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▶ 株式会社カネカの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141178
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】自動植毛装置
(51)【国際特許分類】
   A41G 3/00 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
A41G3/00 H
A41G3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047364
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【弁理士】
【氏名又は名称】三品 明生
(74)【代理人】
【識別番号】100217364
【弁理士】
【氏名又は名称】田端 豊
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 直人
(72)【発明者】
【氏名】日月 快
(72)【発明者】
【氏名】井上 健太
(72)【発明者】
【氏名】小田 晶美
(57)【要約】
【課題】植毛対象物に植毛される毛髪材、又は植毛対象物に植毛された毛髪材の長さを変更することが可能な自動植毛装置を提供する。
【解決手段】自動植毛装置120は、植毛対象物に複数の毛髪材100aを植毛する植毛機構部と、複数の毛髪材100aの少なくとも1つを切断する切断部150と、を備える。植毛機構部は、引出鉤針から引き出された毛髪材100aを捕捉し、植毛対象物に植毛する植毛鉤針と、を含む。切断部150は、植毛鉤針により捕捉された毛髪材100aを切断する。
【選択図】図38
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植毛対象物に複数の毛髪材を植毛する植毛機構部と、
前記複数の毛髪材の少なくとも1つを切断する切断部と、を備える、自動植毛装置。
【請求項2】
前記植毛機構部は、
取出口を有し、当該取出口を跨ぐように複数の毛髪材が配置されるストッカと、
前記取出口から前記複数の毛髪材のうちの一部の毛髪材を引き出す引出鉤針と、
前記引出鉤針から引き出された毛髪材を捕捉し、前記植毛対象物に植毛する植毛鉤針と、を含み、
前記切断部は、前記植毛鉤針により捕捉された毛髪材を切断する、請求項1に記載の自動植毛装置。
【請求項3】
前記切断部は、前記複数の毛髪材の少なくとも1つを切断する刃部を含む、請求項1または2に記載の自動植毛装置。
【請求項4】
前記刃部は、前記複数の毛髪材の少なくとも1つを挟んで切断する一対の刃を含む、請求項3に記載の自動植毛装置。
【請求項5】
前記切断部は、前記複数の毛髪材の少なくとも1つを加熱して溶断する加熱部を含む、請求項1または2に記載の自動植毛装置。
【請求項6】
前記加熱部は、前記複数の毛髪材の少なくとも1つに加熱された部材を接触させて前記複数の毛髪材の少なくとも1つを溶断する、請求項5に記載の自動植毛装置。
【請求項7】
前記加熱部は、前記複数の毛髪材の少なくとも1つにレーザを照射して前記複数の毛髪材の少なくとも1つを溶断する、請求項5に記載の自動植毛装置。
【請求項8】
前記切断部を移動させる切断部移動機構部と、
前記切断部移動機構部により前記切断部を移動させて、切断後の毛髪材の長さを制御する切断制御部とを、さらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の自動植毛装置。
【請求項9】
前記切断制御部は、複数の座標の各々における植毛された毛髪材の長さ、又は、複数の領域における植毛された毛髪材の長さを含む毛髪材長さデータに基づいて、前記切断部移動機構部の制御を行う、請求項8に記載の自動植毛装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動植毛装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植毛ネットに毛髪材を結び付けて植毛する自動植毛装置が知られている。このような自動植毛装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の自動植毛装置は、複数の毛髪材が収容されるストッカと、植毛ネットが展開されたエキセンと、第1鉤針と、第2鉤針とを備える。第2鉤針は、ストッカの取出口から毛髪材を引き出す。そして、第1鉤針は、引き出された毛髪材を捕捉し、当該毛髪材をエキセンに展開された植毛ネットに結び付けて植毛する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6533350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、植毛ネットに複数の毛髪材が植毛されたものである植毛完成品(例えば、ウィッグまたはかつら)は、植毛された複数の毛髪材の長さがある程度、ばらつきを有していることが望ましい。しかしながら、上記特許文献1の自動植毛装置により製造された植毛完成品(例えば、ウィッグまたはかつら)では、植毛された複数の毛髪材の長さがほぼ均一になってしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、植毛対象物に植毛される毛髪材、又は植毛対象物に植毛された毛髪材の長さを変更することが可能な自動植毛装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、以下に開示する自動植毛装置は、植毛対象物に複数の毛髪材を植毛する植毛機構部と、前記複数の毛髪材の少なくとも1つを切断する切断部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、複数の毛髪材の少なくとも1つを切断することができるので、植毛対象物に植毛される毛髪材、又は植毛対象物に植毛された毛髪材の長さを変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態における自動植毛システム100の構成を示すブロック図である。
図2図2は、情報処理装置110の制御部111の機能ブロック図である。
図3図3は、自動植毛装置120の制御部122の機能ブロック図である。
図4図4は、植毛パターン入力画面の例を示す図である。
図5図5は、植毛パターン画像P1の例(入力前)を示す図である。
図6図6は、植毛パターン画像P1の例(入力後)を示す図である。
図7A図7Aは、植毛パターンデータ113aを説明するための図である。
図7B図7Bは、植毛パターンデータ113aを説明するための図である。
図8A図8Aは、植毛パターン入力画面の表示用の植毛パターンデータ113aの例を示す図である。
図8B図8Bは、シーケンスプログラム123aにより読み取られる際の植毛パターンデータ113aの例を示す図である。
図9図9は、自動植毛装置120の構造を奥行方向に見た模式図である。
図10図10は、自動植毛装置120の構造を後方から見た模式図である。
図11図11は、自動植毛装置120の第1動作から第4動作を示す図であって、自動植毛装置120の構造を奥行方向に見た模式図である。
図12図12は、図11の一部を拡大した拡大図である。
図13図13は、自動植毛装置120の第1動作から第4動作を示す図であって、自動植毛装置120の構造を後方から見た模式図である。
図14図14は、自動植毛装置120の第5動作を示す図である。
図15図15は、自動植毛装置120の第6動作及び第7動作を示す図である。
図16図16は、図15の一部を拡大した拡大図である。
図17図17は、自動植毛装置120の第8動作及び第9動作を示す図である。
図18図18は、図17の一部を拡大した拡大図である。
図19図19は、自動植毛装置120の第10動作を示す図である。
図20図20は、図19の一部を拡大した拡大図である。
図21図21は、自動植毛装置120の第11動作を示す図である。
図22図22は、自動植毛装置120の第12動作及び第13動作を示す図である。
図23図23は、図22の一部を拡大した拡大図である。
図24図24は、自動植毛装置120の第14動作を示す図である。
図25図25は、図24の一部を拡大した拡大図である。
図26図26は、自動植毛装置120の第15動作を示す図である。
図27図27は、図26の一部を拡大した拡大図である。
図28図28は、自動植毛装置120の第16動作から第18動作を示す図である。
図29A図29Aは、引出鉤針30側から見た結び目100cを示す図である。
図29B図29Bは、植毛鉤針20側から見た結び目100cを示す図である。
