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▶ 株式会社カネカの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141177
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】自動植毛装置
(51)【国際特許分類】
   A41G 3/00 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
A41G3/00 N
A41G3/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047363
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【弁理士】
【氏名又は名称】三品 明生
(74)【代理人】
【識別番号】100217364
【弁理士】
【氏名又は名称】田端 豊
(72)【発明者】
【氏名】栗部 栄史
(72)【発明者】
【氏名】日月 快
(72)【発明者】
【氏名】井上 健太
(72)【発明者】
【氏名】小田 晶美
(57)【要約】
【課題】毛髪材に帯電する静電気を除電することが可能な自動植毛装置を提供する。
【解決手段】自動植毛装置120は、取出口42を有し、当該取出口42を跨ぐように複数の毛髪材100aが配置されるストッカ40であって、当該取出口42から前記複数の毛髪材100aのうちの一部の毛髪材100aが引出鉤針により取り出されるストッカ40と、毛髪材100aに取出口42から離れる方向の成分を含む力を加える突起部401とを備える。突起部401のうちの毛髪材100aと接触する部分は、接地電位を有し、突起部401は、毛髪材100aに接触することにより毛髪材100aに帯電した静電気を除電する。
【選択図】図22A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植毛対象物に毛髪材を植毛する植毛機構部と、
前記毛髪材に帯電した静電気を除電する、除電部と、を備える、自動植毛装置。
【請求項2】
前記毛髪材が収容されるストッカを、さらに備え、
前記除電部は、前記ストッカに収容された前記毛髪材に帯電した静電気を除電する、請求項1に記載の自動植毛装置。
【請求項3】
前記ストッカは、接地電位を有する、請求項2に記載の自動植毛装置。
【請求項4】
前記ストッカは、底部に取出口を有し、
前記毛髪材は、当該取出口を跨いで前記底部上に配置されており、
前記除電部は、前記ストッカの前記底部上に配置される毛髪材に対して、前記取出口から離れる方向の成分を含む力を加える付勢部を含み、
前記付勢部のうちの少なくとも前記毛髪材に接触する部分は、接地電位を有する導体を含む、請求項2または3に記載の自動植毛装置。
【請求項5】
前記除電部は、前記毛髪材に正イオン及び負イオンの少なくとも一方を放射するイオナイザを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の自動植毛装置。
【請求項6】
前記除電部は、前記植毛対象物に植毛された毛髪材に帯電した静電気を除電する、請求項1~5のいずれか1に記載の自動植毛装置。
【請求項7】
前記除電部は、前記植毛対象物に植毛される毛髪材を移動させる搬送部材を含み、
前記搬送部材は、接地電位を有する導体を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の自動植毛装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動植毛装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植毛ネットに毛髪材を結び付けて植毛する自動植毛装置が知られている。このような自動植毛装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の自動植毛装置は、複数の毛髪材が収容されるストッカと、植毛ネットが展開されたエキセンと、第1鉤針と、第2鉤針とを備える。第2鉤針は、ストッカの取出口から毛髪材を引き出す。そして、第1鉤針は、引き出された毛髪材を捕捉し、当該毛髪材をエキセンに展開された植毛ネットに結び付けて植毛する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6533350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の自動植毛装置では、複数の毛髪材が互いに擦れ合うことにより静電気を帯電してしまう。このため、静電気に起因して毛髪材が意図しない動きを行い、植毛の不良の原因となる。また、静電気に起因して放電が発生した場合、自動植毛装置内の電子機器に悪影響が生じる場合がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、毛髪材に帯電する静電気を除電することが可能な自動植毛装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、以下に開示する自動植毛装置は、植毛対象物に毛髪材を植毛する植毛機構部と、前記毛髪材に帯電した静電気を除電する、除電部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、毛髪材に静電気が帯電した場合でも、除電部により毛髪材に帯電する静電気を除電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、自動植毛装置120の構造を奥行方向に見た模式図である。
図2図2は、自動植毛装置120の構造を後方から見た模式図である。
図3図3は、自動植毛装置120の第1動作から第4動作を示す図であって、自動植毛装置120の構造を奥行方向に見た模式図である。
図4図4は、図3の一部を拡大した拡大図である。
図5図5は、自動植毛装置120の第1動作から第4動作を示す図であって、自動植毛装置120の構造を後方から見た模式図である。
図6図6は、自動植毛装置120の第5動作を示す図である。
