113a,113b,413a,613a,713a…ガイド部材、114a,114b,514a,614a…傾斜面、120,300,800…自動植毛装置、130…収容部、131…底面、132…吸引口、140,340,840…吸引部、140a…排出口、141,341、841…接続部材、142…エジェクタ、143…切断部材、150…毛髪材回収部、200…植毛ネット、342…ブロワー、343…フィルタ材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
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図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
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図24B
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図33