図30図30は、植毛パターンデータ113aと自動植毛装置120の動作との関係を説明するための図であって、自動植毛装置120の初期状態を示す図である。
図31図31は、植毛パターンデータ113aと自動植毛装置120の動作との関係を説明するための図であって、自動植毛装置120の第4動作を終了した時点を示す図である。
図32図32は、植毛パターンデータ113aの毛髪材100aの種類に基づく自動植毛装置120の動作を説明するための図(1)である。
図33図33は、植毛パターンデータ113aの毛髪材100aの種類に基づく自動植毛装置120の動作を説明するための図(2)である。
図34図34は、植毛パターンデータ113aの毛髪材100aの種類に基づく自動植毛装置120の動作を説明するための図(3)である。
図35図35は、植毛パターンデータ113aの毛髪材100aの本数に基づく自動植毛装置120の動作を説明するための図である。
図36図36は、切断部150が初期位置に位置する状態の自動植毛装置120を示す図である。
図37図37は、切断部150が毛髪材100aを切断する様子を奥行方向に見た図である。
図38図38は、切断部150及び切断部移動機構部160を後方に向かって見た図である。
図39図39は、切断部150が毛髪材100aを切断する様子を後方に向かって見た図である。
図40図40は、第2実施形態における自動植毛システム300の構成を示す図である。
図41図41は、第3実施形態の第1例における自動植毛システム400の構成を示す図である。
図42図42は、第3実施形態の第2例における自動植毛システム500の構成を示す図である。
図43図43は、第4実施形態の自動植毛システム600の構成を示す図である。
図44図44は、第5実施形態の自動植毛システム700の構成を示す図(1)である。
図45図45は、第5実施形態の自動植毛システム700の構成を示す図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。また、以下の説明において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、実施形態および変形例に記載された各構成は、適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。また、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。
【0011】
[自動植毛システムの全体構成]
図1は、第1実施形態における自動植毛システム100の構成を示すブロック図である。自動植毛システム100は、植毛ネット200(図9参照)に毛髪材100a(図9参照)を植毛して、かつら又はウィッグを作成するためのシステムである。自動植毛システム100は、情報処理装置110と、自動植毛装置120とを含む。
【0012】
情報処理装置110は、植毛ネット200に毛髪材100aを植毛するための植毛パターンデータ113aを作成するための装置である。なお、本実施形態では、自動植毛装置120は、情報処理装置110と同様に植毛パターンデータ113aを作成可能に構成されている。情報処理装置110は、例えば、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、またはタブレット端末として構成されている。「植毛パターン」とは、植毛ネット200上に毛髪材100aが形成される領域の形状及び寸法、当該領域における毛髪材100aの密度、分け目、生え際、毛髪材100aの本数、毛髪材100aの結び方、及び毛髪材100aの種類等の情報を含む植毛の設計内容(デザイン)を意味する。
【0013】
図1に示すように、情報処理装置110は、制御部111、表示部112、記憶部113、操作部114、及び通信部115を含む。制御部111は、図示しないオペレーションプログラムとパターンデータ生成プログラム113bとを実行することにより制御処理を実行するプロセッサを含む。表示部112は、制御部111による指令に応じて画像を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイを含む。記憶部113は、SSD(Solid State Drive)又はHDD(Hard Disk Drive)の少なくとも一方を含む。そして、記憶部113には、植毛パターンデータ113aと、パターンデータ生成プログラム113bと、変換プログラム113cとが記憶されている。操作部114は、キーボード、マウス、タッチパネル等のユーザインタフェースである。また、表示部112がタッチパネルとして構成されている場合には、当該タッチパネルが操作部114と表示部112とを兼ねてもよい。通信部115は、通信インターフェイスであり、ネットワークを介して自動植毛装置120に接続されている。ネットワークは、例えば、インターネット、及びLAN(Local Area Network)である。なお、通信部115は、ネットワークを介さずに、直接的に有線又は無線により自動植毛装置120に接続されてもよい。なお、パターンデータ生成プログラム113bと、変換プログラム113cとは、アプリケーションプログラムである。図1では、パターンデータ生成プログラム113bと変換プログラム113cとを、別個に図示しているが、一体的に構成されたプログラムであってもよい。
【0014】
また、図1に示すように、自動植毛装置120は、植毛機構部121、制御部122、記憶部123、操作部124、通信部125、及び表示部126を含む。植毛機構部121の構成及び動作は、図9図28を参照して後述する。制御部122は、図示しないオペレーションプログラムと、シーケンスプログラム123aと、パターンデータ生成プログラム113bと、変換プログラム113cと、を実行することにより制御処理を実行するプロセッサを含む。例えば、制御部122は、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)として構成されていてもよい。記憶部123は、SSD(Solid State Drive)又はHDD(Hard Disk Drive)の少なくとも一方を含む。そして、記憶部123には、シーケンスプログラム123aと、植毛パターンデータ113aと、パターンデータ生成プログラム113bと、変換プログラム113cとが記憶されている。操作部124は、キーボード、マウス、タッチパネル等のユーザインタフェースである。また、表示部126がタッチパネルとして構成されている場合には、当該タッチパネルが操作部124と表示部126とを兼ねてもよい。通信部125は、通信インターフェイスであり、ネットワークを介して情報処理装置110に接続されている。ネットワークは、インターネット、及びLAN(Local Area Network)である。なお、通信部125は、ネットワークを介さずに、直接的に有線又は無線により情報処理装置110に接続されてもよい。
【0015】
図2は、情報処理装置110の制御部111の機能ブロック図である。図3は、自動植毛装置120の制御部122の機能ブロック図である。図2に示すように、制御部111は、パターンデータ生成部111aと表示制御部111bと変換制御部111cとを含む。図3に示すように、制御部122は、植毛制御部122aと表示制御部122bとパターンデータ生成部111aと変換制御部111cとを含む。制御部122のパターンデータ生成部111aと変換制御部111cとは、制御部122のパターンデータ生成部111aと変換制御部111cとそれぞれ同一の機能を有するため、同一の符号付して説明を省略する。なお、図2及び図3では、制御部111及び122の構成を機能ブロックとして記載しているが、各機能ごとに別個のハードウェアを構成してもよい。
【0016】
パターンデータ生成部111aは、ユーザによる入力操作又は選択操作に基づいて植毛パターンデータ113aを作成する。表示制御部111bは、表示部112に表示するための画像を生成し、表示部112に画像を表示させる制御を行う。例えば、表示制御部111bは、図4に示す植毛パターン入力画面を、表示部112に表示させる。また、表示制御部122bは、図4に示す植毛パターン入力画面を、表示部126に表示させる。
【0017】
(植毛パターン入力画面)
図4は、本実施形態による表示部112に表示される植毛パターン入力画面の一例を示す図である。植毛パターン入力画面は、植毛パターン画像P1、植毛パターンの形状の入力欄P2、植毛パターンの寸法の入力欄P3、ピッチの入力欄P4、髪の種類の入力欄P5、1つの座標当たりの髪の本数の入力欄P6、結び方の選択欄P7、毛髪材100aの長さの入力欄P8及び保存ボタンP9を含む。なお、自動植毛装置120において、植毛パターンデータ113aを作成する場合には、表示部126に図4に示す植毛パターン入力画面が表示される。なお、制御部111又は122がパターンデータ生成プログラム113bを実行することにより、パターンデータ生成部111aによって、図4図6に示す植毛パターン入力画面における制御処理が行われる。