図7図7は、自動植毛装置120の第6動作及び第7動作を示す図である。
図8図8は、図7の一部を拡大した拡大図である。
図9図9は、自動植毛装置120の第8動作及び第9動作を示す図である。
図10図10は、図9の一部を拡大した拡大図である。
図11図11は、自動植毛装置120の第10動作を示す図である。
図12図12は、図11の一部を拡大した拡大図である。
図13図13は、自動植毛装置120の第11動作を示す図である。
図14図14は、自動植毛装置120の第12動作及び第13動作を示す図である。
図15図15は、図14の一部を拡大した拡大図である。
図16図16は、自動植毛装置120の第14動作を示す図である。
図17図17は、図16の一部を拡大した拡大図である。
図18図18は、自動植毛装置120の第15動作を示す図である。
図19図19は、図18の一部を拡大した拡大図である。
図20図20は、自動植毛装置120の第16動作から第18動作を示す図である。
図21A図21Aは、引出鉤針30側から見た結び目100cを示す図である。
図21B図21Bは、植毛鉤針20側から見た結び目100cを示す図である。
図22A図22Aは、第1実施形態の第1例の構成を示す斜視図である。
図22B図22Bは、第1実施形態の第1例の構成を奥行方向に見た図である。
図23図23は、第1実施形態の第1例の構成を示す斜視図である。
図24図24は、第1実施形態の第1例の構成を示す斜視図である。
図25図25は、第1実施形態の第1例の構成を示す斜視図である。
図26図26は、第1実施形態の第2例の構成を示す斜視図である。
図27図27は、第1実施形態の第2例の構成を示す斜視図である。
図28図28は、第1実施形態の第1例の変形例の構成を示す斜視図である。
図29図29は、第1実施形態の第1例の変形例の構成を示す斜視図である。
図30図30は、第1実施形態の第1例の変形例の構成を示す斜視図である。
図31図31は、第1実施形態の第1例の変形例の構成を示す斜視図である。
図32図32は、第2実施形態による自動植毛装置300のイオナイザ311の配置位置を示す断面図である。
図33図33は、第2実施形態によるイオナイザ312の配置位置を示す図である。
図34図34は、第2実施形態によるイオナイザ313の配置位置を示す図である。
図35図35は、第2実施形態によるイオナイザ314の配置位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。また、以下の説明において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、実施形態および変形例に記載された各構成は、適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。また、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。
【0011】
<<自動植毛装置の構成例及び動作例>>
最初に、本発明の実施形態に係る自動植毛装置の基本的な構成及び動作について図面を参照して説明する。なお、ここでは、本発明の要部を説明する前提として、自動植毛装置の基本的な構成及び動作のそれぞれの一例を説明するに過ぎない。本発明の要部の構成及び動作と矛盾を生じない限りにおいて、ここで説明する自動植毛装置の構成及び動作とは異なる構成及び動作を採用することは当然に可能である。
【0012】
図1は、自動植毛装置の構造及び初期位置を示した側面図である。図2は、図1の状態の自動植毛装置を後方から前方に向かってみた場合の正面図である。図1に示すように、自動植毛装置120は、エキセン10、植毛鉤針20、引出鉤針30、ストッカ40、糸位置出しバー50、糸落としバー60、糸引込バー70、反転ローラー80、図11に図示した磁石90、図示のされていない駆動機構、制御装置95などを備え、当該制御装置95による前記駆動機構の制御に伴いエキセン10と植毛鉤針20と引出鉤針30と糸落としバー60並びに糸引込バー70のそれぞれが図2から図11までに示した第1動作から第18動作までを行い、毛髪材100aをストッカ40から1本ずつ捕捉して植毛ネット200の横糸202に結び付けて植毛する。なお、図1ないし図21に示す側面図及び正面図では、図中の左右方向が水平方向、上下方向が鉛直方向である。
【0013】
毛髪材100aとは、人工毛(ファイバー、合成繊維)のほか、人毛(ヒトから採取した毛)、動物毛(ヒト以外の動物から採取した毛)、またはこれらの混合物などであり、自動植毛装置120によって植毛可能な毛または毛様の一切の材料が含まれる。植毛ネット200は、複数本の縦糸201と複数本の横糸202とからなる網目状に形成されており、縦糸201及び横糸202のそれぞれは、複数本の原糸を撚りあわせた一本の糸であってもよいし、一本の原糸であってもよい。
【0014】
最初に、自動植毛装置120の構成及び自動植毛装置120が動作を行う際の初期位置について説明する。図1に示すように、予め切り揃えられた複数本の毛髪材100aからなる毛髪材束100bが、エキセン10よりも上方に配置されたストッカ40内に配置される。ストッカ40における取出口42の下方には引出鉤針30が配置されており、植毛鉤針20と引出鉤針30の間にエキセン10が配置されている。以下、水平面内の方向であって、エキセン10からみて引出鉤針30がある方向を後方、その反対方向を前方といい、これらを合わせて前後方向という。また、水平面内において前後方向と垂直な方向を奥行方向といい、後方を見たときに左側となる方向を奥側(図1における紙面裏側)、右側となる方向を手前側(図1における紙面表側)という。
【0015】
植毛ネット200は、エキセン10のネット掛部11に対して上方から覆い被さるようにセットされ、引出鉤針30の下方のある反転ローラー80にも接触して位置が規制されている。植毛鉤針20は、その先端が後方を向いており、当該先端がエキセン10の回転軸と同程度の高さに位置している。引出鉤針30は、その先端が上方を向いており、当該先端がエキセン10の中心軸よりも下方に位置している。糸位置出しバー50は、ストッカ40の底部41における前後方向の中央部に設けられた取出口42よりも下方かつ前方に位置している。糸落としバー60及び糸引込バー70は、糸位置出しバー50の下方かつエキセン10の上方であって、糸位置出しバー50よりも前方に位置している。