【0018】
図5は、植毛パターン画像P1の入力前の状態を示す画像の例を示す図である。植毛パターン画像P1は、複数の座標の各々における植毛の有無が識別可能に表示される画像である。例えば、植毛パターン画像P1は、X方向(奥行方向)及びY方向(前後方向)の2次元のマップ状の画像であり、各座標がマス目として表示されている。複数の座標の各々は、植毛ネット200における複数の毛髪材100aが結ばれる各々の結び目100c(図29A及び図29B参照)の位置に一致している。
【0019】
図6は、植毛パターン画像P1の入力後の状態を示す画像の例を示す図である。図6に示すように、例えば、植毛される座標と植毛されない座標とは、各マス目内の色、印(〇、×、又はチェックマーク)、点滅、点灯・消灯等の表示方法を異ならせることにより、識別可能に表示される。例えば、植毛される座標は、黒色で表示され、植毛されない座標は、白色で表示される。
【0020】
そして、任意の座標に対して、ユーザが入力操作を行った場合(例えば、画面にタッチした場合)、表示制御部111bは、当該座標が「植毛される座標」である場合には、「植毛されない座標」に表示を切り替え、当該座標が「植毛されない座標」である場合には、表示制御部111bは、「植毛される座標」に表示を切り替える。これにより、ユーザは、複数の座標のうちの各座標に対して、植毛の有無を選択することができる。
【0021】
また、図6に示すように、表示部112(又は表示部126)には、植毛パターン画像P1と共に、分け目設定領域P10と、生え際設定領域P11とが表示される。例えば、ユーザによって、分け目設定領域P10の位置(例えば、矢印の先端の位置)が選択されると、パターンデータ生成部111aは、選択された座標から紙面下方の座標を植毛されない座標に設定し、当該植毛されない座標の紙面左右方向の座標の一部が植毛されない座標に設定する。これにより、植毛ネット200に植毛が行われた際に、植毛ネット200上に分け目が形成されたウィッグ又はかつらが作成される。また、ユーザにより生え際設定領域P11の範囲が選択されると、パターンデータ生成部111aは、選択された範囲内において、植毛される座標の割合を低下させる(例えば、植毛される座標と植毛されない座標とをほぼ1…1に設定する)。そして、パターンデータ生成部111aは、選択された範囲内において、紙面左右方向の両端及び両端近傍部分を、植毛されない座標に設定する。これにより、植毛ネット200に植毛が行われた際に、植毛ネット200上に生え際が形成されたウィッグ又はかつらが作成される。
【0022】
図4に示す植毛パターンの形状の入力欄P2は、植毛パターン全体の形状(外形)を入力するための欄である。植毛パターンの形状の入力欄P2には、例えば、「正方形」、「長方形」、「ひし形」、「円形」、及び「楕円形」等の形状が入力される。「正方形」、「長方形」、「ひし形」、「円形」、及び「楕円形」等の選択肢を、植毛パターン入力画面上に表示し、ユーザにより、選択肢から1つの形状が選択されてもよい。パターンデータ生成部111aは、入力又は選択された形状に応じて、植毛パターン画像P1の形状を変更する。図4図6では、「正方形」が選択された場合の例を示している。
【0023】
図4に示す植毛パターンの寸法の入力欄P3は、植毛パターン全体の寸法(縦の長さ及び横の長さ)を入力するための欄である。植毛パターンの寸法の入力欄P3には、例えば、ユーザにより数値が入力される。なお、複数の寸法の選択肢を、植毛パターン入力画面上に表示し、ユーザにより、選択肢から1つの寸法が選択されてもよい。パターンデータ生成部111aは、入力又は選択された寸法に応じて、植毛パターン画像P1の寸法を変更する。
【0024】
図4に示すピッチの入力欄P4は、植毛パターンにおける植毛の間隔(縦の間隔及び横の間隔)を入力するための欄である。ピッチの入力欄P4には、例えば、ユーザにより数値が入力される。なお、複数の数値(ピッチ)の選択肢を、植毛パターン入力画面上に表示し、ユーザにより、選択肢から1つの数値(ピッチ)が選択されてもよい。パターンデータ生成部111aは、入力又は選択された数値(ピッチ)に応じて、植毛パターン画像P1の座標のピッチを変更する。
【0025】
図4に示す髪の種類の入力欄P5は、植毛される毛髪材100aの種類を入力するための欄である。本実施形態では、後述するように自動植毛装置120は、複数のストッカ40を備えている。複数のストッカ40には、互いに異なる種類の毛髪材100aが収容されている。「種類」には、毛髪材100aの長さ、毛髪材100aの色、毛髪材100aの材料、及び毛髪材100aの形状(くせ毛、直毛など)のうちの少なくとも1つが含まれる。髪の種類の入力欄P5には、例えば、ユーザにより毛髪材100aの種類(ストッカ40の番号)が入力される。なお、毛髪材100aの種類(ストッカ40)の選択肢を、植毛パターン入力画面上に表示し、ユーザにより、選択肢から1つの種類(ストッカ40)が選択されてもよい。パターンデータ生成部111aは、入力又は選択された内容に応じて、植毛に使用されるストッカ40を選択する。
【0026】
図4に示す1つの座標当たりの髪の本数の入力欄P6は、1つの座標(1つの結び目)当たりの髪(毛髪材100a)の本数を入力するための欄である。1つの座標当たりの髪の本数の入力欄P6には、例えば、ユーザにより数値が入力される。なお、髪の本数の選択肢を、植毛パターン入力画面上に表示し、ユーザにより、選択肢から1つの本数が選択されてもよい。パターンデータ生成部111aは、入力又は選択された本数に応じて、後述するように引出鉤針30を選択する。
【0027】
図4に示す結び方の選択欄P7は、植毛ネット200に対する毛髪材100aの結び方を選択するための欄である。結び方の選択欄P7には、ユーザにより選択された結び方が表示される。例えば、植毛パターン入力画面上に結び方の選択肢を表示し、例えば、選択肢から1つの結び方がユーザにより選択される。「結び方」には、植毛鉤針20の回転数、及び回転方向が含まれる。パターンデータ生成部111aは、選択された結び方に応じて、後述するように植毛鉤針20の動作方法を選択する。なお、図4では、植毛パターン全体に対して、1つ結び方が選択される例を示したが、座標ごとに結び方を選択可能にパターンデータ生成部111aが構成されていてもよい。
【0028】
図4に示す毛髪材100aの長さの入力欄P8は、毛髪材100aの長さを入力するための欄である。例えば、入力欄P8には、ユーザにより数値が入力される。なお、長さの選択肢を、植毛パターン入力画面上に表示し、ユーザにより、選択肢から長さが選択されてもよい。パターンデータ生成部111aは、入力又は選択された長さ(数値)に応じて、後述するように切断部150の位置を選択する。また、図4に示すように、自動植毛システム100(植毛パターン入力画面)は、1つの座標ごとに、毛髪材100aの長さを入力できるように構成されてもよいし、複数の座標からなる領域ごとに、毛髪材100aの長さを入力できるように構成されてもよい。
【0029】
図4に示す保存ボタンP9は、ユーザにより選択された場合に、上記した植毛パターン画像、入力欄P2~P6、及び選択欄P7の内容を、植毛パターンデータ113aとして記憶部113又は123に記憶する操作用の画像である。
【0030】
図7A及び図7Bは、植毛パターンデータ113aの構成を説明するための図である。植毛パターンデータ113aには、図7Aの「パターン1」及び図7Bの「パターン2」に示すように、複数の植毛パターンが設けられていてもよい。植毛パターンデータ113aでは、各植毛パターンが識別番号(パターン番号)に関連付けられて記憶されている。図7A及び図7Bに示すように、植毛パターンデータ113aは、複数の座標の各々の植毛の有無を示すデータを含む。図7A及び図7Bでは、複数の座標の各々の植毛の有無を示すデータを、例えば、2次元の(X、Y)の座標として、(1,1)=1(植毛をおこなう)、(2,1)=0(植毛を行わない)等の2値により示す例を示している。そして、植毛パターンデータ113aは、植毛パターンの形状のデータ、植毛パターンの寸法のデータ、ピッチのデータ、髪の種類のデータ、1つの座標当たりの髪の本数のデータ、及び結び方のデータ、を含む。また、図7A及び図7Bに示すように、植毛パターンデータ113aは、複数の座標の各々に関して、髪の種類のデータ、1つの座標当たりの髪の本数のデータ、及び結び方のデータ、を含む。
【0031】