【0016】
ストッカ40は、平面視が矩形である平板状の底部41と、底部41の前後方向の二辺のそれぞれに沿って設けられている一対の対向した側板43を有している。底部41と側板43は垂直であり、前後方向の断面がコの字型になっている。毛髪材100aは、例えば完成するウィッグの毛の長さの約2倍の長さに切り揃えられ、奥行方向に交差する(例えば、毛髪材束100bを構成する毛髪材100aの大半が概ね奥行方向と直交する)ようにストッカ40の底部41上に配置される。なお、毛髪材100aの長さを、ストッカ40における底部41の前後方向の長さより長くして、一部がストッカ40から外側に突出するようにしてもよい。ただし、毛髪材100aのストッカ40から突出した部分が底部41より下方に垂れ下がらない程度であれば、引出鉤針30がストッカ40から毛髪材100aを捕捉して下方に引き出す際に、毛髪材100aのストッカ40から突出した部分が底部41の前後方向の端部で擦れて傷むことを防止することができるし、稼働する他の機構への巻き込みなども防止することができるため、好ましい。
【0017】
ストッカ40は、図2に示すように1つだけ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。また、図2では、1つのストッカ40から複数の引出鉤針30が毛髪材100aを引き出す場合を例示しているが、複数のストッカのそれぞれから当該ストッカに対応する1つの引出鉤針30が毛髪材100aを引き出すように構成してもよい。また、ストッカ40には、例えば異なる色の毛髪材100a、色が同じであって太さの異なる毛髪材100a、同じ色や同じ太さであっても硬さ(弾力)の異なる毛髪材100aなど、種類の異なる毛髪材100aが混合されて供給され、完成するウィッグにおける毛髪材100aの色や太さ或いは髪質が予め調整される。なお、ストッカ40に対して、単一の種類の毛髪材100aを供給してもよい。
【0018】
エキセン10は、植毛ネット200の植毛領域を確保する部材であり、奥行方向に延びる中心線を有する円柱状のネット掛部11と、ネット掛部11の側周面から内部に窪むように設けられて当該側周面に重なる開口を有する逃げ部12と、ネット掛部11の両端部に設けられて奥行方向に延びる中心線を有する軸部13とを備える。軸部13の中心線は、ネット掛部11の中心線とは一致しておらず、ネット掛部11の半径方向の外側に偏位しており、ネット掛部11の側周面上であって逃げ部12が設けられている部分(さらには当該部分の周方向の中央部分)に位置する。
【0019】
軸部13は、装置本体に設けられた図示されていない軸受部により、中心線が回転軸となるように回転可能に支持され、軸部13が自転することで、軸部13に連結されたネット掛部11が軸部13の中心線を軸として公転する。初期位置では、逃げ部12の開口は、図1に示すように前方を向いている。なお、軸部13の中心線は、逃げ部12の開口の周方向の中心に位置する一本の横糸202-1と重なっていてもよい。
【0020】
逃げ部12の開口幅(周方向の長さ)は、例えば、植毛ネット200がネット掛部11の外面に巻き掛けられて一本の横糸202-1が逃げ部12の開口の周方向の中心に位置した場合において、当該中心に位置する一本の横糸202-1の周方向に隣接する2本の横糸202-2及び202-3のうちの一本の横糸202-2が逃げ部12の開口の下方側の端部付近に位置し、別の一本の横糸202-3が逃げ部12の開口の上方側の端部付近に位置するように、植毛ネット200の網目を構成する横糸202の間隔に基づき決定してもよい。なお、図1では、逃げ部12の開口幅が横糸202-2と横糸202-3の幅よりも狭い場合を図示しているが、逃げ部12の開口幅が横糸202-2と横糸202-3の幅以上であってもよい。
【0021】
植毛鉤針20は、植毛ネット200に毛髪材100aを植毛する部材であり、先端のフック21と、フック21の針口を開閉するラッチ22とを備える。ラッチ22は、一端が植毛鉤針20に図示のされていない軸で回転可能に連結され、当該軸を中心として回転することにより、ラッチ22の他端がフック21に接して針口が閉じた状態と、ラッチ22の他端がフック21から離れて針口が開いた状態とが切り替えられる。初期位置では、図1に示すように、植毛鉤針20がエキセン10の前方に離れた位置であって、逃げ部12の開口と対向する位置にあり、ラッチ22は針口が開いた状態になっている。
【0022】
植毛鉤針20は、制御装置95で制御される駆動機構によって駆動され、毛髪材100aを植毛ネット200に結び付けて植毛する。また、植毛鉤針20は、図2に示した複数本の引出鉤針30と1対1で対応するように、複数本が奥行方向に整列している。複数本の植毛鉤針20の一群は、制御装置95で制御される駆動機構で一緒に動作して毛髪材100aを植毛ネット200に植毛する。なお、植毛鉤針20及び引出鉤針30のそれぞれは、1本であっても良い。
【0023】
引出鉤針30は、ストッカ40から毛髪材100aを捕捉する部材であり、先端に1本の毛髪材100aを捕捉可能なフック31が設けられる。初期位置では、図1に示すように、引出鉤針30がエキセン10の下方かつ反転ローラー80の上方に位置し、フック31の針口32が手前側に向いている。また、引出鉤針30は、図2に示すように、複数設けられているとともに奥行方向に整列している。複数本の引出鉤針30の一群は、制御装置95で制御される駆動機構により一緒に動作して毛髪材100aを捕捉する。なお、フック31は、2本または3本以上の複数本の毛髪材100aを捕捉可能であってもよいし、毛髪材100aを補足可能であればどのような大きさ、形状であってもよい。
【0024】
糸位置出しバー50は、引出鉤針30によってストッカ40から引き出される毛髪材100aを所定位置に誘導する部材である。図1及び図2に示すように、糸位置出しバー50は、全体的には奥行方向に延びる中心線を有する円柱状であり、外周面から中心線の側に窪む複数の糸ガイド51が外周面を一周するように設けられている。なお、糸位置出しバー50は、奥行方向の両端部が装置本体に対して固定されて設けられてもよいが、回転可能な状態で装置本体に支持されるようにすると、糸位置出しバー50が引出鉤針30でストッカ40から引き出される毛髪材100aで回転され、毛髪材100aが糸ガイド51で擦れて傷むことを防止することができる。糸ガイド51の個数は、引出鉤針30の個数と同数である。
【0025】
糸落としバー60は、制御装置95で制御される駆動機構で上下方向に振動するものであり、糸引込バー70によって引き込まれる毛髪材100aを払い落とす。糸引込バー70は、制御装置95で制御される駆動機構によって前後方向に移動するものであり、植毛ネット200に植毛された毛髪材100aを引っかけて前方に引き込む。磁石90は、植毛鉤針20で毛髪材100aを植毛ネット200に植毛する過程で閉じられたラッチ22を磁力で吸引して開けるものである。なお、磁石90は、永久磁石または電磁石のどちらでも適用可能であるが、電磁石であれば、電磁石を制御装置95で制御し閉じられたラッチ22を開くときだけ磁力を発生すればよく、植毛鉤針20と磁石90の相対的な位置関係を変更する必要がないから植毛鉤針20と磁石90を共通の駆動機構で駆動する構成として、駆動機構を簡略化することができる。反転ローラー80は、装置本体に対して回転可能に取り付けられている。
【0026】
次に、図2ないし図21を用いて自動植毛装置の動作について説明する。はじめに、図2に示すように、糸引込バー70が後方に向かって進み、図3におけるストッカ40の取出口42及び引出鉤針30を右側に超えた位置で停止する(第1動作)。
【0027】
次に、引出鉤針30が上昇し、フック31を含む先端部が取出口42からストッカ40内部に入り込み、さらに毛髪材束100bに挿入された後に下降して停止する(第2動作)。このとき、引出鉤針30は、先端部が取出口42に挿入された後、僅かに手前側(フック31の針口32が開口した側)に移動する。これにより、引出鉤針30のフック31に毛髪材100aが引っ掛けられるため、毛髪材100aがストッカ40の取出口42から2つ折りにされた状態で引き出される。このとき、図3に示すように、毛髪材100aの両端はストッカ40内に残っており、図5に示すように、2つ折りで引き出された複数本の毛髪材100aが1本ずつ糸位置出しバー50の複数の糸ガイド51のそれぞれに収容される。これにより、引き出された毛髪材100aのそれぞれが所定の位置に規制されるため、後の動作において植毛鉤針20が毛髪材100aを適切に捕捉することが可能になる。
【0028】
次に、図4に示すように、植毛鉤針20が後方に向かって進む(第3動作)。このとき、フック21が横糸202-1の下を通り、フック21の針口が逃げ部12内に収容されて破線で示す位置に到達する。次に、植毛鉤針20が破線で示した位置から実線で示した位置に後退し、フック21が横糸202-1を引っ掛ける(第4動作)。
【0029】
次に、図6に示すように、エキセン10の軸部13が、逃げ部12の開口が上方を向くように90度だけ回転し、ネット掛部11が軸部13の中心線を中心として破線で示した位置から実線で示した位置へと下方に旋回して停止する(第5動作)。これにより、エキセン10が植毛鉤針20及び横糸202-1の下側に移動する。このエキセン10の破線で示した位置から実線で示した位置への移動により、植毛鉤針20が、エキセン10の上方を通りストッカ40と引出鉤針30との間で2つ折りになった毛髪材100aへと到達することが可能になる。なお、エキセン10が軸部13を備えず、ネット掛部11の中心線を軸として回転する構成であってもよい。この場合、植毛鉤針20が、横糸202-1を引っ掛けた状態のまま、ネット掛部11の回転に追随して上方かつ後方に向かって平行移動するように構成すれば、上記と同様に植毛鉤針20がエキセン10の上方に位置することになる。
【0030】
次に、図7及び図8に示すように、植毛鉤針20が後方に向かって進むのに伴い、フック21がストッカ40と引出鉤針30との間で2つ折りになった毛髪材100aに近づく(第6動作)。このとき、横糸202-1は、開いたラッチ22の上側を通過することになり、最終的にラッチ22の全部を通過する。次に、フック21の針口が上を向いた状態から横向き(奥側を向いた状態)になるように植毛鉤針20が回転する(第7動作)。これにより、フック21の針口が、引出鉤針30によって引き出された毛髪材100aを向いた状態になる。
【0031】
次に、図9に示すように、植毛鉤針20が、フック21の針口を横向きのまま更に後方へ進み、引出鉤針30によって引き出された2つ折りの毛髪材100aのうち前方の部分(以下、毛髪材100aの「前方部分」という。)にフック21の針口が向き合うところで停止する(第8動作)。次に、引出鉤針30が手前側に移動する(第9動作)。これにより、毛髪材100aの前方部分が植毛鉤針20に近づき、フック21の針口に導入される。
【0032】
次に、図10に示すように、植毛鉤針20が、フック21の針口が横を向いた状態から上向きになるように回転するとともに、図11及び図12に示すように、前方に向かって進むことで、横糸202-1にラッチ22が接触してフック21の針口が閉じられ、さらに植毛鉤針20が実線で示した位置から破線で示した位置へと進むと、ラッチ22が磁石90の磁力で吸引され植毛鉤針20の針口が開かれる(第10動作)。このとき、植毛鉤針20が植毛ネット200から離れることで、毛髪材100aの前方部分がストッカ40から少しだけ引き出される。また、毛髪材100aは、取出口42の前方側から糸位置出しバー50を経由し横糸202-1と横糸202-2との間を通りフック21で折り返され、フック21から横糸202-1と横糸202-2との間を通り、横糸202-1と横糸202-3との間を通り引出鉤針30に至るように展開される。
【0033】
次に、図13に示すように、植毛鉤針20は、図11の破線で示した位置から後方に進むとともに上昇し、植毛鉤針20が毛髪材100aを横糸202-1に結ぶために回転する(第11動作)。これにより、毛髪材100aのフック21と横糸202-1との間の2本の部分が互いに絡むように撚り合わせられてループ部45が設けられる。なお、この第11動作において、植毛鉤針の上昇は省略可能であるが、この上昇を行うことにより、後述する第12動作の際に、フック21が毛髪材100aの糸位置出しバー50と横糸202-1との間の部分を確実に通るようになる。