図8Aは、植毛パターン入力画面の表示用の植毛パターンデータ113aの例を示す図である。図8Bは、シーケンスプログラム123aにより読み取られる際の植毛パターンデータ113aの例を示す図である。変換制御部111cは、植毛パターンデータ113aが保存される際に、変換プログラム113cを実行することにより、図8Aに示す植毛パターン入力画面の表示用又は制御部122内の処理に用いるための植毛パターンデータ113aから、図8Bに示すPLC(Programmable Logic Controller)用の植毛パターンデータ113aに変換する。
【0032】
図8Aに示すように、変換前の植毛パターンデータ113aは、例えば、表形式のデータ(例えば、CSV形式のセル上)に0/1(植毛する/植毛しない)の数値が上記したパターンの通りに入力されている。図8Aに示す例では、横方向に48個の針(引出鉤針30)と、当該針(引出鉤針30)が奥行方向に移動する横ピッチの数(例えば、10個)とを乗算した数の横方向の座標と、植毛ネット200の送り方向(MD方向)の縦ピッチの数(例えば、60個)に一致する縦方向の座標とが設けられる。すなわち、「針1」~「針48」は、それぞれ、縦の座標「1」において、横の座標「1」、「2」、…、「9」、及び「10」の順に、植毛の有無のデータに基づいて動作を行い、その後、縦の座標「2」において、横の座標「1」、「2」、…、「9」、及び「10」の順に、植毛の有無のデータに基づいて動作を行い、縦の座標「60」でかつ、横の座標「10」となるまで、植毛の有無のデータに基づいて動作を行う。
【0033】
そして、図8Bに示すように、変換制御部111cは、針ごとの0/1(植毛する/植毛しない)のビットデータを一纏まりのデータに変換する。例えば、変換制御部111cは、これをPLCが読み取り可能に、図8Bに示すように、針毎のデータに分割し、並び替えたデータ(例えばdoc形式又はdocx形式のデータ)に変換する処理を行う。これにより、自動植毛装置120において、シーケンスプログラム123aが実行されると、図8Bに示す植毛パターンデータ113aが読み込まれ、座標に対応する位置に植毛ネット200、及び引出鉤針30等が移動される。そして、後述するように、植毛を行う場合は引出鉤針30の初期位置がQ1(図31参照)に移動され、植毛を行わない場合は初期位置がQ2(図31参照)に移動される。そして、植毛動作が実行される。そして、次の座標のデータが読み込まれる。これにより、1つのシーケンスプログラム123aを繰り返して実行させることで、パターン植毛することが可能となる。この結果、シーケンスプログラム123aをパターンごとに記述し直すことなく、植毛パターンデータ113aを作成すれば、容易に植毛パターンを変更することができる。
【0034】
<<自動植毛装置の構成例及び動作例>>
最初に、本発明の実施形態に係る自動植毛装置の基本的な構成及び動作について図面を参照して説明する。なお、ここでは、本発明の要部を説明する前提として、自動植毛装置の基本的な構成及び動作のそれぞれの一例を説明するに過ぎない。本発明の要部の構成及び動作と矛盾を生じない限りにおいて、ここで説明する自動植毛装置の構成及び動作とは異なる構成及び動作を採用することは当然に可能である。
【0035】
図1は、自動植毛装置の構造及び初期位置を示した側面図である。図2は、図1の状態の自動植毛装置を後方から前方に向かってみた場合の正面図である。図1に示すように、自動植毛装置120は、エキセン10、植毛鉤針20、引出鉤針30、ストッカ40、糸位置出しバー50、糸落としバー60、糸引込バー70、反転ローラー80、図11に図示した磁石90、図示のされていない駆動機構、制御装置などを備え、当該制御装置による前記駆動機構の制御に伴いエキセン10と植毛鉤針20と引出鉤針30と糸落としバー60並びに糸引込バー70のそれぞれが図2から図11までに示した第1動作から第18動作までを行い、毛髪材100aをストッカ40から1本ずつ捕捉して植毛ネット200の横糸202に結び付けて植毛する。なお、図1ないし図21に示す側面図及び正面図では、図中の左右方向が水平方向、上下方向が鉛直方向である。
【0036】
毛髪材100aとは、人工毛(ファイバー、合成繊維)のほか、人毛(ヒトから採取した毛)、動物毛(ヒト以外の動物から採取した毛)、またはこれらの混合物などであり、自動植毛装置120によって植毛可能な毛または毛様の一切の材料が含まれる。植毛ネット200は、複数本の縦糸201と複数本の横糸202とからなる網目状に形成されており、縦糸201及び横糸202のそれぞれは、複数本の原糸を撚りあわせた一本の糸であってもよいし、一本の原糸であってもよい。
【0037】
最初に、自動植毛装置120の構成及び自動植毛装置120が動作を行う際の初期位置について説明する。図1に示すように、予め切り揃えられた複数本の毛髪材100aからなる毛髪材束100bが、エキセン10よりも上方に配置されたストッカ40内に配置される。ストッカ40における取出口42の下方には引出鉤針30が配置されており、植毛鉤針20と引出鉤針30の間にエキセン10が配置されている。以下、水平面内の方向であって、エキセン10からみて引出鉤針30がある方向を後方、その反対方向を前方といい、これらを合わせて前後方向という。また、水平面内において前後方向と垂直な方向を奥行方向といい、後方を見たときに左側となる方向を奥側(図1における紙面裏側)、右側となる方向を手前側(図1における紙面表側)という。
【0038】
植毛ネット200は、エキセン10のネット掛部11に対して上方から覆い被さるようにセットされ、引出鉤針30の下方のある反転ローラー80にも接触して位置が規制されている。植毛鉤針20は、その先端が後方を向いており、当該先端がエキセン10の回転軸と同程度の高さに位置している。引出鉤針30は、その先端が上方を向いており、当該先端がエキセン10の中心軸よりも下方に位置している。糸位置出しバー50は、ストッカ40の底部41における前後方向の中央部に設けられた取出口42よりも下方かつ前方に位置している。糸落としバー60及び糸引込バー70は、糸位置出しバー50の下方かつエキセン10の上方であって、糸位置出しバー50よりも前方に位置している。
【0039】
ストッカ40は、平面視が矩形である平板状の底部41と、底部41の前後方向の二辺のそれぞれに沿って設けられている一対の対向した側板43を有している。底部41と側板43は垂直であり、前後方向の断面がコの字型になっている。毛髪材100aは、例えば完成するウィッグの毛の長さの約2倍の長さに切り揃えられ、奥行方向に交差する(例えば、毛髪材束100bを構成する毛髪材100aの大半が概ね奥行方向と直交する)ようにストッカ40の底部41上に配置される。なお、毛髪材100aの長さを、ストッカ40における底部41の前後方向の長さより長くして、一部がストッカ40から外側に突出するようにしてもよい。ただし、毛髪材100aのストッカ40から突出した部分が底部41より下方に垂れ下がらない程度であれば、引出鉤針30がストッカ40から毛髪材100aを捕捉して下方に引き出す際に、毛髪材100aのストッカ40から突出した部分が底部41の前後方向の端部で擦れて傷むことを防止することができるし、稼働する他の機構への巻き込みなども防止することができるため、好ましい。
【0040】
ストッカ40は、図2に示すように1つだけ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。また、図2では、1つのストッカ40から複数の引出鉤針30が毛髪材100aを引き出す場合を例示しているが、複数のストッカのそれぞれから当該ストッカに対応する1つの引出鉤針30が毛髪材100aを引き出すように構成してもよい。また、ストッカ40には、例えば異なる色の毛髪材100a、色が同じであって太さの異なる毛髪材100a、同じ色や同じ太さであっても硬さ(弾力)の異なる毛髪材100aなど、種類の異なる毛髪材100aが混合されて供給され、完成するウィッグにおける毛髪材100aの色や太さ或いは髪質が予め調整される。なお、ストッカ40に対して、単一の種類の毛髪材100aを供給してもよい。
【0041】
エキセン10は、植毛ネット200の植毛領域を確保する部材であり、奥行方向に延びる中心線を有する円柱状のネット掛部11と、ネット掛部11の側周面から内部に窪むように設けられて当該側周面に重なる開口を有する逃げ部12と、ネット掛部11の両端部に設けられて奥行方向に延びる中心線を有する軸部13とを備える。軸部13の中心線は、ネット掛部11の中心線とは一致しておらず、ネット掛部11の半径方向の外側に偏位しており、ネット掛部11の側周面上であって逃げ部12が設けられている部分(さらには当該部分の周方向の中央部分)に位置する。
【0042】
軸部13は、装置本体に設けられた図示されていない軸受部により、中心線が回転軸となるように回転可能に支持され、軸部13が自転することで、軸部13に連結されたネット掛部11が軸部13の中心線を軸として公転する。初期位置では、逃げ部12の開口は、図1に示すように前方を向いている。なお、軸部13の中心線は、逃げ部12の開口の周方向の中心に位置する一本の横糸202-1と重なっていてもよい。