【0034】
次に、図14に示すように、植毛鉤針20が、上向きのまま手前側に移動した後に後方に進み、引出鉤針30によって引き出された2つ折りの毛髪材100aのうち後方の部分(以下、毛髪材100aの「後方部分」という。)に対してフック21の針口が奥行方向に並ぶところで停止し、フック21の針口が上を向いた状態から横向き(奥側を向いた状態)になるように回転する(第12動作)。このとき、図15に示すように、植毛鉤針20のフック21は毛髪材100aの糸位置出しバー50と横糸202-1との間の部分を通り、ループ部45は植毛鉤針20のラッチ22の上側を通過する。また、植毛鉤針20の回転により、毛髪材100aの後半部分にフック21の針口が向いた状態になる。なお、植毛鉤針20の回転数は、1回転、2回転または3回転以上など、1回転以上であればどのような回転数でもよい。また、回転方向は、右回りであっても左回りであってもよい。
【0035】
次に、引出鉤針30が手前側に移動する(第13動作)。これにより、毛髪材100aの後方部分が植毛鉤針20に近づき、フック21の針口に導入される。なお、植毛鉤針20が奥側に移動してもよいし、引出鉤針30と植毛鉤針20の両方が互いに近づくように動いてもよい。
【0036】
次に、図16及び図17に示すように、植毛鉤針20が、フック21の針口が横を向いた状態から上向きになるように回転するとともに、前方に向かって進むことで、ループ部45にラッチ22が接触してフック21の針口が閉じられる(第14動作)。これにより、横糸202-1に対する毛髪材100aの結びつけ、つまり植毛が完了する。なお、植毛鉤針20のフック21が後退してループ部45を通過する際に、引出鉤針30が上下に小刻みに動くなどしてフック31から毛髪材100aを外してもよい。これにより、毛髪材100aが摩擦によって縮れてしまうピーリングを防止することができる。
【0037】
次に、図18及び図19に示すように、糸引込バー70が前方に進むことで毛髪材100aの前方部分を前方に引き込み、初期位置で停止する(第15動作)。
【0038】
さらに、図20に示すように、第16動作から第18動作を行う。まず、植毛鉤針20が初期位置に戻って停止する間にラッチ22が磁石90の磁力で吸引され植毛鉤針20の針口が開かれる(第16動作)。エキセン10が、軸部13の中心線を軸として図6に実線で示した位置から図6に示した破線で示した位置の側に戻るように旋回する(第17動作)。これにより、逃げ部12の開口が左側に向けられた初期位置に戻る。糸落としバー60が、下方に移動した後、上方に移動して初期位置で停止する(第18動作)。これにより、横糸202-1に対する植毛の完了した毛髪材100aが下方に整髪される。なお、第16動作から第18動作のいずれから先に行っても良く、第16動作から第18動作を同時に行っても良い。
【0039】
以上の動作により、自動植毛装置120における横糸202-1に対する毛髪材100aを植毛する動作の1サイクルが終了し、図21に示す結び目が作成される。なお、図21は、第11動作において、植毛鉤針20が3回転し、毛髪材100aが3回撚り合わせられて植毛ネット200に結び付けられた状態を図示している。
【0040】
なお、上述の動作例では、植毛鉤針20のフック21が、第8動作及び第9動作において毛髪材100aの前方部分をとり、第12動作及び第13動作において毛髪材100aの後方部分をとっているが、それぞれの動作において前方部分及び後方部分のどちらを取っても、第12動作において植毛鉤針20を1回転以上させれば、毛髪材100aを横糸に結び付けることが可能である。また、第12動作において植毛鉤針20を半回転しかしない場合であっても、第12動作及び第13動作において、この半回転によって下側となった方を植毛鉤針20のフック21でとれば、毛髪材100aを横糸に結び付けることが可能である。
【0041】
<<毛髪材に帯電した静電気を除電するための構成>>
以下、毛髪材100aに帯電した静電気を除電するための構成について説明する。
【0042】
<第1実施形態>
第1実施形態では、自動植毛装置120は、付勢部及び除電部を兼ねる部材として突起部401と、第1往復運動機構401aと、第2往復運動機構401bとを備える。図22A図25は、第1実施形態の第1例の構成を示す斜視図である。なお、図22A図25は、付勢部であるは突起部401の動きを時系列に沿って示したものであり、図22A図23図24図25の順番で突起部401が動く。
【0043】
図22Aに例示する突起部401は、櫛の歯のような形状になっており、複数の突起部401(本例では3つ)が連結されている。突起部401は、底部41から遠い位置ほど取出口42から離れるように傾斜している。また、本例では、取出口42を挟んで対向するように突起部401が設けられている。突起部401は、少なくとも毛髪材100aと接触する部分が導体により構成されている。例えば、突起部401は、金属材料により構成されている。また、突起部401は、第1往復運動機構401aに取り付けられている。また、第1往復運動機構401aは、第2往復運動機構401bに取り付けられている。そして、突起部401は、第1往復運動機構401a及び第2往復運動機構401bと電気的に接続されている。また、第2往復運動機構401bは、アース線110を介して、接地されている(グラウンド(GND)に接続されている)。また、ストッカ40は、導体(例えば、金属材料)により構成されている。また、ストッカ40は、アース線110を介して、接地されている。これにより、突起部401、第1往復運動機構401a、第2往復運動機構401b、及びストッカ40は、接地電位を有する。
【0044】