【0043】
逃げ部12の開口幅(周方向の長さ)は、例えば、植毛ネット200がネット掛部11の外面に巻き掛けられて一本の横糸202-1が逃げ部12の開口の周方向の中心に位置した場合において、当該中心に位置する一本の横糸202-1の周方向に隣接する2本の横糸202-2及び202-3のうちの一本の横糸202-2が逃げ部12の開口の下方側の端部付近に位置し、別の一本の横糸202-3が逃げ部12の開口の上方側の端部付近に位置するように、植毛ネット200の網目を構成する横糸202の間隔に基づき決定してもよい。なお、図1では、逃げ部12の開口幅が横糸202-2と横糸202-3の幅よりも狭い場合を図示しているが、逃げ部12の開口幅が横糸202-2と横糸202-3の幅以上であってもよい。
【0044】
植毛鉤針20は、植毛ネット200に毛髪材100aを植毛する部材であり、先端のフック21と、フック21の針口を開閉するラッチ22とを備える。ラッチ22は、一端が植毛鉤針20に図示のされていない軸で回転可能に連結され、当該軸を中心として回転することにより、ラッチ22の他端がフック21に接して針口が閉じた状態と、ラッチ22の他端がフック21から離れて針口が開いた状態とが切り替えられる。初期位置では、図1に示すように、植毛鉤針20がエキセン10の前方に離れた位置であって、逃げ部12の開口と対向する位置にあり、ラッチ22は針口が開いた状態になっている。
【0045】
植毛鉤針20は、制御装置で制御される駆動機構によって駆動され、毛髪材100aを植毛ネット200に結び付けて植毛する。また、植毛鉤針20は、図2に示した複数本の引出鉤針30と1対1で対応するように、複数本が奥行方向に整列している。複数本の植毛鉤針20の一群は、制御装置で制御される駆動機構で一緒に動作して毛髪材100aを植毛ネット200に植毛する。なお、植毛鉤針20及び引出鉤針30のそれぞれは、1本であっても良い。
【0046】
引出鉤針30は、ストッカ40から毛髪材100aを捕捉する部材であり、先端に1本の毛髪材100aを捕捉可能なフック31が設けられる。初期位置では、図1に示すように、引出鉤針30がエキセン10の下方かつ反転ローラー80の上方に位置し、フック31の針口32が手前側に向いている。また、引出鉤針30は、図2に示すように、複数設けられているとともに奥行方向に整列している。複数本の引出鉤針30の一群は、制御装置で制御される駆動機構により一緒に動作して毛髪材100aを捕捉する。なお、フック31は、2本または3本以上の複数本の毛髪材100aを捕捉可能であってもよいし、毛髪材100aを補足可能であればどのような大きさ、形状であってもよい。
【0047】
糸位置出しバー50は、引出鉤針30によってストッカ40から引き出される毛髪材100aを所定位置に誘導する部材である。図1及び図2に示すように、糸位置出しバー50は、全体的には奥行方向に延びる中心線を有する円柱状であり、外周面から中心線の側に窪む複数の糸ガイド51が外周面を一周するように設けられている。なお、糸位置出しバー50は、奥行方向の両端部が装置本体に対して固定されて設けられてもよいが、回転可能な状態で装置本体に支持されるようにすると、糸位置出しバー50が引出鉤針30でストッカ40から引き出される毛髪材100aで回転され、毛髪材100aが糸ガイド51で擦れて傷むことを防止することができる。糸ガイド51の個数は、引出鉤針30の個数と同数である。
【0048】
糸落としバー60は、制御装置で制御される駆動機構で上下方向に振動するものであり、糸引込バー70によって引き込まれる毛髪材100aを払い落とす。糸引込バー70は、制御装置で制御される駆動機構によって前後方向に移動するものであり、植毛ネット200に植毛された毛髪材100aを引っかけて前方に引き込む。磁石90は、植毛鉤針20で毛髪材100aを植毛ネット200に植毛する過程で閉じられたラッチ22を磁力で吸引して開けるものである。なお、磁石90は、永久磁石または電磁石のどちらでも適用可能であるが、電磁石であれば、電磁石を制御装置で制御し閉じられたラッチ22を開くときだけ磁力を発生すればよく、植毛鉤針20と磁石90の相対的な位置関係を変更する必要がないから植毛鉤針20と磁石90を共通の駆動機構で駆動する構成として、駆動機構を簡略化することができる。反転ローラー80は、装置本体に対して回転可能に取り付けられている。
【0049】
次に、図2ないし図21を用いて自動植毛装置の動作について説明する。はじめに、図2に示すように、糸引込バー70が後方に向かって進み、図3におけるストッカ40の取出口42及び引出鉤針30を右側に超えた位置で停止する(第1動作)。
【0050】
次に、引出鉤針30が上昇し、フック31を含む先端部が取出口42からストッカ40内部に入り込み、さらに毛髪材束100bに挿入された後に下降して停止する(第2動作)。このとき、引出鉤針30は、先端部が取出口42に挿入された後、僅かに手前側(フック31の針口32が開口した側)に移動する。これにより、引出鉤針30のフック31に毛髪材100aが引っ掛けられるため、毛髪材100aがストッカ40の取出口42から2つ折りにされた状態で引き出される。このとき、図3に示すように、毛髪材100aの両端はストッカ40内に残っており、図5に示すように、2つ折りで引き出された複数本の毛髪材100aが1本ずつ糸位置出しバー50の複数の糸ガイド51のそれぞれに収容される。これにより、引き出された毛髪材100aのそれぞれが所定の位置に規制されるため、後の動作において植毛鉤針20が毛髪材100aを適切に捕捉することが可能になる。
【0051】
次に、図4に示すように、植毛鉤針20が後方に向かって進む(第3動作)。このとき、フック21が横糸202-1の下を通り、フック21の針口が逃げ部12内に収容されて破線で示す位置に到達する。次に、植毛鉤針20が破線で示した位置から実線で示した位置に後退し、フック21が横糸202-1を引っ掛ける(第4動作)。
【0052】
次に、図6に示すように、エキセン10の軸部13が、逃げ部12の開口が上方を向くように90度だけ回転し、ネット掛部11が軸部13の中心線を中心として破線で示した位置から実線で示した位置へと下方に旋回して停止する(第5動作)。これにより、エキセン10が植毛鉤針20及び横糸202-1の下側に移動する。このエキセン10の破線で示した位置から実線で示した位置への移動により、植毛鉤針20が、エキセン10の上方を通りストッカ40と引出鉤針30との間で2つ折りになった毛髪材100aへと到達することが可能になる。なお、エキセン10が軸部13を備えず、ネット掛部11の中心線を軸として回転する構成であってもよい。この場合、植毛鉤針20が、横糸202-1を引っ掛けた状態のまま、ネット掛部11の回転に追随して上方かつ後方に向かって平行移動するように構成すれば、上記と同様に植毛鉤針20がエキセン10の上方に位置することになる。
【0053】
次に、図7及び図8に示すように、植毛鉤針20が後方に向かって進むのに伴い、フック21がストッカ40と引出鉤針30との間で2つ折りになった毛髪材100aに近づく(第6動作)。このとき、横糸202-1は、開いたラッチ22の上側を通過することになり、最終的にラッチ22の全部を通過する。次に、フック21の針口が上を向いた状態から横向き(奥側を向いた状態)になるように植毛鉤針20が回転する(第7動作)。これにより、フック21の針口が、引出鉤針30によって引き出された毛髪材100aを向いた状態になる。
【0054】
次に、図9に示すように、植毛鉤針20が、フック21の針口を横向きのまま更に後方へ進み、引出鉤針30によって引き出された2つ折りの毛髪材100aのうち前方の部分(以下、毛髪材100aの「前方部分」という。)にフック21の針口が向き合うところで停止する(第8動作)。次に、引出鉤針30が手前側に移動する(第9動作)。これにより、毛髪材100aの前方部分が植毛鉤針20に近づき、フック21の針口に導入される。
【0055】
次に、図10に示すように、植毛鉤針20が、フック21の針口が横を向いた状態から上向きになるように回転するとともに、図11及び図12に示すように、前方に向かって進むことで、横糸202-1にラッチ22が接触してフック21の針口が閉じられ、さらに植毛鉤針20が実線で示した位置から破線で示した位置へと進むと、ラッチ22が磁石90の磁力で吸引され植毛鉤針20の針口が開かれる(第10動作)。このとき、植毛鉤針20が植毛ネット200から離れることで、毛髪材100aの前方部分がストッカ40から少しだけ引き出される。また、毛髪材100aは、取出口42の前方側から糸位置出しバー50を経由し横糸202-1と横糸202-2との間を通りフック21で折り返され、フック21から横糸202-1と横糸202-2との間を通り、横糸202-1と横糸202-3との間を通り引出鉤針30に至るように展開される。
【0056】
次に、図13に示すように、植毛鉤針20は、図11の破線で示した位置から後方に進むとともに上昇し、植毛鉤針20が毛髪材100aを横糸202-1に結ぶために回転する(第11動作)。これにより、毛髪材100aのフック21と横糸202-1との間の2本の部分が互いに絡むように撚り合わせられてループ部45が設けられる。なお、この第11動作において、植毛鉤針の上昇は省略可能であるが、この上昇を行うことにより、後述する第12動作の際に、フック21が毛髪材100aの糸位置出しバー50と横糸202-1との間の部分を確実に通るようになる。
【0057】
次に、図14に示すように、植毛鉤針20が、上向きのまま手前側に移動した後に後方に進み、引出鉤針30によって引き出された2つ折りの毛髪材100aのうち後方の部分(以下、毛髪材100aの「後方部分」という。)に対してフック21の針口が奥行方向に並ぶところで停止し、フック21の針口が上を向いた状態から横向き(奥側を向いた状態)になるように回転する(第12動作)。このとき、図15に示すように、植毛鉤針20のフック21は毛髪材100aの糸位置出しバー50と横糸202-1との間の部分を通り、ループ部45は植毛鉤針20のラッチ22の上側を通過する。また、植毛鉤針20の回転により、毛髪材100aの後半部分にフック21の針口が向いた状態になる。なお、植毛鉤針20の回転数は、1回転、2回転または3回転以上など、1回転以上であればどのような回転数でもよい。また、回転方向は、右回りであっても左回りであってもよい。
【0058】
次に、引出鉤針30が手前側に移動する(第13動作)。これにより、毛髪材100aの後方部分が植毛鉤針20に近づき、フック21の針口に導入される。なお、植毛鉤針20が奥側に移動してもよいし、引出鉤針30と植毛鉤針20の両方が互いに近づくように動いてもよい。
【0059】
次に、図16及び図17に示すように、植毛鉤針20が、フック21の針口が横を向いた状態から上向きになるように回転するとともに、前方に向かって進むことで、ループ部45にラッチ22が接触してフック21の針口が閉じられる(第14動作)。これにより、横糸202-1に対する毛髪材100aの結びつけ、つまり植毛が完了する。なお、植毛鉤針20のフック21が後退してループ部45を通過する際に、引出鉤針30が上下に小刻みに動くなどしてフック31から毛髪材100aを外してもよい。これにより、毛髪材100aが摩擦によって縮れてしまうピーリングを防止することができる。
【0060】
次に、図18及び図19に示すように、糸引込バー70が前方に進むことで毛髪材100aの前方部分を前方に引き込み、初期位置で停止する(第15動作)。
【0061】
さらに、図20に示すように、第16動作から第18動作を行う。まず、植毛鉤針20が初期位置に戻って停止する間にラッチ22が磁石90の磁力で吸引され植毛鉤針20の針口が開かれる(第16動作)。エキセン10が、軸部13の中心線を軸として図6に実線で示した位置から図6に示した破線で示した位置の側に戻るように旋回する(第17動作)。これにより、逃げ部12の開口が左側に向けられた初期位置に戻る。糸落としバー60が、下方に移動した後、上方に移動して初期位置で停止する(第18動作)。これにより、横糸202-1に対する植毛の完了した毛髪材100aが下方に整髪される。なお、第16動作から第18動作のいずれから先に行っても良く、第16動作から第18動作を同時に行っても良い。
【0062】
以上の動作により、自動植毛装置120における横糸202-1に対する毛髪材100aを植毛する動作の1サイクルが終了し、図21に示す結び目が作成される。なお、図21は、第11動作において、植毛鉤針20が3回転し、毛髪材100aが3回撚り合わせられて植毛ネット200に結び付けられた状態を図示している。
【0063】
なお、上述の動作例では、植毛鉤針20のフック21が、第8動作及び第9動作において毛髪材100aの前方部分をとり、第12動作及び第13動作において毛髪材100aの後方部分をとっているが、それぞれの動作において前方部分及び後方部分のどちらを取っても、第12動作において植毛鉤針20を1回転以上させれば、毛髪材100aを横糸に結び付けることが可能である。また、第12動作において植毛鉤針20を半回転しかしない場合であっても、第12動作及び第13動作において、この半回転によって下側となった方を植毛鉤針20のフック21でとれば、毛髪材100aを横糸に結び付けることが可能である。
【0064】
(植毛パターンデータと自動植毛装置の基本的な動作との関係)
次に、植毛パターンデータ113aと自動植毛装置120の基本的な動作との関係について説明する。なお、自動植毛装置120は、シーケンスプログラム123aが制御部122により実行されることにより、下記の動作を行う。
【0065】
図30に示すように、植毛制御部122a(図3参照)は、植毛パターンデータ113aの植毛パターンの形状、植毛パターンの寸法、及び植毛の有無に応じて、引出鉤針30の初期位置を決定する。例えば、図30に示すように、植毛パターンの形状及び植毛パターンの寸法に基づく植毛する領域内で、かつ、植毛が行われる座標に一致する引出鉤針30の初期位置は、ストッカ40との距離が近い位置Q1に決定される。また、植毛する領域外の座標に一致する引出鉤針30であるか、または、植毛する領域内であっても植毛が行われない座標に一致する引出鉤針30の初期位置は、ストッカ40との距離が遠い位置Q2に決定される。例えば、位置Q2は、位置Q1よりも低い位置である。これにより、複数の引出鉤針30が一斉にストッカ40に向かって上昇した際に、初期位置が位置Q2の引出鉤針30は、ストッカ40に到達しない。これにより、図31に示すように、初期位置が位置Q2の引出鉤針30は、毛髪材100aを捕捉しないで位置Q2に戻ることとなり、当該引出鉤針30が配置された座標における植毛は実施されない。
【0066】
植毛制御部122aは、図28に示した第18動作が終了した後、植毛パターンデータ113aにおいて設定された植毛する間隔(横のピッチ)に一致する幅で、植毛ネット200に対して奥行方向に複数の引出鉤針30及び複数の植毛鉤針20を、駆動部により移動させる。例えば、複数の引出鉤針30及び複数の植毛鉤針20は、上記第1動作~第18動作により植毛した縦糸201の隣の縦糸201の位置に移動する。その後、自動植毛装置120は、上記第1動作~第18動作と、植毛ネット200に対する奥行方向への複数の引出鉤針30及び複数の植毛鉤針20の移動とを所定の回数、繰り返す。その後、植毛制御部122aは、植毛パターンデータ113aの植毛する間隔(縦のピッチ)に応じた角度分、反転ローラー80が回動し、植毛ネット200を順送する。すなわち、植毛パターンデータ113aにおいて設定された縦のピッチの幅、植毛ネット200が1回順送される。そして、横糸202-3に対する植毛が実行される。
【0067】
図32図34に示すように、植毛制御部122aは、植毛パターンデータ113aの植毛される毛髪材100aの種類に応じて、複数のストッカ40から使用するストッカ40を決定し、当該ストッカ40から引出鉤針30により複数の毛髪材100aの少なくとも1つを捕捉させる。例えば、図32に示すように、互いに異なる種類の毛髪材100aが収容された3つのストッカ40(S1、S2、及びS3)が、自動植毛装置120に配置されている。植毛制御部122aは、使用するストッカ40がS1の場合、当該S1のストッカ40を引出鉤針30が毛髪材100aを引き出す位置に配置させる。また、図33に示すように、植毛制御部122aは、使用するストッカ40をS1からS3に変更する場合、例えば、3つのストッカ40を矢印A1方向に移動させて、S3のストッカ40を引出鉤針30が毛髪材100aを引き出す位置に配置させる。また、図34に示すように、植毛制御部122aは、使用するストッカ40をS3からS2に変更する場合、例えば、3つのストッカ40を矢印A2方向に移動させて、S3のストッカ40を引出鉤針30が毛髪材100aを引き出す位置に配置させる。これにより、上記第1動作~第18動作が実行された場合、植毛パターンデータ113aに応じた種類の毛髪材100aが植毛ネット200に植毛される。
【0068】