図22Bに示すように、エキセン10、植毛鉤針20、引出鉤針30、糸位置出しバー50、糸落としバー60、糸引込バー70、及び反転ローラー80の各々は、少なくとも表面が導体(例えば、金属材料)により構成されており、当該導体は接地されている。これにより、エキセン10、植毛鉤針20、引出鉤針30、糸位置出しバー50、糸落としバー60、糸引込バー70、及び反転ローラー80によって、毛髪材100aが搬送される際に、これらの部材が毛髪材100aに接触する。この結果、エキセン10、植毛鉤針20、引出鉤針30、糸位置出しバー50、糸落としバー60、糸引込バー70、及び反転ローラー80のいずれかを介して、毛髪材100aに帯電した静電気が除電される。
【0045】
次に、図23に示すように、突起部401が傾斜方向に沿って直進して、その先端が毛髪材束に挿入される。このとき、突起部401は、例えばエアシリンダなどの第1往復運動機構401aによって駆動されることで直進する。また、突起部401は、傾斜方向に沿って直進しているため、直進の前後で傾斜は変わらない。第1往復運動機構401aは、例えば上記の制御装置95によって動作が制御される。この時、毛髪材100aに突起部401が接触することにより、毛髪材100aに静電気が帯電している場合でも、突起部401によって除電される。また、ストッカ40に接触する毛髪材100aの静電気は、ストッカ40により除電される。この場合、ストッカ40は、除電部として機能する。
【0046】
次に、図24に示すように、突起部401は、図22A及び図23と同じ傾斜を保ったまま、取出口42から離れる方向に進行する。これにより、突起部401の先端が毛髪材100aに沿って進行するため、毛髪材100aに対して取出口42から離れる方向の力(毛髪材100aのたわみを緩和する力)を加えることができる。このとき、突起部401は、例えばラックアンドピニオンなどの第2往復運動機構401bによって駆動されることで、取出口42から離れる方向に進行する。第2往復運動機構401bは、突起部401だけでなく第1往復運動機構401aも併せて駆動する。また、第2往復運動機構401bは、例えば上記の制御装置95によって動作が制御される。
【0047】
次に、図25に示すように、突起部401は、図22Aないし図24と同じ傾斜を保ったまま、傾斜方向に沿って後退して毛髪材束100bから抜去される。このとき、突起部401は、第1往復運動機構401aによって駆動されることで後退する。上記のように、第1実施形態では、毛髪材100aの静電気が除電されるので、植毛の不良を防止することができ、静電気に起因する自動植毛装置120内の電子機器に悪影響を防止することができる。
【0048】
第1実施形態の第2例について図面を参照して説明する。図26及び図27は、第1実施形態の第2例の構成を示す斜視図である。なお、図26では、付勢部であるローラー402の回転方向を破線で示しており、図27ではローラー402に加えて毛髪材100aも図示している。
【0049】
図26及び図27に示すように、本例では、付勢部としてローラー402が設けられている。また、ローラー402は、自転による搬送方向が取出口42から離れる方向になっている。これにより、ローラー402の回転によって毛髪材100aに対して取出口42から離れる方向の力(毛髪材のたわみを緩和する力)を加えることができる。また、ローラー402は、接地されているストッカ40に電気的に接続されている。これにより、ローラー402は、接地電位を有する。これにより、ローラー402に接触する毛髪材100aの静電気が除電される。
【0050】
ローラー402は、例えばモーターなどによって駆動され、当該モーターは制御装置95によって動作が制御される。また、本例では、取出口42を挟んで対向するようにローラー402が設けられており、これらのローラー402は同時に回転する。なお、図26及び図27では、ローラー402がストッカ40の底部41に設けられる場合について例示しているが、ローラー402は、側板43に設けられていてもよいし、底部41と対向する位置(毛髪材100aの上方)に設けられてもよい。
【0051】
以上のように、毛髪材100aに対して取出口から離れる方向の成分を含む力を加える付勢部(突起部401、ローラー402)を備えると、毛髪材100aは取出口から離れる方向に引っ張られる。そうすると、毛髪材100aの取出口42付近におけるたわみが引き伸ばされ、当該たわみが緩和される。これにより、引出鉤針30が取出口42において毛髪材を安定して捕捉することができるようになるため、安定して植毛することが可能になる。
【0052】
上記の例では、突起部401及びローラー402のいずれも、取出口42を挟んで対向するように設けられる場合について説明したが、取出口42の片側だけに設けられてもよい。この場合、毛髪材束100bの全体が動き得るが、毛髪材100aのたわみを緩和することは可能である。また、毛髪材100aの取出口42付近におけるたわみは、毛髪材束100bの全体が動くことで取出口42からずれた位置に移動し、これによっても当該たわみは解消される。なお、突起部401やローラー402を、取出口42を挟んで対向するように設けた場合であっても、片側だけ駆動した場合は、これらを片側だけ設けた場合と同様の効果が得られるし、片側と反対側を交互に駆動すれば、毛髪材束100bが取出口42を挟んで往復するため、毛髪材束100bの位置が大きく変動することを抑制することができる。
【0053】
一方、上記の例のように、突起部401やローラー402を、取出口42を挟んで対向するように設けるとともに、これらを同時に駆動すると、毛髪材100aが両端側に引っ張られるため、毛髪材100aのたわみを効果的に緩和することができる。なお、突起部401やローラー402は、常に同期して駆動させる必要はなく、同時に駆動するタイミングがあればこの効果が得られる。
【0054】
また、取出口42を挟んで対向するように設けられる機構は、異なるものであってもよい。例えば、図28ないし図31に示すように、取出口42の片側に突起部401を設け、反対側に、毛髪材束100bを底部41に押さえ付けて移動を規制する制止部403を設けてもよい。制止部403は、突起部401の先端が毛髪材束100bに挿入されている状態、すなわち突起部401が毛髪材束100bに対して取出口42から離れる方向の成分を含む力を加え得る状態になる場合に、毛髪材束100bを底部41に押さえ付けてその移動を規制する。なお、制止部403は、例えばエアシリンダなどの往復運動機構403aによって駆動され、当該往復運動機構403aは例えば上記の制御装置95によって動作が制御される。また、図28ないし図31では突起部401と制止部403とを組み合わせた場合について例示したが、ローラー402と制止部403を組み合わせることも可能である。また、制止部403及び往復運動機構403aは、接地されている。これにより、制止部403に接触する毛髪材100aの静電気が除電される。