図35に示すように、植毛制御部122aは、植毛パターンデータ113aの植毛される1つの座標当たりの毛髪材の本数に応じて、複数の引出鉤針30のうちから植毛に使用する引出鉤針30を選択し、当該引出鉤針30により前記ストッカ40から毛髪材100aを捕捉させる。図35に示すように、例えば、捕捉可能な毛髪材100aの本数が互いに異なる3つの引出鉤針30(N1、N2、及びN3)、自動植毛装置120に配置されている。植毛制御部122aは、選択した引出鉤針30がN1の場合、当該N1の引出鉤針30を、取出口42の鉛直下方に配置する。また、植毛制御部122aは、使用する引出鉤針30をN1からN2に変更する場合、3つの引出鉤針30を矢印B1方向に移動させて、N2の引出鉤針30を取出口42の鉛直下方に配置する。また、植毛制御部122aは、使用する引出鉤針30をN2からN3に変更する場合、3つの引出鉤針30を矢印B2方向に移動させて、N3の引出鉤針30を取出口42の鉛直下方に配置する。これにより、上記第1動作~第18動作が実行された場合、取出口42の鉛直下方に配置された引出鉤針30により、植毛パターンデータ113aに応じた本数の毛髪材100aが引き出される。
【0069】
また、植毛制御部122aは、植毛パターンデータ113aにおける植毛ネット200に対する毛髪材100aの結び方に応じて、植毛鉤針20の移動経路、回転方向、及び回転数を決定する。例えば、植毛制御部122aは、毛髪材100aの結び方が「3回、順方向」である場合、図21に示す第11動作において、前方から見て反時計回りに植毛鉤針20が3回転される。この結果、図29A及び図29Bに示す結び目100cが形成される。また、植毛制御部122aは、毛髪材100aの結び方が「1回、順方向」である場合、第11動作において、前方から見て反時計回りに植毛鉤針20が1回転される。また、植毛制御部122aは、毛髪材100aの結び方が「1回、逆方向」である場合、第11動作において、前方から見て時計回りに植毛鉤針20が1回転される。また、植毛制御部122aは、毛髪材100aの結び方が「半回、順方向」である場合、第11動作において、前方から見て反時計回りに植毛鉤針20が半回転される。そして、第12動作及び第13動作において、この半回転によって下側となった毛髪材100aの部分を植毛鉤針20のフック21で捕捉するように、移動経路が設定され、毛髪材100aを植毛ネット200に結びつけられる。
【0070】
(毛髪材を切断するための構成)
図36は、切断部150が初期位置に位置する状態の自動植毛装置120を示す図である。図37は、切断部150が毛髪材100aを切断する様子を奥行方向に見た図である。
【0071】
図36及び図37に示すように、自動植毛装置120は、切断部150と、切断部移動機構部160とを、さらに備える。切断部150は、複数の毛髪材100aの少なくとも1つを切断する。切断部移動機構部160は、切断部150を移動させるエアシリンダ又はラックアンドピニオンを含む。
【0072】
切断部150は、例えば、植毛鉤針20よりも下方に配置されている。そして、切断部150は、植毛鉤針20により毛髪材100aが捕捉された後、図37に示すように、切断部150は上昇して毛髪材100aを切断する。図36及び図37に示すように、切断部移動機構部160は、切断部150を上下方向に移動させる。切断部150は、毛髪材100aを切断した後、下降して、図36に示す初期位置に戻る。なお、植毛制御部122aは、切断部150及び切断部移動機構部160の動作を制御する切断制御部として機能する。この構成によれば、植毛鉤針20により捕捉された毛髪材100aを切断するので、植毛鉤針20により捕捉された毛髪材100aごとに、毛髪材100aの長さを調整することができる。また、毛髪材100aは、ストッカ40から引出鉤針30により引き出されるため、ストッカ40に配置される毛髪材100aの長さは、ストッカ40と引出鉤針30との距離の2倍以上の長さが必要となる。これに対して、上記の構成によれば、ストッカ40に配置される毛髪材100aの長さがストッカ40と引出鉤針30との距離の2倍以上の長さであっても、植毛鉤針20により捕捉された毛髪材を切断するので、ストッカ40と引出鉤針30との距離の2倍未満の長さに毛髪材100aの長さを調整することができる。
【0073】
また、図36に示すように、切断部移動機構部160は、切断部150を毛髪材100aが延びる方向(図36のE1方向またはE2方向)に移動させる。これにより、切断部150により毛髪材100aが切断される位置が変更され、切断後の毛髪材100aの長さが変更される。
【0074】
また、上記第11動作よりも後に、切断部150は、毛髪材100aを切断する。なお、図37に示す例では、上記第11動作が自動植毛装置120により実行される際に、切断部150が毛髪材100aを切断する例を示している。
【0075】
図38は、切断部150及び切断部移動機構部160を後方に向かって見た図である。図39は、切断部150が毛髪材100aを切断する様子を後方に向かって見た図である。図38に示すように、切断部150は、複数の毛髪材100aの少なくとも1つを切断する複数の刃151を含む。複数の刃151は、1つの植毛鉤針20に対して2つずつ(一対ずつ)設けられている。そして、一対の刃151は、奥行方向に並んで配置されており、図39に示すように、複数の毛髪材100aの少なくとも1つを挟んで切断する。
【0076】
切断部150は、前後方向に重ねて配置された2つの基台152を含む。一対の刃151の一方は、2つの基台152のうちの一方から上方に向かって延び、一対の刃151の他方は、2つの基台152のうちの他方から上方に向かって延びる。2つの基台152は、図38及び図39に示すように、2つの基台152は、A1方向又はA2方向に移動することにより、一対の刃151を開閉する。これにより、図38に示すように、一対の刃151を開いた状態で、毛髪材100aを一対の刃151の間に配置して、図39に示すように、一対の刃151を閉じることにより、毛髪材100aを一対の刃151により切断する。
【0077】
切断部移動機構部160は、開閉機構部161と、支持部材162と、上下機構部163とを含む。開閉機構部161は、2つの基台152を相対移動させる。支持部材162は、開閉機構部161を下方から支持している。支持部材162は、上下機構部163に保持されている。上下機構部163は、図36及び図37に示すように、支持部材162、開閉機構部161、及び切断部150を上下方向に移動させる。
【0078】
(植毛パターンデータと毛髪材を切断する動作との関係)
次に、植毛パターンデータ113aと自動植毛装置120による毛髪材100aを切断する動作との関係について説明する。なお、自動植毛装置120は、シーケンスプログラム123aが制御部122により実行されることにより、下記の動作を行う。
【0079】
図36に示すように、植毛制御部122aは、植毛パターンデータ113aのうちの毛髪材100aの長さに応じて、切断部150をE1方向またはE2方向に移動させる。例えば、毛髪材100aの長さをLとすると、切断部150は、植毛ネット200からの距離がLとなる位置に配置される。これにより、切断部150により毛髪材100aが切断されると、植毛ネット200からの毛髪材100aの長さがLとなる。
【0080】
[第2実施形態の構成]
図40は、第2実施形態における自動植毛システム300の構成を示す図である。図40に示すように、第2実施形態の自動植毛システム300は、自動植毛装置320を含む。自動植毛装置420は、複数のストッカ340を含む。ストッカ340は、引出鉤針30ごとに設けられており、図示しない駆動機構部により、初期位置が変更可能に構成されている。そして、自動植毛システム300は、植毛パターンデータの植毛の有無に応じて、ストッカ340の初期位置を決定する。例えば、自動植毛システム300は、植毛されない座標に一致するストッカ340の初期位置が、植毛される座標に一致するストッカ340の初期位置Q11よりも上方のQ12に決定する。これにより、引出鉤針30が上昇した場合でも、初期位置Q12に位置するストッカ340に引出鉤針30が到達せずに、当該ストッカ340から毛髪材100aが引き出されない。その他の構成、動作及び効果は、第1実施形態の構成、動作及び効果と同様である。
【0081】
[第3実施形態の第1例の構成]
図41は、第3実施形態の第1例における自動植毛システム400の構成を示す図である。図41に示すように、第3実施形態の第1例の自動植毛システム400は、加熱部450と、移動機構部460とを含む。加熱部450は、レーザ光源を含む。加熱部450は、毛髪材100aの少なくとも1つにレーザを照射して当該毛髪材の少なくとも1つを溶断する。移動機構部460は、加熱部450の位置及び角度の少なくとも一方を変更して、加熱部450によるレーザの照射位置を変更する。自動植毛システム400は、植毛パターンデータに基づいて、レーザの照射位置を変更して、加熱部450によって、植毛パターンデータに基づく毛髪材100aの長さに毛髪材100aを切断させる。これにより、加熱部450を複数の毛髪材100aの少なくとも1つから離した状態で、複数の毛髪材100aの少なくとも1つを切断することができる。その他の構成、動作及び効果は、第1実施形態の構成、動作及び効果と同様である。
【0082】
[第3実施形態の第2例の構成]
図42は、第3実施形態の第2例における自動植毛システム500の構成を示す図である。図42に示すように、第3実施形態の第2例の自動植毛システム500は、加熱部550を含む。加熱部550は、発熱体を含む。加熱部550は、毛髪材100aの少なくとも1つに接触して当該毛髪材の少なくとも1つを溶断する。その他の構成、動作及び効果は、第1実施形態の構成、動作及び効果と同様である。
【0083】
[第4実施形態の構成]
図43は、第4実施形態の自動植毛システム600の構成を示す図である。図43に示すように、第4実施形態の自動植毛システム600は、切断部650と移動機構部660とを含む。切断部650は、植毛ネット200に植毛された後の毛髪材100aを切断する。例えば、切断部650は、エキセン10が前方に傾いた状態で、結び目から垂れ下がった毛髪材100aを切断する。移動機構部660は、切断部650をE11方向又はE12に移動させて、切断部650の高さ位置を変更させる。自動植毛システム600は、植毛パターンデータに基づいて、切断部650の高さ位置を決定する。その他の構成、動作及び効果は、第1実施形態の構成、動作及び効果と同様である。
【0084】
[第5実施形態の構成]
図44及び図45は、第5実施形態の自動植毛システム700の構成を示す図である。図44及び図45に示すように、第5実施形態の自動植毛システム700は、ストッカ740と、切断部750とを含む。切断部750は、ストッカ740に配置されており、ストッカ740内に配置された毛髪材100aを切断する。切断部750は、複数の刃を含む。切断部750の複数の刃は、図示しない駆動機構部により、毛髪材100aの長手方向に沿って移動する。また、ストッカ740には、毛髪材100a(毛髪材束100b)を固定する固定部材760が設けられている。固定部材760は、毛髪材束100bが毛髪材100aの長手方向に移動しないように、毛髪材束100bを底部41に向かって押圧する部材である。これにより、切断部750の複数の刃に接触した毛髪材100aが切断される。また、切断された毛髪材の破片100dは、ストッカ740に残る。また、切断部750の複数の刃は、平面視で剣山のようにまだらに配置されている。このため、複数の毛髪材100aは、互いに異なる長さに切断される。これにより、様々な長さの毛髪材100aからなる植毛完成品を製造することが可能となる。その他の構成、動作及び効果は、第1実施形態の構成、動作及び効果と同様である。
【0085】
[変形例]
以上、上述した実施形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。よって、本開示は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0086】
(1)上記第1~第5実施形態では、制御部の動作を制御する各プログラムが、記憶部に記憶されている態様を例示した。しかし、植毛システムにおけるプログラムを記憶した、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体(プログラム記憶媒体)や、無線または有線の通信回線を通じて伝送されるプログラム(プログラム製品)も、実施形態に含まれる。
【0087】
(2)上記第1~第5実施形態では、切断部の位置を変更することが可能に自動植毛装置を構成する例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、切断部の配置位置を固定し、切断の有無のみを変更することによって毛髪材の長さを変更してもよい。
【0088】
(3)上記第1実施形態では、毛髪材を一対の刃によって挟んで切断する例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、毛髪材を単一の刃(カミソリ)により切断してもよい。
【0089】
また、上述した自動植毛装置は、以下のように説明することができる。
【0090】
第1の構成に係る自動植毛装置は、植毛対象物に複数の毛髪材を植毛する植毛機構部と、
複数の毛髪材の少なくとも1つを切断する切断部と、を備える(第1の構成)。
【0091】
上記第1の構成によれば、複数の毛髪材の少なくとも1つを切断することができるので、植毛対象物に植毛される毛髪材、又は植毛対象物に植毛された毛髪材の長さを変更することができる。
【0092】
第1の構成において、植毛機構部は、取出口を有し、当該取出口を跨ぐように複数の毛髪材が配置されるストッカと、取出口から複数の毛髪材のうちの一部の毛髪材を引き出す引出鉤針と、引出鉤針から引き出された毛髪材を捕捉し、植毛対象物に植毛する植毛鉤針と、を含んでもよく、切断部は、植毛鉤針により捕捉された毛髪材を切断するように構成されてもよい(第2の構成)。
【0093】
上記第2の構成によれば、植毛鉤針により捕捉された毛髪材を切断するので、植毛鉤針により捕捉された毛髪材ごとに、毛髪材の長さを調整することができる。また、毛髪材は、ストッカから引出鉤針により引き出されるため、ストッカに配置される毛髪材の長さは、ストッカと引出鉤針との距離の2倍以上の長さが必要となる。これに対して、上記第2の構成によれば、ストッカに配置される毛髪材の長さがストッカと引出鉤針との距離の2倍以上の長さであっても、植毛鉤針により捕捉された毛髪材を切断するので、ストッカと引出鉤針との距離の2倍未満の長さに毛髪材の長さを調整することができる。
【0094】
第1または第2の構成において、切断部は、複数の毛髪材の少なくとも1つを切断する刃部を含んでもよい(第3の構成)。
【0095】
上記第3の構成によれば、刃部を複数の毛髪材の少なくとも1つに接触させることにより、複数の毛髪材の少なくとも1つを切断することができる。
【0096】
第3の構成において、刃部は、複数の毛髪材の少なくとも1つを挟んで切断する一対の刃を含んでもよい(第4の構成)。
【0097】
上記第4の構成によれば、一対の刃により、複数の毛髪材の少なくとも1つを挟んで保持しながら切断することができる。この結果、毛髪材の切断位置がずれるのを防止することができる。
【0098】
第1または第2の構成において、切断部は、複数の毛髪材の少なくとも1つを加熱して溶断する加熱部を含んでもよい(第5の構成)。
【0099】
上記第5の構成によれば、複数の毛髪材の少なくとも1つを切断することができる。
【0100】
第5の構成において、加熱部は、複数の毛髪材の少なくとも1つに加熱された部材を接触させて複数の毛髪材の少なくとも1つを溶断するように構成されてもよい(第6の構成)。
【0101】
上記第6の構成によれば、加熱部を複数の毛髪材の少なくとも1つに接触させることにより、複数の毛髪材の少なくとも1つを切断することができる。
【0102】
第5の構成において、加熱部は、複数の毛髪材の少なくとも1つにレーザを照射して複数の毛髪材の少なくとも1つを溶断するように構成されてもよい(第7の構成)。
【0103】
上記第7の構成によれば、加熱部を複数の毛髪材の少なくとも1つから離した状態で、複数の毛髪材の少なくとも1つを切断することができる。
【0104】
第1~第7の構成のいずれか1つにおいて、自動植毛装置は、切断部を移動させる切断部移動機構部と、切断部移動機構部により切断部を移動させて、切断後の毛髪材の長さを制御する切断制御部とを、さらに備えてもよい(第8の構成)。
【0105】
上記第8の構成によれば、切断される毛髪材ごとに長さを変更することができる。
【0106】
第8の構成において、切断制御部は、複数の座標の各々における植毛された毛髪材の長さ、又は、複数の領域における植毛された毛髪材の長さを含む毛髪材長さデータに基づいて、切断部移動機構部の制御を行う(第9の構成)。
【0107】
上記第9の構成によれば、毛髪材長さデータを作成すれば、植毛完成品における各毛髪材の長さを任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0108】
20…植毛鉤針、30…引出鉤針、40,340,740…ストッカ、41…底部、42…取出口、100,300,400,500,600,700…自動植毛システム、100a…毛髪材、100b…毛髪材束、111…制御部、111a…パターンデータ生成部、111b…表示制御部、113a…植毛パターンデータ、113b…パターンデータ生成プログラム、120,320,420…自動植毛装置、121…植毛機構部、122…制御部、122a…植毛制御部、123…記憶部、150,650,750…切断部、151…刃、160…切断部移動機構部、200…植毛ネット、450,550…加熱部、460,660…移動機構部、760…固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29A
図29B
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45