【0055】
また、第1例において、突起部401が傾斜しておらず、底部41に対して垂直であってもよい。ただし、突起部401が上記のように傾斜していると、突起部401が毛髪材100aに対して、取出口42から離れる方向の成分だけでなく、下方向の成分を有する力を加えることができるため、毛髪材100aの取出口42付近における上方へのたわみを効果的に緩和することができる。また、突起部401の傾斜が変わらない構成の場合、第1往復運動機構401aと第2往復運動機構401bのみを備える簡素な機構で、突起部401に図22Aないし図25の一連の動作をさせることができる。
【0056】
また、第1例において、突起部401の先端が毛髪材束100bに挿入され、次いで突起部401が取出口42から離れる方向に進行し、次いで突起部401の先端が毛髪材束100bから抜去されると、毛髪材100aに対してたわみを回復させる力(取出口42に近づく方向の成分を有する力)を与えることなく、たわみを緩和する力のみを与えることができる。
【0057】
<第2実施形態>
図32図34を参照して、第2実施形態による自動植毛装置300の構成について説明する。第2実施形態では、第1実施形態の構成に加えて、イオナイザ311、312、313及び314を含む除電部310が設けられている。図32は、第2実施形態による自動植毛装置300のイオナイザ311の配置位置を示す断面図である。図33は、イオナイザ312の配置位置を示す図である。図34は、イオナイザ313の配置位置を示す図である。図35は、イオナイザ314の配置位置を示す図である。なお、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
図32に示すように、自動植毛装置300は、除電部310を含む。図32図35に示すように、除電部310は、イオナイザ311~314を含む。イオナイザ311~314は、それぞれ複数設けられている。なお、図33図35では、イオナイザ312、313314を、それぞれ、1つずつ図示しているが、イオナイザ312、313、及び314は、それぞれ、奥行方向に等間隔で複数設けられている。イオナイザ311~314は、例えば、内部でコロナ放電を生じさて正イオン及び負イオンを生じさせ、当該正イオン及び当該負イオンを毛髪材100aに放射する。すなわち、第2実施形態では、イオナイザ311~314は、AC方式のイオナイザである。毛髪材100aが負の電荷が帯電している場合、正イオンが毛髪材100aに引き寄せられて吸着し、毛髪材100aの静電気は中和(除電)される。また、毛髪材100aが正の電荷が帯電している場合、負イオンが毛髪材100aに引き寄せさられて吸着し、毛髪材100aの静電気は中和(除電)される。
【0059】
図32に示すように、複数のイオナイザ311は、例えば、ストッカ40の上方に配置された棒状の支持部材311aの下面に等間隔で配置されている。そして、イオナイザ311は、ストッカ40内に配置された複数の毛髪材100aに上方から正イオン及び負イオンを放射する。これにより、ストッカ40内に収容された複数の毛髪材100aに帯電した静電気が除電される。
【0060】
また、図33に示すように、イオナイザ312は、ストッカ40と引出鉤針30との間の高さ位置で、かつ、引出鉤針30よりも後方に配置されている。そして、イオナイザ312は、引出鉤針30により引き出された毛髪材100aの後方から当該毛髪材100aに正イオン及び負イオンを放射する。これにより、引出鉤針30により引き出された毛髪材100aに帯電した静電気が除電される。また、イオナイザ312は、例えば、ストッカ40と引出鉤針30との間に毛髪材100aが配置されている期間中に、正イオン及び負イオンを放射し、ストッカ40と引出鉤針30との間に毛髪材100aが配置されていない期間中は、正イオン及び負イオンの放射を停止する。
【0061】
また、図34に示すように、イオナイザ313は、エキセン10の上方に配置されている。そして、イオナイザ313は、植毛鉤針20により植毛中の毛髪材100aに対して上方から正イオン及び負イオンを放射する。これにより、植毛鉤針20により植毛中の毛髪材100aに帯電した静電気が除電される。
【0062】
また、図35に示すように、イオナイザ314は、植毛鉤針20の下方に配置されている。そして、イオナイザ314は、植毛ネット200に植毛された毛髪材100aに対して、前方から正イオン及び負イオンを放射する。これにより、植毛ネット200に植毛された毛髪材100aに帯電した静電気が除電される。第2実施形態では、イオナイザ311~314が、毛髪材100aに直接接触することなく、毛髪材100aに帯電した静電気を除電することができる。その他の第2実施形態による構成、及び効果は、第1実施形態による構成、及び効果と同様である。
【0063】
[変形例]
以上、上述した実施形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。よって、本開示は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0064】
(1)上記第1及び第2実施形態では、エキセン10、植毛鉤針20、引出鉤針30、ストッカ40、糸位置出しバー50、糸落としバー60、糸引込バー70、及び反転ローラー80を、接地する例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、上記第1実施形態において、突起部401により毛髪材100aの静電気を十分に除電できる場合は、エキセン10、植毛鉤針20、引出鉤針30、ストッカ40、糸位置出しバー50、糸落としバー60、糸引込バー70、及び反転ローラー80の少なくとも一部が接地されていなくてもよい。また、上記第2実施形態において、イオナイザ311~314により毛髪材100aの静電気を十分に除電できる場合は、エキセン10、植毛鉤針20、引出鉤針30、ストッカ40、糸位置出しバー50、糸落としバー60、糸引込バー70、及び反転ローラー80の少なくとも一部が接地されていなくてもよい。
【0065】
(2)上記第2実施形態では、イオナイザ311~314を設ける例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、イオナイザ311~314の少なくとも一部のみが自動植毛装置300に配置されていてもよい。
【0066】
(3)上記第2実施形態では、イオナイザ311~314を、正イオン及び負イオンの両方を放射するように構成する例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、毛髪材100aが、正の電荷を帯電しやすい材料により構成されている場合には、イオナイザ311~314は、負イオンのみを放射してもよいし、毛髪材100aが、負の電荷を帯電しやすい材料により構成されている場合には、イオナイザ311~314は、正イオンのみを放射してもよい。すなわち、イオナイザ311~314は、第2実施形態に示したようにAC方式によりイオンを発生させるように構成されてもよいし、DC方式によりイオンを発生させるように構成されてもよい。
【0067】
(4)上記第2実施形態では、イオナイザ311~314を、コロナ放電によりイオンを発生させるように構成する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、イオナイザとして、軟X線照射を利用し特定エリアの空気をイオン化させることで静電気を除去するイオナイザを用いてもよいし、コロナ放電以外の放電(グロー放電式、プラズマ式)を用いてイオンを発生させるイオナイザを用いてもよい。
【0068】
(5)上記第2実施形態では、図32に示すように、イオナイザ311として、棒状の支持部材311aに複数のイオン発生源(イオナイザ311)を設けるバータイプを採用する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、本開示では、イオナイザとして、ファンを用いて正イオン及び負イオンを毛髪材100aに吹き付けるファンタイプ、ノズル先端から正イオン及び負イオンを毛髪材100aに吹き付けるノズルタイプ等、バータイプ以外のタイプのいずれも採用可能である。
【0069】
また、上述した自動植毛装置は、以下のように説明することができる。
【0070】
第1の構成に係る自動植毛装置は、植毛対象物に毛髪材を植毛する植毛機構部と、毛髪材に帯電した静電気を除電する、除電部と、を備える(第1の構成)。
【0071】
上記第1の構成によれば、毛髪材に静電気が帯電した場合でも、除電部により毛髪材に帯電する静電気を除電することができる。この結果、植毛の不良を防止することができ、静電気に起因する自動植毛装置内の電子機器に悪影響を防止することができる。
【0072】
第1の構成において、毛髪材が収容されるストッカを、さらに備えてもよく、除電部は、ストッカに収容された毛髪材に帯電した静電気を除電するように構成されてもよい(第2の構成)。
【0073】
ここで、ストッカ内では毛髪材が別の毛髪材と摩擦することによって静電気が生じやすいので、上記第2の構成によれば、静電気が生じやすいストッカ内の毛髪材の静電気を除電することができる。
【0074】
第2の構成において、ストッカは、接地電位を有するように構成されてもよい(第3の構成)。
【0075】
上記第3の構成によれば、ストッカに配置された毛髪材の静電気を容易に除電することができる。
【0076】
第2または第3の構成において、ストッカは、底部に取出口を有してもよく、毛髪材は、当該取出口を跨いで底部上に配置されていてもよく、除電部は、ストッカの底部上に配置される毛髪材に対して、取出口から離れる方向の成分を含む力を加える付勢部を含んでもよく、付勢部のうちの少なくとも毛髪材に接触する部分は、接地電位を有する導体を含んでもよい(第4の構成)。
【0077】
上記第4の構成によれば、付勢部によって取出口から離れる方向に毛髪材が引っ張られるので、毛髪材のたわみを解消することができる。そして、毛髪材に接触する付勢部が接地電位を有するので、当該付勢部により毛髪材を除電することができる。
【0078】
第1~第4の構成のいずれか1つにおいて、除電部は、毛髪材に正イオン及び負イオンの少なくとも一方を放射するイオナイザを含んでもよい(第5の構成)。
【0079】
上記第5の構成によれば、除電部が毛髪材に接触することなく、毛髪材に帯電した静電気を除電することができる。
【0080】
第1~第5の構成のいずれか1つにおいて、除電部は、植毛対象物に植毛された毛髪材に帯電した静電気を除電するように構成されてもよい(第6の構成)。
【0081】
上記第6の構成によれば、毛髪材が植毛される際に生じた静電気を、植毛後に除電することができる。
【0082】
第1~第6の構成のいずれか1つにおいて、除電部は、植毛対象物に植毛される毛髪材を移動させる搬送部材を含み、搬送部材は、接地電位を有する導体を含むように構成されてもよい(第7の構成)。
【0083】
上記第7の構成によれば、毛髪材を移動させる際に、毛髪材に帯電した静電気を除電することができる。
【符号の説明】
【0084】
10…エキセン、20…植毛鉤針、30…引出鉤針、40…ストッカ、41…底部、42…取出口、50…糸位置出しバー、51…糸ガイド、60…糸落としバー、70…糸引込バー、80…反転ローラー、100a…毛髪材、100b…毛髪材束、110…アース線、120,300…自動植毛装置、200…植毛ネット、310…除電部、311~314…イオナイザ、401…突起部、401a…第1往復運動機構、401b…第2往復運動機構、402…ローラー、403…制止部、403a…往復運動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22A
図22B
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35